『ドリトル先生と二本尻尾の猫』




                 第十幕  テーマパークでのデート

 日曜になりました、トミーは先生を笑顔で送りました。
「じゃあ今日はですね」
「うん、お昼はテーマパークに行ってね」
「夜は、ですね」
「イタリア料理店に行くからね」 
 先生はトミーに玄関で靴を履いた状態で笑顔で答えます。先生の周りには動物の皆が揃って待機しています。
「だからね」
「僕達は夜は帰るから」
「先生だけが夜に残るよ」
「だからね、僕達の分はね」
「ちゃんと御飯を用意しておいてね」
「わかったよ」
 先生は皆には顔でこう答えました。
「それじゃあ皆で吉報を待とうね」
「是非ね」
「そうしようね」
「夜は皆でくつろぎながら」
「先生の幸せを祈ろう」
「そうしようね」
 こうしたことを話しました、ですが。
 その先生はです、ご自身のことに気付かないままトミーに言いました。
「テーマパークは子供の時以来だね」
「楽しみですね」
「うん、その雰囲気でもね」 
 それだけでもというのです。
「楽しもうかな」
「いやいや、お二人を見ていくから」
「お二人が行く場所によるけれどね」
「そこに行ってね」
「そのうえでね」
「テーマパークの色々な場所に行ってね」
「そちらも楽しめるよ」
 みんなはこう先生にお話するのでした。
「勿論僕達もね」
「一緒に行ってね」
「そして楽しめるよ」
「テーマパークの中の施設もね」
「そうなんだ、さて日本のテーマパークは」
 今度はそのテーマパークについて言及した先生でした。
「どんな場所かな」
「面白いと思いますよ」
 トミーが先生に答えます。
「日本のものも」
「そうなんだ」
「テーマパークも日本人がやっていますから」
「日本人が遊んでね」
「日本人はお仕事には凄く真面目ですから」
 それこそ、というのです。
「ですから」
「テーマパーク自体も」
「真剣に遊びを追求したものですよ」
「楽しさをだね」
「はい、ですから」 
 それで、というのです。
「凄いと思いますよ」
「そうなんだね」
「遊びを考えることがお仕事なら」
「それを日本人がすると」
「凄いと思いますよ」
「しかも日本人は職人気質だからね」
 それがかなり強いです、日本人は。
「凝ってね」
「そのこともありますから」
「じゃあ楽しんで来ようかな」
「ただ見守るだけじゃなくて」
「僕も余裕があればそうさせてもらうよ」
 是非にと言ってです、そのうえで。
 先生は動物の皆と一緒に八条テーマパークに来ました、するとそこにはなのでした。
 もうお静さんが人間のお姿でいました、お静さんは先生一行を見て笑顔で言いました。
「おはようございます」
「うん、おはよう」
 先生はお静さんに帽子を取って礼儀正しく答えました、そのうえで。
 一礼しました、そして動物の皆もお静さんに挨拶をしました。お静さんもぺこりと頭を下げてそれからなのでした。
「実はお嬢様のご両親、祖父母の方々にはお話していまして」
「今日一日はだね」
「はい、お嬢様を頼むと言われています」
「お店を空けてもいいんだね」
「旦那様と奥様がおられるので」
 あの女の子のご両親がです。
「大丈夫です」
「ならね」
「はい、今日はです」
「お静さんがお二人のところにいて」
「そしてです」
 そのうえで、というのです。
「デートを成功させて」
「そしてだね」
「告白までもっていきますよ」
「それじゃあね」
「見守っていて下さいね」
「それでトラブルがあれば」
 その時のこともお話する先生でした。
「その時は」
「お願いしますね」
「うん、任せて」
「その時はね」
 動物の皆がお静さんに答えます。
「僕達がいるから」
「僕達それぞれの力でね」
「色々なトラブルはどけていくよ」
「お二人が気付かないうちにね」
「そうしていくから」
「恋愛にトラブルは付きものなのよ」
 ここでこうも言うお静さんでした。
「何かとね」
「じゃあ僕は皆の司令塔になるのかな」 
