『ドリトル先生と二本尻尾の猫』




                       第七幕  想われ人の彼  

 先生は皆と一緒に女の子が好きなその人を見に行きました、具体的には彼が部活動でまだ残っている学校にです。
 動物の皆と一緒に向かってです、こう言うのでした。
「それじゃあね」
「うん、今からね」
「一緒に行ってね」
「そしてだね」
「皆でどんな人か確かめるんだね」
「そうしよう」
 こう皆に言うのでした。
「まずはどんな子か知らないと」
「あの娘に相応しい子か」
「いい子か、だね」
「確かめて」
「それからだね」
「そう、まずは見ることだよ」
 それが第一だというのです。
「だからね」
「うん、それじゃあ」
「行こうね」
 皆も頷いてでした、先生と一緒に女の子と彼が通っている学校に向かうのでした。そしてそこに着くとです。
 グラウンドでサッカーに興じている子達がいました、ジップはその子達を見て言いました。
「サッカーは日本でも人気があるね」
「そうだね」
 先生はジップのその言葉に頷きました。
「この国でもね」
「皆よくやってるよね」
「日本人もサッカー好きで嬉しいよ」
 先生は目を細くさせています。
「他のスポーツも盛んだけれど」
「ラグビーもやってるしね」
「テニスもね」
「ラクロスやクリケットはあまりないけれど」
 イギリスで盛んなこうしたスポーツはです。
「それでもね」
「イギリス人が好きなスポーツも盛んだね」
「それが嬉しいね」
「全くだよ、ただ」
「ただ?」
「日本人は他にも色々なスポーツを楽しむからね」
「野球とかバスケとか」
「うん、多彩だよ」
 楽しんでいるスポーツの種類が、というのです。
「そこまた凄いんだよね」
「日本人はスポーツ好きなんだね」
「かなり好きだね」 
 このことは間違いないとです、先生も言いました。
「どうやら」
「そうだよね」
「うん、それにね」
「それにだね」
「文化系も多いから」
 そちらもというのです。
「僕も研究させてもらっているよ」
「和歌とか茶道よね」
 ポリネシアが言ってきました。
「そうしたものよね」
「うん、日本文化は本当に凄い」
 実にとです、先生は唸るのでした。
「しかも他の国の文化まで勉強するから」
「余計にだね」
「凄い国だよ」
「独特の国だね」
「全く以てね」
 また言う先生でした。
「この国は本当に凄い国だよ」
「うん、それでだよね」
 ポリネシアがまた言いました、今度の話題はといいますと。
「この中からその子をね」
「探そう」
「はい、それならね」
 ここでお静さんがひらりと出て来ました。
「私の出番ね」
「あっ、来てくれたんだね」
「呼ばれて何とやらよ」
 お静さんは猫の姿で応えます。
「そろそろって思ってね」
「来てくれたんだ」
「そういうことよ。それでその彼は」
「うん、何処かな」
「あそこよ」
 こう言ってグラウンドでサッカーをしている少年達を指差すのでした。
「あそこにいるわ」
「サッカー部にだね」
「キーパーの子よ」
 右側のゴールを指差しての言葉でした。
「あの子がね」
「彼女の想い人なんだね」
「そうなの」
 まさにその通りだというのです。
「あの子がなのよ」
「ふうん、見たところ」
 先生はそのキーパーの子を見ました、見るとです。 
 背は普通位で髪の毛は短くしていてです、とても明るい顔立ちです。それでジャージ姿でゴールにいます。 
 そこまでざっと見てです、こう言ったのでした。
「明るい感じのね」
「いい子でしょ」
「うん、ただね」
「それは見た目で」
「もっと見たいね」
 その中身をというのです。
「じっくりと」
「そうしてよね」
「うん、どんな子か見極めて」
 そうしてというのです。
「どうしていくか考えていきたいね」
「慎重ね」
「それが先生の性分だから」
「慎重なことがね」
