『ドリトル先生北海道に行く』




                 第五幕  札幌

 先生達は王子が貸し切っている車両の中で王子に朝御飯をご馳走になっていました、その朝御飯はといいますと。
「コーンとだね」
「うん、ジャガイモだよ」
 王子はにこりと笑って先生に答えます。
「この通りね」
「ジャガイモは茹でていて」
「コーンはバターコーンにしたんだ」
 炒めています。
「どっちも食べようね」
「うん、じゃあね」
「ただね」
 ここでこうも言った王子でした。
「ジャガイモはもう皮は剥いてあるけれど」
「そのまま食べるんじゃないんだね」
「バターと塩辛を乗せるんだ」
「塩辛をなんだ」
「そうなんだ」
 こう先生にも他の皆にもお話するのでした。
「北海道の食べ方はそうらしいんだ」
「塩辛をだね」
「そうジャガイモの上に乗せてね」
「食べるんだね」
「だから僕達もね」
「そうしてだね」
「食べよう」 
 これが王子の提案でした。
「これからね」
「先生、いいんじゃない?」
「その食べ方もね」
「美味しいと思うよ」
「そうして食べてみよう」
「そうだね」 
 先生も皆の言葉に頷きました、そして。 
 実際にジャガイモの上にです、塩辛にです。
 それと雲丹も用意されていたのでそれも乗せて食べました、すると。
 その味はです、確かにでした。
「うわ、これは」
「そうだね」
「物凄く美味しいね」
「こんなに美味しいなんてね」
「予想していなかったよ」
「これは美味しいよ」
「本当にね」
 こう言うのでした、皆で。
 王子もです、ジャガイモの上に雲丹と烏賊の塩辛を乗せているそれを食べてからです。にこりとして言いました。
「北海道の人は羨ましいね」
「そうだね」
「本当にね」
「こんな風にして食べてるなんて」
「ジャガイモをバターだけじゃなくて」
「雲丹と塩辛を乗せて食べる」
「そんな食べ方があるなんてね」
「凄くいいよ」
「いや、ドイツでもね」
 先生はジャガイモの本場の国の名前を出しました。
「美味しかったけれどね」
「あそこのジャガイモは潰しますよね」
 トミーはドイツのジャガイモの食べ方を言いました。
「そうですね」
「ええ、あそこはね」
「ドイツの食べ方はね」
「ジャガイモは潰して食べるのよね」
「パンケーキにしたり」
「そこが違うのよね」
「イギリスとはね」
 動物の皆は祖国の食べ方も言います。
「イギリスは切って食べるのよね」
「そうするからね」
「潰して食べるのも確かにいいけれど」
「イギリスはそっちなのよね」
「切る派なのよね」
「そして北海道では」
「こうした食べるんだね」
 先生は二個目を食べています、その雲丹と塩辛を乗せたジャガイモの。
「いや、凄くいいよ」
「本当にね」
「この味ならね」
「どんどん食べられるよ」
「いい感じでね」
 こうお話しながらです、皆はです。 
 さらに食べていきます、そして。 
 そのうえで、でした。皆で。
 ジャガイモを食べてです、そのうえで。
 バターコーンもい食べましたがこちらもでした。
「何でこっちもね」
「美味しいんだろうね」
「バターとコーンの味が合わさって最高」
「病み付きになりそう」
「海の幸だけでも凄いのに」
「メロンもあってこうしたのも美味しいなんて」
「北海道ずるいわ」
 皆こう言って唸ります、そして。
 全部食べ終えてからです、王子は先生に言いました。
「じゃあ先生、後はね」
「うん、札幌に着いたら」
「まずは街を見て回って」
「そしてね」
 そのうえでと言う先生でした。
「札幌の時計台を見てから」
「ラーメンだね」
「あれを食べて回ろうね」
 食べ終えてからも食べもののお話でした。
「そうしようね」
「是非ね」
「札幌は」
 トミーはこの街自体について言います。
「この北海道の中心ですよね」
「一番大きな街でね」
「そうでしたね」
「北海道の本庁もあってね」
 そしてというのです。
「産業や交通の中心だよ」
「そうした街ですね」
「だから僕もね」
「あそこに行くことをですね」
「最初から考えていたんだ」
 そうだったというのです。
「もうね」
「そうでしたね」
「札幌だからね」
 それならというのです。
「あの時計台に行かないとね」
