『ドリトル先生と森の狼達』
第八幕 ニホンオオカミの群れ
狼さんに群れに案内してもらう時にです、先生はしみじみとして言いました。
「夢みたいだよ」
「僕達の群れを見られることが?」
「そしてお話が出来ることがね」
まさにこのことがというのです。
「夢みたいだよ」
「いなくなったと思っていたからだね」
「そうだよ」
まさにその通りだというのです。
「いや、本当にね」
「まあ僕もそこまで喜んでくれているのなら」
「嬉しいかな」
「冥利に尽きるよ」
そうだとです、狼さんは先生に答えました。
「ニホンオオカミとしてね」
「ニホンオカミが生きていて」
絶滅していなくてです。
「そして群れを見てお話が出来るなんて」
「本当にそうですよね」
「夢みたいだっていったらそうだよね」
トミーと王子も言います。
「このことは」
「全くだよ、狼はこれまで何度も見たけれど」
「野生の狼は少ないし」
「そう、案外ね」
「数が減ってきているんだよね」
「欧州でも北米でも」
「アジアでもだね」
二人もこのことは知っています。
「野生動物全体の問題でもあるけれど」
「肉食の大型動物は特にね」
「そして狼はその中でも」
「かなり深刻なレベルにあるね」
「そう、ニホンオオカミのこともね」
先生もお話しました、そのことについて。
「そのうちの一環でね」
「絶滅したと思われていた」
「そうなんですね」
「そうだよ、野生の大型の肉食動物はどれもね」
それこそというのです。
「個体数の減少が深刻なんだ」
「それは日本でもなんだ」
「じゃあ熊さんとかも?」
「減ってきてる?」
「そうなのかな」
「うん、そうだよ」
先生は曇った、悲しいお顔になって動物の皆にも応えました。
「ツキノワグマ、そして羆もね」
「どっちもなんだ」
「熊さんも数が減ってきているんだ」
「そうなんだ、特に北海道の羆はね」
そちらの熊さんはといいますと。
「その数の減少が深刻だよ」
「ううん、そうなんだ」
「物凄く怖いけれど」
「その数が減っていて」
「深刻な位なんだ」
「絶滅も心配される位にね」
まさにそのレベルでというのです。
「減っているんだ」
「けれど確か」
王子がここで先生に尋ねました。
「羆の害が」
「うん、あったね」
「開拓村も襲われたんだよね」
「それで駆除もされたりしたよ」
つまり狩られたというのです。
「けれどその駆除が過ぎてしかも人がどんどん北海道に移住して」
「それでなんだね」
「そう、羆の数も減ったんだ」
「そしてここでもだね」
「本州、四国、九州でもね」
そうした場所でもというのです。
「ツキノワグマも減っているんだ」
「そういえばそうだね」
「私達まだ熊さんに会っていないわね」
「他の色々な動物に会っててね」
「狼さんにもこうしてお会いしてるけれど」
動物の皆もここでお話します。
「けれどね」
「そうだよね、熊さんはね」
「まだだね」
「これからお会いすると思うけれど」
「数が少ないのね」
「そうだよ、元々大型の肉食動物は個体数が少ないんだ」
先生は皆にこのこともお話しました。
「熱帯とかでもライオンや虎はね」
「あっ、確かに」
「これまでアフリカとかにも行ったけれど」
「案外ライオンや虎は少なかったわね」
「草食動物よりも会わなかったね」
「ずっと会う機会少なかったわ」
所謂猛獣と言われている生きものはそうでした。
そしてです、そうしたことを皆でお話してです。狼さんも言うのでした。
「そういえば僕達もね」
「群れは一つだね」
「うん、そうだよ」
その通りだとです、狼さんは先生に答えました。
「僕達だけしかいないよ、少なくとも僕が知る限りはね」
「そうなんだね、まあ他にも群れはあると思うけれど」
「その数も少ないだろうね」
「百匹いるかな」