 お静さんにトートーとチーチーが言います。
「だからね」
「今回もなんだよ」
「その通りね、やっぱり先生は頼りになるわ」
 とても、とです。お静さんも言います。
「そうしたことまでおわかだから」
「それでだよね」
「お静さんも先生にお願いしたんだね」
「私人を見る目はあるのよ」
 お静さんは今度はガブガブとダブダブに答えました。
「伊達に長生きしていないから」
「長生きして沢山の人を見てきて」
「その目を備えたんだね」
 ガブガブとダブダブもわかったのでした、そうして。
 ホワイティはです、こう先生とお静さんに言いました。
「ここは僕が行こうかな」
「ホワイティが?」
「一体どうするの?」
「僕小さいし隠れやすいからね」
 鼠の特徴です。
「だからあの子の傍に暫くいて」
「それでだね」
「彼をじっくり見てね」 
 そうしてというのです。
「どんな人か見極めるけれど」
「あっ、それはいいね」
「そうよね」
 先生とお静さんはホワイティのその提案に思わず膝を叩かんばかりになってです。そのうえで応えました。
「やっぱり傍で見てるとね」
「わかるからね」
「じゃあここはね」
「貴方の提案でね」
「いってくれるんだね」
「そうしよう」
「それが一番よ」
 先生とお静さんはホワイティに笑顔で頷いて答えました、そして。
 ホワイティの案でいくことになりました、ですが。
 ホワイティだけでなくです、チープサイドの家族も言ってきました。
「ホワイティと一緒にね」
「私達もね」
「お空からあの子を見てね」
「そうしてね」
「見ていこうと思うけれど」
「どうかな」
「君達もだね」
 先生はチープサイドの家族にも応えました。
「そうしてくれるんだね」
「うん、そうしてね」
「彼がどんな人か見て」
「そしてね」
「先生にお話するから」
「よし、じゃあね」
 先生はチープサイドの家族の言葉も受けて笑顔で頷いてです。
 そうしてです、こう言いました。
「お願いするよ」
「任せてね」
「私達も頑張るから」
「それでね」
「先生に全部お話するよ」
「そういえば先生の周りにいる皆って」
 ここで、です。お静さんは先生の周りにいる動物の皆を見てからこう言いました。
「先生に隠すことないわね」
「うん、全部ね」
「お話してるよ」
「嘘も言わないよ」
 老馬とオシツオサレツがお静さんに答えました。
「だってね」
「僕達は先生が大好きだし」
「先生も僕達のことが大好きだからね」
 そうした固い絆があるからだというのです。
「隠しごとはしないよ」
「そして嘘も言わないよ」
「絶対にね」
「そういうことなのね。お互いに信頼しているから」
 それで、とです。お静さんもお話を聞いてです。
 そしてです、頷いて言うのでした。
「いい関係ね」
「僕も隠しごとや嘘は嫌いだし」
 先生も言うのでした。
「そんなことはしないよ」
「絶対にね」
「僕は紳士でありたいと思っているから」
 こう考えているからなのです。
「だからね」
「隠しごとも嘘もなのね」
「そういう考えなんだ。特に嘘は」
「言わないわね」
「そうする様にいつも務めているよ」
「それはとてもいいことだと思うわ」
 お静さんにしてみてもです、嘘を言わないことはというのです。
 そしてです、こうも言うのでした。
「世の中嘘吐きも多いから」
「そうそう、いるんだよね」
 ジップは顔を顰めさせてお静さんに応えました。
「何処でもね」
「日本にも多いわ」
「イギリスにもね」
 つまりどの国にもです、嘘を言う人はいるのです。
「いるよ」
「本当に何処にもいるのよね」
「そう、ただね」
 ここでこうも言ったジップでした。
「嘘を言うとね」
「目に出るわね」
「わかるんだよね、そういうことって」
 嘘を言っているかどうかは、というのです。
「目に本当に出るから」
「そうそう、わかるのよ」
 今度はポリネシアが言います。
