『ドリトル先生北海道に行く』




                 第六幕  どちらの蟹か

 北海道の旧庁舎で北海道の歴史を勉強してからです、そうして。
 皆で、でした。北海道の夜の街に出ました。動物の皆はその夜の街の中を進みながらそのうえで先生に尋ねました。
「それじゃあね」
「これから蟹を食べるけれど」
「どの蟹にするの?」
「それで」
「これまで考えてきたけれどね」
 少し腕を組んで答えた先生でした。
「一体どっちにするか」
「毛蟹かタラバガニか」
「どっちにするか」
「それをだね」
「考えてきたんだね」
「ううん、これまで考えてきたけれど」
 お昼からです、それこそ地下鉄にいる時から。
「どちらの蟹にしようかな」
「要するに今日はどの蟹を食べるかだね」
 王子はここで先生に言いました。
「どの蟹か」
「そうなんだよ」
「そういうことだね」
「どちらの蟹も美味しいよ」
 このことは間違いないというのです。
「だからどちらをというと」
「それがだよね」
「難しいね」
「じゃあいっそのことね」
 ここで王子が言うことはといいますと。
「コインで決めたらどうかな」
「表か裏で」
「そう、表が出たら毛蟹とかね」
 そして裏はタラバガニです。
「こうしたらどうかな」
「そうだね、迷った場合にはね」
「コイントスがいいよね」
「サッカーでPKの順番を決める時みたいにね」
「イギリスの伝統だね」
 またこう言ったのでした、先生のお国の。
「それでどうかな」
「そうだね、これ以上考えてもね」
 先生も言うのでした。
「決まらないだろうし」
「それじゃあね」
「コイントスだね」
 あらためて言った先生でした。
「それで決めようか」
「よし、それじゃあね」 
 王子はここで、でした。自分のお財布を懐から出してです。 
 一枚のコインを出しました、見れば王子のお国のコインです。
「このコインを使おう」
「それを使って」
「そう、そしてね」
 そのうえでというのです。
「決めようね」
「表でどっちかな」
「それで裏は」
 動物の皆は王子に尋ねました。
「どっちの蟹にするの?」
「それでね」
「どっちがどっちか」
「それが大事だけれど」
「そうだね、表が毛蟹でね」
 王子はすぐに答えました。
「裏がタラバガニかな」
「それじゃあね」
「今から決めようね」
「そうしようね」
「そういうことでね」
 こうお話してでした、王子はすぐにです。
 コインを上に投げました、コインはくるくると回転してです、上から下に垂直に上がってから落ちました。そして。
 王子の左手の平の上にそれが落ちてでした、王子はコインを右てで押さえました。そして出て来たのはといいますと。
「表だったよ」
「じゃあ毛蟹だね」
「今夜はそれだね」
「毛蟹になったね」
「うん、そうなったよ」
「よし、それじゃあね」 
 先生も王子達のお話を聞いて言いました。
「毛蟹を食べに行こうね」
「毛蟹の鍋だね」
「それだね」
「うん、毛蟹鍋だよ」
 それだとです、先生も言うのでした。そうして。
 皆でその毛蟹を食べに行きました、お店に入ってです。
 皆でお座敷の席で毛蟹鍋を食べます、そのお鍋の中に。
 白菜にお豆腐、お葱に茸にです。それに。
 蟹、毛蟹が入っています。その毛蟹を見て動物の皆は言いました。
「美味しそうだね」
「この毛蟹ね」
「確かに外見は怖いけれど」
「如何にも堅そうだけれど」
「これがいいんだよね」
「とてもね」
「うん、じゃあね」
 それでと言う先生でした。勿論先生もそのお鍋を見ています。
「今から食べようね」
「よし、それじゃあ」
「蟹を食べよう」
「お豆腐もお野菜も」
「それに茸もね」
「そして全部食べたら」
 それからも言う先生でした。
「雑炊を食べようね」
「日本ではお鍋の後はそれだよね」
「最後は雑炊を食べて」
「それで締めだね」
「それになるよね」
「うん、だからね」
 それでというのです。
「その雑炊まで食べようね」
「あとおうどんもありますね」
 トミーがここで言いました。
