『ドリトル先生の水族館』
第六幕 ペンギンさんとアザラシさん
ペンギンさん達のコーナーに来た先生にです、皆は言いました。
「何かアシカさん達のお話もしたけれど」
「ここでそのペンギンさん達のところに来たね」
「動物園にもいてね」
「水族館にもいるんだね」
「うん、八条動物園にもいるね」
先生も皆にその通りだと答えました。
「ペンギン君達は」
「どの水族館にも動物園にもいるよね」
「そうそう、アシカさんと一緒でね」
「アザラシさんもだけれどね」
「ペンギンさんもそうだよね」
「それだけ人気があるんだよ」
だからだと答えた先生でした。
「どの水族館にも動物園にもいるのはね」
「それでなんだね」
「この水族館にもいるんだ」
「場所は絶対に氷の場所」
「それは決まってるね」
「南極にいるからね」
先生はこのこともお話しました。
「そうなるんだよ」
「うん、ペンギンさんっていったらね」
「やっぱり南極だしね」
「南極は寒い場所」
「だからこうしてね」
見ればペンギンさん達は実際に氷の中にいます。その中のお水のところで泳いだりもしています。とても気持ちよさそうに。
「氷の中にいるんだ」
「夏に氷っていいよね」
「冬は嫌だけれどね」
「夏に見るとかき氷食べたくなるね」
「本当にね」
「かき氷というと」
かき氷と聞いてです、先生はこう言いました。
「日本のお料理だね」
「そうそう、あれもね」
「日本のものだよね」
「苺かけたりしてね」
「シロップをね」
「あれはシンプルだけれど」
それでもと言う先生でした。
「美味しいね」
「夏は特にね」
「暑い中で食べると最高だね」
「何ていうかね」
「アイスクリームと同じだけいいわ」
「あれは日本人が考えた最高の夏の友達の一つだよ」
こうも言った先生でした。
「よくあんなの考えついたよ」
「普通氷をね」
「ああして食べないよね」
「細かくして甘いシロップをかけて食べる」
「凄いアイディアだよ」
動物の皆も言います。
「日本人はそう思ってないかも知れないけれど」
「簡単に出来てね」
「しかも安い」
ただ美味しいだけでなくです。
「尚且よく冷える」
「カロリーもアイスよりずっと低いしね」
何しろ氷にシロップをかけただけです、アイスクリームと比べてカロリーが低いのは当然のことです。
「先生にもいいよね」
「カロリーが低いからね」
「やっぱり先生日本に来てよかったんじゃ」
「夏の甘いものもあるから」
「うん、確かに僕もね」
先生自身もとです、笑顔で述べます。
「かき氷好きだよ」
「じゃあこれからもだね」
「夏はかき氷だね」
「それ食べるんだね」
「そうするよ」
こうお話してでした、そのうえで。
先生は皆のところに来てです、彼等に尋ねました。
「どうかな、最近」
「あっ、先生診察に来てくれたんだ」
「そうなんだね」
「そうだよ、それで来たけれど」
「僕達は別にね」
「何もないよ」
こう先生に答えるのでした。
「快適だしね、この中は」
「いつも僕達に程よい寒さでね」
「夏でも冬でもね」
「気持ちよく暮らしてるよ」
場所には何の問題もないというのです。
「食べものは美味しいし」
「いつもたっぷり食べてるしね」
「何もないよ」
「困ったことはね」
「それは何よりだね」
先生も彼等の言葉を聞いて言いました、ですが。
ここで、です。先生は首を軽く傾げさせてペンギンさん達に尋ねました。
「けれど僕は今回は困っている生きもののの皆の診察を頼まれたけれど」
「それで僕達のところになんだ」
「来てくれたんだ」
「僕達が困ってるから」
「それで来てくれたんだ」
「そうだけれど」
こう皆に答えました。
「実際にね」
「そうなんだ、けれど本当にね」
「君達は困ってないんだね」
「そうだよ」
ペンギンさん達の返事は変わりません。
「別にね」
「それは何よりだね」
「うん、ただね」
「ただ?」
「何か僕達を北極生まれっていう子がいるんだよね」
ペンギンさん達は先生にこのことを言うのでした。
「時々ね」
「そうそう、時々だけれど」
「いるのよね、そう言う子達が」
「僕達南極生まれなのにね」
「どうして北極生まれっていうのか」
