『ドリトル先生と森の狼達』




                 第三幕  山の生きもの達

 先生達はじっくりと寝た後で、でした。
 朝早く起きて支度をしてです、皆でホテルを出てから山の中に入りました。
 そしてそこで早速山の生きもの達の調査をはじめました、するとです。 
 トートーが目を先生の頭の少し上を飛びながら言いました。
「虫が多いね」
「そうだね、虫の数の種類もね」
「相当だね」
「うん、蛾に蜂にね」
 少し入っただけで鬱蒼としている森の中で、です。先生は慎重にですが的確に歩いて進みつつ周りの虫達を観察しました。
「その他にもね」
「蚊もいるね」
「山の蚊ね」
 こう言ったのはポリネシアでした、ポリネシアも飛んでいます。このことはチープサイドの家族も同じです。
「これは」
「そうだね、蚊がいるから」
「蚊はこちらで食べるから」
「近寄せないから」
 チープサイドの家族は皆にこう言いました。
「蚊も食べるから」
「安心してね」
「それに何かね」
「蚊は少ないよ」
 こうも言うのでした。
「思ったよりも」
「寄って来ない感じだね」
「それは君達を避けているね」
 だからあまりいないとです、先生はチープサイドの家族に答えました。
「天敵の君達をね」
「ああ、天敵だから」
「それで私達を避けて」
「先生達にはあまり寄って来ない」
「そうなのね」
「うちでもそうだよね」
 先生がお家にいる時もかというのです。
「その時もね」
「そういえばそうだね」
「お家も蚊少ないわね」
「イギリスにいた時から」
「何かと」
「そうだよ、君達を避けているからだよ」
 この辺りは本能的にそうしているのです、虫達も。
「蚊は少ないんだ、ただ調査出来るだけはいるから」
「そのことは安心して」
「調査していけばいいね」
「そうだよ、虫も調査して」
 そしてなのでした。
「後はね」
「生きものだね」 
 ここでこう言ったのはジップでした、ジップはお鼻をくんくんとさせています。
「狐や狸もいて」
「そう、鼬も栗鼠も鹿もいて」
「沢山の動物達がいるね」
「そうだよ、彼等の調査をするよ」
 こうお話してでした、先生は楽しそうなお顔で先に進んでいきます。ですがその中でなのでした、チーチーがです。
 ふとです、不安そうに言いました。
「ニホンザルもいるけれど」
「怖いのかっていうんだね」
「ニホンザルって本当に結構怖いからね」
 チーチーはこのことが不安なのです。
「大丈夫かな」
「うん、乱暴だったらね」
「あまり近寄らないで、だね」
「調査しないとね」
「僕達猿はすばしっこいしね」
「しかも力も強いからね」
 先生はこのこともよく知っています、猿の力の強さも。
「握る力が」
「だから気をつけてね」
「わかっているよ、チーチー」
「若し何かあったら」
 チーチーは確かな声で先生に言いました。
「僕がいるから」
「猿のことはだね」
「うん、何とかするよ」
 その時はというのです、山の猿達を見付けて何かをしようとした時は。
「だから任せてね」
「その時はお願いするね」
 こうしたことをお話しているとすぐにでした。
 先生の前に動物達がいました、その彼等はといいますと。
「あっ、狐よ」
「猪がいるよ」 
 ダブダブとガブガブが最初にそれぞれ発見しました。
「こっちを見ているわよ」
「僕達をね」
「そうだね、ちょっと彼等と話をしてみようかな」
 先生もその皆を見付けて応えました。
「これから」
「まずはお話」
「それからだよね、先生は」
「こうした時本当に助かるよ」
 動物の調査はというのです。
「動物の皆の言葉を知ることはね」
「そう、そこが先生の凄いところよ」
「皆の言葉を喋ることが出来るからね」
「このことはポリネシアに感謝しているよ」
 今度はポリネシアに可青を向けて言うのでした。
「本当にね」
「あら、そう言ってくれるのね」
「うん、とても感謝しているよ」
「そうなら私も嬉しいわ、ではね」
「これから彼等に声をかけよう」
 先生は皆とお話して早速でした、まずは。
 狐に対してです、笑顔で声をかけました、狐の言葉で。
「ちょっといいかな」
「あれっ、僕の言葉だね」
 狐は先生の言葉を聞いてまずは耳をピクリ、とさせました。
