『ドリトル先生北海道に行く』
第八幕 アイヌの人達のところに
先生達は夕張の宿泊先のホテルの中で晩御飯を楽しんでいました。先生達は今日の晩御飯はステーキを食べています。
ジップはそのステーキを食べつつ言いました。
「ステーキも美味しいよ」
「北海道の牛のだね」
「お肉自体がいいね」
「ジャガイモは勿論だしね」
ダブダブはステーキと一緒に出されているマッシュポテトを食べています。
「マッシュポテト最高だよ」
「当然コーンも」
「いいわ」
チープサイドの家族は大好物を楽しんでいます。
「幾らでも食べられるよ」
「食べ過ぎて飛べなくなるかも」
「トウモコロシの味が違うのよ」
ガブガブもトウモロコシをどんどん食べています。
「別格よ」
「やっぱり北海道は美味しいものの宝庫ね」
ポリネシアもこう言います。
「何でも美味しいわ」
「羊だけでなく牛肉も美味しい」
しみじみとして言ったのはトートーでした。
「悪いものがないね」
「牧草も美味しいしね」
「牧場の牧草最高だったよ」
オシツオサレツは牧場でご馳走になったそれの味を思い出しています。
「食べやすくてね」
「お野菜もね」
「皆太りそうにしても」
実際にと言った老馬でした。
「食べずにはいられないね」
「チーズは言うまでもないね」
ホワイティはチーズも大好きなのでそちらも食べています。三角系のそのチーズをかりかりと齧っています。
「絶品過ぎて満腹になってもまだ食べたいよ」
「何でも美味しいのは」
最後に言ったのはチーチーでした。
「最高の幸せだね」
「全くだよ、このステーキは」
勿論先生もご満悦です。
「何枚でも食べられるよ」
「先生実際に今で三枚目だよね」
「分厚いステーキ三枚も食べてるよ」
「それでもう一枚かな」
「まだ食べるのかしら」
「うん、食べるよ」
小樽ワインも飲みつつ言う先生でした。
「あまりにも美味しいからね」
「だからだね」
「ステーキもう一枚だね」
「四枚目も食べる」
「そうするんだね」
「そうするよ、こんなに美味しいと」
それこそというのです。
「幾らでも食べられるよ」
「ただ先生」
ここで先生と同じくステーキを食べているトミーが先生に言ってきました。勿論王子もステーキを美味しく食べています。
「デザートがありますから」
「メロンだね」
「そのことは覚えておかないと」
「うん、わかってるよ」
微笑んで答えた先生でした。
「そちらもね」
「それなら」
「甘いものは別腹だよ」
先生はにこりとしてこうも言いました。
「ステーキをお腹一杯食べてもね」
「メロンはですか」
「入るよ」
そうだというのです。
「だから大丈夫だよ」
「そういうものですか?」
「うん、だから安心してね」
「日本ではそうした言葉もありますね」
「甘いものは別腹という言葉がね」
「実際にそうなんですか」
「人体の構造では勿論違うよ」
現実ではというのです。
「それはね」
「はい、人の胃は一つです」
「牛は四つだけれどね」
先生達が今食べている牛はです。
「人間は一つだよ」
「それでもそう言うんですね」
「入る場所は同じだよ」
胃は一つなのですからです。
「それでもね」
「そう言いますね」
「お腹一杯になっても甘いものへの欲求は抑えられないんだ」
「そういう意味での言葉なんですね」
「そう、それで無理をしてでも食べるんだ」
「成程」
トミーはここまで聞いて頷きました。
「そういうことですね」
「面白い日本語だね」
「実際にそう思いました、けれど」
「けれど?」
「ここのホテルが出すメロンかなり大きいらしいですよ」
「あれっ、そうなんだ」
「はい、それで有名らしいですよ」
メロンのその大きさで、です。
「かなり甘いだけじゃなくて」
「そんなに大きいんだ」
「夕張メロンで」
地元なので地元のメロンであることは言うまでもありません。
「しかもアイスクリームも付くらしいですよ」
「メロンにアイスだね」
「その組み合わせだそうです」
ただメロンが出されるだけでなくというのです。
「ですから結構ボリュームがありますよ」
「そうだったんだ」
「大丈夫ですか、それでも」
トミーは先生を心配するお顔で見ています。
「デザートも食べられますか?」
「うん、大丈夫だよ」
微笑んで答えた先生でした。
「もう一枚食べてもね」
