『ドリトル先生と日本のお料理』
第二幕 八条大学
先生は八条大学に足を向けました、そして学校に着くとまずは校門がありました。その校門のところにです。
王子が執事の人と一緒に立っていました、そこから右手を振って挨拶をしてきました。
「おはよう、早いね」
「あれっ、どうしてここに?」
「昨日お話したじゃない、先生が大学に来るって」
「うん、本格敵に勤める前にね」
先生も王子に答えます。
「どんな場所か見学に来たけれど」
「そう、そうしたことをお話したよね」
「昨日お寿司を食べた時にだったね」
「それでなんだ」
校門で先生を待っていたというのです。
「ここでいたけれど。今来たところだったんだよ」
「僕を案内してくれる為に」
「そうだよ、駄目かな」
「悪いね、このことまで世話をしてもらって」
「いいよ、何度も言うけれど先生と僕の仲じゃない」
だからいいというのです。
「遠慮はなしだよ」
「そうなんだね」
「そう、もう朝御飯は食べたかな」
「お握りと卵焼きをね」
「そこにお味噌汁があると完璧だね」
「日本のスープだね」
「そう、味噌スープだよ」
王子はお味噌汁のお話もしました。
「あのスープは日本では朝に飲むことが多いんだ」
「それは忘れていたよ」
「今度から飲むといいよ、朝に飲むお味噌汁は最高だからね」
王子は先生に明るい笑顔でお話します。
「毎朝飲むといいよ」
「そう、じゃあダブダブに話しておくよ」
「そうするといいよ。それじゃあね」
「今からだね」
「案内させてもらうよ」
その学園の中をだというのです。
「八条学園のね」
「随分と広い学園だね」
先生は校門からその中に見える広いキャンバスを見て言いました。
「大学だけじゃないのかな」
「うん、大学以外にもね」
あるというのです。
「保育園から高校までね」
「ハイスクールだね」
「全部揃ってるんだ」
そうだというのです、八条学園の中には。
「そして大学の学部もね」
「揃ってるんだ」
「先生が勤める医学部だってあるし」
「他の学部もだね」
「文学部もあるし法学部も工学部もね」
とにかく色々とあるというのです。
「宗教学部もあって。学校の中に教会や礼拝堂もあるんだよ」
「それは普通じゃないかな」
「日本じゃ普通じゃないんだ」
日本の学校ではというのです。
「日本はキリスト教の国じゃないから」
「そのことは知ってるけれど」
「まあ中に入ってね」
校門のところでずっとお話するのも何だからとです、王子は先生に言ってきました。
「今日僕は講義がないから一日ずっと案内出来るよ」
「一日?そんなに案内に時間がかかるんだ」
「広い学園だから」
それだけの時間がかかるというのです。
「食堂や喫茶店も幾つもあるし広いグラウンドも幾つもあって」
「スポーツも出来るんだね」
「凄いよ、野球やサッカーのグラウンドもあってね」
「ううん、本当に何でもあるんだね」
「そうだよ、スポーツの施設も充実しているんだ」
執事の人を入れて三人で校門を潜りながらです、王子は先生にお話します。学園の中は朝早いのでまだ殆ど誰もいません。通学してくる学生や教師の人も僅かです。
「室外のも室内のも。プールも幾つかあるよ」
「スポーツをするにも困らないんだ」
「そう、僕も泳いでるよ」
王子は水泳に興じているというのです。
「凄く大きな室内プールもあってね」
「そこでなんだね」
「泳いでるんだ、あとこの大学には農学部や高校の農業科もあってね」
「農学部は広い場所が必要だね」
農業の勉強に畑や家畜が必要だからです。
「そういえば遠くに森が見えるね」
「そこがなんだ」
「農学部のある場所だね」
「高校の農学部とね」
それが一緒にあるというのです。
「あそこでお野菜や肉も作ってるよ。それと水産学部や水産科もあるから」
「海の方も整ってるんだね」
「そうだよ、陸も海も両方楽しめるんだ」
「凄い学校みたいだね」
「本当に何でもある場所だから、それでね」
王子はここで自分達が行く右手を指し示しました、すると。
そこに小さめの二階建ての校舎がありました、前にはグラウンドと色々な公園にある滑り台やブランコ、ジャングルジム等がありました。