 そして、です。こう言うのでした。
「見たところ人間だけれど」
「僕は人間だよ」
 その通りだとです、先生も答えます。
「人間だけれど皆の言葉がわかるし喋ることが出来るんだ」
「そうなんだ」
「そうだよ、君達のことを聞きたいけれどいいかな」
「ううん、犬がいるし他にも色々な人や生きものがいるけれど」
「大丈夫、皆何もしないよ」
 先生はジップや他の皆を見て警戒する狐に答えました。
「だから安心してね」
「見たところおじさんは悪い人じゃないね」
 狐は先生を自分の場所からまじまじち見て述べました。
「別にね」
「そうだよ、先生みたいないい人いないよ」
「このことは僕達が保障するから」
「絶対にね」
 ホワイティとオシツオサレツが狐に言いました。
「人も動物も騙したりしないから」
「誰にでも公平で親切でね」
「とても心優しい人だよ」
「そうみたいだね」
 狐は彼等の言葉も聞いてでした。
 そして先生にです、こうも言いました。
「じゃあ先生っていうけれど」
「そう、僕はドリトル先生だよ」
「ああ、あのドリトル先生なんだ」
 先生の名乗りを受けてでした、狐は目を見開いて言うのでした。
「あの有名な」
「あれっ、僕のこと知ってるんだ」
「先生は有名だよ、神戸にいる動物の皆の最高のお友達だってね」
「まさかここでも僕の名前が知られてるなんて」
「僕達の話はすぐに伝わるじゃない」
「動物のコミュニケーションで、だね」
「どんな話でも風の様に伝わるからね」
 速く、そして何処にでもです。
「だからね」
「君も僕の名前は知っているんだ」
「先生がここに来たことは知らなかったけれどね」
 それでも先生のことはというのです。
「先生のことはこの辺りの皆も知ってるよ」
「では調査もしやすいかな」
「先生になら何でもお話するよ」
 狐は次第に先生のところに近寄ってきていました、やっぱり動物の皆の最高のお友達だからなのでしょう。
「僕達のことをね、おおい甚五郎君」
 狐はそれまでじっと先生達を見ていた猪に顔を向けてその名前を呼びました。
「ドリトル先生にお話をしよう」
「うん、話は聞いてたよ」
 猪もこう狐に返します。
「泰三君と先生のやり取りをね」
「じゃあいいよね」
「うん、いいよ」
 猪は狐にこう答えました。
「それじゃあ一緒にね」
「先生にお話しよう」
「いや、先生が有名人ということもね」 
 老馬はしみじみとしてです、先生を見つつ言いました。
「役に立つね」
「お話が進むね」
「それじゃあまずはね」
「この子達とお話をしよう」
 先生は温厚な笑顔で老馬に応えました、そしてでした。
 先生は狐、そして猪とお話をしました。先生から二匹に尋ねました。
「最近この辺りはどうかな」
「うん、平和だよ」
「この辺りはね」
 狐と猪は先生の質問にすぐに答えました。
「平和でね」
「皆仲良くやってるよ」
「自然の環境もね」
「わりかしいいしね」
「確かに。まだ入口だけしか見ていないけれど」
 先生は二匹のお話を聞いてです、森の中を見回しました、そのうえで草木や空気の状況をチェックして述べました。
「悪くないね」
「動物も増えたしね」
「かといって増え過ぎてもいないし」
「適度にね」
「落ち着いているよ」
「それは何よりだね、自然な日本の山だね」
 先生は今の状況をこう述べました。
「調和が取れていて、それで君達もいるけれど」
「僕達も?」
「っていうと?」
「うん、他の皆も大丈夫だね」
「狸君や栗鼠君達」
「鹿さんや熊さんもかな」
「そうした皆は大丈夫だよね」
 ちゃんと十分な数がいて食べることや住処に困っていないかというのです。
「ちゃんと生きていけてるよね」
「うん、大丈夫だよ」
「皆僕達みたいに幸せに暮らしてるよ」
「その皆にそれぞれにも聞くと思うけれど」
「僕達の知ってる限りはそうだよ」
「それは何よりだね」
 先生もお話を聞いて笑顔になりました。
「皆ごく普通に暮らしてるのならね、けれどね」
「他の皆にもだよね」
「先生聞くよね」
「そうするよ、そして聞くだけじゃなくてね」
 学者としてです、先生は狐と猪に答えました。
「観ることもするよ」
「ちゃんとだね」
「そちらも忘れないんだね」
「聞いて観る」
