『ドリトル先生の水族館』




              第一幕  穏やかな先生

 ドリトル先生は今日もです、学校で教授のお仕事をしてです。
 お家ではくつろぐ日々です、そうした充実した日々です。
 それで晩御飯を食べてです、こう言うのでした。
「何か日本に来てね」
「いいことばかりだよね」
「お仕事はあるしね」
「お給料もしっかり貰って」
「それで色々な本も読めて」
「お家ではくつろげて」
「紅茶も美味しいしね」 
 先生は動物の皆にも笑顔で応えます。
「いいことばかりだよ」
「もうこれ以上はない位にかな」
「先生幸せみたいだね」
「まあ私達にしてみればね」
「まだ最高に幸せじゃないけれど」
「あと一歩必要だね」
「あと一歩なのかな」
 先生は皆の言葉に首を傾げさせて言うのでした。
「僕はもう満足しているけれど」
「いやいや、満足じゃなくて」
「もっとね」
「幸せ求めていいと思うよ」
「あと一歩でもね」
「僕は贅沢はね」
 ここでは無欲さを出した先生でした。
「別にいいから」
「いやいや、もっと少しは」
「欲張ってもいいよ」
「本当にあと一歩ね」
「あと一歩でいいから」
 動物の皆はここで先生にこぞって言いました。
「先生はそこで満足したら駄目だよ」
「もっと踏み込んでね」
「贅沢していいんだよ」
「人生そのものをね」
「そうなのかな。僕はね」
 皆が言うことがわかっていない先生はこう返しました。
「これで充分だと思うよ」
「今の生活で?」
「もういいの?」
「もう欲しいものないの?」
「今の状況で」
「だから。お仕事があってだよ」
 まずはこのことに満足しているのです。
「お給料もちゃんと貰えてこんないいお家があって服も充分にあって」
「それで食べものも美味しい」
「しかも色々な種類の食べものがある」
「お茶も美味しい」
「お酒もだね」
「それでどうして不足なのかな」
 とてもという口調での言葉でした。
「僕は充分幸せだよ。皆もいるし」
「確かに僕達もいるけれど」
「それでもね」
「そこでもう一歩ね」
「欲張ってもいいから」
「そうなのかな。もう望みはないけれどね」
 本当に先生は無欲です、無欲であることはいいことですが。
 それでもです、その無欲さが今は皆にはなのです。
「いや、もっとね」
「もっとないのかな」
「先生には欲が」
「ここまで来たらって」
「貯金もあるよ」
 先生はお金のことかと思いこう答えました。
「充分にね」
「うん、先生お金にもこだわらないしね」
「貯金は今位でいいよね」
「先生は満足だよね」
「そうだよね」
「うん、それに僕は偉くなるつもりもないし」
 こうしたことにもです、先生は興味がありません。権力を手に入れたり尊敬をされる様なことは関心の外なのです。
「格好よくなる気もないよ」
「先生と格好よさは無縁だね」
「私達もそう思うわ」
「紳士ではあってもね」
「温厚な人であって」
 格好よさはというのです。
「また別だよ」
「ダンディな先生とか想像出来ないよ」
「いつも清潔にはしてても」
「格好よさとは縁がないね」
「そうだよ、そうしたつもりもないから」
 こうしたことにも興味がないというのです。
「別にね」
「これ以上は望まない」
「満足してそこで止まる」
「そう言うの」
「やっぱり」
「皆何を言っているのかな」
 やっぱりわかっていない先生でした。
「僕は本当に満足しているから」
「サラさんがいつも言ってることだけれど」
「気付かない?」
「サラさん日本に来たらいつも言ってるじゃない」
「そういうことよ」
「お茶のことかな」
 確かにサラは日本に来た時先生にお茶の話は絶対にします。ご主人が経営している会社のことでもあるからです。
「お茶はいつも飲んでるからね」
「やれやれだね」
「そのことはね」
「もっとね、先生はね」
「欲張ってもいいし」
「あと気付くべきだよ」
