『ドリトル先生の名監督』




                 第三幕  相撲部

 先生は動物の皆と一緒に大学の相撲部に向かいます、その途中で。
 ダブダブは楽しそうにです、青空の下にある青空のキャンバスの中を歩きながらこんなことを言ったのでした。
「ちゃんこ鍋食べられるかな」
「また食べること?」
 そのダブダブにガブガブが呆れた声で言います。
「全くあんたは」
「だってお鍋って美味しいから」
「確かにお鍋は美味しいね」
「そうだね」 
 チーチーとジップはダブダブのお話のこの部分には同意でした。
「おねだりはしないけれど」
「色々なものが一度に食べられてね」
「ちゃんこ鍋はともかくとして」
「相撲部の人達のことね」
 チープサイドの家族は肝心のこの人達のことを気にしています。
「どうして怪我が多いのか」
「それが問題よ」
「怪我の種類は色々っていうけれど」
 トートーは探偵みたいに考えるお顔になっています。
「どうしてかな」
「柔軟とかしてないとか?」
 ポリネシアも考えるお顔です。
「そんな筈ないよね」
「それはないよ」
 ホワイティも言います。
「だって力士さんだからね」
「絶対に柔軟はして」
「身体にいいものをバランスよく食べてるよね」
 オシツオサレツは力士さんの常識からお話しました。
「絶対にね」
「そうしてるよね」
「普通はそうしてるね」 
 老馬も言います。
「それは」
「うん、ただ普通にしている人もいれば」
 先生もいささか探偵さんみたいになっています。
「そうでない人もいるから」
「じゃあうちの相撲部も?」
「普通でないことをしているのかな」
「そうなのかな」
「それで怪我が多いのかな」
「そうかもね、ただね」
 ここでまた言った先生でした。
「一つ気になることはね」
「気になること?」
「というと」
「怪我の種類が多いね」
 このことが気になることだというのです。
「打ち身、擦り傷、捻挫、骨折」
「多いね、確かに」
「ありとあらゆる怪我があるね」
「しかも最近になって多い」
「どうしてなのかだね」
「そう、だからね」
 それ故にというのです。
「それが気になるんだ、だからね」
「まずは相撲部の人達に聞くこと」
「それだね」
「そのことがね」
「気になるから聞く」
「そうするんだね」
「そうするよ、じゃあね」
 こう話してです、そしてでした。
 先生達はその相撲部の土俵のところに来ました、土俵は室内の稽古場にあってそこで部員の人達がまわし姿で稽古をしています。
 その部員の人達のところに来てです、先生はまず挨拶をしました。
「医学部のドリトルだけれど」
「あっ、先生」
「お相撲を見に来られたんですか」
「そうなんですか?」
「いや、違うよ」
 先生は相撲部の人達に笑顔でお話しました。
「君達の怪我が多いから」
「だからですか」
「それで、ですか」
「わざわざ来てもらったんですか」
「今は怪我人はいないですけれど」
「いやいや、怪我の原因を聞きに来たんだ」
 それでというのです。
「今日はここに来たんだ」
「そうだったんですか」
「怪我の原因を聞く為にですか」
「来てくれたんですね」
「そうだったんですね」
「うん、それでだけれど」
 あらためてです、先生は皆に尋ねました。
「君達はどうした稽古をしてるのかな」
「稽古?」
「稽古ですか」
「俺達の」
「それをお聞きになりたいんですか」
「うん、それとね」
 先生は皆にさらに尋ねました。
「何を食べてるのかな」
「ちゃんこをですか」
「どんなちゃんこを食べているのか」
「そのことですか」
「うん、見せてもらいたいし教えて欲しいんだ」
 先生は真面目な顔で言います。
「是非」
「はい、それじゃあ」
「お話させて頂きます」
「これから」
「うん、じゃあね」
 こうしてでした、先生は相撲部の皆からお話を聞いてです。
 実際の稽古や食べているちゃんこを見ました、その結果。
 先生は困ったお顔になってです、こう言いました。
「それじゃあね」
「怪我が多いですか」
「そう言われるんですか」
「怪我が多いのも当然」
「そうだと」
「うん、まず柔軟をしていないね」
 稽古の前と後にです。
「それがよくないよ」
「ちょっと最近何か」
「それがいいと思いまして」
「柔軟よりもです」
「ウェイトトレーニングの方が」
「筋肉をつけようと」
「いや、筋肉よりもね」
