『ドリトル先生の水族館』
第五幕 アマゾン
朝からです、王子は先生のお家に来ていました。そのうえで先生達と一緒に朝御飯を食べながら言いました。
「ずっとね」
「ずっと?」
「ずっといっていうと?」
先生とトミーが王子に応えました。
「何かあったの?」
「それは何なの?」
「いや、祖国にいた時はお魚を食べてもね」
王子は朝御飯のおかずのめざしを食べつつ言うのでした、他には若布とお豆腐のお味噌汁に納豆、
お漬けものです。主食は勿論白い御飯です。
「生じゃ絶対にね」
「そうだよね、王子のお国ではね」
「うん、生魚はね」
絶対にというのです。
「食べないからね」
「このメザシみたいにだよね」
「うん、焼いてね」
そしてというのです。
「食べているからね」
「さもないと怖いからね」
「生は傷みやすいし」
「それにだね」
「うん、虫がいるから」
だからと言う王子でした。
「生では絶対に食べなかったんだ」
「そうだったね」
「お魚を食べる時はよく火を通して」
「そして食べてるね」
王子のお国では、というのです。
「そこは注意してね」
「虫が身体に入ったら大変だから」
「そう、退治するのは難しいよ」
身体の中に入った寄生虫達をというのです。
「それでね」
「入れないことが大事だね」
「最初からね」
「それでなんだ」
「王子の国ではお魚は常に火を通して」
「焼いたり煮たりしてね」
「そうして食べてるね」
先生も言うのでした。
「そしてそれは正しいよ」
「そうだよね」
「衛生的にね」
「けれど日本だとね」
皆が今いるこの国ではとです、王子は朝食の場でお話するのでした。三人の周りには動物の皆も一緒にいて食べています。
「そうじゃないね」
「色々な魚料理があってね」
「それでだよね」
「うん、お刺身もあるよ」
「その生で食べる料理がね」
「王子にとってはそのことがだね」
「祖国で話を聞いて驚いて」
そしてというのです。
「実際に見てびっくりしたよ」
「生魚を食べることを」
「うん、虫が怖くないのかって」
「確かに新鮮なものに限るけれどね」
「それでもだよね」
「日本人はよくお刺身を食べるよ」
お魚を生で、というのです。
「それで食べてるんだ」
「それも美味しく」
「あとイタリア料理のカルパッチョも」
「うん、南欧でも食べるよね」
「牡蠣を生とかでね」
「あれ危なくないの?」
かなり真剣にです、王子は先生に尋ねました。
「イギリスでも食べないことはないけれど特に日本人生牡蠣どんどん食べるから」
「お刺身と同じでね」
「あれが信じられなかったんだ」
「けれど食べてみたら」
「これが美味しいんだよね、お刺身もカルパッチョも生牡蠣も」
魚介類をそのまま食べることがというのです。
「とてもね。それにね」
「しかもだね」
「うん、身体にもいいんだよね」
「そうだよ、牡蠣もね」
「一度食べたら」
それこそとです、また言った王子でした。
「その美味しさに病みつきになるね」
「そうだよね、僕もだよ」
「先生もなんだ」
「日本に来るまで魚介類はそんなに食べていなかったからね」
「お刺身も」
「そうなんだ、だから日本に来てよく食べる様になったけれど」
「それがなんだ」
「いいね」
とても、というのです。
「お魚は。お刺身と天麩羅、焼いても煮ても蒸してもね」
「つまりどのお料理でもなんだ」
「好きになったよ」
「先生最近中華でもフレンチでもイタリアンでも召し上がられますよね」
トミーは納豆を掻き混ぜて御飯の上に乗せています。納豆のその中には葱を細かく刻んだものも入れています。
「魚介類を」
「美味しいからね」
「だからですね」
「今じゃお肉よりよく食べているかな」
そこまでというのです。
「食べているかもね」
「そうかも知れないですね」
「海のものが多いけれど」
「鯉もお好きですよね」
「鯉のお刺身いいよね」
「鯉こくとかも」
「鯉もいいよ」
つまり美味しいというのです。
「海のお魚もいいけれどね」
「それで時々召し上がられてますね」
「イギリスじゃこんなに鯉は食べられないよ」
「殆ど食べないですよね」
「鱈や鮭ばかりでね」
「フィッシュアンドチップスはありますけれど」
「料理のメニューも多くなくてね」
その問題もあるのでした、イギリスでは。
