『ドリトル先生と伊予のカワウソ』
第九幕 パーティーの開催へ
先生達はまたカワウソさん達のところに来ました、そのお屋敷は相変わらず見事です。ですが今回はといいますと。
加藤さんがです、先生に笑顔で言いました。
「携帯の番号とメールアドレスを交換しておきましたので」
「連絡は、ですね」
「はい、既にしています」
だからだというのです。
「カワウソさん達は私達がお邪魔することをご存知です」
「では、ですね」
「今あちらのご主人に到着したことを知らせました」
見れば加藤さんは携帯を取り出しています、そのうえでの言葉です。
「ですからすぐにです」
「お話出来ますね」
「はい、これからは」
こう先生にお話するのでした、そしてです。
先生達はあの門番さんに今日も案内してもらってでした、カワウソさん達の主である老紳士と再会しました。そうしてです。
長老さんとのお話のことをお伝えしました、すると老紳士は笑顔になってこう言いました。
「そうですか、狸さん達はですね」
「特にカワウソさん達を排除しようとはです」
「考えていませんね」
「はい」
その通りだというのです。
「ですからお互いにです」
「お話してですね」
「相互理解を進めるべきと思いまして」
「パーティーですね」
「それをしましょう」
「いいですね、それであちらはですね」
老紳士はこう言いました。
「和食のご馳走をですね」
「用意されるとのことです」
「そうですね、しかし」
「こちらはですか」
「はい、イギリスはどうかといいますと」
老紳士は困ったお顔でこう先生達に言いました。
「お料理については」
「よくないと」
「日本に来てよくわかりました」
老紳士は先生に苦笑いになって答えました。
「そのことが」
「イギリス料理はといっても」
「何もありません」
全く、という口調での言葉でした。
「日本と比べますと」
「そうですね、ですから」
「こちらが出すお料理はですか」
「とてもお話になりません」
こう先生に言うのでした。
「残念ですが」
「いえ、ここはです」
その困っている老紳士にです、先生は提案しました。
「ティーセットとモーニングを出しましょう」
「その二つをですか」
「はい、出しましょう」
「ティーセットと朝食ですか」
「あの二つなら問題ありませんので」
だからだというのです。
「こちらはそれを出しましょう」
「確かに。朝食でしたら」
どうかとです、老紳士も先生に応えて言うのでした。
「イギリスのものでも」
「いいですね」
「あれとそのティーセットだけはいいと思います」
「だからです」
「あれを出すのですね」
「そうしましょう」
「わかりました、では紅茶と」
これは欠かせません、どうしても。
「三段のティーセット、そして」
「朝食です」
「イングリッシュ=ブレイクファストを」
まさにそれをというのです。
「用意しましょう」
「それでこちらもです」
「パーティーをするのですね」
「場所はここで」
このお屋敷で、というのです。
「狸さんを迎えましょう」
「それでは」
「はい、そして」
「そしてですね」
「あちらもです」
狸さん達の方もというのです。
「招いて下さるので」
「つまり相互に訪問し合って」
「おもてなしをするということで」
「そうして相互理解を進めてですね」
「親睦を深めていきましょう」
「私達としてはです」
カワウソさん達はです、どうかといいますと。
「この松山で平和に暮らしていきたいのです」
「そうですよね、それでは」
「狸さん達とも」
「仲良くされるべきなので」
それでだというのです。
「まずは相互理解です」
「それが第一ですね」
「日本がどうした国かはもうある程度はおわかりだと思いますが」
「はい、いい国ですね」
老紳士も微笑んで先生に答えました。
「この国は」
「そうです、ですから」
「狸さん達もはまずお互いを知り合うべきですね」
「私は双方にお会いしましたが」
カワウソさん達にも狸さん達にもです。
「どちらも非常に素晴しい方々なので」
