『ドリトル先生学校に行く』
第二幕 子供達も
先生は最初の一日を最高の気分で過ごすことが出来ました、それでお家に帰っても皆に満面の笑顔でこう言えました。
「学生さん達も皆いい人達でね」
「同僚の人達もだよね」
「いい人なんだね」
「うん、皆ね」
こうお話するのでした、先生はお庭の中でお話しています。お池の前にいてそこで皆と一緒にいながらお話をしているのです。
「研究室も立派でね」
「何か最高だね」
「最高の条件なんだね」
「そうだね、憂いがないね」
そこまでいいというのです。
「人も場所もいいからね」
「悪いことはないんだね」
「何もないんだね」
「うん、ただ僕は蔵書が多いからね」
だからだとです、ここで先生はこんなことも言いました。
「研究室にある蔵書はね」
「それは食べられないよね」
オシツオサレツは冗談でこう先生に言ってきました。
「やっぱり」
「駄目だよ、本は食べたら駄目だっていつも言ってるじゃないか」
「うん、僕もそのことはわかってるよ」
「ちゃんとね」
オシツオサレツは笑ってこのことも言いました。
「だからそんなことはしないから」
「安心してね」
「頼むよ、本とお札は食べたら駄目なんだよ」
本だけでなくそれもだというのです。
「普通の紙と草を食べてね」
「わかってるって、そのことは」
「冗談だからね」
「冗談だってことはわかってるけれどね」
それでもだと言う先生でした。
「一応念の為にね」
「僕に行ったんだ」
「そうなんだね」
「そうだよ、あと君達も研究室とか僕が行っていいって言った場所には来ていいそうだから」
先生は皆にこのこともお話しました。
「これからは暇な時はね」
「うん、僕達も研究室に行って」
「先生と一緒にいればいいんだね」
「その許可はも貰ってるよ」
既にだというのです。
「だから明日からでもね」
「学校に行ってだね」
「先生と一緒に」
「いよう、ただ皆に迷惑はかけないでね」
このことは注意した先生でした。
「そうしたら学園に来られなくなるからね」
「わかってるよ、僕達そんなことしないから」
ガブガブが先生に明るく返します。
「絶対にね」
「うん、頼むね」
「あと悪い子に捕まる様なこともしないから」
そのことも安心していいというのです。
「安心してね、先生も」
「うん、ただね」
「ただって?」
「君達は一匹、一羽だけで行動しない様にね」
このことも注意する先生でした。
「街の中にいる時と同じでね」
「変な人もいるからだよね」
「だからなのね」
「そう、車のこともあるし。それに」
「それに?」
「それにっていうと」
「日本の街には烏が多いね」
先生はこのことにも気付いたのです、だからだというのです。
「烏にちょっかいをかけられない様にね」
「一匹、一羽ではいない」
「そうあるべきなのね」
「そう、気をつけてね」
実際にそうして欲しいというのです。
「日本も危険があるからね」
「完全に安全な場所はそうそうないね」
「先生の傍だけなのね」
「僕か王子かトミーがいるなら別だけれど」
それでもだというのです。
「街も学校の中もね」
「危険なんだね」
「そういうことだね」
「だから絶対にね」
単独行動はして欲しくないというのです。先生はチープサイド夫婦が連れている子供達にもこう言うのでした。
「君達もね」
「うん、僕達雀もね」
「色々と危ないからね」
「そうだよ、悪い人に車に烏、後はね」
「猫だね」
「日本にもいるね」
猫については子供達の方から言ってきました。
「あの動物もいるしね」
「日本にもね」
「猫はどの国にもいるからね」
先生も言います。
「だから注意してね」
「わかったよ、それじゃあね」
「猫にも注意するね」
「僕は猫ともお話が出来るけれどね」
けれど猫です、何しろ猫は鳥も大好物なので。
「注意しないといけないからね」
