『ドリトル先生と沖縄の蛇達』




                 第四幕  ハブの話

 先生はこの日も学会に出ました、この日も先生の論文の発表はありませんでした。ですが学会を終えてです。
 先生はこの日はお昼に沖縄料理、ケチャップ焼きそば等を食べつつ一緒にいる動物の皆とお話しました。場所は国際通りの屋台村のお店の一つです。
 まずはそーきそばを食べながらです、皆に言いました。
「明日は海に行くからね」
「とはいっても泳がないよね」
「先生泳げないしね」
「スキューバダイビングとかもね」
「全然出来ないから」
「スキューバなんてとてもだよ」
 先生は動物の皆の言葉にかえって驚いて応えました。
「出来ないよ」
「うん、そうだよね」
「先生はそういうの無理だからね」
「海に出ても」
「泳げないから」
「だから船に乗ってね」
 そのうえでというのです。
「そこから色々と調べるよ」
「そうするんだね」
「ここは」
「そうして楽しむんだね」
「うん、海にはね」
 先生はそーきそばから何か焼いたものを食べました、それは何かといいますと。
「この生きものもいるから」
「あっ、ウナギだね」
「エラブウミヘビだね」
「そうそう、沖縄だからね」
「いるんだよね」
「そうだよ、大人しい蛇だから」
 それでというのです。
「安心してね、ただね」
「毒はあるから」
「そこは注意して」
「いつもの応対でお話する」
「そうしていくんだね」
「そうしていこう、やっぱり喧嘩腰じゃなくて」
 そもそもそうした態度は誰にも取らない温和な先生です、喧嘩や暴力といったものは先生には全く無縁のものです。
「穏やかにね」
「お話してだね」
「そしてなんだね」
「色々と教えてもらう」
「いつも通り」
「そうしていくからね」
 明日はというのです。
「楽しみにしよう」
「よし、それじゃあ」
「明日もね」
「学問を楽しもうね」
「皆で」
「それはそうとして」
 ホワイティは先生がウミヘビを焼いたものから蝉にお箸を移すのを見つつ言いました。
「蝉もね」
「そうそう、美味しいね」
「これもね」
 チープサイドの家族は家族で蝉をついばんでいます。
「こんがり焼けてて」
「香ばしいわね」
「ケチャップの焼きそばもいいよ」
 ダブダブはこちらを食べています。
「神戸や大阪にない味だね」
「あとね」
 トートーはゴーヤともやし、それにスパムのチャンプルを食べています。
「スパムも多いね」
「何か不思議な感じだね」
 ジップはウミヘビを食べています。
「日本にアメリカに沖縄にって」
「色々入っている感じね」
 ガブガブはお野菜がたっぷり入ったお汁を食べています。そこには海の幸もかなりj入っています。これもかなり美味しいです。
「沖縄をベースに」
「あと中国もあるかしら」
 ポリネシアはお豆腐料理を食べています。
「腐豆腐もあるから」
「ここは色々な国の文化が混ざってるんだね」
 老馬もしみじみとして言うのでした。
「沖縄の元々の文化だけじゃなくて」
「それが食文化にも出ていて」
「ほかの文化にもだね」
 オシツオサレツも言います。
「出ていて」
「沖縄独自の文化を形成しているんだね」
「そして先生はその文化を学んで楽しんでる」
 チーチーは御飯を食べています。
「そういうことだね」
「そうだよ、それと食べた後でね」
 先生は皆にさらに言いました。
「真喜志さんが案内してくれる場所があるよ」
「市の郊外のです」 
 一緒に食べている真喜志さんのお言葉です。
「サトウキビ畑に」
「行くからね」
「サトウキビね」
「沖縄って本当にサトウキビの国だね」
「お砂糖の産地だったし」
「多いんだね」
「そうなんだ、そこに行ってね」
 そしてと言うのでした。
「サトウキビも観るよ」
「それじゃあね」
「そこにも行って」
「そしてだね」
「学問をするんだね」
「そうするよ」
 先生はまた皆に言いました。