「どちらもするんだね」
「それが学者の務めだからね」
 だからこそというのです。
「そうするよ、そういえば君達はね」
「どうかな、僕達は」
「何かあるから」
「結構体格もいいし毛並みもいいね」
 そのどちらもというのです。
「いい感じだね」
「毎日よく食べてよく寝ているよ」
「山の中でね」
「まあ時々下に降りたくなるけれどね」
「興味があるからね」
「あっ、人のいる場所には降りない方がいいよ」
 トミーは二匹にこのことを注意しました、トミーも王子も先生に教えてもらって動物の言葉がわかるし喋られるのです。
「そこで畑を荒らしたらね」
「うん、駆除されるよね」
「その時は」
「山にいたら大丈夫だけれど」
 それでもというのです。
「畑を荒らしたら村の人達に退治されるよ」
「畑を荒らした悪い奴として」
「そうなるよね」
「だから気をつけてね。それと狐君鶏好きだね」
「大好きだよ」
「村の鶏を襲うことも駄目だよ」
 そうしたこともとです、トミーは狐に忠告しました。
「村の人達も大切に育ててるからね」
「その鶏を襲うとだね」
「村の人達も怒るから」
「怒って山に銃を持って入って来てだね」
「大変なことになるからね」
「それでだよね」
「そう、気をつけれね」
 くれぐれもという言葉の調子で、でした。トミーは狐にお話しました。狐も素直に頷いています。そしてでした。
 猪もです、こう言うのでした。
「僕達は山にいた方が幸せだね」
「うん、そうだよ」 
 王子が猪に答えました。
「そのことは間違いないね」
「山を降りて村に入れば」
「色々と警戒されるしね」
「村は村の人達の場所だから」
「うん、そうした場所だから」
 それ故にというのです。
「入らない方がいいよ、あまりね」
「僕も銃で撃たれなくないしね」
「そうだよね、君にしても」
「あんな物騒なもので狙われたらたまったものじゃないよ」
 それこそというのです、猪にしても。
「だからね」
「うん、気をつけてね」
「そうさせてもらうよ」
 こう約束するのでした。
「僕もね」
「それが何よりだね」
「そうだよね、山は僕達の世界だけれど」
「村は村の人達の世界だからね」
「山に住んでいる人達もいるけれどね」
「あれっ、いるんだ」
 先生は猪の今の言葉にです、目を瞬かせて問い返しました。
「この山にも人が」
「それがどうかしたのかな」
「いや、まさかと思うけれど」
 先生はあの人達のことを思い出しながらです、猪に尋ねました。そしてその人達の名前をここで出したのでした。
「山窩の人達かな」
「山窩って?」
「あっ、知らないのかな」
「いや、山の中のお寺に住んでいる」
「ああ、お坊さんだね」
「うん、そうした人はいるよ」
 この辺りにというのです。
「ここにもね」
「そうした意味なんだね」
「何か先生が興味のある人いるのかな」
「いるけれどそうした人達じゃないんだね」
「その山窩とかいう?」
「うん、そうした人達じゃないのならいいよ」
 猪に穏やかな声で答えました。
「変なこと聞いて悪かったね」
「いいよ、じゃあ僕達のことはね」
「もっとお話してくれるかな」
「そうさせてもらうよ」
 猪もこう答えてでした、狐と一緒にです。
 自分達とこの辺りの仲間のことも先生にお話しました、先生は二匹とお話を終えてでした。
 そのうえで、です。二匹に穏やかな声で答えました。
「有り難う、よくわかったよ」
「うん、満足してくれたのならね」
「僕達も嬉しいよ」
「この辺りの生態系は思ったよりいいね」
 先生は満足しているお顔で述べました。
「本当に何よりだよ」
「もっと悪いと思っていたんですね」
「環境破壊の問題は何処でもあるからね」
 先生はトミーにこのことは暗いお顔でお話しました。
「だからね」
「それで、ですね」
「うん、僕も気にしていたんだ」
 そうだったというのです。
「鹿の害も気になっていたし」
「この辺りの野生の鹿ですね」
「大台ケ原の鹿が増え過ぎてね」
「木の皮まで食べて」
「木が傷んで枯れたりして大変だったっていうからね」
 だからだというのです。
「それでどうなのかって思ってたけれど」
「うん、それでもね」
「この辺りは大丈夫ですね」
「とりあえず今僕が調べただけではね」