「猫は私も嫌いよ」
シロネズミのホワイティも猫についてはとても嫌そうです。
「先生の知り合いの猫ならともかくね」
「普通の猫はよね」
「そう、怖いし」
だからだというのです。
「気をつけるわ」
「そうしてね、絶対に」
「犬も多いよね」
今度は犬のジップが言ってきます。
「神戸って」
「日本人は犬も好きだからね」
「そうみたいだね」
「だから気をつけてね」
くれぐれもだとおいうのです。
「犬にも悪い犬がいるからね」
「だからだね」
「そう、気をつけてね」
こう言うのでした、そうしたお話をしてです。
先生は勤務先のことも詳しくお話しました、そのうえで。
今晩の夕食のトンカツを御飯と一緒に食べてです、目を閉じて唸る様にして言いました。
「ううん、このトンカツもね」
「美味しいでしょ」
「うん、凄くね」
こう作ったダブダブに答えます。
「カツと御飯も合うんだね」
「大発見よね」
「パンだけにしか合わないと思っていたよ」
「そうだね」
「それとお味噌汁にもね」
今もお味噌汁が出ています、中に色々な茸が入っているお味噌汁です。
「合うのよね」
「不思議だね、カツが和食と合うなんてね」
「お野菜とも合うのよね」
ポリネシアは野菜炒めを見つつ言います。
「これがね」
「これはお野菜を炒めたんだよね」
「サラダ油でね」
ダブダブがまたお話してくれます。
「そうしたのよ。人参とピーマン、玉葱にキャベツを豚肉をスライスしたのと一緒にお塩と胡椒でさっと味付けしたのよ」
「それがこれだね」
「そう、野菜炒めよ」
「中華料理じゃないね」
「多分のお料理よ」
それになるというのです。
「八宝菜もレシピがあったけれど」
「今日はこれにしたんだ」
「そう、野菜炒めにね」
「成程ね」
「明日はボイルドベジタブルを作るわ」
ダブダブは明日の野菜料理もお話しました。
「それをね」
「ああ、あれもだね」
「そして野菜スープも作って」
ダブダブは先生にさらにお話します。
「明日はお魚をムニエルにするから」
「鮭かな、それとも鱈かな」
「鰯よ」
それをムニエルにするというのです。
「勿論御飯でね」
「それも楽しみだね」
「それで今日のカツだけれど」
「トンカツだよね」
狐色のカツに黒いおソースがかけられています、そして何切れかに分けられています。
そのカツを見てです、先生はダブダブに答えます。
「そうだよね」
「商店街のお肉屋さんで買ってきたものなの」
「ダブダブが作ったものじゃないんだ」
「そう、買ってきたものなの」
「美味しいね、このトンカツも」
「そうでしょ、トンカツもね」
それもだというのです。
「お店のお肉もコロッケも美味しそうだったけれどね」
「今日はトンカツにしたんだね」
「ミンチカツもあったわよ」
「ミンチカツっていうと」
「ハンバーグをカツにしたものよ」
「あれだね」
「そう、今度はあれを買って来るから」
それを食べようというのです。
「楽しみにしておいてね」
「うん、そうさせてもらうよ」
「ただ、カツもね」
ここでダブダブはカツ自体について先生に言いました。
「イギリスのカツとは違うわよね」
「学校の食堂にはフィッシュアンドチップスもある場所があるよ」
「食べたの?」
「食べたよ、けれどね」
イギリスの代表的なお料理であるそれはです、日本ではどうかというと。
「あの料理もね」
「違うんだね」
「日本の味なんだ」
「そうなんだよ」
こう皆にお話するのでした。
「それも違うんだよ」
「ううん、日本なんだ」
「そっちも日本の味になっているんだ」
「フィッシュアンドチップスまで」
「完全に」
「そう、カレーもね」
カレーはイギリスでも食べられています、けれどそれもだrというのです。
「日本人が好きそうな。イギリスの味とは違っていてね」
「それでフィッシュアンドチップスはどうだったの?」