「締めには」
「あっ、それもあるね」
「それじゃあ今日は雑炊にして」
「それでだね」
「明日はおうどんとかどうですか?」
「いいね、じゃあ明日になったらね」
 先生はトミーににこにことしてお話をします。
「どっちかに決めよう」
「そうしますか」
「明日にね。それじゃあ」
 先生はあらためて皆に言いました。
「今から毛蟹を食べようね」
「そうしよう」
「是非ね」
 皆も応えます、こうしてでした。
 皆お鍋を食べはじめました、お豆腐に白菜、葱に茸にです。
 勿論蟹も食べました、蟹は王子とトミー、チーチー達が器用に素早く殻を割って中身を出してそうしてでした。
 皆で食べます、その蟹の身を食べてです。
 先生は笑顔で、です。こう言いました。
「いや、噂通りね」
「美味しい」
「身が一杯入ってるし」
「あっさりしていてね」
「それでいて味が確かで」
「いいね」
「いや、本場だけあって」
 先生はまた言いました。
「美味しいね」
「何か蟹ってね」
「北の方が美味しいよね」
「北陸もそうだし」
「この北海道のなんか特にね」
「うん、蟹はね」
 先生も実際にとです、皆に答えます。
「寒い海の生きものだからね」
「どうしてもだね」
「寒い場所で獲れたものが美味しいんだね」
「そうなんだね」
「そうだよ、だからね」
 それでと言うのでした。
「この北海道の蟹は美味しいんだ」
「こうしてだね」
「美味しいんだね」
「幾らでも食べられる」
「そうしたものなんだ」
「そうだと思うよ、ロブスターも美味しいけれど」
 それと同じくというのです。
「この蟹も美味しいね」
「毛蟹もね、いやこの蟹はね」
 王子も言います。
「外見は確かに厳しいけれど」
「それでもだよね」
「うん、美味しいね」
「甲羅は硬くても」
 トミーは器用にその甲羅の中から身を出しています。そして皆にその身を出しながら自分も楽しく食べています。
「その中にあるものは美味しいですね」
「そうだね」
「このお味噌とかね」
 王子は蟹ミソも食べています。
「卵まで美味しいよね」
「蟹は甲羅以外全部食べられるよ」
「そうしたものなんだね」
「だからいいんだよ」
「食べがいもあるってことだね」
「そうだよ」
「成程ね、その甲羅も」 
 王子は甲羅のことも言うのでした。
「食べられないけれど」
「それでも何かあるの?」
「その甲羅に」
「僕達は食べられない訳じゃないけれど」
「積極的に食べるものじゃないよ」
「この甲羅をお鍋に入れて茹でているからね」
 だからというのです。
「そこからダシが出ているんだ」
「あっ、そうなんだ」
「甲羅からダシも出るんだ」
「そうなんだ」
「そうした意味もあるんだ、まあこのお鍋は昆布から取ってるけれどね」
 そのダシをです。
「全く何でもない訳じゃないんだ」
「そうなんだね」
「この甲羅も」
「ただ邪魔じゃなくて」
「そうした意味もあるんだね」
「そうだよ、日本人は食材を無駄にしないから」
 それこそ一切です。
「甲羅も役に立たせてるんだ」
「日本人って食べることは特に無駄にしないね」
「それこそ何でも使うよね」
「それも最後の最後まで」
「無駄なくね」
「お魚の骨もダシに使うしね」
 お吸いものにです。
「鱧や鯛がそうだね」
「そうそう、鱧ね」
「鱧のお吸いものって最高よ」
「あんな美味しいお吸いものないよ」
「鯛に負けない位」
「凄くね」 
 そうしたものだというのです、先生は鱧のお吸いものも好物なのでお魚の骨からもダシが取れることをよくわかっているのです。
「身だけじゃないんだよ」
「お肉からダシが取れて」
「そして骨からも」
「いいダシが取れて」
「甲羅からもだね」
「そうだよ、じゃあ蟹もお野菜も食べて」
 勿論お豆腐や茸もです。
「そしてね」
「そしてだね」
「最後は雑炊」
「それを食べるんだね」
「そうしようね」
 実際にでした、先生達は。
 蟹やお野菜を全部食べてからです、次に。
 お鍋の中に御飯を入れてといた卵も入れてお醤油で味付けをしてでした。そこに海苔もかけて完成した雑炊をです。