「だといいですけれど」
「トミーは心配無用だよ」
「それなら」
「メロンも食べよう」
アイスクリーム付きのそれもというのです、こうしたことをステーキを食べながらお話しました。そしてでした。
先生はもう一枚ステーキを食べました、その後で。
デザートのメロンが出て来ました、そのメロンは確かに大きくてしかもバニラのアイスクリームも一緒でした。
そのメロンを見てです、動物の皆も言いました。
「確かに大きいね」
「普通のメロンより一回りは大きいね」
「トミーの言う通りだね」
「大きなメロンね」
「そうだね、けれど」
ここでまた言った先生でした。
「とても美味しそうだね」
「先生食べられそうだね」
「ステーキ四枚食べたけれどね」
「このメロンも食べられそうだね」
「無事に」
「うん、いけるよ」
実際にと言う先生でした。
「美味しそうだからね」
「美味しいと幾らでも入る」
「それこそ限界まで」
「先生もそうなのね」
「今の先生も」
「そうなんだ、だからね」
それでとです、先生はスプーンを取ってでした。
そのメロンをアイスクリームを食べはじめました、そしてあっという間にでした。
メロンもアイスクリームも食べ終えました、それからこう言うのでした。
「うん、満腹したよ」
「そうだろうね、そこまで食べたら」
「流石にそうなわね」
「けれどメロンまでね」
「ちゃんと食べたね」
「いや、美味しかったよ」
至高の笑顔で言った先生でした。
「満足したね」
「だろうね、じゃあね」
「御飯を食べ終えたし」
「後はね」
「お風呂に入って寝よう」
「そしてまた明日だね」
「明日はね」
その明日のこともお話する先生でした。
「午前中に話したけれどアイヌの人達のことでね」
「あっ、行くんだ」
「アイヌの人達のところに」
「そうするんだ」
「うん、最初から決めていたんだ」
北海道に旅行に行くと決めたその時にです。
「もうね」
「早いね」
「その時からだったんだ」
「アイヌの人達のところに行くことを」
「決めていたんだ」
「その土地に来たらね」
その時はというのです。
「やっぱりね」
「その土地のこと、そして人のことをだね」
王子が自分の残っているワインを飲みつつ先生に尋ねました。
「見ないとだね」
「そうすべきだからね」
「先生らしい考えだね」
「僕らしいっていうと」
「先生は学者だからね」
それでというのです。
「そうした考えに至るのがらしいよ」
「そうなんだね」
「アイヌの人達のことは僕も聞いてたし」
それにという王子でした。
「八条学園の博物館にも資料があるよね」
「あそこにある資料はかなり充実しているね」
「アイヌの人達の服や風俗習慣のことがね」
「よくわかる」
「だから僕も知っていたけれど」
王子はワインを飲みつつお話をします、お酒は入っていますがあまりお顔には出ていないです。このことは先生とトミーも同じです。
「ちょっとね」
「ちょっとっていうと」
「この目でアイヌの人達を見るのはね」
そのことはというのです。
「はじめてだよ」
「お話をすることもだね」
「若しその機会があったら」
王子は目を輝かせて言いました。
「是非にだね」
「じゃあ明日はだね」
「楽しみだよ」
「王子も楽しみなんだね」
「というと先生も」
「うん、アイヌの人達のことを詳しく聞いて」
他ならぬアイヌの人達自身からです。
「学びたいよ」
「ではね」
「うん、明日行くよ」
先生は明るいお顔で言うのでした、その後で。
お風呂に入ってそうしてホテルのベッドでゆっくりと休みました。そしてホテルのビュッフェ形式の朝食を楽しんで。
王子のキャンピングカーに皆で乗り込みました、そのうえで。
先生は王子にアイヌの人達の場所が書かれている地図を手渡しました、すると王子はすぐに納得したお顔で言いました。
「あれっ、近いよ」
「このホテルからだね」
「うん、すぐそこじゃないか」
王子は地図を見つつ先生に答えました。
「遠いと思っていたら」
「近いのなら行けるね」
「そうだね、ただね」
「ただ?」
「先生どうもね」
先生のお顔を見つつ言った王子でした。
「方向音痴もね」
「うん、相変わらずなんだ」
「そうなんだね」
「地理のことはわかってもね」
それでもというのです。
「僕は実際にその場所に自分で一人で行くとなるとね」