「嘘を言い続けていると目も濁るし」
「人相も悪くなるわね」
 今度はお静さん自身が言いました。
「普通に」
「何か日本に会社の借金が二十億だの三十億だの四十億だの言ってた人がいたね」
 ポリネシアはこうしたこともお話しました。
「先生がこれは酷いって言ってたけれど」
「うん、自分の会社の株の売却だったね」
 先生も応えます。
「株を売らないって言っててね」
「それで売ってね」
「売ってから後で売るつもりだったって言ってたんだよ」
「完全に嘘よね、それって」
「明らかにね」
 まさにその通りだというのです。
「嘘だよ」
「そうよね」
「そもそも借金がね」
「十億単位で増えるって」
「おかしいじゃない」
 世間のお金のことには疎い先生でも言います。
「それって」
「十億って大きいわよね」
「それが増えるってね」
「嘘にしてもね」
「悪質だし」
 先生はさらに言うのでした。
「しかも言っている借金がどんどん増えていく」
「それお店でやったらアウトよ」
 お静さんも言ってきました。
「潰れるわよ」
「そうだよね」
「その社長さんの話なら私も知ってるわ」
 お静さんにしてもというのです。
「嘘吐きでしかも暴言ばかり言って他人のことなんかどうでもいいっていう」
「とんでもない人なんだね」
「あの社長会社をとんでもないことにするわよ」
 お静さんは眉を顰めさせて言うのでした。
「あの会社もう徹底的に傾くわ」
「嘘吐きが社長だから?」
「そう、大変なことになるわよ」
「潰れるかな」
「そうなるかもね」
 そうなることも有り得るというのです。
「何か色々悪いことが得意で誰も辞めさせられないけれど」
「最悪だね」
「絶対に社長になってはいけない人だったのよ」
 そしてその人が社長になってしまったからです。
「あの会社はね」
「とんでもないことになるんだね」
「私占いも出来るのよ」
「趣味でしてるのかな」
「そうなの、それであの会社と社長も占ったけれど」
「悪くない結果が出たんだね」
「占ってるこっちがびっくりしたわ」
 そのお静さんがというのです。
「本当にとんでもないことになってる会社で」
「とんでもない人なんだ」
「ええ、何度占っても悪い結果が出たから」
「嘘吐きって会社の社長さんとかにしたらいけないんだね」
「絶対にね」
「信用出来ないからね」 
 先生も言います。
「そして嘘ばかり言ってると恥も忘れるから」
「恥を恥を思わない人は怖いわよ」 
 お静さんはまた先生に応えました。
「どんなこともするから」
「恥を恥と思わなくなった時が一番怖いね」
「そう、そこから徹底的に腐るから」
「人間としてね」
「だから怖いのよね」 
「その通りだね」
 先生は真剣なお顔でお話するのでした。
「僕はそんな人にはなりたくないから」
「殆どの人がそうよ」
「だからね」
「先生は嘘を言わないのね」
「そんな人になりたくないから」
 絶対に、というのです。
「気をつけているんだ」
「最初から嘘を言わないことね」
「そうしているんだ」
「それはとても素晴らしいわ、やっぱり先生はね」
 どうした人かというのです。
「紳士よ」
「そう言ってくれるんだ」
「ええ、本当の紳士よ」
 お静さんは微笑んで先生に言いました。
「先生はね」
「だといいけれどね」
「ええ、やっぱり私の目に狂いはないわね」 
 お静さんは微笑んでまた言うのでした。
「先生は信頼出来て頼りになる人よ」
「そう、お静さんはいい目をしてるよ」
「よく先生を頼ってきたよ」
 動物の皆もお静さんに太鼓判を押しました。
「先生は何があっても信用出来る人だから」
「むしろね」
「騙されやすい人だから」
「世間のことには疎いからね」
「嘘吐きのことはわかっていてもね」
 そうしたことはわかっていてもです、先生は世間のことに疎いので。
 それで、です。嘘を言う相手にはです。
「すぐに騙されるから」