「日本程じゃなくて」
「ここまで充実していないよ。例えば滋賀のね」
「鮒寿司ですね」
「あれをご馳走になって驚いたよ」
「鮒ってあの川魚だよね」
王子は鮒と聞いて言いました。
「鯉に比べて小さい」
「そう、あのお魚だよ」
「あれも食べるんだね、日本では」
「今はあまり食べないけれどね」
「それでもお寿司にして食べるんだ」
「とはいっても普通のお寿司とは違うよ」
握り寿司や巻き寿司、ちらし寿司といった今あるお寿司とはというのです。
「馴れ寿司といって昔の作り方のお寿司なんだ」
「その鮒寿司は」
「そう、だからね」
それでというのです。
「昔ながらのお寿司で。じっくりと時間をかけて作るもので」
「そのお寿司を先生も食べたんだ」
「変わった味だったけれど美味しかったよ」
先生は微笑んで王子にお話しました、その鮒寿司のことを。
「中々ね」
「滋賀のお料理だね」
「名物だよ」
「わかったよ、滋賀だね」
王子は頷いて先生に応えました。
「一度食べてみるよ」
「そうしたらいいよ、王子もね」
「どっちにしても日本に来てね」
「お魚を生で食べたりする様になったね」
「結論から言えばね」
王子は笑顔で答えました。
「そうなったよ」
「ううん、郷に入れば郷に従え?」
「そう言うけれどね、日本だと」
「じゃあ王子もなんだ」
「そうなったんだね」
動物の皆も言います。
「それで生のお魚も食べる様になって」
「それも美味しく」
「そうなったんでね、今は」
「昔は絶対に食べなかったのに」
「そうなんだ、けれど鯉のお刺身は食べられても」
ここでこんなことも言った王子でした。
「肺魚はね」
「あっ、あのお魚だね」
「あれは大丈夫って言われても食べようとは思わないね」
お刺身ではとです、王子はトミーに答えて言いました。
「あのお魚はどうお料理してもね」
「そういえば王子の国では誰も肺魚食べないね」
「まずいからね」
レも食べない理由はこのことが、でした。
「それもとんでもなくね」
「特に生ではだね」
「何があっても食べないよ」
それこそというのです。
「あのお魚はね」
「うん、淡水のお魚は気をつけた方がいいけれど」
ここで先生が王子に応えて言います。
「肺魚とか熱帯のお魚は特にね」
「虫が怖いから」
「そう、食べない方がいいよ」
「そうだよね」
「だから王子の国で生のお魚を食べないことは正解なんだ」
そのこと自体がというのです。
「安全の為にね」
「日本じゃそうじゃないけれど」
「日本でも昔は多かったから」
「川魚を食べて?」
「虫に苦しめられる人が多かったからね」
先生は王子にこのこともお話しました。
「気をつけた方がいいんだ」
「安心出来るお店とかじゃないと」
「食べない方がいいよ」
川魚のお刺身とか生ものはというのです。
「しかも新鮮なものでないとね」
「危ないよね」
「そうだよ、まあそうしたお話は置いておいて」
「この朝御飯を食べたらね」
「学校に行こう」
先生はお仕事、トミーと王子は講義を受ける為にです。そして動物の皆は先生のお供として学校に行くのです。
その学校に着いてです、先生は研究室に持ちものを置いてからすぐに水族館に行きました。今日はまずはアマゾンの生きもののコーナーに行きました。
最初に赤や緑、黒が奇麗な模様の小さな蛙さん達を見ました。ジップはその蛙さん達を見ながらガブガブに言いました。
「ガブガブ、わかってるよね」
「この蛙さん達はっていうんだね」
「そうだよ、食べたら駄目だよ」
「僕先生がいいと言うものしか食べないよ」
食いしん坊のガブガブでもです。
「だから食べないよ、最初から」
「その方がいいね」
「しかもこの蛙さん達あれだよね」
「そうだよ、毒があるからね」
「ヤドクガエルだね」
トートーが先生の肩から言ってきました。
「この蛙を食べると毒にやられるんだよね」
「そうそう、ガマガエルにも毒があるけれど」
ダブダブはこちらの蛙の名前も出します。
「あの蛙の毒はまだ大したことがないのよね」
「けれどこの蛙君達はね」
「かなり強い毒だから」
ダブダブはトートーの言葉に頷きます。
「気をつけないとね」
「間違ってもお口の中に入れない」
「そうそう」
「まあね、毒があるってわかったらね」