「仲良く出来ますか」
「間違いなく」
それが可能だというのです。
「ご安心下さい」
「そして仲良くしていく為にですね」
「相互理解を進めるべきです」
だからだというのです。
「パーテイーからはじめましょう」
「そういうことで。ではティーセットと朝食の用意を」
「朝食といいましても」
「そう、昼でも夜でもですね」
食べるものだというのです。
「イギリス風に」
「どうもですね」
ここで先生は苦笑いになってこう言いました。
「イギリスの食事ですが」
「どうしてもですね」
「三食共朝食ということもありますし」
「メニュー的には」
「それが他の国の方には驚かれますね」
「欧州でもそうしたことはありませんからね」
イギリスも欧州の一国ですがそれでもなのです。
「フランスでもドイツでも」
「イタリアでも」
「そうしたことはないですからね」
「本当にイギリスだけです」
三食共メニューが朝食だということはです。
「もっとも昼食、夕食のメニューもありますが」
「しかし」
「はい、イギリスでは朝食のメニューはお昼も夜も食べます」
「そこが違いますからね、他の国と」
こう二人でお話するのでした、しかし先生はそれでもこう言うのでした。
「僕はそれでもです」
「ティーセットと朝食のメニューでいくべきだというのですね」
「はい、そうしましょう」
「それが一番イギリス的だからですか」
「そうです、あちらは絶対に和食を出してこられます」
狸さん達はというのです。
「この松山の見事な食材を活かした」
「山海の珍味ですね」
「そう言っていいものを使った」
その和食を、というのです。
「それに対してこちらはです」
「その二つですね」
「それでいきましょう」
「ティーセットはイギリスの誇りです」
「はい」
先生も笑顔でその通りだと答えます、ティーセットについては。
「三段のそれに様々なお茶の友を用意しましょう」
「スコーンにサンドイッチにケーキに」
「クッキーにエクレアにです」
そうした様々なお茶のお友達をというのです。
「色々と用意して、それに」
「それにですね」
「紅茶だけではなく」
先生は笑顔で老紳士に提案していきます。
「お酒もです」
「それもですね」
「ワインなりシャンパンなりを」
そうしたお酒をというのです。
「沢山用意しましょう」
「それは確かによさそうですね」
「ティーセットは紅茶だけではありません」
確かに紅茶を飲む場所です、ですが楽しむものは紅茶だけとは限らないのがティータイムというものなのです。
「ですから」
「それで、ですね」
「ワインやシャンパンも」
「用意して」
「狸さん達をお迎えしましょう」
「それでは」
老紳士も先生の言葉に笑顔で応えました、こうして狸さん達をどうお迎えするかどうかは決まりました。そうして。
老紳士は先生にです、こうも言いました。
「ところで日本のお風呂ですが」
「はい、あのことですか」
「いや、イギリスではただシャワーを浴びるだけが殆どですが」
「日本では湯舟に入りますね」
「ですからこのお屋敷はイギリス風でも」
「お風呂だけはですか」
「変えました」
そうしたというのです。
「和風ではないが大浴場を設けて」
「そこにカワウソさん達が皆で、ですか」
「はい、入る様にしています」
「そうなのですか」
「幸い温泉もありますので」
「そこのお湯を使われて」
「入っています、泳げもしますので」
老紳士はこのお風呂の中で泳げることについてはです、顔を綻ばせてそのうえで先生達に笑顔でお話するのでした。
「非常に楽しいです」
「そうそう、カワウソさんだからね」
「泳ぐんだよね」
ジップとチーチーもここで言いました。
「お水がお好きでね」
「泳ぐことも大好きなんだよね」
「私も好きよ、泳ぐの」
「僕もぢだよ」
ガブガブとダブダブも言うのでした。
「家鴨だしね」
「豚は綺麗好きなんだよ」
「お風呂はやっぱり日本ね」
「そうね」
ポリネシアとトートーもこう言います。
「イギリスのシャワーは味気なくて」