 先生は学者として言うのでした。
「柔軟をしっかりした方がいいから」
「それよりもですか」
「もっとですか」
「ウェイトトレーニングよりも」
「そっちですか」
「というかウェイトトレーニングよりも」
 さらにというのです。
「本来の相撲の稽古の方がいいよ」
「そっちの方がなんですね」
「四股とかの方がですか」
「筋肉がつくんですね」
「そうだよ」
 温厚ですが確かなお顔で、です。先生は皆にお話します。
「ウェイトトレーニングといってもあれはね」
「筋肉がつきます」
「それでいいと思っていましたけれど」
「駄目なんですか」
「だから筋肉はね」
 先生はまた言いました。
「相撲には相撲の筋肉はあるから」
「だからですか」
「そうしたトレーニングよりもですか」
「本来の稽古の方がいいんですね」
「四股とか」
「そうなんだ、相撲には相撲の稽古があるよ」 
 先生は真顔で言うのでした。
「僕はお相撲はしたことはないけれど」
「いや、先生はスポーツ理論の論文も書いておられましたよね」
 部員の人の一人がここでこのことを言いました。
「そうでしたね」
「まあね」
「スポーツにはそれぞれの筋肉、トレーニングの方法があると」
「医者だからね、僕は」
 だからというのです。
「医学の観点からスポーツを見てね」
「そして書かれましたよね」
「うん、そうしたけれど」
「それならです」
 この部員さんは言うのでした。
「わかります」
「僕がお相撲をしたことがなくてもだね」
「お医者さんは人体に詳しいですからね」
 だからだというのです。
「そのお医者さんのお話なら」
「じゃあ僕の言うことは信じてくれるかな」
「それに先生は嘘を言わないです」
 このことは学園の中でとても有名なことです、先生はただ学識や教養があるだけでなくとても誠実な人なのです。
 それで、です。見ると相撲部の人達もお話を聞いています。先生のそれを。
「立派なお医者さんですから」
「それも真面目な」
「ならです」
「先生の言われることならです」
「的確です」
「僕の話を信じてくるんだね」
 先生も皆の返事に笑顔になるのでした。
 そしてです、こうも先生に言うのでした。
「当然です」
「先生みたいないいお医者さんいないですから」
「そうした人のことを聞かなくて誰の言うことを聞くんですか?」
「ならです」
「是非お話下さい」
「そう言ってくれるなら続けさせてもらうね」
 後ろに動物の皆を連れたうえで、です。先生はさらにお話しました。
「柔軟には気をつけて」
「じっくりとですね」
「試合前と試合後に」
「身体をほぐす」
「丹念にですね」
「まずは準備体操をして身体を温めるんだ」
 ほぐすだけでなくというのです、その柔軟体操で。
「そしてね」
「それからですね」
「お相撲の本来の稽古をする」
「ウェイトトレーニングよりも」
「そちらの方をですね」
「してはいけないというんじゃないよ」
 ウェイトトレーニングをです、先生はこのことは否定しませんでした。
「けれどね」
「四股とかをですね」
「お相撲本来の稽古を重点に置いて」
「それでお相撲の筋肉をつける」
「そうすべきですね」
「そう、それとね」 
 さらにお話する先生でした。
「食べものだけれど」
「ちゃんこですか」
「それのことですね」
「皆どんなものを食べているのかな」
 このことを確認するのでした。
「君達の中には寮生も多いだろうけれど」
「はい、自宅生もいますが」
「確かに寮生も多いです」
「そこで御飯食べてます」
「そうしてます」
「部活でも食べてるよね」
 先生はこのことも確認しました。
「ちゃんと」
「はい、ちゃんこ食べてます」
「そっちもしっかり食べてます」
「そうしてます」
「それで何を食べてるのかな」
 このことを聞くとでした。
 相撲部の人達は先生にです、こう言いました。
「ゆで卵の白身とか」
「鶏のささみ食べてます」
「あとお蕎麦ですね」
「低カロリー高タンパクです」
「そういうのを食べています」
「ああ、それもね」
 先生はそのメニューを聞いてです、忽ちのうちに眉を曇らせました。
 そしてです、こう皆に言いました。
「よくないね」
「格闘家の食事ですね」
「ゆで卵の白身とかささみとか」
「そういうの駄目ですか?」
「お蕎麦も」
「よくないよ」
 また言った先生でした。
「食事はバランスよくだよ」
「格闘家の食事も駄目なんですか」