チーチーもその蛙さん達を見つつ述べます。
「この蛙さん達は目立つから絶対に近寄らないね」
「警戒するわね」
ポリネシアはチーチーのその言葉に返しました。
「どうしても」
「その意味もあってこうした色なんだろうね」
「そうでしょうね」
「蛇さんとかが食べたら」
ホワイティは自分も気をつけているこの細長い生きものの名前を出しました。
「大変だね」
「全くだよ、小さいのにね」
老馬がそのホワイティの言葉に応えます、自分の頭の上にいる彼に。
「とても強い毒があるから」
「手を出したらね」
「大変なことになるね」
「奇麗な薔薇には刺があるっていうけれど」
「奇麗な蛙君にはだね」
オシツオサレツはこう言いました。
「毒がある」
「そういうことだね」
「刺どころかね」
「毒なんだね」
「薔薇の刺も嫌だけれど」
「毒はそれどころじゃないから」
チープサイドの夫婦も言います。
「怖いものがあるね」
「奇麗な色をしていても」
「僕達は蛙さん達は食べないけれど」
「それでもね」
「うん、アマゾンが沢山の生きものがいて生態系も凄く厳しいからね」
先生が皆にアマゾンの事情をお話しました。
「だから生き残る為にこうした蛙君達もいるんだ」
「生き残る為の進化なのね」
「毒を持つってことも」
「そうなのね」
「そうだよ、蛇の毒も獲物を弱らせたり自分の身を守る為だからね」
噛んで牙からその毒を噛んだ相手に注入するのです。
「この蛙君達の毒もね」
「生き残る為の進化で」
「そのうちの一つなのね」
「だから怖いものじゃなくて」
「進化だって考えればいいんだ」
「そうだよ、身体が大きくなったり小さくなったり針を持ったりするのもね」
そうしたあらゆることがというのです。
「進化なんだよ」
「生き残る為の」
「そうしたものなんだ」
「そうだよ、キリンの首や象の鼻が長いのもそうで」
こちらの生きもののこともです、先生は皆にお話しました。
「皆のそれぞれの特徴や食べるものもそうなんだよ」
「お肉や草を食べることも」
「虫を食べることも」
「全部進化なんだ」
「そうだったんだ」
「うん、進化は本当に色々なんだよ」
毒を持つこともそのうちの一つだというのです。
「隠れることが上手だったり夜行性だったりすることも」
「うん、僕の場合は夜の方がね」
梟のトートーの言葉です。
「しっくりくるけれど」
「夜に活動する獲物を捕まえてお昼に活動する天敵から避ける」
「その為だね、僕達が夜の方が得意なのは」
「そうだよ」
まさにというにです。
「それも進化なんだよ」
「適合じゃなくて?」
「適合と言ってもいいしね」
「進化と言ってもいい」
「そうなんだ」
「成程、そうなんだね」
「そして進化は止まらないんだ」
先生は皆にこうも言いました。
「それはね」
「今の時点で終わりじゃなくて」
「そこからもなんだ」
「さらに進化していくんだ」
「そうしたものなんだ」
「うん、環境は常に変わるから」
だからだというのです。
「進化もね」
「常になんだね」
「行われているものなんだ」
「そうなんだね」
「そうしたものなんだよ」
こうお話するのでした。
「だから面白くもあるんだ」
「ううん、そうなんだ」
「じゃあ僕達もなんだ」
「常に進化していってる」
「そうなんだね」
「昨日猫君達の種類のことを話したけれど」
先生は昨日のお話も出しました。
「あれもなんだよ」
「進化なんだ」
「色々な種類があるのも」
「そうだったんだ」
「そう、それはジップも同じでね」
「僕も?」
ジップは先生に言われて目を瞬かせて応えました。
「っていうと犬もなんだね」
「そうだよ、例えばダッグスフントはね」
この種類の犬のお話でした。
「胴が長くて足が短いね」
「それが彼等の特徴だね」
「あの犬は元々穴熊狩り用の犬だったんだ」
「穴熊さん達の」
「そう、穴熊君達は細長い穴に住んでいるね」
「その穴に入る為になんだ」
「あの形なんだよ」
胴長短足だというのです。
「彼等はね」
「そうだったんだね」
「そうなるなるように進化させられたんだ」
「させられたにしても」
「そう、進化したんだ」
「そうだったんだ」
「ブルドック君達は闘牛用だね」
先生は今度はこの犬のことをお話します。
「はじまりは」