「それだけで終わりだから」
「お風呂に入るとね」
「身体の疲れが落ちるんだよね」
ホワイティとチープサイドのご主人もお話します。
「だからね」
「お風呂の方がずっといいから」
「先生もお風呂好きだしね」
「そうそう、毎日楽しんでて」
「すっかり馴染んでるよね」
オシツオサレツは老馬の言葉に二つのお口で応えます。
「先生の趣味の一つになったね」
「完全にね」
「そうなってるね」
「いや、お風呂はですね」
先生も笑顔で老紳士にお話します。
「素晴らしいものですね」
「はい、毎日入っても飽きません」
老紳士もこう答えるのでした、先生のお風呂に関するお話に。
「まことに」
「もうイギリスのあのおトイレと一緒になっているお風呂は」
「入られませんね」
「おトイレとお風呂は別々でないと」
「違いますね」
何かが、というのです。
「本当に」
「そう思える様になりました」
「元々カワウソは水が大好きで」
カワウソさんにとってこのことはどうしても外せません、何しろ元々水辺で暮らしている生きものなのですから。
「お湯でもお水ならば」
「お好きですね」
「本当に」
それ故にというのです。
「日本の綺麗なお水を知ると」
「離れられないですね」
「そうなりました」
もう完全に、という言葉でした。
「その意味でも日本から離れられなくなりました」
「そうですか」
「しかもです」
さらにというのでした。
「お魚も美味しく海のものも川のものもあって」
「どちらも楽しめて」
「蟹や貝もいいですね」
そういったものの味も、というのです。
「広島の方では牡蠣が有名でしたね」
「はい、あちらは」
「今度一族全員で広島に行きまして」
「牡蠣を楽しまれますか」
「そうも考えています」
「それはいいことですね」
先生は老紳士の牡蠣を食べたいという言葉に笑顔で応えて言いました。
「日本の牡蠣は絶品ですが」
「その中でもですね」
「はい、広島の牡蠣は最高です」
「では先生も」
「まだ広島に行ったことはありませんが」
それでもとお話するのです。
「広島の牡蠣は食べたことがあります」
「それが凄く美味しかったのですね」
「そうです、おそらくこの松山でも売っていますので」
「海を挟んですぐそこですからね」
「召し上がられたらいいです」
是非にというのです。
「ですから」
「わかりました、それでは」
「はい、広島に行かれることもいいですが」
「この松山でもですね」
「広島の牡蠣を楽しまれて下さい」
是非にというのです。
「後悔はしません」
「それでは」
こう笑顔で牡蠣のことをお話するのでした、そしてです。
実際にです、加藤さんは先生にこんなことを言ってきました。
「では先生、今日の夜はです」
「夕食の後で、ですね」
「牡蠣と一緒にお酒を」
「飲みに行くのですね」
「どうでしょうか」
こう笑顔で提案するのでした。
「悪くないと思いますが」
「そうですね、それでは」
「はい、夕食の後で」
「まずはお風呂に入って」
晩御飯の後で、です。
「それから食べに行きましょう」
「いいですね」
「松山は本当に美味しいものが多いのですね」
ここでなのでした、老紳士は唸る様に言いました。
「まことに」
「はい、僕もはじめて来ましたが」
「それでもですね」
「美味しいものばかりです」
「素晴らしい街ですね」
「温泉もありますし」
「あと蜜柑もですね」
老紳士は果物もお話に出しました。
「あれも美味しいですね」
「ここは蜜柑も名産です」
「本当に美味しいものばかりで」
「楽しめますので」
「余計にずっとこの街にいたくなりました」
老紳士は気品のある笑顔で先生達に答えました。
「本当に」
「そうですね、僕もです」
「それではですね」
「お楽しみ下さい、この松山と」
「日本もですね」
「僕もそうしている最中です」
先生は日本に来てからずっとそうしています、幾ら楽しんでも楽しみきれないまでのものだとさえ感じているのです。
だから老紳士にもです、笑顔でお話するのでした。