 食べはじめました、すると。
 皆はここでもです、こう言いました。
「最後のこの雑炊もね」
「絶品だね」
「うん、そうだよね」
「最高だね」
「そうだよね」 
 本当にと言った先生でした。
「最後のこの雑炊まで食べたら」
「凄くあったまるね」
「もう冬はこれで完璧ね」
「あったまってしかも」
「栄養も満点」
「もう敵なしって感じかな」
「そう、お鍋は雑炊かおうどんまでだよ」 
 先生もその雑炊を食べつつ言います。
「全部食べるまでがそうだからね」
「この雑炊にしても」
「最後の最後まで食べて」
「それでなんだ」
「完成なんだね」
「うん、日本のお鍋を食べる時はいつもこうしているけれど」
 神戸のお家においてもです。
「これがいいんだ」」
「そうなんだ」
「それじゃあだね」
「雑炊も食べよう」
「是非ね」
「ただ、雑炊まで全部食べたら」
 皆はその雑炊を食べながらこうも言いました。
「身体が熱いかもね」
「北海道の夏は確かに涼しいけれど」
「それでも夏は夏だから」
「暑いね」
「そうなるよね」
「そうだね、まあ僕は気候の変化には強いけれどね」
 それでもというのです。
「確かに全部食べたらね」
「その先生でもね」
「暑くなるよね」
「いつもスーツだしね」
「今だってね」
「僕は上着は脱がないよ」
 それこそ夏でもというのです。
「ネクタイも締めてるしね」
「そうだよね」
「そこは先生のポリシーだよね」
「外出の時はいつもスーツ」
「ネクタイもしっかり締める」
「それが先生だよね」
「紳士でありたいからね」
 イギリスのです、先生はそれ故になのです。
「いつもスーツにネクタイだよ」
「上はブラウスだけとかにもならないよね」
「開襟シャツとか絶対に着ないし」
「ズボンもいつも長ズボンで」
「しっかりしてるよね」
「正装だね」
「ただ生地は薄いよ」
 夏の時のスーツはというのです。
「冬は厚いものでね」
「そこは違っていても」
「スーツは絶対だよね」
「そしてネクタイも」
「外さないね」
「そうだよ、そのこともあってね」
 雑炊まで食べ終えると、というのです。
「僕も暑くなるだろうね」
「じゃあ食べ終わったら」
 トミーが先生に言ってきました、ここで。
「身体を冷やした方がいいですね」
「うん、身体は冷やさない方がいけれど」
「熱過ぎてもですよね」
「よくないから」
 だからというのです。
「つまりどっちもだよね」
「過ぎるとよくない」
「そういうことだよね」
「うん、適温がいいんだ」
 お医者さんとしての言葉です。
「熱過ぎず冷やし過ぎずだよ」
「つまり適度に温める」
「そうし状態がいいから」
「だからだね」
「ここは熱くなり過ぎない様にして」
「ある程度冷やすんだね」
「そうしよう、だから」
 それでというのでした。
「食べ終わって少し経ってからよく冷えたお茶を飲もう」
「コンビニに売っているですね」
「それを買ってね」
 先生はトミーに微笑んで答えました。
「身体をある程度冷やしてね」
「適温に保つんですね」
「そうしようね」
「わかりました」
 こう言って頷いてでした、そのうえで。
 皆は雑炊を食べ終えてデザートの夕張メロンも美味しく食べてお店を出てからコンビニでよく冷えたお茶を買って飲んで、です。
 体温を調整してでした、ホテルに帰ってお風呂にも入って身体を休めました。そしてその次の朝にでした。
 先生はスープカレーを食べてです、満足していいました。
「朝のカレーはやっぱりいいね」
「うん、このスープカレーもね」
「いいよね」
「普通のカレーとはまた違った感じで」
「絶品だね」
「こちらもね」
「うん、北海道は奥が深いよ」
 先生は本当にスープの様にさらさらとしたルーが御飯にかかったそのカレーを食べつつ皆に言います。スパイスの適度な辛さが実にいいです。
「こうしたものまであるんだからね」
「というか美食の宝庫?」
「もうそんな感じだよね」
「鮭、雲丹、ほたて貝、烏賊、ジャガイモ、お寿司、ラーメン、蟹でね」