そこを指し示してです、王子は先生にお話しました。
「あそこが幼稚園なんだ」
「遊ぶ場所が一杯あるね」
「兎や鶏もいてね」
見れば大きな飼育用の小屋も見えます。
「あそこで子供達が動物の世話をしているんだ」
「兎に鶏だね」
「そうだよ」
「じゃあその子達に何かあれば」
「先生に診てもらうことになるかもね」
そうなるかも知れないというのです。
「先生は獣医さんでもあるし動物の言葉もわかるから」
「この学園に獣医さんはいないのかな」
「いるよ、けれど人手不足なんだ」
それでいないというのです。
「先生はそのことからも呼ばれたんだよ」
「成程ね」
「そっちも頑張ってね」
「そうさせてもらうよ。誰かに何かあれば」
その時はというのです、先生も。
「助けさせてもらうよ」
「そうしてね。他にもね」
案内するというのです、そして。
幼等部に中等部、それに高等部を巡ります。その頃にはいい時間になっていて生徒達の通学も終わり授業がはじまっていました。グラウンドでは体育をしている生徒達がいます・
その生徒達を観てです、先生は王子にお話しました。
「日本人も最近は」
「どうしたのかな」
「大きくなったんだね」
こう言うのでした。
「何かね」
「そうだね。背は高いね」
「思ったより高いね」
「先生よりは低いけれどね」
先生は太っていてスポーツは不得意ですが身体は大きいです、王子から見てもです。
「日本人も結構ね」
「大きいね」
「お肉でも牛乳でも何でも食べるからね」
今の日本人はというのです。
「すき焼きだってね」
「あれは美味しかったね」
「そう、今の日本人は何でも食べるから」
「大きいんだね」
「イギリス人と比べても遜色ない位かな」
「そうかもね、後は」
先生がグラウンドを走る女の子達、高等部の娘達を見て言うのでした。
「体操服だけれど」
「体操服がどうかしたのかな」
「いいデザインだね、特に半ズボンが」
「半ズボン?」
「うん、足を上手に守っていて動きやすくて」
それでいいというのでえす。
「いいデザインだね」
「怪我をしたらいけないからね」
「素足はよくないんだよ」
身体を動かす時でもだというのです、先生はお医者さんとして言うのです。
「怪我をしやすいからね」
「そうだよね、それはね」
「それで動きやすくといけないから」
「だからあの半ズボンはいいんだね」
「膝まで守ってるからね」
「あの半ズボンだけじゃないけれどね」
ここでこう言う王子でした。
「ジャージとか。あとスパッツもあるし足が完全に出ている半ズボンもあるよ」
「そうした半ズボンはよくないよ」
足が完全に出るものはというのです。
「ジャージはいいけれどね」
「先生は怪我を気にするんだね」
「医者だからね。どうしてもね」
そうなるというのです。
「気になるよ」
「職業柄だね」
「怪我をしないことだよ」
それが第一だとです、先生は言います。
「スポーツ選手でもそうじゃない、僕はスポーツをしないけれどね」
「怪我は怖いね」
「若し熱帯で怪我とかをしたら」
先生はこれまでの冒険、王子も一緒だったその冒険のことからも言いました。
「それだけで命取りだよ」
「うんうん、怪我をしたらそこからバイ菌が入ってね」
「熱帯は怪我をしなくても怖いから」
「蚊がね、特に」
「日本はそこまで暑くないから大丈夫だね」
蚊と蚊がもたらす病気の心配はです。
「伝染病は少ないよね」
「マラリアとかテング熱はないよ」
「それは何よりだね」
「蚊はいるけれどね」
それはあるというのです。
「そこまで怖い病気はないよ。予防接種もしてるし」
「予防接種もなんだ」
「そうだよ、だからそのことは安心してね」
「蚊は怖いんだよ」
先生もよく知っていることです。
「小さいけれどね」
「恐怖の塊だね」
「蚊は極力減らしていかないと」
「そうそう、この学園蜻蛉も多いから」
「ああ、蚊を食べてくれるね」
「蛙も多いんだよね」
「いいことだよ、動物が一杯いることは」
先生は王子の話に目を細くさせます。スーツに縁のある帽子がとても似合っています。
「いいことだよ」
「学園の中でもね」