「サトウキビ畑も観ておきたいから」
「今度は農業だね」
「そういえば先生植物学もやってるから」
「そっちだね」
「そっちの勉強もするんだね」
「そうだよ」
 今度はそちらの学問をというのです。
「サトウキビをこの目で観てね」
「それでサトウキビがどんなものか学ぶ」
「神戸にはないしね」
「八条学園の植物園にはあるけれど」
「本場のものじゃないから」
「そうだよ。現地にあるものを観たいんだ」
 ここはというのです。
「是非ね、じゃあいいね」
「よし、それじゃあ」
「そこに行って」
「サトウキビを観ようね」
「そうするよ、ただ」
 ここでまた言った先生でした。今度言ったことはといいますと。
「サトウキビ畑にも時々ハブがいるから」
「ああ、ハブだね」
「ハブには注意しないとね」
「いけないね」
「そうだよ」 
 このことも言う先生でした、そして。
 そのうえで、でした。先生は真喜志さんと一緒に動物の皆を連れてサトウキビ畑に向かいました。最初は立派なサトウキビ達を観ていましたが。
 けれどです、そこにすぐにでした。
 先生達はサトウキビの間にです、ハブを見付けました。真喜志さんもそのハブ達を観て皆に注意したのでした。
「ハブもいますから」
「そうですね」
「注意して下さいね」
「わかりました」
 こう応えた先生でした。
「ちょっとハブ君とお話しますね」
「そうされますか」
「はい、一度お話したいと思っていたので」
 だからというのです。
「お話します」
「それじゃあ」
「今から」
 こうしてです、先生はハブのところに来てそのうえでお話をしました。
「ちょっといいかな」
「何かしら」
 ハブは女性でした、喋り方に性が出ています。
「私に用があるみたいだけれど」
「君達のことを聞きたくてね」
「私達のことを」
「ハブ君達は最近どうやって暮らしてるのかな」
「生活は変わらないわよ」 
 これがハブさんの返事でした。
「これといってね」
「そうなの」
「そう、特にね」
 これといって、というのです。
「昔と変わらないよ」
「こうした場所にいて」
「食べて寝て子供を産んで育てて」
 そうしてというのです。
「何も変わらないわよ」
「そうなんだね」
「ハブはハブでね」
 つまり彼女達の間でというのです。
「普通に暮らしてるわよ」
「昔通りね」
「そうしてるわ、ただね」
「ただ?」
「私達だけのことを聞きたいんじゃないわね」
「この辺り全体のことも聞きたいし」
「そういうことよね」
 先生の返事を聞いて納得したハブさんでした。
 そしてそのうえで、です。先生に自分からお話しました。
「私は実感ないけれど」
「聞いたお話だね」
「お祖母ちゃん達からね」 
 そうしたお話だというのです。
「何でも昔はもっとサトウキビ畑も多くて」
「街は小さくて」
「沖縄もそうだったらしいわ」
「そうなんだね」
「人間の生活も変わったそうよ、あと」
「あと?」
「昔は白い肌や黒い肌の人が昔よりずっと多かったと聞いたわ」
 そうした人達がというのです。
「昔は」
「日本に戻っていなかった頃だね」
「人間さんのことは知らないけれど」
「まあそこは僕達の話だね」
「私の知ってることはこれ位よ」
 あくまでというのです。
「他は子供達のこと位ね」
「じゃあヒャンは知ってる?」
「ハイは?」
「そうした蛇とお付き合いあるの?」
 動物達はハブさんに尋ねました。
「沖縄にいるらしいけれど」
「どうなの?」
「ヒャン?ハイ?」
 そう言われてもでした、ハブさんは。
 首を傾げさせてです、こう言うだけでした。
「それ何?」
「沖縄にいる蛇だけれど」
「珍しい蛇っていうけれど」
「知らない?」
「ハブさんは」
「知らないよ」
 ハブさんは皆に正直に答えました。
「そんな蛇は」
「そうなの」
「ハブさんは知らないんだ」
「そうなんだ」
「海の方にウミヘビさんがいるとは聞いてるわ」