 先生は少し考えるお顔になってこう言いました。
「今回は」
「うん、先生はいつも通りね」
「私達のまとめ役をして」
「何かあればね」
「知恵を貸してね」
「考えさせてもらうよ」
 そして指示を出させてもらうというのです。
「僕の出来る限りのことをね」
「うん、じゃあね」
「それじゃあね」
「頼むよ、いつも通り」
「じゃあそろそろお二人が来られるから」
 お静さんはご自身の左手の時計を見て言いました。
「私は姿を消して」
「それではね」
「うん、今からよ」
 こうお話してでした、そのうえで。
 お静さんはお姿を消してでした、それから。
 お二人が来ました、先生達もお二人を確認してです。
 そっと隠れました、それから。
 先生にです、ジップがささやきました。
「じゃあ今からだね」
「うん、今からね」
「テーマパークの中に入って」
「それからね」
 是非にというのです。
「あの二人とお静さんを見守るよ」
「そういうことでね」
「ただ」
「ただ、だね」
「僕達が目立たない様にはね」
 このことに関してはというのです。
「ちゃんとしていこうね」
「結構先生って目立つのよね」
 ダブダブが先生に言います。
「いつも正装だし」
「正装じゃないとね」
「先生としてはなのよね」
「うん、外出の時は」
 それこそお外に出る時はです。
「いつもね」
「そう、けれどね」
「目立つことはだね」
「否定出来ないから」
「そういえば皆ね」
 ここで先生も入口の人達を見て気付きました。
「正装じゃないね」
「ラフな服装ばかりだね」
 ガブガブもこのことを指摘します。
「スーツに帽子の人はいないよ」
「僕だけだね」
「先生は本当にいつも正装なのよね」
 ポリネシアも言うのでした。
「イギリス紳士らしく」
「紳士でありたいとは思っているけれどね」
「服装もよね」
「うん、学者らしい服装だけれど」
 この服装にしているけれど、というのです。
「ただそれがね」
「日本ではね」
「目立つね」
「いつも正装の人がいないのよ」
 日本には、とです。ポリネシアも指摘するのでした。
「けれどそれが先生だから」
「いいんだ」
「そう、隠れながらいきましょう」
「気をつけてね、先生」 
 トートーも先生に囁きます。
「僕達も目立たない様にするから」
「それじゃあね」
「じゃあ行こう」
 ホワイティが先生達を急かしました。
「これからね」
「うん、テーマパークの中にね」
「あの二人も今から中に入るし」
 既にお静さんは物陰に入ってそこで一旦姿を消してなのでした。お二人のところに行って囁くことをはじめようとしています。
「それじゃあね」
「今からね」
「行こう」
「さあ、こっそりと行こうね」
 チーチーもこう言って先生を急かします。
「二人を見守りね」
「わかったよ」
 先生も笑顔で頷いてでした、そのうえで。
 皆で一緒に行くのでした、そして。
 先生達もテーマパークの中に入りました。そうしてテーマパークのその中に入ってです。先生は目を見開いてこう言いました。
「へえ、こんな場所なんだ」
「あれお城だよね」
「欧州のだよね」
 動物達は入ってすぐに正面に見えたその見事なお城を指差しました。
「あれはね」
「いい造りだね」
「大きいし奇麗で」
「イギリスのテーマパークにもないよ」
「宮殿みたいな」
「いいお城だね」
「うん、いきなり凄いね」
 先生もそのお城を観つつ感嘆するのでした。
「あんなものがあるなんて」
「そうだね、いいね」
「いきなり夢の国に来たみたいだよ」
「童話みたいなね」
「そんな世界に」
「しかもだよ」
 ここで老馬が先生に言うとでした。
 周りからです、ハムスターや猫、兎に犬の着ぐるみを来た可愛らしいマスコットが来てです。皆に挨拶をしてきました。
「ようこそ、八条テーマパークに」
「待っていたよ」
「今日は思う存分楽しんでね」
「そうしていってね」
「先生も」
「あれっ、僕のことを知ってるのかな」
 マスコット達に言われてです、先生は目を瞬かせて応えました。
「そうなんだ」