「動物がいるとそれだけで賑やかになるからね」
だからいいというのです。
「いいんだよ」
「そうだね。動物は本当に一杯いるよ」
王子はここで先生をある場所に案内しました、そこは学園の中にある動物園です。この学園には動物園もあるのです。
動物園の中には様々な動物達がいます、王子は先生にその動物達を見せながらそのうえでお話します。
「この通りね」
「熱帯の生き物もいるし寒帯の生き物もいるし」
「この動物園は凄いでしょ」
「あっ、オシツオサレツもいるね」
先生と一緒に住んでいるその動物もいました。
「いいね、あの子も喜ぶよ」
「この動物園にもいるんだよ」
「いいね、コアラやカンガルーもいるし」
「オーストラリアの動物もね」
「残念だけれど僕はまだ」
ここで先生は寂しそうに言いました。
「フクロオオカミには会っていないけれどね」
「フクロオオカミって?」
「オーストラリアのタスマニア島にいるっていう有袋類だよ」
「有袋類っていうとカンガルーの仲間だね」
「そうだよ、絶滅したんじゃないかって言われているね」
先生は寂しそうに言うのでした、カンガルー達を見ながら。
「一度見てみたいけれどね」
「会えるといいね、その子にも」
「本当にね」
こうしたこともお話してです、先生は動物園の中も見回りました。動物園の後は植物園も巡ります。そこにも様々な植物があります。
普通の博物館に鉄道博物館、美術館も巡ります。そして物凄く大きな神殿を思わせる入口の図書館にも入ってです。
先生はその図書館の中で目を丸くさせて王子に言いました。
「こんな立派な図書館はね」
「イギリスにもないね」
「冗談抜きでね」
こう前置きしてから言う言葉はといいますと。
「大英図書館にもね」
「負けないね」
「日本にもこんな図書館があるんだ」
「古今東西の本が集まってるよ」
「凄い場所なんだね」
「あと教授の人もそれぞれ一杯蔵書を持っててね」
王子は先生にお話していきます。
「その中には亜隈だったかな。凄いお爺さんの博士がいるけれど」
「その人が一杯本を持ってるんだね」
「そうだよ、どれだけ持っているかわからない位にね」
持っているというのです、本を。
「この学園は本も多いから」
「本が多い学校はいい学校だよ」
先生は王子、執事の人と一緒に本棚が並んでいるブラウンの木の床の図書館の中を歩きつつ述べます。
「それもここまで多いとね」
「いいことだね」
「一体どれだけあるのかな」
先生は本棚達の上の方を見上げながら満足している顔で言います。
「これだけあるよ」
「どれだけだろうね、本当に」
「司書の人も大変だろうね」
「そのせいか働いている人は多いよ」
この図書館の中でだというのです。
「凄くね」
「そうなんだね」
「そうなんだ。あと見回ったけれどここって色々な博物館があるじゃない」
「美術館にもいいものがあったね」
「そうした場所だからね」
「働いている人が多いんだね」
「そうした学園なんだ、ここはね」
学生さんや教師の人だけでなくその中で勤めている人もだというのです。
「そうなんだよ」
「成程ね、じゃあ図書館の次は」
「もういい時間だから」
気付けばお昼です、三人は今学園の中を車まで使って移動して見回っています。そうしていても色々と回っているのでその中でいい時間になっていたのです。
「お昼食べよう」
「お昼は和食だね」
「うん、この近くだと」
図書館のです。
「丁度おうどんが美味しい食堂があるから」
「おうどんだね」
「そう、それがあるから」
だからだというのです。
「そこに行こうね」
「それじゃね」
こうお話してでした、早速。
王子は執事さんと一緒に先生をその食堂に案内しました、そうしてです。
おうどんと丼、それともう一つ頼みました。先生はまず頼まれたそれを見て王子に尋ねました。
「お野菜の煮物だね」
「肉じゃがっていうんだ」
色々なお野菜がお醤油で煮られて大きなお椀の中にあります。
「これはね」
「人参にジャガイモ、後は」
「玉葱に糸蒟蒻、牛肉だよ」
「糸蒟蒻は別として」
先生は自分の前にあるその肉じゃがも見て言いました。
「ビーフシチューと同じ食材だね」