「うん、そうらしいね」
「牛を噛む時に窒息しない様にね」
「ああしたお口の形なんだ」
「大きさもね」
「そうだったんだ」
「実は怖くない優しい性格の子が多い犬君だけれどね」
ブルドッグは実はそうなのです、お顔は確かに怖いのですが大人しくて優しい子が多い種類の犬なのです。
「ブルドックさん達も」
「そうだったんだよ」
「何か色々だね」
「それにね」
「それに?」
「あとはね」
さらにお話する先生でした。
「猫君にお話を戻すけれど」
「そちらはどうなの?」
「シンガプーラはシンガポールの下水道にいてね」
そこでというのです。
「狭い場所だからあれだけ小さいんだよ」
「狭い場所に適合して」
「それで小さいんだね」
「あの猫さん達は」
「そうなんだね」
「そういうことなんだ。昨日お話したステラーカイギュウもだよ」
このカイギュウさんのお話も出ました。
「大きくてあの形なのはね」
「あそこに適合して進化した」
「だから大きかったんだ」
「脂肪も厚くて」
「いつも浮かんでいたんだ」
「普通の海牛類は海の中に完全に入るけれど」
そしてその中で泳いでいるのです。
「けれど彼等は背中を出して浮かんでいたね」
「それは寒い場所に合わせてだよね」
「寒いからああして外に身体の一部を出して体温も調整していて」
「動かない様にしていて」
「そういう身体になっていたんだね」
「そうだったんだ、身体を浮かんでいたことはね」
それはというのです。
「彼等の進化だったんだ」
「成程ね」
「ステラーカイギュウさん達も進化してたんだね」
「寒い海に適合して」
「そうして生きていたんだね」
「そうだよ、残念なことに絶滅してしまったと言われているけれど」
またこのこともお話した先生でした、やっぱり寂しそうに。
「それもまたなんだ」
「進化なんだね」
「そしてその進化はずっと続いていくんだ」
「現在進行形で」
「そうなのね」
「そうだよ、人間も同じだよ」
他ならぬ先生達もというのです。
「進化していっているんだよ」
「文明だけじゃなくて」
「身体もなんだ」
「そうなんだね」
「うん、日本人もこの百年で体格がかなりよくなったけれど」
具体的には背が伸びました。
「食生活が変わったせいが大きいけれどね」
「これも進化?」
「そうなるの?」
「大きくなることも」
「それも」
「そう言っていいかもね、進化と言ってもいいし変化と言ってもいいけれど」
どちらにしてもというのです。
「体格の変化にしてもね」
「進化で」
「今現在起こっているんだ」
「実際に」
「人間にしても」
「そうなんだよ、あらゆる生きものは様々な形で常に進化しているんだ」
先生は微笑んでこうも言いました。
「それもまた面白いね」
「深いね、何か」
「そうした状況って」
「何かとね」
「僕達もそうだなんて」
「とはいっても進化しないといけないってこともないよ」
絶対ではないというのです、進化は。
「そのままでいてもいいんだよ」
「あれっ、そうなんだ」
「そのままでいてもいいんだ」
「絶対に進化しないといけない」
「そういうことでもないんだ
「うん、その場所に適合出来てそのままでいられるのならそれはそれで幸せなことだからね」
だからだというのです。
「それもまたいいんだ。進化しないといけない時は進化するしね」
「必要なら進化するんだ」
「だからそのままでいいのならそれでいいんだ」
「絶対進化しないといけないんじゃなくて」
「現状維持でもいいのね」
「そういうものだよ、進化イコール正義かというと」
それは、というのです。
「また違うんだ」
「ううん、進化って絶対に正しいんじゃなくて」
「そうでもないんだ」
「進化しなくてもよくて」
「そのままでいてもいいんだ」
「そうだよ、進化といってもいい進化でない場合もあるしね」
ここで先生がお話するよくない進化はといいますと。
「この前トミーがしていた日本のテレビゲームでね」
「ああ、日本ではそうしたゲーム多いね」
「それも凄くね」
「ネットのゲームもあるけれど」
「そっちのゲームもかなり多いね」
「そのゲームの中でも大人気のシリーズの四作目でね」
先生のお話は続きます。
「進化の話だったけれど」
「その進化がなんだ」
