『ドリトル先生北海道に行く』
第一幕 夏休み
大学は学校なので夏休みがちゃんとあります、それは八条大学も同じです。
それで今大学に学生さん達はとても少なくてです、中はとても静かになっています。
その静かな学園の中で、です。先生は一緒にいる動物の皆に言いました。
「何か夏の学園はね」
「うん、普段と違ってね」
「学生さん達がいないから」
「だからね」
「凄く静かで」
「違和感があるね」
「そうだね、トミーも講義がないから」
だからと言うのでした。
「大学には来ていないしね」
「先生達はいてもね」
「職員さん達も」
「学生さん達がいないと」
「本当に静かだよね」
「王子も今はね」
普段は学園に通っているので先生のところにも毎日来るのですが。
「いないからね」
「そう、日本自体にね」
「祖国に帰ってね」
「それでいないから」
「そのことが寂しいね」
「そうだね、本当に寂しいね」
また言った先生でした。
「この夏休みは」
「研究室にいて論文を書いてね」
「図書館で本を読んで」
「博物館や動物園に行っても」
「それでもだね」
「うん、学生の諸君がいないから」
とにかくこれに尽きました。
「夏休みは寂しいね」
「先生の夏休みは?」
ここで聞いたのはダブダブでした。
「あるよね、やっぱり」
「うん、あるよ」
先生はダブダブにすぐに答えました。
「それもね」
「そうだよね」
「ただ。夏休みはどうしようかな」
「何も予定ないの?」
今度はチーチーが尋ねてきました。
「夏休み」
「うん、ないよ」
実際にと答えた先生でした。
「特にね」
「そうなのね」
「うん、だから夏休みもね」
その期間もというのです。
「ここに来て本を読んだりしようかな」
「それじゃあ夏休みじゃないわよ」
ポリネシアは先生の言葉を聞いてすぐに返しました。
「全然ね」
「うん、そうだけれどね」
「やることがないのね」
「お家にいてもね」
先生達の今のお家にです。
「何もすることがないから」
「十時と三時にお茶を飲んで」
ホワイティが言います。
「後は読書だね」
「僕はお昼寝もしないしね」
「シェスタの習慣ないよね」
「イギリス生まれだしね」
イタリアやスベインの人達はお昼寝、シェスタをします。ですが先生はイギリス生まれのイギリス育ちだからです。
だからです、午後はなのです。
「お茶を楽しむよ」
「それだけね」
「後はお散歩をして」
「それじゃあ普段の日曜と一緒だよ」
ジップがすぐに言いました。
「それこそ」
「そうだよね」
「全然夏休みじゃないよ」
「ううん、この大学にいれば」
先生は腕を組んで言いました。
「動物園にも水族館にも行けるし」
「博物館や美術館にもね」
「植物園もあるから」
先生の好きな場所が大抵です。
「そうした場所に行って楽しめるし」
「だからお家にいても」
「本当に本を読む位だよ」
それこそと言う先生でした。
「何もすることがないよ」
「先生他に趣味がないから」
ガブガブも言います。
「夏休みになっても」
「普通の日曜日がね」
「何日も続いている」
「そんな感じでしかないよ」
それこそというのです。
「僕にとってはね」
「じゃあ何の為の夏休みか」
「わからないね」
オシツオサレツも言います。
「先生らしいけれど」
「何かしたらどうかな」
「スポーツは駄目だけれど」
「先生の場合は」
「それなら」
ここで言ったのは老馬でした。
「一つ旅行とかどうかな」
「旅行だね」
「そう、先生は旅行大好きだしね」
それでというのです。
「どうかな」
「うん、いいね」
先生も老馬のその言葉に頷きます。
「確かにね」
「それもいいね、じゃあ今から何処に行くのか探そうかな」
それこそと言うのでした。
「旅行に行くのなら」
「そうしよう」
「是非ね」
最後にチープサイドの家族が言ってきました。
「それがあったよ」
「そうそう、旅行に行けばいいんだ」
「じゃあ先生それに行こう」
「今度の夏休みは」
「じゃあ探そうか」
何処かとです、先生は少し考える顔で言いました。
「これからね」
「じゃあ早速探そうよ」
「善は急げよ」
「ネットとかで探して」
「それで何処かに行きましょう」
「そうだね」
