『ドリトル先生北海道に行く』
第十二幕 ないのなら
先生はホテルで夜ぐっすりと寝てでした、朝起きてすぐにです。
ホテルのシャワーを浴びて朝御飯を食べてでした、動物の皆に言いました。
「では今日はね」
「うん、ウルの為にだね」
「冬眠の為の寝床をだね」
「見付けてあげるんだね」
「いや、昨日山の中をじっくりと探したね」
このことを言った先生でした。
「そうだね」
「うん、それでもね」
「なかったよね」
「僕達かなり探したけれど」
「それでもね」
「ウルが入られる位の穴はね」
「なかったね」
皆は残念なお顔でそれぞれ先生に答えました、ホテルを出てシホレさんと昨日約束した待ち合わせ場所に向かいながら。
「けれどだね」
「先生はだよね」
「もうどうするか決めている」
「そうなんだね」
「解決案はね」
それはというのです。
「もうあるよ」
「じゃあそれは一体」
「何なのかな」
「山に行けばわかるよ」
ウルのいるそこにというのです。
「そしてシホレさんともお話してね」
「シホレさんともなんだ」
「お話をしてなんだ」
「それでなんだ」
「解決するんだ」
「そうだよ、ただね」
ここで先生はです、皆を見ました。
そしてです、こうも言ったのでした。
「皆のうち何匹かは今回はお休みかな」
「あれっ、っていうと」
「僕達はあまりなんだ」
「今回は先生を助けられない」
「そうなんだ」
「うん、そうなるね」
「と、いうと」
老馬は先生のお言葉を聞いて首を傾げさせました、その先生を背中に乗せながら。
「どうするのかな」
「僕達のうち何匹jかはお休み」
「何をするのおかな」
オシツオサレツも二つの頭で言います。
「一体ね」
「何なのかな」
「そこがわからないね」
ホワイティはオシツオサレツの前の頭の上にいます。
「どうにも」
「先生ってこういう時まずは言わないこともあるね」
「そうなのよね」
チープサイドの家族はオシツオサレツの背中にいます。
「それでここぞという時に話す」
「そうするのよね」
「そこが悪戯っぽいっていうかね」
ポリネシアは老馬の頭にいて先生を見ています。
「楽しんでるっていうか」
「そうそう、僕達を驚かせる訳じゃないけれと」
トートーはその先生の左肩にとまっています。
「勿体ぶってるかな」
「すぐに全部言う時もあるわよ」
ガブガブは老馬の横を歩いています。
「けれどそうした時もあるのよね」
「イギリス人的?」
ダブダブは先生のその傾向を指摘しました。
「そうしたところは」
「そういえばイギリス人って勿体ぶる傾向あるね」
ジップはダブダブの言葉に応えました、彼等は老馬達と一緒に歩いています。
「一度の話すんじゃなくて」
「その場その場で小出しにするかな」
チーチーも歩いています。
「そして成り行きを楽しむんだよね」
「日本人は事前に一度に言うかな」
王子は日本人ならどうかと考えつつ言いました。
「全部話して皆にわかってもらうかな」
「日本人は事前事前に説明するね」
トミーも言います。
「そして話をそれに添って進めていくかな」
「うん、そう言われると僕はね」
先生も皆のお話を受けて言いました。
「イギリス人でイギリス的かな」
「ここで一度に言わないで」
「徐々にだよね」
「それで楽しみながらね」
「ものごとを進めていくね」
「そうだね、何かそうて徐々に進めていくのを余裕を以てね」
この余裕も大事だということが言葉の中にありました。
「楽しんでいってるかな」
「余裕、そうだね」
「先生の行動はいつもそれがあるね」
「まず余裕」
「それがだね」
「余裕の行動じゃないと」
先生にしてもなのです。
「あまりよくないね」
「そうそう、先生はね」
「余裕を大事にしてるね」
「そしてだよね」
「ものごとを進めていくようにしているね」
「焦ることは好きじゃないんだ」
そもそも先生はいつも落ち着いています、慌てたり騒いだりといったことはどうにも気性に合わないのです。
「だからね」
「そうしていくのね」
