『ドリトル先生北海道に行く』




                 第三幕  函館の街で

 先生達はまずは函館の街に出ました、そして。
 ホテルに一直線に向かってそこに荷物を置きました、それから五稜郭に向かうのですが。
 こで、です。動物の皆は函館の街を見回してこんなことを言いました。
「何かね」
「この函館の街ってね」
「今季節は夏だけれど」
「妙に冬の気配が強いよね」
「そうよね」
「確かにそうだね」
 先生も皆のその言葉に頷きます。
「この街はね」
「冬が長いからかな」
「街の作り方も冬を強く意識してて」
「雪が積もっても大乗な様にね」
「ビルも道路もね」
「そうした造りになってるね」
「そうだね、この街はね」
 先生も街を見回し言います。
「冬の街だね」
「長い冬を意識して」
「そして造った」
「そうした街だね」
「それに」
 さらにというのでした、動物の皆は。
「大きな駅があるけれど」
「港からはじまってる感じだね」
「何か港を第一として」
「そこから街が広がっている」
「そんな風だね」
「漁港だからね」
 何故港から広がっているのかもです、先生はお話しました。
「この街は」
「だからなんだ」
「港から広がっている感じなんだね」
「漁港の街だから」
「それでなんだ」
「そうだね、冬のね」
 まさにその季節のです。
「港町だね」
「そう言うと独特なんだね」
「この街は」
「その函館に来たから」
「だから」
「うん、五稜郭の後はね」
 まさにと言うのでした。
「食べよう」
「是非共」
「そうするんだね」
「その港町の海の幸」
「それを食べるんだね」
「そうしよう」
 是非にというのでした、そうしたお話をしながらです。
 皆でまずは五稜郭に行きました、五稜郭は上から見ると星型ですが横からはそうは見えません。ですがその外と中をじっくりと見て回ってです。
 先生はしみじみとしてです、こう言いました。
「いや、ここに幕府軍が篭ってだね」
「そしてだね」
「最後の戦いを行った」
「降伏するその時まで」
「そうだよ、そしてこの五稜郭でね」
 まさにこの場所でというのです。
「土方歳三が戦死したんだ」
「あの新選組の」
「鬼の副長と言われた人がなんだ」
「この五稜郭で戦死したんだね」
「最後の最後の戦いで」
「そうなったんだ」
 緑も多いその街を見ての言葉です。
「武士として華々しく死んだんだよ」
「名誉の戦死をしたんだ」
「この五稜郭で」
「確かあの辺りでだよ」
 先生は五稜郭のある場所を指差して皆にお話しました。
「馬に乗って敵に果敢に突撃してね」
「それでなんだね」
「戦死したんだね」
「そうなんだよ」
 先生は皆に感慨を込めてお話します。
「新選組の服じゃなくて軍服を着てね」
「そしてなんだね」
「馬に乗って敵軍に突撃して」
「最後はどう思ったのかな」
 先生は土方歳三に思いを馳せました、その人が最期の時を迎えたその場所の方をしみじみと眺めながら。
「敵軍に斬り込んで撃たれて倒れて」
「武士として死ねて」
「それで」
「何処か満足していたのかな」 
 こうも言ったのでした。
「あの人は武士でありたいと思っていたからね」
「新選組の時に」
「そう思ってだったんだ」
「戦っていた」
「そうだったんだね」
「武士として戦ってきてね」
 新選組の副長としてです、その剣技はかなりのものだったそうです。
「そして死ねたからね」
「満足だったかな」
「それで」
「そして死ねて」
「そのうえでだから」
「そうだったかも知れないね」
 先生のお言葉には今も感慨が込められています。
「そして今は安らかに眠っているのかな」
「そういえば新選組の人達は」
 ここでトミーも言います。
「非業の死を遂げている人が多いですね」
