『ドリトル先生の名監督』




                 第十幕  試合を前にして

 この時先生は学園の中の動物園をいつも一緒の動物の皆と一緒に歩いていました。そのうえでライオンや像、アシカといった生きもの達を観ています。
 爬虫類や両生類、鳥類も観ています。その中で。
 コアラを観てです、先生は皆に言いました。
「コアラはユーカリを食べるけれど」
「主食はそれでだよね」
「他のものは、でね」
「あとユーカリって毒素もあるんだよね」
「食べたら身体の中でその毒を何とかしないといけないんだね」
「そうだよ」  
 その通りとです、先生は皆に答えました。
「コアラはね」
「そう考えたらコアラさんも大変だね」
「ユーカリを食べることも」
「いつも呑気そうだけれど」
「実はなんだね」
「そうだよ、この動物園にはパンダもいるけれど」
 先生はこの動物についてもお話しました。
「パンダも主食は笹だけれど」
「笹は何処でもあるじゃない」
「中国でもそうじゃない」
「パンダさんは中国にいるけれどね」
「中国っていったらパンダさんよ」
「そして笹もね」
「中国っていったらじゃ」
 動物の皆はパンダと笹についてこう言います、ですが。
 先生はその皆にです、その笹についてお話しました。
「それがね」
「それが?」
「それがっていうと?」
「笹にもお花が咲くことがあるね」
「あっ、そういえばね」
「時々咲く?」
「言われてみれば」
 皆は先生に言われてこのことを思い出しました。
「日本じゃ笹多いから見ることが多いけれど」
「たまにそうした笹があるかな」
「じゃあ中国でもね」
「笹にお花が咲くのね」
「そう、そして笹はお花が咲くと枯れるんだ」
 そうなってしまうというのです。
「だからね」
「ああ、枯れたら食べられないからね」
「パンダさん達も困るわね」
「食べるものがなくなるから」
「だからその時は中国でも凄く警戒されてるんだ」
 パンダは中国の人達にとってまさに象徴と言っていい位に大切な生きものの一つだからです、それこそなのです。
「笹が枯れたらね」
「その時はなんだね」
「パンダさんを助ける為に色々とする」
「そうしてるのね」
「そうなんだ、食べるものはね」
 本当にと言う先生でした。
「色々とあるんだ」
「人間以外でもだね」
「僕達もだね」
「本当にだね」
「何を食べるか」
「そのことも考えないといけないんだね」
「そう、だから今回はね」
 お相撲のことにもお話を向けた先生でした。
「僕もアドバイスしたんだ」
「ささみやゆで卵の白身だけだと」
 ダブダブはこうしたものも嫌いではないです、何しろ美味しく食べられるのなら何でもという食いしん坊さんですから。
「駄目なんだね」
「格闘家の食事っていうけれど」
 ポリネシアも言います。
「力士さんの食事じゃないのね」
「力士さんは何でもバランスよく食べる」
 ガブガブは主婦的です、今も。
「他の人達も同じだけれど特にそうなのね」
「それが力士さんの身体を作る」
 チーチーは今は木の上で寝ているコアラを見つつ言います。
「そういうことなんだね」
「まあ身体に合わないものを食べてもね」
 トートーも言います。
「逆効果だしね」
「トレーニングもそうだけれど」
 ホワイティはそちらのことも頭に入れながらお話をします。
「食事も力士さんに合う食事があるってことね」
「それを忘れたら怪我の元」
「相撲部が最初そうだったし」
 チープサイドの家族は先生が最初に相撲部に来た時のことを思い出しています、本当に最初は怪我が多かったです。
「合わない食事をするとね」
「それだけでよくないのね」
「やっぱりバランスよくたっぷり食べないとね」
 老馬はこう言いました。
「力士さんに何がいいのかを考えて」
「先生はそうしたこともわかってるからね」
 ジップはコアラも先生も見ています。
「お医者さんとして」