「それで詐欺に遭ったりするから」
「傍にいて心配になるんだよ」
「実際に騙されかけてね」
「大変なことになりかけたりしたし」
「僕達がいないとね」
 それこそ、です。
「心配で見ていられないよ」
「本当に先生お一人だと」
「どうなるのか」
「不安で仕方ないわ」
「そうね、先生ってね」
 お静さんも先生も見てお話しました。
「人をすぐに信じてしまう人ね」
「人を見る目はあるんだよ」
「けれど人が良過ぎるんだ」
「だからね」
「人を信じ過ぎてしまうんだ」
「悪い人もね」
「ついついね」
「そこが先生の困ったところね」
 お静さんは腕を組んで先生を考えるお顔で見ています。
「気をつけないとね」
「そう、けれどね」
「先生が頼りになる人であることは事実だよ」
「嘘は言わないし」
「誠実だからね」
 それでしっかりと動いてくれるからです、先生は頼りになる人なのです。そして動物の皆もいるからです。
 ホワイティとチープサイドの家族がまた言いました。
「じゃあね」
「僕達がね」
「暫く彼を見ていくから」
「大体一週間かな」
「それ位だね」
「うん、一週間ずっと見ているとね」
 どうかとです、先生も言います。
「どういった人かわかるから」
「だからだね」
「ここはだね」
「私達が一週間ずっと見て」
「そうしてね」
「どんな人か見極めるんだね」
「そうしてくれると有り難いよ」
 先生はこう言ってホワイティ達にお願いしました、そして
 トートーもです、先生に言うのでした。
「僕もね」
「トートーもだね」
「そう、夜は僕だよ」
 梟である彼もというのです。
「僕が見ると。それとね」
「うん、ホワイティ達は小さいからね」
「蛇とかが怖いじゃない」
 こうした生きものに襲われたらというのです。
「だから護衛としてね」
「一緒にだね」
「いるよ」
 ホワイティの傍にというのです。
「だからね」
「それでだね」
「そう、一緒にいてね」
 そしてというのです。
「皆を守るよ」
「そうしてくれるんだね」
「うん、任せてね」
「あと。皆に食べものを届けたりするのは」
 今度はチーチーが名乗り出ました。
「僕がするよ」
「うん、チーチーならね」
 先生はチーチーにも応えました。
「大丈夫だね」
「こうしたことは僕だよ」
「頼むよ。それじゃあ一週間後」
 彼をじっくり見てからというのです。
「どういった子か見極めて」
「そしてだね」
「考えていこう」
 二人のことを具体的にどうするかです。
「それからだよ」
「それじゃあね」
 こうしたことをお話してでした、今は。
 先生は皆と一緒に学校を後にしてお家に戻りました。そして晩御飯を食べながらです。トミーに今日のことを全部お話しました。
 トミーはコロッケで御飯を食べながらです、先生に言いました。
「そうですか、それじゃあ」
「まずはね」
「彼がどんな人か見て」
「そしてついでにね」
 このことはお家に帰ってから思ったことです。
「女の子の方もね」
「もう一度ですね」
「見てね」
「どんな娘か確かめてですね」
「お話を進めていこうと思うんだ」
「チェックにチェックを重ねる」
「論文を書いた後と同じだね」
 先生は笑ってこうしたことも言ったのでした。
「論文もね」
「書いた後で、ですね」
「何度も検証してね」
「そうしてですね」
「発表しないと駄目だからね」
「だからですね」
「あの娘のこともね」
「チェックして」
「やっていくよ」
 こうお話してなのでした、先生は男の子だけでなく女の子のことも確かめるのでした。そうしてなのでした。
 一週間後のホワイティ達の報告を待つことにしました、まずは一週間でした。
 トミーにそのことをお話してからです、先生はトミーにあらためて尋ねました。
「それでだけれど」
「何ですか?」
「うん、今日の晩御飯だけれど」
「コロッケですね」
「これは商店街で買ってきたものだね」