 こちらのお話はというのです。
「それはね」
「けれどなんだ」
「ヒャンやハイはなんだ」
「知らないんだ」
「そんな蛇もいるの」
 逆にハブさんの方が聞き返す位でした。
「そうだったのね」
「うん、いるらしいよ」
「数は凄く少ないらしいけれど」
「そうみたいだよ」
「この辺りにいるのは私達だけよ」
 ハブさん達だけというのです。
「ヒャンとかハイとかはじめて聞いた位よ」
「彼等はね」
 先生が動物の皆にお話します。
「本当にはいないよ」
「あっ、そうなんだ」
「ここにはいないんだ」
「そうだったんだ」
「沖縄は沢山の島からなっていてね」
 その沢山の島を一括りにして沖縄県としているのです、
「この本島にはいないんだ」
「そうだったんだ」
「ここにはいなくて」
「別の場所にいるんだ」
「別の島に」
「そうだよ」 
 まさにというのです。
「だからハブさんを知らないのも当然だよ」
「数も少ないし」
「だから余計にだね」
「ハブさんも知らないんだね」
「そうした事情ね」
「まだ聞きたいことはあるかしら」
 ハブさんはまたご自身から先生達に尋ねました。
「それで」
「あっ、もうないよ」
「そうなのね」
「お手数かけたわね」
「いいわよ、別に」
 それについてはこう返したハブさんでした。
「それなりに聞かせてもらったし」
「だからなんだ」
「別にいいわ」
 こう先生に返すのでした。
「特にね、じゃあね」
「うん、縁があったらね」
「また会いましょう」
 こうお話してでした、そjのうえで。
 先生達はハブさんと別れました、そして動物の皆はあらためて言うのでした。
「この島にはいないなんてね」
「別の島にいるんだ」
「何か沖縄って島によっている生きものといない生きものがいるんだね」
「ヤンバルクイナもそうで」
「ヒャンやハイも」
「そのこともあってね」
 島それぞれで生態系が微妙に違うこともあってというのです。
「ヒャンやハイは中々見付からなかったんだ」
「いるかいないか」
「それがはっきりしなかったの」
「そうだったんだね」
「そうだったんだ」 
 先生は皆にその辺りの事情もお話するのでした。
「これがね」
「何か島ごとだとね」
「こうしたこともあるのね」
「その島にしかいない生きものがいる」
「そうした事情もあるの」
「広く言えば北海道もだよ」
 この地域もというのです。
「島になるね」
「あっ、確かに」
「もっと言えば本州も四国も九州も」
「日本は全部だね」
「そうなるね」
「日本が独自の生態系を持っていてね」
 そしてというのです。
「北海道はその中でも独特である理由はね」
「島だからって事情もあるんだ」
「気候と地域と合わせて」
「日本は島だから」
「それで独自の生態系になっているんだ」
「そうだよ」
 まさにというのです。
「イギリスもそうだけれどね」
「けれど何か」
「日本はイギリス以上に生態系が独特かも」
「そう思うよね」
「そうだね」
 本当にというのです。
「日本はそこも独特だね」
「文化だけじゃて生態系も」
「私達が今いる沖縄にしても」
「物凄く独特」
「こんな面白い国はね」
 それこそと言った先生でした。
「他にないかもね」
「あらゆる分野の学問で学びがいがあるなんて」
「文化、地理、生態系」
「そうしたあらゆることでそうである国は」
「他にないの」
「ヒャンもハイも」
「そうしたことも学んでこそ」
 まさにと言った先生でした。
「僕は本望だよ」
「先生は学者さんだから」
「それで色々と観ているんだね」
「そおのうえで学ぶんだね」
「日本も沖縄も」
「その全てを」
「どうしてもね」
 先生はここでもこう言うのでした。
「基地だけっていうのはね」
「先生としてはだね」
「視野が狭い」
「沖縄の他のことを知って欲しい」
「そうなんだね」
「そう思うけれどね」
「私もです」
 真喜志さんも言います。
「出来ればです」