「幕末は動乱の時代だったからね」
「京都では殺し合いが行われていて」
「内戦もあったしね」
「この函館までいった戊辰戦争ですね」
「そうした時代だったからね」
 その中で幕府側の先頭に立って戦ってきたのが新選組です、自ら刀を手にして。
「どうしてもね」
「そうした死に方をする人が多かったんですね」
「そうだよ」
「だから近藤勇さんも」
「ああした死に方をしたし」
「他の人達も」
「沢山の人がね」
 新選組の隊士の多くの人がです。
「斬ったり斬られたり」
「中で粛清もあって」
「沢山死んだんだ」
「明治まで生き残った人もいますね」
「いるけれどね」
 それでもというのです。
「死んだ人は多いよ」
「そうですね」
「沖田総司も死んだし」
「あの人は結核でしたね」
「当時日本では労咳といったよ」
 咳をかなりすることから付いた名前です。
「その病で若くして死んだんだ」
「黒猫を怖がってですね」
「そうだよ」
「あの何でかな」
「何で黒猫怖がったのかな」
「あれがどうもね」
「わからないね」
 動物の皆も沖田総司さんのことをお話します。
「黒猫に何があったの?」
「祟る生きものとはイギリスでも言うけれど」
「日本でもそうらしいけれど」
「それでなのかな」
「そのことはね」
 先生は皆に沖田総司と黒猫のこともお話します。
「当時黒猫は労咳除けになるって言われてたんだ」
「それでなんだ」
「沖田さんも飼ってたんだ」
「そうだったんだ」
「けれどどうやら」
 先生はご自身の予想をお話しました。
「その黒猫に死を見てね」
「それでその死を振り払おうとして」
「それでなんだ」
「黒猫を斬ろうとしたけれど」
「もうその力も残っていなかったんだ」
「それで斬れなくなってしまったことを嘆きながらね」 
 結核により死にゆく中で、です。
「死んでいったんだ」
「そうだったんだね」
「そうらしいね、新選組は斬って斬られて」
 またこう言った先生でした。
「その果てに死んでいったんだ」
「新選組の人達はだね」
「そして土方さんも」
「そうだったんだよ」
 また動物の皆に言うのでした。
「ここでね」
「そう思うとね」
「ここにいると複雑な気持ちになるね」
「土方さんが死んだ場所でもあるって思うと」
「本当にね」
「そうだね、この五稜郭は奇麗だけれど」
 それと共にというのです。
「そうした場所でもあるんだ」
「ううん、じゃあ」
「その土方さんのことも思いながらだね」
「この五稜郭を見るんだね」
「これからも」
「そうなるね」
 こう言ってでした、先生は皆と一緒に五稜郭を回りました。そしてその後は函館の街に戻ってです。そのうえで。
 駅の近くのあるお店に入りました、そのうえで。
 皆で食べました、そのメニューは。
 鮭の身とイクラ、それに雲丹が上にたっぷりと乗せられた丼でした、それに。
 ホッケの塩焼き、烏賊の姿焼きです。それをトミーと一緒に頼んで。動物の皆にも注文しました。そのうえで。
 皆で食べはじめました、そこで。
 ふとです、こう言ったのでした。
「確かにね」
「うん、美味しそうだね」
「そうだよね」
「僕達の食事もね」
「美味しそうだね」
「じゃあ皆で食べよう」 
 是非にとです、お話してでした。
 そしてです、実際に食べはじめました。すると皆一斉に言いました。
「いや、これはね」
「かなりですね」
 実際に美味しいとです、トミーも言います。
「こんなに美味しいなんて」
「素材が違うね」
「そうですよね」
「ホッケは神戸でも売ってますけれど」
 そしてトミーもよく買って先生と一緒に食べています。
「それでも」
「神戸まで行くまでに冷凍しないといけないね」
「その分があってですね」
「神戸で食べるホッケは北海道程美味しくないんだよ」
 そうだというのです。
