『ドリトル先生の名監督』




                 第五幕  先生の指導

 先生が相撲部の監督になったと聞いてです、トミーはお家で驚いて言いました。丁度彼が大学からスーパーで晩御飯のお買いものを済ませて帰ってきた時でした。
 トミーは本当に驚いてです、こう先生に言いました。
「そんなことはじめてですよね」
「僕がスポーツの監督になることはね」
「はい、これまで色々なことがありましたけれど」
 それでもというのです。
「そうしたことは」
「うん、本当にはじめてだよ」
「先生とスポーツは」 
 それこそとです、トミーも言います。
「全く縁がない」
「そうしたものだね」
「これまでそう思っていました」
「僕もだよ」 
 先生自身もというのです。
「そうしたことはね」
「そうですよね」
「けれどね」
「決まったんですね」
「相撲部の部員さんにお願いされてね」
 そうしてというのです。
「引き受けたよ」
「そうですか、じゃあ」
「明日からあちらにも顔を出すよ」
「そのことはわかりました、ですが」
 トミーはあらためて先生に尋ねました。
「先生お相撲の経験は」
「観戦はあるけれどね」
「ルールはご存知でもですね」
「うん、実際にしたことはね」
 それこそというのです。
「ないよ」
「そうですよね」
「というか格闘技全体がね」
「されたことないですよね」
「一度もね」
 それこそなのです。
「僕はスポーツは苦手だけれど」
「その中でも格闘技は」
「そう、人を殴ったり蹴ったりすることはね」
「無縁のお話ですね」
「スポーツだけれどね」
「苦手なんてものじゃないですね」
「ボクシングもね」
 こちらのスポーツもというのです。
「したことはないよ」
「そうですよね」
「うん、格闘技も必要だけれどね」
 しなくても否定はしないのです。
「僕も観ることは観るし」
「そうだね」
「そう、それに暴力はね」
「そもそも格闘技ですらないですね」
「そう、格闘技はルールの中で行われるものだけれど」
「スポーツマンシップを守って」
「暴力は違うよ」
 断じてという言葉でした。
「それはね」
「先生は本当に暴力を否定されますね」
「何があってもね」
「そうですよね」
「ましてやね」
 さらに言う先生でした。
「暴力を行う人は紳士かな」
「紳士はそんなことしないですよね」
「そう思ってるからね」
 だからというのです。
「そうしたことは絶対にしないよ」
「それが先生ですね」
「紳士でありたいし」
 それにというのです。
「相手が痛い」
「傷付きますね」
「だからしないんだ」
「先生はですね」
「絶対にね、そうしているんだ」
「先生は誰にも暴力を振るわない」
「そうしているよ」
「ですね、では監督になられても」
「しないよ」
 暴力を振るうことはというのです。
「絶対にね」
そうして監督をされていきますね」
「そうしていくよ」
「わかりました」
 確かな顔で応えた先生でした。
「じゃあ頑張って下さい」
「そうしていくよ」
「それじゃあね」
 こうしたことをお話してでした、先生は。
 あらためてです、トミーに尋ねました。
「それで今夜だけれど」
「はい、晩御飯ですね」
「晩御飯は何かな」
「今日は海老フライですよ」
「あっ、それなんだね」
「はい、それとキャベツとレタス、プチトマトのサラダに」
 トミーは先生にさらにお話します。
「あとお豆腐と若布のお味噌汁、他にはお漬けものもあります」
「お着けものもなんだ」
「白菜や胡瓜、茄子の」
「ぬか漬けかな」
「はい、そうです」
 そちらの漬けものというのです。
「御飯もありますので」
「お漬けものいいよね」
「あれもかなり美味しいですよね」
「うん、お漬けものもね」
 それもというのです。
「あれもね」
「先生最近お漬けものも好きになってますね」
「うん、梅干も好きでね」
「それで、ですね」
「一口食べたんだ、茄子の漬けものを」
 それをというのです。
「それであまりにも美味しかったからね」
「好きになったんですね」
「そうなんだ、お茶漬けにしてもいいよね」
「はい、合いますよね」