「今回のことも」
「そうなんだね」
「そうなんだ、じゃあまずは行こうね」
シホレさんのところにです。
「これからね」
「よし、それじゃあね」
「シホレさんと会って」
「そしてだね」
「ウルの穴をだね」
「用意するんだね」
「そうするよ」
こうお話してでした、そのうえで。
皆は屈斜路湖まで行きました、それから。
湖まで来るとでした、もうそこにはシホレさんが待っていました。見ればシホレさんは穏やかな顔で立っています。
そのシホレさんがです、皆に挨拶をしてきてです。皆も返しました。
そしてすぐにです、シホレさんは先生に尋ねました。
「これからですね」
「はい、出来ればです」
「出来れば?」
「あるものを三つ用意して欲しいのですが」
「あるものとは」
「実は」
そのあるものをです、先生はシホレさんにお話しました。
するとです、シホレさんは納得したお顔で頷きました。
「はい、それでは」
「お願いします」
「すぐに用意出来ますので」
「用意してですね」
「ウルの寝床を確保しましょう」
こうお話してでした、シホレさんはその三つをです。
すぐに持って来ました、そしてこう先生に言いました。
「湖の管理人の方からです」
「お借りしたものですね」
「はい」
それはというのです。
「これでいいですね」
「はい、これだけあれば」
「もうですね」
「ウルの穴は確保出来ます」
「それは何よりです」
「と、いうとですね」
トミーはそれを見つつ言いました。
「僕達で、ですね」
「うん、用意するんだ」
「そういうことですね」
「そう、なければね」
その場合はというのです。
「わかるね」
「それで諦めるのじゃなくて」
「どうにかするんだ」
「そういうことですね」
「ではね」
「はい、これから」
「まずは山に行こう」
「そしてですね」
「事態を解決しに行こう」
「それじゃあ」
トミーも笑顔で頷きます、王子もです。
それを今から手にしてです、笑顔で言いました。
「僕こういうの好きなんだよね」
「うん、王子はそうだよね」
「よく王子だとね」
「スポーツはしてもだね」
「こうしたことで身体を動かさないって思われるにょね」
「そうだね」
「けれど僕はね」
王子であってもというのです。
「好きなんだよ」
「日本に来てからそうなったのかな」
「実はね」
ここで王子が言うことはといいますと。
「アフリカにいた時からね」
「そうだったんだ」
「小さな国だし」
王子のお国はというのです。
「王子の僕も自分からね」
「そうしたことをすることもだね」
「うん、あるからね」
だからというのです。
「そうした身体を動かすこともあるし」
「それでだね」
「嫌いじゃないんだ」
「それは何よりだね」
「というか先生こそだよ」
「僕が?」
「スポーツは苦手で」
それにというのです、とにかく先生は運動音痴でスポーツはどんなものでも全く以てどうしようもないのです。
「しかも家事もだよね」
「そうだよ、けれどね」
「それでもなんだ」
「こうした時に何かしないと」
それこそというのです。
「よくないからね」
「だからなんだ」
「僕もなんだ」
「するんだね」
「そのつもりだよ」
「それはわかったけれど」
それでもと言う王子でした。
「先生スーツだしこうしたことはね」
「王子の見たところだね」
「苦手だからね」
だからというのです。
「無理はしないでね」
「確かに先生は」
シホレさんも先生を見て言います。
「そうしたことは苦手ですね」
「シホレさんもそう言われますか」
「はい、ですが実際にですよね」
「まあそれは」
苦笑いで言った先生でした。
「何といいますか」
「やはりそうですか」
「歩くことはしますが」
「身体を動かすこと自体がですね」
「苦手です」
正直にです、シホレさんに応えました。
「どうにも」
「それではです」
「それでは?」
「何かあれば私がさせてもらいますので」
「シホレさんがですか」
「はい、その時はお任せ下さい」