「方向音痴だからだね」
「中々すぐには行けないんだ」
困ったことにです。
「そうなんだよ」
「だから僕達も一緒なんだ」
「先生って世事のことは本当に駄目だから」
「方向音痴だし」
「家事も全然出来ないしね」
そうしたことは本当に駄目なのが先生なのです。
「だから僕達がフォローしているんだ」
「先生が苦手なことはね」
「先生苦手なことは本当に全然適性がないから」
「私達がいつも一緒なのよ」
「何処かに行く時も」
まさに今の様な時もです。
「方向音痴の先生の為にね」
「誰かが一緒だけれど」
「今回はだね」
今はと言う王子でした。
「僕が先生のフォローをするということだね」
「うん、つまりはね」
「そういうことだね」
「それじゃあね」
「今からそのアイヌの人達のところにね」
「行こうね」
「楽しみだね」
その方向音痴でもある先生はにこにことしています。
「今から」
「そうだね、どんな人達かな」
「アイヌの人達って」
「北海道に昔からいる人達って」
「どんな人達かしら」
「お会いした時にわかるよ」
これが先生のお返事でした。
「これからね」
「つまり百聞は一見に然ず」
「そういうことね」
「そうだよ、では行こうね」
先生は真っ先にという感じでした、こうしたお話をしてそのうえでキャンピングカーは出発しました。そしてでした。
皆でアイヌの人達の資料館に行きました、そこに行きますと。
動物の皆が八条学園の博物館で見ていますがその目で実際に見たのははじめてのアイヌの人達の服を見て驚きの声をあげました。
「へえ、本当にね」
「アイヌの人達だね」
「アイヌの人達の服だね」
「ということは」
「はい、私はです」
黒髪の奇麗な、アジア系の顔立ちの若い女の人です。黒地で縁のところが赤く柔ない感じの渦巻きの模様が描かれていて縁のない帽子も被っています。黒と白の横のストライブの帯でその服をちゃんと締めています。
その女の人がです、先生ににこりとして言ってきたのです。
「アイヌです」
「君がだね」
「代々この土地で暮らしています」
「成程ね」
「それで大学を出てからです」
「この資料館で働いているんだ」
「この資料館は八条グループが運営していまして」
ここでもこのグループの名前が出てきました。
「私も勤務しています」
「じゃあ君の出身大学は」
「はい、八条大学です」
にこりとその奇麗なお顔を綻ばせて先生にお話しました。
「八条大学文学部歴史学科卒業です」
「専攻は北海道の歴史かな」
「民俗学です」
「そちらなんだね」
「北海道、アイヌの風俗習慣そして伝承はとても面白いので」
「そうそう、そうなんだよね」
先生はアイヌのお姉さんの言葉ににこりとして返しました。
「アイヌの文化もね」
「あれっ、確か」
ここで、です。お姉さんは先生のお顔をじっと見てあらためて言ってきました。
「貴方はドリトル先生ですか?」
「僕のことを知ってるのかな」
「はい、先生は有名ですよ」
笑顔で先生に言ってきました。
「イギリスから八条大学に来られたお医者さんですね」
「そうだよ」
「医学部の教授さんで他にもあらゆる学問に通じておられる」
「いやいや、ただ好きなことをしているだけだよ」
「先生のことでしたらこの資料館でも有名ですよ」
「そうなんだね」
「まさか来られるとは思いませんでした」
この資料館にというのです。
「お会い出来て何よりです」
「そこまで言ってくれるんだね」
「ずっとお会いしたと思っていました」
「僕もアイヌの人達の資料館に来られて嬉しいよ」
「ではアイヌのこともを」
「この資料館で見ていいかな」
「はい、どうぞ」
是非にというお返事でした。
「案内させて頂きます」
「それじゃあお願いするね」
「では」
「この人って」
「そうだよね」
ここで動物の皆はお姉さんを見てお話をしました。
「奇麗だよね」
「うん、黒髪に黒い目で」
「日本人らしいね」
「そんな奇麗さだよね」
「アイヌ人って民族が違うって聞いてたけれど」
「同じじゃない」
他の日本人、つまり大和民族と似ているというのです。
「イングランド人とスコットランド人と同じ?」
「違うって聞いても似ていない?」
「そうだよね」
「そっくりだよね」
「だから混血しているんだよ」
先生はその皆にもお話します。