全体でというのです。
「この辺りにいるニホンオカミは」
「百、少ないですね」
トミーはその数を聞いて思わず言いました。
「本当にほんの少しですね」
「だから絶滅したと思われていたんだよ」
「そうなんですね」
「だからこそさっきお話したけれど」
「はい、狼さん達のことを公表して」
「それが厄介なことにならないことを考えているんだ」
そうだというのです。
「僕としてもね」
「そういうことですね」
「そうなんだ、本当にね」
かなり切実に言う先生でした。
「個体数が少ないから余計にね」
「本当にその通りですね」
「うん、どうしたものかな」
先生はまたこのことについてお話するのでした。
「このことについては」
「じっくり考えるべきことですね」
「そう、さもないと取り返しのつかないことになるからね」
「密猟者に質の悪い学者さんに」
「マスコミもね、特にね」
「日本のマスコミはそうですね」
「そう、日本のマスコミは酷いよ」
先生が見てもうんざりする位にです。
「あちこちでやりたい放題して批判すれば嘘も書いたり言って」
「ならず者みたいですね」
「そう、ならず者だから」
「ここに入って欲しくないですね」
「それでなんだ、いや本当に」
ここまで考えているからなのです。
「あの人達が一番問題だよ」
「そこを何とかするかもですね」
「問題だよ、ニホンオオカミ君達はいたんだ」
絶滅していなくてです。
「もう二度といなくなるなんてことはあってはならないから」
「そこは注意しないといけないんですね」
「日本のマスコミは自分のしたことに絶対に責任を取らない」
先生が苦いお顔で指摘したことです。
「そのうえでやりたい放題をするから」
「何でそんに酷いのかな」
「日本のマスコミの人達って」
「イギリスのパパラッチも酷いけれど」
動物の皆はかつて先生と一緒に住んでいた国の事情を思い出しました。
「けれどね」
「日本のマスコミって全体がパパラッチ?」
「もっと酷い?」
「そうかもね」
「日本はいい国だけれど」
「マスコミは最低なんだね」
「うん、世界のマスコミの中でもね」
それこそとです、先生は動物の皆にお話しました。
「最低最悪かもね」
「その最低最悪の人をどうするか」
「それが問題だね」
「ここに入るにしても」
「どうセーブしていくか」
「厄介な問題だね」
動物の皆も先生と一緒になって考えるのでした。
ですがここではです、結論は出なくて。
狼さんは皆を先導してです、遂に言いました。
「着いたよ」
「あっ、じゃあここにだね」
「狼さん達の群れがいるんだね」
王子とトミーは狼さんの言葉に笑顔で応えました。
「待ちに待ったっていうか」
「いよいよ会えるんだね」
「ううん、何か凄い特別扱いだけれど」
狼さんにとってはです、それで微妙なお顔にもなります。
「別にね」
「まあ僕達にとってはだから」
「このことはね」
「ニホンオオカミの群れと会うなんて」
「想像も出来なかったからね」
「絶滅したと思っていたらいたんだよ」
先生はその狼さんに笑顔でお話しました。
「それじゃあ想像出来る筈がないよ」
「そういうものなんだね」
「僕達からしみればね。それじゃあね」
「これから皆呼ぶね」
こうしてです、狼さんはです、まずはしゃがんで。
そして遠吠えの姿勢で小さく吠えるとです、周りの木陰から次々とです。
他の狼さん達が出て来てそしてでした。
「おや、人じゃないかい?」
「ううん、僕達に何か用かな」
「あまり人に会いたくないけれど」
狼さん達はまずはでした。
先生達を見てです、複雑なお顔になりました。ですが。
先生に気付いてです、そして言うのでした。
「あれっ、ひょっとして」
「あの太った人ってまさか」
「ドリトル先生?」
「あの噂の」