「多分ね」
「だからですか」
「けれど冷凍技術は素晴らしいから」
 この技術についてはです、先生はお話しました。
「神戸でも食べられるよ」
「そうなんですね」
「そう、だから否定するとね」
 そしてというのです。
「ホッケも食べられないよ」
「そうなりますね」
「うん、それを否定したら駄目だよ」
「何かそうした料理漫画とかありますね」
「それを否定したらね」
「食べられないですからね」
「そう、それを否定したら駄目だよ」
 それこそというのです。
「冷凍技術は確かに素晴らしい技術だから」
「皆に沢山の美味しいものを食べさせてくれる」
「そうした技術だから」
「科学自体をですね」
「否定出来ないよ」
「先生は科学を否定されていませんよね」
「否定しても何もならないよ」
 こうも言った先生でした。
「文明は否定をしても」
「何の進歩もありませんね」
「そうだよ、文明は悪じゃないんだよ」
「善悪の問題じゃなくて」
「光と陰がある」
 その両方がというのです。
「あるからね」
「だからですね」
「そう、陰のことを理解して」
「光の部分を活かすべきですね」
「そうするべきなんだよ」
「そういえばこの北海道では牛乳も有名で」
 ここでトミーはこのことについても言いました。
「メロンもありますね」
「ハウス栽培とかでね」
「何かさっきお話に出た料理漫画ですけれど」
 トミーは烏賊の姿焼きを食べつつお酒を飲みました、それは白ワインですが烏賊ととても合うものでした。
「牛乳の消毒は熱消毒ですね」
「うん、高温で二秒か三秒だよ」
「そうするよりそのままとか低温でじっくりの方がいいんですよね」
「その方が味がいいんだ」
 先生もこのことは否定しません。
「けれど手間を考えたらね」
「高温でさっとする方がですね」
「いいんだ、それに栄養は確かにあるし」
「問題ないですね」
「そう、それにね」
 それに加えてというのです。
「ハウス栽培のメロンだね」
「他のお野菜や果物もですけれど」
 トミーは食べながら先生にお話していきます。
「ハウス栽培や農薬のせいで栄養が減ってるとかありますよね」
「それは間違いだよ」
「そうですか」
「そう、栄養が極端に減っているとだね」
「今の野菜や果物はそうだと言っていますよね」
「それも違うんだ」
 先生はこう言うのでした。
「僕は農学も学んでいるけれど」
「ハウス栽培とかは関係ないですか」
「農薬もね。農薬や除草剤は使い過ぎは確かによくないけれど」
 これが陰です。
「ある程度は使わないとね」
「害虫に作物がやられたりして」
「除草剤もそうだね」
「はい、雑草に作物がやられますね」
「必要なんだ」
「使い過ぎがよくないんですね」
 トミーの先生のお話を聞いて頷きます。
「つまりは」
「そうなんだ」
「それでハウス栽培も」
「そうだよ、どんな季節でも色々なものが食べられるものだよ」
 だからいいというのです。
「ビタミン等の栄養が減っているっていうね」
「昔の野菜や果物と今のでは」
「それは違うんだ」
「減っていないんですか」
「野菜や果物の栄養はそうしたことだけじゃわからないんだ」
 先生は海鮮丼、鮭やイクラや雲丹がたっぷりと乗ったそれを食べながらです、そのうえでトミーにも皆にもお話します。
「産地の土壌や降水量、収穫時期なんかでね」
「わかるんですね」
「そうだよ、そうしたこと全てを頭に入れてね」
 そしてというのです。
「調べないといけないんだ」
「そうなんですね」
「そうだよ、だから簡単にそう言う人はね」
 先生の口調は穏やかですが咎めるものです。
「農業について知らない人だよ」
「そうなんですね」
「文明についても知らない人かな」
「何かそう言うとね」
「そうだよね」
 ここで動物の皆も言います。