「だからすぐにアドバイスしてね」
「食事をちゃんこ中心に戻したんだね」
 オシツオサレツは二つの頭で順序よくコアラと先生を見ています。二つの頭があるので同時に見られるのです。
「トレーニングもそうで」
「それで怪我が減ったね」
「うん、お相撲だからね」
 先生はこのことから考えてアドバイスしたのです。
「Kー1みたいな食事、トレーニングをしてもね」
「意味がない」
「だからすぐにアドバイスして」
「それでそうしたことを戻してもらった」
「そういうことだね」
「近代的な食事やトレーニングが常にいいか」
 こうしたことも言う先生でした。
「それは決してね」
「そうともばかり言えない」
「そういうことなんだね」
「どうして昔からそうした食事、稽古なのか」
「そこも考えないといけないんだね」
「古いからというだけで否定することはね」
 そうしたことはといいますと。
「それもまた科学的じゃないからね」
「ちゃんと検証する」
「それが科学なんだね」
「そして合っていればそのままでいく」
「それが科学だね」
「そうだよ、よりいい食事や稽古があれば取り入れていくけれど」
 それでもというのです。
「古いからというだけで否定することはね」
「それも科学じゃない」
「そうなんだね」
「科学は検証」
「そして調べていくんだね」
「そうだよ、科学はそうしたものだからね」 
 だからだとです、先生は皆にさらにお話します。
「僕も検証してね」
「それで食事と稽古を戻してもらって」
「怪我をなくした」
「そうしたのね」
「うん、それが成功してね」
 実際に怪我をする人が物凄く減ってというのです。
「よかったよ」
「柔軟もじっくりしてもらって」
「稽古の最初に身体をほぐして温めて」
「稽古の最後もちゃんとして」
「身体を整理して休む」
「そうしてるから怪我も減ったのね」
「準備体操をおろそかにすると」
 スポーツをしなくてもそのことがよくわかっている先生です。
「それだけでよくないからね」
「怪我をするんだね」
「疲れも溜まるし」
「それを整える為にもね」
「そうしたことは欠かせないのね」
「特にお相撲は裸で身体と身体が激しくぶつかり合うから」
 そうした武道だからというのです。
「怪我が多いのは必然だからね」
「まずは柔軟体操」
「そしてしっかりとした食事」
「その二つなのね」
「それが大事だよ、ただ御飯にお酒をかけて食べることはね」 
 こちらはといいますと。
「よくないと思うけれどね」
「どう考えても糖分摂り過ぎだから」
「糖尿病になるから」
「だからなのね」
「それは駄目なのね」
「そう、止めたんだ」 
 相撲部の皆にもというのです。
「お酒の飲み過ぎもね、あと煙草もね」
「ここも禁煙だしね」
「動物園もね」
「動物の皆の健康に悪いし」
「園内は子供も多いしね」
 煙草は子供の健康いもよくありません、もっと言えば誰の身体にもよくないのです。それが煙草というものです。
「煙草はね」
「やっぱり駄目よね」
「運動をするのならね」
「余計に」
「そう、僕も煙草は吸わないし」
 それにと言う先生でした。
「運動をしていたらね」
「尚更だね」
「煙草を吸ったらいけない」
「そうなんだね」
「そう、歌手もよくないけれどね」
 喉と肺を使うからです、煙草は身体の中でも特にこの二つに影響するのです。
「スポーツ選手もだよ」
「煙草なんてもっての他」
「吸ったらいけない」
「そうしないと本当に強くならないんだね」
「うん、煙草なんて吸ったら」
 また言った先生でした、コアラを見ながら。
「いいことは何もないからね」
「吸わないに限る」
「煙草については」
「そこも気をつけないといけないのね」
「スポーツは」
「そうだよ、だから僕も皆に念を押したんだ」
 相撲部の皆にというのです。
「煙草は絶対に駄目だってね」
「お薬もそうだけれど」
「煙草もなんだね」