「先生はね」 
 ここで、です。王子はこう皆に言いました。
「その場所に行ったら観光名所は絶対に行くよね」
「うん、名所はね」
「そうだよね」
「何かね」
 それこそというのです。
「そうした場所に行かないと気が済まないんだ」
「成程ね」
「僕の性分かな」
「そうだね、じゃあ」
「うん、まずは時計台に行こう」
「冬に行ったら」 
 冬の札幌にです、王子は言いました。
「雪祭り見るだろうね」
「絶対にそうしているね」
 先生ご自身もその通りと答えます。
「僕自身そう思うよ」
「そうだよね」
「冬の札幌にも行きたいね」
「冬のね」
「うん、一度ね」
 こう言うのでした、ですが。
 先生はここで、です。少し苦笑いになってこうも言いました。
「冬の札幌はやっぱり寒いね」
「けれどイギリスより暖かいんだよね」
「冬のね」
「冬のイギリスに比べればね」
「ずっとましなんだね」
「そうなんだよね、日本の冬も寒いけれど」
 それでもというのです。
「イギリス、欧州よりは暖かいんだよね」
「日本の寒さね」
「神戸でもましなんだよね」
「イギリスにしてもそうだし」
「ドイツも寒いし」
「特に北欧なんてね」
「物凄いよね」
「そうだね、じゃあ冬の札幌もね」
 夏の札幌で言うのでした。
「僕達は楽しめるね」
「そうだね」
「それじゃあ機会があればね」
「冬の札幌に行こう」
「そうしようね」
「うん、その時はね」
 こうしたことをお話しながらです、先生達はその札幌の時計台を見ました。それから札幌ドームを外から見ましたが。
 先生はサッカーグラウンドと野球グラウンドが一緒にあってドームが移動出来るその球場を見てこんなことを言いました。
「この球場を見るとはね」
「思わなかったんだ」
「先生も」
「そうだったんだね」
「うん、野球はね」
 先生の場合はといいますと。
「やっぱりね」
「甲子園だよね」
「阪神タイガースの」
「あのチームだよね」
「先生的には」
「サッカーだとガンバ大阪かな」
 サッカーの方はこちらだというのです。
「まあどっちもプレイはしないけれどね」
「それで北海道に来たら」
「どうしてもだよね」
「日本ハムとかだけれど」
「先生はあまり意識してなかったんだね」
「日本ハムといったら」
 先生は考えるお顔で言いました。
「一応本は読んでるけれど」
「馴染みがないよね」
「先生的には」
「どうしても」
「そうなんだよね、いいチームではあっても」
 それでもなのです、先生的には。
「僕は今は神戸に、関西にいるからね」
「北海道のチームになると」
「どうしても」
「馴染みがなくて」
「ここに来ることもなんだ」
「考えていなかったし」
 それにというのです。
「こうして見てもね」
「意外に思える」
「そういうことだね」
「そうなんだ、けれどね」
 ここでまた言った先生でした。
「日本ハムと阪神の日本シリーズってあるかな」
「ないんじゃないの?」
 最初に先生に応えたのは老馬でした。
「そのカードは」
「ないかな」
「日本ハムは時々優勝してるわね」
 ガブガブも野球の本を読んだ知識からお話します。
「今の世紀になってから」
「そうだよ、日本ハムはね」
「日本ハムはともかくとして」
 トートーが言うことはといいますと。
「阪神はね」
「滅多に優勝しないね」 
 チーチーははっきりと言いました。
「あのチームは」
「そうなんだよね、優勝しそうでも」
「急に調子落とすんだよね」
 ジップもこのことを指摘しました。
「大体九月になったら」
「うん、毎年ね」
「絶対に安心と思ったら」
 ホワイティも阪神のそのことを言います。
「信じられない展開になるんだよね」
「十三ゲーム差をひっくり返されたこともあるよ」
「そんなの普通ないよ」
「まずね」
 チープサイドの家族も呆れています。
「阪神だけだよ」
「そんな展開になるのは」
「うん、最終戦で甲子園で巨人に惨敗したこともあったよ」
「そこで勝ったら優勝だったんだね」
 ダブダブはこのことを察しました。
「その試合で負けて巨人が優勝したのかな」
「そうなったんだ」
「漫画か小説ね」
 ポリネシアも呆れるお話でした。
「よくそんな負け方出来るわ」
「そんなことは阪神だけしかないよ」