「もっとね」
 こう言うのでした、しかしです。
 先生はこの日は気付かないままです、楽しい余暇を過ごして。
 そのうえで、でした。お風呂に入ってその後は日本酒を飲みました。そこでトミーにこんなことを言われました。
「先生、今日のお酒は」
「いいね」
 甚兵衛姿で応える先生でした。
「今日のお酒は」
「それは何よりですね」
「枝豆もいいね」
 肴はこれでした。
「これも美味しいよ」
「先生最近枝豆がお気に入りですね」
「お豆腐とね」 
 今はお豆腐はないけれど、です。
「最近そうしたのを肴に飲んでるね」
「日本酒や白ワインを」
「白ワインは和食にも合うからね」
「よく飲まれていますね」
「そう、お酒を飲むにしてもね」
「健康的にですね」
「そうした方がいいからね」
 だからだというのです。
「こうした枝豆やお豆腐を食べながらね」
「飲むといいのですね」
「そうだよ。じゃあ今日はね」
「お酒を飲んで」
「その後で歯を磨いて寝るよ」
 そうするというのです。
「そしてまた明日だよ」
「明日も研究室に入られて」
「まずはね」
「それで講義も出られて」
「そう、それから」
「お茶を飲まれて」
 十時のティータイムです、十時に講義がある場合はその前か後に楽しんでいます。
「それからですね」
「お昼だよ」
「論文はどうなってますか?」
「今書いている論文だね」
「確か海洋生物の論文を書かれていますね」
「うん、深海魚のね」
 先生はこちらの学問にも通じていてです、論文も書いているのです。
「書いているよ」
「そちらは何時脱稿出来ます?」
「明日にでもね」
 書き終えるというのです。
「今日かなり書いたからね」
「それは何よりですね」
「うん、そういえば深海魚でね」
「何かありますか?」
「リュウグノツカイっていう魚がいるね」
「はい、あの細長い大きなお魚ですね」
「あのお魚について調べているけれど」
 そのリュウグノツカイというお魚もです。
「不思議な魚だね」
「色々と謎が多いですね」
「うん、調べる限り調べたつもりだけれど」
 それでもというのです。
「あまりわからなかったよ」
「そうですか」
「論文にも書いたけれどね」
「よくわからないですか」
「そもそもね」
「そもそも?」
「どうしてあの魚が海面に出て来たら地震とかが起こるのか」
 先生は首を傾げさせつつ言うのでした。
「そのこともわからないから」
「何かそこにもありそうですね」
「深海に行かないとね」
「わからないですか」
「うん、僕も深海に行ったことはないからね」
 世界中を冒険した先生ですがそれでもです。
「だからね」
「そこまでは、ですね」
「わからないよ」
 どうしてもというのです。
「他の深海魚もそうした種類がいるけれどね」
「リュウグウノツカイもそうで」
「まだまだわかっていないんだ」
「だから先生もですね」
「うん、調べているよ」
 実際にというのです。
「研究対象としてね」
「先生は色々調べておられますね」
 トミーは学者としての先生に感嘆の言葉も出しました。
「本当に」
「そうかな」
「いつも論文を書かれていますし」
「日本に来てからとにかく書く様になったね」
「イギリスにおられた頃は違いましたね」
「病院には誰も来なかったしね」
 開業医をしていた頃はです、先生はあの頃を思い出して少し笑いました。
「教授でもなかったから」
「それで、でしたね」
「論文を書くこともね」
「ありませんでしたね」
「今は依頼も来て」
 それで、なのです。
「書いてるよ」
「そうだね」
「うん、そうしてるよ」
 まさにというのです。
「次から次に色々な分野の論文をね」
「書かれていますね」
「そうしてるよ。だからね」
「それで、ですね」
「明日脱稿してね」
 そしてとです、先生はトミーにもお酒を勧めつつお話します。
「次の論文にもかかるよ」
「そうされますか」