「日本に来ているって聞いたけれど」
「まさか」
「うん、僕がドリトルだよ」
先生もです、狼さん達に穏やかな笑顔で挨拶を返しました。
「何か有名みたいだけれど」
「ああ、やっぱりドリトル先生なんだ」
「太ってお肌が白い人って聞いたけれど」
「実際に白いね」
「そして太ってるね」
「噂通りだね」
「しかも僕達の言葉も喋られるし」
狼語をです、動物の言葉はそれぞれありますが狼さん達にも独自の言語があるのです。それが狼語なのです。
普通人は狼語を知りませんし使うことも理解することも出来ません、ですが。
「今こうして普通にお話が出来ている」
「このこと自体がね」
「ドリトル先生っていう証だね」
「動物の言葉を喋ることが出来る」
「僕達の友達であるドリトル先生」
「その何よりの証拠だね」
「それに」
しかもです、狼さん達はです。
ここで動物の皆も見てです、こうも言うのでした。
「うん、このことも噂通りだね」
「先生の周りには皆もいるね」
「動物の皆もちゃんといて」
「このことも確かな証拠だね」
「犬と豚、オウムに梟に猿、家鴨」
「鼠と馬、それに雀」
「そして、ええと」
最後の一匹については。狼さん達はよくわからなくてお互いにお顔を見合わせてです。そのうえでお話をしました。
「誰だったかな」
「噂には聞いてたけれど」
「前後に頭がある生きもの」
「ええと、オサレオシツツ?」
「オシャレオスキじゃないの?」
「オシツオサレツだよ」
「僕の名前はオシツオサレツだよ」
名前が出ない狼さん達にです、オシツオサレツが自分で名乗りました。
「覚えていてね」
「この名前を」
「ああ、オシツオサレツさんなんだ」
「名前が出てこなかったよ」
「前後に頭がある不思議な生きもの」
「いや、君も一緒だよね」
「そうだよ、僕も先生の友達だからね」
「こうして今も一緒にいるんだ」
オシツオサレツはその前後にある頭で狼さんにお話しました。
「宜しくね」
「以後お見知り置きを」
「いやいや、こちらこそ」
「先生のお友達なら歓迎するよ」
「動物達の友達先生のお友達ならね」
「こちらこそね」
「そして」
今度はです、狼さん達は王子とトミーにもお声をかけました。
「王子とトミーさん」
「先生の人間のお友達だね」
「お二人のことも聞いてるよ」
「先生の昔からのお友達だよね」
「そうだよね」
「うん、そうだよ」
「僕達のこともご存知で何よりだよ」
二人もです、狼さん達に笑顔で応えました。
「こうしてニホンオオカミさん達に会えた」
「嬉しいよ」
「何かね、僕達ってね」
最初の狼さんが応えました。
「凄く珍しい生きものみたいなんだよね」
「そうかな、別にね」
「僕達は僕達だよね」
「ずっとここにいるしね」
「この森にね」
「いや、君達はね」
先生は自分達でお話している狼さん達にこのことを言いました。
「実は絶滅、いなくなったって思われていたんだ」
「えっ、そうなんだ」
「僕達いなくなったって思われてたんだ」
「それはまたね」
「意外っていうか」
「そんな風に思われていたんだ」
狼さん達は先生の今のお話を聞いてでした、またしてもお顔を向かい合わせてです。怪訝なお顔で言うのでした。
「何ていうかね」
「ずっとここにいるのにいなくなったって思われるって」
「不思議な気分だね」
「僕達別に幻じゃないんだから」
「この森に生きているから」
「代々ね」
「それでも僕達人間はそう思っていたんだ」
そうだったというのです。
「実は」
「ううん、そうなんだ」
「僕達がいなくなっていたって」
「そんな風に思われていたんだ」
「そんなこともあるんだね」
「というか人間はそう思っていたんだ」
狼さん達にとっては実感が湧かないことです、ですが先生は人間の世界でニホンオオカミがどう思われていたのかをお話しました。