「それこそね」
 オシツオサレツも二つの頭で言います。
「あのチームは本当にね」
「奇跡みたいなことばかり起こるよね」
「負けることについてはね」
 先生もこう言うしかありませんでした。
「あのチームは奇跡のドラマを起こすよ」
「それっていいことじゃないよね」
 王子はここまで聞いて唸りました。
「どう考えても」
「うん、だから毎年ファンの人は大変だよ」
「先生はその阪神ファンになったし」
「王子も嫌いじゃないよね」
「華があるからね」 
 だからと答えた王子でした。
「阪神はいいチームだよ」
「そうだよね」
「けれど何でそんな負け方ばかりするのかな」
 首を傾げさせても言う王子でした。
「毎年毎年」
「取り憑かれてるとか?」
「それもとびきり性質の悪いのに」
「だから阪神毎年そうなるんじゃないの?」
「滅多に優勝出来ないんじゃ」
「そうかもね」
 王子もそのことを否定しませんでした。
「あのチームだと有り得るね」
「ううん、クライマックスに出ても大抵負けるし」
 トミーも阪神は嫌いでないのでこう言います、好きでも残念に思う感じで。
「ここぞっていう時に弱いんだよね」
「多分日本のプロ野球のチームで一番だよ」
 勝負弱いというのです。
「あのチームはね」
「そのチームを応援していたら」
「もう大変だね」
「それ先生達だけれど」
「まあ私達も嫌いじゃないし」
「毎年がっかりするよね」
「それでも応援するんだよね」
 先生は少し苦笑いになって言いました。
「僕達は」
「そうそう」
「華があるからね、阪神は」
「他のチームにはない」
「そんなチームだからね」
「そう、本当にね」
「むしろそうしたチームでないと」
 先生は阪神がここぞという時に負けることから言いました。
「僕も応援していないかな」
「僕達もね」
「そうかもね」
「そうしたところがまたよくて」
「それで応援するのかな」
「魅力があって」
「阪神はいいチームなんだろうね」
 こうも言った先生でした。
「負けることが多くても」
「不思議とね」
「勝っても負けても華があって」
「それで惹かれる」
「それが阪神なんだろうね」
「出来れば次この球場に来た時は」
 先生は札幌ドームを見つつ言いました。
「阪神とのシリーズを観たいね」
「是非ね」
「その時が来て欲しいね」
「本当に滅多に優勝しないけれど」
「滅多になんだよね」
 先生はとても残念そうに言いました。
「阪神が優勝することは」
「ううん、それじゃあ」
「そのことを楽しみにしながら」
「これからね」
「ラーメンを食べるんだね」
「そうそう、ラーメンもあるし」
 ここで先生はこうも言いました。
「ここはスープカレーも名物なんだよ」
「あっ、そうなんだ」
「北海道ってスープカレーも名物なんだ」
「そうだよ、あのカレーはね」
 まさにというのです。
「この札幌が発祥らしいんだよ」
「へえ、それじゃあね」
「スープカレーも食べることになるかな」
「ラーメン、蟹、ジンギスカン鍋に」
「それもね」
「そうしようかな、ただまずはね」
「ラーメンですね、それでスープカレーは」
 ここで言ったのはトミーでした。
「明日の朝どうでしょうか」
「朝になんだ」
「はい、朝にカレーもいいですよね」
「うん、カレーは栄養価も高いしね」
「一気に目が覚めますし」
「その暖かさと味でね」
「だからどうでしょうか」
 これがトミーの提案でした。
「明日の朝はスープカレーを食べて」
「ホテルでだね」
「そうしませんか?」
「そうだね、じゃあ明日の朝に食べよう」
 スープカレーをとです、先生はトミーの提案に頷きました。
「それじゃあね」
「はい、それじゃあ」
 トミーは先生に笑顔で応えました、そうしたお話もしてです。先生達は札幌のラーメン横丁に入りました、そしてそこで。
 まずは塩ラーメンを食べてです、先生は言いました。
「このあっさりした感じがいいね」
「うん、九州とはまた違った感じでね」
「美味しいですね」
「薬味にコーンが入っていてね」 
 先生は王子とトミーに応えつつ薬味のそちらにも言及します。
「出汁をとっているんだよね」
「スープは豚骨だね」
 王子はそのスープを少し飲んでから言いました。