「そうした人って野蛮だよね」
「野蛮人だよね」
「先生やトミーと違って」
「そうなるね」
「野蛮も悪ではないよ」
 先生は皆にもこう言いました。
「文明もそうだよ、けれどね」
「問題はそういうのじゃなくて」
「間違ったことを言うこと」
「そのことだね」
「しっかりと調べてね」
 つまり学んでというのです。
「それから言わないと駄目なんだ」
「ううん、じゃああの料理漫画は」
「僕もあの漫画は知っているけれど」
「先生もですか」
「間違いが凄く多いよ」
「そうなんですね」
「肝心の食べものの知識もそうだけれど」
 それだけでなく、というのです。
「日本の歴史についての知識もね」
「ないんですね」
「うん、僕はそう思うよ」
 日本の歴史に詳しい先生から見た目です。
「いい漫画じゃないね」
「そういえば何かあの漫画は」
 トミーはその漫画のあることに気付きました、その気付いたことはといいますと、。
「ちょっとしたことですぐに物凄く怒る人ばかり出ますね」
「そうだね、あの漫画は」
「お店で化学調味料使ってるってお店の中で怒鳴り散らしたり」
「いい行為じゃないね」
「下品ですよね」
「そうしたことは絶対にしたらいけないよ」
 先生が絶対にしないことです。
「間違ってもね」
「人としてですね」
「そんな下品なことはね」
 到底というのです、先生も。
「するものじゃないよ」
「何があってもですね」
「そうだよ、そんなことをしたら」
 それこそというのです。
「他のお客さんにも迷惑だね」
「そしてお店の人にも」
「営業妨害だよ」
「幾らそのお店の料理が気に入らなくても」
「していいことと悪いことがあるよ」
「そうしたことをする人は」
「人として間違っているよ」
 もうその時点で問題だというのです。
「紳士のする行いじゃないよ」
「そうですよね」
「というかよ」 
 ガブガブがここで言うことはといいますと。
「そんな漫画読んだら駄目よ」
「読んだら頭が悪くなるね」 
 トートーはガブガブよりも辛辣でした。
「間違った知識に下品な人ばかり出る漫画なんて」
「そんな漫画作ってる人ってどんな人なのかしら」
 ポリネシアはこのことに首を傾げさせます。
「相当人間としておかしい人じゃないの?」
「少なくとも先生みたいな人じゃないね」
 ジップはこのことはすぐにわかりました。
「謙虚に学んで穏やかで上品な人じゃないね」
「というか日本人にもね」
 ホワイティは残念なお顔になっています。
「そんな困った人いるんだね」
「イギリスにも他の国にもいるけれど」
 チーチーもホワイティと同じお顔です。
「日本にもなんだね」
「というかお店で怒鳴り散らすとか」
「酔っぱらい?」
 チープサイドの夫婦はこう思うのでした。
「それかヤクザ屋さん?」
「どっちにしてもまともな人じゃないわよ」
「そんな風にはなりたくないね」
 ダブダブは完全にそうした人を反面教師としています。
「先生みたいな人がいいよ」
「いや、間違った知識を世に広めたら」
「その責任は大きいよ」
 オシツオサレツはそのことも問題にしています。
「農家の人も困るし」
「読者の人も変な風に思うしね」
「料理漫画も色々だね」
 老馬は目を閉じて瞑目する様になっています。
「そんなおかしな漫画もあるんだね」
「うん、僕も読んで驚いたよ」
 また言った先生でした。
「知識があまりにも間違っていてね」
「何かその漫画ネットでかなり批判されてますね」
「批判されない筈がないよ」
 先生はトミーにこう答えました。
「あれだけ間違いがあると」
「それを広めていると」
「実害が酷いからね」
「何処でもこうした話はありますね」
「残念なことにね」
 日本でもです。
「あるね」
「そうですね」