「いやいや、先生有名人ですから」
「八条学園の中でも」
「ここは学園の関係者がいつも出入りしてますんで」
「高校生や大学生の子がアルバイトに来てるんですよ」
「動物園や植物園からヘルプの人も来ます」
 こうしたことをです、先生にお話するのです。
「その人達からお話を聞いてますから」
「先生のことは」
「だからですよ」
「僕達も先生のこと知ってるんです」
「そうなんですよ」
「そうなんだ、僕は有名人なんだ」
 このことも知った先生でした。
「意外というか」
「今日は楽しんでいって下さい」
「いつも一緒のその子達と一緒に」 
 動物の皆も見つつ言うのでした。
「是非共」
「楽しんで下さいね」
「それじゃあこちらも」
 お二人のことは内緒にしてです、先生はマスコットの皆に応えました。
「そうさせてもらうよ。ただ」
「ただ?」
「ただっていいますと」
「僕は普通のお客さんだから」
 このことを言うのでした。
「だからね」
「じゃあこうしてですか」
「特別扱いはですか」
「しないでくれと」
「そんなことをされたら困るよ」
 これまた先生らしいお言葉でした。
「普通にね、お願いするよ」
「わかりました、それじゃあ」
「普通にですね」
「先生と言わないで」
「その様に」
「そうしてね、他の皆にも伝えてね」
 テーマパークの従業員の人達にというのです。
「それに今は隠れたいから」
「あっ、何か事情がですか」
「おありで」
「だから頼むよ」
 こうマスコットの中の人達にお話してでした、先生は特別扱いは止めて欲しいとお願いしてなのでした。そのうえで。
 皆と一緒にです、お二人を探しました。するとです。
 すぐにです、ジップがお鼻をくんくんとさせてそのうえででした。ジャットコースターの方を見て先生に言いました。
「あっちだよ」
「あっ、ジェットコースターだね」
「うん、あっちからね」
「二人の匂いがするんだね」
「お静さんのものもね」
 ジェットコースターの方からというのです。
「するよ」
「それじゃあだね」
「あっちに行こう」
「うん、ただね」
 ここで、なのでした。先生は。
 少し暗いお顔になってです、こう言うのでした。
「僕はジェットコースターとかは」
「ああした場所はなんだ」
「あまりね」
 どうにもというのです。
「好きじゃないから」
「苦手なんだ」
「うん、だからね」 
 それで、というのです。
「乗ることはね」
「しないんだね」
「乗り場のところでね」
「二人を待ってだね」
「見守るよ」 
 そうするというのです。
「ここはね」
「そんなに無理して乗ることはね」
「ないしね」 
 チープサイドの家族がその先生に言います。
「僕達が見ておくから」
「先生はね」
「ここで見ていてくれたら」
「それでいいわよ」
「そうなんだ、じゃあ」
 先生はチープサイドの家族の言葉を聞いてほっとして言うのでした。
「僕はここにいるよ」
「うん、じゃあね」
「先生はここにいてね」
「僕達が二人見ておくから」
「安心してね」
 こうしてでした、お二人がジェットコースターに乗っている間は鳥の皆が見守ってでした、お二人がジェットコースターから降りてから先生に言いました。
「特にね」
「おかしなことはなかったわ」
「お静さんはずっとお嬢さんの肩にいてね」
「時々囁いてて」
「どうすべきかね」
「言っていたわよ」
「そうなんだ、お静さんもしっかりしてるんだ」
 先生はそのことも聞けて笑顔になりました。
「それは何よりだよ」
「うん、じゃあね」
「これからもね」
「このまま見ていこう」
「お二人をね」
「うん、ただね」
 ここでチーチーが先生に囁きました。
「何かガラの悪い人達がいるよ」
「何処にかな」
「うん、あそこだよ」
 こう言ってです、先生達から見て右手を指し示しました。するとそこにいたのは如何にもという感じの人達です。
 その人達を見てです、先生も言いました。
「うん、あの人達はね」
「あまり、だよね」
「いい人達じゃないね」
「所謂チンピラ?」