「そしてラードを使ってるね」
「寒いからね、札幌は」
「だからラードを使ってなんだ」
「そう、熱を保ってるんだ」
「すぐに冷えない様にするのね」
「そうしているんだ」
「成程ね」
「麺もね」
 その麺のこともお話するのでした、動物の皆にも。
「九州とはまた違ってね」
「九州の麺は細いけれど」
「札幌のはそれより太いね」
「そこが違うね」
「そうだね」
「そうだよ、そこもいいんだよ」
 その麺もというのです。
「このラーメンは」
「ううん、このスープに合ってる?」
「そうだね」
「その味がね」
「また違うんだね」
「うん、スープに合った麺であってこそね」
 それでこそともお話する先生でした、見れば豚のダブダブだけはトリガラだけのラーメンでチャーシューも入れていません。
「美味しいんだよ」
「そうなんだね」
「九州のラーメンはあの白い豚骨にあった細い麺で」
「北海道のラーメンもこのスープに合わせている」
「そうして作ってるんだね」
「そうなんだ、じゃあまずはこの塩ラーメンを食べて」
 それにと言う先生でした。
「後はね」
「うん、その後はね」
「別のラーメンを食べるんだね」
「二杯目は」
「次はこの札幌ならではのね」
 そのラーメンはといいますと。
「バターラーメンを食べよう」
「ラーメンの上にバターを乗せたラーメンですね」
「そうだよ」
 こうトミーにも答えるのでした。
「そのラーメンを食べるよ」
「二杯目は」
「そのラーメンを食べるんだね」
「二杯目はバターラーメン」
「それにするんだね」
「そうしよう、いやあこの塩ラーメンも美味しいけれど」
 先生は麺をすすりながら言いました。
「バターラーメンも楽しみだね」
「うん、それじゃあ」
「二杯目も食べて」
「そうしてだね」
「それからも食べるんだね」
「三杯目は味噌ラーメンだよ」
 このラーメンだというのです。
「こちらも食べないとね」
「ああ、味噌ラーメンだね」
「それも食べるんだね」
「札幌のラーメンというとね」
 それこそというのです。
「味噌ラーメンも有名だからね」
「それでなんだ」
「味噌ラーメンも食べるんだ」
「そちらのラーメンも」
「うん、そうするよ」
 こうしたことも言ってです、先生は二杯目にバターラーメンを食べて味噌ラーメンも食べました。ですが。
 その味噌ラーメンを食べた後で、です。まだ言うのでした。
「もう一杯いけるかな」
「おや、もう一杯ですか」
「はい、美味しいので」
 それでとです、先生はお店のカウンターの中にいる店長さんに答えました。
「ですから」
「それで、ですね」
「そうです」
 その通りというのです。
「そう思いました、ですから」
「じゃあ四杯目は」
「はい、何がいいでしょうか」
「醤油ラーメンはどうですか?」
 店長さんが勧めたラーメンはこちらでした。
「塩、バター、味噌と召し上がられたので」
「四杯目はですね」
「それでどうでしょうか」
「そうですね」
 少し考えてから答えた先生でした。
「じゃあそちらを」
「はい、それでそっちの豚君はですね」
「この子は完全にトリガラで」
「チャーシュー抜きですね」
「それでお願いします」
「わかりました、じゃあ今から四杯目作りますね」
 こうしてです、先生は四杯目のそのラーメンも食べました、そうしてお腹一杯になって満足したうえでなのでした。
 先生達は皆で札幌の街を歩いていきました、地下鉄にも乗りましたがその地下鉄に乗ってです、皆は言いました。
「あれっ、音が」
「そうだよね、電車の音がね」
「何か違うわ」
「他の電車より静かね」
「それで独特で」
「車のタイヤの音みたい」
「そうだよ、北海道の地下鉄はタイヤなんだ」
 先生は皆に答えました。
「その車輪はね」
「そうなんだ」
「その車輪はなんだ」
「車みたいにタイヤ」
「そうなんだね」
「だから独特の音なんだ、それにね」
 さらにお話する先生でした。
「僕はあえてこの地下鉄に乗ったんだ」
「僕達にこの地下鉄を紹介する為に」
「その為になんだ」
「こうした電車もあることを知って」
 そしてというのです。
「僕も驚いたけれどね」
「普通は線路だからね」
「鉄の車輪でね」
「電車っていうと」
「いつもそうだよね」
「そう、だからね」