「そういうのも」
「力士向きじゃないんですね」
「そう、その格闘家はKー1とかだね」
 先生はすぐにです、その格闘技がどういったものかを指摘しました。
「そうだね」
「はい、そうです」
「そうしたのです」
「強い格闘家さんの食事真似まして」
「鍋から切り替えたんですが」
「鍋の方がずっといいよ」
 先生は断言しました。
「お野菜とお肉、お豆腐も茸も全部沢山入れたね」
「そっちの方がいいんですね」
「お相撲には」
「そうだったんですか」
「そう、同じ格闘技でもそうした格闘技とお相撲は違うんだ」
 このことを指摘するのでした。
「だからね」
「それで、ですか」
「本来のちゃんこ鍋の方がいいんですね」
「そちらの方が」
「低カロリー高タンパクもいいけれど」
 それよりもというのです。
「バランスよくたっぷりとだよ」
「食事はですか」
「そうして食べないといけないですか」
「そうしたのばかりじゃなくて」
「本来のお鍋が一番なんですね」
「それが一番いい身体を作るからね」
 力士としての、というのです。
「ちゃんこ鍋の方がいいよ」
「お野菜もたっぷりと食べて」
「そして色々なお魚やお肉もですか」
「食べるといいんですね」
「茸やお豆腐も」
「そう、何でも好き嫌いなくよく食べる」
 こうも言った先生でした。
「それが一番いいんだ」
「そういうことなんですね」
「いや、近代的にって考えてましたけれど」
「お相撲も」
「違うんですね」
「確かにどんなスポーツも時代によってトレーニングや食事が変わるよ」
 お医者さんとして言うのでした。
「けれどね」
「お相撲にはですね」
「お相撲のやり方があるんですね」
「要するにそういうことですね」
「そう、他の格闘技のトレーニングや食事をしても」
 お相撲のものではないからです。
「何にもならないんだ」
「かえって、ですね」
「怪我が増えてよくない」
「そうなんですね」
「そうだよ、どうして怪我が多いかわかったよ」
 八条大学の相撲部の人達にです。
「トレーニングと食事が間違っていたんだ」
「そういうことですね」
「じゃあお相撲本来のやり方に戻すべきですね」
「ここは」
「うん、力士さんでこれはって思う人の稽古や食事を取り入れる」
 先生は言いました。
「これが一番いいかもね」
「そうですか」
「僕達近代的にって考えてましたけれど」
「他の格闘技じゃなくてですね」
「お相撲の中で考えるべきだったんですね」
「そうだったんですね」
「他の格闘技を取り入れても」
 それでもというのです。
「お相撲に合うかどうかだから」
「ですね、野球選手がサッカーの練習しても仕方ないですしね」
「何の意味もないですからね」
「スポーツの仕方が違いますから」
「だからですね」
「そうだよ」
 まさにというのです。
「だからね」
「わかりました」
「じゃあすぐに練習の仕方戻します」
「ちゃんこ鍋も食べます」
「そうしていきます」
「そうしてね、ただ」
 ここで、です。先生はこうも言いました。
「今部活にコーチや顧問の人は」
「はい、それがなんです」
「監督が今入院してまして」
「交通事故で」
「それで僕達だけなんです」
「ああ、だからだね」
 先生はどうして皆がそうした稽古や食事にしたのかもわかりました。
「君達だけで」
「はい、それでどうした稽古がいいか」
「食事がいいか考えて」
「格闘家みたいにしたらどうかって思って」
「それでやってみたんですが」
「うん、考えることはいいことだよ」
 先生はそのこと自体は否定しませんでした。
 ですが、です。穏やかですが確かな声で皆にこうも言うのでした。
「ただ、お相撲に合ったことをすることだよ」
「そうしないとですね」
「今みたいになるんですね」
「かえって怪我が多くなる」
「そうなるんですね」
「そう、同じ格闘でも格闘の仕方が違うからね」
 そうしたKー1等とお相撲はというのです。
「そこも考えないとね」
「そういえば柔道部と空手部は稽古違いますしね」
「同じ道着でも」
「道着の生地の厚さも違いますし」
「そうしたことを見てもですね」
「考えないといけないですね」
「そうなんだ、お相撲はお相撲だよ」
 このことは念頭に入れておかないといけないというのです。
「ちゃんと柔軟をして四股とか踏んで」
「ちゃんこも食べる」
「そうしないといけないんですね」
「そういうものなんだ」
 先生は穏やかな声のまま皆にお話します。