「そうですよ」
 トミーは先生ににこりと笑って答えました。
「美味しいって評判でしたから」
「買って来てだね」
「今晩のおかずにしました」
 こう先生にお話するのでした。
「買って来たものはそれで」
「他のおかずはだね」
「お味噌汁やサラダは」 
 そういったものはといいますと。
「僕が作りました」
「そうしてくれたんだね」
「あとデザートにはオレンジを買ってきました」
「いいね、そちらもなんだ」
「はい、ありますから」
「今日もご馳走だね」
「何かいつもですよね」
 トミーもにこにことして応えます。
「ご馳走ですね」
「そうだね」
 先生も笑顔で応えます、そのうえで。
 トミーにです、コロッケを見つつ言いました。
「それとコロッケで御飯を食べる」
「これもですよね」
「最高にいいですよね」
「うん、コロッケといえばね」
「あのフランス料理の」
「中がクリームのコロッケだね」
 このことは欧州、イギリスのことです。
「こうしたジャガイモが一杯中に入ったコロッケは」
「日本のコロッケですが」
「いや、これがね」
「食べるとですね」
「凄く美味しいね」
「御飯に合いますね」
「特にソースをかけると」
 先生は唸る様にして言いました。
「これがね」
「絶品ですね」
「コロッケ一個で御飯を何杯でも食べられる」
「そうですよね」
 本当に、とです。トミーはお箸でコロッケを切ってそのお箸でお口の中に入れて一緒に御飯を食べつつ先生に答えました。
「もう最高の美味しさですね」
「おかずで御飯を食べることは」
「日本の食べ方ですけれど」
「こんなに美味しいなんてね」
「想像していませんでしたね」
「しかもコロッケって欧州のものじゃない」
「そのはじまりは」
 所謂洋食です。
「それがこうして日本に入って」
「美味しいとはね」
「思いませんでしたね」
「本当にね」
「けれど日本人はね」
「この食べ方に辿り着きましたね」
「これは凄いことだよ」 
 とても、というのです。
「コロッケで御飯を食べるなんてね」
「そうですね、確かに」
「ハンバーグもそうだけれどね」
「凄く美味しいですね」
「全くだよ」
「僕も大好きです」
 トミーもこう言うのでした。
「洋食、コロッケやハンバーグで御飯を食べることが」
「フライもだね」
「そちらもいいですよね」
「欧州だとこうはいかないね」
「主食は主食ですから」
 つまりパンやジャガイモはそれはそれだけでなのです。
「おかず、メインディッシュで食べることは」
「ありませんね」
「そう、ないよ」
 欧州の食事ではです。
「そうしたことは。けれど」
「日本はメインディッシュで主食を食べますから」
「そうした食べ方になるんだよ」 
 まさにそれで、というのです。
「そうなるんだよ」
「そうですね」
「いや、それがこんなに美味しい食事の元になるから」
「嬉しいですね」
「本当にね。そういえば」
 ここでまた言う先生でした。
「僕達今はパンよりもね」
「御飯の方を食べていますね」
「そう、晩はもういつもだし」
 御飯を食べているのです。
「お昼だってね」
「御飯を召し上がられることがですか」
「凄く多くなったね」
「定食や丼もですね」
「うん、多くなったよ」
 そうなったというのです。
「とてもね」
「牛丼とかもですね」
「あれは凄く美味しいね」
 先生は牛丼についてもこう言いました。
「早い、安い、美味しいってね」
「三拍子揃っていますね」
「そう、だからね」
「先生は牛丼もお好きなんですね」
「うん、最近あれもよく食べるよ」
「お昼に」
「日本では牛丼はカロリーが高いって言われてるけれど」
 それでもだというのです。
「イギリスではね」
「ヘルシーな食事ですね」
「アメリカのそれと比べるとさらにね」
 カロリーが少なくてヘルシーなお料理だというのです。
「いや、美味しいしヘルシーだし」
「お好きですか」