「メロンやコーン、牛乳もあって」
「しかもこのスープカレーもいいし」
「お昼はジンギスカン鍋だしね」
 動物の皆も言うのでした、そのスープカレーを食べながら。
「何かね」
「もう凄いよね」
「美味しいもの一杯あり過ぎて」
「もうね」
「何を食べればいいのか」
「迷う位じゃない」
「うん、僕も話は聞いていたけれど」
 それでもと言う先生でした。
「こうして実際に食べるとね」
「違うよね」
「もうそれこそ」
「全部食べる為に苦労する」
「それ位だよね」
「いや、神戸や大阪もいいけれど」 
 関西のそうした街と同じだけ、というのです。
「北海道もいいね」
「ここまで美味しいものが多いと」
「僕達も困るよ」
「それを全部味わうことに忙しくて」
「大変だよ」
「胃が大忙しだよ」
「というか皆変わったね」
 王子はスープカレーも食べて大喜びの皆にも言いました。
「イギリスにいた時はそんなに食べることにこだわらなかったのに」
「それがね」
「日本に来て本当に変わったね」
「王子がイギリスでご馳走してくれたすき焼きを食べてね」
「それからだったね」
「うん、本当にね」
「そこから食べることについてね」
 王子はまあた皆に言いました。
「凄く興味が出たよね」
「確かにね」
「何かもう本当に変わって」
「別の性格みたい」
「そうなったよ」
「そうだね、イギリスと比べて日本はね」
 先生達が移住してきたこの国はというのです。
「美味しいものは多いからね」
「というかイギリス自体が」
「そうそう、あの国がね」
「ちょっとね」
「食べることにはだから」
「そうなんだよね、どうもね」
 王子もイギリスのお料理については微妙なコメントです。
「ずっとそうだからね」
「こうしたカレーもないしね」
「カレーはあってもね」
「味が違うんだよね」
「日本のカレーの方がずっと美味しいよ」
「じゃあそのカレーを食べて」
 王子もスープカレーを食べています、そのうえでの言葉です。、
「また観光に出よう」
「それじゃあね」
「また行こう」
「それじゃあね」
 こうしたことをお話しながら皆でスープカレーを楽しんで栄養補給もしてでした、札幌の街の観光に出てでした。
 先生達は札幌のビール工場まで歩いて行きました、その中のジンギスカン鍋のコーナーに入ってです。そして。
 皆でそのジンギスカン鍋を注文して食べました、鉄板の上にマトンやお野菜を置いて焼きながらです。ビールも飲みます。
 先生はビールを飲んでお肉を食べつつ皆に言いました。
「食べ放題飲み放題だから」
「幾らでもだね」
「楽しめばいいね」
「どちらも」
「そうだよ」
「わかったよ、ただ先生」
 ジップはその焼いたマトンを美味しく食べながら言いました。
「日本で羊のお肉食べる機会ないね」
「あっ、そういえばそうだね」
 ホワイティもジップの言葉に言います。
「日本では羊のお肉はあまり売ってないね」
「そうなのよ、トミーもね」
 ガブガブも言います。
「あまり買わないし」
「お魚はふんだんにあっても」
 トートーも言います。
「羊はないね」
「どうしてかしらね」
 ポリネシアもこのことには首を傾げさせます。
「日本では羊はあまり食べないわね」
「食べない訳じゃないけれど」
 チーチーも不思議に思っています。
「牛肉や豚肉よりずっと少ないね」
「どうしてかな」
「日本で羊をあまり食べないのは」
 チープサイドの家族は焼いたコーンを食べています、それも美味しいです。
「不思議なことだけれど」
「どうしてなのかしら」
「色々なものを食べるのに」
 老馬も言います。
「本当に羊は少ないね」
「美味しいし身体にもいいお肉なのに」
 ダブダブもそこが不思議で仕方ありません。
「匂いもいいしね」
「そうそう、食べなくても」
「この匂いがいいね」
 オシツオサレツはマトンを焼いた匂いを楽しんでいます。
「匂いも楽しめるのに」
「どうしてなのかな」
「どうもね」
 先生は日本人があまり羊を食べないことを不思議に思っている皆にそのことについての推察を述べます。