トートーが尋ねてきました。
「それは」
「衣がマイルドでね、お魚自体の質もよくて」
「他には?」
「あとおソースもね、穏やかだけれど確かな味だね」
「そうなのね」
「チップスもだよ、使っている油もイギリスのものと違うから」
揚げるのに使うそれがそもそも違っているというのです。
「ロンドンとかで食べるのと全く違うよ」
「成程ねえ」
「このトンカツも違うしね」
揚げている油がだというのです。
「日本の方が油がいい感じでね」
「美味しいのね」
「日本人の好みみたいだね」
「それでカレーもなのね」
トートーはお話に出たカレーのことも言いました。
「あれもなのね」
「やっぱり日本の味だね」
「成程ねえ」
「じゃあカレーも食べないとね」
ここで、です。チーチーが言ってきました。
「お家でもね」
「カレーだね」
「日本のカレーもね」
それもだというのです。
「皆で食べようよ」
「そうだね、勿論それもね」
そのカレーもなのでした。
「御飯で食べるからね」
「日本人って本当に御飯好きよね」
チープサイドはある意味感心している様に言います。
「主食は絶対にそれよね」
「うん、パンもよく食べているけれどね」
「メインはそれよね」
「御飯だよ」
このことは外せないというのです、日本人の中では。
「第一はね」
「そうよね」
「イギリスじゃカレーはパンに付けて食べることも多いじゃない」
「御飯にもかけるけれどね」
「けれど御飯、お米は野菜だからね」
イギリスではそうした考えになります。
「そうよね」
「日本ではパン以上の主食だから」
「カレーにもなんだね」
「御飯だよ、だからカレーライスっていうんだ」
「カレーライスなのね」
「大阪の方で面白いカレーライスがあるらしいし」
先生は学校でちらりと聞いたことも言いました。
「今度大阪に行って食べようね」
「大阪ねえ」
大阪と聞いてです、皆はその街のことをこう言いました。
「何かね」
「騒がしいっていうし」
「暑いんだよね」
「お笑いが凄くね」
「神戸とは全く違うみたいだよ」
先生もこうお話します。
「隣りにある街だけれどね」
「お隣りでも全然違うんだね」
「日本のお家ってそれぞれ全然違うけれどね」
「同じ様なお家が並んでるのかなって思ってたけれど」
「バラエティ豊かだよね」
「街もそうなんだね」
「日本人は個性がないとか聞いたけれど」
先生も言います、野菜炒めを食べつつ。
「違うね」
「うん、色々な人がいるよね」
「面白い人もいるしね」
「テレビの番組も色々あって」
「バラエティ豊かで」
「日本はそれぞれ個性的だよ」
それが日本だというのです。
「日本人も個性がないとかいうのは間違いだね」
「何かね、髪の毛の色もね」
ジップも言います。
「違うよね」
「黒だけじゃないっていうんだね」
「茶色も黄色も金色もあるよね」
「染めているんだ」
「だから赤や青もあるんだね」
「そうだよ、日本人は若い人は髪の毛もよく染めるからね」
だからだというのです。
「色々な髪の毛の人がいるよ」
「そうなんだね」
「ファッションもそうだね」
「色々なファッションの人がいるね」
「そうなんだよ、日本は誰がどういった服じゃないと駄目とかもないから」
それでだというのです。
「制服はあっても着こなしは色々だよ」
「学生さんもなんだ」
「特に八条学園は高等部までは制服があっても色々な種類の制服があるから」
「やっぱり個性が出ているんだ」
「海軍の、イギリス海軍の制服もあるよ」
「ロイヤルネービーもなんだ」
「あるよ」
「黒?白?」
海軍の軍服は一種類ではありません、冬は黒で夏は白です。季節によって軍服の種類が違っているのです。
「どっちなの?」
「どっちもあるよ」
「じゃあ海軍の正装でもいいのかな」
「あの詰襟の軍服だね」
白い長袖の服がだというのです。