「わからないね」
「それは只の勘違いだよ」
先生はペンギンさん達ににこりと笑って言いました。
「北極と南極を間違えてるだけでね」
「別にそんなことは思っていなくて」
「只の勘違いなんだ」
「僕達について変に思っていなくて」
「只の間違いだったんだ」
「北極と南極を」
「それだけだよ、子供だと北極と南極の違いがわからない子もいるよ」
まだものを知らないからです、子供はこれから勉強するので知らなくて当たり前です。最初から何でも知っていれば何かをする必要もありません。
「だから気にしなくていいんだよ」
「そうなんだね」
「何でそう言うのって思ってたけれど」
「気にしなくていいんだ」
「特に」
「そうだよ、そうしたことを言う子がいてもね」
先生は自分の周りにいるペンギンさん達に穏やかな笑顔でお話します。
「気にしなくていいよ」
「何も困ってることはなかったけれどそのことが気になってて」
「それで首を傾げさせてたけれどね」
「先生がそう言うのならね」
「僕達もそれでいいよ」
「これから気にしないよ」
「そういうことでね」
先生も皆に笑顔で言いました、そしてでした。
そうしたことをお話してです、先生達はペンギンさん達ともお別れしました。ペンギンさん達は先生に右の翼を振ってお別れの挨拶をしました。
「じゃあまたね、先生」
「また来てね」
「またすぐに来てくれると思うけれど」
「その時までのお別れだね」
こう言うのでした、そして先生達も手や前足を振ってペンギンさん達と一時のお別れの挨拶をしました。
その挨拶の後で、です。皆が先生に次に向かう場所に向かいながらお話をしました。
「ペンギンさん達って飛べないんだよね」
「飛べない鳥さん達でね」
「その代わり泳ぐんだよね」
「泳ぎが凄く上手なんだよね」
「そうだよ、そうした鳥なんだ」
先生も皆に答えます。
「泳ぐこと、そして寒さに対する方に進化した鳥なんだよ」
「飛べないことも進化なんだね」
「先生進化は色々だって言ったけれど」
「ペンギンさんのそれも進化なのね」
「泳ぐ方に特化して寒さに強くなることも」
「飛べなくなることも」
「そうだよ、泳ぐのが速ければ」
ペンギンさん達がです、先生はこの場合についてもお話しました。
「その分獲物を捕まえられるし天敵から逃げられるしね」
「天敵?そういえば」
「ペンギンさん達にも天敵いたね」
「南極にも怖い生きものがいて」
「それでだったよね」
「そうだよ、アザラシでね」
そのアザラシはといいますと。
「ヒョウアザラシっていうアザラシがいるけれどね」
「あの怖いアザラシよね」
「大きくて鋭い歯が一杯ある」
「あのアザラシがペンギンさん達の天敵なんだ」
「うん、あのアザラシ君は南極の大型肉食動物でね」
先生は動物の区分からお話しました。
「ライオンや虎や豹みたいなものだよ」
「文字通りだね」
「豹なんだね」
「あのアザラシさんは」
「猛獣なんだ」
「人も襲うからね」
他のアザラシはそうしたことがないのに、です。
「気をつけないといけないんだ」
「人もっていうのが凄いわね」
ダブダブもそのお話には戦慄を感じました。
「他のアザラシさん達にはないわね」
「歩いていて氷の下が割れて頭が出て来ていきなりなんだ」
「襲われたの」
「足を噛まれて海の中に引き摺り込まれそうになったんだ」
その南極の海の中にです。
「危うくね」
「その人どうして助かったの?」
ポリネシアは先生にその人が助かった理由を尋ねました。
「海に引き込まれたら本当にね」
「どうなっていたかわからないね」
「噛まれても振り払えたの?」
「周りの人達が助けてくれたんだ」
それでその人は助かったというのです。
「その噛んでいるヒョウアザラシの頭を何度も蹴ってね」
「乱暴だけれどそうも言っていられないね」
その状況をです、ジップも理解しました。
「それこそ」
「そう、確かに蹴ったりするのはよくないけれどね」
「そんな有様だとね」
「命に関わっていたからね」
「というか氷の中からいきなり出て来て襲って来るとか」
ホワイティは自分がそうして襲われたらと思って言うのでした。
「どれだけ怖いのか」