「だから気をつけてね」
「そうします」
「いや、僕達も目が覚めました」
「それですね、やっぱり」
「お相撲はお相撲ですね」
「力士の筋肉があって」
「稽古の仕方や食事があるんですね」
 部員の皆も反省しています、それもとても。
「本当にすぐに変えます」
「そうしていきます」
「最もいいお相撲の稽古と食事を見付けていくべきだね」
 また言った先生でした。
「僕も調べさせてもらうから」
「あっ、協力してくれるんですね」
「先生もそうしてくれるんですね」
「何か悪いですね」
「悪くないよ」
 穏やかな笑顔のまま応えた先生でした。
「そうしたことはないから」
「ううん、先生はいい人ですね」
「何の関係もない僕達にアドバイスしてくれて」
「稽古や食事のことも調べてくれるなんて」
「凄くいい人ですね」
「いやいや、こうしたことはね」
 別にという声のまま応えた先生でした。
「縁だから」
「縁ですか」
「だからですか」
「僕達にもですね」
「そうしてくれるんですね」
「そう、神様が引き寄せてくれた縁だよ」
 にこりと笑ってです、先生は皆にこうも言いました。
「だから気にしないでね」
「そうですか」
「それじゃあですね」
「お言葉に甘えていいんですね」
「そうして」
「うん、僕もそうさせてもらうから」
 先生も応えます、こうしてでした。
 相撲部の人達は稽古の仕方と食事を変える、まずは元に戻すことにしました。先生も最もいいやり方を調べることになりました。
 そのお話の後で、でした。先生は稽古場を後にしました。そうしてご自身の研究室に戻るその時にです。
 動物の皆にです、こう言われたのでした。
「何かね」
「先生今回はお医者さんの立場から言ったね」
「それも的確に」
「そうしたね」
「うん、僕はスポーツはしなくても」
 皆にもこう言うのでした。
「観るからね」
「だからだね」
「それぞれのスポーツに合ったトレーニングや食事がある」
「そうしたことがわかるんだね」
「それぞれの競技で使う筋肉や身体の部分も違うね」
 また言った先生でした。
「テニスとラグビーでも」
「うん、確かにね」
「同じ球技でもね」
「本当に全然違うね」
「何から何まで」
「そこはね」
「そう、同じ格闘技でも同じだよ」
 そこはというのです。
「やっぱり違うんだ」
「そういうことなんだね」
「違う競技のトレーニングや食事をしても駄目」
「かえって逆効果なんだね」
「そうなんだ」
 まさにというのです。
「そこのことを間違えるとね」
「相撲部の人達みたいにだね」
「変に怪我が多くなるんだね」
「そうなるんだね」
「そうだよ、だから気をつけないといけないんだ」
 先生は真剣なお顔でお話します。
「そこはね」
「ううん、それじゃあ」
「相撲部の人達はこれからだね」
「怪我減るね」
「そうなるね」
「うん、そうなるよ」
 絶対にと答えた先生でした。
「僕の言葉を聞いてくれたらね」
「それじゃあだね」
「先生も安心していいね」
「これで一件落着」
「そうなったね」
「多分ね」
「こうした先生って絶対にだよね」
 チーチーが先生に言ってきました。
「アドバイスをするね」
「関係のない人でも縁があれば」 
 ポリネシアも言います。
「それでアドバイスをするね」
「やっぱりお医者さんだから」
 ガブガブはこのことから言うのでした。
「そうするのね」
「困っている人達は助ける」
 ジップは先生のそのお顔を見ています。
「それが先生だね」
「正しいお医者さんだね」
 トートーは老馬の背中の上で停まりつつ言いました。
「まさに」
「そうそう、本当にね」
 ホワイティは老馬の頭の上にいます、実は先生は今は老馬の背中に乗っておらずご自身の足で歩いています。
「そうした人だから慕われるんだよね」
「しかもそこに驕らない」
「慢心とは無縁な人よね」
 チープサイドの家族もお話します。
「そこもね」
「いいところなのよね」
「そうした先生だから皆もお話を聞いて」
「その通りにするのよね」
 オシツオサレツも言います。
「僕達生きものもそうだし」
「人だってそうだね」
「そう、先生ならね」
 是非にと言うダブダブでした。
「皆お話を聞くよ」
「そうそう、あの人達だってそうだよ」
「ちゃんとお話を聞いてくれるよ」
「そしてその通りにしてくれて」
「怪我が減るよ」
「何よりだね、そうなってくれたら」