 先生もこれまでそう思っていました、けれどだったのです。
「こうした電車もあるって知って」
「それで先生も興味を持って」
「僕達にも紹介したくて」
「それでなんだ」
「こうして乗ってなんだ」
「そうなんだ、実際に乗ってみると」
 先生は言いました。
「面白いね」
「うん、バスに乗ってるみたいで」
「独特の感覚だね」
「それでいて電車に乗っている」
「不思議だね」
「こうした電車もあるってことがね」
 先生はしみじみとした口調でした。
「面白いね」
「鉄道はイギリス発祥だけれど」
 王子も言います。
「日本はかなり独自の進化をしているね」
「そうだね、本当に」
「こうした電車もあって」
「地下鉄が発達していてね」
「あちこちに色々な電車があってね」
「面白いね」
「僕もそう思うよ」
 実際にと言うのでした、王子も。
「これはね」
「イギリスから取り入れて」
 そしてとも言う先生でした。
「イギリスとは別の進化を遂げた」
「それが日本の鉄道だね」
「新幹線もそうだね」
「ああ、あれだね」
「王子も新幹線に乗ったことがあるね」
「あるよ、何度かね」
 王子は先生ににこりと笑って答えました。
「あっという間に目的地に着いて」
「そしてだね」
「うん、びっくりしたよ」
 その速さにというのです。
「僕もね」
「あれも日本の鉄道だよ」
「そうだよね」
「私鉄も沢山あるしね」
「そうそう、関西でもね」
「八条鉄道は全国でね」
 日本で唯一の全国区の私鉄です。
「他にもね」
「関西も多いね」
「日本の各地に私鉄があってね」
「九州もあるよね」
「うん、西鉄がね」
 先生はこの会社の名前を出しました。
「あるよ」
「そうだね」
「日本は近代化と一緒に鉄道を取り入れて」
「進化させていったんだね」
「そうなんだ」
「そしてこの北海道でも」
 そのタイヤの地下鉄の中で言うのでした。
「こうした進化を遂げたんだよ」
「凄いね」
「何か日本人はそうしたことが多いね」
「アイディアが出てね」
「工夫をしていく人達なんだね」
「タイヤの鉄道は路面電車であったかな」 
 ふとこうも言った先生でした。
「東欧の何処かに」
「そして日本でもあって」
「こうして使っているんだね」
「そうだよ、このアイディアをね」
 先生はそこにご自身も勉強するものを見出しながら言うのでした。
「僕も勉強しないとね」
「うん、日本人のね」
「この独特なアイディアを勉強してね」
「そうして身に着けるべきだね」
「何かとね」
「そう思うよ、学問にもね」
 それにもというのです、先生の専門分野においても。
「既存のものに独自の発想、アイディアが入れば」
「それでだね」
「色々変わるんだね」
「道が開けたりするんだ」
 学問のそれがというのです。
「これまで気付かなかったことに気付いたりね」
「そうなったりするんだね」
「学問でも」
「先生の専門分野でも」
「そうなんだ、ニュートンもコペルニクスもガリレイもそうだったしね」
 これまでの人類史上の偉大な学者さん達もというのです。
「それまでの固まった考えに囚われずにね」
「新しい考えも入れて」
「そうして学んでいくべきなんだね」
「学問も」
「日本の学問でもあるみたいだけれど」
 既存の概念に囚われる、そのことがです。
「欧州の学問はその日本の学問よりずっと酷かったからね」
「キリスト教だね」
「そう、キリスト教の概念に囚われ過ぎていたんだ」
 欧州の学問はというのです。
「ダーウィンの進化論にも反論があったしね」
「天動説にもだね」
「そう、ガリレイのね」
 先生は王子に答えます。
「あの考えも否定されたしね」
「当時はね」
「ガリレオ=ガリレイが生きていた頃はね」 
 先生は残念そうにです、地下鉄の中でお話します。
「そうだったしね」
「あの話は今から見るとおかしいよね」
「それでも当時はなんだ」
「それが定説だったんだね」
「完全にね」
「成程ね」
「そのことを思うと」
 本当にというのです。
「僕も思うんだ」
「学問には新しいアイディアを入れるべきなんだね」
「そうした考えていったり研究していったりするべきなんだ」
「そうなんだね」
「そう、その時に試行錯誤をしてもいいんだ」
「間違えても」