先生も皆に言葉に頷きます、そしてです。
旅行先を探すことにしました、それで同じ医学部の先生達と大学の食堂でお昼を一緒にしながらお話をしました。
「旅行先を探しているのですが」
「夏休みのですか」
「旅行を」
「はい、そうです」
その通りとです、先生は鰯定食を食べながら同じテーブルに座る先生達にお話しました。
「そう考えていますが」
「今からですか」
「夏休みの旅行を」
「そう考えておられますか」
「それは」
先生達は先生に首を傾げさせて言いました。
「幾ら何でも」
「遅いのでは」
「もう七月です」
「それから夏休みの旅行の予約とは」
「流石に」
「遅いですか」
先生は先生達に言われて目を瞬かせました。
「そうなのですか」
「はい、日本ではです」
「もうそうしたことは前から準備をしますので」
「夏に決めて夏に行くのは」
「かなり難しいですよ」
「遅過ぎると言ってもいいです」
「そういえば」
先生もここで気付きました。
「日本では旅行が盛んですね」
「よくそう言われます」
「国内旅行も海外旅行も盛んです」
「ゴールデンウィークや年末年始にです」
「夏休みにしましても」
先生達もそれぞれのお昼御飯を食べつつ先生に答えます。
「もういつもです」
「電車や飛行機の予約も満杯になります」
「今から電車の予約をしましても」
「バスもそうですよ」
「ましてやです」
先生達は先生に困惑気味のお顔でお話します。
「先生はまだ何処に行かれるのかも決めていませんね」
「そうですよね」
「この神戸から何処に行かれるか」
「そのことも」
「はい、果たして何処に行くべきか」
先生だけがおっとりとした表情です。
「まだ決めていません」
「それではです」
「今から手続きをされても」
「とてもです」
「決まるものではないかと」
「ホテルも電車も予約が取れません」
「とてもです」
こう言うのでした、皆で。
しかし先生にです、皆でこうも言いました。
「ひょっとしたらキャンセルが出るかも知れないので」
「それを待たれてはどうでしょうか」
「それで何処かに行かれては」
「そうされては」
「キャンセル待ちですか」
先生はお箸で定食の中のキャベツの千切りをお箸に取りつつ言いました。
「それ次第ですか」
「はい、キャンセルも出ますので」
「何かと」
「それで何処かに行かれては」
「そうされては」
「特に八条グループのです」
先生達は八条大学も所属しているこの企業グループのお話をしました。
「旅行関係を探してみては」
「私達は八条グループの人間ですから」
「何かと便宜も計ってもらえますし」
「八条ツーリストという旅行関係の企業もありますので」
「そちらを利用されては」
「八条ツーリストですね」
先生もこの企業のことは聞いています、それでです。
考えるお顔になってです、こう言いました。
「では早速八条ツーリストに行ってみます」
「はい、八条駅にもお店があります」
「今日にでもそちらに行かれてはどうでしょうか」
「それで若しキャンセルや空きがあれば」
「そこに行かれては」
「わかりました、それではです」
先生は同僚の人達のアドバイスに微笑んで応えました。
「お仕事が終わってから行ってきます」
「はい、急がれた方がいいです」
「先生の夏休みももうすぐですし」
「是非です」
「今日のうちに行かれて下さい」
「わかりました」
先生も頷いてです、その日お仕事が終わるとすぐにです。
動物の皆は先にお家に帰ってもらって先生は徒歩で八条駅まで行きました。そしてそこにある八条ツーリストの支店に入ってです。
お店の中にいる若い奇麗な女性の社員さんにです、帽子を取って一礼してからその社員さんの前に座って言いました。
「実は旅行先を探していまして」
「どちらに行かれたいですか?」
「それまだ決めていません」
先生はこのことは少し申し訳なさそうに答えました。
「ただ夏休みに旅行に行こうと思いまして」
「そうなのですか」
「家には大学生の男の子の同居人と動物の皆がいます」
「動物の皆とは」
「はい、犬に猿にです」
先生はお家で一緒に住んでいる動物の皆のこともお話しました。
「彼等も一緒にです」
「旅行に行かれたいと」