「まあそうした人はやがて誰からも相手にされなくなるよ」 
 間違ったことばかり吹聴して下品な人はです。
「本当にね」
「そうした人こそが下品な野蛮人」
「よくない人だね」
「野蛮は悪くないけれど」
「下品なのがよくないんだね」
「そうだよ、文明人でもね」
 先生はまた動物の皆にお話しました。
「悪い人はいるね」
「うん、下品な文明人」
「そうした人もいるね」
「品性がないと駄目」
「そういうことだね」
「フック船長はどうだったかな」
 先生はあのとても有名な作品の名前を出しました。
「あの人は」
「あっ、悪い大海賊だったけれどね」
「言葉遣いは丁寧でね」
「礼儀は守ってたね、あの人も」
「決して下品じゃなかったよ」
「だからあの船長は悪い人でもね」
 それでもというのです。
「皆から嫌われていないんだよ」
「とてもおっかないけれどね」
「何処か魅力があって」
「あの作品の名悪役ね」
「いい海賊だよ」
「僕も彼は嫌いじゃないよ」
 先生もというのです。
「あの船長さんはね」
「けれどそうした人は」
「駄目なんだね」
「そうなってもいけない」
「そうだね」
「そうだよ、文明は光と陰を理解する」
 その両方をというのです。
「それが大事なんだ」
「そのうえで考えて」
「学んで言う」
「そうあるべきなんだね」
「そうだよ、そしてその他の色々なことも調べて」
 野菜や果物の旬や土壌等もというのです。
「そうしていかないと駄目なんだ」
「数字だけ出していますと」
 トミーは科学でよく出されるものをお話に出しました。
「信じる人多いですね」
「そうだね」
「けれどですね」
「それもよくないんだ」
「数字は全てを語っている様で」
「実はそうじゃないんだ」
 先生はこのことも言うのでした。
「トリックも出来るしね」
「数字に出ている以外のことは語っていない」
「だから数字を鵜呑みにすることも危険なんだ」
「そういうことですね」
「広く深く調べていく」
「それが学問ですね」
「あの料理漫画は学問的でもないよ」
 その視点から見ても駄目だというのです。
「本当によくあんな漫画が長い間影響力があったね」
「考えてみれば怖いことですね」
「もう連載していないんだよね」
「とんでもない問題起こしたみたいですね」
「今までそうならなかったのが不思議だよ」
 連載出来なくなった状況にというのです。
「むしろね」
「そうですよね」
「そうした間違った漫画のことも頭に入れてね」
 そしてとも言う先生でした。
「片隅に」
「そのうえで今は」
「うん、美味しく食べよう」
「この函館の海の幸を」
「楽しくね、いや本当に」 
 先生は今も海鮮丼を食べています、その海鮮丼について言うことは。
「これ凄く美味しいよ」
「贅沢ですよね」
「鮭の身にイクラ、雲丹がたっぷりだからね」
 白い御飯の上にです。
「これは凄いよ」
「先生上から山葵醤油かけてますね」
「そうしたらさらに美味しいよ」
 普通に食べるよりもというのです。
「お酒にも合うし」
「先生は日本酒ですね」
 トミーは白ワインですが。
「そちらですか」
「うん、白ワインもって思ったけれど」
「そちらにされたんですか」
「何かどんどんね」
 少し苦笑いになって言う先生でした。
「僕は日本に入っているね」
「そうですね」
「ホッケも烏賊も美味しいしね」
「日本酒に合いますか」
「これだと」
 先生はここでお店の壁にかけられているお品書きを見ました、居酒屋の書き方で筆で書かれているそれを見てです。
 先生はトミーにです、こう言いました。
「ホタルイカの塩辛とシシャモも頼もうかな」
「追加メニューですね」
「お酒に合いそうだしね」
「絶対に合いますよ」
 トミーは白ワインを飲みながら相槌を打ちました。
「そっちも」
「そうだね、じゃあトミーの分も頼むよ」