「アイヌ民族と大和民族はね」
「母は大和民族です」
お姉さんもにこりとして言いました。
「実は」
「あれっ、そうだったんだ」
「といいますか確かに私はアイヌ民族ですが」
それでもというのです。
「アイヌ民族と大和民族は昔から交流がありまして」
「それで、なんだね」
「混血もしています」
「だから外見もだね」
「同じなんです」
「同じアジア系なんだね、確か」
ここで先生はこんなことを言いました。
「アイヌ民族はコーカロイドという説もあったね」
「最初はですね」
「髭が濃くて肌の色とかもそうした感じだったそうで」
「縄文系という説もありますね」
お姉さんもお話します。
「そうした説も」
「そうだね、けれど今は」
「はい、代々混血してきたので」
「外見は日本人と変わらないね」
「お互いに混血して一緒になっています」
「そうなんだね」
「ですから私もです」
他ならないお姉さんもというのです。
「こうした外見です」
「日本人と変わらないだね」
「アイヌ人の友達もいますけれど」
それと共にというのです。
「日本人の友達も多いですよ」
「一緒に暮らしているんだね」
「今はそうなっています、そして」
「こうしてアイヌの文化もだね」
「残しています」
「そうなんだね」
「ただ、普段はこのアットゥシは着ていません」
今着ているそのアイヌの服に触れての言葉です。
「洋服です」
「民族衣装はだね」
「普段は着ていないです」
「この資料館でだけだね」
「そうなんです」
「あれっ、何か」
ここでふとです、王子がお姉さんのそのアイヌの服の着方を見て言いました。
「その服の」
「アットゥシですね」
「それがその服の名前なんだね」
「はい、そうです」
「いや、何で左が前かな」
「これは昔の着方でして」
お姉さんは王子にそのアットゥシに触れながら説明するのでいsた。
「左を前にしてです」
「着るんだね」
「それも普通でした」
「成程ね」
「それは女の人のアットゥシですか?」
今度はトミーがお姉さんに尋ねました。
「男の人はどんなのですか?」
「同じです」
「男の人も同じアットゥシですか」
「そうです」
そのアットゥシとズボンを見せての言葉です。
「私達は一年中このアットゥシを着ています」
「北海道は寒いですけれど」
トミーはお姉さんにこのことを聞きました。
「その服で大丈夫ですか?」
「寒い時はその上に毛皮を着ますので」
「毛皮もあるんですか」
「そうなんです」
「そうですか、厚着も出来るんですね」
「そうなんです」
お姉さんはトミーににこりと笑ってお話するのでした。
「いつも」
「そうですか、わかりました」
「このアットゥシはオヒョウの樹皮から作った繊維から糸を作りそれで編んだものです」
「木綿ではないですね」
「木綿はなかったので」
「北海道には」
「はい、長い間」
「そう、木綿が日本に入って定着したのはね」
先生がここでまた言ってきました。
「比較的新しいんだ」
「そうですね」
「だからアイヌの人達の服にしてもね」
「こうして樹皮であったり毛皮もあれば」
お姉さんもお話します。
「鮭の皮のものもあります」
「色々あるんだね」
「ここにはそうした服も置いてあります」
アイヌ民族のそれもというのです。
「そして狩猟道具や生活道具もありますので」
「じゃあ今から」
「そういうのを見て勉強するんだね」
「私達も」
動物の皆もお話してでした、そのうえで。
皆はお姉さんに案内されて資料館の中を回りました。中は結構広くてアイヌの人達の歴史や風俗習慣についての資料が一杯ありました。
服を着たアイヌの人達のマネキンもあります、そして弓矢等もあって。
動物の皆はそれぞれ顔を合わせてこんなことを言い合いました。
「何かね」
「農業がないね」
「そうだよね」
「アイヌの人達の文化ってね」
「狩猟だよね」
「それと漁業だね」
「そう、アイヌ民族は狩猟民族なんだ」
先生が皆にこうお話しました。
「昔はそうして生活していたんだよ」
「そうなんだね」
「アイヌの人達は農業じゃないんだ」
「狩猟とか漁業でなんだ」
「昔はそうして暮らしていたんだね」
「日本人なら農業だってイメージ強いけれどね」
「日本は確かに農業の国だよ」
先生もこのことは否定しません。
「けれどね」
「それでもなんだね」