「お茶漬けもね」
 この御飯にお漬けものやその他にその人の好きなものを乗せて熱いお茶をかけて食べるものについてもです、先生は言うのでした。
「いいよね」
「最初は何これって思いましたけれど」
「うん、日本人はこうしたものも食べるんだってね」
「思いましたけれど」
「美味しいよね」
「はい、あちらも」
「それも食べてね」
 それでというのです。
「お漬けものも好きになったんだ」
「そうだったんですね」
「うん、じゃあお漬けものも楽しんで」
「そうしてですね」
「食べようね、今日も晩御飯も」
「そうしましょう」
 トミーも笑顔で応えます、そして今日の晩御飯を実際に楽しんでお風呂にも入ってです。それからはくつろいでお休みとなりました。
 次の日はです、先生はいつもよりずっと早くにお家を出て学園に向かいました。その先生に一緒に登校する動物の皆は尋ねました。
「どうしてこんなに早いの?」
「普段よりもずっと」
「お相撲の稽古でだと思うけれど」
「また随分と早いね」
「力士さん達は朝早くからなんだ」
 それこそというのです。
「稽古をするからね」
「だからなんだ」
「先生も朝早く起きてなんだね」
「稽古に出るんだね」
「監督として」
「そうだよ」
 こう皆に答えます。
「今からね」
「まあ先生お寝坊さんじゃないけれどね」
 トートーがその先生に言います。
「別にね」
「けれど今日はまた早いね」
 老馬は先生のすぐ横を歩いています。
「普段よりもずっと」
「いや、こんなに早く起きるのは」
 ダブダブも一緒にいます。
「僕久しぶりだよ」
「早起きは三文の徳っていうわね」
 ガブガブは日本に昔からある諺を出しました。
「これはいいことかもね」
「うん、朝早く行くのも」
 ホワイティは通学路を見回しています、そろそろ学校が見えてきています。
「いいものだね」
「この朝の爽やかな雰囲気」 
 チーチーはその雰囲気を楽しんでいます。
「悪くないね」
「朝はいいものだよ」
「一番素敵な時間よ」
 チープサイドの家族は雀なので朝が大好きです、それで他の皆よりもさらに上機嫌になっていてお話をしています。
「この心地よい日差しを浴びると」
「もうそれだけで元気になるわ」
「そしてこれからね」
 ポリネシアは先生に言うのでした。
「朝稽古に出るのね」
「先生はお相撲はしないけれど」
 ジップもこのことはよくわかっています。
「監督として出るんだね」
「では先生の監督としてのはじめての仕事にね」
「今から出ようね」
 オシツオサレツは二つの頭の目をぱっちりとさせています。
「そして僕達もね」
「監督としての先生を見せてもらうよ」
「監督といってもね」
 先生は皆に首を少し傾げさせてから言いました。
「本当に見ているだけだね」
「お相撲をしたことはないから」
「どうしてもだね」
「そうなってしまうんだね」
「それは仕方ないんだね」
「うん、ただ怪我をしないようにするにはね」
 そうしたことはというのです。
「出来るよ」
「そっちはだね」
「ちゃんと出来るんだね」
「先生にしても」
「しっかりと」
「うん、僕が出来るのはそれだけだよ」
 監督として先生が出来ることはというのです。
「お相撲の稽古の仕方も頭の中にあるから」
「つまり理論はあるんだね」
「お相撲の理論は」
「先生の頭の中にも」
「そうなんだね」
「知識としてね、それに僕は医者だから」 
 お仕事のことからも言うのでした。
「怪我がない様に注意して、そして」
「若し怪我人が出たら」
「その時はだね」
「しっかりと手当をする」
「そうするんだね」
「うん、その為にもね」
 そうした立場としてというのです。
「やっていくよ」
「そうなんだね、じゃあね」
「先生頑張ってね」
「僕達も本当に出来ることならするから」
「監督としての務めを果たしてね」
「そうさせてもらうよ、じゃあ行こうね」
 その学校にです、こうお話してでした。
 先生は相撲部の部室に行きました、部室に入るとです。 
 皆もう柔軟をはじめていました、先生は皆の汗のかき具合を見て言いました。
「これからだね」
「はい、これからです」