「そう考えています」
「そうですか、お馬さんやあのオシツオサレツというですね」
「滅多にいない生きものですが」
「はい、私も名前は聞いていますが」
社員さんはこれまでの事務的な表情から驚きのそれになって述べます。
「まさかご家族とは」
「アフリカに行った時に知り合いまして」
「それからですか」
「一緒に暮らしています」
先生は社員さんにごく普通の表情でお話します。
「彼も旅行に連れて行きたいのです」
「そうですか」
「何処か行くことが出来れば」
「わかりました、今から検索しますね」
社員さんはオシツオサレツのことには驚きましたが元のお仕事をする時の表情になってです、そのうえででした。
ご自身の前にあるノートパソコンから検索してです、そしてすぐにです。
先生にです、こう言いました。
「北海道の札幌と函館のホテルが空いていますが」
「北海道ですか」
「はい、そしてです」
「そしてですか」
「貨物便と一緒ですが」
それでもというのです。
「八条鉄道の神戸から北海道に行く電車で」
「席が一つ空いていますか」
「はい、ですが動物の皆さんはです」
彼等はというのです。
「その電車では客席には乗れません」
「動物はですね」
「同乗出来ないです、ですが」
それでもというのです。
「貨物用の車両が一つ空いているので」
「そこにですね」
「動物の皆さんに入ってもらって」
そうしてというのです。
「移動出来ますが」
「行きはですね」
「帰りもあります」
社員さんは笑顔で先生に答えました。
「ですから」
「行きも帰りもですね」
「電車で行くことが出来ます」
「北海道まで」
「函館までそれで行かれて」
そしてというのです。
「札幌まではまた電車を使われるか」
「若しくはですか」
「車両を使われてはどうでしょうか」
「車両もありますか」
「はい、八条運送にです」
こちらも八条グループの企業です。
「動物の皆さんの移動をお願いして」
「そうしてですね」
「移動されてはどうでしょうか」
「わかりました、少なくとも函館まではですね」
「貨物列車で移動出来ます」
社員さんはこのことも約束しました。
「貨物便ですが客席もあり」
「そこで、ですね」
「お客様はくつろいで移動が出来ます」
このことも安心していいというのです。
「鉄道の旅も楽しめます」
「それはいいですね」
鉄道の旅も聞いてです、先生は笑顔で言いました。
「実は僕はイギリス人なのですが」
「欧州では、ですよね」
「はい、そうした旅もありまして」
「ではです」
「その貨物便でお願いします、ただ」
「ただ?」
「僕は客席は遠慮します」
ここでこう言うのでした。
「皆と一緒にいたいです」
「貨物車両の中にですか」
「家族ですから」
だからとです、先生は社員さんに微笑んで答えました。
「旅行の時もです」
「一緒にですか」
「宜しいでしょうが」
「あの、客席は快適ですが」
社員さんはこのことは約束しました。
「ですが貨物車両は」
「本来はものを入れる場所ですね」
「はい、ですから」
だからというのです。
「あまり乗り心地、居心地は」
「それでもです」
よくなくてもというのです。
「皆と一緒にいたいのです」
「移動の際も」
「はい」
こう言うのでした。
「それはお願い出来ますか」
「それでは」
社員さんは戸惑いながらもです、先生のリクエストに応えました。そしてです。
先生は社員さんと旅行のことを全て決めてです、そしてなのでした。
お家に帰ってです、動物の皆に笑顔でお話しました。
「北海道になったよ」
「あっ、旅行に行けるんだ」
「そうなったんだ」
「うん、そうだよ」
こう笑顔で言うのでした。
「じゃあ皆で行こうね」
「いや、まさかね」
「本当に旅行に行けるなんてね」
「嬉しいね、皆で行けるなんて」
「しかも北海道なんてね」
「北海道はね」
ここで皆言います。
「行くのはじめてだね」
「日本の中でもね」
「行くにしても」
「あそこはね」
「そう、北海道はね」
ここで目を輝かせて言う先生でした。
「僕も行くのが楽しみだよ」
「確か北海道は」
老馬がその北海道についてお話します。
「日本の一番北にあるね」
「そうだよ」