そのお話を全部聞いてからです、狼さん達は先生に答えました。
「ここは昔から人は滅多に来ないし」
「狩られるなんてまずないよ」
「ジステンバーっていう病気もあったんだ」
「そんな病気が」
「ニホンオオカミはジステンバーで絶滅したと言われているんだ」
先生は狼さん達にこの説もお話したのです。
「狩りよりもね」
「僕達は病気でいなくなった」
「そうだったんだ」
「いや、本当にね」
「意外っていうか」
「これまた想像もしていなかったよ」
「まあそういうことで」
またお話する先生でした。
「君達がいるっていうことが僕達にとっては凄いことなんだ」
「そうなんだね」
「僕達には実感のないことでも」
「人にとってはそうなんだ」
「この森の外では」
「そうなんだ、それで君達がいるということを」
先生は狼さん達にまた言いました。
「どうするかだけれど」
「まあ別にね」
「どうでもいい?」
「そうだよね」
「いるってことがわかっても」
「外にね」
これが狼さん達の返事でした。
「変な人が来ないなら」
「もうそれでね」
「まあここまで普通は来ないんじゃ」
「人はね」
「いやいや、用心は必要だよ」
先生は狼さん達にこのこともお話しました。
「絶対にね」
「ここに変な人が来る」
「そうかも知れないんだ」
「ここかなり深いけれど」
「こんなところまで人が来るんだ」
「そうなんだ」
「実際に僕達が今来ているね」
先生は先生達ご自身のこともお話しました。
「そうだね」
「あっ、確かに」
「言われてみれば」
「先生が来てるし」
「皆もね」
「それじゃあやっぱり」
「人も来るんだ」
「ここまで」
「来ようと思えばね、それが問題なんだよ」
先生も真剣に考えるまでにです。
「君達がおかしな人達に会わない、そしてこの場所を荒らされない様にするにはどうするかなんだよ」
「そこまで僕達のこと考えてくれるって」
「先生て凄いね」
「噂以上にいい人だね」
「僕達の味方って聞いてたけれど」
狼さん達はまた先生のお話を聞いてお互いの中でお話しました。
「実際にね」
「本当に僕達の味方なんだ」
「そうであってくれているんだ」
「そのつもりだよ、僕としてもね」
先生にしてもと答えるのでした。
「君達のことは真剣に何晏替えさせてもらっているつもりで」
「それでなんだ」
「今も考えてくれているんだ」
「ここに変な人が来ない様に」
「ちゃんと」
「さて、どうしたものかな」
真剣に考えながら言う先生でした。
「一体」
「そう言われてもね」
「僕達外の世界のことはあまり知らないし」
「果たしてどんなことになるか」
「たまに狩人の人は見るけれど」
「本当にたまだしね」
人を見ること自体がというのだ。
「何か何代か前は山に住んでいる人もいたらしいね」
「そうそう、ここにもね」
「あの人達まだいるのかな」
「いるんじゃないの?この辺りに」
「ひょっとしたらね」
「あれっ、山窩の人達もいるのかな」
先生は狼さん達の山に住んでいる人という言葉から察しました。流石に学問のことになると鋭いものがあります。
「ここに」
「僕達は見ないけれどね」
「昔はそうした人もいたみたいだよ」
「ここは山ばかりだからね」
「僕達の縄張り以外の場所はあまり知らないけれど」
「今はどうかな」
「いるんじゃない?」
山窩の人達についてはです、狼さん達は疑問形でした。
「まあその人達のことは知らないけれど」
「縄張りの中のことは詳しいしね、僕達も」
「そうそう、住んで暮らしているし」
「だからね」
それ故にというのです。
「この辺りのことなら何でもね」
「先生も聞いてよ」
「遠慮なくお話させてもらうから」
「何でもね」
「それじゃあ君達のことも」
先生も狼さん達に応えます。