「有り難うございます」
「お礼はいいよ、じゃあ食べよう」
「はい、それじゃあ」
 こうしてそのホタルイカとシシャモも頼みました、そして実際にそうしたものを食べてお酒を飲むとでした。
 実際に合っていてです、先生は言いました。
「いや、これはいいね」
「合いますね、お酒に」
「ホッケや烏賊と同じくね」
「何かお酒が進み過ぎて」
「怖い位だね」
「僕よく大阪に行きますけれど」 
 トミーはここで大阪のお話もしました。
「たこ焼きやお好み焼きですよね」
「あと串カツだね」
「そうしたものを食べていますと」
「ビールだね」
 先生はすぐに言いました。
「それが欲しくなるね」
「はい、それでよく飲みますけれど」
「ここではね」
「僕は白ワインで」
「僕は日本酒が進むよ」 
 こちらのお酒がというのです。
「やっぱりね」
「何か飲み過ぎますね」
「そうだね」
「何かここまで飲むと」
 トミーはこんなことも言いました。
「お昼からこれは」
「ちょっとまずいかな」
「夜もありますから」
「夜は何を食べるかだけれど」
「どうしますか?」
「そうだね、お刺身かな」
 先生は海の幸からこのお料理を出しました。
「そう考えているけれど」
「お刺身ですか」
「お刺身は外せないね、あとね」
「天麩羅ですね」
「それもね」
「じゃあ夜もですね」
 トミーは先生のお話を受けて一つの答えを出しました。その答えはといいますと。
「飲みますか」
「今みたいにだね」
「はい、ただ食べてもです」
「お酒はだね」
「今頼んでいるだけにしましょう」
 お酒はもう注文しないというのです。
「夜も飲みますから」
「健康の為にもだね」
「そして歩きましょう」
「二人共酔っ払ってるからね」
「お酒も抜いてね」
「そうしないといけないから」
「だからだね」
 動物の皆も言います。
「歩いてそして」
「お酒を抜いて」
「後は歩いて運動してね」
「お腹を空かせるんだね」
「そう考えてるよ」
 実際にとです、トミーは皆に答えました。
「その二つをね」
「そして夜もだね」
 また言って来た先生でした。
「楽しむんだね」
「そうしましょう」
 是非にという言葉でした。
「そして夜こそです」
「今以上にだね」
「お酒も楽しみましょう」
「やっぱりお酒はね」
「日本では夜に飲むものですね」
「イギリスでは朝からエールを飲んだりするけれどね」
 先生の故郷ではそうです、それが朝御飯になったりします。先生もイギリスにいる頃はそうした生活だったのです。
「けれどね」
「はい、日本ですから」
「お昼から飲み過ぎるとよくないね」
「そうも考えましたから」
 だからというのです。
「お昼はこれまでで」
「そしてだね」
「夜また飲みましょう」
「それじゃあね」
 先生はトミーの提案に笑顔で頷きました、そしてです。
 食事の後は函館の街を歩いての観光でした、そこで。
 先生は皆にです、こう言いました。
「夜は離れた場所で見るよ」
「見るって?」
「離れた場所でって」
「どうするの、一体」
「夜は」
「この函館は夜景も有名なんだ」
 動物の皆にこのことをお話するのでした。
「だからね」
「あっ、街から離れて」
「その場所からなんだ」
「函館の夜景を見るんだ」
「そうするんだ」
「そう、函館に来たから」
 それ故にというのです。
「夜景も見ないとね」
「そういうことなんだ」
「じゃあ一緒に行こうね」
「夜は夜景」
「それを楽しもうね」
「さて、夜はお刺身を食べて」
 晩御飯のことも言う先生でした。
「お酒も飲んでね」
「そして夜景だね」
「夜景も楽しんで」
「函館を見ていくんだね」
「そうしようね」
 こうお話してでした、そのうえで。