「基地だけじゃなくてですね」
「沖縄の色々な部分を観て欲しいですね」
「真喜志さんもですか」
「はい、基地を言う人達は」
 それこそというのです、残念そうに。
「沖縄が基地が全てだと言いますね」
「そうですね」
「なくそうとする人も残そうとする人も」
「まず基地ですね」
「沖縄には基地しかない様な」
「そんな感じですね」
「それは違いますから」
 こう先生に言うのでした。
「本当に」
「基地だけでなく」
「はい、先生の言われる通りです」
「色々と魅力的なものがありますね」
「そうです」
 まさにというのです。
「そこをわかって欲しいんですが」
「基地ばかり言う人は」
「そんな人はです」
 それこそと言う真喜志さんでした。
「沖縄なんかどうでもいいんですよ」
「基地だけで」
「他のことは考えていないですし」
「興味もですね」
「ないです、そもそもです」
「そもそも?」
「アメリカ軍の基地がなくなったら」
 その時はどうなるかといいますと。
「自衛隊の基地が出来ますし」
「そうなりますよね」
「自衛隊にも反対するんでしょうが」
 そうした人達はというのです。
「反対反対で」
「結局沖縄のことはですね」
「何も見ていないんですよ」
「興味もないですね」
「そんな人達は沖縄に来て欲しくないですね」
「沖縄にもそうした人がいますね」
「いい人達じゃないですよ」
 こう断った真喜志さんんでした。
「背後関係を調べますと」
「そうなんですね」
「核兵器を持っている将軍様の国の組織にいたり」
「あと過激派ですね」
「沖縄にいる人も来る人もですね」
 基地にどうとか言う人達はというのです。
「そうした人達ばかりです」
「それは僕も知っています」
「おかしいですね」
「はい、軍事のことは専門ではないが」
 それでもと言う先生でした。
「そこはわかります」
「過激派が絡んでいるとなると」
「どの国でも過激派は危険です」
 温和ですがはっきりとした声で言った先生でした。
「手段も選びませんし」
「はい、実際基地の前で暴れます」
「平和と言いながら」
「凶暴とさえ言っていいので」
「余計にですね」
「来て欲しくないです」
 こうも言った真喜志さんでした。
「本土ではどう報道されているか知りませんが」
「数が実際より少ないと批判受けて数の問題ではないと開き直ったキャスターがいましたよ」
「それも酷いですね」
「基地反対の参加者が」
 報道された数と実際の数が違うと批判されるとこう言ったとのことです。
「この前遂に降板しましたが」
「その報道番組は多分沖縄でも放送していますが」
「ご存知ですね」
「私は観ていません」
 真喜志さんは嫌そうなお顔ではっきりと言いました、
「あまりにも報道が酷いので」
「だからですか」
「はい、そうしています」
「そうですか」
「あの番組は沖縄のこと何も知ろうともしていません」
「基地ばかりで」
「沖縄のことはどうでもいいんですよ」
 その番組を制作して放送している人達はというのです。
「それがわかりますから」
「観ないのですか」
「はい」 
 まさにそうだというのです。
「そうしています」
「そうですか、僕もです」
「観ていませんか」
「観ても何も勉強にならないですから」
「そうした番組だと思われているのですね」
「はい」
 まさにという返事でした。
「日本のテレビはアニメと特撮、ドラマ以外は」
「御覧になっていないのですね」
「どの番組もあまりにも酷いので」
「否定出来ないですね」
「はい、ですから」
「それがいいかも知れないですね」
「特撮は大好きです」
 観ている番組の中でもというのです。
「最高ですね」
「あっ、そちらはですか」
「はい、大好きです」
 先生はこちらについては笑顔でお話しました。
「いつも観ています」
「先生は特撮がお好きですか」
「日本に来てそうなりました」
「特撮も素晴らしい文化ですね」
「日本が世界に誇る」