シホレさんは先生ににこりと笑って言うのでした。
「是非共」
「ですがそれは」
「お嫌ですか」
「シホレさんはご高齢ですし」
「まだ七十ですが」
「いえ、七十になりますと」
それこそというのです。
「もうこうしたことは」
「大丈夫ですよ、では」
「その時はですか」
「お任せ下さい」
こう先生に言うのでした、そしてです。
先生達はあの山に入りました、そのうえでウルのところに行きますと。
ウルはもうです、待ち遠しい感じでした。
そのウルにです、先生は笑顔で言いました。
「では今からね」
「うん、僕の冬眠の寝床をだね」
「作るよ」
「作るんだ」
「うん、そうだよ」
その通りという返事でした。
「これからね」
「作るって」
「そう、やっぱり君が入られるだけの穴はね」
「それはだね」
「ないからね」
だからこそというのです。
「作るんだよ」
「そうするんだ」
「ないのなら作ればいいからね」
「ううん、それでなんだね」
「これを持って来たんだ」
先生はそれを手にしてウルに見せました、それは何かちいますと。
「シャベルをね」
「人間が使う道具だね」
「そうだよ、このシャベルを使ってね」
「穴を作るんだ」
「もう一番大きな穴は見付けているからね」
ウルが入られないまでもです。
「後はその穴をだよ」
「ああ、そうなんだ」
「拡げるんだね」
「そうして作るってことだね」
「つまりは」
「そうだよ」
先生は動物の皆にも笑顔でお話しました。
「そうしようと考えていたんだ」
「成程ね」
「ここでも先生の知恵が出たね」
「困った時は考える」
「それが先生だしね」
「だから考えてみたんだ」
実際にというのです。
「そしてこうしようとね」
「結論を出して」
「そしてだね」
「実際にそうするんだね」
「穴を拡げるんだね」
「そうするよ、いいね」
こう言ってでした、実際にです。
先生はその昨日見付けていた一番大きな穴に向かいました、そしてその穴に来てすぐにでした。
王子、トミーも入れて三人で、でした。穴の左右と下を掘ってでした。
その穴を拡げていきます、それを見てです。
ウルは目を見張ってです、こう言いました。
「あっ、どんどんね」
「うん、穴がだね」
「拡がっていってるね」
「こうすれば君もこの穴に入られるね」
「そうだね、それじゃあ」
ウルもでした、ここで。
自分も穴のところに行ってです、前足を使ってです。
堀りはじめました、そうしてです。
掘ることが出来る生きものも協力してでした、穴をどんどん拡げてでした。
そうしてです、かなりの広さに拡がりました。ウルはその穴を見て言いました。
「あと少しで」
「うん、君もだね」
「この穴に入ってね」
「休める様になるね」
「そうなるよ」
「それじゃあだよ」
「このままだね」
「掘っていくよ」
どんどんというのです。
「いいね」
「そうしようね、ただね」
ウルは先生ご自身も見て言いました。
「先生何かね」
「僕が?」
「疲れてきてるね」
「いや、僕はね」
「いやいや、疲れてきてるから」
ウルは先生が大丈夫と言おうとした時にあえて言いました。
「無理はよくないよ」
「そういう訳にはいかないよ」
「疲れたら交代だよ」
「交代?」
「そう、 僕も掘ってるし」
「君は今から掘ってるから交代にはならないよ」
「なるよ」
暖かい顔で言ったウルでした。
「ちゃんとね」
「というと」
「私が交代します」
シホレさんが先生に暖かい笑顔で言ってきました。
「後はお任せ下さい」
「シホレさんがですか」
「町やお家の仕事でシャベルを使うことも多いですから」
だからというので。
「お任せ下さい」
「そうですか」
「この子の為ですから」
ウルも見て言うのでした。
「宜しくお願いします」
「そうですか、ですが」
「私がお婆さんだからですか」
「激しい肉体労働は」
「ですからそうしたことはお気遣いなくです」
「うん、見たところね」
「そうよね」
動物の皆もここでシホレさんを見て彼等の中でお話しました。
「先生よりもだね」