「じゃあ涼しいね」
「そう、冬は寒いけれどね」
それでもとです、先生は言うのでした。
「夏は涼しいよ」
「この神戸も涼しいけれどね」
トートーはこの神戸のことも言いました。
「北海道はだね」
「この神戸より涼しいよ」
「それはよさそうだね」
「いや、大阪なんかね」
ジップは先生達と一緒に行くこの街のこともお話します。
「凄く暑いからね」
「うん、大阪はそうだね」
「イギリスなんか比べものにならない位にね」
「流石にアフリカよりはましだけれど」
ホワイティはアフリカの赤道線の辺りに行った時のことを思い出してそこでの暑さのことを言うのでした。
「日本も暑いからね」
「そうだね」
「人が多いしね」
その人の熱気のこともあって余計に暑いのです。
「アスファルトが熱を保ってしいかもビルが多くて風も防がれて」
「それがね」
アオシツオサレツは二つの頭で言います。
「大阪は余計に暑いね」
「冷房から出る熱気もあって」
「だから大阪は暑いけれど」
「北海道はなんだ」
「そう、北海道は涼しいからね」
先生は皆にこのことを保障しました。
「そして自然も豊かで美味しいものが多いよ」
「あっ、美味しいものが多いんだ」
食いしん坊のダブダブはそこに反応しました。頭から音符が出たみたいになって。
「それは楽しみだね」
「ダブダブはそう言うね」
「うん、早く行きたいよ」
「自然も豊かなら」
ガブガブはこちらに興味を向けます。
「是非行きたいわね」
「動物も独特だよ」
「あら、それは余計に行って見たくなったわ」
「生きものが独特って」
ポリネシアはそこに注目しました。
「日本よね」
「日本でもなんだ」
「北海道は独特なの」
「狐や狸、熊がいるけれど」
それでもとお話する先生でした。
「北海道にいる亜種なんだ」
「ふうん、そうなんだ」
チーチーはそう聞いて目を好奇心で輝かせました。
「そのこと面白そうだね」
「そう思うね」
「一体どんな感じかな」
「じゃあそういうことも見る為に」
「是非共ね」
最後にチープサイドの家族がお話します」
「行きましょう」
「その北海道に」
「そして旅行をね」
「皆で楽しもう」
「そうしようね、じゃあ皆で行こう」
「いや、正直なところね」
トートーがまた先生に行ってきました。
「今日のうちに決まるなんてね」
「思っていなかったね」
「うん、何処かに行けるかなとは思っていたけれど」
それでもというのです。
「まさか今日すぐに決まるとは思っていなかったよ」
「運がよかったみたいだよ」
先生はここで少し考えるお顔になりました。
「日本じゃ旅行はイギリスよりずっと盛んみたいでね」
「ああ、そういえばテレビでもね」
「いつも旅行番組やってるね」
「日本国内のことも海外のことも」
「いつもね」
「そうだね」
「日本人はかなり旅行好きみたいで」
先生は皆にお話します。
「オフの時は結構前から予約しないとね」
「駄目なんだね」
「行けないんだね」
「そうみたいだから」
それでというのです。
「僕が動いたのはかなり遅くて」
「それであっさり決まったのは」
「今日のうちに」
「それは本当になんだ」
「運がいいんだ」
「いや、何か僕はね」
微笑んでしみじみとして言う先生でした。
「いつも運がいいね」
「ああ、それはあるね」
「先生いつも運がいいよ」
「困ったと思ったらその瞬間にね」
「すぐに助けが来るし」
「僕達の力が使えたりして」
「王子やトミーもいてね」
動物の皆もお話します。
「最近は日笠さんもいてくれるし」
「サラさんもいつもアドバイスしてくれて」
「先生運もあるよ」
「凄く運のいい人だよ」
「神様のお陰だね」
このことも微笑んで言うのでした。
「本当に感謝しているよ」
「じゃあその感謝で」
「是非ね」
「もっと幸せになろう」
「旅行も楽しんでね」
「さて、北海道に行ったら」
先生もとても楽しみにしています。
「何を食べて何処に行って何を見ようかな」
「皆でね」
「そうして楽しんでね」
「そして最高の旅行にしようね」
「そうしよう、じゃあトミーが来たら」
その時にというのです。
「彼にもお話するよ」
「うん、今日は遅いけれどね」
「何か百貨店で色々買ってるそうだから」