 まさにと言う先生でした。
「最近は昔の映像も観ています」
「そうですか」
「何かとです」
 それこそというのです。
「大好きです」
「そうですか」
「今の特撮も観ていますし」
「昔のものも」
「そうしています、沖縄を観ていますと」
 先生はサトウキビ畑から沖縄の何処までも澄んだマリンブルーの海とスカイブルーの空、白い砂浜と雲を見つつ言いました。
「文学の題材にもなりそうで」
「アニメの舞台になってもいいですね」
「そして特撮でも」
「そう思います、私も」
「景色も楽しめる場所です」
「ありとあらゆるもが」
「魅力的な日本の一つです」
 沖縄もまた、というのです。
「ですから」
「こうしてですね」
「観ていきたいですね」
 是非にとです、先生は真喜志さんに言いました。
「これからも」
「それでは明日は海にですね」
「案内をお願いします」
「そうさせてもらいます」
 二人は動物の皆と一緒にサトウキビ畑にお空、そして明日行く海を観ながらお話をしていました。そしてです。
 その次の日実際にでした、先生は動物の皆と一緒に調査用のヨットで海に出ました。動かすのは真喜志さんです。
 真喜志さんは船の先で海を観ている先生に操縦席から尋ねました。
「速度はこれ位でいいですか?」
「はい、丁度いい位です」
「じゃあ海蛇がいる場所に来たら」
「そこで錨を下ろして下さい」
「そうさせてもらいます」
 こうお話するのでした、そしてです。 
 先生達が乗るヨットは海蛇のいる場所に向かいます。その中で。
 ふとです、オシツオサレツが海を観ながらこんなことを言いました。
「奇麗な海だね」
「本当にね」
「水泳もスキューバも出来そうだね」
「サーフィン、あと水上スキーもいいかも」
「マリンスポーツに最適よ」
 ガブガブも言います。
「この海は」
「泳いだらね」
 ホワイティもマリンブルーの海を観ています。
「気持ちいいって人多いね」
「ここまで奇麗だと」
 ジップの尻尾は横に振られています。
「そうしたくなるね」
「スポーツが好きだと」
 トートーはこう仮定してお話します。
「そう思うね」
「泳ぐだけでもいいわよ」
 ポリネシアはビーチの方を観ています、そこには水着姿の沢山の人がいます。
「それだけで全然違うわ」
「ビーチでのバカンスだね」
「それだけでも違うわね」
 チープサイドの家族もビーチを観ています。
「泳がないにしても」
「プールサイドにいてもいいかも」
「プールもいいね」
 チーチーはここでまた言ったのでした。
「泳いだりプールサイドでくつろぐことも」
「そうしたバカンスもね」 
 最後に老馬が言いました。
「いいけれど」
「先生海は好きだけれど」
「観るだけだから」
「水着にもならないし」
「スポーツは絶対にないから」
「バカンスもね」
「今回はしないかな」 
 ここで皆で先生にお顔を向けて言うのでした。
「海でくつろぐ」
「時間があればかな」
「泳ぐことは絶対にしないけれど」
「それでもね」
「バカンスは時間があればね」
 その場合にと答えた先生でした。
「するけれど」
「それでもなんだ」
「あくまで時間があれば」
「プールサイドやビーチでくつろぐ」
「そうするんだね」
「安楽椅子に座って」
 スーツ姿のままです。
「トロピカルドリンクや西瓜を楽しんで」
「そしてだね」
「海を観て楽しむ」
「そうするんだね」
「僕は泳げないから」
 本当にスポーツには縁のない先生です。
「だからね」
「そうするんだね」
「まあ先生らしいね」
「それじゃあそっち楽しんで」
「思う存分ね」
「そうさせてもらうね」
 実際にこう答えた先生でした。
「時間があれば」
「そして今はだね」
「学問を楽しむんだ」
「私達と一緒に」
「そうさせてもらうよ、しかし海蛇だけれど」
 そのエラブウミヘビについてもお話する先生でした。
「凄く大人しいからね」
「よく言われてるよね」