「稽古はじめます」
「柔軟をして」
「そしてです」
「どういった稽古をするのかな」
 先生はその稽古の内容を尋ねました。
「一体」
「走ります」
「そうします」
 その稽古をするというのです。
「先生に言われた通りにしてます」
「ランニングもね」
「もうこれは基本ですよね」
「スポーツをするならね」
 それこそとです、先生も答えます。
「外せないよ」
「そうですね、ですから」
「ランニングもだね」
「これまでよりずっと走ってます」
 そうしているというのです。
「勿論四股も踏んでます」
「足腰を鍛えてるんだね」
「そうしています」
「うん、上半身も大事だけれど」
「スポーツをするのなら」
「まずは下半身だよ」
 上半身よりもというのです。
「踏ん張らないといけないからね」
「そういうことですね」
「うん、それじゃあね」
「走ってきます」
「じゃあ僕は」 
 ちなみに先生は走ることはしません、走っても普通の人が歩く位の速さしかありません。しかも着ている服はいつも通りスーツです。
「どうしようかな」
「自転車に乗ったら?」
「そうしたらどうかな」
 ここで言って来たのは動物の皆でした。
「どうかな、それで」
「そうしたらどう?」
「先生も自転車乗れるしね」
「自転車に乗ったらこの人達にも追いつけるよ」
「しかも運動になるし」
「スーツでも乗れるしね」 
 自転車にというのです。
「だからどうかな」
「先生はそれでついてったら?」
「先生はね」
「そうしたらどう?」
「そうしようかな、じゃあ」
 ここまで聞いてです、そしてでした。
 先生は相撲部の皆にです、こう尋ねました。
「僕は自転車で行っていいかな」
「はい、お願いします」
「先生スポーツ出来ないそうですしね」
「それなら自転車でお願いします」
「それで一緒に来て下さい」
「そうさせてもらうね」
 こうしてです、先生は自転車で相撲部の皆のランニングについていきました。そのランニングはといいますと。
 動物の皆も一緒ですが彼等は駆けたり飛びながら言います。
「いや、いいね」
「皆速いね」
「この体格でこの速さって」
「凄いね」
「うん、何かね」
 先生はちょっと苦労して皆についていく為に自転車を漕ぎながら言います。
「皆かなり速いね」
「というか先生がね」
「何か遅くない?」
「自転車なのに」
「結構以上に」
「だから僕はスポーツはね」
 どうしてもとです、先生は困りながら言うのでした。
「苦手だから」
「うん、それは知ってるけれど」
「けれどね」
「先生苦手過ぎるよ」
「自転車には乗れても」
「そんなに辛い?」
「これ位じゃ何でもないんじゃ」
 皆は先生に聞きます。
「普通はそうだよ」
「というか先生スポーツ苦手過ぎだよ」
「幾ら何でも」
「いや、本当にね」
 それこそと答える先生でした。
「僕昔からスポーツはね」
「全然なんだね」
「それこそ物心ついた時から」
「スポーツはどれも出来ない」
「そうだったんだ」
「まあそれは僕達も知ってるけれどね」
 動物の皆も本当によくわかっていることです。
「確かに先生スポーツ全然駄目だから」
「学問は出来てもね」
「ことスポーツについてはね」
「全然駄目だからね」
「どんなスポーツでも」
「そうなんだ、体育はいつも駄目だったよ」
 学校の授業のそちらもです。
「出来たことないよ」
「それで自転車もなんだ」
「こんな調子なんだ」
「今漕いでいても」
「辛いんだね」
「ちょっとね」
 それ程ではないにしてもというのです。
「辛いよ」
「ううん、歩くことは出来ても」
「そんなに運動不足じゃないのに」
「それでもなのね」
「運動をするとなると」
「やっぱり苦手なのね」
「そうなんだよね、自転車もスポーツだからね」
 実際にそうした競技もあります、自転車も立派なスポーツなのです。
「今は辛いよ」
「ううん、自転車位と思っていたら」
「先生にとっては違うんだ」
「僕達はこれ位平気だけれど」
「走っていてもね」
「これ位はね」
「飛んでいてもね」
 皆の場合はそうです、ですが。
 そうしたことをお話しながらも先生は自転車で皆の朝のランニングについていきます、ちょっと苦労しながら。