「お相撲をしてるのなら絶対に駄目」
「一本も吸ったらいけないって」
「幸い皆最初から吸ってなかったし」
 だからというのです。
「よかったよ」
「そのことはね」
「最初からそうだっから」
「よかったんだね」
「本当にね」
 実際にというのです。
「何よりだったよ」
「煙草は言うまでもないしね」
「身体に悪いっていうのは」
「スポーツをしていたら特にね」
「身体に悪いね」
「そう、だから止めたしね」
 若し吸っていたらです、相撲部の皆も。
「よかったよ、それじゃあね」
「うん、今はね」
「こうしてだね」
「動物園を巡ってくつろぐ」
「そうするんだね」
「そうだよ、この学園はいいところだよ」 
 にこりと笑って言った先生でした。
「動物園も水族館もあってね」
「植物園、博物館もあるし」
「美術館まであるから」
「大きな図書館、それに鉄道博物館まであるから」
 全部学ぶべき場所です、八条学園はそうしたものが全てとんでもなく広い敷地の中に存在しているのです。
「有り難いよ」
「鉄道博物館についてもね」
「先生よく行くし」
「それに好きだよね」
「鉄道の方も」
「うん、他の場所も好きだけれど」
 美術館もです、先生は美術にも縁があるのです。
「鉄道博物館も好きだよ」
「鉄道自体もね」
「そうだね」
「鉄道はね」 
 コアラからパンダのコーナーに向かいながらです、先生は皆にお話します。皆も先生と一緒にそちらに向かいます。
「元々はイギリスからだけれどね」
「そうそう、最初はね」
「鉄道はイギリスが造ったんだよね」
「あれの時は凄いって話題になったよね」
「これもまた新しい技術だって」
「世の中を変える」
「我が国の偉大な発明の一つだったけれど」
 その発明がというのです。
「日本では凄いことになったね」
「新幹線とかね」
「八条グループも鉄道会社持ってるしね」
「日本全土に路線を持つ八条鉄道」
「かなり凄いのを持ってるね」
「そう、日本の鉄道はね」
 それはというのです。
「凄い進歩と発展を遂げたよ」
「イギリスから取り入れて」
「凄いものにしたんだね」
「下手をしたらイギリス以上のものにした」
「そうなんだね」
「うん、日本人は鉄道を見てね」
 まさにその時にです。
「あっという間に好きになってね」
「それでなんだね」
「積極的に取り入れて発展した」
「そうなんだね」
「そうだよ、他の国と比べてもね」
 それこそというのです。
「素晴らしい発展をしたんだ」
「その鉄道のこともわかるからなんだね」
「先生あそこに行くのも好きなんだね」
「鉄道博物館にも」
「そうなんだ、鉄道にはロマンがあるけれど」
 そのことも感じ取っている先生です。
「そのロマンを現実のものにさせたのが日本人だよ」
「そうなんだね」
「そしてそれがあの鉄道博物館にもある」
「そういうことでもあるんだね」
「あそこには大きなディオラマもあるけれど」
 鉄道模型のです、十メートル四方の大きさでガラスケースの中にあります。そこでは鉄道と線路が幾つもあって操作で走るのです。
「あれもいいからね」
「そうそう、鉄道模型ね」
「八条学園って鉄道模型の部活もあってね」
「活動も熱心で」
「凄いの造ってるよね」
「鉄道模型も素晴らしいよ」
 まさにというのです。
「それもまたロマンだよ」
「確かにロマンだね」
「あの部活もね」
「鉄道模型がロマンだから」
「ロマンを楽しんでるね」
「そうだよ、本当にね」
 こう皆に言います、そしてです。
 先生は皆と一緒にパンダのコーナーに来てコーナーの中で平和に笹を食べてくつろいでいる彼等を観ました、そのうえで。
 彼等を観て微笑んでいるとです、そこにでした。 
 日笠さんが来てでした、先生のところに駆ける様にして言ってきました。
「こんにちは、今日はここにおられるんですね」
「あっ、日笠さんこんにちは」
「はい、それでどうしてこちらに」