「じゃあ少し待って」
「それからだね」
「トミーにもお話するよ」
彼が帰って来てというのです。
そして実際にです、トミーが帰って来ると先生は彼にも旅行のことをお話しました。するとトミーは驚いて先生に言いました。
「また急に決まりましたね」
「そう思うね」
「はい、本当にまさかと思いましたけれど」
「それがね」
「運がいいですね」
「僕もそう思うよ」
その運のよさをというのです。
「本当に運がいいよ」
「そうですね、やっぱり先生はです」
「運がいいっていうんだね」
「凄くいいですよ」
その運がというのです。
「巡り合わせも」
「僕達もそう言っていたんだ」
動物の皆もトミーに言います。
「先生は運がいいってね」
「本当にね」
「いつも誰かに助けられて」
「そして何かいいことが起こってね」
「先生は助かってるから」
「周りにはいい人も一杯いてね」
「そうだよ、先生みたいな運がいい人はね」
それこそというのです、トミーも言います。
「滅多にいないよ、これはね」
「これは?」
「これはっていうと?」
「先生の仁徳のお陰だよ」
それ故にというのです。
「先生の仁徳は凄いからね」
「その仁徳のお陰でなんだ」
「先生は運がいいの」
「そうなんだ」
「そうだと思うよ」
それこそというのです。
「神様が先生に運を授けてくれているんだ」
「ううん、そうなんだ」
「先生が凄くいい人だから」
「神様も先生に運を下さっているんだ」
「そうなのね」
「先生みたいないい人はいないから」
それこそこの世の中にというのです。
「神様もなんだ」
「先生に滅多にないだけの運をなんだ」
「下さってるんだ」
「それで助けてくれてる」
「そうなんだ」
「そうだと思うよ」
トミーは皆に穏やかな声でお話します。
「いい人には運がもたらされるんだ」
「神様によって」
「そうなるんだね」
「そう、ただね」
ここで微妙な表情も見せるトミーでした。
「それが今生きているうちにもたらされるかはわからないし」
「今すぐにということも」
「わからない」
「そうなんだね」
「僕達の生きている時間はね」
それこそというのです。
「神様からl比べたらほんの一瞬だよ」
「神様は永遠だからね」
「ずっと生きておられるから」
「その神様から見たら」
「僕達の時間なんて」
「ほんの一瞬だよ、これはキリスト教の考えじゃないけれど」
こう前置きもするトミーでした。
「僕達は何度も生まれ変わる、その中でね」
「仁徳も?」
「それもなのね」
「そう、それが積み重なっていっているみたいだから」
だからというのです。
「先生は凄く運がいいんだよ」
「そうなんだね」
「道理で凄く運がいいと思ったら」
「前の人生がなんだ」
「積み重なってるんだね」
「前の前の人生」
「これまでの色々な人生が」
動物の皆も言います。
「その全てで徳を積んできたから」
「今もそうだけれど」
「先生は運がいいんだ」
「凄い徳の積み重ねだからだね」
「そうだと思うよ、多分先生はね」
それこそとです、トミーはまた言います。
「これまでの人生、動物や植物だった時も多かったと思うけれど」
「その全ての生の中で」
「凄く徳を積んできた」
「いい人だったから」
「その分の徳があって」
「運がいいんだね」
「だと思うよ、先生がいい人なのは今だけじゃないんだ」
輪廻転生を迎えるその中でというのです。
「ずっとなんだよ」
「ううん、そう思うとね」
「先生はやっぱり凄いよ」
「どんな中でも優しくて公平で」
「皆に親切なんだね」
「そうした人だからだよ」
トミーはさらに言います。
「僕はそう思うよ」
「ううん、そうなのかな」
首を傾げさせて言う先生でした。
「僕はそんなに徳が積み重なってるのかな」
「そうだと思いますよ」
「だとすればこんなに有り難いことはないね」
先生はトミーのお話を聞いて感謝しました。
「神様に感謝するよ」
「そこでそういうのがね」
「先生なんだよ」
「それにね」
「僕達もいるしね」
動物の皆も言います、そうして。
皆で先生にです、こうも言いました。
「じゃあね」
「皆で幸せになろう」
「これからどうなるかわからないけれど」
