『ドリトル先生北海道に行く』
第七幕 北海道の自然
先生は札幌を楽しんだ後で、です。札幌駅に向かう途中で一緒に駅に向かっている動物の皆に言いました。
「札幌の後は夕張に行くけれど」
「今度はだね」
「あの街に行くんだね」
「それでまた食べて」
「観光も楽しむんだよね」
「そうするつもりだよ、ただね」
ここでこうも言った先生でした。
「北海道は街や美味しいものだけじゃないから」
「ううんと、他には」
「他にはまだあるのかな」
「この北海道には」
「一体」
「アイヌの人達もいてね」
「アイヌの人達っていいますと」
トミーはアイヌと聞いて先生に尋ねました。
「この北海道に昔から住んでいる」
「そう、その人達だよ」
「他の日本人とは民族が違うんでしたね」
「アイヌ民族なんだ」
こうトミーにもお話するのでした。
「民族的にはね」
「日本人はおおむね大和民族ですよね」
「そう、大和民族は縄文人と弥生人の混血だけれど」
「アイヌ民族は確か」
「コーカロイドの血が濃いとも縄文系の血が濃いとも言われているよ」
「先生はアイヌのこともですね」
「本や論文は読んでいるよ」
学者としてです、先生はアイヌの人達のことも本を読んだりして知っているのです。
「同じ日本にいる人達だからね」
「それで、ですね」
「ただ、民族が違うといっても」
それでもともです、先生は皆にお話します。
「同じ国に住んでいるから混血はしているよ」
「そうなんだね」
今度は王子が応えました。
「お互いに」
「そう、アイヌ民族と混血している人はね」
「日本人でだね」
「一つの特徴があると言われているんだ」
「その特徴は何かな」
「蒙古斑だよ」
これだというのです。
「生まれた時から子供の時にあるね」
「蒙古斑っていうと」
「アジア系の人の特徴の一つでね」
「あのお尻の青い痣だよね」
「アジア系の人にはそれがあるね」
「そうそう、僕達にはないけれど」
アフリカ系の王子やヨーロッパ系の先生やトミーにはです。
「アジア系の人にはあるんだよね」
「日本ではアイヌ人の血が入っているね」
「そのルーツにだね」
「蒙古斑があると言われているんだ」
「そうなんだ」
「そのことから見ると」
大和民族とアイヌ民族はというのです。
「お互いにかなり混血しているんだ」
「そうなんだね」
「そう思っていいよ、アイヌの人達は日本人だよ」
紛れもなくというのです。
「この日本にいるね」
「そうだね、日本もね」
王子はここまで聞いて言いました。
「一つの民族の国ではないんだね」
「そうだよ、多民族国家だよ」
「そうだよね」
「その証拠の一つにね」
「?何かあるの?」
「皇室の存在があるよ」
日本の国家元首であられる方とそのご一族の方々のお名前がここで出ました。
「日本のね」
「ああ、あの凄く歴史の古い」
「王子も確か皇居に行ったことがあるね」
「あるよ、そして天皇陛下にもお会いしたけれど」
王国の太子としてです、王子はその役目を果たしたのです。
「あんなに緊張したことはそうはないね」
「大変だったね」
「うん、太子としての務めを果たしたよ」
「その皇室の存在も証拠なんだ」
「日本が多民族国家であることの」
「皇室、天皇は英訳するとエンペラーになるんだ」
先生はご自身のお国の言葉も出しました。
「皇帝だね」
「そうだね、皇帝になるね」
エンペラーとすると、とです。王子も頷きます。
「確かに」
「皇帝は複数の宗教、民族を治める存在なんだ」
「そうなんだ」
「欧州ではローマ皇帝の継承者、中国では中華世界の統治者だね」
そうした意味もあるというのです。
「トルコではスルタンでありカリフかな」
「領主でありムハンマドの継承者」
「そうなるかな」
スルタン=カリフです、かつてトルコはオスマン=トルコという国でしたがこの国にもまた皇帝が存在していたのです。
「あの国だと」
「成程ね」
「日本の皇室は天照大神の子孫とされているね」
「神様の子孫だね」
「伊勢神宮のね」
「あの三重県の物凄く大きな神社だね」
「あの社に祀られている太陽の女神の子孫とされているんだ」
それが日本の天皇陛下であり皇室の方々だというのです。