「そういった連中だよね」
 オシツオサレツも言います、その人達を見て。
「もう目つきが違うね」
「悪い目つきしてるよ」
「ああした人は本当にだね」
「何処にもいるね」
「気をつけよう」 
 先生も皆に言うのでした。
「ああした人達はね」
「うん、何をするかわからないから」
「だからね」
 オシツオサレツも先生に応えます。
「ここはね」
「しっかりとね」
「あの連中がお二人のところに行かない様に」
「目をつけられたらね」
「その時はね」
「僕達で何とかしよう」
「そうだね、どんな悪いことをしても平気な連中もいるんだよ」
 世の中には、です。
「ならず者の中でも特にね」
「性質の悪い連中がね」
「いるからね」
「そう、だから注意しよう」
 先生も警戒する目になっています、そのガラの悪い人達を見つつ。
「何も無い様にね」
「若し何かしようものなら」
 ジップも言います。
「その時はね」
「ジップがかな」
「やっつけていい?」
「いや、ここはね」
「そうしないの?」
「暴力は駄目だよ」
 それは先生の一番嫌いなものの一つです、誰に対しても暴力は振るってはいけないというのが先生の信条です。
「何があってもね」
「あっ、先生がいつも言ってる」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「ここはね」
「暴力を使わずに」
「他の方法でいこう」
「そうするんだ」
「その時はね、それにね」
 さらに言う先生でした。
「まだ彼等は何をしようともしていないから」
「まだ、だね」
「しようとすれば動くけれど」
 お二人に、です。
「他の人達に対してもそうだけれど」
「まだ何をしていないから」
「こちらも何もしないでおこうね」
「そうするんだね」
「そう、もうその時のことは考えているから」
 先生の頭の中にしっかりとあるというのです。
「だからね」
「万全だね」
「皆がいてくれるから」
 先生は微笑んで皆にも言いました。
「安心していこう」
「うん、じゃあね」
 ジップも納得して頷きました、そして。
 皆はそのよくない人達に警戒しつつです、お二人を追うのでした。お二人はコーヒーカップやメリーゴーランド、それに小劇場にも行きました。
 小劇場の中で、です。先生は舞台がはじまる前に皆に言いました。
「ここは暗いから」
「うん、何があるかわからない」
「そうした場所だよね」
「よく見張っておこう」
 こう言うのでした。
「ここはね」
「うん、ここはね」
 トートーが先生に言ってきました。
「僕の出番だね」
「そうだね、トートーは夜目が利くからね」
「梟だからね」
 夜は何といってもです、この鳥です。小劇場は暗いので夜と思ってもいいのです。
「任せてね」
「頼む」
「うん、そういえばね」
「何かあったのかな」
「さっきの連中だけれど」
 トートーは小劇場の中を見回しつつ先生に言いました。
「いるよ」
「あのガラの悪い人達が」
「うん、ここにもね」
「偶然かな」
「そうじゃないかな」
 トートーはその大きな目をくるくるとさせつつ先生に答えました。
「少なくとも今はね」
「あの子達に目をつけているかどうかは」
「断定出来ないよ」
 そうだというのです。
「まだね」
「決め付けはね」
「絶対によくないよね」
「それはね」
 先生が絶対にしないことの一つです。
「じっくりと見てね」
「そのうえで判断しないとね」
「うん、駄目だからね」
「じゃああの人達も」
「まだこれからだよ」
「しっかりと見て」 
 そして、と言うトートーでした。
「どうしようかってね」
「決めよう」
 先生もこう言うのでした。
「それからね」
「見込み捜査とかはよくないしね」
「こうしたことはシャーロック=ホームズというか」
 むしろと言う先生でした。
「ヴァン=ダイク博士かな」
「先生はそっちのタイプかな」
 ガブガブが言ってきました。
「探偵だと」
「ブラウン神父って言われたことはあるよ」