「海蛇は大人いいって」
「そうした生きものだって」
「そうだよ、ハブよりもずっと大人しいよ」
 サトウキビ畑でお話した蛇です。
「だから噛まれることは殆どないんだ」
「毒凄く強いのに」
「それでもなんだ」
「物凄く大人しいから」
「安心していいんだ」
「そうだよ、お口も小さくて」
 そのこともあってというのです。
「殆ど気にしなくていいよ」
「そうなんだ」
「それじゃあだね」
「安心して」
「そのうえで」
「お話も出来るよ」
 こうしたことをお話してでした、そのうえで。
 真喜志さんは先生達が乗っているヨットをビーチから離れた岩場のところに向かわせました。そしてです。
 その岩場のところで錨を下ろすとです、先生は海の中に向かって声をかけました。
「誰かいるかな」
「呼んだ?」
「僕達のことを呼んだ?」
「うん、ちょっとお話を聞きたいけれど」
 先生は海の中からの返事にまた言いました。
「海面に出てくれるかな」
「捕まえないならいいよ」
「お話をするだけならね」
「私達にしてもね」
「約束するよ、お話を聞くだけだよ」
 先生は声達に確かな声で答えました。
「絶対にね」
「この人はドリトル先生だよ」
「だから皆安心していいよ」 
 動物の皆も海中に対して声をかけます。
「ドリトル先生は知ってるよね」
「僕達動物の友達だよ」
「約束を破ることは絶対にないよ」
「だから安心していいよ」
「よし、それじゃあ」
 声達は皆の言葉に頷きました、すると。
 海面に沢山の蛇がお顔を出してきました、それは縞模様の穏やかな顔立ちの蛇達でした。その蛇達を観て言う先生でした。
「彼等は知っているね」
「エラブウミヘビだね」
「動物園にもいたよね」
「八条学園のね」
「水族館にもいたね」
「だから僕達も知ってるよ」
「そう、彼等がね」
 まさにとです、先生は皆にお話します。
「エラブウミヘビだよ」
「そう、僕達はエラブウミヘビだよ」
「他の誰でもないわよ」
「この辺りに住んでるね」
「海蛇よ」
「そうだね、それじゃあね」
 先生は海蛇さん達にあらためて言いました。
「ちょっとこれから話を聞かせてくれるかな」
「お話?」
「それをなんだ」
「僕達から聞きたいんだ」
「そうなのね」
「最近の君達のことをね」
 それをというのです。
「どういった暮らしか」
「暮らし?別にね」
「特に変わったことないわよ」
「別に」
「このままよ」
「この前までこの辺りの海蛇は少なくなってたけれど」
 それがというのです。
「数は戻ってきたし」
「逆に北に行く仲間が増えてきて」
「住んでいる場所は広くなって」
「この辺りだけじゃなくなってきたわね」
「住んでいる場所が」
「つまりだね」
 そのお話を聞いて言った先生でした。
「本州や四国、九州にまでだね」
「地名のことは知らないけれど」
「それでもね」
「北の方に行ってるわ」
「仲間がね」
「そうなんだね、それで君達の暮らし自体は」
 先生は海蛇さん達にあらためてお話しました。
「特にだね」
「前と同じだよ」
「変わらないわよ」
「ここで穏やかに暮らしてるよ」
「平和にね」
「卵も産めてるし」
「子供も育てられて」
 それでというのです。
「別にね」
「困ったこともなくて」
「幸せに暮らしているわ」
「それは何よりだよ、僕達がすることは」
 先生は人間の立場からも言うのでした。
「君達がいる環境を守っていくよ」
「ここには出来るだけ来ないで」
「海を汚さない」
「そうしていくのね」
「そうなんだね」
「そうしていくよ」
 是非にと言うのでした、そしてです。
 先生は海蛇の皆とさらにお話していきます、そのうえで。
 海蛇さん達とのお話を終えてです、皆に言いました。
「有り難う、色々と話をしてくれて」
「いやいや」
「僕達も先生とお話が出来て楽しかったよ」
「凄くいい雰囲気だったから」
「素敵な時間を過ごせたわ」
「よかったらまた来てね」