 そしてそのランニングの後で先生は大きく深呼吸をしてでした。 
 自転車から降りてです、こんなことを言いました。
「朝から一週間分の運動をしたかな」
「えっ、これほんの準備体操ですよ」
「ちょっと走っただけですよ」 
 相撲部の皆は先生の言葉に驚いて突っ込みを入れました。
「十キロ位の」
「それ位本当に準備体操ですよ」
「これから一日の稽古はじめますよ」
「色々な稽古を」
「そうしますよ」
「十キロも走って」
 先生は皆の言葉に驚いて言うのでした。
「それからはじめるって」
「はい、そうです」
「いつもそうしていますよ」
「まずは十キロです」
「ほんの」
「ううん、凄いね」
 そう聞いてでした、先生は本当に驚きました。
 そしてです、こんなことを言うのでした。
「僕なんか一キロも走られないから」
「こうしたことも毎日していますと」
「出来る様になります」
「体力もついて」
「十キロ走ってそれからの稽古も」
「そうなんだね、じゃあ今から土俵に戻って」
 先生は皆にあらためて尋ねました。
「お相撲の稽古だね」
「そうです、四股も踏んで」
「お相撲の稽古します」
「それでまた走ります」
「そっちもします」
「また走るんだね」
 先生はまたびっくりしました、皆の言葉に。
「そうするんだね」
「はい、雨なら雨で雨天用のグラウンドでランニングしますし」
「晴れならそうしています」
「外で走っています」
「とにかく走ることはしています」
「凄いね、僕走ることも苦手だから」
 やっぱりこちらも苦手な先生でした。
「とんでもない位運動するんだね」
「大学の運動部ですとこれ位しますよ」
「真面目に部活していましたら」
「まあこれ位はです」
「本当に普通ですよ」
「そういえばそうかな」
 先生はここでご自身の学生時代を思い出した、その時大学のラグビー部の人達を思い出すとそれこそでした。
「ラグビー部の皆凄かったね」
「先生イギリス人でしたね」
「じゃあまさにラグビーの本場ですよね」
「ラグビーも凄く身体動かしますからね」
「走ってぶつかって」
「相撲並ですよね」
「身体つきは違うけれどね」
 力士さんとラガーマンの人達はです、やっぱりスポーツが違いますとどうしても身体つきが違ってくるのです。
「彼等も毎日走って走ってぶつかって」
「戦車みたいにですね」
「そうなってるんですね」
「君達も戦車だけれど」
 力士さん達もと言う先生でした。
「彼等もね」
「やっぱりですよね」
「戦車ですよね」
「戦車みたいに頑丈で大きい」
「そんなのですね」
「そうだね、それだけ走って稽古をしているから」
 ラグビーの場合はトレーニングです。
「そうした体格になるんだね」
「徐々にそうなっていきますね」
「十キロ走られる体力もつきますよ」
「それからの稽古が出来る体力も」
「自然と」
「やっぱり継続は力なりだね」
 先生も頷くのでした、相撲部の皆の言葉に。
「続けていくと体力もつく」
「そうです、だから先生も」
「続けていけばです」
「十キロ走られますよ」
「それからの稽古も出来る様になりますよ」
「いや、僕はいいよ」
 先生は相撲部の皆の申し出に少し苦笑いになって応えました。
「スポーツは本当に苦手だから」
「ああ、だからですか」
「走ることはですか」
「最初からですね」
「したくないんですね」
「今の自転車でもハードだったからね」
 先生にとってはです。
「後で筋肉痛にならないか不安だよ」
「流石にこれ位じゃならないですよ」
「十キロ位自転車で走っても」
「それ位じゃです」
「何でもないですよ」
「だといいけれど、じゃあ次の稽古も」
 先生は監督として言いました。
「見せてくれるかな」
「はい、お願いします」
「是非」
「それじゃあね」
 先生も応えてです、こうしてでした。
 皆の稽古を見ていきます、とはいっても先生は穏やかなお顔で見ているだけです。その他には何もありません。
 それで、です。稽古の後研究室に入るとです、動物の皆が先生にこうしたことを言いました。
「自転車で一緒に走ってね」