「こうした生活を送っている人達もいたんだ」
「猟師や漁師の人達もいて」
「アイヌの人達もそうなんだね」
「本州や四国、九州には山窩という人達がいたよ」
先生はこの人達の名前もです、皆にお話しました。
「まだいるらしいけれどね」
「山だね」
「じゃあ山で暮らしている人達だね」
「アイヌの人達とは別に」
「日本にはそうした人達もいるんだ」
「日本には色々な人達がいるからね」
それでというのです。
「そうした人達もいるんだ」
「成程ね」
「山に昔から住んでいる人達」
「そんな人達もいるんだね」
「そう、そしてアイヌ民族は昔はこの資料館にある通り」
まさにというのです。
「狩猟や漁業で暮らしていたんだ」
「自然と一緒に暮らしていました」
お姉さんもまた説明してきます。
「私達は」
「そうだったね」
「本土の人達、新しく入って来た人達とはまた違います」
「お家も住んでいる場所もそうで」
「そして文化もです」
「自然と一緒なんだね」
「本土の人達もそうですが」
農業をして暮らしていた大和民族の人達もそのことは変わらないです、ですがアイヌの人達もまた然りというのです。
「私達も同じです」
「農業と狩猟の違いだね」
「簡単に言うとそうです」
「農業は土と水で」
「狩猟は木と風でしょうか」
「そうなるね」
「多く影響を受けるものは」
生きるにあたってです。
「とはいっても私はもう都会暮らしですけれど」
ここでは少し苦笑いになって言うお姉さんでした。
「生まれた時から」
「そうなんだね」
「はい、両親と一緒に」
「アイヌの人達も今では」
「そうです、普通に街で暮らしている人が多いです」
王子にもこう言うのでした。
「私の家族みたいに」
「成程ね」
「それと食べるものも」
そちらもというのです。
「今じゃ普通に和食や洋食も食べます」
「アイヌの人達の料理は」
「資料として残ってますしここでも食べられますけれど」
それでもというのです。
「もう食べないですね」
「そうなんだね」
「ただ、アイヌ料理はこの資料館で食べられますが」
「あっ、じゃあ」
「如何でしょうか」
「先生、どうかな」
王子は早速です、先生にお顔を向けて提案しました。
「今日のお昼は」
「そうだね、今日のお昼は食べるものをまだ決めてなかったし
「それじゃあね」
「それを食べよう」
「ではです」
お姉さんは先生の決定を受けて言いました。
「レストランに案内致します」
「ここはレストランもやっているんだ」
「はい、そのアイヌ料理の」
「成程ね」
「そのアイヌ料理を用意していますので」
「それじゃあ今から行かせてもらうね」
「お酒もあります」
そちらの用意もしているというのです。
「アイヌのお酒ですが」
「アイヌ民族のお酒」
「興味がおありでしたら」
是非にと言うお姉さんでした。
「お酒も楽しまれて下さい」
「それではね」
先生も頷きます、そしてでした。
先生達はお姉さんにそのアイヌ料理のレストラン、資料館本館の隣にあるその建物に案内してもらいました。
そこで日本語で書かれたメニューを説明を読んでです、先生は白地のアットゥシを着たウェイトレスの女の子に注文しました。
お姉さんは注文が終わるとです、こう先生に言いました。
「私は資料館にいますので」
「ここでは食べないのかな」
「こちらはお客様の場所です」
にこりとしたお言葉でした。
「それに私はお弁当を持って来ていますので」
「だからなんだね」
「先生達だけでお楽しみ下さい」
「それじゃあね」
先生も頷きました、そしてでした。
お姉さんは資料館に戻って先生達だけでアイヌ料理を食べることになりました。暫くして先生が注文したメニューが来ました。
「色々あるね」
「そうだね」
動物の皆はそのメニューを見て言いました。
「汁ものにお粥」
「野菜の和えものに」
「団子料理に」
「お魚のたたきだね」
こちらは鮭や鱒です。
「干し肉と」
「ジャガイモを加工したもの」
「それに濁ったお酒だね」
「汁ものはオハウといってね」
先生は料理の説明をはじめました。
「お肉やお野菜、山菜を煮たものだよ」
「オハウっていうんだlこの汁もの」
「そうした名前なんだ」
「アイヌ語だよ」
その料理の名前はというのです。
「他の料理もね、アットゥシと同じで」