「シホレさんの方がこうしたこと得意だね」
「服の上からの身体つき見たらね」
「そんな感じだよね」
「先生、だからね」
今度は先生に言うのでした。
「ここは交代してね」
「先生は誰かが怪我をした時の手当てがいいんじゃないから」
「先生はお医者さんだしね」
「だからね」
「皆がしているのに自分は、というのは」
どうもと返した先生でした。
「あまりよくないけれど」
「そうした問題じゃないよ」
「手当担当もちゃんとした仕事だよ」
「だからね、先生はそっちに回って」
「シホレさんに任せた方がいいよ」
「ここはお任せ下さい」
笑顔でまた言って来たシホレさんでした。
「掘ることはお料理と同じだけ得意ですから」
「そこまで言われるのなら」
先生も頷くしかありませんでした、こうしてです。
先生はシホレさんにシャベルを手渡しました、するとすぐにでした。
しホレさんはそのシャベルを上手に使って穴を掘ってです、その穴を大きくしていきました。すると瞬く間にでした。
穴は大きくなりました、ウルもその両手で掘っているので。
忽ちのうちにです、相当な大きさになってでした。
ウルは笑顔で、です。皆に言いました。
「もうこれ位大きいとね」
「君もだね」
「冬眠出来るよ」
「うん、確かにそれ位の大きさになったね」
「だからね」
それでというのです。
「もういいと思うよ」
「そうだね」
先生もウルのその言葉に頷きました。
「それ位の大きさになったね」
「それじゃあね」
「皆終わろう」
先生は皆に笑顔でお話しました。
「これ位の大きさなら充分だよ」
「うん、わかったよ」
「それでは」
王子とトミーが先生の言葉に笑顔で応えました、そして。
皆は掘るのを止めました、ウルが実際にその穴に入って休んでみるとです。大きな彼がゆっくりと休める位でした。
その大きさに満足してです、ウルは皆に笑顔で言いました。
「有り難う、これで安心だよ」
「冬を越せるね」
「今年も来年もね」
「それは何よりだよ」
先生も笑顔で応えます。
「君が冬眠出来るのならね」
「本当に有り難う、けれどね」
「けれど?」
「僕の為にここまでしてくれるなんてね」
「いや、君達にとって冬眠出来ないことは大変なことだからね」
それでというのです。
「僕もだよ」
「こうしてくれたんだ」
「そうだよ」
「汗をかいて穴を拡げてくれたんだね」
「実際に冬眠出来ないとね」
それこそと言った先生でした。
「君達にとっては大変だから」
「羆嵐みたいなことになったら」
「ああしたことになったら誰も幸せにならないからね」
だからというのです。
「そうならない為にしたことだから」
「それは先生強く言ってるね」
「誰も幸せにならないのなら」
「それはどうにかしないといけない」
「そう、気にしないでね」
「そこまで言うのならね」
「冬はここでゆっくりと寝るんだよ」
「そうさせてもらうね」
ウルは先生のお言葉に頷きました、そしてです。
シホレさんもでした、先生に深々と頭を下げて言いました。
「有り難うございました」
「ですからお礼はです」
「宜しいですか」
「はい、お話した通りです」
「そうですか、ですが」
「それでもですか」
「何もなしではいけないです」
シホレさんは先生に確かなお声でお話しました。
「ですからここは美味しいものでどうでしょうか」
「美味しいものですか」
「私はカレーが得意とお話しましたが」
「そうでしたね、昨日」
「ですからカレーをご馳走させてもらいたいのですが」
「それで、ですか」
「お礼にして宜しいでしょうか」
これがシホレさんの提案でした。
「それでどうでしょうか」
「そうですね、今日の晩は予定もありませんし」
皆一日かけて穴を掘りました、ですから結構な広さになったのです。
「それでは」
「はい、お家にいらして下さい」
「そうさせてもらいます、そのカレーはです」
「どういったカレーですか?」
「スープカレーです」
「そういえばスープカレーも」