 先生はにこにことして皆に応えます。
「僕も有り難いよ、それでね」
「それで?」
「それでっていうと」
「先生、まだ何かあるの?」
「心配ごとが」
「いや、心配ごとではなくてね」
 そうではなくてというのです。
「考えごとがあるんだよ」
「考えごと?」
「っていうと何?」
「それは」
「うん、お昼だよ」
 それだというのです。
「お昼に何を食べようかな」
「それだね」
「何を食べるか」
「そうだね」
「そう、何を食べようかな」
 先生は考えるお顔で皆に言うのでした。
「一体」
「ううん、それはね」
「どうしようかな」
「色々なメニューあるけれど」
「何を食べようかな」
「実は相撲部の皆に食事のお話をしたら」
 それでというのです。
「お腹が空いたからね」
「そうだよね、どうしても」
「食べものの話をしてるとね」
「お腹空くよね」
「食欲を刺激されて」
「うん、そうだよ」
 それでというのです。
「それで僕もなんだ」
「お昼のことをだね」
「考える様になったんだね、今から」
「そうなんだね」
「そうなんだ、どうしようかな」
 また言った先生でした。
「本当に」
「いや、どうしようか」
「それじゃあね」
「皆で今日のお昼のことを考えよう」
「今からね」
「そうしてくれるんだね」
 先生は皆のお話を聞いて笑顔になりました、そして皆でそれぞれでした。
 メニューを言っていきました、具体的にです。
「鯖味噌定食?」
「豚カツ定食とか」
「お好み焼きもいいね」
「焼きそばもあるよ」
「おうどんにラーメン」
「親子丼」
「色々あるね」
 それこそというのです。
「スパゲティもあるし」
「ハンバーガーもいいね」
「サンドイッチはどう?」
「ピザも美味しいよ」
「パエリアどうかしら」
「ううん、どれもいいね」
 先生は皆が挙げていったメニューを聞いて言うのでした。
「お話を聞いてると」
「そうだね、どれもね」
「美味しいわよ」
「ただ、全部は食べられないから」
「それが問題なんだよね」
「メニューが多いとね」
 少し困った笑顔になって言う先生でした。
「かえって困るね」
「うん、この学園の食堂ってメニュー多いから」
「食堂自体も幾つもあるし」
「だからね」
「どれかっていうと困るのよね」
「どうにも」
「そうなんだよね」
 実際にと言う先生でした。
「さあ、どうしようかな」
「こうした時はルーレット?」
「何を食べるか決める?」
「そうする?」
「それで」
「そうだね、ここはこうしようかな」
 ルーレットという言葉からです、先生は。
 ふと閃いてです、こう言いました。
「食堂に入って最初に目に入ったメニューだね」
「それだね」
「それにするんだね」
「迷っていても仕方ないから」
「だからだね」
「うん、迷っていてもはじまらないから」
 それならというのです。
「そうするよ」
「食堂に入ってだね」
「それで決めるんだね」
「そうしていくんだね」
「そうするよ、それじゃあね」 
 こうお話してでした、そのうえで。
 先生はこのお昼はそうして決めることにしました、そしてお昼御飯を食べて午後の講義を行ってでした。その後のティータイムの時に。
 お茶とセットを出してくれたトミーがです、そのお茶を淹れながら先生に言いました。
「それでカレーライスとサラダですか」
「そっちにしたんだ」
 先生は白いカップに入れられる紅のお茶を見ながらトミーに答えました。
「最初に目に入ったから」
「だからですか」
「そうしたんだ」
「普通のカレーライスですね」
「そうだよ」
 カレーはカレーでもというのです。
「ビーフカレーだよ」
「カツカレーや海老フライカレーじゃなくて」
「普通のカレーライスだよ」
 あくまでそちらだというのです。
「そっちにしたんだ」
「そうなんですね」
「そう、カレーライス大盛りだよ」
「それでサラダですか」
「その組み合わせにしたんだ」
「いい組み合わせですね」
 その組み合わせにはこう言ったトミーでした。
「僕も聞いていて思いました」
「お野菜も多くてね」
「それでデザートはですね」
「フルーツセットだよ」
 デザートはそちらだったというのです。
「やっぱりビタミン多いね」
「そうですね、いい感じですね」
「食事には気をつけないとね」
「はい、本当に」
「さもないとね」
 それこそとも言う先生でした。
「身体によくないからね」