「聖徳太子という人が当時の中国の皇帝、隋の煬帝に日いづる国の天子と文で書いたけれど」
「ああ、あのお話ですね」
「有名なお話だね」
トミーも王子も頷きます、そのお話を聞いて。
「あのお話もなんだ」
「日本の天皇が皇帝であるっていうことの証拠なんだ」
「そうだよ、そして皇帝は一つの文明を治める存在でもある」
「じゃあ日本の天皇も」
「文明の統治者なんだね」
「そう、日本文明のね」
それになるというのです。
「これはハンチントンという人の考えだけれど」
「日本は一つの文明」
「そうなるんだね」
「そうも考えられるよ」
「ううん、アイヌ人も日本人で」
「日本もまた多民族国家で」
トミーも王子も考えています、日本のことについて。
「天皇は皇帝で」
「日本文明があるんだね」
「僕もそうかもって考えているよ」
先生が学問の中で辿り着いたお考えです。
「日本の文化はかなり独特だしね」
「文明なんですね」
「この国にあるものは」
「そうかも知れないね、それでアイヌの人達のこともね」
「この旅行で、ですね」
「見ていくんですね」
「夕張に行って」
そしてというのです。
「アイヌの人達ともお会いするよ」
「ううん、北海道ってね」
「凄く盛り沢山なところだね」
動物の皆もここで言うのでした。
「何かとね」
「美味しいものがあって」
「海も夜景もあって」
「西洋もあってね」
「おまけにアイヌの人達もいるなんて」
「凄く色々あるんだね」
「そうだよ、生物学的にも独特だしね」
このことにも言及した先生でした。
「やっぱり来てみてよかったよ」
「同じ日本でもね」
「神戸と全然違う場所なんだね」
「いや、日本の他の地域とも」
「北海道は違う場所なんだね」
「そうなんだ、何度か皆に話してるけれど」
先生は穏やかな声で皆にさらにお話しました。
「狐も日本の他の地域の狐と北海道の狐は違うんだ」
「同じ狐でも」
「そrでもなんだ」
「北海道と他の地域で違うんだ」
「同じ日本の狐でも」
「確かに先生に教えてもらってるけれど」
「それ不思議なことだよ」
「本州や四国、九州の狐はホンドギツネなんだ」
こうした名前だというのです。
「僕達が京都で会った長生きしている狐さん達もね」
「あの狐さん達もなんだ」
「ホンドギツネなんだ」
「そちらになるんだ」
「そう、そして北海道の狐はね」
彼等はといいますと。
「キタキツネというからね」
「ううん、狐でもだね」
「同じ日本の狐で種類が違うんだ」
「同じって言ってもいいかも知れない種類だけれど」
それでもというのです。
「亜種になるんだ、キタキツネがね」
「そういうことなんだね」
「そして他の生きものもそうで」
「本州や四国、九州の生きものと北海道の生きものは違う」
「似てはいても」
「生物学というのは面白くてね」
それでというのです。
「同じ生きものでも住んでいる地域によって種類が分けられているんだ」
「それで日本でもなんだね」
「北海道と他の地域だと」
「また違っていて」
「分けられているんだね」
「そうなんだ、だから生物学は覚えるのが大変でもあるんだ」
生きものの種類にしてもです。
「日本にしてもそのことは同じだよ」
「そしてその北海道の生きものについても」
「生成は興味がある」
「そうだよね」
「うん、そうだよ」
その通りとです、笑顔で応えた先生でした。
「この旅行でも見たいものだね」
「ただ先生」
ここで王子は少し真剣なお顔で先生に尋ねました。
「一つ気になることがあるけれど」
「何かな」
「熊だけれど」
「ああ、北海道の熊はね」
熊と聞いてです、先生も王子にすぐに応えました。
「ヒグマだよ」
「本州とかの熊とは違うね」
「他の生きものは亜種だけれど」
「熊についてはかなり違うよね」
「本州や四国の熊はツキノワグマでね」
その熊だというのです。
「首のところに白い三日月型の模様が入っていることがあってね」
「だからツキノワグマだね」
「その名前の由来にもなっているよ」
「そうだよね」
「そう、そしてツキノワグマは熊の中でもかなり小型なんだ」
「性格も大人しいよね」