「松山だけでなく日本自体も」
「そうさせてもらいます」
こう笑顔でお話してでした、先生達はカワウソさん達にもお話するのでした。そうしてその後でなのでした。
先生は老紳士にこう言いました。
「それではですね」
「はい、後は」
「明日です」
「明日こちらに狸さんが来られるのですね」
「それで宜しいでしょうか」
「わかりました」
老紳士は先生の言葉にこのことについても笑顔で応えました。
「それでは」
「明日ここで」
「皆で楽しみましょう」
こうお話してなのでした、そして。
先生達はカワウソさん達と笑顔でお別れしてでした、お屋敷を後にしました。
外はもう夕方になっていました、ここで。
加藤さんは先生にです、笑顔でこう言いました。
「お話が上手に進んで何よりでしたね」
「はい、本当に」
「そうですね、それでは」
「明日ですね」
「はい、明日」
その明日だというのです。
「明日まずは狸さん達がカワウソさん達のお屋敷に来られて」
「明後日はですね」
「今度はカワウソさん達が狸さんにもてなしてもらいます」
「そういうことで、ですね」
「狸さんにもお話しましょう」
こうお話するのでした、夕刻のその赤くなっている松山の中で。
そのお話の中で、です。先生はこうしたことも言いました。
「僕はこうした時はですね」
「お互いにお話をしてですね」
「親睦を深めていけばいいと思います」
「それがベストですね、確かに」
「異なる文化、異なる種類の生きものであっても」
「まずはお互いにお話することですね」
「はい、そうです」
まさにというのです。
「ですから」
「それで、ですね」
「今回も狸さんとカワウソさんのそれぞれのお話を聞いて」
「そしてだったのですね」
「お互いの話をしていこうと」
「理知的ですね」
加藤さんはそうした先生の行動について笑顔で述べました。
「まさに」
「理知的ですか」
「しかも平和的です」
「褒め言葉ですが」
その理知的、平和的という言葉がです。
「僕は争いは嫌いでして」
「だからこそですか」
「いつもこうしたやり方を心掛けています」
「平和的にことを進めるのですね」
「争いは何も生みません」
こうも言う先生でした。
「そう考えています」
「そうですね、よく話せばわかると言いますが」
「その通りです」
まさにというのです、先生も。
「誰が相手でもじっくりとお話すればいいです」
「それで相互理解が出来ますね」
「多くの場合はそうです」
それで済むというのです。
「ですから僕も今回もそうしました」
「成程」
「理性は蛮性に勝ちます」
先生は穏やかな笑顔でこう述べました。
「そして僕は人種論もです」
「それもですね」
「はい、信じていません」
これもだというのです。
「人は人種によって違いがあるかといいますと」
「違いはありませんね」
「はい、ありません」
「先生は白人ですが」
「あっ、白人至上主義ですね」
「それはありませんね」
「全く」
ないと答えた先生でした。
「むしろ何処に人種の優劣があるのか」
「科学的には何の根拠もありませんね」
「本当に何も」
ないと言う先生でした。
「ありません」
「人種とは何か」
「所詮肌や目の色だけで」
「他は何も変わりませんね」
「そのこともよくわかります、色々な人とお話していますと」
「それは私もです」
加藤さんもでした。
「白人も黒人もです」
「変わらないですね」
「日本人といっても」
その加藤さんにしてもというのです。
「同じです」
「他の人達とですね」
「人種や国籍では人は決まらないです」
「全く以てその通りです」
「先生もそれは同じですね」
「これまで世界中を彼等と一緒に旅をしてきまして」
ここで先生は動物達を見るのでした、先生にとって掛け替えのない友人達であり家族でもある彼等をです。
「そうしてわかりました」
「人は人種や国籍では決まらない」
「もっと言えばです」
「もっと言えばとは?」
「人も他の動物も同じです」
そうでもあるというのです。
「同じ生物ですよ」