「やっぱりアイヌのものだからだね」
「アイヌ語なんだね」
「そうなんだ、そしてこのお野菜の和えものは」
それはといいますと。
「ラタクシブ、お粥はサヨ、お団子はシトでね」
「それぞれだね」
「そういう名前だね」
「タタキはチタタブ、干し肉はサッカム、ジャガイモのこれはボッチェイモ、お酒はトノトだね」
「このお酒はお米?」
老馬が先生に尋ねました。
「違うよね」
「これ稗だよ」
ジップが匂いを嗅いで言いました。
「匂いでわかったよ」
「うん、確かにね」
「これはお米のお酒じゃないわね」
チープサイドの家族も言います。
「また別のお酒ね」
「どうやらね」
「稗はね」
ポリネシアが言うには。
「また珍しいわね」
「というか稗なんて」
それこそと言ったのはホワイティでした。
「日本では人が食べるのは珍しくない?」
「日本人はお米大好きだからね」
ダブダブもこのことはよく知っています。
「主食はお米だけれど」
「やっぱりアイヌの人は農業とは縁が薄いし」
トートーも言います。
「寒いからお米が採れなかったせいかな」
「お米も本来は暖かい場所のものよ」
ガブガブはこのことを一家の家政婦として知っています、食べものを買うことも彼女のお仕事だからです。
「だから北海道では昔はお米はなかったのね」
「だから稗のお酒なんだね」
チーチーは皆のお話を聞いて納得しました。
「そういうことだね」
「成程、稗のお酒」
「今じゃ確かに珍しいね」
最後にオシツオサレツが二つの頭で言いました。
「日本はお米だから」
「そこも違うね」
「うん、日本でお米以外のお酒となると」
それこそとです、先生も言います。
「焼酎があるけれどね」
「あれは薩摩芋だね」
「薩摩芋から造ったお酒だね」
「そうしたお酒もあるけれど」
「こうしたお酒もあるんだね」
「アイヌの人達のお酒だね」
「そう、そして元々はね」
今度はその和えものや他のお料理を見ての言葉です。
「お醤油も使ってなくて油脂を味付けに使っていたんだ」
「ああ、お醤油もなんだ」
「なかったんだ」
「言われてみればそうだね」
「お醤油も本土の人達のものだから」
「それでだね」
「そうだよ、お塩は前から使っていただろうけれど」
それでもというのです。
「お醤油やお味噌は最近まで使っていなかったんだ」
「アイヌ料理では」
「そうなんだね、やっぱり」
「お味噌もだね」
「なかったんだね」
「そうだったんだ」
「うん、アイヌ料理も時代によって変わっていて」
そしてというのです。
「このお料理は最近の調味料も使っているみたいだね」
「ちょっとお醤油の匂いするね」
「確かにね」
「お味噌も」
「日本人にとって欠かせない調味料の匂いもね」
「流石に昔の味の完全に忠実な再現はないね」
そこは理解して言う先生でした。
「食べる人達にとっても作る人達にとっても」
「お醤油やお味噌がないと」
「日本人にとってはだね」
「舌に合わない」
「そういうものだね」
「そうだね、じゃあね」
それならとお話してでした、そのうえで。
先生達は皆でそのアイヌ料理を食べるのでした。
皆食べてです、まずはこう言いました。
「お粥とかお汁とかね」
「温かい感じのが多いね」
「それで脂っこいね」
「日本のお料理の中ではね」
「やっぱり寒いからだね」
「うん、北海道がね
「だからどうしてもだね」
その寒さに対する為にというのです。
「温かいものなんだね」
「それに保存食もあるね」
「干し肉美味しいね」
「こうしたものも発達してるのね」
「冬とかに備えて」
「そうだろうね」
こう皆でお話するのでした。
「そしてだね」
「このジャガイモのお料理もいいわね」
「日本のジャガイモ料理もいいけれど」
「こちらもね」
それぞれ満足して食べています、勿論先生もです。
そのアイヌ料理を口にして笑顔でいます。
「うん、いいね」
「アイヌ料理もこれで」
「いいね」
トミーと王子も言います。
「サヨも食べやすくて」
「味付けもかなりのものだよ」
「うん、こうした料理もあるんだね」
先生はしみじみとして言いました。
「日本には」
「和食とはまた違った、ね」
王子がここで出した言葉はといいますと。
「野性味というかそんな感じがするかな」
「うん、自然の味だね」
「そんな味だね」
「僕もそう思ったよ」