「よくない進化だったんだね」
「そうだったの」
「うん、魔族の王だったキャラクターが魔族かね」
魔族どころか、というのです。
「人に近い姿が巨大で禍々しい化けものになったんだ」
「化けもの?」
「人に近い姿が化けものになるんだ」
「それはね」
「かなり問題よね」
「そうした進化は」
「そうした進化を選んだのは恋人を殺された復讐心からで」
殺された恋人の恨みを晴らす為にというのです。
「自分が進化して強い力を持とうとしたからだったんだ」
「そしてその進化がなんだ」
「化けものになってしまう進化で」
「よくなかったんだね」
「そうだよ、もっともそのキャラクターは復讐心にとらわれて心が化けものになってしまっていたから」
既にその心がというのです。
「その心に従ったと言ってもいいけれどね」
「人は姿形で決まるんじゃない」
「心で、だよね」
「先生がいつも僕達に言ってるけれど」
「人は心で人になる」
「心が人なら人だよね」
「そうだよ」
先生はいつも皆にこうお話しています、だから動物の皆もそうした広い意味において人と言っていいものだというのでうs。
「だからそのキャラクターはね」
「心が化けものだったから」
「姿形まで化けものになった」
「そう言えるんだね」
「うん、けれど進化のことを語るとね」
そのキャラクターのそれをです。
「そうも言えるね」
「悪い進化もある」
「そういうことなのね」
「うん、僕も再認識したよ」
トミーがしていたそのゲームを観て、というのです。
「幸いそのキャラクターは助かって主人公の味方になったけれどね」
「それはよかったね」
「悪い進化から解き放たれてね」
「姿形も心もだよね」
「化けものじゃなくなって」
「恋人が生き返ってね」
そして、というのです。
「恋人に助けてもらってなんだ」
「化けものじゃなくなって」
「魔族に戻ったんだね」
「魔族は生物的には人間じゃないけれど」
「心が、だからね」
「そうなるよ、本当にね」
それこそとも言う先生でした。
「進化っていっても様々であることはね」
「僕達も知っておいた方がいいね」
「その中には悪い進化もある」
「そして進化しなくてもいい」
「そういうものなんだ」
「そうだよ、世の中はね」
それこそというのです。
「そうしたものでもあるんだ」
「成程ね」
「ドクガエルさん達もそうで」
「毒を持つのも進化」
「じゃあこの色になるのも」
「進化だよ。とにかくね」
さらにお話した先生でした。
「進化は様々でイコール正義でないことは覚えておいてね」
「うん、わかったよ」
「そうしたものなんだね」
「進化っていうのは」
「そういうことでね。さて、じゃあ今からね」
先生は皆とのお話が一段落してでした。
微笑んで、です。傍に来た係の人にお話しました。
「ではこの子達のことで」
「はい、実はヤドクガエルの繁殖についてです」
係の人も先生に応えて言います。
「アドバイスを頂きたくて」
「僕をお呼びしたのでしたね」
「そうです」
係の人は先生にはっきりと答えました。
「それでなんです」
「はい、ヤドクガエルの繁殖でしたら」
先生は係の人にお話しました。
「様々ですの」
「同じヤドクガエルといっても」
「その種類に合わせてです」
「繁殖させていくべきですね」
「ですから別々にです」
その種類ごとに分けて、というのです。
「行うといいです」
「一緒ではなく」
「はい、そうです」
「わかりました、それぞれの種類の繁殖方法についてはもうわかっていますので」
水族館の方でもというのです。
「後は、ですね」
「その種類で別々に分けてするといいです」
こうお話するのでした。96
「ヤドオクガエルの場合は」
「そういうことですね」
「今までは、ですね」
「実は一つにしていました」
その様々な種類のヤドクガエルさん達をというのです。
「ですが」
「今一つ、ですね」
「上手にいっていませんでした」
「それぞれの種類で繁殖方法が違うので」
「管理や把握が難しく」
「ですからそれならです」
「それぞれの種類に分けてですね」
「行うといいです」
こう係の人にお話するのでした。
「それがいいです」
「ではその様に」
係の人も頷きました、そしてでした。
ヤドクガエルのお話が終わってです、次は。