「稽古も見守っていたけれど」
「先生何も言わないね」
「ただ見ているだけだったね」
「本当にそれだけだったわね」
「うん、やっぱり僕は実際にお相撲をしたことがないからね」
 だからと答える先生でした、水分補給に冷蔵庫から牛乳を出して自分だけでなく皆にもそれを差し出しながら。
「何かを教えることはね」
「稽古や食事の仕方は別にして」
「具体的に稽古の何処がいいか悪いかは」
「また別なんだね」
「言えないんだね」
「うん、それにそれは主将や四回生の人達がしてるから」
 だからというのです。
「大丈夫だと思うしね」
「けれど稽古や食事の仕方を間違えていたよ」
 こう言ったのはホワイティでした。
「それで具体的なことを間違えないから」
「そのことは確かに不安になるわね」
 ポリネシアは牛乳、自分のお皿を飲みつつホワイティに応えました。
「ああしたことがあったから」
「そうだよね」
 ジップもポリネシアの言葉に頷きます。
「そう言われると」
「そこ大丈夫かな」
 トートーも首を傾げさせます。
「あの人達に任せて」
「そこはどうなのかしら」
 心配性というかお節介なところのあるガブガブも言います。
「正しい稽古を間違ってしていない?」
「けれど先生はそれを確かめられないし」
 ダブダブも言います。
「そして言うことも出来ない」
「果たしてどうすべきかな」
「今回はね」
 チープサイドの家族も言うのでした。
「何かいい知恵があるかな」
「具体的な」
「それが問題だけれど」
 老馬も考えるお顔になっています。
「果たしてどうしたものか」
「先生何かある?」
「こうした時こそ先生の知恵が必要かも知れないよ」 
 オシツオサレツは先生に尋ねました。
「一体ね」
「どうしたものか」
「そうだね、ここはね」
 先生は考えるお顔になってです、こう言いました。
「本かな」
「本?」
「本っていうと?」
「それ何なの?」
「どうしたの?」
「いや、お相撲の本を色々と買って」
 そうしてというのです。
「相撲部の皆に読んでもらおうかな」
「具体的な稽古の本も」
「それをなんだね」
「それで相撲部の皆にチェックしてもらうんだ」
「その本を読んでもらって具体的に」
「そうしてもらうんだ」
「そう考えたけれど」
 先生はまた皆に言いました。
「どうかな」
「つまり本を読んで自習だね」
「時分で勉強するんだね」
「それで相撲部の人達にわかってもらう」
「具体的な稽古の中身も」
「自分達の稽古の何処が問題かを」
「うん、それと古今の力士さんのことも勉強してもらって」
 そしてというのです。
「そのことも活かしてもらおうかな」
「そうするんだね」
「ここは」
「お相撲の本を買うんだ」
「そしてそれを読んでもらうんだ」
「そうしようかな、それに本に」
 さらに言う先生でした。
「インターネットでもね」
「お相撲のことを調べて」
「それを相撲部の皆にも見てもらうんだ」
「そのうえで勉強してもらう」
「そちらもしてもらうんだね」
「僕も調べてね、そういえば」
 先生の頭が動きます、やっぱり本とかこうしたことになると先生の冴えは凄いです。学問となると本当に頼りになります。
「大学の図書館にもお相撲の本はあるね」
「ああ、あそこにもだね」
「お相撲の本あるんだね」
「そうなんだね」
「体育学部の方にもね」
 八条大学のです。
「うちの大学の体育学部は学術面でも充実しているからね」
「近代的なスポーツだね」
「精神論だけじゃなくて」
「スポーツを科学的にも考えている」
「それでなんだね」
「そうした本や論文も沢山持っているから」
 だからというのです。
「そちらもチェックだね」
「そうしてだね」
「相撲部の人達にも勉強してもらう」
「そうしてもらうのね」
「そうしてみるよ」
 実際にというのです、そしてでした。 
 先生は空き時間を使ってそうした本や論文、それにインターネットのサイトやブログを調べていって集めたりまとめてです。
 数日後相撲部の皆にです、そうしたものを紹介して言うのでした。
「これを読んでね」
「そうしてですか」
「僕達で勉強して」
「稽古の何処が間違っているかとか」