「次はマナティーについての論文だよ」
 同じ海の生きものです、マナティーは哺乳類ですが。
「それを書くからね」
「マナティーですか」
「それについての論文をね」
 書くというのです。
「そうするから」
「一つ終わればまた一つですね」
「論文を書いていくよ、学者として」
「わかりました」
 にこりと頷いてです、トミーは先生に笑顔で応えました。そしてです。
 先生達は次の日大学のご自身の研究室に入るとすぐに論文の執筆にかかってです、脱稿しました。その先生を見てです。
 トートーはしみじみとしてです、こんなことを言いました。
「一つ終わったね」
「うん、今ね」
「そしてまただね」
「書くよ」
 こうトートーに言うのでした。
「今度はマナティーについてね」
「そういえばこの学園の博物館ってマナティーもいたね」
 ガブガブがこのことについて言いました。
「あそこには」
「うん、そうだよ」
「ジュゴンもいてね」
「海豚もいるよ」
 この生きものもというのです。
「アシカもね」
「本当に沢山の生きものがいる水族館だね」
 ジップも言います。
「あそこは」
「うん、動物園と植物園もそうだけれどね」
「水族館もね」
「色々な海や川の生きものがいるよ」
「アマゾンの生きものもいるわね」
 ここでこう言ったダブダブでした。
「あそこには」
「うん、鰐やアナコンダは動物園にいるけれどね」
「お魚とかはね」
「水族館にいるよ」
「あの派手な色の蛙もね」
「ヤドクガエルだね」
「あの蛙達を食べたら大変よ」
 ポリネシアはその蛙達には警告する様に言いました。
「物凄く強い毒があるから」
「あの蛙達は見ているやけにした方がいいよ」 
 先生もヤドクガエル達についてはこう言います。
「そうした蛙もいるからね」
「わかったわ、奇麗だけれどね」
「その奇麗さを楽しむだけにしようね」
「ううん、何ていうかね」
 チーチーが言うには。
「アマゾンも本当に色々な生きものがいるね」
「だから僕も何度かアマゾンに行ってるけれど」
 先生が言うには。
「何度見ても見たりないよ」
「調べ足りないね」
「あまりにも凄過ぎてね」
 そしてというのです。
 そのうえでなのでした、さらに。
 ホワイティはアマゾンに行った時のことを思い出して先生に言いました。
「鯰とかも多かったね」
「うん、アマゾンには大きな鯰もいてね」
「ピラルクと同じだけね」
「大きい種類がいるね」
「船の中から見て驚いたよ」 
 ホワイティもです。
「こんな大きい鯰本当にいるんだって」
「僕も最初この目で見た時は驚いたよ」
「人間の子供も一飲みね」
「そうなってもおかしくないね」
「それとデンキウナギ」
 老馬はこの種類のお魚について言及しました。
「これも凄いお魚よね」
「想像を絶する生きものだね」
「身体から電気を出すんだからね」
「そうしたお魚もいるから」
 だからだとです、老馬は先生にお話しました。
「だからアマゾンは凄いよ」
「あのお魚も水族館にいるよね」
「そうそう」
 チープサイドの家族は先生の机の上に揃っていてです、そこでお話をしています。今日も顔zく皆で仲良くそこにいます。
「アマゾンの鯰もね」
「あとピラニアとかアロワナも」
「一杯いるわね」
「本当にね」
「あの水族館は世界屈指の水族館だよ」
 先生は目を細めさせてチープサイドの家族にも言いました。
「動物園や植物園もそうだけれど」
「世界屈指の水族館」
「そこにいる生きものの数や種類が」
「そうした場所なんだね」
「あそこは」
「だから僕もよく行ってるし」
 そして学んでいるのです、そこにいる生きもの達を実際に見て。
「その都度何かと得ているよ」
「行く度に何かを得られる」
「そうした場所でもあるんだね」
 最後に言ったのはオシツオサレツでした、今日もその二つの頭でお話します。
「あの水族館は」
「先生にとっても」