 先生はそのことを喜んでいるお顔でトミーに答えました。
「本当に何よりだよ」
「じゃあ鹿の皆にも聞きますね」
「是非共ね」
「ああ、鹿さん達ならね」
「もっと奥にいるよ」
 狐と猪が先生達に答えました。
「ちゃんとね」
「いるからね」
「結構な数がいるけれど」
「それでもね」
「多過ぎるまではね」
「いないよ」
「適度な数というんだね」
 先生は二匹のお話を聞いて述べました。
「ならいいよ」
「うん、じゃあね」
「鹿さん達ともだね」
「お話するんだね」
「そうするんだね」
「そうだよ、そのつもりだよ」
 まさにとです、先生も答えてでした。
 狐、それに猪と今は別れました、それからでした。
 皆で一緒にでした、森の奥に進みました。そうして鹿達のいる場所に向かいましたがその途中でなのでした。
 ジップがです、お鼻をくんくんとさせて先生に言いました。
「少し先に鹿さん達の匂いがするよ」
「そうなんだね」
「それとね」
「他の生きものの匂いもだね」
「うん、したよ。鼬のね」
「ああ、鼬君のだね」
「匂いがしたよ」
 そうだったというのです。
「すぐそこにね」
「それじゃあ鼬君のお話も聞こうかな」
「それじゃあね」
 こうしてです、先生は今度は鼬の言葉で声をかけました。
「少しいいかな」
「あっ、狐さん達が話していた」
「ドリトル先生かな」
「そうみたいだね、スーツだしね」
「他の人達もいて」
「動物の人達もね」
 いるとです、鼬達はひょっこりとお顔を出してきてでした。
 そしてです、そのうえでその中でお話するのでした。
「じゃあね」
「先生とお話をしてね」
「僕達のことを話そうか」
「そうしようか」
 こうお話してでした、自分達の間で。
 そして皆で、でした。先生達の前に出てきました。見れば全部で六匹います。その六匹の鼬達がでした。
 先生とお話をしました、まずは自分達の今の状況をお話しました。
「食べるものには困ってないね」
「住んでいる場所の状況もね」
「お水も奇麗で」
「空気もいいしね」
「むしろ前よりもいい」
「そんな状況だよ」
「そう、わかったよ」
 そう聞いてでした、先生は状況に満足しました。そして。
 周りを見てです、こうも言いました。
「ここもいい場所だしね、それにしても環境がよくなったね」
「うん、昔よりもね」
「よくなったよ」
「前は結構ね」
「荒れてる場所もあったけれど」
「今はね」
「前よりもよくなって」
「僕達も過ごしやすくなってるよ」
 鼬の皆はまた先生にお話しました。
 そしてです、先生に言うのでした。
「ちょっと前まで鹿さん達が増え過ぎていて」
「鹿さん達食べる量が多いから」
「木の皮まで食べてね」
「それで木がボロボロにもなったけれど」
「今はね」
「もうそうしたこともなくて」
「鹿さん達も減ったから」
 その鹿達の数もというのです。
 それで、でした。先生は鹿の数のことも聞いてでした。
 そのうえで、でした。また言いました。
「ううん、この辺りの鹿が増えて大変だとは聞いていたけれど」
「数が減った」
「そのことが大きいのはわかりました」
 王子とトミーがここで言いました。
「動物も増え過ぎたら生態系も自然環境も破壊したりするからね」
「絶滅も問題ですけれど」
「こちらも問題でね」
「そのことが解決されたのはいいことですね」
「間引きといえば問題があるかな」
 先生は自然、環境問題について考えてでした、そして王子とトミーそして動物の皆にこうしたこともお話したのでした。
「けれど増え過ぎたらね」
「減らさないとだね」
「環境全体に影響が及び」
「そうなるのね」
「だからこの辺りの鹿も」
「うん、村の人達が狩りをしたんだね」
 その鹿達をというのです。
「それで減らしたんだよ」
「それで鹿を食べたのかな」
「そうみたいだね」
 王子の言葉にです、トミーが応えました。
「鹿鍋とかね」
「鹿も結構美味しいからね」
「そうしたのかな」
「村の人達も」
「うん、実際に村の人達が狩りをしてたよ」
 鼬達のうちの一匹が二人に答えました。
「あの人達もね」
「ああ、そうなんだ」
「やっぱりね」
「熊さん達もいるしね」
「ああ、熊も鹿を食べて」
「それでなんだ」