「あれだね」
「あれもあるのかな」
「そう、あるよ」
先生はジップに笑顔で答えました。
「ちゃんとね」
「そうなんだ」
「それを冬でも着ている子がいるから」
「へえ、そうなんだ」
「汚れやすいけれど格好いいから着ているみたいだよ」
その海軍の礼装そのままの制服、白い詰襟のものをだというのです。
「あるからね」
「ううん、出来ればそういうのも」
「見てみたいんだね」
「面白い学校みたいだね」
「制服だけを見てもね」
そうだというのです。
「色々だからね」
「じゃあ明日からね」
「僕達もね」
皆ここでこう言いました、そうして。
皆でトンカツとお味噌汁、それに野菜炒めを食べました。そうしてなのでした。
食後のデザートの甘いスコーンと紅茶を飲んでからお風呂に入って皆で寝ました、そうして次の日は皆で登校しました。
そして登校して研究室に入る前に。お馬さんが先生に言ってきました。
「僕とオシツオサレツはね」
「研究室に入られないっていうのかな」
「無理だよね」
こう先生に尋ねます。
「やっぱり」
「いや、大丈夫だよ」
「蹄でも?」
「うん、研究室の中も研究室がある建物の中もね」
そのどちらもだというのです。
「蹄も床もいためないから」
「だといいけれど」
「安心して出入りしていいよ」
研究室の中にもというのです。
「だから皆でいようね」
「わかったよ、それじゃあね」
お馬さんは先生の言葉に笑顔で頷きました、こうして皆は研究室の中でも先生と一緒にいることになりました。
先生は講義の時はお昼御飯の時意外は研究室の中に皆と一緒にいます、そして王子も毎日研究室に来ます、他の教授や学生さん達もです。
その中で、です。王子は先生に笑顔で言いました。
「後はトミーだけだね」
「うん、トミーはまだイギリスだね」
「留学の手続きは順調だから」
「そうなんだ、それじゃあ」
「もう暫くしたらね」
王子は先生と一緒に研究室の中で紅茶を飲みながら言います。
「彼も来てくれてね」
「イギリスにいた時とそのまま」
「楽しくやっていけるよ」
「それは何よりだね」
「うん、それとだけれど」
ここで王子は話題を変えてきました。
「先生も落ち着いたら」
「トミーも来てだね」
「日本の生活に慣れてきたらね」
そうなってくればというのです。
「その場合はどうするのかな」
「それからのことだね」
「そう、暇になるっていうか余裕が出来てくるから」
生活やそうしたことにです。
「その場合はどうするのかな」
「つまりあれだね、イギリスにいた時みたいに」
「呼ばれて他の国に行ったりサーカスとかをするのかな」
王子は先生のお顔を悪戯っぽい微笑みで見ながら尋ねます。
「そうするのかな」
「それはわからないね」
先生は王子の問いに首を少し傾げさせたうえで答えました。
「まだね」
「そうなんだ」
「何もそうした声がかからないか困らないとね」
そうしたことがないとだというのです。
「僕も何もしないよ」
「受け身なんだね」
「イギリスにいた時は患者さんもいなかったしね」
つまり経済的に困ることもあったのです、先生は皆から好かれてお友達は沢山いますがお金はない人なのです。
「そうしたことも出来たけれど」
「今は教授だからね」
「まとまったお金は入るけれど」
「時間はね」
「そこまではないんじゃないかな」
こう王子にお話するのでした。
「月とかに行くまではね」
「月に行ったのは大冒険だったね」
「まさかあそこまで行くとは思わなかったよ」
先生にとっても信じられないお話でした、あの時のことは。
「けれどそれでもね」
「月に行ったことは」
「僕にとっても印象深かったし」
それにだというのです。
「忘れられない思い出だよ」
「そうだよね、けれど冒険は」
「お声がかかったりして時間があればね」
そうした条件が揃ってこそだというのです。