「だから人を襲うことも滅多にないんだ」
先生はそのツキノワグマについてもお話しました。
「少なくとも本州や四国、九州で熊に食い殺された人の話はないね」
「そうなんだ、けれど」
「そう、北海道ではあるね」
「とんでもない事件あったらしいね」
「明治の頃にね」
先生はこのことは暗い顔でお話しました。
「小さな開拓村が襲われたことがあったよ」
「とんでもない事件だったって」
王子のお顔は何時しか強張ったものになっています。
「聞いてるよ」
「うん、僕も調べたことがあるけれど」
その事件についてです。
「あれは酷いね」
「本当にあったんだよね」
「うん、そうだよ」
その通りと答えた先生でした。
「あれは本当にあった事件なんだ」
「この北海道で」
「今も慰霊碑もあるしね」
犠牲になった人達の為にです。
「北海道ではかなり有名な事件だね」
「そうだよね」
「羆嵐といってね」
「何人も犠牲になって」
「軍隊まで出てね」
「えっ、軍隊って」
軍隊と聞いてです、動物の皆は思わず言いました。
「熊を退治するのに?」
「軍隊まで出たんだ」
「狩人じゃなくて」
「軍隊が」
「そうだったんだ、もっとも軍隊がこうした時に出るのは」
そうした場合はといいますと。
「他の国にも例があるね」
「そういえばそうだね」
「フランスの野獣でもそうだったわ」
「ジェヴォダンの野獣」
「あの野獣についてもだったね」
「軍隊も出て」
「そして退治されたわ」
そうしたこともあったとです、皆も言います。
「言われてみてば」
「あの野獣には二百人位犠牲になったんだっけ」
「狼とも言われてるけれど」
「あれ狼じゃないんじゃ?」
「そうも言われてるわね」
「僕も狼じゃないと思ってるよ」
先生は野獣についても言いました。
「狼にしてはね」
「色々とだよね」
「習性が違っていて」
「狼には思えない」
「先生もそう言うんだね」
「うん、あの野獣は狼と言われていたけれど」
その主張がというのです。
「最近違うんじゃないかという説が有力だね」
「それで先生もなんだ」
「あの野獣は狼じゃない」
「そう言うんだね」
「論文でも書いたけれど」
そのジェヴォダンの野獣というかつてフランスに現れた謎の獣についてもですう。
「あの野獣は狼じゃないね」
「軍隊まで出て来た」
「そしてその羆の事件でもなんだ」
「軍隊まで出動したんだ」
「そのうえで何とか退治したんだ」
「凄いね」
「とんでもない話だね」
動物の皆も唸って言います。
「あの野獣もそうだったけれど」
「その羆もね」
「物凄いね」
「そこまでの事件だなんて」
「冬眠する穴がない位に大きな熊だったんだ」
事件を起こしたその羆はです。
「冬眠しそこねて気性も荒れて冬だから食べるものもなくて」
「小さな村を襲って」
「そのうえで沢山の人を食い殺した」
「そうした事件だったんだ」
「銃もなくて碌に武器もなかったからね」
襲われた村はです。
「何人も犠牲者が出たんだ」
「そういえば今でもね」
「ロシアとかで熊に襲われて死ぬ人いるし」
「熊は怖いね」
「そうした一面もあるんだね」
「餓えた生きものはどんな生きものでも怖いよ」
先生はこの現実を指摘しました。
「熊でもね、けれどね」
「大型の羆は特に」
「そうなんだね」
「だからf犠牲が出た」
「そうなんだね」
「そうだよ、このこともね」
心からお話する先生でした。
「覚えておくべきだよ」
「わかったよ、餓えたらね」
「どんな生きものも怖くて」
「そしてそうした羆もいた」
「そのこともだね」
「覚えておこうね、北海道ではそうした事件もあったんだ」
またお話した先生でした。
「悲劇だったよ」
「そうした事件はね」
「二度と起こって欲しくないよ」
「私達もそう思うわ」
「僕もだよ」
皆で言うのでした、そして。
王子はそのお話の後で皆に言いました。
「車は駅の方にあるからね」
「そうだね、じゃあ」
「そこで車に乗って」
「夕張まで行こうね」
「夕張に行ったら」
先生はそれからのことも言いました。
「どうしようかな」
「それならもう決まってるんじゃない?」
王子が先生ににこりと笑って言ってきました。
「夕張なら」