「うん、定食もね」
 そちらもだというのです。
「好きだよ、お野菜も食べているしね」
「御飯と一緒に」
「本当に御飯を食べることが多くなったよ」
 日本に来てから暫く経ってというのです。
「そうなったよ」
「御飯をですね」
「そうだよ、朝だってね」
「そうそう、朝は」
「御飯を食べることがですね」
「多くなってきたね」
 朝食もです、先生は変わってきているのです。イギリスにいた時はパンかオートミールでしたがそれが、なのです。
「とてもね」
「そうですよね」
「食べると身体も温まるし」
「パンと比べても」
「いいよ、そういえば昔日本でね」
 ここで先生は御飯を食べつつです、そのお顔を少し曇らせてです。
 そうしてです、こうしたことも言いました。
「先進国は何処もパンだとかお米を食べると頭が悪くなるとか言った大学の教授がいたね」
「それ科学的根拠は」
「ないよ」
 全く、とです。先生はトミーにはっきりと答えました。
「そんなことはね」
「それで何でそんなこと言ったんですか」
「どうもとある場所からお金を貰ってたんだよ」
「お金をですか」
「それで嘘を言っていたんだよ」
「学者がそんなことをしたら」
「もう学者じゃないよ」
 もうそれで、です。学者から嘘吐きになってしまうというのです。
「それで戦後日本ではパンを沢山食べる様になったけれど」
「御飯をないがしろにして」
「そうした話もあるんだ」
「とんでもないお話ですね」
「うん、日本はとてもいい国だけれど」
 それでもというのです。
「知識人はね」
「あまり、なんですね」
「よくない人が多いね」 
 そうだというのです。
「僕が見たところね」
「そこが困ったところなんですね」
「第二次世界大戦が終わってから」
 その時を境にして、というのです。
「急に知識人の質が悪くなって」
「今もなんですね」
「日本の知識人とマスコミは世界でも最低だと思うよ」
 そこまで酷いというのです。
「テロを起こしたカルト教団の教祖を偉大な宗教家とか最も浄土に近いとか言った人が戦後最大の思想家って言われていた位だから」
「えっ、それ本当ですか!?」
 先生のそのお話にトミーは思わず目を丸くさせてしまいました。
「テロを起こした人をですか」
「それで多くの犠牲者が出たよ」
「そんな人を偉大とかですか」
「本気で言っていたんですよ」
「それは絶対におかしいですよ」
 トミーは仰天を隠せませんでした、幾ら何でもそれはあまりにも酷いと思ってそれで。
「そんなことは」
「そうだよね」
「あの、そんな人がですか」
「戦後最大の思想家と言われていたんだよ」
「酷いなんてものじゃないですよ」
 今度はこう言ったトミーでした。
「それが戦後日本の知識人ですか」
「そうだよ」
「質が悪いなんてものじゃないですね」
「だからね」
「お金を貰って嘘を吹聴する教授もですか」
「いたんだよ」
 先生はあらためてこのお話をするのでした。
「そうなったんだよ」
「そうですか」
「僕はその思想家は信用出来ないよ」 
 とても、というのです。
「評価に値しないと思っているよ」
「その人の本も発言も」
「そうしたこと全てが」
「読む気もないしね」
「読む必要がないですか」
「うん、何しろその教祖はね」
 こちらの人はといいますと。
「テロで多くの人を殺しただけじゃなかったんだ」
「他にもあったんですか」
「うん、自分達の悪事を探そうとした弁護士の人を家族ごと殺したりしたし」
 この悪事のこともです、先生はお話しました。
「教団内部でも一杯人を殺してお金に汚くて自分だけいいものを食べたりとか女の人達と遊んだりとかばかりで」
「人間ですらないですね」
「そしてそんな人をね」
 それこそというのです。
「偉大だとか言っていたんだよ」
「そんな人こそを」
 それこそ、と言うトミーでした。
「馬鹿って言いますよね」