「行かせてもらうよ」
「何処にでもだね」
「今じゃ飛行機もあるしね」
「飛行機は便利だよね」
「うん、どうも船の方が好きだけれどね」
先生の好みはこちらです、船で海を行き来することが好きなのです。
「時間がない時は仕方ないからね」
「飛行機なら僕も持ってるからね」
王子個人が持っているものです。
「それに乗って何処にでも行けるよ」
「それはいいね」
「しかもジェット機で結構大きいから」
「皆も乗せて行けるね」
「そう、だから何かあれば僕に行ってね」
王子は先生に笑顔でお話するのでした。
「何時でも何処でもあっという間に行けるからね」
「その必要がある時はだね」
「是非そうさせてもらうから」
だからだというのです。
「何時でもね」
「うん、好意に甘えさせてもらうよ」
「それじゃあね」
こうしたことをお話するのでした、そして。
王子はまたお茶を飲んでそのうえで先生にこうも言いました。
「日本の紅茶でしかもこれは」
「ティーパックのものだけれどね」
「そうだよね、これがティーパックの紅茶なんだ」
「美味しいね」
「凄くね」
そのティーパックの紅茶もだというのです。
「お水がいいせいだね」
「沸騰させればそれだけでね」
まさにそれだけでだというのです。
「飲めるから」
「いいお水だね」
「そのままでも飲めるけれどやっぱりカルキ臭いから」
水道水をそのまま飲んでもだというのです。
「けれど沸騰させてカルキを抜けば美味しくなるよ」
「紅茶にしなくてもだね」
「日本のお水はそのままでも美味しいよ」
お茶にしなくてもだというのです。
「やっぱり質がいいんだよ」
「僕の言った通りでしょ、お水のことも」
「確かにね」
「お水をそのまま飲める位にね」
そこまでいいというのです。
「ヨーロッパじゃ中々こうはいかないんだよね」
「硬水だからね」
「そうそう、それでお茶にすると」
お水のままでも美味しいけれどだというのです。
「余計に美味しいんだよね」
「これなら幾らでも飲めるよ」
先生も上機嫌で紅茶を飲んでいきます、そして。
その紅茶を飲みながらです、ふと困ったお顔になってこうも言いました。
「ただ。最近ね」
「お茶を飲み過ぎてかな」
「何かおトイレが近くなったね」
そうなってしまったというのです。
「どうもね」
「飲み過ぎだよ、それは」
「やっぱりそうだよね」
「うん、後はね」
「後は?」
「お茶にいつもお砂糖を入れているけれど」
先生はイギリスにいた時からそうしています、お砂糖をたっぷりと入れているミルクティーが先生の好物です。
「学生さんに言われたんだ、僕はいつも飲んでいるから」
「あまりお砂糖を入れていると」
「そう、糖分の摂り過ぎだってね」
「太るね」
「糖尿病になるって言われたよ」
「じゃあ普段飲む時は控えてね」
そのお砂糖をだとです、王子も先生にこう言います。
「それでティータイムの時だけにした方がいいよ」
「紅茶にお砂糖を入れて飲むことはだね」
「うん、そうするといいよ」
こう先生にアドバイスするのでした。
「僕も先生に病気になって欲しくないからね」
「だからだね」
「糖尿病になったら大変じゃない」
「一生の病気だしね」
先生もお医者さんです、糖尿病の恐ろしさはよく知っています。それで王子にも気をつける顔で答えるのでした。
「気をつけないとね」
「そうしてね」
「うん、心がけておくよ」
「そうしてくれると僕も嬉しいよ」
先生が健康に気をつけてくれているのならというのです。
「本当にね」
「そうだね、それじゃあ」
「うん、これからはね」
紅茶にお砂糖を入れるのはお茶の時間だけになりました。先生は気をつけてそうすることにしたのです。
そして王子とそうしたことをお話してからです、先生はいつもの穏やかな笑顔で王子にこんなことを言いました。