先生はその彼についても言いました。
「北海道の名物でしたね」
「そうです、北海道で生まれたカレーです」
「そのスープカレーをですか」
「召し上がって下さい」
「それでは」
笑顔で頷いてでした、そして。
ウルが先生にです、目を細めさせて言ってきました。
「じゃあシホレさんにご馳走になってきてね」
「君はもうだね」
「ここにいるよ」
この山にというのです。
「それで休むよ」
「そうするんだね」
「うん、そしてね」
そのうえでというのです。
「冬はここで冬眠するよ」
「是非そうしてね」
笑顔でお話してでした、そうして。
先生達はウルとお別れしてでした、そのうえでシホレさんのお家にお邪魔しました。すると飄々とした感じのお爺さんが出て来て先生達に挨拶をしてきました。お家はごく普通の北海道の窓や扉が三重のとても暖かそうなものです。
「お話は聞いています」
「あっ、もうですか」
「ドリトル先生ですね」
「はい」
「そしてお友達の皆さん」
他の皆も見て言うのでした。
「宜しくお願いします」
「こちらこそ」
「宜しくお願いします」
王子やトミー達が応えます、そしてお爺さんはこうも言いました。
「わしの名前はシャクインといいまして」
「シャクインさんですか」
「シホレの旦那をやっています、ずっとこの町で郵便局員をしていました」
「郵便局の方でしたか」
「はい」
そうだったというのです。
「それで今は定年になって」
「そしてですか」
「悠々自適の生活です」
「二人でそうしているんですよ」
シホレさんも言ってきました。
「もう結婚して五十年になります」
「それは長いですね」
「この前金婚式となりますね」
「何よりですね」
「はい、それでは」
「これからですね」
「スープカレーをどうぞ」
先生達に笑顔で言うのでした。
「量も多いのでたっぷりと召し上がって下さい」
「それでは」
こうしてでした、皆で。
先生達はシホレさんのスープカレーをいただきました、そのスープカレーもかなりの美味しさで先生達も満足しました、そのカレーをご馳走になってです。
先生達はシホレさんのご夫婦と笑顔で別れました、その後で。
王子は先生にです、これからのことを尋ねました。
「それでだけれど」
「これからだね」
「うん、どうするのかな」
「今日はホテルはね」
「予約しているよね」
「ちょっと離れているんだ」
先生は王子に少し困ったお顔で答えました。
「ここからはね」
「そうなんだね」
「うん、だからね」
それでというのです。
「ここから行くとなると」
「少しだね」
「厳しいね」
「今日中にホテルに入るには」
「ここから離れてるからね」
「そうだと思っていたよ」
ここで、です。急にでした。王子はにこりと笑って先生に返しました。
「だからもうキャンピングカーを呼んでおいたよ」
「早いね」
「もうすぐそこに来ているから」
「じゃあそれに乗って」
「ホテルまで行こう」
今日泊まるそこにというのです。
「そうしよう」
「それじゃあね」
「いや、王子もわかってるね」
「流石だね」
オシツオサレツが最初に唸りました。
「もうキャンピングカーを用意してくれてるなんて」
「流れをわかっているってことだね」
「穴堀りの時間がかかったから」
ジップもその辺りのことを考えつつ言います。
「そしてシホレさんにお家に呼ばれたからだね」
「その時間に合わせて車を呼んでくれた」
老馬のその辺りの流れを読んでみました。
「前以て」
「やっぱりこうした時は王子かトミーだね」
ダブダブは王子だけでなくトミーも見ています。
「頼りになるよ」
「先を読んで動いてくれるから」
チーチーも感心しています。
「こうした時は頼りになるよ」
「携帯のメールで連絡してくれたんだね」
トートーは王子がどうして車を用意出来たのかを察しました。
「すぐに」
「ええ、そうね」
ガブガブはトートーの推理に太鼓判を押しました。
「だからもうすぐ車が来てくれるのね」
「じゃあその車に皆で乗って」