「今日はここに来たいと思いまして」
「それでなんですか」
「来ています」
「そうですか、お姿をお見かけしたので」
 それでというのです。
「驚きました」
「僕を見てですか」
「本当に」
 実際にというのです。
「驚きましてこちらに来ました」
「そうですか」
「あの、お昼は」 
 日笠さんは何処か必死に先生に言ってきました。
「そちらは」
「まだですが」
「それでしたら」
 そう聞いてです、すぐにでした。
 日笠さんは先生に勇んだ声で言いました。
「これから一緒にどうですか?」
「お昼をですか」
「はい」
 笑顔でのお誘いでした。
「そうしてくれますか」
「僕でいいんですか」
「先生だからです」
 こうまで言う日笠さんでした。
「ですから」
「わかりました、それじゃあ」
「お願いしますね」
「はい」
 こうしてでした、先生はこのお昼は日笠さんと一緒に食べることになりました。動物園の職員さん用の食堂に入ってです。
 動物の皆も入れて食べます、その中で。
 先生はハンバーグ定食を注文しました、日笠さんも同じものを注文していますが先生はそこにデザートのフルーツの盛り合わせも注文しました。
 そのうえで、です。日笠さんにこうしたことを言いました。
「ここの食堂安いですね」
「はい、職員用でして」
「だからですか」
「安いです、それにです」
 しかもというのです。
「量が多くて美味しいんですよ」
「そうなんですね」
「ハンバーグも」
 見ればそのハンバーグもです、定食の。
「この大きさです」
「四百、いえ五百グラム位ですか」
「大きさは注文して調整出来ます」
 見れば日笠さんのハンバーグは先生のハンバーグの半分位の大きさです。
「それが出来ます」
「そうですか」
「はい、そうです」
「僕は注文の時一番大きいのって言いましたけれど」
「そうしたでしたね」
「五百がきましたね」
 五百グラムのハンバーグをというのです。
「そちらが」
「それと御飯もです」
「大盛りですね」 
 丼に山盛りです、サラダもかなりありますしお野菜のスープまで付いています。
「これはいいですね」
「はい、それにデザートも注文したので」
「もうお腹一杯ですね」
「そうなりますね」
「食べれば」
 それでというのです。
「これで」
「はい、ただハンバーグでしたら」
 日笠さんはにこりと笑ってです、先生にこうしたことも言いました。
「私も作られます」
「日笠さんもですか」
「今日はここで食べていますがよくお弁当も作ってまして」
「そうなんですか」
「はい、それでお家では晩も大抵は」
「ご自身で作っておられるんですか」
「家事は全部しています」
 ご自身でというのです。
「そうしています」
「それは凄いですね」
「ですから」
 日笠さんは自分の前の席の先生にさらにお話します。
「何でしたら」
「ご馳走して頂けますか」
「そうしますので」
 だからというのです。
「何なりとお話して下さい」
「わかりました、では」
「何を召し上がられたいですか?」
「日笠さんの迷惑にならなければ」
「いえ、迷惑ではないですよ」
 何かもうです、日笠さんは身体を乗り出さんばかりになっています。動物の皆はその日笠さんを見て目で応援しています。
「ですから今度」
「では今度です」
「はい、何を召し上がられますか?」
「ティーセットをお願い出来ますか?」
 先生は全然気付かないでしかもこれといって考えないで答えました。
「そちらを」
「ティーセットですか」
「はい、ティーセット好きですから」
 だからだというのです。
「宜しくお願い出来ますか」
「わかりました、ただティーセットのお菓子は」
「何がいいかですね」
「どういったものがいいですか?」
 かなり親身な感じで、です。日笠さんは先生に尋ねました。
「それで」
「そうですね、クッキーにサンドイッチ、それにケーキでしょうか」
「サンドイッチですか」