「教えてくれるかな」
「それじゃあね」
「どんどんお話させてもらうよ」
こうしてです、狼さん達は自分達のことも縄張りの中のことも先生に尋ねられるままお話しました。そして。
ここで、です。先生は全部聞いてから狼さん達に笑顔でお礼を言いました。
「有り難う、いいことを知ったよ」
「だといいけれど」
「何でもないことだけれどね」
「そうだよね、僕達にとっては」
「それこそね」
「こんなことで喜んでくれるのなら」
狼さんたちにしてもというのです。
「冥利に尽きるよ」
「先生が喜んでくれるのなら」
「もうそれでね」
「満足だよ」
「僕は満足したし君達も満足したよ」
こう答えた先生でした。
「それは最高だね」
「確かにね」
「お互いに満足したのならね」
「それでもう最高だね」
「言うことがないね」
「そうだよ、何はともあれ」
先生は笑顔のまま言うのでした。
「君達のこともこの辺りのこともわかったよ」
「変な人達のことは?」
「その人達のことは?」
狼さん達は先生にこの人達のことを尋ねました。
「どうなのかな」
「一体」
「それで」
「わかったかな」
「いや、そのことは」
そう聞かれるとです、先生はまた暗いお顔になりました。
「まだ答えが出ないね」
「ううん、そうなんだ」
「何か先生も悩んでるみたいだね」
「それも僕達のことで」
「悪いね」
「いや。悪いかじゃなくて」
それはとです、先生は狼さん達に答えました。
「こうしたことは当然だよ」
「当然って」
「そうなんだ」
「先生にとっては」
「自然をおかしな人達から守ることもね」
それもというのだ。
「人の務めだから」
「そうだよね、先生ってね」
「いつもそう言ってるよね」
ここでジップとホワイティが言いました。
「人は自然を大切にしないといけない」
「それも務めだって」
「文明を大事にしてね」
そしてというのです、先生も。
「自然も大事にしないとね」
「そのどちらもだね」
「大事にしてこそだよね」
ガブガブとチーチーも言います。
「人は人でいられる」
「文明と自然の両方があってこそ」
「人は両方の世界に生きているんだよ」
先生は持論も述べます。
「文明と自然の二つの世界でね」
「だからどっちも大切にすべき」
「そうよね」
ポリネシアとダブダブも頷きます。
「だから動物も植物もね」
「大事にしないといけないって言ってるわね」
「人はどっちも否定出来ないよ」
先生はまた言いました。
「二つの世界のどちらもね」
「そうだよね、だから」
「今回もだよね」
トートーと老馬は先生のお傍にいます。
「だから狼さん達のことも」
「当然としてだね」
「うん、考えさせてもらっているから」
先生は腕を組んで考えるお顔になっています。
「果たしてどうするのかだね」
「それでなんだ」
「だからお礼とかはいいんだ」
「僕達からの」
「いよ、僕はお礼とか言われるの苦手だし」
このこともというのです。
「いいよ、とにかくどうするかだよ」
「そうだね、マスコミとかおかしな学者さんとか」
「その人達をですね」
「どうするのか」
「考えるところですね」
「そうなんだよ、しかし」
ここで先生は王子とトミーにも応えました。
「ここじゃ答えは出ないかもね」
「この森の中で考えても」
「そうしてもですね」
王子とトミーも先生に応えます。
「答えが出ないなら」
「森を出てから考えますか」
「神戸に戻ってから」
「そうしてからですね」
「森の中では調査に専念した方がいいだろうね」
先生もこう考えるのでした。
「ここはね、だからね」
「それじゃあここは」
「調査に専念しますか」
「とりあえずはね」
「そうされるんですね」
「うん。それに狼君達のことをもっと知りたいし」
それにというのです。
「あと熊君のこともね」