「あと海の中で襲われたり氷の上で襲われた例もあるよ」
先生はこのケースについても皆にお話しました。
「ペンギン君達と間違えたらしいね」
「普通間違えないと思うけれど」
チーチーは自分の考えをお話しました。
「人間でも普通に襲ったんじゃ」
「本当に豹さんと変わらないね」
ガブガブも怖いものを思いつつ言いました。
「そんなのだと」
「というかよくそんなアザラシさんいるね」
トートーも自分が襲われたら飛んで逃げようと考えています、ただ先生や皆が襲われたらどうして助けようとも考えています。
「他のアザラシさん達は大人しいのに」
「そうそう、ペンギンさん達と一緒でね」
「他のアザラシさんは大人しいわよね」
チープサイドの家族もアザラシさん達をよく知っているのでお話をします。
「けれどあのアザラシさんだけは怖くて」
「近寄りたくないわね」
「僕達もね」
「襲って来るでしょうから」
「ホッキョクグマより怖いんじゃ」
こうも言ったのは老馬でした。
「北極の」
「そうかもね」
「だってホッキョクグマさん海の中まではいないから」
オシツオサレツはその熊さんのことをお話します。
「そのことも考えたら」
「あのアザラシ君の方が怖いんじゃないかな」
「ううん、南極に行った時はね」
「注意しないとね」
こうお話するのでした、二つの頭で。
「さもないとこっちがね」
「何をされるか」
「いきなり襲われたりしたら」
「洒落にならないよ」
「僕もあのアザラシ君には関わりが薄いんだよね」
先生も言うのでした。
「どうにも」
「ペンギン君達とは関わり深いけれどね」
「他のアザラシさん達とはね」
「けれどヒョウアザラシさん達とはね」
「私達も関わりが薄いわね」
「どうにも」
「うん、だからね」
それでと言う先生でした。
「お話もあまりしたことがないよ」
「何か今後あまりお会いしたくないね」
「どうにもね」
「怖いから」
「南極に行っても注意しないとね」
「ホッキョクグマ君達とは結構お話してるけれどね」
先生はこちらの熊さんとは縁が深いのです。
「そうした意味では北極の方が慣れてるかな、いや」
「ペンギンさん達がいるからね」
「他のアザラシさん達も」
「それじゃあね」
「別に何の問題もないね」
こうしたことおをお話するのでした、そしてです。
先生達はアザラシさん達のコーナーに行きました。ですがそのアザラシさん達は北極と南極にそれぞれ分かれています。
そのアザラシさん達を見てです、動物の皆は言いました。
「そうそう、アザラシさん達はね」
「北極にいる種類と南極にいる種類があるんだよね」
「それぞれでね」
「違っていたよね」
「そうだよ」
その通りだとです、先生も答えます。そしてです。
普通のアザラシさん達より小さくて太っている感じで、です。そのアザラシさんだけがいる水槽の中で楽しそうに泳いでいるアザラシさん達を見てでした。先生は言いました。
「このアザラシさん達もいるよ」
「あっ、バイカルアザラシさん」
「湖にいるアザラシさんだね」
「確かロシアのね」
「バイカル湖に住んでいるんだよね」
「そうだよ、唯一の淡水性のアザラシ君だよ」
先生もこう皆に説明します。
「実際にロシアのバイカル湖にいるよ」
「そうだよね」
「バイカル湖ってシベリアにあったよね」
「ロシアの東の方の」
「とても大きな湖だったね」
「あの湖にだけいる特殊なアザラシなんだ」
まさにというのです。
「だから僕にしてもね」
「興味があるんだよね」
「学者として」
「うん、論文も書いたよ」
そのバイカルアザラシさん達のそれをです。
「書いていて楽しかったよ」
「先生って色々と論文書いてるけれど」
「その中でこのアザラシさん達についてもなんだ」
「論文を書いたんだね」
「そうなんだね」
「そうだよ、じゃあアザラシ君達のお話も聞こう」
先生はお仕事のお話もしました。
「これからね」
「うん、じゃあね」
「これからね」
「アザラシさん達のところに行って」
「お話をしようね」
皆も先生のお言葉に応えてでした、そのうえで。
皆でアザラシさん達のところに入りました、まずは北極のアザラシさん達の方からでした。