「ただ楽しいだけじゃなくて」
「得られる場所なんだね」
「そうなんだ」
 先生は目を細めさせてオシツオサレツに答えました。
「あそこはね」
「だから時間があると度々通って」
「勉強しているんだね」
「そうなんだよ。だから今日も時間がありそうだし」
 それで、というのです。
「行って来るよ」
「それじゃあ僕達もね」
「一緒に行ってね」 
「学問をしよう」
「学問はいいものだよ」
 先生がいつも思っていることです。
「そこには無限の夢があるんだ」
「本を読んで知識を得るだけじゃない」
「夢もあるんだね」
「そこには」
「そうだよ。聖書にしてもね」
 神学もというのです、キリスト教の。
「そこにおられる神について学ぶことでね」
「世の中を知ることが出来る」
「人間そのものをだね」
「だからいいんだよね」
「神学についても」
「そして他の宗教を学ぶこともいいんだ」
 先生は最近キリスト教以外の宗教も学んでいます。
「仏教やヒンズー教、イスラム教もね」
「そういえば先生この前奈良に行ったよね」
「奈良市に天理市ってね」
「それで天理教の神殿にも行ったね」
「僕達は待っていたけれどね」
 天理教の教会本部の前で、です。皆はその教会本部を神殿と思っているのです。
「それでそこに行ってね」
「参拝もしたよね」
「それで天理教の博物館に行ったりね」
「そうしたこともしてたね」
「あの時もいいことを学べたよ」
 先生は天理市に行った時のことも笑顔でお話します。
「とてもね」
「天理教のことも」
「それも学んで」
「それでなのね」
「満足してるんだね」
「日本は色々な宗教が平和に共存しているから」
 先生はこのことからも笑顔でお話します。
「宗教を学ぶにおいてもね」
「いい場所なんだね」
「この国はそうなんだね」
「そうだよ、だからね」
 それで、というのです。
「神学も学びやすいよ」
「神学はあらゆる学問の基だったね」
 ここでジップが言いました。
「そう言われているね」
「うん、だからね」
 先生も応えます。
「僕も学んでるんだ」
「神学もだね」
「キリスト教のこともね、ただ」
 ここでこうも言った先生でした。
「日本ではキリスト教というか宗教学はね」
「全ての学問の基じゃない」
「そこは違うね」
「欧州とはね」
「そこは違うよね」
「うん、そうなんだよね」
 そこはというのです。
「仏教にしてもね」
「そこまで重要じゃないんだね」
「神道にしても」
「そこは違って」
「学問の基じゃないんだ」
「あらゆる学問の」
「学問の一つなんだ」
 あくまでその位置に留まっているというのです。
「日本の宗教学は」
「仏教も神道も」
「キリスト教にしても」
「そうなんだね」
「欧州とは本当に違うんだね」
「その国によって学問のあり方も違っているんだ」
 イギリスと欧州で、というのです。
「僕もこのことを日本に来てから実感したよ」
「頭でわかっていても」
「身を以てわかったのは」
「日本に来てから」
「その時に」
「はじめてなんだ」
「うん、わかったんだ」 
 それこそというのです。
「それまで神学からはじまるって思ってたけれど」
「日本では違っていて」
「それぞれの学問で独立してるのかな」
「神学が幹じゃなくて」
「それぞれが木なのかな」
「うん、色々派生していて影響し合ってるけれど」
 それでもというのです。
「独立しているところはあるかな」
「日本の学問は」
「そうしたところがあるんだ」
「それぞれが木で」
「立っているのかな」
「欧州は神学っていう大樹があって」
 本当にそこからはじまっているとです、先生は考えるお顔で動物の皆にお話します。
「そしてね」
「幹として他の学問がある」
「生物学にしてもだよね」
「神学からだね」
「派生してるね」
「そうだよ」
 その通りだというのです。
「それが欧州の学問の形かな」
「それで日本はそれぞれなんだ」