「ああ、熊さんならね」
「ここから少し先にいるよ」
「もう春だし冬眠も終わったし」
「子熊君達と一緒にね」
「楽しく過ごしているよ」
「そうだね、春だからね」
先生もこの季節から言うのでした。
「熊君達もだね」
「そう。出てね」
「そしてね」
「僕達みたいにね」
「森の中での生活を楽しんでいるよ」
「じゃあ熊君の話も聞こう」
先生は目をきらきらとさせています、狼さん達のことはここでは置いておいて熊さん達のことを考えてです。
そしてです、こうも言うのでした。
「後でね」
「じゃあ今でどうするのかな」
「やっぱり狼さん達のお話聞くのかな」
「もっと」
「そうするのかな」
「うん、そうするよ」
是非にとです、先生は動物の皆に答えました。
「ここはね」
「それじゃあね」
「狼さん達のお話聞こうか」
「これからも」
「そうしようか」
「このままね」
こうしてでした、先生はです。
狼さん達から狼さん達自身のことをさらに聞きました、そうして満足したお顔で言うのでした。
「有り難う、本当によくわかったよ」
「うん、満足してもらったのならね」
「僕達も嬉しいよ」
「じゃあこれからもね」
「何か聞きたいことあったら来てね」
狼さん達のところにというのです。
「是非ね」
「そうしてね」
「そうさせてもらうよ」
「そういえば」
狼さん達を見てです、王子はあることに気付きました。
そしてです、こう言うのでした。
「日本の犬ってニホンオオカミさんに似てるね」
「あっ、そうだね
「言われてみればね」
動物の皆も王子の今のお言葉に頷きました、はっと気付いてです。
「秋田犬とか甲斐犬とかね」
「柴犬にもね」
「大きさは色々だけれど」
「形はね」
「狼さん達のままだよね」
「そうだよね」
日本の犬の多くはというのです。
「ニホンオオカミさん達にね」
「そっくりだね」
「うん、日本の犬はニホンオオカミからなっているからね」
それも当然とです、先生は皆に答えました。
「だからだよ」
「他の国の犬と同じで」
「日本の犬さん達も狼さん達がもとなんだ」
「そして日本だからニホンオオカミ」
「そういうことだね」
「土佐犬は闘犬の為の犬だから顔が違っているけれどね」
それでもとです、先生はさらにお話するのでした。
「日本の犬は他の国よりも狼の形を残しているよ」
「ううん、そうなんだ」
「だからそっくりなんだ」
「秋田犬も甲斐犬も柴犬も」
「狼さん達そっくりなんだ」
「顔立ちも身体つきもね」
そのどちらもというのです。
「そうなっているんだよ」
「ううん、イギリスの犬は色々な形で」
その犬のジップが言うには。
「狼の形のままの犬は少ないのに」
「日本の犬は違うんだよ」
「日本人の好みとか?」
「いや、狩りを念頭に置いてなんだ」
「ああ、秋田犬も甲斐犬も」
「そう、日本の犬は狩猟用の犬が多くてね」
「そうした犬はなんだね」
ジップもお話を聞いて納得しました。
「狼さんに似た形なんだ」
「そうなんだよ」
「成程ね」
「イギリスの犬はそれぞれの形だね」
先生は母国の犬のこともお話しました。
「そうだね」
「うん、ダックスフンドもブルドッグも」
「イギリスの犬って物凄く種類が多いよね」
「その形もね」
「本当にそれぞれだね」
「猫でもね」
それぞれお話しました、他の動物の皆も。
「何かと」
「いや、本当にね」
「何かと」
「そういえばその目的に応じて」
「それぞれの形になっているね」
「例えばダックスフンドはね」
先生が最初にお話するのはこの犬についてでした。
「穴熊狩りに使う為にああいう形になったね」
「そうそう、穴熊の穴に入るから」
「だから胴長短足でね」
「そうなんだよね」
「それで」
「そうだよ、そしてブルドッグは闘牛で使うから」