「またお話しましょう」
 海蛇さん達も先生に笑顔で応えました、そのうえで笑顔でお別れをしてです。
 先生達のヨットは岩場を後にしました、真喜志さんはヨットを動かしながら先生にこんなことを言ってきました。
「近くにイルカが出る場所がありますが」
「今度はですね」
「イルカを観に行きますか?」
「はい、それじゃあ」 
 先生は真喜志さんの言葉に応えました。
「宜しくお願いします」
「今から行きますね」
「わかりました」
「それとですが」
 ここで真喜志さんは先生にこうも言いました。
「そろそろティータイムですね」
「あっ、そうですね」
「何を飲まれるんですか?」
「はい、ミルクティーですが」
 先生が第一に好きなお茶です。
「アイスで」
「ああ、アイスミルクティーですか」
「それとです」
 さらにお話した先生でした。
「アイスクリーム、カステラにです」
「それにですか」
「よく冷やしたフルーツです」
「三段で、ですね」
「頂きます、真喜志さんの分もありますので」
「僕の分もですか」
「はい、あります」
 そちらもというのです。
「ですから一緒に楽しみましょう」
「悪いですね」
「悪くないです、では三時までに」
「イルカ達のところまで行って」
「彼等を観ながら」
 そしてというのです。
「お茶を楽しみましょう」
「では」
 こうしたことをお話してでした、ヨットはイルカ達がいる場所まで向かいました。そこは岩場から少し距離がありました。
 ですが三時にはです、ヨットはその場所に着いてティータイムとなりました。
 お茶とお菓子が出されてです、真喜志さんはよく冷えたミルクティーを飲んでにこりと笑いました。
「やっぱりです」
「暑い時はですね」
「冷たい飲みものですね」
「そうですね」
「暑い時に暑いものもいいですが」
「しかしですね」
「冷えたものもです」 
 それもというのです。
「いいですね」
「本当にそうですね」
 先生も笑顔で応えます。
「本当にいいですね」
「それにお菓子も」
「アイスクリームいいですね」
「実はアイス大好きです」
「あっ、そうなのですか」
「どのアイスも好きです」
「ではお抹茶のアイスも」
 先生はこのアイスの名前を出しました。
「お好きですか」
「あのアイスですね」
「どうでしょうか」
「勿論です」
 これが真喜志さんの返事でした。
「あのアイスもです」
「お好きですか」
「はい、それにです」
 真喜志さんはよく冷えたオレンジやパイナップル、メロン等も食べつつ言いました。
「こちらも」
「フルーツもですか」
「大好きです、それは知子ちゃんもです」
「安座間さんもですか」
「大好きなので」
 それでというのです。
「是非ご一緒に」
「そうさせてもらいますね」
「あの娘とも」
「それに日笠さんともね」
「一緒にね」
 動物の皆は先生と一緒にティーセットを楽しみつつお話しました。
「よく冷えたフルーツ食べようね」
「そうしようね」
「神戸に帰ったら」
「そうしようね」
「そうだね、日笠さんも果物好きだし」
 先生も応えます、ただし皆の言葉の意味はわかっていません。
「帰ったらね」
「そうしようね」
「いや、暑いと冷えたフルーツもいいね」
「こちらもね」
「いいね」
「カステラもね」 
 先生はカステラも見ています、そして言うのでした。
「冷えていてね」
「いいよね」
「ヨットの冷蔵庫で冷やしていたけれど」
「冷えたカステラも美味しいね」
「こちらも」
「僕もそう思うよ」
 先生はそのカステラも食べて言いました。
「これもいいね」
「こっちで売ってたカステラよね」
「長崎のじゃなくて」
「そうだよね」
「そうだよ」
 こう皆にお話します。
「これも中々美味しいね」
「というかね」
「沖縄にもカステラあるんだね」
「しかもカステラって冷やしても美味しいね」
「これはこれで」
「うん、考えてみれば」