お話を聞きました、その中の子供の真っ白なアザラシ君がです。
首を傾げさせてです、先生に訪ねて来ました。
「先生ちょっといいかな」
「何かな」
「僕今真っ白だよね」
その毛の色からのお話でした。
「そうだよね」
「うん、そうだよ」
「これっておかしくないの?」
アザラシ君は首を傾げさせて先生に尋ねます。
「お父さんとお母さんは違うのに」
「いや、君のお父さんとお母さんもね」
先生はアザラシ君に言います。
「そうだったんだよ」
「そうだったっていうと」
「そう、君の歳の頃はね」
「毛の色が真っ白だったんだ」
「君みたいにね」
「そうなの?」
アザラシ君はお父さんとお母さんにお顔を向けて尋ねました。
「お父さんとお母さんも子供の頃は真っ白だったの」
「そうだよ、ゴマフアザラシはね」
「子供の頃はそうだったのよ」
「昔はね」
「そうだったのよ」
「そうなんだ、じゃあ僕も」
「君も大人になったらね」
実際にとです、先生はまたアザラシ君にお話しました。
「お父さん達と同じ毛の色になるよ」
「今だけなんだ」
「絶対にそうなるから」
そのゴマフアザラシの毛の色にというのです。
「安心していいよ」
「じゃあ今の毛の色をから」
「変わっていくからね」
「よかった、普通にそうならね」
ゴマフアザラシ君は言うのでした。
「これからそうなっていくのを楽しみにしているよ」
「そういうことでね、他の皆は何かないかな」
先生は他のアザラシさん達にも尋ねました。
「困っていること、悩んでいることはないかな」
「この子程にはね」
「あまりないよ」
「これといってね」
「別にね」
アザラシさん達は先生に答えました。
「僕達も平和でね」
「天敵もいないし」
「ここは快適だし」
「食べるものもあるから」
それで、というのです。
「何もないよ」
「困ってることも悩んでることもね」
「だから安心してね」
「それは何より。じゃあ診察をさせてもらうよ」
先生はアザラシさん達の言葉に応えてでした、そのうえで。
診察もしてです、そうしてでした。
その後で南極のアザラシさん達のコーナーにも来ました、こちらのアザラシさんは先生に微妙なお顔で言うのでした。
「何か僕達ってね」
「違うのかな」
「北極にいるアザラシさん達と」
こう言うのでした。
「何処かね」
「それで別々の水槽にいるの?」
「北極と南極って同じなんじゃ」
「同じ寒い場所なんじゃ」
「それでどうして一緒じゃないのか」
「それがわからないんだけれど」
「そのことだね、実は違うんだ」
先生は南極のアザラシさん達の問いにすぐに答えました。
「北極と南極ではね」
「あっ、実際にそうなんだ」
「北極と南極じゃ違うんだ」
「同じ寒い場所でも」
「そうなんだね」
「そうだよ、君達のいる南極は大陸の上に氷があるんだ」
先生はアザラシさん達に南極の地理的状況から説明しました。
「厚い氷がね」
「じゃあ北極は?」
「あっちはどうなの?」
「あっちの状況は」
「うん、北極は大陸がないんだ」
北極の状況もお話するのでした。
「海の上に氷が浮かんでるんだ」
「そうした場所なんだ」
「北極は地面がないんだね」
「南極にはあって」
「北極にはないんだね」
「そうだよ」
こうお話するのでした。
「それで温度も違うんだ」
「北極と南極で」
「そうなんだね」
「同じ寒い場所でも」
「そこが違うんだ」
「南極の方が二十度位寒いよ」
気温はこう違うというのです。
「二十度だからかなり違うね」
「ううん、そうなんだ」
「同じと思ってたら違ってたんだ」
「北極と南極で」
「しかも南極の方が寒いんだ」
「僕達のいる場所の方が」
「そうなんだよ」
先生は南極のアザラシさん達に穏やかな声でお話しました。
「土地柄も気候もね」
「だからなんだ」
「僕達も別々になってるんだ」
「北極のアザラシさん達と僕達で」
「それでだったんだね」
「北極と南極は同じ寒帯だけどね」
それでもというのです。
「また違うんだよ」
「同じではなくて違う」
「それぞれの場所で」
「そうしたものでなんだ」
「別々になっているんだね」