今度はこの犬についてもお話しました。
「そのまま噛んだら窒息するからね」
「牛の大きな身体に阻まれて」
「それで窒息するから」
「だからああした顔の形になった」
「そうだったね」
「そうだよ、犬はそれぞれの目的に応じて形が変わったんだよ」
それが犬という生きものだというのです。
「ダックスフンドもブルドッグもね」
「そして他の犬も」
「それぞれの目的に応じて大きさも形も違う」
「それも進化なんだね」
「犬といっても」
「それぞれの目的で形が変わるものだね」
「狼もそうでね」
先生はまた狼さんのことをお話しました。
「ニホンオオカミはこうした場所に住んでいるから形が小さいね」
「そうだね、このことは今回よくお話してるけれど」
「狼もそうで」
「そして犬も」
「そうなんだね」
皆でお話するのでした、そしてです。
ジップはあらためてです、自分の外見も見て言いました。
「僕も僕もだね」
「そうだよ、ジップの種類もね」
「その目的に応じてこうした形になったんだね」
「そういうことなんだ」
「成程ね、よくわかったよ」
「さて、次はね」
狼さん達とのお話の後で、でした。先生達はです。
狼さん達と一旦お別れしてそしてでした、今度は熊さん達のところに向かいます。しかしもうすっかり夜になってです。
「さて、ではね」
「はい、それじゃあ」
「もう休もうか」
「そうしよう」
トミーと王子に言うのでした。
「これからテントを作って」
「また休もうね」
「あと少しで熊さんの縄張りに来ると思いますが」
「今日はもうなんだ」
「無理はしない」
ここでこう言った先生でした。
「いつもそうだね」
「はい、確かに」
「先生はいつもそうだね」
「無理はしないで慎重ね」
「それが先生の行動指針だね」
「無理はよくないよ」
くれぐれもとも言う先生でした。
「穏やかに進めばいいんだよ」
「無理はしないで」
「そのうえで」
「そう、だから休もう」
「テントを作って」
「晩御飯も食べて」
「そう、御飯はちゃんと食べないと」
このことも忘れない先生でした。
「三食忘れずにね」
「何かこの辺りは」
「これといって食べるものないみたいだよ」
「僕達が食べるみたいなのは」
「近くにはね」
「そうだね、食べものを持って来ておいてよかったよ」
先生も言います。
「この辺りに食べるものがないのならね」
「だよね、本当に」
「食べるものがなかったら困るからね」
「お腹空いたら動けないよ」
「それで終わりだからね」
「そうなんだ、けれどそれは僕達のことであってね」
先生達のことであるというのです、この辺りに食べるものが見付からない理由は。けれどここで先生はまたこの人達のことをお話しました。
「山窩の人達は違うんだよ」
「こうした場所でもなんだ」
「食べるものを見つけられるんだ」
「凄いね、それって」
「こんな場所でも食べるもの見付けられるって」
「特別な人達なんだね」
「超能力か魔法を使えるのかな」
こうまで言います、ですが。
ここで先生は皆にこうも言いました。
「それは山があの人達の住んでいる場所、家に近いからね」
「だからなんだ」
「こうした場所でも食べものを見付けられるんだ」
「あの人達の世界だから」
「それでなんだ」
「そうだよ、あの人達の世界だからわかるんだ」
何処にどんな食べものがあるのかということをです。
「それどころかお風呂だって入ったりするんだよ」
「えっ、山の中で!?」
「お風呂も入られるんだ」
「そんなの無理なんじゃ」
「幾ら何でも」
「それだけは」
「ちょっと」
動物の皆はお風呂と聞いて食べもののこと以上に驚きました、流石にそれは無理なんじゃないかと思ってです。
「川で水浴びならわかるけど」
「お風呂はね」
「どうやって入るの?こんな山で」