「それぞれの学問が独立していて一本一本の木」
「そうなってるんだ」
「日本の学問は」
「その違いについてもね」
 それこそというのです。
「書こうかな」
「よし、じゃあ」
「また論文の題材が出来たね」
「そっちも」
「そうだね、日本と欧州の学問の違いだね」
 まさにそのことがというのです。
「いい論文の題材だよ」
「そうだよね、先生今色々書いてるけれど」
「様々な分野の論文をね」
「だからね、宗教もだね」
「書くんだね」
「そのそれぞれの違いも」
「そうするよ、今書く予定の論文を全部書き終えてからね」
 先生は笑顔で答えました。
「その論文もね」
「というか先生日本に来てから凄く論文書いてるよね」
「それこそ毎日」
「講義もやってね」
「物凄く忙しくない?」
「疲れてない?」
「ううん、忙しいことは忙しいかな」 
 先生は皆に少し考えるお顔になって答えました。
「言われてみれば」
「そうだよね」
「あまり疲れない様にね」
「疲れが溜まると後が怖いから」
「過労には気をつけてね」
「いや、疲れてはいないんだ」
 それはないというのです、確かに忙しいですが。
「それでもね」
「そうなんだ」
「疲れてはいないんだ」
「忙しいのに」
「よく寝てよく食べてしかもお風呂で疲れも取っているからね」 
 だからだというのです、先生は疲れてはいないというのです。
「いつも身体の調子はいいんだ」
「そういえば顔色いいね」
「朝も気持ちよく起きてるし」
「気分もリラックスしてて」
「ストレスもないみたいだね」
「毎日美味しいお茶も飲めるからね」
 実際にミルクティーも飲む先生でした。
「そちらでも満足してるよ」
「そうなんだね」
「じゃあ先生毎日充実しててだね」
「疲れてはいないんだ」
「ストレスも感じてなくて」
「そうだよ、やっぱりよく寝てよく食べる」
 忙しい中でもそうしていればというのです。
「そうしていれば問題ないよ」
「そういうものなんだ」
「まあ先生が疲れていないならね」
「僕達もそれでいいよ」
「やっぱり疲れていないのが一番だよ」
「ストレスがないことがね」
「そうだね、そのお風呂にしてもね」
 先にお話に出したそちらはといいますと。
「毎日家のお風呂に入ってるね」
「イギリスにいた時はシャワーだったけれど」
「今ではお風呂だよね」
「夏でもね」
「入ってるよね」
「うん、イギリスのバスルームはトイレと一緒になっているね」
 おトイレがあってその横にシャワー付きの浴槽があるのです。
「欧州のバスルーム自体がそうだけれど」
「イギリスもそうだよね」
「あとイギリスのお水は硬水だしね」
「そこも違うよね」
「うん、けれど日本のお風呂は大抵おトイレとは別のお部屋になっていてね」
 このことが違うのです、まず。
「それでお水も軟水で」
「入っていても気持ちよくて」
「硬水よりも」
「だから先生もなんだ」
「お風呂に入る楽しみを知ったんだ」
「うん、湯舟に入るとね」
 それこそというのです。
「もう疲れがゆっくりと、確かに取れて」
「気持ちいいんだよね、確かに」
「僕達も入るしね、お風呂」
「あれ気持ちいいよね」
「とてもね」
「うん、それにね」
 しかもというのです。
「お風呂に入ると気持ちもリラックスするから」
「余計にいいよね」
「お風呂はね」
「そうだよね」
「うん、特に温泉がいいね」
 先生はにこにことしたままお話しました。
「出張の時温泉があったらいつも入ってるけれど」
「お風呂の中でもなんだ」
「温泉が一番好きなんだ」
「先生の場合は」
「そうなんだね」
「お風呂はいいね」
 またこう言った先生でした。
「温泉は一番で。あとサウナもね」
「ああ、そっちもなんだ」
「先生好きなんだ」
「熱いお部屋の中で汗をかくことも」
「それもいいんだね」
「身体の中の悪いものが出てね」
 だからいいというのです。