「最後に正解に辿り着ければいいからね」
 これが先生の考えでした。
「そうね」
「ううん、時間がかかりそうだね」
「時間がかかってもいいんだ」
「学問には」
「そうしてもいいんだ」
「時間も必要なんだね、学問は」
「試行錯誤する時間がね」
 まさにそれがというのです。
「じっくりと時間をかけて間違えて戻って」
「それを繰り返して」
「そうして進んでいくものなんだ」
「ううん、成程ね」
「だからだよ」
 さらに言う先生でした。
「僕もそうしていっているよ」
「成程ね」
「この電車みたいなものに辿り着けるのなら」
 それならとも言う先生でした。
「いいと思うよ」
「そういうことなんだね」
「うん、じゃあ北海道の道庁も見よう」
 先生は笑顔で皆に言いました。
「あちらもね」
「あの建物もいいですよね」
「西洋の趣を取り入れていてね」
 こうトミーにもお話します。
「奇麗な建物だよ」
「だからですね」
「あそこにも行こうね」
「わかりました」
 トミーは先生の言葉ににこりとして頷きました。
「それじゃああそこにも行きましょう」
「そうしようね」
「何か行く場所が多いですね」
「札幌の街を歩きながらね」
「そして夜は」
「うん、ホテルに入る前に晩御飯だね」
 それだというのです。
「蟹だね」
「そうですね、お楽しみの」
「そうそう、蟹ね」 
 動物の皆もここで言います。
「北海道の名物の一つのね」
「今度は皆で食べられるし」
「蟹楽しみだよ」
「蟹を食べてね」
「皆で楽しもうね」
「是非ね」
 こう皆で言うのでした。
「毛蟹もタラバガニもね」
「どっちも食べよう」
「今日はどっちかを食べて」
「明日はもう一方だね」
「そうなるね、僕はイギリスではオマール海老を食べていたけれど」
 ロブスターともいいます。
「あれも美味しいんだよね」
「そうそう、どっちの蟹もね」
「大阪でも有名だけれどね」
「蟹道楽ね」
「あの動く大きな看板面白いけれど」
「北海道の蟹は本場だから」
「余計に楽しみよ」
 本当に心からうきうきしている皆です、そして。 
 先生もです、こう言います。
「本当にどっちを食べようかな」
「それが問題ですね」
「毛蟹にするかタラバガニにするか」
 王子が言うことはといいますと。
「それが問題だね」
「ハムレットだね」
「無理があるかな」
「いやいや、この場合はどちらもだけれどね」
 結局は両方共食べることになると言う先生でした。
「そうなるね」
「そうなんだね」
「そう、それじゃあね」
「うん、今日と明日のそれぞれの夜はね」
「蟹だよ」
 このことは間違いないというのです。
 そうしたお話をしながら地下鉄を出てです、道庁の建物の前に来ました。庁舎の建物は赤い煉瓦造りで左右対称で。
 とても大きくてです、動物の皆は何処か東京駅を思わせる壮麗で真ん中に円形のアーチまであるその建物を見て言いました。
「こんなのが庁舎って」
「いいよね」
「宮殿みたいだよ」
「欧州のね」
「けれどやっぱり欧州のどの国にもない」
「そんな建物だよね」
「うん、小樽と同じでね」
 先生も言います。
「この庁舎も西洋を取り入れたけれど」
「日本の中の西洋ね」
「それなのね」
「そうだと思うよ」
 こう皆にお話するのでした。
「日本人が考えたね」
「若しもだよ」
「この庁舎がね」
 オシツオサレツが言うことはといいますと。
「雪に覆われたら」
「凄く奇麗じゃないかな」
「あっ、そうね」
「確かに映えそうね」
 チープサイドの家族もここで言います。
「白い雪の中の赤い庁舎」
「これはいいわよ」
「赤と白はお互いに映えさせるのよ」
 ガブガブも指摘します。
「目立たせ合ってね」
「そうね、この赤はいい赤だし」
 ポリネシアは庁舎のその赤から冬を連想しています。
「真っ白な雪の中にあったら最高よ」
「そして雪が氷になって輝いて」
 トートーは雪のことを言います。
「銀も入るんだね」
「ううん、どれだけ奇麗なのかな」
 ダブダブも少し想像がつかない感じです。
「想像がつかないね」
「実際に見ないとね」
 老馬の頭の上からホワイティが言いました。
「ちょっとわからないけれど」
「多分奇麗だろうね」
 ホワイティを頭に乗せている老馬の言葉です。