南極のアザラシさん達も納得しました、生成の説明を受けて。そして先生はこちらのアザラシさん達の診察もしました。
最後はバイカルアザラシさん達ですがこちらのアザラシさん達は先生が来ると先生のところに集まってきました。
そして先生にです、口々に言いました。
「何か僕達ってね」
「やたら変に思われてない?」
「海水の中にいないってだけで」
「かなりね」
「そうだね、思われているね」
実際にと答える先生でした。
「そのことでね」
「やっぱりそうなんだね」
「僕達って普通なのにね」
「何でそう思われるのか」
「アザラシはアザラシだよ」
「君達の言う通りだよ」
先生も否定しませんでした、バイカルアザラシさん達の言葉に。
「同じアザラシ、同じ生きものだよ」
「そうそう、けれどね」
「先生も特別って言ってるしね」
ほかならぬ先生自身もというのです。
「湖にいるからだって」
「特別だってね」
「やっぱりそう言ってたし」
「僕達そんなに特別?」
「他のアザラシと違って」
「そうなのかな」
「違うのかな」
「どうしてもそう思われるかもね。けれどね」
それでもと言う先生でした。
「確かに僕も特別って言ったしね」
「ほら、やっぱり」
「先生もそう言ったし」
「それならね」
「僕達違うの?」
「他のアザラシ達と」
「違うことは違うけれど同じだよ」
これが先生の返事でした。
「そこはね」
「違うけれど同じ?」
「それどういうこと?」
「何かお話が矛盾してない?」
「矛盾してるよね」
「どうにもね」
「矛盾してるね。けれどね」
それでもとです、先生は皆にお話しました。
「君達はアザラシだよ」
「そのことは事実なんだ」
「変わってないんだね」
「そのことは」
「僕達が淡水にいても」
「そうだよ」
まさにというのです。
「アザラシはアザラシだよ、それでね」
「それで?」
「それでっていうと」
「皆と違うことは違うんだ」
同じアザラシ同士でもというのです。
「けれどそれはどのアザラシも同じなんだよ」
「他のアザラシ達も」
「それぞれ違うんだ」
「同じアザラシ同士でも」
「そうなんだね」
「君達は湖にいてね」
そしてというのです。
「例えばゴマフアザラシ君は小さい時は真っ白でヒョウアザラシ君は怖くてね」
「ああ、そういえば」
「ヒョウアザラシさん達も別の水槽に入れられてるね」
「それも厳重に外に出られない様にされて」
「凄い状況になってるよね」
「ヒョウアザラシさん達だけで」
「彼等は他のアザラシも襲うからね」
だからだというのです。
「そうなっているんだよ」
「まさか水槽から出て」
「他のアザラシさんを襲うとか」
「僕達も」
「そうしてくるんだ」
「うん、実際にそうするんだ」
先生はこの事実をお話するのでした。
「君達は違うね」
「幾ら何でもね」
「そんなことしないから」
「絶対にね」
「他のアザラシを襲うとか」
「水槽まで出てとか」
「有り得ないよね」
バイカルアザラシさん達も流石に、とお話するのでした。そして。
そのお話をしてです、また言いました。
「そういえばゾウアザラシさん達は大きいし」
「キタゾウアザラシさんもミナミゾウアザラシさんもね」
「どっちもね」
「同じアザラシだけれど」
「それぞれ違うね」
「そう、だから君達もね」
バイカルアザラシさん達もというのです。
「同じだけれど違うんだ」
「そういうことなんだね」
「皆そうなんだね」
「だから僕達も別に意識することないんだ」
「そうなんだね」
「うん、ただ君達は海水は駄目だからね」
湖に住んでいるからです。
「プールとかいる場所は別なんだよ」
「確かにね」
「僕達塩が多いと駄目だね」
「だからいる場所はなんだね」
「違うんだね」
「そうだよ、そのことはわかっておいてね」
先生はバイカルアザラシさん達にこうもお話しました、そしてでした。
そのうえでバイカルアザラシさん達も診察してでした、全てのアザラシさん達の診察を終えてです。それから。
スナメリさんの診察もしました、皆スナメリさんの真っ白な身体を見て言います。
「何時見てもね」
「スナメリさんって奇麗だよね」
「この白い身体がね」
「とても奇麗だよ」
「あら、有り難う」