「はい、中はフルーツが」
「フルーツお好きですね」
「甘いものも好きなので」
「それではですね」
 こう言ったのでした。
「明日のティータイムには」
「作って頂けますか」
「明日の三時は何処におられますか?」
「明日のその時間は講義がないので」
「研究室ですね」
「はい、そちらにいます」
「わかりました、それならです」
 そう聞いてすぐに答えた日笠さんでした。
「明日の三時に研究室に持ってきます」
「そうしてくれますか」
「はい、ですから」
「わかりました、では」
「三時にはですね」
「楽しみにさせてもらいます」 
 先生はにこりと笑って応えました、そしてです。
 ハンバーグをお箸で切ってからそれをおかずにして御飯を食べてです、日笠さんに今度はこんなことを言いました。
「確かに美味しいですね」
「はい、そうなんです」
「ここの食堂もお料理が美味しいんですね」
「ですから時々ですが」
「日笠さんもですか」
「ここで食べています」
 そうしているというのです。
「それも美味しく」
「そうなんですね」
「ハンバーグ以外のお料理もありますので」
「では機会があれば」
「召し上がって下さい」
「そうさせてもらいます」
 こう応えるのでした、そしてこのお昼はです。
 日笠さんは先生と楽しくお昼を食べました、そのうえでご自身の仕事に楽しく戻ったのですが。
 研究室に戻って講義に行く用意をしている先生にです、動物の皆は笑顔で言いました。
「よかったね」
「今日のお昼よかったね」
「楽しかったね」
「いいお昼だったね」
「うん、そうだね」
 実際にとです、先生も答えます。
「今日のお昼も美味しかったよ」
「美味しかった?」
「先生それだけ?」
「ハンバーグ定食が美味しかっただけ?」
「あとフルーツもっていうの?」
「うん、凄くね」
 気付かないまま答える先生でした。
「よかったね」
「またアウトよ」
「またまたね」
「本当にそれは駄目」
「相変わらずね」
「そこでそうして終わるからね」
「先生は駄目なのよ」
 こう皆で言いますが。
 先生はその皆にです、どうしてかなというお顔で言うのでした。
「どうして駄目かな」
「だからね、そこで美味しいってだけでしょ」
「それだけなのが駄目なの」
「一緒に御飯を食べてね」
「日笠さんとね」
「それで終わりなのがね」
「しかもティーセットも作ってもらうでしょ」
 このことも言う皆でした。
「それで明日も一緒でしょ」
「けれどそれで終わりってね」
「もう失格」
「いつも通りね」
「何が失格で何がいつも通りなのか」
 本当にわかっていない先生です。
「僕にはね」
「全く、だから先生は縁がないんじゃなくてね」
「気付かないのよね」
「それも全然」
「困ったことに」
「ううん、本当にわからないよ」
 どうして皆が呆れているかです、先生には。
「けれどね」
「けれど?」
「けれどっていうと?」
「これから講義だから」
 それでというのです。
「行って来るね」
「ええ、じゃあね」
「行って来てね」
「それで頑張ってね」
「ちゃんと」
「そうしてくるね、じゃあね」
 こうしてです、先生は何も気付かないまま講義に行くのでした。お仕事はちゃんとする先生でした。そして晩御飯の時は。
 トミーが作ってくれたカレーを見てです、そのトミーに尋ねました。
「今日のカレーはあれだね」
「はい、この神戸のしかも」
「長田区のカレーだね」
「八条町のある」
 まさにそこのというのです。
「カレーです」
「ぼっけカレーだね」
 見ればお肉はすじ肉でじっくりと煮られています。
「それにしたんだね」
「はい、先生が相撲部の監督さんをしておられるので」
「そうそう、力士さんのカレーはね」
「すじ肉ですよね」
「そうなんだよね」
 力士さん達のカレーもというのです。
「ぼっけカレーも食べてるよ」
「まさにこのカレーもですね」
「そうなんだよね」