 先生はガブガブに微笑んでこうも言いました。
「そうもね」
「外見から?」
「うん、性格は違うって言われたけれどね」
「そうしたこともあったんだ」
「少なくともホームズと言われたことはないよ」
 先生は笑ってこうも言いました。
「そうしたことはね」
「まあ先生はね」
  ダブダブが笑ってこう返しました。
「ホームズではないわね」
「うん、自分でもそう思うよ」
「全く似ていないわ」
「あんなスマートで天才肌じゃないよ」
 自分でもこう言うのでした。
「そこはね」
「そうよね」
「こつこつとね。確かにね」
「先生はものごとを進めていくから」
「フレンチ警部かな」
 先生はこの人の名前も出しました。
「僕は」
「天才じゃないけれどこつこつだね」
 チーチーも先生に笑って言いました。
「そこは先生と同じだね」
「そうかもね」
「じゃああの人達も」
「うん、じっくりとね」 
「見てだね」
「若しあの子達に何かしようとしたら」
 その時はというのです。
「止めようね」
「うん、それじゃあね」 
 チーチーも先生の言葉に頷いてでした、今は様子を見るのでした。二人を見守りながら。
 上演されたのは四人のそれぞれの色の衣装、妖精のそれを模した服を着た女の子達が歌って踊ってです。そこから劇もしてです。
 着ぐるみ達、今度は鰐やアライグマのその人達が出て来てでした。軽くヒップホップみたいなダンスをします。それから女の子と着ぐるみ達が劇をしました。それを見てです。
 先生は唸ってです、動物の皆に言いました。
「いや、歌のダンスも演劇もね」
「いいね」
「中々だよね」
「衣装のデザインも色もいいし」
「女の子達も交わしいしね」
「いいね」
「レベル高いわよ」
 皆もこう言うのでした。
「これは」
「うん、そうそうない位に」
「小劇場っていうけれど」
「レベル高いね」
「だからお客さんも多いんだ」
「そうなのね」
「大人も子供も楽しめるね」
 先生は微笑んでこうも言いました。
「いや、いいもの観たよ」
「これは楽しめたね」
「思ったよりも遥かに」
「また来たいね」
「是非ね」
「これだけでもね」
 先生も笑顔です、そのうえでの言葉です。
「このテーマパークはいいね」
「うん、じゃあね」
「これが終わったらね」
「その後はね」
「またあの子達をね」
「見守ろう」
「さて、お静さんはどうしてるかな」
 先生は自分達からかなり前の列にいるお二人を見つつ言うのでした。そこにいる筈のお静さんも観ています。
 そしてです、こうも言うのでした。
「一体」
「大丈夫だと思うよ」 
 老馬がその先生に答えました。
「お静さんだからね」
「そのことはだね」
「しっかりとしてくれているよ」
「お静さんだからだね」
「本当にしっかりとしてるから」
 そうした猫さんだからだというのです。
「ちゃんとやってくれているよ」
「それじゃあ」
「お二人の恋路はね」
「お静さんに任せて」
「そしてね」
 そのうえで、というのです。
「僕達はね」
「見守ることだね」
「そうしよう」 
 こうお話してでした、先生達はお二人を見守りいざという時に備えるのでした。そして劇が終わってからです。
 お二人は小劇場を出ました、ガラの悪い人達もです。
 外に出ました、ガラの悪い人達はといいますと。
「ああ、別の方に行くね」
「お二人とはね」
「正反対の方に行ったね」
「あっちは射的場だよ」
 ガラの悪い人達はあちらに行ったというのです。
「そっちに行ったよ」
「お二人はミラーハウスに行ったよ」
「そっちの方にね」
「そう、ミラーハウスなんだ」
 先生はそう聞いてでした、少し考えてからです。
 皆にです、こうも言ったのです。
「それじゃあね」
「僕達もだね」
「ミラーハウスに行って」
「それでだね」
「見守るんだね」
「そうしよう、それじゃあ行こう」
 そのミラーハウスにです、こうお話してでした。
 先生達はお二人について行ってミラーハウスまで来ました、そして中に入るところで。
 先生は老馬とオシツオサレツにはです、こう言いました。