「うん、鹿さん達も減ったんだよ」
 そうなったというのです。
「それで環境全体がよくなったんだよ」
「この辺りのね」
「そうなんだよ」
「ここのね」
 鼬達はまた先生にお話しました。
「やっぱりね」
「調和っていうのが大事なのかな」
「僕達の住んでいる場所もね」
「どうしてもね」
「うん、そのことはその通りだよ」
 先生もこう答えました、鼬の皆に。
「鹿君達だけが増えてもいいことはないよ」
「そうそう、何か騒いでいる人達もいたらしいけれど」
「鹿さん達を殺すなって騒ぐ」
「そうした人達もいたけれどね」
「結局狩りをしてね」
「鹿さん達も減ってよかったよ」
 こう鼬の皆は先生にお話しました、そしてでした。
 そうしたことをお話してです、鼬の皆はまた先生に言いました。
「そういうことでね」
「まだお話することあるかな」
「あればどんどんお話するけれど」
「どんどん言って」
「そうだね、それじゃあね」
 先生も応えてでした、鼬の皆にさらに聞いていきました、鼬達の状況も自然と動物を大事にする先生からすれば素晴らしいことでした。
 そのことを聞いてでした、それから。
 先生達は鼬の皆と笑顔でお別れしてでした、さらに先に進み。
 鹿の皆がいる場所にも来ました、そして鹿達とも合いましたが。
 そのニホンジカを見てです、王子は目を瞬かせてから先生に尋ねました。
「あれっ、何か」
「どうかしたのかな」
「いや、日本の鹿って小さいけれど」
 それでもとです、王子はその鹿達を見つつ先生に言いました。
「身体つきはしっかりしているんだね」
「そうなんだ、日本の鹿は森の中にいるから小さいけれど」
「それでもなんだ」
「そう、食べる量は多くてね」
「身体つきもしっかりしているんだね」
「そして山道もどんどん進めるんだ」
 それがニホンジカだというのです。
「他の鹿で言うと高山地帯にいる鹿みたいにね」
「山道を進めるんだ」
「そうなんだ、崖でも平気だよ」
「うん、崖でもね」
「私達進めるわよ」
「上がるのも下りるのもね」
「どちらもいけるよ」
 鹿の皆もこう答えます。
 そしてその鹿達にです、先生はあらためて尋ねました。
「それでいいかな」
「?何かな」
「どうかしたの?」
「何かあったの?」
「うん、君達一時期数が多かったそうだね」 
 先生はこのことを鹿達に対して尋ねました。
「そうだよね」
「そうなんだ、前はね」
「私達今よりも数が多かったのよ」
「それで数が多過ぎて」
「かえって食べるものが減って」
「結構何でも食べていたのよ」
「木の皮でもね」
 ほかならぬ鹿達自身もこうお話するのでした、このことについて。
「いや、あの時はね」
「結構大変だったよね」
「何かとね」
「どの山のあちこちにも鹿がいて」
「何でも食べていてね」
「そういえば奈良公園の鹿も」
 先生は奈良県について調べているうちに聞いたこおtも思い出しました、その思い出したことはといいますと。
「何でも大量に食べるんだったね」
「ああ、北の方の」
「あっちの鹿さん達はね」
「僕達とはまた違う群れだけれどね」
「北は北でね」
 南、即ちこちらはこちらだというのです。
「けれどあっちの鹿さん達も食べるみたいだね」
「元々食べるものが一杯あるみたいだけれど」
「紙でも人のお弁当でも何でも食べて」
「凄いんだよね」
「そうらしいね、とにかくあればあるだけ食べる位らしいから」
 先生もしみじみとして言うのでした、ニホンジカの食べる量について。
「君達もだね」
「僕達たっぷりと食べないと駄目なんだ」
「これがね」
「草だけじゃ足りないと」
「木の皮も食べないとね」
「それこそね」
 生きていけないというのです、どんな生きものも食べないと生きていけません、それでこの鹿さん達もなのです。
「とにかく食べていたよ」
「何でもかんでもね」
「数が多くても食べないとね」
「僕達が生きていけないから」
 こう先生にお話するのでした。
「いや、本当にね」
「だから食べていたけれど」
「森がそれでね」
「大変なことになっていたんだよね」
「そうなっていたのは確かだね」
 鹿さん達もこのことは申し訳なく思うのでした。
「森の皆にも迷惑かけたし」
「森を荒らしてしまって」
「そうなっていたからね」