 先生達は夜まで函館の街を歩いて王子や日笠さん、それにサラへのお土産を買って郵送で届ける手続きもしてでした。
 晩御飯は実際に鮭のお刺身と烏賊やほたて貝の天麩羅等を食べてです、お酒も楽しんでそれからでした。
 函館の夜景を見に行きました、その夜景はといいますと。
 動物の皆は夜の中に輝く無数の宝石達を見てです、目を輝かせて言いました。
「凄いね」
「日本は夜景が奇麗な街が多いけれど」
「函館の夜景は別格だね」
「明るいだけしゃなくて」
「宝石が無数に瞬いてる」
「澄んだ夜空みたいだね」
「それ以上かもね」
 こう言うのでした。
「こんな夜景もあるんだ」
「函館って夜も奇麗なんだ」
「この奇麗な街を見られるなんてね」
「私達幸せね」
「いや、僕もね」
 先生も言うのでした。
「これだけ奇麗とはね」
「思わなかったんだね」
「先生にしても」
「そうだよ」
 こう皆に言うのでした。
「こんなに奇麗とはね」
「先生の予想以上」
「そうだったんだね」
「この函館の奇麗さは」
「そこまでなんだね」
「こんなに奇麗だとね」
 声にも笑みが入っていました、奇麗なそれを見て満足している笑みが。
「来てよかったよ、そしてね」
「また来たい」
「そう思うんだね」
「先生にしても」
「そうなのね」
「うん、函館は凄くいいよ」
 太鼓判を押した言葉でした。
「歴史を学べて食べものが美味しくて昼の街並みも奇麗で」
「夜景も素晴らしい」
「だからなんだ」
「凄くいい」
「そうなんだね」
「本当にそうだよ、また来たいね」
 こうも言ったのでした、皆に。
「明日発つけれどね」
「明日は小樽に向かうのよね」
「そしてその次の日は札幌ね」
「小樽に札幌」
「そこにも行くのよね」
「そうだよ、そしてね」
 先生は皆にさらにお話します。
「美味しいものも食べようね」
「いや、しかしね」
「何か北海道っていいよね」
「こんなにいいなんてね」
「想像もしていなかったわ」
「本当に」
「そうだね、ただ小樽に行くまでだけれど」
 ここでこう言った先生でした。
「八条運送に手伝ってもらってね」
「僕達とだよね」
「トラックか何かで行くのよね」
「まずは小樽まで」
「そうよね」
「明日の朝早くに八条運送の函館支店まで行ってね」
 そしてというのです。
「お願いすることになるよ」
「じゃあその分のお金もね」
「支払ってね」
「そのうえで」
「小樽まで」
「行こうね」
 こうお話するのでした、ですが。
 ここで、です。ふとでした。
 先生に声をかけてくる人がいました、その声はといいますと。
「あれっ、先生じゃない」
「?その声は」
 皆その声に反応しました、そしてです。 
 その声がした方を見るとです、そこには王子がいました。
「王子じゃない」
「そういえば今は旅行中?」
「あれっ、里帰りしていたんじゃ」
「どうしてここに」
「里帰りはしたよ」
 王子は動物の皆に答えます。
「けれどね」
「それでもなんだ」
「旅行に行っていて」
「それでなのね」
「今函館にいるの」
「里帰りの後神戸に戻らなかったんだ」
 王子は微笑んで皆にお話します。
「飛行機をここに向けたんだ」
「それで函館観光」
「それを楽しんでるの」
「北海道を回っていくよ」
 函館だけでなく、というのです。
「小樽や札幌もね」
「あれっ、ひょっとして」
 トミーは王子の旅の行く先を聞いて言いました。
「王子の旅行のルートって僕達と同じかな」
「あれっ、そうなんだ」
「僕達のルートはね」
 トミーは王子にこのことをお話しました、すると。
 王子は聞いてからです、こう言いました。
「それじゃあ同じだね」
「王子もなんだね」
「うん、そのルートだよ」
 先生達とです。
「完全にね」
「そうなんだね」
「電車も全て予約しているよ」
「そっちも?」
「車両一つ借り切ってね」