「すじ肉はかなり煮込まないといけないですけれど」
 トミーはぼっけカレーを動物の皆にも出しながらお話しまあす。
「それでもなんです」
「美味しいよね」
「しかも安いんですよ」
「すじ肉だからね」
「はい、ですからいいカレーです」
「そうだよね」
「カレーは栄養を摂りやすいですけれど」
 そのカレーの中でもというのです。
「特にです」
「いいよね」
「僕も大好きですよ」
「しかも今日は辛さ抑え目ね」
 ガブガブはそのカレーを食べてから言いました。
「甘口ね」
「トミーって結構辛口のカレーが多いけれどね」
 チーチーはトミーが作るカレーのことも言います。
「今日はそっちね」
「甘口もいいよね」
 トートーはそちらのカレーも好きなのです。
「こちらも」
「ええ、甘口は甘口でね」
 ポリネシアはトートーに応えました。
「いいのよね」
「カレーライスはどれも美味しいよね」
 ホワイティはカレーライス自体をいいとしています。
「甘口も辛口も」
「そして中に何が入っていても美味しいよ」 
 ダブダブもこう言います。
「そう思うと凄いお料理だよね」
「凄いっていうか」
 こう言ったのはジップです。
「万能のお料理の一つかも」
「何を入れても美味しい」
「そうだからかしら」
 チープサイドの家族は一粒一粒カレールーの色になっている御飯を見ています。
「カレーライスは凄い」
「そうなるのかしらね」
「すじ肉でも美味しいしね」
「辛口でも甘口でもね」
 オシツオサレツのお皿は二つです、頭が二つなので。
「そう考えるとね」
「カレーは偉大だね」
「それじゃあ今日はこのぼっけカレーを食べて」
 最後に言ったのは老馬です。
「寝ようね」
「うん、ただカレーライスもね」
 先生はいただきますをしてから言いました。
「力士さんにいい食べものだね」
「栄養がたっぷり入ってるからですね」
「うん、そうだよ」
 その通りとです、トミーにも答えます。
「だからね」
「確かにそうですよね」
「力士さんはちゃんこ鍋だけれど」
「カレーライスもいいんですね」
「そちらもいいね」
「じゃあこのぼっけカレーもですね」
「そうだよ、いいと思うよ」
 見れば中にはすじ肉だけでなく人参や玉葱、ジャガイモも一杯入っています。しかもお野菜もじっくりと煮込まれています。
「このカレーもね」
「そうなんですね」
「うん、実を言えばささみやゆで卵も白身も悪くないんだ」
「力士の人が食べても」
「問題は偏食でね」
 そうしたものばかり食べることはというのです。
「お野菜とかそうしたものもね」
「万全に食べることですね」
「そのことが大事なんだ」
「そうなんですね」
「力士さんに合った食事をまんべんなく食べることが大事だから」
「そういうのばかりじゃ駄目ですか」
「トレーニングもだしね」
 そちらもというのです。
「ウェイトも決して悪くはないけれど」
「そればかりしてるとですか」
「力士さんの身体じゃなくなるからね」
「だから怪我が多かったんですね」
「そうだったんだ」
 まさにというのです。
「そこが問題だったんだよ」
「成程、そうだったんですか」
「偏食、偏った力士さんとは違うトレーニングがね」
「怪我の元になっていたんですね」
「ここでも言うけれど野球選手が格闘家の食事やトレーニングをしても駄目だよ」
 こう言うのでした。
「怪我の元で変な筋肉もついたりして」
「肝心の野球にもですね」
「支障が出るよ」
 そのお話を聞いて動物の皆がカレーを食べながら言いました。
「そうした人いたよね」
「何を思ったのか」
「周りも止めなかったしね」
「逆に持て囃してたみたいだね」
「ああしたことは問題外だよ」
 先生は皆にも言いました。
「野球選手は野球選手のトレーニングをする」
「打って走って守って投げる」
「そうしたトレーニングだね」
「戦うことはしないから」
 格闘技ではないというのです、野球は。