「お風呂は毎日入らないとね」
「シャワーよりもだね」
「お風呂の方がいいんだね」
「そっちの方が」
「リラックスも出来て」
「そう、だからね」
 疲れてもいないというのです。
「肩も凝らないしね」
「忙してもなんだ」
「よく寝てよく食べてお茶も楽しんでいてお風呂も入って」
「そうした色々なことがあるから」
「毎日充実しているよ」
 それが今の先生なのです。
「本当にね」
「じゃあ忙しいのがかえってかな」
 ガブガブは首を傾げさせて言いました。
「先生にとっていいのかな」
「うん、そうかも知れないね」
 先生は微笑んでガブガブの言葉に頷きました。
「忙しいけれど心地よい忙しさだしね」
「先生は学者さんだから」
 チーチーはこのことに理由を見出しています。
「学問をすること自体が楽しいしね」
「論文を書くこともね」
 それもというのです。
「学者のお仕事だからね」
「お仕事でも自分の好きなものが出来たら幸せっていうけれど」
 こう言ったのはポリネシアでした。
「そう思うと先生はその時点でもう恵まれてるわね」
「それで忙しくても疲れない」
 ジップも言います。
「それもあるかな」
「どっちにしても先生よく寝てよく食べてるわ」
 ダブダブはこのことをよしとしています。
「健康診断も受けてるしね」
「健康診断では何て言われてるのかな」
 老馬はこのことを尋ねました。
「身体に悪いところとかない?」
「少し肥満してるとは言われてるけれどね」
 先生は老馬の問いに正直に答えました。
「けれどね」
「他に悪い病気はないんだ」
「至って健康、腰も肩も痛めてなくて血も奇麗だって言われたよ」
「それは何よりだね」
 トートーは先生の健康診断の結果を聞いて微笑みました。
「健康なら」
「というか太ってることは」
 ホワイティはこのことが少し気になりました。
「気をつけないとね」
「というか先生ちょっと」
「日本に来てから太ったかな」
 オシツオサレツは先生のそのお身体をじっと見ています、するとイギリスにいた時よりもどうにもな感じに見えました。
「何かね」
「少しだけにしても」
「先生、それ以上太ると」
「よくないわよ」 
 チープサイドの家族もオシツオサレツの背中にとまったうえで言います。
「只でさえ太ってるのに」
「それ以上太ったら」
「今は何の病気もなくても」
「よくないわよ」
「腰や膝にも負担がかかるし」
「気をつけてね」
「確かにね。僕は運動もしないしね」
 お散歩をして老馬の背中に乗って家から学園まで行き来していてもです。
「そうしたことは自分で注意しないと」
「本当に病気になるから」
「糖尿病とかね」
「先生甘いもの好きだし」
「あとお酒も飲むから」
 チープサイドの家族皆で先生に口々に言います。
「頼むよ、そこは」
「先生にはずっと健康でいて欲しいから」
「例え今は問題なくてもね」
「気をつけてね」
「わかってるよ、僕もお医者さんだしね」
 それでというのです、先生も。
「養生はしないとね」
「だからトミーも身体にいいものばかり作ってるんだよ」
「ヘルシーな和食が多いし」
「お魚とかお豆腐とかお野菜のね」
 皆で先生に言います。
「そういうのが多くて」
「イギリスにいた時よりずっとヘルシーで」
「お茶のお砂糖だって変えて」
「しっかりしてるんだよ」
「そうなんだよね、確かにトミーも気を使ってくれてるね」
 先生の健康にです。
「だから僕は食事でも健康になってるんだね」
「そうだよ、先生お料理出来ないから」
「お料理というか家事全般が」
「本当にそうしたところは駄目なんだから」
「私達とトミーがいないと」
 それこそなのです、先生は。
「だからね」
「僕達とトミーを気をつけてるけれど」
「先生ご自身もね」
「そこは気をつけてね」
「そうしてるよ、自分でもね」
 またこう答えた先生でした。
「お昼御飯とかね」