「仲間の数が減ったのは残念だけれど」
「仕方ないね」 
 狩られたことはです、鹿さん達も受け入れています。
「森全体の為にはね」
「このことはね」
「仕方ないね」
「そうなんだよね、まあそれを言ったら人はどうなるかともなるけれど」
 先生は人間も他の動物達も同じだと考えているのでこうも思うのでした。
「けれどそれでもね」
「森全体を守る為には」
「僕達の数が減ってもね」
「仕方ないんだね」
「数が減ることも」
「そうなんだよね、まあ君達も納得してくれているのなら」
 それならなのでした、先生も。
「いいよ」
「うん、じゃあね」
「そういうことでね」
「僕達自体は普通にね」
「仲良く暮らしてるから」
「幸せにね」
「だといいよ、それでだけれど」
 先生は鹿さん達が自分達のことを納得しているのを受けてでした、それからあらためて質問をしました。
「君達は村の人達に狩りを受けたよね」
「うん、熊さん達からもね」
「まあ熊さん達は前からだけれど」
「ただ。森の奥の方はね」
「凄く減ったよ」
 その鹿さん達はというのです。
「ここからずっとずっと奥に入った」
「もう山を幾つも越えたね」
「そこの辺りはね」
「僕達の仲間の数減ってるよ」
「相当にね」
「村の人達がそこまで入ったのかな」
 先生はお話を聞いてまずはこう思いました。
「それでかな」
「ううん、それはね」
「何ていうのかな」
「あの辺りは僕達の縄張りじゃないから」
「あまり詳しい事情は聞かないけれどね」
「誰かいるみたいだよ」
 微妙なお顔になってです、鹿さん達は先生にお話しました。
「観た生きもの少ないけれど」
「誰かいるみたいだよ」
「その誰かがどういった生きものなのか知らないけれど」
「それでもね」
「いるみたいだよ」
 こうお話するのでした、ですが。
 先生は鹿さんたちのその言葉を聞いてでした、首を傾げさせて言うのでした。
「何かおかしいね」
「おかしいかな」
「何処かおかしい?」
「僕達知っていることを話しているけれど」
「嘘は言ってないよ」
「別にね」
「いや、嘘とか隠してるとかじゃないよ」
 先生もこのことは保障します。
「そういうことじゃないんだ」
「じゃあ一体」
「何のことかな」
「いや、日本にいる肉食獣はね」 
 そうした生きものはというのです。
「大型のものは熊だけだね」
「そうですね、今では」
 トミーも先生のその指摘に応えます。
「日本は」
「うん、そうなんだよね」
「日本には大型のネコ科の生物もいませんし」
「いないよ、全くね」
「虎やライオンは」
「豹やジャガーもね」 
 そうした大陸いいる大型のネコ科の生物はなのです。
「ピューマやオセロットといったものもね」
「いませんよね」
「鰐もいないよ」 
 水の方を見ればそうだというのです。
「海には鮫がいるけれど」
「それ位ですよね」
「それでどうして森の送の鹿さん達が減ったのか」
「村の人達が入って行ったと考えて、ですね」
「それしかないね」 
 先生はこう言うのでした。
「やっぱりね」
「そうですよね」
「僕はそう思うけれど」
「僕もそう思います」
 トミーも先生に答えました。
「これは」
「そうだね、じゃあもっと先に行こうか」
「そうしますか」
「森のね」
 こう二人でお話してでした、次はです。
 それで先生は鹿さん達に言いました。
「じゃあもっと先にね」
「進みますね」
「そこでお昼も食べよう」
 お弁当をです、実は朝早く起きて朝食を済ませてからずっと何も食べていません。もうすぐお昼なのですが。
「そうしよう」
「はい、わかりました」
 トミーも頷いてでした、そのうえで。
 先生は鹿さん達にです、微笑んで言いました。
「じゃあ僕達はもっと先に行くよ」
「この森のだね」
「先に行くんだね」
「そうするよ、この辺りの生態系を全て調べるよ」
「ここも結構広いけれど」
「大丈夫なのね」
「うん、これ位ならまだね」
 先生は鹿さん達に微笑んで答えました。
「大丈夫だよ」
「だといいけれどね」
「ここも結構大変だけれどね」
「迷う人もいるし」
「道はあるにはあるけれど」
「僕以外の皆がいてくれるから」
 王子とトミー、そして動物の皆を見ての言葉です。