「そうした鍛え方をするのは筋違いだよ」
「食事もね」
「そうした食事にするのも」
「やっぱり筋違いなんだね」
「それも完全な」
「そう、何であの人はそんなことをしたのかな」
 先生は首を傾げてさえしています。
「僕にはわからないよ」
「プロの野球選手なのにね」
「それ位のこともわかってなかったのかしら」
「僕達でもわかることなのね」
「そうしたことが」
「もう全然」
「わかっていないのなら」
 もうその時点でというのです。
「野球をわかっていないってことかな」
「周りもね」
「そんなことを止めないで」
「しかも持て囃すとか」
「おかしいよね」
「そう、そこも変だと思ったよ」
 止めないどころか持て囃した周りにも問題があるとです、先生は言いました。
「どう考えもおかしいのにね」
「マスコミとかね」
「ファンの人とか」
「おかしいことはおかしいって言わないと」
「そうしないと」
「だから最後はああなったんだろうね」
 先生は食べながら首も傾げさせました。
「番長とか言われていい気にもなってたし」
「野球選手なのに」
「番長とかね」
「それもおかしいよね」
「やっぱり野球選手は野球選手」
「番長とかじゃないよ」
「あの、番長って何ですか?」 
 トミーは食べながら先生にこの言葉の意味を尋ねました。一緒にちゃぶ台を囲んでいる先生に対してです。
「それで」
「うん、今はもういないらしいけれど」
「昔はいたんですか」
「そうなんだ、日本の学校にね」 
 番長と言われる人達がというのです。
「不良の子達のリーダーがいてね」
「その人達がですか」
「番長って呼ばれてたんだ」
「そうだったんですか」
「他には副番、外番、若番頭、あと参謀がいたかな」
 昔の学校の不良にはというのです。
「不良グループにね」
「昔の日本には」
「うん、それで不良の格好もね」
 先生はそちらのお話もしました。
「今と違うんだ」
「今は金髪だったり染めてですね」
「荒れた服装にしてるね」
「ロッカーみたいな」
「そうだったけれど昔の日本の不良は詰襟の学生服が長くて」
「応援団ですか?」
 長い詰襟と聞いてです、トミーはこの人達を思い出しました。
「うちの大学や高等部にある」
「うん、彼等の制服を着ていたんだ」
「長ランでしたっけ、あれ」
「そうだよ、あの服を着ていたんだ」
 昔の不良の人達はです。
「短いものもあったよ」
「短い詰襟ですか」
「そっちは短ランといってね」
「面白い名前ですね」
「ズボンは幅が広くてタックのある」
 そのズボンはといいますと。
「ボンタン、ドカンもあったかな」
「ドカンですか」
「ボンタンはズボンの裾が締まっててドカンは広いんだ」
「それも応援団からですか」
「彼等が穿いてるズボンだよ」
 まさにそれだというのです。
「それを穿いていたんだ」
「そうだったんですね」
「髪型はリーゼントやパーマでね」
 先生は髪型のお話もしました。
「女の子はスケ番っていって」
「スケ番ですか」
「こちらはスカートが足を完全に覆う位長かったんだ」
「短くじゃなくて」
「長かったんだ」
 そうだったというのです。
「今はそうした娘はスカート特に短いよね」
「女の子の中でも」
「昔は長かったんだ、セーラー服の丈は短くてね」
「全然違いますね、今と」
「そうだよ、あと白い学生服もあったし」
「白ですか」
「海軍の礼装みたいなね」
 先生はこう例えました。
「ああした詰襟のね」
「それの長ランとかボンタンですか」
「そうしたのもあったよ」
「何か独特だったんですね、昔の日本の不良は」
「うん、番長にしてもね」
「それも日本独自ですね」
「イギリスにも他の国にもないね」
 まさにというのです。
「そうした人達だったんだ」92
「成程、そうだったんですか」
「もういないと思うけれどね」
「かつてはですね」
「そうした子達もいたんだ」
「日本の不良ですか」