ポリネシアはそれからのことを考えています。
「ホテルで休むのね」
「それでもすぐだね」
「今回の旅行も終わりね」
チープサイドの家族は旅のことを見ています。
「長い旅行だったけれど」
「それでもね」
「そうだね、長い旅行だったけれど」
トミーが動物の皆に応えました。
「それも終わりだね」
「うん、今日ホテルに泊まった後は」
先生も言います。
「もう帰るよ」
「札幌まで行ってね」
「そしてそのうえで」
「神戸までだね」
「後は帰るだけだね」
「そうだよ、帰りの鉄道の旅もね」
そのことにです、先生はにこりとして思いを馳せています。
「楽しみだね」
「そうだよね」
「じゃあその旅もしようね」
「帰りの電車の旅も」
「皆でね」
「帰りに食べるものは」
それはといいますと。
「行きに食べなかった駅弁にしよう」
「そうだよね、行きも結構食べたけれど」
「日本は駅弁が凄く多いからね」
「まだ食べていない駅弁もあるし」
「それを食べようね」
「駅弁は素晴らしいよ」
先生はその目をきらきらとさせてさえいます、そのうえでお話するのでした。
「一つ一つに個性もあってね」
「ただ美味しいだけじゃなくてね」
「それぞれに味があるんだよね」
「違った味が」
「あれもまたいいね」
「食べることが楽しみだよ」
「うん、じゃあ明日札幌駅まで行って」
それからというのです。
「神戸まで電車でゆっくり帰ろう」
「じゃあ僕はね」
王子はといいますと。
「明日からオホーツクまで行くよ」
「オホーツクまで?」
「北の果てまで行くんだ」
「そうするんだ」
「うん、そうするよ」
是非にと言う先生でした。
「キャンピングカーでね」
「北の海を見に行くのかな」
先生は王子にどうしてオホーツクまで行くのかを尋ねました。
「そうするのかな」
「そうなんだ、北海道だからね」
「オホーツクの海もだね」
「折角だから見に行くんだ」
日本の北の果てのその海までです。
「そうするんだ」
「わかったよ、じゃあね」
「行って来るね」
「道中気をつけてね」
「稚内とかでもラーメン食べるよ」
王子は明るく笑ってです、先生にこうも言いました。
「そっちも楽しみだよ」
「そうなんだ、稚内でもだね」
「行って来るね」
「それじゃあね」
こう笑顔でお話してでした、そのうえで。
先生達は到着したキャンピングカーに乗り込んででした、ホテルまで行ってシャワーを浴びてゆっくりと休みました。
そしてその次の日でした、王子と先生は別れてです。先生は皆に言いました。
「まずは電車で札幌まで行ってね」
「そしてだね」
「その札幌で予約している貨物列車に乗り換えて」
「それでだね」
「行きと同じで貨物列車には車両を用意してもらっているよ」
皆が乗り込めるそれがというのです。
「だからね」
「それに乗ってね」
「駅弁をゆっくりと食べながら」
「そのうえでだね」
「後は外の景色も楽しんで」
「神戸までだね」
「戻ろう、我が家にね」
先生達が今住んでいるそのお家にというのです。
「そうしよう」
「それじゃあね」
「旅行はお家に帰るまでだし」
「その時までね」
「楽しんで行こうね」
こうお話してでした、先生達はまずは札幌駅にまで行きました。ですがその札幌駅の中においてでした。
先生に動物の皆は言いました。
「お土産はまだ買えるよ」
「だからわかってるね、先生」
「まだ買うよ」
「いいね」
「うん、サラにだね」
わかっていないお返事でした。
「買っておくんだね」
「だからサラさんだけじゃないの」
「日笠さんにもだよ」
「全く、そこでそう言うのがね」
「先生なんだね」
わかっているよね、と念を押しながらも皆もわかっていないと思っていました。そしてそれはその通りでした。
「まあ今から買おう」
「ちゃんとね」
「サラさんと日笠さんに」
「さらにだよ」
「さて、何を買おうかな」
こんなお話をしながらでした、駅の中のお土産コーナーに行って先生がいいと言ったものは。
「これいいね」
「えっ、それ?」