「さて、健康の為じゃないけれど」
「歩くのかな」
「ちょっとね、ここから歩いてね」
そうしてだというのです。
「美術館に行こうかな」
「この大学の中のだね」
「この大学は凄いよね、何でもあるね」
美術館だけでなく博物館に動物園、植物園とです。
「牧場まであってね」
「観るものには事欠かないよね」
「そうした意味でもいい大学だね」
「だから勧めたんだ、先生にね」
この大学に来ることをです。
「そう思ってね」
「そうだね、じゃあね」
「うん、美術館に行くんだね」
「そうするよ、それでね」
そうしてだというのです。
「歩いてくるよ」
「ここから美術館まで歩くんだね」
「そうするつもりだよ」
「それがいいよ、カロリーも消費するしね」
例え先生が健康の為ではないと断ってもです、歩くことはそれだけで運動になり身体にもいいことなのです。
だからです、王子も先生に笑顔で言うのでした。
「行ってきたらいいよ」
「そうするね」
「あと先生自転車に乗れないけれど」
先生はこちらも苦手です、実は乗馬にしても乗るだけで駆けさせたりジャンプさせたりといったことは殆ど出来ません。
「電気自転車はどうかな」
「何かあるね、そうした自転車も」
「うん、乗ればどうかな」
こう先生にお話するのでした。
「それにね」
「電気自転車はあまりこけないんだ」
「そうそうこけないよ、それにちょっと動かしたらかなり動いてくれるから」
「普通の自転車より凄く楽なんだね」
「安全だしね」
このこともあってだというのです。
「それを買って乗ってみればどうかな」
「そうだね、それじゃあね」
「考えてみてね」
「この大学は広いからね」
あまりにも広いです、確かに。
「乗って移動するといいよ」
「そのことも考えてみるよ」
「お馬さんがいてもね」
「そうだね、お馬さんにばかり迷惑をかけてもね」
よくないとです、先生も応えます。
「電気自転車もあればね」
「いいからね」
「それじゃあね」
こうしたお話もしたのでした、そして。
先生は王子と色々お話をしました、そうしてお家に帰りますと。
お手紙が来ていました、その送り主はというと。
「へえ、トミーからなんだ」
「トミーからのお手紙なんだ」
「うん、そうなんだ」
先生はお手紙をお家の渡り廊下のところで開けました。そのうえで一緒にいる皆にお話します。先生は廊下の上に座布団を敷いてそこに座って皆はその周りに集まっています。
「それじゃあ今から読むね」
「うん、それじゃあね」
「読んでみて」
皆もそのことを聞いてです、こう先生に言いました。
そうしてなのでした、お手紙を読んでみますと。
先生は明るい笑顔になって皆に言いました。
「朗報だよ、留学の許可が下りたよ」
「あっ、そうなんだ」
「トミー日本に来られるんだ」
「そうなんだね」
「許可が下りてね」
そしてだというのです。
「後は留学の手続きと準備をしてね」
「それが全部整ってからだね」
「日本に来るんだね」
「それでそれからだね」
「僕達とまた一緒にいられるんだね」
「そうだよ、またね」
再びだというのです。
「僕達gはトミーと一緒にいられるよ」
「いや、それは何よりだね」
「思ったより早いしね」
「じゃあこれからはトミーも日本にいるんだね」
「しかも八条大学に来るんだよね」
「そうだよ」
まさにその通りだというのです。
「トミーは八条大学に留学するつもりだよ」
「いいね、本当に皆揃うね」
「王子ももういるしね」
「これでトミーも来たら」
「イギリスにいる時と一緒だね」
「本当にね」
こうお話するのでした、そして。
その中で先生はもう一通のお手紙も出しました。お手紙はもう一通あったのです。そのお手紙はというと。
「これもイギリスからだよ」
「あっ、サラさんだね」
「あの人からだね」
皆はそのお手紙の差出人の名前を見て言いました。