「僕達も一緒にね」
「楽しく徳を積んでいこうね」
「そうだね、徳を積ませてもらうこと自体に感謝して」
神様にです。
「楽しくやっていこう」
「是非ね」
「皆でね」
「じゃあ休み前になったらね」
その時にはというのでした。
「旅支度をしよう」
「北海道ですね、じゃあ」
トミーが笑顔で言います。
「美味しいものを一杯食べましょう」
「そうだね、北海道は名物が多いから」
「全部食べます?」
「そう出来たらいいね」
「それが楽しみで仕方ないよ、僕」
ダブダブはもう大はしゃぎです。
「最初は何を食べようかな」
「ジンギスカン鍋とかよくない?」
ジップも尻尾をぱたぱたと振っています。
「羊ね」
「メロンがいいんじゃないかな」
チーチーもにこにことしています。
「北海道のメロンを現地で食べたいよ」
「牧草もいいみたいだしね」
老馬はこちらを楽しみにしています。
「どんな味かな」
「あっ、いいね」
「北海道の牧草食べたいね」
オシツオサレツも老馬に応えます。
「それじゃあね」
「北海道に行ったら一緒に食べようね」
「私はコーンかしら」
ガブガブはこちらが楽しみです。
「北海道はコーンも美味しいから」
「向日葵の種もあるよ」
ホワイティの第一はこちらです。
「北海道には」
「僕は何でもいいかな」
トートーは少し決めかねています。
「一杯あり過ぎてどれがいいなんて決められないよ」
「海の幸も美味しいから、北海道は」
ポリネシアはこちらの食材を見ています。
「困るのよね」
「ううん、お米かな僕達は」
「北海道のね」
チープサイドの家族はこちらを見ています。
「北海道のお米はあまり聞かないけれど」
「それかしら」
「とにかく食べるものが多いね」
先生も言います。
「北海道も」
「うん、大阪もそうだけれど」
「北海道も凄いよね」
「ラーメンも有名だし」
「他にも色々とあって」
「いや、 何かね」
先生もにこにことして言います。
「北海道でさらに太りそうだね」
「先生は健康ですけれど」
ここでトミーが微笑んで、です。先生に言うことはといいますと。
「太っていることは事実で」
「だからだね」
「はい、肥満には注意して下さいね」
「これ以上はだね」
「普段から十時と三時はティータイムですから」
「あれがないとね」
先生はなのです。
「もう生きていられないんだ」
「ずっとそうですよね」
「イギリスにいた頃きからね」
それこそなのです。
「お茶と三段のセットがないとね」
「ですから」
「北海道に行った時はだね」
「食べ過ぎることになりますけれど」
もうこのことはどうしようもないというのです、何しろ美味しいものの魅力は何にも代え難いものであるからです。
「それでもです」
「極端にはだね」
「食べ過ぎないで下さいね」
「先生運動はしないしね」
「スポーツは大の苦手だから」
動物の皆も言います。
「そこはね」
「気をつけないとね」
「本当にこれ以上太ったら」
「危ないから」
「そうなんだよね、けれど日本人は」
先生は周りの人達のことも言います。
「あまり太ってないね」
「そうそう、日本人はね」
「太ってる人少ないよね」
「太ってる人はいてもね」
「極端な人は少ないね」
「イギリスよりもずっとね」
「よく女の子が太ったって言うけれど」
それでもとです、先生はこうしたこともお話するのでした。
「そう言う娘って皆太ってないんだよね」
「日本の女の子ってね」
「殆どの娘が痩せてるよ」
「何処が太ってるのかわからないよ」
「そんな人達ばかりなのにね」
「太り過ぎは確かによくないよ」
先生にしてもそうです。
「けれど痩せ過ぎもね」
「同じ位だよね」
「よくないよね」
「僕達もどっちもよくないから」
「適度でないとね」
「日本人の食生活と生活習慣だと」
その二つを見てのお話です、先生にとっては。
「そんなに極端に太らないから」
「イギリスと比べたら」
「イギリスって肥満多いからね」
「日本に比べたらずっと」
「アメリカとか中国もそうだね」
「あとメキシコとかブラジルとかオーストラリアとか」
「そうした国と比べたら」
先生は腕を組んで言うのでした。
「僕ですら日本に来て痩せた位だからね」