「違いはありませんか」
「少し私の宗教の教えとは違いますが」
「キリスト教の教えとはですね」
「はい」
先生はイギリスで生まれ育っています、ですがらキリスト教徒なのです。
「キリスト教では人間と動物は完全に違うと教えていますが」
「実際は、ですね」
「変わりがありません」
人間も動物も、というのです。
「何ら」
「そうしたものですね」
「僕も信仰心はありますが」
それでもというのです。
「そうした考えです」
「人間も動物も同じですね」
「はい、何も変わりません」
それも全く、というのです。
「こうした考えは日本にある様ですが」
「そうですね、それは」
「ありますね」
「はい、あります」
そうだとです、加藤さんは先生に笑顔で答えました。
「実際に」
「シャーマニズムといいますか」
「万物への信仰ですね」
「あらゆるものに神がいるのですね」
「そうです、だからこその八百万です」
それだけ多くの神様達がいるというのです、日本では。
「力の大小はありますが」
「神様の間に」
「しかしです、日本の神様は非常に多く」
「あらゆるものに宿っていますね」
「そうです、ですから」
「人も動物も同じですね」
「植物やものも」
そうしたものも全てというのです。
「一緒なのです」
「万物が等しく、そして共にある」
「我が国の神道ではそうした教えです」
「僕は最初純粋にキリスト教の教えだけだったかも知れませんが」
人間と動物は違うという考えです、ですがここでも先生は動物の皆を見てそのうえで加藤さんにお話するのでした。
「しかし今は違います」
「人間と動物に違いははないと」
「そう考える様になっています」
「先生ずっとそうした考えだよね」
「そうだよね」
動物達は先生に言われて彼等同士でお話するのでした。
「僕達皆に公平だよね」
「分け隔てしないよね」
「人間も僕達もね」
「同じ友達として付き合ってくれるよね」
「いつもね」
「そうなったというか。いや」
ここで先生はこうも言うのでした。
「ケルトの考えかな」
「ケルト神話ですね」
また加藤さんが先生に応えてきました。
「その考えは」
「はい、ケルト神話から妖精が生まれていまして」
「イギリスは妖精の国でもありますね」
「そうです、妖精達はいつも僕達と一緒にいます」
先生は微笑んで加藤さんにこのこともお話しました。
「ですから妖精も動物達も人間も」
「同じだと考えられるのですね」
「そうかも知れません」
「ドルイドの様ですね」
「そうですね、僕はドルイドではないですが」
それでもと答える先生でした。
「それでもドルイド的な考えはあるかも知れませんね」
「そうなりますね」
「ですから日本にいても」
「違和感は感じませんか」
「はい、むしろ」
違和感よりもです、先生が日本にいてこの国について感じることは。
「親しみを感じます」
「そちらをですか」
「はい、感じます」
そうだというのです。
「そして落ち着くものを」
「そういったものをですね」
「やはり人間は決して偉くはなく」
「他の動物達と同じですね」
「何も変わりありません」
「それぞれの能力があろうとも」
「はい、同じです」
先生はこう加藤さんに言うのでした、そしてです。
それと共にです、こうも言いました。
「ですから人種や国籍も」
「何ということはありませんね」
「そうです、肌や目の色の違いだけです」
「他には何もありませんね」
「全く」
本当に何一つというのです。
「変わらないです」
「そうですね、実際八条学園にいますと」
「あの学園は世界中から人が集まりますからね」
「そのことがよくわかります」
人は人種や国籍で決まらないということがというのです。
「何も」
「僕もです。そのことがよくわかりました」
「白人でも黄色人でも黒人でも」
「変わらないです。実はアフリカのある国の王子と友人なのですが」
「アフリカのですか」
「そうです、実は王子に紹介してもらって」
そうしてというのです。
「日本に来ました」