「それでお昼は何食べるの?」
「今日は」
「鯖味噌定食にするよ」
 こちらのお料理をというのです。
「それにね」
「ああ、日本のお料理だよね」
「先生最近そのお料理よく食べるよね」
「うん、鯖って美味しいね」
 先生はにこりと笑って皆にこう返しました。
「だからね」
「今日はそれなんだね」
「鯖味噌なんだね」
「そのつもりだよ。この学園の食堂は美味しいし」
 それにというのです。
「ボリュームもあるしね」
「沢山食べるのはいいけれどね」
「栄養バランスには気をつけてね」
「あとカロリーは過度に摂らない」
「糖分や塩分もね」
 そのどちらもというのです。
「色々と気をつけて」
「食べてね」
「僕達がいない時も」
「そうしてね」
「そうしているつもりだよ。じゃあこのお茶を飲んだら」 
 先生は今飲んでいるミルクティーの味を楽しみつつ述べました。
「講義に行って来るよ」
「お仕事だね」
「そっちも頑張ってね」
「論文を書く方だけじゃなくて」
「そちらもね」
「そうしてくるよ。さて」
 ここまでお話してでした、そのうえで。
 先生はお茶を飲んで実際に講義に出ました、そしてお昼の鯖味噌定食を食べ終えてからご自身の研究室に戻ってです。
 また論文を書きはじめました、今度の論文はといいますと。
「英語の論文だよ」
「英語自体の?」
「それの?」
「うん、現代英語と十六世紀の英語の比較をね」
 そのことについての論文だとです、動物の皆に答えます。
「テーマにしているんだ」
「今度は英語なんだ」
「つまり語学だね」
「先生語学にも興味があるから」
「だから書いてるんだね」
「そうなんだ、今度はね」
 パソコンのワードパッドに文章を書き込みながらです、先生は動物の皆に答えます。
「それを書いているよ。それとね」
「それと?」
「それとっていうと」
「まだあるの?」
「うん、今回は英語で書いているけれど」
 見ればそうでした、画面に書き込まれている文字はアルファベットです。そして単語や文章も英語のものです。
「英語も使わないとね」
「忘れるんだ」
「先生最近ずっと日本語の文章書いてるけれど」
「日本語ばかり使ってると」
「英語を忘れてしまうんだ」
「そうなるんだ、他の言葉も同じでね」
 英語だけでなく、というのです。
「使っていないと忘れるんだ」
「書いたり喋ったりしていないと」
「どうしてもなんだ」
「忘れてしまうんだ」
「そうなんだ、頭の中で考える時に使うこともしないと」
 書いたり喋ったりする以外にもです。
「忘れるんだ」
「先生ずっと英語で考えてたよね」
「イギリスに生まれ育ったし」
「それで英語で考えてたんだね」
「日本に来るまで」
「うん、今は日本語で考えることの方が多いよ」
 そうなっているというのです、今の先生は。
「日本に来て凄く馴染んだせいでね」
「けれど時々でもだね」
「英語でものを考えないと」
「英語を忘れてしまう」
「そうなるんだ」
「うん、あと同じことを考えても」
 ここで先生は皆にこうしたこともお話しました。
「考える時に使う言葉が違うとね」
「日本語を使う場合と英語を使う場合」
「それでなんだ」
「同じ欧州の言葉でもフランス語やドイツ語、イタリア語でもそうだし」
 さらにお話する先生でした。
「中国語でもそうだよ」
「ええと、同じことを考えていても」
「それでも何かあるの?」
「考える時に使う言葉が違うと」
「それで」
「結論が違ったりするんだ」
 導き出されるそれがです。
「僕が同じことを考えてもね」
「へえ、先生が考えても?」
「同じ人が」
「それでも考える時に使う言葉が違うと」
「出る結論も違ったりするんだ」
「そうなんだ」
「そうなったりするんだよ」
 そうなってしまうこともです、先生は皆にお話しました。
「不思議だよね」
「うん、かなりね」
「同じことを同じ人が考えてもなんだ」