「銀世界の中の赤い宮殿って感じで」
「そう言うと何かロシアみたいだね」
 ジップは雪と赤い宮殿、クレムリンから連想しました。
「それだと」
「確かにそうだね」
 チーチーはジップのその言葉に頷きました。
「それだと」
「うん、北海道はロシアを意識することが多い場所だけれど」
 先生も皆のお話を受けて言うのでした。
「赤と白だと余計にだよね」
「そうだよね」
「この庁舎はロシア風じゃないけれど」
「雪の中の宮殿っていうと」
「何処かロシアだよね」
「うん、そうした感じがするね、ただね」
 先生は皆にさらに言いました。
「この庁舎はアメリカ風なんだ」
「ああ、欧州じゃなくて」
「そっちなんだ」
「欧州のどの国でもないと思ったら」
「アメリカだったんだ」
「厳密にはアメリカ風のネオ=バロック様式でね」
 それでというのです。
「日本の趣は入っているね」
「そうなんだね」
「この庁舎は」
「もっと言えば今は使われていないよ」
 庁舎としてはというのです。
「旧庁舎だよ」
「そういえばすぐ傍にね」
「ビルが一杯あるね」
「今はそうした場所がなんだ」
「庁舎なんだね」
「そうなっているよ」 
 先生は皆にこのこともお話しました。
「今この建物は歴史資料館になっているんだ」
「そうなんだ」
「もう庁舎じゃなくてなんだ」
「資料館なんだ」
「そうなってるんだ」
「そうだよ、そこが変わっているからね」
 だからというのです。
「僕達も中に入られるよ」
「その為にも来たのね」
「北海道の歴史を勉強する為にも」
「そしてこの建物の中を見る為にも」
「是非共」
「そうだよ、実はね」
 先生は皆にくすりと笑って答えました。
「今から中に入ろう」
「うん、それじゃあ」
「今からね」
「この建物の中に入って」
「勉強しよう」
「北海道の歴史を」
「北海道の歴史はアイヌの人達の歴史と」
 それに、とお話する先生でした。
「開拓の歴史があるけれどね」
「あと松前藩?」
「江戸時代にはあの藩もありましたね」
 王子とトミーは江戸時代のことをお話しました。
「確かね」
「北海道にも江戸時代の藩がありましたね」
「うん、この藩は歴史的に評判がよくないけれど」
 それでもというのです。
「確かにあったよ」
「そのことを考えるとと」
「北海道の歴史も長いですね」
「江戸時代もそれ以前もあって」
「かなりのものですね」
「開拓してからじゃないんだ」
 北海道の歴史はというのです。
「アメリカの歴史もそうだよね」
「あっ、あの国の歴史もね」
「実は結構長いんですよね」
「ネイティブ=アメリカンの人達がいたし」
「詳しいことはわかっていないことは多いですけれど」
「それにコロンブス以前から発見されていて」
「バイキングの人達も見付けていましたね」
 王子とトミーはそのアメリカの歴史について言いました。
「そのアメリカの歴史と同じで」
「北海道の歴史もですね」
「長いんだ」
「そうなんですね」
「そう、だから北海道の歴史を短いとは思わないことだよ」
 このことをです、先生は言うのでした。
「長い歴史があるんだ」
「他の日本の地域と同じで」
「そうなんですね」
「その北海道の歴史を学ぶ為にも」
 先生は目をきらきらと輝かせて言いました。
「行こうね」
「うん、それじゃあ」
「今から」
 二人も笑顔で頷きました、そしてです。
 皆でその庁舎、今は資料館になっているその場所に入りました。そのうえで二重の扉や独特の窓を見てです。 
 そしてです、さらにでした。
 北海道のその歴史を学びました、それから。
 皆は蟹を食べに行くのでした、そのお楽しみに。



のんびりと旅行を楽しんでいるようだな。
美姫 「みたいね。特に色んな物を食べているわね」
食べ歩きって感じかな。
美姫 「楽しんでいるわね」
良い事だよ。ゆっくりと休暇を楽しんで羽を伸ばして欲しいな。
美姫 「今まで結構、忙しかったからね」
だな。次はどんな話になるのか。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。



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