「申し訳ないけれど君達はね」
「あっ、この中にはなんだ」
「入られないんだ」
「そうなんだ」
「うん、大きいからね」
 体格の問題で、というのです。
「だからね」
「そうなんだ、それじゃあね」
「今はだね」
「この出入り口で待って」
「それでだね」
「二人を見守るんだね」
「そうしてくれるかな」
 こう老馬とオシツオサレツに言うのでした、三つの頭に対して。
「ここは」
「うん、わかったよ」
「それじゃあね」
「僕達はここで待ってるよ」
 老馬とオシツオサレツも頷いてでした、そのうえで。
 二匹が出入り口で待って、ただ目立つので木の陰にそっと隠れてです。お二人が出て来た時に見つからない様にしてです。
 先生は二匹に一時のお別れを告げてからでした、他の皆と、ミラーハウスに入りました。そのミラーハウスに入りますと。
 中は鏡貼りの迷路でした、先生達は自分達の姿を見ながらそのうえで迷路を進んでいきます。その中で、です。
 先生の傍を飛んでいるチープサイドの家族がです、こんなことを言ってきました。
「いや、ここはね」
「何ていうかよ」
「僕達の姿が見えていて」
「変わったところね」
「ちょっと速く飛ぶと僕達自身にぶつかりそうだし」
「危ない場所ね」
「うん、だからね」 
 それでだとです、先生もチープサイドの家族に言います。
「気をつけてね」
「だから遅く飛んでるんだ」
「むしろ先生のポケットの中にいた方がいいかしら」
「そうしてこの先を進んだ方がいい」
「私達はそうかしら」
「何時でも入っていいよ」
 先生はチープサイドの家族にこう返しました。
「僕のポケットならね」
「そうなんだ、それじゃあ」
「今から入らせてもらうわね」
「それでこの中を進んで」
「やっていけばいいのね」
「うん、じゃあね」
 先生のお言葉を受けてです、チープサイドの家族は先生のスーツのそれぞれのポケットに入りました。そして。
 先生はさらに進みました、するとです。
 今度は先生の右肩に止まっているポリネシアがです、こう言ってきました。
「いや、迷うわね」
「何処をどう歩いているのか」
「うん、わからなくなるわ」
「ポリネシアは迷路は苦手なんだね」
「何かね」
 どうもと答えるポリネシアでした。
「戸惑うわね」
「普通の迷路じゃないしね」
「そう、鏡じゃない」 
 全ての壁がです。
「ミラーハウスだから」
「そうだね、だからここは普通の迷路よりもね」
「難しく感じるわ」
「それがミラーハウスの面白いところなんだ」
「普通の迷路じゃないから」
「そうなんだ、余計にね」
 先生はポリネシアに微笑んで答えました。
「だからいいんだよ」
「いいのね」
「人気があるんだ」
「そうなのね」
「うん、だからお二人も入ったんだ」
「普通よりも難しい迷路を」
「そうしてるんだ」
 こうお話してでした、そのうえで。
 先生達も迷路を進んでいきます、そして出口に着きますと。
 お二人の姿は見えません、それで先生は出入り口の木の陰に隠れていた老馬とオシツオサレツのところに行ってでした。
 そのうえでお二人のことを尋ねるとでした。
「あの子達はまだだよ」
「まだ出ていないわよ」
「先生達の方が先だったよ」
「そうなんだ、僕達の方が先だったんだ」
「うん、だからね」
「ここで待っていればね」
「お二人も出て来るよ」
 そうなるというのです、こうお話してでした。
 そして、です。先生は二匹のお話を聞いて言いました。
「じゃあ今はね」
「今はだね」
「二人を待って」
「そしてよね」
「また見守る」
「そうするんだね」
「そうしよう、ここはね」
 こう言ってでした、先生は老馬とオシツオサレツがいたその木の陰に他の皆と一緒に隠れてでした。そのうえで二人を待ちました。
 すると程なくしてお二人が出て来てです、そのうえで。
「ちょっと時間がかかったね」
「そうね」
 女の子は少し俯き加減になって男の子に答えました。二人で横に並んで進んでいます。