「そして八条大学の教授になられたんですね」
「そうです」
加藤さんにこのこともお話するのでした。
「思えば縁ですが」
「その王子様はどういった方でしょうか」
「気さくで気品があって頭の回転のいい方です」
「そうした方ですか」
「僕の親しい友人の一人です」
先生は王子のことを思い出しつつお話するのでした。
「イギリスにいた時から」
「かつてお国ではそうしたことは」
「あまり望ましいとはされていませんでしたね」
人種を超えたお付き合いというものはです。
「しかしそれはです」
「昔のことで、ですね」
「僕はそれが間違っていたと思いますので」
「だからですね」
「僕はです」
「そのアフリカの王子様ともお友達なのですね」
「とてもいい友人です」
先生は王子のことを加藤さんに笑顔でお話します。
「日本でも仲良く一緒にいます」
「それは何よりですね」
「王子も日本に親しんでいますし」
「それは余計に嬉しいことですね」
加藤さんはこのことは日本人としてとても嬉しく思いました。
「まことに」
「そうですね、王子は洋食がお好きでして」
「あっ、洋食は実は」
「欧州の料理ではなくですね」
「あれは日本のお料理になっていますね」
「ハンバーグもエビフライも」
「スパゲティも」
こちらのお話にもなるのでした、その洋食の。
「そうですね」
「王子からナポリタンをご馳走になりましたが」
「あれは日本で生まれたスパゲティです」
「イタリアにも何度か行っていますが」
先生はこの国にも訪問しています、本当に世界中を旅してきているのです。そしてそこでイタリアのスパゲティもなのです。
「あちらではスパゲティにケチャップは使わないです」
「そうですね」
「本当に日本ならではです」
「あのナポリタンは」
「他のパスタもそうですが」
「ミートソースやマカロニもですね」
「このことからも考えると洋食は」
そのお料理は、というのです。
「日本のお料理です」
「そうなりますね」
「はい、しかしナポリタンは美味しかったです」
先生はその目を自然と微笑まさせました、ナポリタンの美味しさを思い出して自然にそうなったのです。笑顔になったのです。
「他の洋食も」
「意味しかったですか」
「ハンバーグもよかったですし」
「他のものもですね」
「美味しいです、王子は洋食も好きで」
先生にナポリタンをご馳走してくれただけはあってです。
「それにです」
「他の料理もですか」
「王子はお好きでして」
「どんなものがお好きなのでしょうか」
「たこ焼きにお好み焼きとかもです」
そうした食べものもです、王子は大好きなのです。
「大好物で」
「お好み焼きも、ですね」
「はい、そうです」
「お好み焼きは実は」
「関西とこの辺りではですね」
「違います」
同じ名前ではあっても、というのです。
「大阪風と広島風がありまして」
「それぞれ違いますね」
「どちらも名物なのですが」
大阪でも広島でもです、お好み焼きは名物です。しかしそれでもなのです。
「焼き方等が」
「僕は大阪です」
神戸にいるだけあってです、先生は。
「あれが最初に食べたお好み焼きです」
「そうですね、やはり」
「しかしこちらでは」
「広島ですね」
お好み焼きは、というとです。愛媛ではそうなるというのです。
「たぬきそばと違って」
「広島ですね」
「そちらのお好み焼きです」
「加藤さんもそちらがお好きですか」
「そちらの方に親しんできたので」
それで、というのです。
「私が好きなお好み焼きはそちらですね」
「そうなりますか」
「はい、実は大好物の一つです」
「お好み焼きっていいよね」
「うん、物凄く美味しいよね」
動物の皆もこうお話するのでした、お好み焼きについても。
「おソース付けて鰹節とか青海苔かけてね」
「あと紅生姜もね」
「全部忘れないでね」
そうしてというのです。
「それで食べるんだよね」
「焼きたてをね」
まさにというのです、彼等も。
「キャベツも沢山入れて」
「そうしてね」
「お野菜もたっぷり食べられて」