「その馬鹿な人が戦後最大の思想家って言われてたんだよ」
「それが戦後の日本の知識人ですか」
「マスコミはマスコミでどんな嘘も書いてきたしね」
「何か問題になっていますね」
「慰安婦のことでね」
「あれって記者がわざと嘘書いたんですよね」
「僕もそう見ているよ」
「何ていうか」 
 それこそ、とです。また言う先生でした。
「日本の場合は普通に働いている人達の方がずっと賢いんですね」
「その通りだよ」
「知識人やマスコミの方はどうしようもないんですね」
「うん、その人達だけがね」
 それこそ、というのです。
「特別酷いよ、学校の先生達もね」
「そうなんですね」
「そうなんだよ、日本にもね」
「困ったところがあるんですね」
「僕もそのことがわかったよ」
 日本に来てそうしてです。
「本当にね」
「日本にも悪い面がありますね」
「全部がいい国もないよ」
「そうした場所もですね」
「どんな場所にも人にもいい面と悪い面があるから」
 それで、とです。先生は言うのでした。
「日本もそうなんだ」
「イギリスもそうですけれど」
「日本もだよ」
「そうですか、けれど」
「けれどだね」
「僕日本が好きです」
 そうしたどうしようもない面があるにしても、というのです。
「この国に来てよかったと思います」
「悪い部分があってもだね」
「それ以上にずっといい部分があるから」
 トミーは先生ににこりと笑って言いました。
「そう思います」
「そうだね、この国は総合的に見てとてもいい国だよ」
「居心地が凄くいいですね」
「そうだね、あらゆる素晴らしいものが揃っていて」
「いい国ですね」
「総合的に見てね。それで」
「はい、それで」
 トミーは先生に問い返しました。
「何でしょうか」
「そのデザートのオレンジは」
「アメリカ産ですよ」
「日本にいてもアメリカのものが食べられる」
「そのこともですね」
「面白いしいいことだね」
「そうですね」
「何か前に見たグルメ漫画で色々描いていたけれど」
 先生は漫画もかなり読む様になっています、そして日本の漫画を愛読もする様になっています。このことも日本に来てからです。
「その漫画も酷いからね」
「先程お話した大学の先生や思想家さんみたいにですか」
「うん、酷い漫画だから」
「そこに描いていることはですか」
「評価していないよ」
「じゃあアメリカ産のオレンジも」
「食べよう」
 一緒にとです、先生はトミーに笑顔でお話しました。
「是非ね」
「それじゃあ」
「オレンジもいいよね」
「健康にもいいですしね」
「ビタミンが沢山あってね」
 ここで先生はそのビタミンからこんなことを言いました。
「食べると壊血病にならないし」
「壊血病は怖いですね」
「うん、日本では殆どなかった病気だけれど」
「欧州ではかなりあって」
「沢山の人が死んだからね」
「特に航海の時は」
 海にいるとです、どうしても食事が偏ってしまってだったのです。
「凄かったね」
「大航海時代にしても」
「だからね」
「ロイヤル=ネービーもライムを配ってましたね」
 壊血病の予防の為にです。
「搾ってラム酒に入れて」
「そうしていたよ」
「そうでしたね」
「十八世紀の終わりになってからだけれどね」 
 そうしてライムを配っていたのはです。
「そうだったけれどね」
「それで、でしたね」
「うん、ロイヤル=ネービーも壊血病を防いでいたんだよ」
「それだけ大変だったんですね」
「そうだよ、けれど日本ではね」
 この国はどうかといいますと。
「壊血病が殆どなくて」
「こうした心配もなかった」
「そうなんだよ」
「それだけでもかなり幸せですよね」
「そうだね、冬には蜜柑があるから」
「蜜柑も美味しいですよね」
 ここで二人共晩御飯を食べ終えました、そしてトミーはそのデザートのオレンジを持って来てそれからです。
 ナイフでそれぞれ四等分してです、先生にお皿の上に乗った一個分のそれを差し出してからまた笑顔で言いました。