「食べる量は一緒でもね」
「糖分やカロリーはずっと低いから」
「そうなったんだね」
「そういえば学校に毎日通勤もしてるし」
老馬に乗ってです。
「大学の中もあちこち移動していて」
「痩せるんだね」
「そうだね」
「そうなってるね」
実際にというのです、そしてでした。
そうしたことをお話してです、先生は夏休みを楽しみにするのでした。食べ過ぎることには笑いながら不安を覚えていても。
そして旅行のお話を電話で聞いたサラは先生に電話から言いました。
「あら、いい場所に行くわね」
「あっ、サラは北海道に行ったことがあるんだ」
「ええ、あるわ」
その通りという返事でした。
「家族でね」
「そうだったんだ」
「そうなの、それで楽しんできたわ」
「いい場所なんだね」
「食べものも美味しいし」
先生もこう言うのでした。
「日本の中でも指折りの場所よ」
「沖縄についてもそう言ってなかった?」
「ええ、言ったわ」
その通りという返事でした。
「だって本当にいい場所だから」
「だからだね」
「あそこについても言ったわ」
「そうだったね」
「いや、本当にね」
それこそというのです。
「北海道もいい場所だから」
「僕も楽しめばいいんだね」
「兄さんは旅行に縁があるけれど」
何しろ月まで行ったことのある人です、本当に旅行によく行く人です。
「北海道も行って来てね」
「そして楽しんでくればいいんだね」
「そうしてきてね」
「それじゃあね」
「ただ、とにかく美味しいものが多過ぎて」
そしてというのです。
「どれが一番かは決められないわよ」
「そんなに多いんだね」
「全部食べようと思ったら駆け足よ」
「じゃあ本当に食べ過ぎることになるね」
「健康には気をつけてね」
食べ過ぎた後の肥満にはというのです。
「私から言うのはこのことよ」
「それじゃあだね」
「ええ、そういうことでね」
ここまで言ってでした、サラは最後に言いました。
「お土産忘れないでね」
「うん、イギリスまで届けるよ」
「私のことじゃないわよ」
自然と声をむっとさせたサラでした。
「勿論送ってくれたら嬉しいけれど」
「あれっ、どういうことかな」
「気付いてないならいいわ、とにかく楽しんできてね」
「それじゃあね」
そのことは頷いてでした、何はともあれ旅行に向かう先生でした。
ですがその時でもでした、十時と三時にはです。
先生は自宅でお茶を楽しみます、勿論ティーセットも。今日は三段共ケーキでした。上段は苺のケーキ、中段はチーズケーキそして下段はチョコレートケーキです。
そのケーキと紅茶を楽しみ先生にです、皆は言います。
「やっぱり三時になるとね」
「先生はお茶飲むね」
「十時もだけれど」
「そちらの時間も」
「うん、忙してもね」
それでもというのです。
「やっぱりこれは楽しまないとね」
「お茶はだね」
「それと一緒のお菓子は」
「それもだよね」
「忘れたら駄目だよね」
「そうだよ、これ位の余裕がないと」
それこそというのです。
「駄目だと思うし」
「人間余裕がないとね」
「駄目っていうし」
「だからだね」
「忙しい中でも十時と三時はお茶」
「これは絶対なんだね」
「さもないと本当にね」
それこそどんな時でもです。
「僕は元気が出ないしね」
「じゃあね」
「今もだよね」
「お茶を飲んでそして」
「ケーキもだよね」
「そう、楽しむんだ」
皆と一緒にです。
「こうしてね」
「そしてその後でだね」
「先生も旅支度ね」
「それを再開するのね」
「そうするよ、お茶を飲んだ後は」
まさにというのです。
「また再開だよ」
「よし、じゃあ」
「先生また頑張ろうね」
「お茶の後で」
「一緒にね」
「そうしようね」
こう言ってお茶も忘れない先生でした、勿論ケーキも楽しみます。
そしてケーキも楽しんでなのでした。
しっかりと旅支度もします、お茶を楽しんでもそれは忘れません。むしろ飲んでこそ余計に力が出るのでした。
今回の先生は夏休みみたいだな。
美姫 「みたいね。どうやら旅行に行くようだけれど」
行先は北海道だし、新しい動物も出てくるかも。
美姫 「どんな旅行になるのかしらね」
次回も待っています。
美姫 「待っていますね〜」
ではでは。