「そうしたことをチェックですか」
「そうしてくれるかな」 
 こう言うのでした。
「皆で」
「先生は教えられない」
「だからですか」
「うん、僕は何度も言うけれどね」
 それこそというのです。
「本当にお相撲の経験はないからね」
「だからですね」
「こうしたことはですね」
「僕達で本を読んで」
「そのうえで」
「うん、僕も読んでね」
 勿論先生もというのです。
「勉強するからね」
「そうしてですか」
「一緒に勉強していく」
「そうしていくんですか」
「うん、それで僕も気付いたことがあれば」
 その時はというのです。
「言うかも知れないね」
「そうですか、皆でですね」
「勉強して考えていくんですね」
「そうしていくんですか」
「そうしていったらどうかな」
 先生は相撲部の皆に聞きました。
「ここはね」
「そうですね、それじゃあ」
「それで宜しくお願いします」
「こうしたやり方ははじめてですけれど」
「僕達で勉強していくっていうのは」
 相撲部の皆はここで先生にこれまでの稽古のことをお話しました。
「これまで親方の言う通りにしていましたから」
「そのまましていましたけれど」
「それは、ですね」
「また違うんですね」
「先生は」
「とにかく僕は経験者じゃないから」
 このことを念頭に置いて考えているのでした。
「だからね」
「それで、ですね」
「こうしたことはですね」
「皆で勉強する」
「そうしていくことにしたんですね」
「そうなんだ、じゃあこうしてやっていこうね」
 一緒にお相撲の本を読んだりして勉強してというのです。
 そして実際にでした、先生は皆と一緒にです。
 お相撲の本を読んだりサイトを観て勉強していきました、映像を観ることもしました。皆はこのことに驚いて言うのでした。
「いや、これは」
「これまでと全然違いますね」
「僕達これまでは身体動かすばかりで」
「こうしたことはです」
「してこなかったです」
「本を読んだりDVDや動画サイトを観たり」
「そうしたことは」
 こう先生に言うのでした、勉強の中で。
「いや、凄いですね」
「こうした稽古の仕方があるんですね」
「しかしこれは凄いですね」
「面白いですね」
「しかも実際に勉強になります」
 お相撲のというのです。
「何かと」
「僕のいいところと悪いところがわかります」
「何か気付いたこともあります」
「やってみたい技とかも発見しました」
「うん、お相撲の基本はしっかりと守って」
 このことはしっかりと言う先生でした。
「そしてね」
「そうしてですね」
「そのうえで勉強していく」
「基礎を守って」
「そうしたうえで」
「お相撲の稽古と食事で」
 このことはそのままで、というのです。
「勉強していこうね」
「ですね、本を読んで」
「自分達で勉強」
「そうしたやり方もありますか」
「先生みたいなやり方も」
「あとね」
 さらに言う先生でした、皆でビデオルームで実際にお相撲の映像それも横綱同士の試合のそれを観ながらです。
「皆で話をすることも大事かな」
「ミーティングですか」
「それもですか」
「スポーツのチームではあるよね」 
 先生は皆にこのことを尋ねます。
「文化系の部活でもあるし」
「はい、あります」
「うちでもしています」
「ミーティングは」
「こちらもしています」
「それをもっとしようかな」 
 ミーティングをというのです。
「どうかな、それでお互いの長所と短所を指摘し合う」
「そしてですね」
「伸ばしていく部分やなおしていく部分をチェックし合う」
「そうしていくんですね」
「そうしたこともするんですね」
「そうも考えたけれどね」
 それをいうのです。
「どうかな」
「そうですね、じゃあ」
「先生の言われる通りにです」
「ミーティングもしてみます」
「その時間を増やしていきます」
「そうしようね」
 こうしてでした、相撲部の皆は先生の言う通りにです。
 勉強をしていってミーティングの時間も増やしていきました。すると相撲部の皆はかなり真剣に学んでいってです。
 自分達で自主的に長所や短所、そして的確な稽古や食事の仕方を学んでいってです。稽古をしていきました。