皆はピラルクやアロワナ、ガーにオオナマズといったアマゾンの大きな魚達が泳いでいるとても大きな水槽の前に来てです。
そのお魚達を見てです、唸って言いました。
「何度見てもね」
「アマゾンのお魚さん達って凄いよね」
「何メートルもあるお魚とかね」
「普通にいるからね」
「うん、本当にね」
こうお話するのでした。
「凄い川だよ」
「海みたいだよね」
「こんなお魚が沢山いるとか」
「他にないよね」
「他にも大きな川があってね」
先生も皆にお話します。
「鰐がいたりするけれど」
「ナイル川とかミシシッピー川とかね」
「長江も大きいよね」
「あとガンジス川」
「そうした川もあるけれどね」
「アマゾン川は熱帯にあってね」
ブラジルのジャングル、アマゾンを作っている川でもあります。とても雨が多くて深い木々が生い茂っている場所です。
「独特の生態系なんだよ」
「それでその生態系の中でだね」
「こうしたお魚さん達もいるんだね」
「食べるものもあるんだ」
川の中に、です。
「それで様々な生きものがいてね」
「こうしたお魚もいるんだね」
「ピラニアとかもいて」
「陸地にも色々なお魚が一杯いるし」
「そうした場所なんだね」
「僕達も何度か行ったね」
ここで、です。先生は皆にこのこともお話しました。
「アマゾンに」
「うん、凄かったね」
「何度行っても凄い場所だよね」
「川の岸辺が見えなかったりするし」
「周りはジャングルばかりでね」
「あんな場所他にないね」
「そうだよね」
皆もあらためてお話します。
「あそこに行くとね」
「驚くことばかりだよ」
「また行きたいよね」
「機会があれば」
「僕もそう思うよ、それでだけれど」
先生はあらためて皆にお話しました。
「今回は彼等を見ないんだ」
「ピラルクさん達はなんだね」
「頼まれていないんだね」
「そうなんだ、だからね
それで、というのです。
「そちらに行くよ」
「それで何処に行くの?」
「アマゾンのコーナーだよね」
「そこに行くんだよね」
「そうだよ、ただそこにいるのはね」
これから行くコーナーには、というのです。
「アマゾンの生きもの達だけじゃないんだ」
「あれっ、じゃあどうした場所かな」
「この水族館色々な場所があるけれどね」
「アマゾンの生きもの達だけじゃないって」
「どうした場所なのかな」
「亀のコーナーだよ」
そこに行くというのです。
「これから僕達が行く場所はね」
「ああ、そうなんだ」
「そうした場所に行ってなんだ」
「そのうえでだね」
「亀さん達を診るんだね」
「そうだよ、行こうね」
こう皆に言ってでした、そのうえで。
皆はアマゾンのコーナーと爬虫類の端っこ、もっと言えばそこだけで一つのコーナーになっている場所に向かいました。そこはといいますと。
亀さん達のコーナーでした、そこには世界中の様々な種類の亀さん達が一杯いました。底の浅い大きなお池がガラスで区切られた中にあってです。そこに亀さん達が一杯います。
そこの亀さん達を見てです、ホワイティが言いました。
「一杯いるね」
「そうだね」
「亀さんっていっても多いんだね」
「そうだよ、沢山の種類がいるんだ」
「ウミガメさん達は」
「あっちだよ」
また別の大きなコーナー、ジュゴンやマナティーのそれの様な水槽の中で沢山のウミガメさん達が泳いでいます。
「あそこにいるよ」
「あっ、あそこになんだ」
「そう、あそこにいるからね」
「ウミガメさん達もいるんだね」
ホワイティはしみじみとした口調になって言うのでいsた。
「この水族館には」
「そうだよ、特にね」
ここで先生がお話に出す生きものはといいますと。
「ほら、ウミガメ君達の中に赤いウミガメ君と青いウミガメ君がいてね」
「アカウミガメ、アオウミガメだね」
トートーが答えました。
「確か」
「そうだよ、そしてもう一種類いるね」
「うん、確かにね」
トートーも頷きます。
「お顔が黒い斑点の大きなウミガメさんがね」
「そうだよ、あれがタイマイ君だよ」
そうだというのです。
「ウミガメ君達の中でも希少な種類なんだ」
「ふうん、そうなんだね」
「この水族館は凄く色々な生きものがいてね」
「タイマイさん達もなんだね」
ガブガブも言います。
「いるんだね」