「それ日笠さんに買うの?」
「サラさんにも」
「それはね」
「あまりね」
皆先生が選んだそのお土産に微妙なお顔で返しました。
「賛成出来ないね、僕達は」
「他のにしない?」
「他にもいいの一杯あるから」
「それは止めておこうよ」
「いや、北海道だよ」
だからと返す先生でした。
「それにこれは買っていなかったしね」
「だからなんだ」
「他のお土産はもう買ったから」
「それでなんだ」
「それにするんだ」
「サラさんと日笠さんに贈るんだね」
「これもね」
にこにことして言った先生でした。
「そうするよ」
「僕達は賛成出来ないから」
「もう言ったよ」
「確かに他のものも一杯贈ったけれど」
「それでもね」
「それはね」
「別にね」
いいというのでしたが結局でした。
先生はそのお土産を買ってでした、そして。
それも持って神戸までの貨物列車に乗りました、大量に買った駅弁を楽しみながらのとても楽しい鉄道の旅でした。
その旅の時にです、トミーは外の夜景を見つつ先生に言いました。
「僕達これまで世界中を旅してきましたけれど」
「それでもだね」
「はい、今回の旅もよかったですね」
「そうだね、北海道は最高だったよ」
「日本ですけれど他の地域とはまた違いますね」
「うん、元々は日本じゃなかったしね」
「蝦夷でしたね」
トミーはこの地名を出しました。
「かつては」
「そのまま日本じゃないって意味だったしね」
「『えみし』でしたね」
「昔の言葉でね」
「だから日本であってもですね」
「独特の場所なんだ」
「アイヌの人達もいて」
「北海道と沖縄はね」
先生は南の島、先生達が日本に来る時に見たその島のことも言います。
「そうなんだよ」
「日本であっても独特のものがありますね」
「そうした場所だよ」
まさにというのです。
「そしてその独特さもまたね」
「いいんですね」
「歴史には悲しい部分もあるけれど」
「それが全てじゃないですね」
「北海道も沖縄もね」
そのどちらの地域もというのです。
「そうだよ」
「色糸言う人がいますけれどね」
「その歴史の一部分だけをだね」
「そうした人達はですね」
「ちょっと違うね」
「おかしいですね」
「僕はそう思うよ」
これが先生の意見でした。
「それが全てじゃないから」
「僕達みたいに楽しむことがですね」
「いいよ、ではね」
それではとも言った先生でした。
「沖縄に行った時も」
「その時もですね」
「こうした楽しもうね」
「それじゃあね」
こうしたこともお話しました、駅弁も食べながら。
先生達は神戸に向かいます、東北から関東に東海にです。
近畿に入り遂にでした。
神戸に着いてです、皆は言いました。
「やっとだね」
「神戸まで着いたね」
「長かった旅だったけれど」
「懐かしの我が家」
「もうすぐ帰られるね」
「北海道は楽しかったけれど」
先生も目を細くさせて言います。
「それでもね」
「そうだよね、やっぱりね」
「お家が一番だね」
「僕の今のお家がね」
「何といってもね」
「うん、では戻ろう」
こう笑顔で皆に言ってでした、先生達は。
懐かしの我が家に入りました、そうしてくつろいだ日常に戻りました。
先生がお家に帰って数日後サラが今回もご主人のお仕事で日本に来てでした。先生のお家にも来たのですが。
先生が差し出した贈りものの一つを見てです、眉を顰めさせて言いました。
「これだけくれるのは嬉しいけれど」
「どうしたのかな」
「あの、全部いただくけれど」
それでもというのです。
「一つだけどうかっていうのがあるわね」
「どうかっていうと?」
「これよ」
その贈りものである木彫りの熊を手に取って先生に見せるのでした。
「これはね」
「駄目かな」
「レディーへのプレゼントじゃないわよ」
こう言うのでした。
「とてもね」
「ほら、言ったじゃない」
「これはどうかって」
「だからね」
「これは駄目だって」
「女の子に贈るものじゃないって」
動物の皆もこう先生に言います。
「本当にね」