「あっ、これ実際にビーフシチューから出たものらしいよ」
「嘘じゃないよね」
「うん、嘘じゃなくてね」
本当にビーフシチューから出来たものだというのです、肉じゃがは。
「そうなんだ」
「意外だね」
「そうだよね、けれどこれがね」
ここで王子は先生に手で食べることを勧めました、白いおうどんの上に濃い緑の若布が一杯置かれています。
そのおうどんを食べつつです、王子は言うのです。
「美味しいから」
「肉じゃがも」
「そう、美味しいから」
だからだというのです、先生もおうどんを食べています。
そのうえで、です、王子は言いました。
「このおうどんと同じでね」
「あっ、このおうどんは確かに」
「美味しいよね」
「これもね。凄く美味しいよ」
「イギリスにもパスタとかあるけれどね」
イタリアから伝わっています、ですがその味はといいますと。
「コシがなくてね」
「このおうどんとは比べものにならないね」
「コシがあるだけじゃなくて味もいいよ。スープもね」
おうどんの丼の中のスープもだというのです。
「いいね」
「それはおつゆだよ」
「和食ではそう言うんだね」
「そうだよ、おつゆっていうんだ」
王子は先生にこのこともお話します。
「日本ではね」
「色々と日本だけの言い方があるね」
「和食の特徴の一つだよ」
「そのことも勉強していかないとね」
「そうそう、それでだけれど」
その美味しいおうどんを食べつつです、王子は言うのでした。
「おうどんはのびないうちに食べて」
「それからだね」
「肉じゃがとね」
それとでした、お話に出ている。
「丼もね」
「卵で御飯が隠れているね」
先生は丼を見ました、黒い大きなお碗の中にあるそれはまさにそうなっています。そしてその卵をといで少し焼いたものの中にでる。
「葱と鶏肉だね」
「親子丼っていうんだ」
王子はその丼の名前をここで言いました。
「この丼はね」
「親子丼だね」
「他にも丼は一杯あるけれど」
王子はうどん、若布うどんを食べ終わってからさらに言います。
「まずはこれをね」
「食べるんだね」
「そう、美味しいから」
この親子丼もだというのです。
「食べようね」
「それじゃあね」
先生もおうどんを食べ終えました、そして。
その肉じゃがも食べます、そのうえで先生は目を丸くさせて言いました。
「いや、本当に」
「美味しいよね」
「これもね」
肉じゃがもだというのです。
「美味しいね」
「そうだよね、これもね」
「ビーフシチューから出来たとは思えないけれどね」
それでもだというのです。
「凄く美味しいよね」
「野菜も多いしね」
「野菜で思いだしたけれど三時にはね」
お茶の時間にはというのです。
「フルーツが凄く美味しい喫茶店も紹介するから」
「ビタミンも必要だからだね」
「それで栄養を補給して」
「頑張らないとね」
そうそう、まあこの肉じゃがもね」
「いいね」
先生はその味に満足して言います。
「これは最高のビーフシチューだよ」
「日本のね」
「お醤油とジャガイモも合うんだね」
「後でレシピがいるかな」
「本で探してこのこともね」
肉じゃがのこともだというのです。
「調べてダブダブに教えるよ」
「そうするんだね」
「うん、自分でね」
調べるというのです。
「そうするよ」
「そうなんだ。それじゃあ」
「それじゃあね」
こうお話してでした、次は丼を食べました。するとここでもこう言う先生でした。
「これもいいね」
「そうでしょ、丼も美味しいんだよね」
「日本に来てから美味しいものばかり食べているよ」
先生の他ならない感想です、日本のお料理を食べてきて。
「満足しているよ」
「それは何よりだね、けれどこれだけじゃないから」
「美味しいものはだね」
「まだまだ一杯あるから」
日本にはというのです、そして日本だけでなく。
「この学園もね」
「他にも美味しいものが一杯あるんだね」
「そうだよ」
まさにその通りだというのです。
「この学園は広いから食堂も沢山あってね」
「どの食堂も」
「安くて美味しくて」
そしてだというのです。
「しかもそれぞれ名物メニューがあるんだ」
「それじゃあこの食堂は?」