「日本人は明治維新からお肉を本格的に食べる様になったけれど」
「そのことが関係してるの?」
「そうなの?」
「日本人がお肉を食べるようになったことから」
「そのことからなの?」
「その時に牛肉や豚肉を食べる様になって」
 そしてというのです。
「その二つが主になってね」
「羊肉はなんだ」
「マトンやラムは」
「その次になって」
「それで」
「そしてマトンの匂いがね」
 それが、というのです。皆が好きなその匂いこそが。
「日本人には馴染まなかったみたいだよ」
「いい匂いなのに」
「それでもなんだ」
「日本人はマトンの匂いが好きじゃない」
「気に入らなかったんだ」
「何か前に話した料理漫画でね」
 その出て来るキャラクターが誰もがどうも品性のよろしくない人達の漫画のお話をここでもするのでした。
「マトンの匂いが嫌だから食べないって日本人が言ってニュージーランドの人と喧嘩する場面があったけれどね」
「いや、それは極端じゃ」
「普通そんなことで喧嘩しないわ」
「何でそんなことで喧嘩するの?」
「そんな理由で喧嘩していたらきりないよ」
「まあこの漫画はそうした人しか出ないからね」
 無教養で異常に短気な野蛮人しか出ないというのです。
「極端な事例だけれど」
「それでもなんだ」
「日本人はマトンの匂いは好きじゃない」
「そのことは確かなんだ」
 マトンの匂いがというのです。
「日本人には馴染まなくてね」
「それでなんだね」
「今もあまり食べていない」
「牛肉や豚肉の方がメジャーで」
「羊はずっと後なんだね」
「僕も好きだよ」
 先生はマトンをビールと一緒に楽しんでいます。
「こうしてね」
「そうそう、マトンっていいよね」
「焼いても煮ても美味しくて」
「お酒にも合うし」
「しかもカロリーは少ないし安いし」
「身体の脂肪を燃焼させてくれるしね」
「かなりいいお肉だよ」
 先生は太鼓判さえ押しました。
「本当にね」
「けれどそれでもだね」
「日本人は羊には馴染みがない」
「そうなんだね」
「昔と比べると多少は馴染んできたらしいけれど」
 それでもというのです。
「まだまだね」
「メジャーじゃない」
「そうなんだね」
「マトンはね」
「そしてラムも」
「うん、ラムもね」
 子羊のお肉もというのです。
「あまり食べられないね」
「どうしてもだよね」
「日本では」
「お肉は牛肉や豚肉で」
「あと鳥肉だね」
「そうなんだ、けれど決して珍しいお肉じゃないよ」
 その日本でもというのです。
「実際にこうして食べられているしね」
「そうだよね」
「僕達今こうして食べてるし」
「ここにいるお客さんも多いし」
 見れば結構な人達が先生達と同じ様にジンギスカン鍋とビールを楽しんでいます。飲んで食べてとても楽しそうです。
「こうした見たらね」
「日本人も決して羊は嫌いじゃないんだ」
「羊のお肉も」
「確かに匂いはどうかとなってるけれど」
 それでもというのです、
「味も好きでね」
「決して嫌いじゃなくて」
「食べるんだね」
「こうしてね」
「そうだよ、本当にね」
 それこそというのです。
「けれど牛肉や豚肉の方が多いんだ」
「日本人が食べるお肉は」
「その二つだね、まずは」
「どうしてもね」
「そうなっているんだね」
「そうなんだよ、まあそのこともね」 
 先生はビールをまた飲んで言いました。
「変わっていくかもね」
「日本人の羊肉への馴染みも」
「それもだね」
「美味しいことは確かだから」
 それでというのです。
「食べる量は増えていくと思うよ」
「そういうことだね」
「日本人でも」
「そうなっていくんだね」
「僕はそう思うよ、それじゃあね」
 先生は皆にあらためて言いました。
「もっと食べようね」
「このマトンを」
「そしてお野菜も」
「ビールも」
 皆も一緒に楽しみます、そして。
 心ゆくまでジンギスカン鍋とビールを楽しみますがそのビールについてもです、先生は皆にこうしたお話をしました。
「日本人は今ではビールを普通に飲んでるね」