「あちらも」
「そうだね」
「如何にも日本の果物という感じで」
「あれも美味しいよ」
「そしてその蜜柑があるから」
「うん、そうだよ」
 それで、というのです。
「日本では壊血病が殆どなかったんだ、他にもお漬物やもやしもあるから」
「そうしたものも食べるから」
「壊血病にならないんだよ」
「お野菜も果物も食べないと」
「そういうことだからね」
「日本はそのことも大丈夫だったんですね」
「ずっとね」
 それこそ昔からです。
「そうだったんだよ」
「じゃあ今度は蜜柑を買ってきます」
「あっ、ここで話して」
「食べたくなりましたから」
 だからこそというのです。
「買ってきますね」
「じゃあ頼むよ」
「その様に」
 トミーは先生に笑顔で応えつつそのオレンジを食べます、オレンジはみずみずしくしかもとても美味しいです。
 そのオレンジを食べてです、先生も言いました。
「うん、確かにね」
「美味しいですね」
「そうだね、アメリカのオレンジも」
「それで今度は」
「日本の蜜柑をだね」
「買ってきます、ただ」
「ただ?」
「何処の蜜柑がいいですか?」
 ここでこう先生に尋ねるのでした。
「それで」
「日本の何処の蜜柑か」
「はい、何処の蜜柑がいいですか?」
「そうだね、和歌山かな」
「あそこの蜜柑ですか」
「それか愛媛かな」
 先生はオレンジを食べつつ首を少し傾げさせて答えました。
「どちらかだね」
「和歌山か愛媛か」
「どっちかだね」
「少し悩むところだね、けれど」
「けれど、ですか」
「和歌山かな」
 先生は少し首を傾げさせてこう答えました。
「ここは」
「和歌山の蜜柑をですね」
「あれがいいかな」
「わかりました、じゃあ買ってきますね」
「箱で買うのかな」
「そのつもりです」
「じゃあ暫く楽しめるね」
 先生はトミーが蜜柑を箱単位で買うと聞いてにこりとして言いました。
「蜜柑を」
「はい、そうですね」
「それじゃあね」
「一緒に食べましょう」
「王子や動物の皆ともね」
「そうしましょう、ただ王子は」
 この人についてはとです、トミーはこうしたことも言ったのでした。
「もう王子のお家で」
「蜜柑を買ってなんだ」
「はい、食べていますよ」
「それも高価な蜜柑をだね」
「最近王子こたつが気に入っていて」
「日本の暖房の」
「それでなんですよ」
 こうお話するのでした。
「こたつといえば蜜柑って言って」
「それでだね」
「はい、高価な蜜柑を食べています」
「また面白い楽しみに目覚めたね」
「先生もどうですか?」
 トミーは先生にも勧めるのでした。
「こたつ出しますか?」
「それでこたつに入ってだね」
「蜜柑食べますか?」
 こう先生に提案するのでした。
「どうですか?」
「そうだね、それもね」
「面白いですよね」
「日本の暖房器具の中でもね」
「こたつはですね」
「うん、よく見るけれど」
「興味深いですね」
 トミーも笑顔で答えます、実はこの人もこたつについてはかなり関心があるのです。それでこう先生にお話したのです。
「あちらも」
「そうだね、足を暖めるとね」
「それだけでかなり暖かいですから」
「うん、だから」
 それでだというのです。
「僕も興味があるね」
「じゃあ冬になれば」
「こたつを買うんだね」
「そうしましょう」
 こうお話してでした、先生はトミーとオレンジを楽しむのでした。そしてまずは一週間待ってホワイティ達の報告を受けるのでした。



噂の彼を見たけれど。
美姫 「流石にすぐには判断できないわよね」
だな。皆の協力の元、一週間ぐらい観察する事に。
美姫 「果たしてどんな結論が出るかしらね」
一体どうなるのか。
美姫 「次回も待ってますね〜」
ではでは。



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