「へえ、あの人からなんだ」
「あの人も手紙を送ってくれたんだ」
「これはちょっと意外かな」
「そうだよね」
「サラからとはね」
先生も意外といった顔でお手紙を開きながら述べます。
「珍しいね、それじゃあこの手紙も読んでみるね」
「うん、そっちもね」
「読んでみてね」
「そうするね」
先生は妹さんのお手紙も読んでみました、そこに書いてあったことはといいますと。
「八条グループの系列企業と提携出来てね」
「あっ、よかったじゃない」
「じゃあサラさんのご主人の会社もね」
「経営がましになるね」
「というか業績がかなりよくなったみたいだね」
ましになったどころかというのです。
「それで時々仕事で日本に来ることになったそうだよ」
「じゃあサラさんとも?」
「これまで通り時々会えるんだ」
「そうなるんだね」
「うん、つまり日本でもね」
先生はにこにことしてお話します。
「イギリスにいた時と同じでね」
「皆と一緒なんだね」
「僕達は」
「トミーとサラも来るからね」
「サラさんは時々だけれど」
「それでもだね」
「うん、来るよ」
来てくれることは間違いないというのです。
「だからね」
「皆と一緒にね」
「仲良くやっていけるんだね」
「そうだよ、これまで通りね」
こうお話してでした、先生は上機嫌でお手紙を収めました。そのうえで皆に王子に言われたこともお話しました。
「後ね、王子に暇が出来たらね」
「その時に?」
「暇になったら」
「そう、その時はね」
どう言われたのかをお話するのでした。
「冒険に出てたどうかって言われたよ」
「またアフリカに行ったりだね」
「サーカスをしたり」
「そして月に行ったり」
「そうしてだね」
「そう、そう誘われたよ」
こうお話するのでした。
「後王子の自家用機も使わせてくれるってね」
「相変わらず王子は気前がいいね」
「物凄い太っ腹だよね」
「ただ、今はね」
先生は皆にこのこともお話しました。
「時間がないからね」
「今先生大学の教授さんだからね」
「何かと忙しいよね」
「大学での講義もあるし」
「論文も書かないといけないんだよね」
「そうだよ、実際に今論文も書いているよ」
それもしているというのです。
「大学の先生は論文も書かないといけないからね」
「それはどうしてもだよね」
「書かないといけないんだよね」
「そうだよ、絶対にだよ」
まさに欠かしてはいけないことだというのです、大学の先生が論文を書くということは。
「それをしないと大学の先生じゃないよ」
「じゃあ先生は大学の先生なんだね」
「紛れもない」
「そうであればいいね」
ちゃんとした大学の先生ならというのです。
「どうも日本の文系の方は違うみたいだけれどね」
「論文を書かない先生もいるんだ」
「そんな人も」
「うん、いるみたいだよ」
実際にそうらしいというのです。
「それでとんでもないことを言う人もね」
「大学の先生がとんでもないことを言うんだ」
「そんな人もいるんだ」
「日本では先生が一番酷いっていうからね」
先生もこのことについて調べていてそうじゃないかなと思いはじめています、何しろ日本では先生が起こるおかしな事件があまりにも多いからです。
「生徒を殴る先生も多いからね」
「体罰じゃないんだね」
「暴力だよね」
「そう、調べてみたら本当に酷いね」
日本の学校の先生達の暴力はというのです。
「僕は暴力が嫌いだから余計にね」
「嫌な思いをするんだね」
「そうした先生がいると」
「暴力は何にもならないよ」
先生の持論です。
「ましてや自分が教えるべき生徒に、まだ子供なのにそんなことするなんてね」
「子供に暴力振るうんだね、日本の学校の先生って」
「抵抗出来ない相手に」
「それも怪我をする位にね」
そこまでするというのです、先生は曇った顔でお話します。
「そんなことは絶対にしたらいけないけどね」