「それは凄いね」
「王室でそうしてくれたんだ」
 王子のお家がというのです。
「王家に相応しい格式ってことで」
「車両を一つなんだ」
「旅行の時はね、よかったら」
 ここで王子は先生達に言いました。
「先生達もどうかな」
「僕達も?」
「これから僕と執事と一緒に旅行しない?」
 北海道をというのです。
「ルートも日時も一緒だしね」
「いいのかな」
「いいよ、僕達の間じゃない」
 微笑んで言うのでした。
「だからね」
「それでなんだね」
「僕が借り切ってる車両の中に入ってね」
 そしてというのです。
「一緒に小樽に行こう」
「そしてそれからも」
「うん、一緒に行こうね」
「うわ、流石王子だね」
 チーチーは王子のそのお言葉に驚いて言います。
「太っ腹だね」
「そうかな」
「そうだよ、凄いよ」
 ダブダブも言います。
「一緒に行こうなんてね」
「車で行こうと思ってたけれど」
 トートーは移動手段のことをお話します。
「電車ならすぐね」
「そうだね、車よりもずっとね」
 ジップはトートーの言葉に頷きます。
「電車は速いしね」
「速く着いた分遊べるわよ」
 ポリネシアはこのことを指摘しました。
「小樽でね」
「小樽も街が奇麗みたいだし」
 ここでこう言ったのはホワイティでした。
「じっくり見たいね」
「うん、どんな街なのかね」
 老馬も続きます。
「心ゆくまでね」
「王子の心使いはね」
「本当に有り難いわね」
 チープサイドの家族は王子の提案に乗り気です。
「それじゃあね」
「ご好意を受け取るべきかしら」
「うん、八条運送に頼んでも」
「果たして受けてくれるかどうか」
 オシツオサレツはその現実を指摘しました。
「お金もかかるし」
「それも高いんじゃ」
「そう、色々な条件を見比べるとね」
 王子がここでまた言います。
「僕と一緒に行った方がいいと思うよ」
「それじゃあ」
「うん、一緒に行こうね」
 王子はトミーに微笑んで応えました。
「これからはね」
「いつも悪いね」
「だからそんな言葉はいいんだよ」
 こうも返した王子でした、微笑んだまま。
「だって僕達の仲じゃない」
「それでなんだ」
「うん、行こうね」
「これも先生の幸運だよね」
「そう、考えてみたら」
「こうした時にこそ生きる」
「その幸運が」
 まさにというのです。
「先生の徳がね」
「それが生きてるね」
「やっぱり先生の人徳って凄いね」
「こうした時に生きるから」
「いつもね」
「先生にはやっぱり徳があるんだね」
 トミーもしみじみとして言います。
「いつも神様が幸運を授けてくれるから」
「少なくとも僕は先生が大好きだし」
 王子はトミーの言葉を受けて言いました。
「助けさせてもらうことにやぶさかではないよ」
「そうした人が沢山いることが」
 まさにとも言うトミーでした。
「先生の徳だよ」
「皆に愛されて好かれる」
「そうした人だから」
「素晴らしいんだよ」
 こう言ってでした、そのうえで。
 王子はあらためて夜景を見てです、こう言いました。
「本当に奇麗な夜景だね」
「うん、函館の夜景はね」
「この夜景を楽しもう」
「是非ね」
 こうお話して夜景も楽しむのでした、そして次の日は実際に王子と同じ車両に乗って小樽に向かうのでした。



一日目は観光に食事と満喫したみたいだな。
美姫 「みたいね。のんびりと過ごしているみたいで良かったじゃない」
だな。王子ともばったりと出会って。
美姫 「一緒に行動するみたいね」
小樽では何を見るのだろう。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。



▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る