「大丈夫だよ」
「ああ、先生は確かにのんびりしていてね」
「うっかりとしたところもあるけれど」
「皆がいればね」
「安心だっていうんだね」
「そうなんだ、皆がいつも助けてくれるからね」
 だからだとです、先生も答えます。
「これ位なら大丈夫だよ、これまで色々と冒険をしてきたしね」
「それならいいよ」
「じゃあ気をつけて行ってね」
「これからの道も」
「森の奥も」
「そうさせてもらうよ」
 先生は鹿さん達に笑顔で応えてでした、そのうえで。
 皆と一緒に森の先にさらに進んでいきました、途中お握りをメインにしたお弁当も食べました。そのお弁当を食べてです。
 先生はまた立ち上がってでした、また歩きはじめつつです。
 皆にです、ふとこんなことを言いました。
「山窩の人がまだいるのかな」
「最近結構お話してる?」
 ホワイティが言ってきました。
「あの人達のこと?」
「うん、あの人達がね」
「まだこの辺りにいるかもっていうんだ」
「ひょっとしたらね」
 こう言うのでした。
「そうなのかな」
「けれどあの人達ってもう殆どいないんだよね」
 こう言ったのはガブガブでした。
「確か」
「うん、日本は第二次世界大戦を境としてかなり変わってね」
 先生はガブガブにもお話しました。
「それで山窩の人達も変わってね」
「それでだよね」
「長い間暮らしていた山から降りて」
 そして、というのです。
「街や村で暮らす人が増えたんだ」
「そうした人が多くなったんだね」
 トートーは前を見ています、その大きな二つのよく動く目で。
「実際に」
「そうだったんだ、けれど殆どで」
「山に残っている人もいるんだね」
「ううん、ひょっとしたら」
 ジップはお鼻をくんくんとさせて周りを匂いから偵察しつつ進んでいます、やっぱり犬のお鼻は強力で頼りになります。
「この森にも」
「いるかもって思ったけれど」
「その可能性は?」
「確か奈良の南にも山窩のお話があったね」
 先生はここでこのことも思い出しました。
「だとすればまだいる可能性は少なくても」
「それでもだね」
 老馬は先生の横にいます、そうしつつ彼も警戒しています。
「いるかも知れない」
「その可能性はかなり少ないけれど」
「否定出来ないんだね」
「あの人達のことはよくわかっていないことも多くて」
 それにというのです。
「何処におられるのかもね」
「わかってないんだね」
 チーチーも言いました。
「街や村にいる人達とは違って」
「定住していない人達だから」
「住所とかもなんだ」
「ない人がまだいるかもね」 
 まだ日本にもこうした人がいるというのです、先生は日本のこうしたお話についても勉強をはじめていて知りはじめているのです。
「だからね」
「何か凄いお話ね」
 ダブダブはトミーの左横にいます。
「日本にまだそういう人がいるのね」
「ひょっとしたらね」
「それでこの森にもなのね」
「いるのかな」
「そうかもね」 
 チープサイドの家族は今も蚊を食べながら飛んでいます。
「その人達も」
「この中に」
「本当にひょっとしてだけれど」
「まだいて」
「あの鹿さん達を狩ってるのかな」
「その人達も」
「山窩の人達にとって山は家だよ」
 まさにそうした場所だというのです、山はその人達にとっては。
「まさにね」
「ううん、そうなんだ」
「だから奥に住んでいても普通なんだね」
「そうであっても」
「それでも」
「うん、可能性はね」
 山窩の人達にさらにお話する先生でした。
「かなり低いんだよ」
「現実としてはなんだね」
「山窩の人達がまだここにいることは」
 オシツオサレツも言うのでした、前後の頭で前だけでなく後ろも見回しています。
「やっぱりなんだ」
「可能性は低いんだね」
「その筈だからね」
「じゃあ森の奥まで?」
「村の人達が入っているんだね」
「やっぱりそうなのかな」
 先生はこれが一番可能性のあることだと考えるのでした。
「だとしたら村の人達も頑張ってるね」
「そうだね、鹿狩りにね」
「頑張られたんですね」
 王子とトミーも言うのでした。
「やっぱり」
「必死に」
「そうだね、地の利かな」
 こうも言った先生でした。
「長い間ここに住んでいるからね」
「だからだね」
「森の奥の方まで行けて」