 その女の子を見てです、先生は皆に言いました。
「成程ね」
「成程?」
「成程っていうと」
「うん、あの娘かなりお洒落しているね」
 上は赤いセーターの下はピンクのブラウスです、下は黒のすらりとしたズボンにお洒落な靴です。服のデザインはかなり整っています。
 男の子もお洒落をしていますがです。
 それ以上にです、女の子のお洒落はかなりのものです。それで。
 先生は皆にです、こう言ったのでした。
「あの娘本気だね」
「本気でなんだ」
「このデートに挑んでるんだ」
「そうなんだね」
「それは男の子もだけれど」
 それでもというのです。
「あの娘はもうこのデートでね」
「このデートで」
「っていうと」
「うん、あの娘の方からね」
 こう察しているのでした、先生は。
「言うつもりかもね」
「それがわかるんだ」
「先生は」
「そうなんだ」
「はっきりと」
「はっきりとじゃないけれど」
 それでもというのです。
「あの娘はそう考えてるね」
「ううん、そうなんだ」
「女の子の方から告白するんだ」
「少なくともあの娘はそのつもりなのね」
「自分の方から」
「サラに言われたんだ」
 先生の妹さんのその人にというのです。
「女の子がお洒落をする時は勝負の時だって」
「自分から勝負を仕掛ける」
「まさにその時なの」
「まさに」
「そうなんだ」
「そうした時なんだね」
「そう言われたんだ、女の子も自分から言う時があるって」
 先生がここでお話するのはこのことでした。
「積極的にね」
「そういえばサラさん自分からお嫁に行くって行って出て行ったからね」
「それで実際に結婚したしね」
「それで家庭を持ってね」
「今もご主人を引っ張ってるし」
「そういうの見たらね」
「実際にそうなんだね」
 動物達もサラのことを思い出して納得するのでした。
「そういえばそうだね」
「あの人気が強いしね」
「自分から言うこと多いし」
「女の人から言うこともね」
「あるんだね」
「日本の女の子もね」
 先生はこうも言うのでした。
「あまり積極的な娘がいないみたいだけれど」
「イギリスと比べたら」
「そうなんだね」
「うん、けれどね」
 それでもというのです。
「言う時、言う人はね」
「ちゃんとなんだ」
「言うんだ」
「それでなんだ」
「願いを適えるんだね」
「あの娘もそうみたいだね」
 先生は妹さんの言葉を思い出しつつ皆にお話します。
「どうやらね」
「大人しいと思ったら」
「そうなんだ」
「意外と積極的」
「そうなんだね」
「いや、大人しいとは思うよ」
 あの女の子の本質はです。
「けれどね。お静さんが必死に囁いてね」
「それでなんだ」
「お静さんに押されて」
「それで普段は大人しくても」
「今回は」
「うん、積極的なんだよ」 
 そうなっているというのです。
「自分からね」
「てっきりお静さんならね」
 ここでジップが言うことはといいますと。
「男の子の方から告白する様にするって思ってたけれど」
「うん、僕もそうじゃないかなって思っていたけれど」
「それがなんだね」
「女の子の方からってなったみたいだね」
「そうみたいだね」
「あの娘は必死だよ」
 先生は女の子のことを考えつつ皆にこうも言いました。
「普段は大人しいけれどああして必死になってるから」
「だからなんだね」
「もう必死で」
「それでなんだ」
「もう勇気を振り絞って」
「お静さんに言われて」
「そうみたいだね、けれどね」
 こんなことも言う先生でした。
「女の子からの告白の方がいいかな」
「いいっていうと?」
「それはどうしてなの?」
「女の子から告白した方がいいっていうと」
「どうしてなのかな、それは」
「何故かしら」
「うん、女の子が勇気を出して告白するとね」
 そうしてきたらというのです。
「男の子は、ましてそれが好きな相手なら」
「ああ、断れないっていうのね」
 ダブダブが言いました、ここで気付いて。
「そういうことね」
「そうだよ」
 それで、というのです。
「これもサラが言っていたことだけれど」