「そうなんだ、八条学園の水族館や動物園はワシントン条約で保護されている生きもの達を保護してもいるんだ」
「凄い場所なんだね」
「だから動物園にも色々な生きもの達もいるから」
それで、というのです。
「大切な場所なんだ」
「そうなんだね、ただね」
「ただ?」
「いや、何かね」
ガブガブはウミガメさん達だけでなく沢山の亀さん達がいるコーナーも見ました。そしてその他にもです。
それで、です。こう言ったのです。
「怖い亀さんは別にされてるね」
「あっ、ワニガメさん達とかね」
「別のコーナーに個々にされてるね」
チープサイドの家族も気付きました。
「やっぱり暴れたりするから」
「他の亀さん達を襲うから」
「だからなんだね」
「別々にされてるんだね」
「うん、かなり危ないからね」
だからとです、先生もお話します。
「そのことは配慮されてるよ」
「そうなんだね、やっぱり」
「そこはそうしてるんだね」
「何かがあってはいけないから」
「そうしてるんだね」
「そうなんだ、ウミガメ君達や大抵の亀君達にそうした心配はないけれど」
それでもというのです。
「ワニガメ君達はね」
「物凄く怖いからね」
ダブダブもワニガメさん達について言います。
「最近日本にもいるし」
「そうなんだよね、アメリカにいてね」
チーチーもダブダブに応えて言います。
「何故か日本にもいるんだよね」
「そうよね」
「あれどうしてなのかな」
チーチーは腕を組んで首を傾げさせました。
「アメリカにいる生きものが日本に」
「誰かが日本に持ち込んでるんだよ」
先生は皆にこの事情についてお話しました。
「それでいるんだ」
「アライグマ君達と一緒だね」
ここでこう言ったのはジップでした。
「そのことは」
「そうなんだ、このことはアメリカから日本だけじゃなくて」
他の国々の間でもあるというのです。
「オーストラリアでもね」
「ああ、そういえば」
ここでジップもわかりました。
「昔オーストラリアには犬がいなかったね」
「そうだよ、けれど今はいるね」
「ディンゴがね」
「あの生きものも持ち込まれたものだよ」
「そうなんだね」
「それでカンガルーやワラビー達を襲ってね」
そうしたことがあったのです、オーストラリアでは。
「生態系が狂ったんだよ」
「そうしたことがあったね」
「他にもあったんだよ」
ここで先生がさらにお話したことはといいますと。
「ドードー鳥とかね」
「あの鳥は確か」
老馬が言いました、ドードーの名前を聞いて。
「発見されてすぐに絶滅したよね」
「そうだよ、ステラーカイギュウと同じくね」
「動きが鈍くておっとりした鳥だったよね」
「モーリシャス諸島だけにいたね」
「その鳥さん達もなんだ」
「人間が乱獲してね」
先生はこのことから説明しました。
「そして人間が持ち込んだ犬に襲われて船から入った鼠達に雛や卵が襲われて」
「いなくなったんだね」
「そうしたことがあったんだ」
「外国からの生きものって大変なことを引き起こすのね」
「そうしたことになる場合もあるんだ」
先生はポリネシアにも応えました。
「ドードー鳥みたいにね」
「だから外国に生きものを持ち込む場合は慎重に、なのね」
「そうしないと駄目なんだ」
先生はポリネシアにあらためてお話しました。
「ミソサザイの種類で一匹の猫で絶滅した種類もあるからね」
「一匹の猫で!?」
「そんなことがあったの!?」
そのお話にはです、オシツオサレツもびっくりです。
「そんなことがあったの」
「たった一匹の猫でなんだ」
「一つの種類が絶滅するなんて」
「凄いね」
「一つの島にいたんだけれど」
そのミソサザイは、です。
「いなくなったんだよ」
「ううん、たった一匹でなんて」
「それはまた凄いね」
「灯台守のペットの猫だったんだ」
そのたった一匹の猫は、というのです。
「そうした極端な例もあるんだよ」
「だからワニガメさん達はなんだ」
「気をつけないといけないんだね」
「他の外来生物にしても」
「そうなんだね」
「そうだよ、本当に気をつけないといけないから」
それこそというのです。
「さもないと大変なことになるからね」
「ワニガメさん達にしても」
「そうなんだね」
「いや、実はミドリガメ君達もなんだ」