「そしてなんだね」
「鹿退治が出来ているんですね」
「そうだろうね、けれど熊もいるのに」
 先生はこの生きもののことも言うのでした。
「頑張るにしても」
「命知らずっていうか」
「相当なことですね」
「熊も退治したのかな」
 先生はこうも考えました。
「やっぱり」
「鹿のついでにだね」
「熊もなんですね」
「退治していた」
「そうだったんでしょうか」
「そうかもね、ただ奈良県は熊の害は少ない筈だし」
 他の都道府県に比べてです。
「それに熊は人里に来ない限りは駆除されないよ」
「ああ、その辺りはね」
「日本も厳しいんでしたね」
「熊も絶滅が心配されていて」
「それで下手に撃ったら駄目でしたね」
「そうなんだ、日本も生きものの保護については考えているから」
 自然を大事にしようという考えからです、このことはとても素晴らしいことです。先生もその通りだと頷くことです。
「だから熊もね」
「人里に来ない限りは撃たれない」
「そういうことですね」
「そう、まして山の中はね」
「熊の縄張りだし」
「入る方が問題ですね」
「うん、そうだよ」
 先生が指摘するのはこのことでした。
「だから森の奥に入って熊を撃っていたら」
「問題だね」
「その場合は」
「そんな悪質な人もいるだろうけれど」
 それでもというのです。
「果たして実際にそうしているのか」
「だとしてたらそれはね」
「まずいことですよね」
「ここの生態系を荒らすことになるから」
「問題ですね」
「そのことも調べることになるかな」
「密猟にもなりかねないから」
 先生はこうしたことはあって欲しくないと思うのでした、そうして自然環境が荒らされて動物達が死んでいると思うと心が痛むからです。
「村で調べようか」
「そうですね、そもそも」
 トミーが言うことはといいますと。
「そうした密猟とかがないかも」
「うん、生態系の調査ではね」
「欠かせないですよね」
「そうなんだよね、だからね」
「そのことも」
「調べよう」
「今のところはないですけれど」
 これまで観て回った森の中にです、密猟の痕跡はというのです。
「変な脚の踏み入れ方の後もなくて」
「動物の皆の言葉にもね」
「密猟の話はなかったです」
「そもそも人がやたら入ったっていう話もね」
「なかったですね」
「確かに鹿君達の数は減らされたけれど」
 それでもなのでした。
「そうした話はなかったね」
「そうですね、入口でこうなら」
「まずないと思うけれどね」
「調べてみる必要はありますね」
「そのことはね」
 どうしてもとです、先生はトミーに答えました。
「調べよう」
「じゃあ明日は」
「村でそうしたお話も聞こう」
 こうしてでした、先生達はこの日はじっくりと森を調べました。とりあえずこの日調べた限りでは生態系はしっかりとしていて自然環境も守られていました。
 ですがそれでもです、ホテルに帰ってです。
 先生は皆にです、こう言いました。
「これから密猟も確かめてもっと奥に入るから」
「もう森の中でね」
「テントを張ってね」
「そしてね」
「泊まることになるね」
「あの中に」
「そうしていこう」
 こうも言うのでした。
「そしてこの辺りをね」
「じっくりとね」
「調べて」
「そしてこの辺り全てをね」
「確かめよう」
 動物達も先生に応えます、ホテルに泊まっているのでは動きが限られるというのです。そうしたことをお話してでした。
 先生はこの日はでした、晩御飯を食べてです。
 お風呂に入りました、それからです。
 この日は寝ました、そうして次の日に向かうのでした。



先生の調査がいよいよ始まったな。
美姫 「やっぱり話せる上に皆もいるからスムーズに話が進むわね」
この辺りの動物たちが既に先生を知っているというのも大きいな。
美姫 「確かにね。順調に調査できていたみたいだけれど」
ちょっとおかしな部分も出てきたみたいだな。
美姫 「色々な可能性を立ててみたけれど」
どれも正解とは言えないみたいだな。
美姫 「森の奥には何があるのかしらね」
次回も待っています
美姫 「待っていますね〜」



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