「先生こうしたセンスないから」
「それ子供とかにはいいよ」
「大人の人にもね」
つまり普通の人に贈ることはいいというのです。
「けれどレディーにはだよ」
「贈るものじゃないんだよ」
「サラさんにもどうかって言ったよね」
「ましてや日笠さんにはだよ」
「絶対にって言ったのに」
「言ってもわからないから」
「聞かないじゃなくてね」
先生は誰のお話でも聞きます、ですからそこは違います。
「わからないから」
「これもって言って買ってね」
「サラさんにも贈って」
「日笠さんにもだから」
「日笠さんは喜んでくれたよ」
この人には先生ご自身がお渡ししました、動物園まで行って。
「凄くね」
「まあ日笠さんはね」
「先生が贈ってくれるものならね」
「喜んでくれたんだね」
「じゃあそのことはいいけれど」
「それでもだよ」
「センスがね」
それはというのです。
「ないよ」
「本当にね」
「どうかって思うから」
「よくないよ」
「ちょっと待って」
最近サラも動物の皆の話がわかる様になってきているのでそれで首を傾げさせながらあらためて先生に言いました。
「先生他の人にも贈ったの」
「そうだけれど」
「喜んでくれたみたいだけれど」
「とてもね」
「それならいいけれど」
それでもというのです。
「兄さんこうしたことには本当にセンスないから」
だからというのです。
「困るわ、とにかくね」
「とにかく?」
「この贈りものは女の人には贈らない」
「レディーにはだね」
「そう、そのことはしっかりとね」
それこそというのです。
「守ってね」
「よくわからないけれど」
「いいから守ってね」
怒った口調で言ったサラでした。
「わからなくてもいいから」
「そうなんだ」
「わかったわね」
「そうよ、絶対にね」
こうしたことを言ってでした、そして。
先生達にです、あらためて言いました。
「まあとにかくね」
「うん、北海道のことだね」
「楽しかったのね」
「とてもね、だからまた行きたいね」
「ええ、私もあそこは好きよ」
北海道はというのです。
「また行ってみたいわね」
「サラも行ったことがあるんだ」
「そうなの、函館や札幌にね」
「よかったね、あそこも」
「海の幸もよかったし」
「イギリスでは食べられないものばかりだね」
「だからよかったのよ、あとね」
こうも言ったサラでした。
「クッシーはいたかしら」
「見なかったよ」
「あら、私も見なかったけれど」
「いないかもね」
「そこはいると思うことよ」
サラは先生に微笑んで言いました。
「夢があるでしょ」
「それはその通りだね、僕もいると思っているよ」
「いつもそこにはいなくても」
「ネス湖と一緒でね」
先生のネッシーに関する説も出します。
「行き来してるんだよ」
「そうなのね、あの湖も」
「今度行った時は」
その時はと言った先生でした。
「クッシーにも会いたいね」
「そうね、私もね」
「そうしたいよ」
是非にと言う先生でした、そして。
ここでトミーがです、先生達に言いました。
「三時になりましたから」
「うん、ティータイムだね」
「それを楽しもう」
「それじゃあね」
こうお話してでした、そのうえで。
先生達は今度はティータイムを楽しみました、サラも置きものは置いて言うのでした。
「日本のお茶は何度飲んでもいいわね」
「そうだよね」
「今日は紅茶なのね」
「日本の紅茶だよ」
「ではそれを楽しみにするよ」
こう言うのでした、そしてです。
先生達は皆でお茶も楽しみました、神戸で飲むお茶にはまだ北海道の香りが残っていました。
ドリトル先生北海道に行く
2016・1・12
これにて先生の北海道旅行はお終いか。
美姫 「大きな問題もなかったしね」
だな。まあ、最後にちょっとあったけれど。
美姫 「あれは問題と言うかしら」
まあ、日笠さんは喜んだみたいだけれど。
美姫 「ある意味、先生らしいかもしれないけれどね」
今回も楽しませてもらいました。
美姫 「投稿ありがとうございました」
ではでは。