スナメリさんは一家です。その中のお姉さんが皆にプールの中から応えました。
「そう言ってくれるのね」
「うん、実際にね」
「スナメリさんとても奇麗だから」
「そう思うからね」
「私達も言ったのよ」
「やっぱりそう言ってくれると嬉しいわ」
「それは何よりだね。ところでね」
先生もスナメリさんに尋ねます。
「困ったところはないかい?」
「そうね、そろそろね」
スナメリのお姉さんは先生の質問に答えました。
「私結婚しないと駄目よね」
「うん、そうした年齢だね」
「だから誰かいないかしら」
「その話ならね」
お姉さんの結婚についてです、先生はすぐに答えました。
「今進んでるよ」
「あら、そうなの」
「鳥羽水族館にもスナメリ君達がいるからね」
「そこからなのね」
「君のお婿さんが来るよ」
「それは何よりね」
「とてもいい子みたいだから」
それで、というのです。
「楽しみにしているんだよ」
「嬉しいわ、私達怖いことはね」
「苦手だよね」
「どうしてもね」
このことはというのです。
「それでなのよ」
「そうだね、君達はとても平和な生きものだからね」
「乱暴な方は怖いわ」
「同じスナメリ君だから」
お姉さんと同じくです。
「安心してね」
「ええ、じゃあ結婚してね」
「君も家庭を持つんだね」
「そうさせてもらうわ」
こう答えたのでした、そしてです。
そのうえでなのでした、先生はスナメリさん達も診察しましたがお祖父さんとお祖母さんには真剣に言いました。
「もうお歳だからね」
「無理はするな」
「そういうことですね」
「そう、穏やかにね」
過ごして欲しいというのです。
「たっぷり食べないで程々にね」
「いやいや、そう言われずとも」
「もう食欲が昔程ないんですよ」
スナメリのお祖父さんとお祖母さんは笑って先生に答えました。
「だから先生に言われなくても」
「食事は控えてますよ」
「前にも増して穏やかに」
「そうなっていますよ」
「それは何より。けれど食べ過ぎもよくないけれど」
先生はお祖父さんとお祖母さんにさらに言いました。
「食べないことも駄目だよ」
「程々に」
「そういうことですね」
「そうだよ、そうしておいてね」
先生はお祖父さんとお祖母さんにはお歳のことからお話するのでした。そうしたお話をしてそのうえでなのでした。
先生はスナメリさん達の診察を終えてから動物の皆と一緒に御飯を食べました。水族館のレストランで鶏肉のステーキをメインにしてです。
サラダやスープ、それにパンも食べます。その先生にです。
周りで先生と一緒に食べている動物の皆がです、こう言ってきました。
「先生、さっきのスナメリのお姉さんのことだれど」
「あのお姉さん結婚するのね」
「鳥羽水族館から来た方と」
「そうなるのね」
「そうだよ、スナメリ君達はね」
先生はサラダ、レタスとトマト、かいわれと若布の上に白いドレッシングをかけたそれを食べながら皆に応えました。
「大事な生きものだからね」
「それでなんだね」
「大切にされてるから」
「それでなんだ」
「ああしてなんだね」
「結婚も進められてるんだね」
「そうだよ、水族館の方でもね」
そうしているというのです。
「他の生きものも同じだけれどね」
「大事にしないとね、そうしたことは」
「いなくなってからじゃ遅いからね」
「先生がいつも言ってるけれど」
「その通りだよね」
「そういうことだよ、だからあの娘も今度結婚するんだ」
スナメリのお姉さんもというのです。
「幸せになるといいね」
「そうだよね、本当に」
「あのお姉さんも幸せにならないとね」
「誰でも幸せにならないと」
「そうならないと駄目だよ」
「それでよ」
今回口火を切ったのはダブダブでした。
「先生もよ」
「僕はもうこれ以上はない位に幸せだよ」
「だから何度も言うけれど幸せには上限がないんだよ」
トートーも言います。
「幾らでも幸せになれるんだよ」
「皆最近よくそう言うけれどね」
「だって本当のことだからね」
ガブガブも先生の足元から先生に言います。
「先生も今以上に幸せになれるよ」
「今以上にね」
「幸せになりたいよね、先生も」
チーチーもかなり真剣です。