「身体にいいものをバランスよくですね」
「それぞれに合ったね」
「そういうことですね」
「そう、それとね」
 さらに言う先生でした。もうセットは出されていますが今日は上段は柔らかめのクッキー、中段は蜂蜜をたっぷりとかけたトースト、下段はチョコレート菓子です。 
「スポーツをしていたら」
「そのスポーツに合った食事をですね」
「重点的に食べた方がいいね」
「相撲部のお話ですね」
「うん、トレーニングも食事もね」
「両方ですね」
「合ったものにしないと」 
 それこそというのです。
「よくないよ」
「そうですよね」
「そう、本当にね」
 それこそというのです。
「怪我が多くなるよ」
「そういうことですね」
「野球選手でいたね」
 日本のプロ野球選手です。
「格闘家のトレーニングに励んで格闘家の筋肉をつけて格闘家の食事をした」
「野球選手なのにですね」
「そういうことをした人がいたよ」
「それ的外れですよね」
 先生に淹れた紅茶を差し出しつつ言ったトミーでした。
「かなりの」
「うん、その通りだよ」
「それこそ先生の言われる通り」
「うん、百害あって一利なしだよ」
「そうですよね」
「実際にその人怪我がかえって増えたんだ」
 相撲部の人達みたいにです。
「そうなったんだ」
「やっぱりそうですか」
「うん、野球選手も同じだよ」
「野球選手の筋肉がありますからね」
「野球選手に合ったトレーニングをして」
 そしてというのです。
「食事をしないといけないよ」
「格闘家になっても仕方ないですね」
「野球選手は誰と闘うのかな」
 甚だ疑問というお顔でこうも言った先生でした。
「果たして」
「グラウンドで相手チームとバットやグローブ、ボールで」
「ミットもあるね」
「ですが格闘はしませんね」
「乱闘なんかで活躍してもね」
 それこそというのです。
「スポーツマンシップの問題だよ」
「そうですよね、本当に」
「何の意味もないよ」
 それこそというのです。
「そんなことをしても」
「そうですよね」
「それでわしは強いとか得意になっていたんだ」
「格闘家のトレーニングと食事をして」
「そう、野球じゃなくてね」
「信じられない話ですね」
 トミーはここまで聞いて呆れ果てました、彼が聞いても的外れもいいところなお話だったからです。それも甚だ。
「よく周りが止めませんでしたね」
「少なくともマスコミは持て囃したみたいだね」
「そんなことをしてもですか」
「そうだったんだ」
「日本のマスコミは酷過ぎますね」
「イギリスの大衆紙よりもね」
 サンやそうしたものと比べてもです。
「桁外れに酷いね」
「そこで止めないと」
「何を考えているんだってね」
「それどころか持て囃して」
「結局その選手は余計に駄目になったよ」
「そうなったんですね」
「野球選手としても人間としてもね」
 両方でというのです。
「駄目になったよ」
「変なことをしてそれを周りが持て囃して」
「そうなったんだ」
「確かに変な話ですね」
「そうしたことを見てもね」
 先生は紅茶にです、今度は自分でミルクを入れました。紅の紅茶に白い牛乳が入って淡い茶色になっていきます。
「それぞれに合ったトレーニングや食事を摂らないとね」
「スポーツ選手はですね」
「駄目になるよ」
「そういうことですね」
「うん、そうした話を日本で聞いてね」 
 そのこともあってというのです。
「相撲部の皆にアドバイスもしたんだ」
「そうだったんですね」
「それはよくないってね」
「実際にそうですよね」
「野球程離れてはいないけれど」
 Kー1とお相撲はです。
「それでもね」
「やっぱり違うんですね」
「そう、怪我が多いのも道理だよ」
「トレーニングと食事は」
「それぞれの競技を考えないとね」
「的確じゃないですね」
 トミーも頷きます、そして。 
 そのお話からです、トミーはといいますと。
 周りにいる動物の皆にもお茶やセットを出してです。先生の席の向かい側の席に座ってこうも言いました。
「先生もですね」
「僕もだね」
「先生のことを考えて」
「食べないといけないね」
「はい、先生はスポーツはされないですが」
 それでもなのです。
「結構カロリーを使ってますから」
「うん、計算してみたらそうだね」
「いつも本を読んで研究をされて論文も書かれてますね」
「講義もして手術も行ってね」
「そうした生活ですから」
 だからというのです。
「カロリーをかなり使ってますから」