 そして先生にです、こう言うのでした。
「いや、斬新ですけれど」
「お相撲の稽古かな、って思う部分もありますけれど」
「凄く勉強になります」
「頭も使いますし」
「というか頭ですね」
「頭使うべきなんですね」
「うん、僕は本当にね」
 ここでもこう言う先生でした。
「スポーツは全部駄目だけれど」
「学問はですね」
「そちらから考えるとですね」
「やり方とかを考えられる」
「そうなんですね」
「だからね、僕なりにね」
 先生のやり方でというのです。
「考えてみて皆に話してみたけれど」
「確かに学問的ですね」
「先生のやり方は」
「体育学部から見ても」
 体育学部に所属している部員の人も言います。
「かなり近代的で」
「しかも科学的で」
「そうしたやり方ですね」
「しかも自主的で」
「どういったやり方が一番正しいかはわからないけれど」
 それでもと言う先生でした。
「僕は僕の考えた僕のやり方をね」
「僕達にですね」
「話してくれたんですね」
「そうなんですね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「このやり方でいってみるけれどね」
「わかりました」
「じゃあお願いします」
「先生のやり方で監督お願いします」
「それで」
「うん、じゃあちゃんこも食べようね」
 先生はにこりと笑ってこちらのこともお話しました。
「鍋をね」
「お野菜たっぷり入れてますよ」
「それで鶏肉も沢山入れてますから」
「茸もお豆腐も」
「今日もかなりあります」
「そういえばお野菜とかお豆腐は」
 ここでまた言った先生でした。
「農学部からだね」
「はい、よく出せない野菜貰ってます」
「売りものにならない形とかの」
「ジャガイモとかもそうです」
「あと葉っぱなんかも貰ってます」
「そうそう、大根とかの葉っぱもね」
 先生は葉っぱと聞いてその普通は見向きされないもののお話もしました。
「実はね」
「美味しくて栄養があって」
「中々侮れないですよね」
「あれもまた」
「そうですよね」
「そうなんだなよね」
 こう相撲部の皆に言うのでした。
「大根の葉っぱとか他のね」
「お野菜の捨てる部分」
「そうしたのもですよね」
「実は、なんですよね」
「栄養もあるんですよね」
「ああしたものも食べて」
 そしてというのです。
「立派な身体が出来るんだよね」
「はい、そうです」
「やっぱり食べてこそなんです」
「栄養のあるものたっぷりです」
「バランスよく」
「それでだね」
 また言った先生でした。
「農学部の方からだね」
「はい、いらない野菜貰ってます」
「このこと実は他の部活もなんですよ」
「運動系の部活は何処も食べますからね」
「うちやラグビー部は極端でも」
 それでもというのです。
「皆よく食べますからね」
「食べるのにもお金かかりますから」
「うちの大学お金は潤沢でも」
「やっぱり節約した方がいいですから」
「どうしても」
「その方がいいですからね」
「そうだね、まして農学部のお野菜はね」
 先生はこのことからお話します。
「売りものになるのは形のいいお野菜ばかりでね」
「はい、出荷出来るのは」
「そういうのだけで」
「他のお野菜は出荷出来ないですから」
「形が少しでも悪いと」
「そのこともどうかと思うけれど」
 先生は首を傾げさせて微妙な表情になって言うのでした。
「形が悪いと出荷出来ないのは」
「本当に少しでもですよ」
「形が悪いと出荷されないんですよ」
「あとほんのちょっと傷が付いたら」
「それでもアウトですし」
「どのお野菜もね、そしてそうした形の悪いお野菜をね」
 先生はさらに言いました。
「君達がだね」
「はい、農学部からも貰ってますし」
「高等部の農業科からも貰ってます」
「それと八条グループの生産部門からもです」
「かなり貰ってますね」
「出荷されないお野菜は加工されるのもあるけれど」
 そうして食べられているのです、やっぱり無駄には出来ないからです。
「それでも余るものは」
「はい、僕達がです」
「貰ってます」
「あとその大根の葉っぱとかも」