「日本の料理っていうと」
王子がここで言うことはといいますと。
「本当に繊細でね」
「手が込んでいるね」
「そんなイメージが強いからね」
「僕もそう考えているよ」
「けれどこうした料理もあるんだね」
「うん、日本にはね」
「これは新しい発見だよ」
王子にとってもというのです。
「いい勉強になったよ」
「というか日本はね」
「非常に奥が深いね」
「そうした国だね」
動物の皆も言うのでした。
「お料理にしても」
「お醤油だけじゃない」
「そういうことだね」
「日本は様々なものがその中にあるということだよ」
「わかったよ、このことも」
「アイヌもまた日本だね」
「そうだよ、そしてね」
さらにお話する先生でした。
「アイヌ民族は狩猟民族だけあって自然にとても近くてね」
「自然を大事にする?」
「そうなんだね」
「日本には自然信仰が深くあるけれど」
「アイヌ人はその中でもなんだ」
「特に自然を大事にするんだ」
「その傾向が強いんだ」
実際にというのです。
「シャーマニズムの思想も強いよ」
「日本に昔からある」
「その考えがアイヌの人達にもあるんだ」
「そうなんだね」
「羆とか鮭とか鹿への信仰もあるからね」
このこともお話します、そしてでした。
先生達はアイヌ料理やお酒を楽しんでから資料館を楽しい気持ちで後にしました。けれどその後でなのでした。
先生は皆にです、こうしたことを言いました。
「さっき羆のことを話したけれどね」
「羆っていうとね」
「この北海道の熊さんだよね」
「ツキノワグマさんとはまた違う」
「大きな熊さんだよね」
「あの熊さんはね」
それはというのです、先生も。
「かなり大きくて強いから」
「それで襲われたりしたら」
「シベリアの熊さん達と同じで」
「大変なんだね」
「種類は実際に同じだよ」
シベリアの熊さんと北海道の熊さんはです。
「グリズリーと羆はね」
「熊さんの中でも同じ種類なんだね」
「大きな種類なんだね」
「それで怖いんだ」
「特にお腹が空いていたりしたら」
「その強さから神様とも考えられているんだ」
そうした考えがあるというのです、アイヌの人達には。
「山やそうしたものにいる荒ぶる神様だってね」
「それも自然信仰なんだね」
「アイヌの人達の間での」
「そうした考え本州とかにもあるけれど」
「北海道でもあるんだね」
「アイヌの人達の間でも」
「そうだよ」
実際にというのです。
「そしてそれが日本とは違っていてさらにその考えが強いんだ」
「アイヌの人達独自のだね」
「そうした考えでだね」
「羆さん達は神様にも思われている」
「荒ぶる神様だって」
「そうした風にも考えられているんだ」
荒ぶる神の信仰をお話するのでした。
「自然信仰だね」
「じゃあだね」
「羆さん達は怖くもあるけれど」
「ただ怖いだけじゃない」
「神様としても考えられているんだね」
「成程、わかったよ」
皆で先生の言葉に頷きます、そのうえで。
そうしたことをお話してでした、先生達は次の目的地に向かうことにしました。次に向かう場所はといいますと。
「摩周湖に行こう」
「摩周湖っていうと」
王子がその湖を聞いて言うことはといいますと。
「確か怪獣がいたよね」
「それは屈斜路湖だよ」
「あっ、摩周湖じゃないんだ」
「そう、また別の湖だよ」
「そうなんだね」
「摩周湖にいるのはマリモだよ」
「あの植物だね」
王子はマリモと聞いてこう答えました。
「お水の中で丸い緑のものだね」
「そうだよ、緑のね」
「あれはあれで面白いね」
「うん、八条学園の植物園にもいるね」
「そうだね、可愛いね」
「その摩周湖にも行くから」
「屈斜路湖にも行くけれどね」
そちらの湖もというのです。
「楽しみにしておいてね」
「怪獣いるかな」
「クッシーだね」
「見られたらいいね」
「その怪獣もね」
こうしたことをお話してでした、皆は今度は摩周湖に行くのでした、先生達は北海道の奇麗な場所も巡ります。
夕張で楽しんだ後、資料館に。
美姫 「アイヌに関しても先生は詳しいのね」
本当に色々と知っているな。
美姫 「色々と話を聞いて先生も楽しそうだったわね」
だな。次は摩周湖か、
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。