「僕もそう思うよ」
「私も」
「僕もだよ」
皆暴力についてはこう言うのでした、とても許せないといったお顔で。
「そんなことをしたらね」
「子供が可哀想だよ」
「そんな先生がいるなんてね」
「日本も大変だね」
「どんな国にも人にもいいところと悪いところがあるけれど」
それでもだとです、先生は心配しているお顔で言うのでした。
「こうしたところは早いうちに何とかしないとね」
「駄目だよね」
「絶対に」
「日本の人達もよくないって思っているし」
そう思わない方が不思議です、暴力を振るう様な先生が普通に学校にいていい筈がないのですから。
「努力次第だよ」
「悪いことをどうにかするにも努力だね」
「努力しないと駄目なのね」
「このことはどうしても」
「努力なくしてはどうにもならないのね」
「そうだよ、努力しないと」
先生も言います。
「何にもならないからね」
「じゃあ先生もだね」
「先生も努力してだね」
「そうしていくんだね」
「これからも」
「そうしていっているつもりだし」
それにだというのです。
「これからもね」
「努力していくんだ」
「そうしていくんだね」
「そうするよ」
絶対にだというのです、先生も。
そうしたお話もしました、そのうえで。
先生は上を見上げました、お話をしている間にすっかり夜になっていてお空には満月があります。
その黄色い満月を見上げてです、皆に言いました。
「綺麗な月だね」
「そうだよね、月の人達は元気かな」
「あの人達は」
「元気だと思うよ」
先生は穏やかな笑顔で皆に応えました。
「きっとね」
「またあの人達に会いたいね」
「機会があれば」
皆も満月を見上げています、あの人達がいる。
「月にも行ってね」
「そうして」
「機会も大事だよ」
先生のお言葉です。
「機会ごとによって変わったりもするからね」
「だからだよね」」
「僕達も機会があって先生と一緒になれたし」
「そう思うと機会も大事だね」
「そうね」
皆でお話してでした、先生はこんなことも言いはじめました。
「そうだ、お月様を見ながらね」
「この満月を?」
「そうしながら?」
「うん、お酒を飲もうかな」
こんなことを言いだしたのです。
「そうしようかな」
「じゃあウイスキー出す?」
ダブダブがお酒と聞いてこのお酒を出してきました。
「それにする?」
「ウイスキーだね」
「そう、それにね」
「後は」
それに加えてだというのです。
「ビーフジャーキーかな」
「じゃあ二つ共持って来るわね」
「いや、イギリスよりも」
ウイスキーはイギリスのお酒です、ですがここは日本でしかも日本のお家にいます。それで先生は言うのでした。
「日本でいこうかな」
「じゃあ日本酒?」
「あるから、そのお酒は」
「あるわよ」
ダブダブは先生にすぐに答えました。
「ちゃんとね」
「あっ、そうなんだ」
「先生も飲むかしらと思ってね」
「僕が買おうって言ったんだ」
ガブガブが提案したとです、ガブガブは自分からお話します。
「それでなんだ」
「日本酒を買ってくれたんだ」
「そうだよ、あとおつまみはね」
再びダブダブが先生にお話します。
「柿の種があるわよ」
「ああ、あれだね」
「それでいいかしら」
「あるものなら何でもいいよ」
おつまみならというのです。
「ここで日本酒を飲むのならね」
「そう、わかったわ」
「それじゃあね」
こうしてなのでした、先生は皆と一緒に満月を見上げながら日本酒を楽しみました。そのお酒はイギリスのものとはまた違う美味しさがありました。
とりあえず大学初日は無事に終わりっと。
美姫 「他の子たちも大学に行けるみたいだし」
先生が一人来ただけなのに、賑やかになりそうだな。
美姫 「本当よね。一体、どんな日常が繰り広げられる事になるのかしらね」
次回も待ってます。
美姫 「待ってますね〜」