先生もこのことについて言います。
「いいですね、ただ」
「ただとは」
「あれはおかずやおつまみでもあるのですね」
先生は加藤さんにこうしたことも言うのでした。
「お好みや、焼きそばもそうですが」
「基本そちらですね」
「おかずかおつまみですね」
「はい、主食ではなく」
「麦を使っていてもですね」
「主食ではありません」
これは違うというのです。
「それだけで食べることもあることはありますが」
「おかずですね」
「うどんも一緒ですね」
「おかずですね」
「それにもなります」
「うどん定食ですね」
先生は大学にあったメニューを思い出しました。
「それですね」
「あれもいいですね」
「それにお好み焼き定食に焼きそば定食に」
「関西では特に多いですね」
「あの組み合わせは卑怯なまでに美味しいです」
先生は唸る様にして言いました。
「まことに」
「そうですね、ですがそれは西のことでして」
「日本全体のことではないですか」
「はい、違います」
「では他の地域では」
「東の方のことですが」
そちらは、というのです。
「関東等ではそうして食べないのです」
「お好み焼きやうどんを御飯のおかずにすることはですか」
「はい、しないです」
そうだとです、加藤さんは先生にお話します。
「炭水化物を御飯のおかずにすることは西の食文化です」
「パスタやリゾットがスープ扱いと同じですね」
「似てますね、そういえば」
このことにははっとなった加藤さんでした。
「イタリアでも主食はパンで」
「パスタやリゾットは主食ではありません」
あくまでスープ扱いだというのです。
「ですから」
「そうしたことと同じで」
「西日本ではですね」
「お好み焼きはおかずですね」
「はい、こちらでも」
「そうですか、ではこちらのお好み焼きは」
「おかずでして」
それに、というのです。
「そして広島風です」
「関西で言う広島焼きですね」
「そうです、如何でしょうか」
「次に食べるものはですね」
「お好み焼きにしましょうか」
「いいですね、それでは」
先生は加藤さんの申し出に笑顔で乗りました。
「次は」
「お好み焼きでお酒を、ですね」
「そうしますか」
「そうですね、それでは」
こうお話してです、意気投合してでした。
先生達は夕食の後お風呂に入って飲むことにしました。ですが。
動物達は今旅館の温泉に入っています、そしてそこでなのでした。
お顔を見合わせてです、そうしてお話しています。
「世の中思い通りにはいかないね」
「そうだよね」
「先生がねえ」
「まさかね」
「いや、食べ過ぎたよ」
見れば先生もお湯の中にいます、そこで赤ら顔になっています。加藤さんも一緒です。
「本当に」
「もう何も入らないですね」
加藤さんも笑顔で応えます、この人も湯舟の中にいます。
「何処にも」
「全くです」
「今日もお刺身が美味しかったですね」
「恐ろしいまでに」
「牡蠣も出ましたし」
「あれも美味しかったですね」
「堪能しました」
それでだというのです。
「もう満腹です」
「全くです」
「本当に凄い美味しかったね」
「だからついつい食べ過ぎてね」
「満腹だよね、僕達も」
「もう何処にも入らないよ」
「お腹の中にね」
こうお話するのでした、とにかくです。
動物達も含めて皆満腹です、ですから。
「もうね」
「今日はこれ以上食べられないね」
「とてもね」
「無理があるよ」
だから皆今はこうしてです、一緒にお風呂に入ってです。
「お酒もかなり飲んだしね」
「寝ようね」
「今夜はね」
「これでね」
こうお話してでした、皆で。
仲良くお風呂に入っています、そして。
先生は皆にです、こう言いました。
「じゃあ君達もね」
「うん、今夜はね」
「お風呂に入ったし」
「だからね」
「これでね」
「寝ようね」
そうしようというのです。
「ゆっくりね」
「うん、そうだね」
「皆でゆっくりとね」
動物達は皆に笑顔で応えました、そしてです。
先生はこの日はもうお休みすることにしました、それで加藤さんもなのでした。