「ううん、またあの人なのね」
「そうなんだ、まさかね」
「サラさんの言うことがここまで役に立つとは」
「思わなかったよ、恋愛のことはね」
 先生にしてみると、というのです。
「僕に縁はないと思っていたから」
「そこでそう言うのがね」
「困るんだよね」
「先生はそうした人だから」
「どうしてもね」
 皆はここでまた苦笑いを浮かべるのでした。
「全くね」
「やれやれよ」
「先生らしいって言えばらしいけれど」
「それでもね」
「先生もね」
「もっと恋愛についてね」
「実践がないと」
 こう言うのですがけれどです。
 先生は笑ってです、こう言うだけでした。
「ははは、僕には縁がないことだよ」
「またそう言う」
「全く、仕方ないわね」
「こと恋愛についてはそう言うんだから
「いつもね」
「実際にそうだしね、さて」
 先生はお二人を見つつでした、話題を変えました。今度のお話はといいますと。
「二人はスナックコーナーに行ったよ」
「あっ、何か食べに」
「それにだね」
「うん、じゃあ行こうか」
 先生達もというのです。
「ここはね」
「それじゃあね」
「今度はね」
「そこに行って」
「それでかな」
「結構早いけれど」
 お昼にはというのです。
「僕達もね」
「食べようか」
「あとは」
 ここでチーチーがこんなことも言いました。
「三時になれば」
「うん、ティータイムだね」
「先生はそれがないとね」 
 もうそれこそというのです。
「駄目だからね」
「そう、その用意はね」
「出来てるの?」
「僕が持ってるよ」
 老馬がチーチーに答えました、見ればその背中にです。
 大きなバスケットボックスがあります、それに水筒もです。チーチーもその二つを見て納得して言いました。
「その中にだね」
「うん、今日のティーセットとね」
「お茶に使うお湯があるんだね」
「だからね」
 それで、というのです。
「安心していいよ」
「そのことは」
「トミーが持たせてくれたんだ」
 先生も目をにこやかにさせてお話します。
「日本のテーマパークには僕がいつも食べているみたいなティーセットがない場所も多いだろうって言ってね」
「日本人はイギリス人程ティーセットは食べないからね」
 ガブガブがこのことを指摘しました。
「おやつはあるけれど」
「おやつもいいけれどね」
 先生は実際こちらも嫌いではありません。
「ジャパニーズスタイルのティーセットも」
「先生最近そちらもお気に入りなのよね」
 ポリネシアも言います。
「実際に」
「うん、日本のお茶にね」
 紅茶と違ってです、この場合は。
「それで羊羹、お団子、お饅頭とかね」
「そうしたセットでね」
「食べることもいいけれど」
「今日はなのね」
「ケーキにシュークリーム、クッキーだよ」
 この三つがというのです。
「三段セットだよ、皆の分もあるよ」
「そうそう、ここでね」
「絶対に僕達のことを忘れないのがね」
「先生なんだよね」
「有り難いことに」
 動物の皆も先生のそのお言葉に笑顔になります。
「だから先生大好き」
「私達のこと絶対に忘れないから」
「だからね」
「いつも一緒にいたいんだよ」
「じゃあこれからね」
 先生はその皆にご自身も笑顔で応えます。
「スナックコーナーに行って」
「早いお昼をね」
「楽しもうね」
「そうしよう」
 勿論お二人に見付からない様にです、そうお話してでした。
 スナックコーナーに向かいました、そこでお昼を楽しむのでした。



とりあえず、今の所は特に問題もなくデートをしているな。
美姫 「そうね。途中、怪しい人は見かけたけれど」
特に何もなかったしな。
美姫 「このまま、すんなりと最後まで行くのかは分からないけれどね」
まあな。先生たちも見つからないように後を付けているし、多分大丈夫だろう。
美姫 「二人が上手くいくと良いわね」
だな。次回も待っています。
美姫 「待っていますね〜」



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