「今以上に」
「確かに幸せになりたいけれど」
「後は先生が気付くだけだけれどね」
老馬はもうわかっています、そのうえでの言葉です。
「もうね」
「気付く。僕は」
「そう、気付けばね」
「今以上に幸せになれるのよ」
チープサイドの家族も言うことは皆と同じでした。
「先生自身がね」
「本当にそれだけなのに」
「これが中々ね」
「進まないわね」
「そこが先生なんだけれど」
ジップは先生の性格から言うのでした。
「困ったことでもあるね」
「困ったこと。僕の」
「そうだよ、僕達は確かにいつもずっと先生と一緒にいるけれど」
ホワイティも言います。
「新しい、ね」
「どうかな、先生」
「気付いたらいいだけだからね」
オシツオサレツが言うことはといいますと。
「気付く努力をしてくれたら」
「今以上に幸せになれるからね」
「ううん、僕は今が最高に幸せなんだけれど」
また言った先生でした。
「これ以上に幸せになれるのかな」
「そうだよ、だからね」
「ちょっと気付いてね」
「ほんの少しでいいから」
「頼むよ、そこは」
「何かわからないけれど幸せには限度がない」
先生は首を傾げさせて述べました。
「そのことは覚えてくべきかな」
「是非ね」
「いい人はそのよさの分だけ幸せにならないと」
「だから先生はもっと幸せにならないと」
「先生みたいないい人はいないから」
皆先生の素晴らしいお人柄を知っているからこそ言うのです。
「今以上にね」
「幸せになろうね」
「僕達との約束だよ」
「いいわよね」
「何かこれ以上幸せになると悪い気もするね」
無欲な先生は皆の言葉に少し笑って返しました。
「何もかもがあるのに、今の僕は」
「それが違うんだけれど」
「もっとね」
「そこでだよ」
「欲を出していいから」
「欲もあっていいから」
皆が言うにはそうです、この辺り先生と皆の考えは違います。先生はわかっていないのですがそれでもです。
それで皆も言うのですがやっぱり先生はこれ以上の幸せはいいと言うばかりです、それで鶏肉のステーキを食べても言うのでした。
「このステーキだってね」
「凄く美味しいっていうのね」
「それもかなり」
「そう言うんだね」
「そうだよ、こんな美味しいステーキないよ」
フォークとナイフで食べながらのお言葉です。
「こうしたステーキを食べられるのなら」
「最高に幸せ」
「そう言うんだね」
「だからなんだ」
「これ以上はいいんだ」
「しかもスープも美味しいし」
こちらもいいというのです。
「あとパンもね」
「確かにここのレストランも美味しいね」
「大学の食堂もいいけれどね」
「このレストランもね」
「美味しいわね」
「そう思うよ。じゃあこれを食べて少し休憩して」
午後はといいますと。
「また診察をしてね」
「皆の相談に乗る」
「そうするんだね」
「そうするよ、今日もね」
先生は穏やかに言うのでした。
「あと明日は午前は講義だから」
「そうそう、大学のね」
「講義あったね」
「そっちも頑張ってね」
「学生の皆に教える方もね」
「そちらも頑張るよ」
当然といった口調でした。
「全力でね」
「先生手を抜かないからね」
「何でもね」
「学問に関することはね」
「出来ることはね」
それこそ何でもです、先生は手を抜いたりいい加減なことはしません。自分の出来ることを先生なりにいつも全力でしています。
「だから教えることもね」
「絶対に手を抜かないよね」
「そちらの方も」
「頑張るよね」
「そうしないと学生の皆にも医学にも悪いよ」
これが先生のお考えでした、何故手を抜かないかといいますと。
「だからなんだ」
「そういうことなんだね」
「先生は失礼なことは駄目だっていうから」
「それで手を抜かないんだね」
「色々なことについて」
「やるからには」
「うん、ただ僕は出来ないことが多いから」
運動神経はなくてしかも世事のことには本当に疎いです。
「そうしたことはね」
「しないよね」
「というか周りが止めるんだよね」
「僕達もそうしてるからね」
「どうしてもね」
「そう、だからね」
それでというのです。
「出来ないことはね、僕はね」
「最初からしないこと多いよね」