「一体」
「うん、何でもね」
ここで先生がお話する山窩の人達のお風呂の入り方はといいますと。
「やっぱりお水が一杯あるところの近くでね」
「まあそれはね」
「お風呂はお水がないとね」
「サウナじゃないのならね」
「やっぱりね」
「お水が必要だよね」
動物の皆もこのことには納得しました。
「どうしようもないからね」
「それでどうするのかな」
「お水だけじゃ駄目だよ」
「それだけじゃ」
「うん、穴を掘るんだ」
先生は皆に応えてお話しました、さらに。
「人が入られる、お風呂位の大きさのね」
「それでそこにお水を入れて」
「まずはそうしてだね」
「お風呂が出来たけれど」
「お湯じゃないけれど」
「お水のままだよ」
「そこに焼け石を入れるんだ」
ここで言ったお湯の作り方はこうしたものでした。
「お水の中に焼け石を入れたらお湯になるね」
「確かにね」
「それでなんだ」
「お湯を作って」
「そこに入るんだ」
「そうするんだ」
「そうだよ、お風呂はこうして作るんだよ」
山窩の人達はというのです。
「そう聞いたよ」
「不思議な入り方だね」
「とてもね」
「いや、本当にね」
「面白いね」
「そんなお風呂もあるんだ」
「そうなんだよ、それが山窩の人達のお風呂だよ。他にもお風呂はあると思うけれどね」
先生が知っている山窩の人達のお風呂はこうしたものみたいです。
「こうしたのがあるんだ、ただね」
「ただ?」
「ただって?」
「何かあるの、先生」
「山窩の人達にまだ」
「まだ何かあるの?」
「うん、山窩の人達はもう殆どいないしそれに」
しかもというのです。
「その言葉は日本語じゃなかったんだ」
「あれっ、日本人なのに」
「日本語喋っていなかったんだ」
「そうだったんだ」
皆先生のそのお話にはびっくりです、天地とを作る手は止まっていmせんが声はこれまた驚いたものになっています。
「じゃあどんな言葉だったのかな」
「日本語じゃないって」
「日本なのに」
「一体」
「縄文時代の頃の言葉がそのまま使われていたらしいよ」
それが山窩の人達の言葉だったとのことです。
「何でもね」
「昔の言葉だったんだ」
「ずっと昔の言葉使ってたんだ」
「それが山窩の人達だったんだ」
「そうだったんだね」
「そうみたいだね、そうした人達も日本にいたんだ」
そして今もというのです。
「ここにはもういないかも知れないけれど」
「そうなんだ」
「そうした人達もいたんだね」
「いや、凄いね」
「日本にいてもね」
「日本語じゃない言葉を喋る人もいたんだね」
動物はこのことも知って目を丸くさせるのでした。
「イギリスはね」
「そうそう、イングランドとスコットランド、アイルランドとウェールズでね」
「四国あってね」
「それぞれの言葉があって」
「コックニーなんて言葉もあるけれど」
ロンドンのダウンタウンの言葉です、とても独特な言葉です。言うならば英語の方言ロンドンの
ダウンタウンのそれです。
「それで日本も方言はあるけれど」
「日本語だからね、どれも」
「日本語以外の言葉もある」
「そうした言葉を使う人もいた」
「そうだったんだね」
皆しみじみとするのでした、そうしたお話もしてでした。先生達は夜になったのでテントを作ってそして晩御飯を食べて休むのでした。
狼の群れに会えた先生。
美姫 「それでも数としては百もいないのね」
絶滅したと思われているぐらいだから、数が少ないんだろうな。
美姫 「狼の存在がばれると色々とややこしくなりそうよね」
だな。けれど、まずは狼たちとのお話だな。
美姫 「先生にとっても嬉しい時間みたいだしね」
とりあえず、会話も一区切りして。
美姫 「先生はこれからどうするつもりなのかしらね」
次回も待っています
美姫 「それじゃ〜ね〜」