「そういうのも貰ってます」
 本来は捨てる部分もというのです。
「こういうのも食べてます」
「お肉とかも出荷されないもの結構貰ってます」
「そうしてお金を節約しています」
「無駄には出来ないですから」
「いいことだね、お金はあってもね」 
 それでもと言う先生でした。
「節約しないとね」
「無駄使い出来ないですからね」
「どうしても」
「だからですね」
「そこはしっかりとして」
「お金にも気をつけています」
「そうしています」
 相撲部の人達もお話します、そして。
 先生もそのちゃんこ鍋を食べるのでした、すると。
 そのお鍋には色々なお野菜が入っています、形は確かにお店で売られているものとは違いますがそれでもです。
 かなり美味しいです、それで先生も食べて笑顔で言います。
「うん、いけるね」
「はい、どんどん食べて下さい」
「本当にごっつあんですって感じで」
「食べて下さいね」
「是非」
「そうだね、お肉もね」
 先生はそちらも食べています、そのお肉はといいますと。
「鶏肉だね」
「鶏肉か豚肉ですね」
「そうしたお肉が多いですね」
「それと魚肉」
「魚介類も結構食べますよ」
 そちらもというのです。
「今は鶏肉ですけれどね」
「安いですし貰えることも多いですから」
「よく食べてます」
「ちゃんこ鍋では」
「やっぱり牛肉は少なくなるね」
 先生はこのことも察して言うのでした。
「高めだしね」
「輸入肉ありますけれどね」
「鶏肉と比べると高いです」
「それに貰えることも好きないですし」
「牛肉はあまりちゃんこ鍋には入れないですね」
「というか入れられないです」
 そうなっているというのです。
「いや、本当に」
「牛肉は少なめですね」
「鶏肉が一番多いですね」
「それとお魚なら何でも」
「うちの大学水産学部もありますから」
 八条大学は農学部もあるのです。
「そっちで魚介類貰えたりするんで」
「沢山食べられますよ」
「そっちの方も」
「ソーセージやハムを入れたりもしますね」
「魚肉ソーセージも」
「一杯食べてるね」
 色々な種類の食べものをとです、先生は思うのでした。
「その都度その都度なんだね」
「そうです、あるものを色々入れますね」
「まあ寄せ鍋ですね」
「そうしたのを食べてます」
「今みたいに」
「そうなんだね、じゃあその色々なものを入れたお鍋を食べて」
 そしてと言う先生でした。
「強くなろうね」
「はい、先生も」
「そうなりましょう」
「いや、僕は強くならないよ」 
 先生は笑って相撲部の皆の申し出は断りました。
「そういうことには興味がないしね」
「ああ、スポーツはですね」
「先生されなかったんですね」
「そうですね」
「だからですね」
「うん、ただ健康にはなるから」
 栄養があるものを沢山食べてです。
「健康になるよ」
「はい、頑張って食べて健康になって下さいね」
「やっぱり人間健康が第一ですからね」
「先生はお医者さんですしね」
「やっぱり健康第一ってお考えですね」
「そうですよね」
「うん、食べてそうしないとね」 
 それこそと言う先生でした。
「だからこうしたものをね」
「どんどん食べる」
「そういうことですね」
「特定のものばかりじゃなくて」
「色々なものをたっぷり食べる」
「そうすべきですね」
「うん、じゃあ皆で一杯食べよう」
 先生は音頭を取る様に言いました。
「これからね」
「はい、是非」
「こうして食べて」
「そしてですね」
「強くなりますよ、僕達」
「怪我をしない身体にもなって」
 相撲部の皆も応えます、こうしたことをお話しながらでした。先生はその相撲部の皆とちゃんこ鍋をお腹一杯食べるのでした。



先生、色々と調べたみたいだな。
美姫 「そうみたいね。教えるからにはね」
うんうん。まあ、自転車に乗ってもあれだったけれど。
美姫 「まあ、仕方ないわね」
今回は最初だったし、特に問題もなかったかな。
美姫 「次はどうなるかしらね」
次回も待っています。
美姫 「待っていますね〜」



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