「スポーツとか家事のことは」
「特にスポーツとお料理はね」
「しないよね」
「スポーツは身体が動かなくて」
子供の頃からです。
「オリンピック選手とか不思議で仕方ないよ」
「軽々と動けるから」
「凄く速くて体力もあって」
「それでなんだね」
「先生も不思議なんだね」
「どうしてあそこまで動けるかはわかっているんだ」
スポーツ医学的にです、先生はこちらの専門家でもありますので。
「それでもその目で見ると」
「頭ではわかっていても」
「それでもなんだね」
「あそこまでどうして動けるか」
「それがなんだ」
「わからないんだ」
「そうなんだね」
「そうだよ、僕にとってはね」
スポーツ選手の身体のことがというのです。
「凄いと思うよ」
「不思議って思う位に」
「そこまでなんだね」
「ダンサーにしてもだよ」
こちらも身体を動かすことです、それなら先生が得意な筈がありません。
「ああして動けるのって凄いよ」
「先生リズム感ないからね」
「歌うことも駄目だしね」
「音楽の知識はあってもね」
「実践は駄目なんだよね」
そちらもです、先生は苦手なのです。
「踊ることは出来る人も」
「それもなんだね」
「難しい」
「そうだよね」
「足がもつれて手はふらふらになって」
先生はご自身で若し踊ったらどうなるかを言うのでした、パンを食べながら。
「どうしようもなくなるよ」
「それですぐに肩で息をして」
「へとへとになってね」
「動くことが出来なくなる」
「そうなるよね」
「そうなんだよ、お掃除も下手で洗濯も出来ないしお料理は特にね」
家事の中でもです。
「駄目だからね」
「だからそっちも全力で向かっても」
「出来なくて」
「それで僕達が止めて」
「トミーも王子もね」
「サラに一番止められるね」
妹さんに、というのです。
「どうしてもね」
「サラさんはね」
「何だかんだで先生のことを心配してるからね」
「妹さんだしね」
「それで一番言うんだよ」
「自分がやるってね」
「うん、サラは結婚する前はね」
まさにです、その頃のサラはといいますと。
「家事を全部やってくれてたよ」
「そうそう、トミーと会うまではね」
「先生のそうしたこと全部してくれたんだよね」
「僕達がするんじゃなくて」
「サラさんがね」
「お兄ちゃんに任せられないって言ってね」
ここでこう言うのがサラです。
「それでだったね」
「それで今もね」
「時々日本に来てね」
「先生に言うよね」
「何かとね」
「そうなんだよね、言われるのがね」
それこそとも言う先生でした。
「僕だったね」
「それで出来ないことを代わりにやってもらう」
「それが先生だね」
「そうした巡り合わせだね」
「出来ないことも出来る様になりたいね」
こうも思う先生でした。
「出来ないことは出来ないままじゃなくて」
「出来る様になる」
「そういうことだね」
「先生もそうしたいんだね」
「才能がないことでもね」
先生にとってのスポーツや家事もです。
「出来ないままじゃなくて」
「そう言うんだね」
「やっぱり出来てこそ」
「そう思ってるんだね」
「そうだよ。僕一人の時に努力してね」
そうしてでもというのです。
「考えてるよ」
「先生って見てたら放っておけないから」
「それでついつい出来ないことは僕達が、ってなってるけれど」
「そこをなんだね」
「出来る様になりたいのね」
「そうも思ってるよ。じゃあデザートを食べて」
無花果とメロンを切ったものが来ました、それを食べてというのです。
「後はね」
「うん、休憩してね」
「またお仕事しようね」
「それからもね」
こうお話してでした、皆は楽しく過ごすのでした。先生の診察は順調に進んでいました。先生が気付かないことがあっても。
今回はペンギンなどの寒い地の生き物だったな。
美姫 「そうね。時に問題もなく、これまた診察は順調ね」
だな。まあ、先生の方も相変わらずというか。
美姫 「まあ、これに関してはいきなり変わる訳じゃないでしょうしね」
まあな。このまま順調に進むとして、次はどんな生き物が出てくるのかが、毎回楽しみだな。
美姫 「本当ね。次回も待っていますね」
ではでは。