「ああ、メロンだね」
「ラベンダーもあるしね」
「あそこはメロンが有名だから」
「是非食べようね、それと牧場のね」
北海道のです。
「牛乳や乳製品もあるから」
「あとワインもありますね」
トミーはお酒を出しました。
「北海道には」
「ああ、夕張でも飲めるね」
「同じ北海道ですから」
「小樽ワインだね」
北海道のワインと聞いてです、先生はこの名前を出しました。
「もう小樽には行ったけれど」
「はい、小樽ワインは夕張にもありますよ」
「じゃあワインと乳製品にだね」
「それとメロンだね」
王子はまたメロンを名前に出しました。
「それも食べるべきだね」
「はい、それじゃあ」
「うん、夕張に行ったらまずは」
「色々食べようね」
「そうしようか」
こうしたことをお話してでした、先生達は札幌駅から王子のキャンピングカーに行ってです。そしてでした。
夕張まで向かいました、その夕張に来てです。
先生達はまずは牧場に行きました、その牧場に入ってです。
皆でのどかな迷路や資料館、アニマルゾーンにゴルフ場、自然探索コース等を回っていきました。
その中で、です。ロータリー展望台も見てです。皆は先生に言いました。
「牧場いいよね」
「落ち着くわね」
「北海道には牧場もあって」
「のどかなものもあるのね」
「海も街も北海道で」
「これも北海道なんだね」
「そうだね、北海道は日本で一番広い都道府県でね」
先生は皆にこのことからお話します。
「牧場も多くてね」
「だから乳製品も多いんだね」
ダブダグが先生に尋ねました。
「何かと」
「うん、その通りだよ」
「畑も多くて」
ガブガブが言うのはこちらでした。
「美味しいトウモロコシやジャガイモもあるのね」
「トウモロコシも向日葵も凄く美味しいよ」
そうしたものが大好きなホワイティの言葉です。
「北海道に来て実感してるよ、僕」
「そうそう、そうしたものもね」
「凄く美味しいわ」
チープサイドの家族もホワイティと同じ意見です。
「だから太りそうだよ」
「飛べなくなるかもね」
「何か僕もジャガイモが美味しくて」
老馬もホワイティやチープサイドの家族を背に置いたうえでお話します。
「太ったかもね」
「うん、僕もね」
「絶対に太ったね」
見ればオシツオサレツは確かにお腹が出て来ています。
「これはね」
「そうなったね」
「お肉もお魚も美味しくて」
ジップは大好きなこちらからお話します。
「乳製品もだからね」
「のどかでしかも奇麗な場所もあって」
チーチーは今自分達がいる牧場の景色も楽しんでいます。
「そうしたことも楽しめるね」
「バスや鉄道が置かれているけれど」
ポリネシアは牧場の中のレイアウトに注目しています。
「それも調和が出来て置かれているわね」
「一見牧場とは違っていても」
トートーも鉄道等を見ています。
「それを合う様にセッティングしてるね」
「このセッティングがいいね」
先生もしみじみとして言います。
「日本人は公園の中とかに鉄道を置くことも多いけれどね」
「それが絵になるんだよね」
「妙なまでにね」
「センスのある置き方っていうか」
「置く車両のデザインもいいし」
「日本人は鉄道についてもね」
それこそというのです。
「物凄い造詣を持っているね」
「その分野はもう世界一?」
「そうかもね」
「このセンスはね」
「凄いものがあるね」
「そのセンスはね」
先生は牧場の中の鉄道を見てさらに言いました。
「中々真似出来ないね」
「相当な鉄道好きだね」
「だからこうした場所にも置いて」
「奇麗に整えている」
「絵にしているね」
「うん、まずは景色を楽しんで」
そしてと言う先生でした。
「後は食事だね、ただ」
「ただ?」
「ただっていうと?」
「乗馬コーナーとゴルフ場もあるけれど」
先生達は今はそのゴルフ場にいます、そのゴルフ場の中を見回してのお言葉は。
「ゴルフは見ているだけでいいね」
「先生ゴルフもしないからね」
「このスポーツもね」
「ボールに当てること自体がね」
クラブで、です。
「僕には難しいよ」
「それ普通に出来ない?」
王子は先生のそのゴルフの腕を聞いて突っ込みを入れました。