「出る答えが違ったりするんだ」
「考える時に使う言葉が違うと」
「そうなるよ。文字や単語、文章が違うからね」
 それぞれの言語で、です。
「そうなってしまうんだ」
「じゃあ英語を使う時の先生と日本語を使う時の先生は違うの?」
「先生は色々な言葉喋れるし書けるけれど」
「僕達の言葉もね」
「それが出来る人だけれど」
「いや、僕は僕だよ」
 先生は先生だというのです。
「このことは変わらないよ」
「先生であることはなんだ」
「一緒なのね」
「そうだよ、また言うけれど」
 先生は動物の皆に温和な笑顔で言いました。
「僕は僕だから」
「そのことは変わらないんだね」
「出される結論は違っていても」
「それでもなんだ」
「先生は先生なんだ」
「そうだよ、使う言葉や出す結論は違っていても」
 それでもというのです。
「僕は僕であることは変わらないよ」
「そういうものなんだね」
「そこは」
「一緒なんだ」
「変わらないんだね」
「僕であることは一緒だからね」
 先生の温和な笑顔はそのままでした。
「安心してくれてね」
「うん、それじゃあね」
「そのことは安心するね」
「先生は先生だってことは」
「そういうことでね、じゃあ今回はこの論文を書いて」
 そしてというのです、実際に書きながら。
「午後の講義も出て書き終わったらね」
「あれっ、一日で書けるの」
「そうなの」
「うん、調子がいいから」 
 書くそれがというのです、つまり筆が進んでいるのです。
「今日中に終われそうだよ」
「そういえば先生元々書くのは速いよね」
「読むこともだけれど」
「そうしたことはね」
「速いよね」
「だからね、今日中に書けそうだよ」
 先生は確かにスポーツはしませんし不得意です、ですがものを書いたり本を読むことはかなり速いのです。
 それで今日は特にというのです。
「一気にいけそうだね」
「それはいいことだね」
「やっぱり書くことも速い方がいいよね」
「特に先生みたいにいつも書いてる人はね」
「速い方がいいよね」
「そうだよ、まあ書いていると普通に速くなるよ」
 そうなるというのです。
「大抵の人はそうだと思うよ」
「じゃあ先生は元々速かったから」
「それが余計に速くなったのね」
「本を読むことも」
「そちらも」
「そうだろうね、とにかく書いたら」
 英語の論文をというのです。
「家に帰るよ」
「夕方までに終わるのかな」 
 トートーがその時間のことを尋ねました。
「大体五時には」
「うん、終わるよ」
 その頃にはとです、先生はトートーに微笑んで答えました。
「その頃にはね」
「じゃあその時まで待っていればいいね」
「うん、それじゃあね」
「さて、講義まで頑張って書いて」
 書くそのスピードが速くなってでした、先生は。
 講義まで書いてでした、講義から戻ってまた書いてです。
 そしてです、五時丁度にでした。先生はワードパッドを記録してから言いました。
「終わったよ」
「あっ、丁度だね」
「五時になったね」
「それじゃあね」
「お家に帰るんだね」
「時間通りに終わってよかったよ」
 先生は皆と約束した時間通りになったことに満足していました。
「記録もしたし」
「パソコンの電源を落として」
「お部屋の冷房も切ってね」
「それで帰ろう」
「照明も消してね」
「うん、戸締りとかもしてね」
 そうした帰る用意をです。
「帰ろうね」
「これからね」
 動物の皆は先生と一緒に上機嫌で帰りました、その後はお家でトミーが作ったお料理もお風呂も楽しんでぐっすりと寝てです。満足して次の日に挑むのでした。



今回は今の所は特に問題もなさそうだな。
美姫 「みたいね。先生の日常って所かしら」
一体どうなるんだろうか。
美姫 「次回も待っていますね」
待っています。



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