「うん、先生もそうでね」
「普通に何処でも売ってるしね」
「もう皆ね」
「むしろ日本酒より飲んでるかな」
 そこまで沢山飲んでいるというのです。
「それこそね」
「飲みやすいからね、ビールは」
「すっかり日本人の友達になってるよね」
「そう、そのビールが日本に入ったのは」
 このことのお話をするのでした。
「やっぱり明治からなんだ」
「そうなんだね、明治からなんだね」
「ビールにしても」
「そういえば日本はお米だからね」
「日本酒ばかりあったんだね」
「そうだよ、それが明治になってね」
 明治維新からです。
「ビールも入ってね」
「それでなんだね」
「日本人もビール飲む様になったんだね」
「そういう風に」
「そうだよ、日本は本当に明治から大きく変わったんだ」
 先生はビールを飲みつつ日本の歴史のことをお話します。
「これまでの日本に西洋も入ってさらに独特のものが出来たんだ」
「日本の中の西洋?」
「いや、日本の中に入った西洋かな」
「欧州のどの国でもないし」
「アメリカでもないからね」
「西洋風の日本かな」
「それになるかな」
「そうだね、西洋風であってね」
 それでというのです、先生も。
「日本なんだ」
「そういえばこのビールもね」
「イギリスのビールの味じゃないね」
「エールとも違うし」
「日本人はビールとエールの違いは殆どないしね」
「うん、これは日本のビールだよ」
 紛れもなくそれだというのです。
「紛れもなくね」
「お水が違うしね」
「日本のお水が使われてるから」
「また味が違っていて」
「日本のビールになってるんだね」
「そうだね、これがまたいいね」
 先生は何杯もおかわりして楽しんでいます、そのビールを。そうしてそのうえで動物の皆にお話していくのです。
「幾らでも飲めるね」
「はい、そういえば最近ですけれど」
 トミーは先生にこんなことをお話しました。
「最近プリン体とか糖分のないビール出ていますね」
「ないかかなり少ないね」
「そうしたビールも売られていますね」
「日本人の健康志向は凄いからね」
「だからですね」
「そうしたビールも開発されたんだ」 
 トミーが言うプリン体や糖分のないビールがです。
「日本でね」
「そうなんですね」
「これまでビールを飲み過ぎるとね」
「どうしてもですよね」
「うん、プリン体のせいでね」
 トミーが最初にいったこれの影響で、というのです。
「痛風になったね」
「先生は大丈夫でしたけれど」
「痛風になる人多いですからね」
「イギリスもそうだけれどね」
「ドイツは特にでしたね」
「ドイツ人は相当飲むからね」
 そのビールをです。
「イギリス人以上にね」
「朝は食欲がないとそのビールに生卵を入れて飲みますから」
「それは栄養補給にはなるけれど」
 それでもというのです。
「痛風にはね」
「よくないですね」
「学生さん達にこのお話をしたことがあるけれど」
 先生が教えている人達です、八条大学医学部の。
「皆驚いてたよ」
「日本の人達にとっては」
「朝からビールを飲んでね」
「しかも生卵をその中に入れて飲むと」
「確実に痛風になるからね」
「だから驚いたんですよね」
「有り得ないって言ってね」
 そこまで驚いたのです、先生の生徒さん達は。
「栄養学的に」
「日本の食生活ではとてもですから」
「想像も出来ないからね」
「そう、それでね」
 だからというのです。
「皆驚いてたよ」
「そうなるのも道理ですね」
「日本ではね」
「日本では朝酒ともいうしね」
 王子は焼いたお野菜を食べつつ言いました。
「やってはいけないことの一つとして」
「朝酒、朝寝、朝風呂だね」
「その三つはね」
「絶対に駄目だからね」
「そう、日本ではね」
 それこそというのです、先生も。
「それは駄目だからね」
「余計に驚くんだね」
「それこそ朝からお酒を飲んだら」
 それがビールでもです。
「もう働くことも学問もね」
「日本人はお酒に弱い人も多いし」
「運転も出来ないから」
 車のです、先生は免許を持っていないですが。