「ゴルフやってたら」
「僕はそれが難しいんだ」
「だからゴルフもしないんだね」
「やっぱりスポーツは駄目だよ」
「先生本当に運動は縁がないんだね」
「どうしてもね」
「まあ先生がゴルフをするっていうと」
王子は先生がゴルフをする姿を想像してみました、スーツのままクラブを手にしてそのうえでボールを打とうとする姿をです。
「あまりね」
「似合わないよね」
「うん、似合わないね」
実際に想像してのコメントです。
「やっぱりね」
「そうだよね」
「というかやっぱり先生は」
「本当に子供の頃からスポーツは苦手でね」
「ゴルフもだね」
「そんな有様だよ」
ボールを打つことすら難しいのです、先生にとっては。
「本当にね」
「だからしないんだね」
「興味もあるかっていうと」
「その時点でだね」
「ないからね、殆ど」
「だからスポーツはしないんだね」
「ゴルフに限らずにね」
他のスポーツもなのです。
「するのは乗馬位だよ」
「あとお散歩だよね」
「その二つ位だよ」
「だから学生時代はもてなかった」
「もてるのはスポーツマンだから」
「あと格好いい人」
「そうも言うんだね」
ここで動物の皆も言います。
「先生は女の人には縁がない」
「もてることはない」
「そうだよね」
「うん、僕は女性には縁がないよ」
ご自身ではこう思っているのです。
「子供の頃からね」
「その外見で運動音痴だから」
「先生が言うにはね」
「けれど皆がいてトミーがいて王子もいてくれて」
そしてとです、先生はこのことは笑顔でお話しました。
「僕は全然寂しくない、大学では学生の皆に同僚の人達もいてね」
「先生人気があるからね」
「皆からね」
「私達が家族でお友達も多い」
「女の人にもてなくてもだね」
「不満じゃないんだね」
「いつも賑やかな中にいるからね」
家族やお友達に囲まれていてです。
「寂しいと思ったことは一度もないしいいよ」
「そこでこう考えない?」
「結婚したらもっと賑やかになるってね」
「それと幸せになれるって」
「今以上にね」
「それにね」
さらに言う皆でした、展望台の横を通りながら。
「先生がもてないっていうのも」
「ちょっと考えてみて」
「本当にそうなのか」
「実際は違うんじゃないかってね」
「ははは、僕は絶対にもてないよ」
笑って返した先生でした、このことについては。
「そのことは間違いないよ」
「どうかな、そのことは」
「一度疑ってみたら?」
「実際にどうかってね」
「そのことはね」
「いやいや、間違いないよ」
また言う先生でした。
「このことはね」
「多分昔からだよね」
「そうだよね」
ここで動物の皆は彼等だけで小声でお話をしました、先生に聞こえない様にして。
「先生気付かなかったんだね」
「女の人のことにはね」
「女の人は確かに外見や運動神経を見る人いるけれど」
「そうした人ばかりじゃないって」
実は先生も外見よりもまず相手の人柄を見る人です。外見に惑わされる様なドリトル先生ではありません。
「ちゃんと人柄見る人いるよ」
「しっかりとね」
「先生凄くいい人だから」
「真面目で公平で優しくてね」
「しかも紳士でね」
「こんないい人いないよ」
それこそ誰が見てもです。
「学者としても凄いし」
「立派な人だよ」
「そんないい人がもてないとかね」
「絶対にないんだよ」
このことは皆が言います。
「だからね」
「それでだよね」
「日笠さんもそうだし」
「絶対先生が子供の頃から好きな人いたよ」
「先生を好きな人はね」
「先生が気付かなかっただけで」
「先生ってこうしたことはね」
とても残念そうに言うのでした、皆。
「疎いからね」
「そうそう、スポーツ以上にね」
「恋愛のことは駄目だよね」
「恋愛小説は読んでいて源氏物語とかの論文を書いていても」
「自分の恋愛のことはね」
「もう全然駄目」
「何のセンスもないっていうか」
それこそというのです。
「鈍感過ぎるよ」
「どうしようもない位に」
「そこが問題なんだよね」
「どうしてもね」
「先生の場合は」
「どうしたものか」
「何を皆で話してるのかな」
先生はその皆にお声をかけました。
「一体」