 先生はカステラを美味しそうに食べながらお話しました。
「ケーキも一緒だね」
「ああ、ケーキは冷やすものだから」
「冷やして食べたら美味しいよね」
「それでカステラも美味しいのね」
「冷やしたら」
「そういうことだよ、実際にね」
 先生はどんどんカステラを食べつつ言うのでした。
「美味しいからね」
「そしてこのミルクティーもね」
「よく冷えていて美味しいね」
「氷を入れて冷えていて」
「いい感じだね」
「こうして海とね」
 先生はここで海を観ました、するとです。
 丁度イルカ達がいました、イルカ達は時折海面まで跳び出ています。その跳んでいる姿を観てまた言った先生でした。
「イルカ達を観てのティータイムもね」
「いいよね」
「これもね」
「素敵な感じだね」
「海でイルカ達を観つつお茶とお菓子を楽しむ」
「最高の贅沢だよね」
「そう、これはね」
 まさにと言った先生でした。
「最高の贅沢の一つだよ」
「全くだよね」
「これは最高の贅沢だね」
「自然を楽しみつつお茶とお菓子を口にしてね」
「そっちを楽しむこともいいよね」
「本当に贅沢だよね」
「そう、贅沢はお金で得られる場合もあるけれど」
 このケースも否定しない先生でした。
「けれどね」
「こうしてだね」
「ちょっと海出てね」
「楽しめる贅沢もある」
「最高の贅沢が」
「そうだよ、それとだけれど」
 あらためて言った先生でした。
「沖縄の夜の海はあまり出ない方がいいね」
「その通りです」 
 真喜志さんが先生に応えました。
「鮫とかは基本夜行性ですから」
「そうですね」
「はい、あまり出ない方がいいです」
「毒のあるお魚もいますしね」
「そうです、それと珊瑚礁にも」
「オニヒトデですね」
「珊瑚を食い散らかす悪いヒトデですが」
 珊瑚礁を大事にする人達にとってはです、このヒトデは本当に悪いヒトデです。何しろ珊瑚を食べてしまうのですから。
「このヒトデも毒があります」
「迂闊に触ると危ないので」
「ですから」
「それで、ですね」
「あまりです」
「夜は泳がない方がいいですね」
「ダイバーの方もです」
 このことは心配そうに言う真喜志さんでした。
「時々夜に泳ぎたいという人がいますが」
「それは、ですね」
「危険なので」
「だからですね」
「はい、あまりです」
 真喜志さんとしてはというのです。
「お勧め出来ません」
「どうしても」
「けれどお話を聞かない人がいてです」
「その夜に泳ぎたいダイバーさんがですね」
「おられます」
「そうなのですね」
「はい」
 まさにというのです。
「それで事故に遭ったりしますかr」
「余計に困りますね」
「夜の海は危険です」
 とにかくこのことを強く言う真喜志さんでした。
「遊び半分で入っていい場所ではありません」
「プロのダイバーの人でもですね」
「ましてや一人で行こうとするなぞ」
「そうした人もいますか」
「お昼でも二人一組になって頂くものです」
 最低でも、というのです。
「海を甘く見てはいけません」
「お昼でもですね」
「その通りです」
「そうですね」
「はい、ですから夜のスキューバダイビングはです」
 絶対にとです、また言った先生でした。
「私は賛成出来ません」
「必要な時以外は」
「してはいけないです」
 あまりにも危険だからです。
 こうしたことをお話しながらです、先生達は海の景色とイルカ達を観つつティータイムを楽しみました。これは確かに最高の贅沢でした。



ハブやウミヘビとも話せるんだな。
美姫 「毒があるけれど、噛まれなければ大丈夫だしね」
運動が苦手だから、スキューバは出来ないみたいだけれど。
美姫 「それでもイルカを観たりして楽しそうよね」
だな。次はどんな生き物に会うのか。
美姫 「次回も待っていますね」
待っています。



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