先生は日本の何処にでもいる様な亀さん達の名前も出しました。
「実はアメリカから来た種類でね」
「あれっ、あの緑の亀さん達も」
「黄緑の」
「あの亀さん達もなんだ」
「アメリカから来ていたんだ」
「アメリカザリガニもそうでね」
今度はこちらの生きもののお話でした。
「メダカやお花だと蒲公英もだったかな」
「外来種が日本に入って来て」
「増えてなんだ」
「生態系に影響を与えている」
「そうなってるのね」
「そうなんだよ、古い種類では鯉や草魚もだね」
こうした日本人に馴染みのあるお魚さん達もというのです。
「元々は外来種でね」
「へえ、そうなんだ」
「鯉さん達もなんだ」
「最初から日本にいなくて」
「増えたものなの」
「実はね。まあ定着したけれど」
それでもというのです。
「外来種は気をつけて国に入れないといけないんだ」
「複雑な問題がまだあるんだね」
「亀さん達にしても」
「そうしたお話があって」
「気をつけないと難しいんだね」
「そうだよ、ではアマゾンの亀君であるね」
ここでお話が戻りました、先生が今水族館を巡っている本来の目的に。
「マタマタ君達のところに行こう」
「ああ、この亀さんだね」
「そうだよね」
沢山の亀さん達が一緒にいるその水槽の中にです、大きな木の葉を思わせる形の首の長い亀さん達がいます。その亀さんがマタマタです。
そのマタマタさんを見てからです、先生は言いました。
「じゃあこれからね」
「亀さん達のコーナーに入って」
「そしてだね」
「マタマタ君とお話をするよ」
こうしてです、先生は実際にそのコーナーの中に亀さん達の飼育係のおじさんと一緒に入ってでした。
そのうえで係の人にです、事情を聞きました。
「実は最近元気がなくて」
「そうみたいですね」
「どういう訳か」
「ではマタマタ君自身からお話を聞いてみます」
「お願いします」
係の人も応えてでした、先生はそのうえでお話を聞きました。
「元気がないそうだけれど」
「最近寝られなくてね」
マタマタさんは自分のところに来てくれた先生に答えました。先生の周りにはコーナーの中の亀さん達が皆集まってきています。
「どうにも」
「寝られないんだ」
「そうなんだ」
「それはまたどうしてかな」
「うん、実はね」
「実は?」
「気になることがあって」
それで、というのです。
「僕はお水の中にいるのが好きだけれど」
「君はそうした種類の亀君だからね」
「そうだけれど妙にね」
「妙に?」
「ここのお池のお水は僕が身体を全部入れるには少し浅くて」
「そこが気になってなんだね」
「あまり眠れないんだ」
これがマタマタさんの不眠症の理由でした。
「だからなんだ」
「そうなんだ、じゃあ」
「うん、もっとお池のお水の深さがあるといいんだけれど」
「僕にとっては深いかな」
「僕は浅いよ」
他の亀さん達もお話します。
「どうにもね」
「僕には丁度いいけれど」
「色々な種類の亀がいるけれど」
「そのそれぞれで好きな深さがあるから」
そのお水の、です。
「だからね」
「一つのお池だけだと」
「皆には合わないんだ」
「極端に気になる訳じゃないけれど」
「それはね」
「多分僕は神経質なんだと思うよ」
マタマタさんは自分の気質のことも言いました。
「けれど気になるから」
「わかったよ、じゃあね」
先生はマタマタさんと他の亀さん達のお話も聞いてでした。係員のおじさんに事情をお話してそのうえでアドバイスをしたのでした。
「お池を区分してお水が浅いところ、深いところを作りましよう」
「亀達それぞれに合わせて」
「はい、そうしましょう」
こうアドバイスしました。
「それでどうでしょうか」
「わかりました、それじゃあ」
係の人も頷いてでした、そのうえで。
亀さん達のお池はそれぞれの亀さんが快適に暮らせる様に幾つかに区分されてど亀さん達も快適に暮らせる様になりました。マタマタさんも安眠を取り戻すことが出来ました。
今回は亀たちの話か。
美姫 「亀によって気に入る水深が違うという事ね」
だな。ドリトル先生のお蔭でこれもあっさりと解決できたな。
美姫 「本当にね。この調子で他の生物たちからも話を聞いていかないとね」
ああ。次はどんな生き物が出てくるのか。
美姫 「次回も待っていますね」
待っています。