「あっ、ちょっとね」
「お昼御飯は何かって思って」
「それでお話していたんだ」
「ここでね」
「そうなんだ、ここではジンギスカンと喫茶店のお店があるよ」
この二つのお店がというのです。
「どちらも美味しいものが食べられるそうだよ」
「ジンギスカンなんだ」
「それと喫茶店だね」
「じゃあジンギスカンも食べて」
「後は喫茶店だね」
「そのコースだね」
「ジンギスカンは札幌でも食べたけれど」
それでもと言う先生でした。
「ここではホルモンや牛肉、鳥肉もあるそうだから」
「じゃあそっちだね」
「前は羊だったから今日はそういうのを食べて」
「それで楽しめばいいね」
「そうしよう、それとビールもあるけれど」
それでもというのです。
「今日はミルクを飲もう」
「よし、それじゃあね」
「今日はミルクを飲んで」
「あとは喫茶店でもだね」
「楽しむんだね」
「そうしよう」
こうしてでした、先生達は皆でジンギスカン鍋を食べに行きました。そしてまずは鳥肉や牛肉、沢山のお野菜を食べてです。
それをおかずにして御飯も食べました、その御飯を食べてです。
先生はしみじみとしてです、笑顔で言いました。
「いや、こうしてお肉とかで御飯を食べると美味しいね」
「最高ですね」
「凄い美味しさだよね」
トミーと王子も言います、動物の皆も先生と一緒に楽しんでいます。
「御飯をおかずで食べる」
「このこと自体がね」
「全くだよ、イギリスにいた時はね」
その時はといいますと。
「パン、それかジャガイモだったけれどね」
「主食というと」
「そうしたものだったね」
「御飯はそうじゃなかったね」
「お野菜の一種で」
「その扱いだったね」
「うん、けれどそれがね」
その御飯がというのです。
「日本では主食でこうしておかずと一緒に食べると」
「美味しいですね」
「凄く」
「本当にね、これはね」
それこそと言う先生でした。
「最高の楽しみの一つだよ」
「御飯はおかずと一緒に食べる」
「それがいいんだね」
「それじゃあ今日はこうして御飯も楽しんで」
「お腹一杯食べるんだね」
「そうしようね、本当に美味しいよ」
先生は焼いたお野菜も食べています。
「御飯は最高の主食かもね」
「日本人が大好きな筈だよ」
「全くだよ」
動物の皆も御飯をおかずと一緒に楽しみつつ言います。
「これでね」
「もうどれだけでも食べられるね」
「さあ、じゃあね」
「どんどん食べて」
「次は喫茶店」
「そこで食べようね」
「喫茶店ではサンドイッチやソーセージもあるし」
先生はそちらのお話もします。
「ソフトクリームが凄く美味しいらしいよ」
「じゃあそのソフトクリームを食べて」
「そうしてだね」
「デザートにする」
「そうするんだね」
「そうしよう、あとミルクも飲もう」
このジンギスカン鍋のお店で売られている、おのをです。
「そちらもね」
「夕張でも美味しいもの食べてるね」
「こうしてね」
「いや、いいね」
「また太りそうだけれど」
「僕も太っただろうね」
先生もこう言いながらもにこにことして食べています。
「絶対にね」
「うん、そう思うよ」
「ただ先生身体にいいものばかり食べてるよ」
「日本に来てからだけれど」
「この北海道でもね」
「いやいや、それでも太るよ」
やっぱり笑って言う先生でした。
「食べ過ぎてるからね」
「美味しいものばかりで」
「それでだね」
「じゃあ楽しんで」
「そしてだね」
「そう、ミルクも飲んで」
そしてというのでした。
「次は喫茶店だよ」
「そしてそこでも楽しむ」
「デザートもね」
「いやいや、本当にね」
「皆太るかも」
こうしたことを笑顔でお話してでした、そして。
皆実際にです、ジンギスカン鍋を御飯と一緒に食べてそれから牛乳も飲んででした。それからさらになのでした。
喫茶店に移ってサンドイッチとソフトクリームも食べました、すると。
もう皆苦しそうにそれでも満足して言いました。
「いやあ、本当にね」
「食べたねえ、ここでも」
「もうお腹一杯」
「食べ過ぎたね」
「サンドイッチ美味しかったし」
「ソーセージもついつい頼んだし」
「それにソフトクリーム」
「やっぱり美味しかったね」