「独自のね」
 こうお話するのでした。
 そしてです、先生はトミーにこうも言いました。
「スポーツ選手がそう呼ばれてもね」
「違いますよね」
「あくまで野球選手だからね」
「そう呼ばれてどうなってたんですか、その人」
「得意になってたみたいだよ」
「得意にですか」
「そうね」
「余計に駄目ですね」
 トミーはここまで聞いて思いました。
「それじゃあ」
「そうだよね」
「何かもう本当に」
「そうした間違ったことしたらいけないけれど」
 それでもと言う先生でした。
「基本を守っていたらいいんだ」
「そうしていればですね」
「色々食べてもいいんだよ」
「ささみやゆで卵の白身も」
「そればかり食べたらいけないってことでね」
「力士さんに合ってるものを食べる」
「高タンパク低カロリーが常に正しいとは限らないよ」
 格闘をするにしてもというのです。
「そういうものなんだ」
「ですか、それでなんですけれど」
「それで?」
「練習試合に向けて練習はどうですか?」
「うん、いい感じだよ」 
 先生はトミーの今の質問にも笑顔で答えました。
「そちらもね」
「そうですか」
「誰も怪我をしていなくてね」
「怪我がないからですね」
「それで楽しくやっているからね」
「いいんですね」
「うん、勝敗よりも」 
 先生にとっては試合のそうしたことよりも大事なことがあるのです、それは怪我をしないで楽しくすることと。
「スポーツマンシップを守ることだよ」
「スポーツマンシップも大事ですよね」
「うん、ちゃんとしないとね」
 それこそというのです。
「スポーツじゃなくなるからね」
「それはどのスポーツでもですよね」
「我が国はそれに厳しいね」
「はい、とりわけ」
 トミーは先生の言葉に頷きました、イギリスはスポーツマンシップ発祥の国でありこのことには特に厳しいのです。
「守らないと物凄く軽蔑されますから」
「僕はスポーツはしないけれど」
 それでもなのです。
「スポーツマンシップは大事だろ思うからね」
「人としてですね」
「だからね」
「相撲部の人達にもですね」
「このことも言っていたんだ」
 それこそいつもです。
「さもないと只の暴力になるから」
「お相撲は」
「うん、日本人もスポーツマンシップには厳しいけれど」
 イギリスと同じ位です。
「中には酷い人もいるからね」
「何処でもそうした人はいますね」
「剣道をやってるのに竹刀を蹴飛ばしたり生徒を床で背負い投げにする先生とかね」
「そうした人はスポーツしたら駄目ですよね」
「絶対にね」
「竹刀は剣道では凄く大事ですから」
「そんなものを蹴飛ばす人なんてね」
 それこそです、先生から見ても。
「剣道をする心が備わっていないよ」
「スポーツマンシップが」
「そんな人はスポーツ自体したらいけないよ」
 先生は強く言いました。
「実際にね」
「そうですよね」
「心から思うよ」
「全くですよね」
「そうしたことが絶対にない様に」
 先生の強い言葉は続きます。
「僕も皆にくれぐれもと話しているんだ」
「そういうことですね」
「心からね、だから練習試合でも」
 その時もというのです。
「そのことを言うし絶対にない様にするよ」
「監督としてですね」
「うん、絶対にね」
 穏やかですが強い声です、その声で言いながらです。先生は練習試合に向けて部活の皆と一緒に頑張るのでした。



日笠さん、久しぶりの登場のような気がするな。
美姫 「本当ね。で、先生は相変わらずね」
だな。この件になると途端に鈍いというか。
美姫 「まあ、今は相撲部でちょっと忙しいかもしれないしね」
そうなのかな。まあ、もうすぐ試合みたいだが。
美姫 「一体どうなるかしらね」
次回も待っています。
美姫 「待っていますね〜」
ではでは。



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