「日常生活は出来なくなるから」
「それはよくないってされてるね」
「日本ではね」
「そういうことだね」
「だから余計に皆驚いたんだね」
「朝酒にもなるから」
「そういうことだよ」
 こうしたこともお話するのでした、ビールにまつわるお話も。先生達はマトンもお野菜もビールも楽しみました。
 そしてマトンを食べる場所から出ましたが。
 ここで、です。動物の皆は工場から出ようとして売店の前に来ました、するとそこに面白い缶詰達を見付けました。
「あれっ、熊?」
「アザラシに」
「あとトドの」
「うん、缶詰だね」
 こうした動物のお肉の缶詰達が売られていました。
「こうしたものも売られているんだね」
「日本ってこうしたものが売られてるんだね」
「そうだね」
「じゃあこの缶詰を買う?」
「そうする?」
「うん、そうだね」
 先生は皆の言葉に頷きました、そして。
 その缶詰達を買いました、その後で皆に言いました。
「さて、どんな味かな」
「この熊って羆だよね」
「北海道にいる」
「アザラシもトドも」
「そうした生きものも」
「そうだね、アザラシやトドはね」
 そうした生きものはというのです。
「オホーツクの方にいるからね」
「鮭だけじゃないだね」
「あそこにいる生きものも頼んだね」
「そしてだね」
「缶詰にしたんだね」
「面白いね」
 先生はしみじみとして述べました。
「日本人はこうした缶詰も作っているんだね」
「そうだね」
「日本人のこの発想って凄いよ」
「こうした生きものまで缶詰にしてね」
「食べるなんて」
「値段が高いのはレアだからね」
 先生は缶詰達の値段についてもお話しました。
「どの生きものも」
「確かどの生きものもですね」 
 トミーが言います、皆は一緒に工場の中のベンチに座ってそうして缶詰を開けてです。そのうえで食べようとしています。トミーはその中で言ったのです。
「保護されてますよね」
「そうだよ」
 先生もトミーに答えます。
「羆にしてもね」
「トドも」
「だからみだりに獲ることは出来ないんだ」
「それで値段もですね」
「高いんだよ」
 そうだというのです。
「全部ね」
「そうですか」
「そう、だからね」
「保護されているからこそ」
「高いんですか」
「そうだよ、その辺りは難しくてね」
 それでというのです。
「保護されていても数が多過ぎても困るからね」
「ああ、羆もトドも猛獣ですし」
「そう、難しいんだよ」
「保護していても」
「そこから難しいんだよ」
「成程ね」
 こうしたことをお話してでした、そうして。
 先生達は羆やアザラシ、トドを食べてでした。そのうえで。
 あらためてです、こう言ったのでした。
「まあこんな味かな」
「珍しい食べものだね」
「そうだね」
「それじゃあね」
「これも食べたし」
「後はね」
「さて、どうしようかな」
 先生は缶詰を全部食べてからでした、皆に尋ねました。
「夜までは」
「そうだね。夜まではね」
「一緒に楽しく過ごそう」
「それじゃあね」
「後はね」
「どうしようかな」
「一体」
「札幌の街を歩こう」
 こう言ったのは先生でした。
「そうしよう」
「札幌の?」
「それでだね」
「これからどうするか」
「札幌の街を歩けばいいよ」
 これが王子の提案でした。
「観光で」
「そうだね、今日もね」
「そう、今日はタラバガニも食べるけれど」
 それと一緒にというのです。
「それまではね」
「うん、観光を楽しもう」
 先生も皆も王子の提案に頷いてでした、そのうえで。
 今日も札幌の街を観光して楽しみました、そしてこの夜も蟹鍋を楽しみました。ですが先生の観光は続くのでした。



先生も動物たちも楽しんでるな。
美姫 「本当ね。色々と食べて飲んで」
本当に楽しそうだな。
美姫 「まだまだ先生の休暇は続くのね」
次はどこを観光するのか。
美姫 「次回も待っていますね」
待っています。



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