「うん、それとね」
さらに言う先生でした。
「お土産も買ったからね」
「学校の人達にサラさん」
「そして僕達自身にもだね」
「僕達自身へのものはここで食べようね」
北海道で、というのです。
「乳製品はね」
「うん、そっちもね」
「ワインと合うし」
「それじゃあね」
「そっちも楽しもうね」
「そして」
皆ここで、でした。強い声で先生に確認しました。
「日笠さんへのお土産買ったよね」
「あの人の分もちゃんとね」
「忘れなかったよね」
「先生、そこはどうなの?」
「ちゃんとしたの?」
「買って送ったよ」
もう既にと答えた先生でした。
「日笠さんにもね」
「うん、合格」
「ならいいよ」
「あの人には絶対に送らないとね」
「他の人のことは忘れてもね」
「いやいや、送るべき人のことは忘れないよ」
このことは先生の律儀さからくるものです。
「絶対にね」
「それは先生の美徳だけれど」
「また違うんだよね」
「僕達がここでそう言う理由はね」
「また違うんだよ」
「皆日笠さんのことになるとそう言うけれど」
先生はこのことが不思議でなりません。
「どうしてかな」
「それがわかればね」
「先生もかなり凄くなったよ」
「そう言っていいけれど」
「先生にはね」
「やっぱりね」
この辺りは皆も諦めています、呆れながら。
「スポーツとこのことは」
「先生はね」
「仕方ないかな」
「そういうものだってことでね」
「日笠さん喜んでくれるね」
先生は気付かないままです。
「笑顔でいてくれるかな」
「絶対笑顔だよ」
「あの人はね」
「先生からの贈りものなら」
「絶対にだよ」
「それならいいよ、では夕方までこの牧場を見て回って」
そしてと言う先生でした。
「晩御飯も楽しもうね」
「晩御飯はいよいよだね」
「メロンだね」
「デザートはそれだね」
「そうだよ、そしてワインも飲もう」
その小樽ワインです。
「そちらもね」
「メロンにワインだね」
「夕張でも」
「何か夕張に来て余計にね」
「メロン食べる様になったね」
「うん、日本では寒い場所でメロン作るんだね」
王子はしみじみとした口調で言いました。
「それが印象的だね」
「メロンは暑い場所で作るものだね」
「そう思っていたからね」
王子はです。
「それがまさかね」
「品種改良もしてなんだ」
「そのうえでだね」
「寒い北海道でもメロンを作るようになったんだ」
「しかもそのメロンが美味しい」
「かなりね」
「そのことに驚いたよ」
本当にと言う王子でした。
「北海道って夏でもこんなに涼しいのにね」
「メロンは出来る」
「そしてかなり美味しい」
「世の中って凄いね」
王子はしみじみとした口調になっています。
そしてです、先生にこう言いました。
「じゃあ晩はね」
「そのメロンをだね」
「食べようよ」
「勿論だよ」
そのつもりだと答える先生でした、そして。
そのお話の後です、牧場のことを思い出して言いました。
「いい生きもの達だったね」
「牛や山羊達がだね」
「牧場にいた」
「うん、皆いい感じだったね」
牧場にいた家畜達がとです、先生は言うのでした。
「毛並みも体格もね」
「そういえばそうだね」
「牛さん達もね」
「元気そうだったよね」
「よく食べていて」
「いいミルクが出る筈だよ」
しみじみとして言う先生でした。
「栄養がよくて身体も動かせてるからね」
「それでなんだね」
「皆ああして元気なんだね」
「そしていいミルクが出る」
「そうなんだね」
「そうだよ、牛も他の生きものもね」
彼等というのです。
「健康そのものでよかったよ、特にね」
「特に?」
「特にっていうと」
「ホルスタイン君達がいい感じだったね」
牛さん達がというのです。
「彼等が」
「あの牛さん達がなんだ」
「よかったんだ」
「そう思ったよ」
こうも言ったのでした、そして。
ふとです、こんなことも言った先生でした。
「北海道は牧業にも向いているんだね」
「牛さん達を買うにも」
「そちらにもなんだね」
「だから皆あれだけ健康なんだよ」
牛さん達も他の生きもの達もというのです。
「そうだったんだよ」
「北海道のこの気候がなんだ」
「牧業にいいんだ」