「糖分を結構摂ってもなんだ」
「いいです、むしろ結構以上に食べないと」
 先生の場合もというのです。
「今の生活は出来ませんよ」
「日本に来て変わったね」
「そうなりましたね」
「僕はね」
「イギリスにおられた時は」
 その時はといいますと。
「あまりカロリーは必要じゃなかったですね」
「患者さんが来なかったしね」
「はい、ですから」
 とにかく暇でした、その頃は。
「あまり動かなかったですしね」
「そうだったね」
「キャラバンに行ったりサーカスや郵便局をしたことがあっても」
「基本はね」
「そう、暇でしたから」
「だから動くこともなかったね」
 そうだったのです、その頃の先生は。
「今よりずっとね」
「今先生結構動いてますよ」
「登下校もしてね」
「研究室から講義で講堂に出たり学園のあちこちを歩いておられますよね」
「動物園や水族館にも行ってね」
「ですから」
 移動、歩いてそうしているからというのです。
「その分カロリーも消費してますよ」
「そういうことだね」
「それで実際痩せてますし」
 イギリスにいた時よりもというのです。
「体重も脂肪率も減ってます」
「あまり意識してないけれどね」
「ですから」
「その痩せた分だね」
「カロリーを摂っていいです、といいますか」
 むしろという口調でお話するトミーでした。
「今位摂られないと」
「駄目なんだね」
「お仕事にも差し支えますしね」
「働く分のカロリーが必要ということだね」
「そうです、ですから」
「じゃあ今もだね」
「食べて下さいね」
 ティーセットのお菓子もというのです。
「お菓子は言うならパンですからね」
「そうそう、糖分は澱粉質とね」
「変わらないですから」
「そうなんだよね」
「お砂糖と御飯は基本同じですからね」
 栄養的にです。
「あの白い御飯が実は」
「お砂糖を盛ってるみたいなものだよ」
「パンもジャムを付けるとちょっとしたお菓子位で」
「栄養的にはね」
「そうなんですよね」
「だから主食も食べ過ぎたらね」
「糖尿病の恐れがあるんでしたね」
 トミーはこのことも言いました。
「そうでしたね」
「その通りだよ、だからね」
「御飯やパンを食べることはいいことにしても」
「そちらも摂り過ぎには注意だよ」
「そういうことですね」
「そう、それじゃあね」
「はい、摂り過ぎに注意して」
 そのうえでというのです。
「食べましょう」
「それじゃあね」
 こうしたお話をしてでした、先生はトミーそして動物の皆と一緒に今日のティーセットを楽しみました。そのお菓子を口にしてお茶を飲んで。
 先生はにこりと笑ってです、こんなことも言いました。
「日本に来て色々なティーセットを楽しむ様になったね、僕も」
「和風、アメリカ風、中国風、ロシア風と」
「そう、色々とね」
「コーヒーは殆ど飲まれないですけれど」
「コーヒーよりもやっぱりね」
 先生は、なのです。
「お茶だね」
「そうですよね」
「特に紅茶だね」
「他のお茶を飲むようになっても」
「やっぱり第一はね」
 そのお茶の中でもというのです。
「紅茶、それもね」
「ミルクティーですね」
「一日一回は飲まないとね」
 それこそというのです。
「駄目だよ」
「先生はそうですね」
「こうしたところはイギリス人だね」
「そうですね」
「着物を着て座布団に座る様になっても」
 それでもというのです。
「ここはイギリス人だね」
「先生はそうですね」
「うん、日本のお茶の方が美味しくても」
 紅茶にしてもです。
「それでもね」
「紅茶、ミルクティーが第一ですね」
「本当に一日一回だよ」
「それ位飲まないと」
「僕はやっていけないよ」
「そういうことですね」
「うん、それじゃあね」
 その紅茶を飲みつつ言うのでした。
「もう一杯」
「わかりました」
 トミーも笑顔で応えます、先生は相撲部の人達にお話した後は紅茶を楽しみました。これで一件落着と思いながら。



相撲部の怪我人の多さに関しては。
美姫 「先生が色々とアドバイスしたしね」
相撲部の人たちも素直に聞いたしな。
美姫 「これで一件落着ね」
次回はどうなるのんだろう。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。



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