「お好み焼きは今度の機会にしましょう」
「そうですね、それでは」
「はい、お好み焼きは逃げませんから」
「だからですね」
「お酒も逃げません」
こちらもだというのです。
「ですから」
「今はですね」
「私も寝ます」
そうするというのです。
「そうしますので」
「それではまた明日」
「明日からですね」
「まずはカワウソさん達でしたね」
「あちらのお屋敷で」
「はい、カワウソさん達がパーティーを開いてくれて」
そして、というのです。
「明後日はですね」
「狸さん達ですね」
「何かとですね」
「忙しくなりますね」
「そちらの方も」
「それでもね」
ここで言ってきたのはチープサイドの奥さんでした。勿論この人も一緒にお風呂に入っています。勿論一家全員で。
「先生だったらね」
「そうそう、こうしたことは得意だから」
「だからね」
「普通にね」
「上手いくよ」
夫婦の子供達にもお話するのでした。
「いつもこうしたことは見事に解決してくれるから」
「動物なら先生だからね」
「だからね」
「今回もね」
「そうなって欲しいね」
先生はチープサイドの子供達に笑顔で答えました。
「僕もそう願うよ」
「そこで絶対にそうなるとか自分の力でとは言わないのが先生だね」
チープサイドのご主人もこう言うのでした。
「自信を見せたり誇ったりとかは」
「僕はそんなこと出来ないよ」
絶対にと言うのでした。
「そうしたことはね」
「自分が自分が、じゃないね」
「昔からね」
それこそ子供の頃からです。
「そうしたことはないね」
「謙遜?」
「それかな」
「引っ込み思案なんだ」
ご自身ではこう言う先生でした、チープサイドの子供達に。
「僕はね」
「そうなんだ、先生引っ込み思案なんだ」
「そう言うんだ」
「そうだよ、子供の頃から前に出るタイプじゃないんだ」
それが先生だというのです。
「そうしたことは本当に苦手だよ」
「確かに前に出るタイプじゃないね」
「我を出して」
「だから結婚も出来ないのかな」
ご自身でこうも言う先生でした。
「やっぱり」
「いや、そこはです」
ここでまた言ってきた加藤さんでした。
「是非です」
「相手を見付けるべきですね」
「何度も言いますが人は外見ではありません」
「心ですね」
「先生でしたら」
先生の様なお心なら、というのです。
「それに暴力も差別も浮気もお嫌いですね」
「どれもあってはならないと思います」
浮気についてもです、とはいっても先生はこれまで浮気をする位女の人にもてたことも相手が近寄って来たこともないのですが。
「決して」
「ギャンブルもされませんね」
「負けますよね」
ギャンブルをすれば、というのです。
「トランプも子供の頃から弱かったので」
「されませんね」
「お金が幾らあっても足りないと思いまして」
「そうですね、そのこともいいです」
「そうですか」
「あとお酒は」
「好きですが」
確かに先生はお酒をよく飲みます、ただ煙草は吸いません。
「しかし乱れることはなかったみたいです」
「うん、先生酒癖いいよ」
「絡みもしないし暴れもしないし」
「飲み過ぎて寝ちゃうとかね」
「そんなのだよ」
動物達は先生といつも一緒です、ですから先生の酒癖についてもよく知っているのです。
「そっちも問題ないから」
「別にね」
「そうなんだ」
「とにかく先生でしたら」
先生の様な人ならというのです。
「大丈夫ですよ」
「ううむ、縁があればいいですね」
先生はこのことについてははにかんでいるままでした、こと結婚のことに姦すると奥手なままでいます。
狸との話し合いの結果をカワウソにも伝えて。
美姫 「とりあえず、双方に互いに害をなす気はないと伝えたわね」
だな。後は先生が考えたパーティーで互いを知ることができればだな。
美姫 「最初はカワウソ、次に狸の所へって感じで二日掛けてね」
間に先生もいるし、良い方向へと行くとは思うけれどな。
美姫 「どうなるのかしらね」
次回も待っています。
美姫 「待ってますね〜」