「向いてるのね」
「向いてるね」
先生は頷いて言いました。
「そちらにもね」
「ジャガイモやトウモロコシ、メロンもよくて」
「そして漁業も盛んで」
「食べものには本当になんだね」
「困らないんだね」
「そうだね、北海道を舞台にした農業高校の漫画があって」
先生は日本に来てから漫画を読むことも多くなりました、日本語の勉強にもなるし日本の現代の文化を学べる貴重な本だとも考えています。
「とても面白いけれど」
「そうした漫画もあるんだ」
「農業高校が舞台なのね」
「しかもそれはこの北海道の高校なんだ」
「そうなんだね」
「その漫画はね」
先生はさらに言います。
「農業のことも勉強も出来るんだ」
「ただ面白いだけじゃなくて」
「勉強にもなるんだね」
「凄くレベル高いね」
「あとね」
さらにお話した先生でした。
「岐阜県を舞台にした農業高校のライトノベルもあるよ」
「今度はライトノベルなんだ」
「それも岐阜県なんだ」
「あの愛知県の北にある」
「あの県が舞台なの」
「実はこちらのライトノベルもさっき言った漫画もアニメにもなってるよ」
先生はこのことも皆にお話しました。
「日本では人気がある漫画やライトノベルはアニメになることが多くてね」
「それでなんだ」
「そうした漫画やライトノベルもアニメになるんだ」
「面白くて人気があるから」
「それでなのね」
「家にもあるよ」
先生達が今住んでいる日本のお家にもです。
「そうした本も読もうね」
「そういえば最近」
ここでトミーが先生のお言葉から思い出した様に言いました。
「先生漫画やライトノベルも多く買っていますね」
「うん、そうなったよ」
「漫画の雑誌も買われて」
「そうなっているね」
「イギリスにおられた頃は」
その頃の先生はといいますと。
「漫画とか読まれることは」
「殆どなかったね」
「そうでしたね」
「漫画はどの国にもあるね」
「はい」
「イギリスでは昔から風刺画が多いね」
「特に政治のものが」
トミーも頭の中で思い出しました、イギリスでは政治家や政治の状況をシニカルに表現した風刺画が多いのです。
「そうですね」
「そうしたものはあるけれどね」
「それでもですね」
「日本程漫画は多くないよね」
「しかもですね」
「日本の漫画は面白いよ」
とてもと言う先生でした。
「しかも勉強になるしね」
「日本の文化のことも他の色々なことも」
「さっき言った漫画は農業も勉強出来てね」
「いいんですね」
「日本の農業高校の状況自体もわかるよ」
そうしたこともというです。
「それもいいね」
「日本のですね」
「うん、日本も色々な高校があるよね」
「はい、確かに」
「僕達が通っている八条学園にも高等部があってね」
「そういえばあの高等部農業科もありますね」
「あの農業科である様なことがね」
先生は八条学園高等部農業科のことにも言及しました。
「その漫画ではよく描かれているんだ」
「そしてライトノベルにも」
「そうなんだ」
「そうですか」
「うん、面白いだけじゃなくてね」
「あの高等部の農業科って凄いですよね」
トミーは大学に通いながらその農業科のことを見ているので連想しました。
「大学の農業科の施設も使っていて」
「八条大学農業科には色々な施設が充実しているからね」
「だから勉強しやすいんですよね」
「あそこはね」
「そうですね、ただ農業高校もですね」
「漫画になるのが日本だよ」
先生達が今いる国だというのです。
「ライトノベルにもね」
「その漫画やライトノベル読んでみたくなったよ」
しみじみとして言った先生でした。
「読んでいいかな、僕も」
「うん、紹介させてもらっていいかな」
「お願いするよ」
微笑んで応えた先生でした、そんなお話をしてでした。先生達は今度は晩御飯を楽しむ時を迎えるのでした。
先生たちは夕張へ。
美姫 「ここでもまた食べて飲んでと楽しんでいるわね」
だな。皆へのお土産も買って。
美姫 「楽しそうで何よりだわ」
うんうん。次はどんな話になるんだろう。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。