「丼なんだ」
それが名物だというのです。
「今僕達が食べているね」
「これがなんだ」
「そう、けれど親子丼以外にもね」
「他の丼ものもだね」
「カツ丼も他人丼も牛丼も鰻丼もね」
そうした他の丼ものもだと、王子は先生にお話します。
「ここは名物なんだ」
「じゃあここに来た時は」
「そう、丼ものだよ」
それを注文して食べるべきだというのです。
「他にもパスタが美味しいお店、中華が美味しいお店ってね」
「色々あるんだね」
「ハンバーガーやホットドッグがいいお店もあるから」
「じゃあイギリスはどうかな」
先生はここで少しジョークを入れて王子に尋ねてみました、そのことはお顔にも出ています。
「我が国は」
「うん、ティーセットがいいお店があるよ」
「三時に紹介してくれるお店だね」
「喫茶店でね。あとは朝食がいいお店があるよ」
「他はどうかな」
「ないね、残念だけれど」
先生にとっては残念だというのです。
「フィッシュアンドチップスが美味しいお店はあるけれど」
「じゃあローストビーフは」
「うん、フィッシュアンドチップスが美味しいお店がね」
ローストビーフも美味しいというのです。
「一応イギリスからの留学生も多いから」
「成程、そうなんだね」
「そう、ただ先生には残念だけれど」
「僕には?」
「そうしたお店のコックさんは日本人だから」
イギリス人ではないというのです。
「イギリスの味じゃないしイギリスで食べるよりずっと美味しいよ」
「つまり三つの意味で残念なんだね」
「そうなんだ」
王子は先生のこのことを言葉を選びながらお話します、先生が気分を悪くしない様に気を使いつつです。
「そのことはね」
「日本だからだね」
「どうしてもね、イギリスはね」
「食べるものはんだね」
「日本よりはね」
こう言うのでした。
「それはわかるね」
「昔からだしね」
イギリス料理は、というのです。先生も。
「我が国の料理は」
「ステーキもね」
このお料理もだというのです。
「この学園では安くて分厚いのが食べられるお店があるけれど」
「それもだね」
「うん、日本人のシェフだから」
その人が焼いているというのです。
「しかもお肉はアルゼンチンとかオーストラリアとかのだから」
「そうなるんだね」
「まあイギリスはね」
先生のお国はというのです。
「お料理以外は期待してね」
「文学とかはだね」
「イギリス文学や英語についてはね」
「凄くよく研究されているんだね」
「イギリス文化もね。アイルランドやスコットランドのことも」
「そのことは嬉しいね」
先生にしてもです、自分のお国のことが勉強されていることは。
「日本人は学問好きだっていうけれど」
「大体興味のあることは徹底的にね」
「勉強する国民性なんだね」
「一芸に秀でているっていうかね」
「そうした人が多いんだね」
「この学園もね。まあ中にはどれだけの学問を収めたのか」
どうかというのです。
「わからない人もいるけれど」
「学問の万能選手なのかな」
「うん、仙人みたいな人がいるよ」
「あっ、その人は若しかして」
先生は肉じゃがで親子丼を食べつつ気付いた顔になり言いました。
「悪魔博士かな、通称」
「あっ、知ってるんだ」
「イギリスでも有名だよ、あらゆる分野の学問の権威で何十もの博士号を持っているね」
「そうそう、先生の専門の医学も農学も工学もね」
「文系でもだね」
「語学も凄くてね。とにかく学問なら何でも知っているtっていう」
「さっきもその人の話をしたね」
このことも思い出した先生でした。
「百五十歳とか聞いてるけれど」
「あれっ、もっといってないかな」
「人間の年齢の限界を超えているね」
先生はお医者さんなので人間の身体のことから述べました。
「ちょっとね」
「まあ噂だけれどね、百五十歳とかいうのは」
「僕もそう聞いてるけれど」
「謎の多い人だよ、国籍だけははっきりしてるけれど」
「日本だね」
「日本人なのは確かだよ」
生まれはこの国で間違いないというのです。
「まあそうした人もいるけれど」
「日本人の傾向はだね」
「興味を持っていることに凄くのめり込むから」
「一芸に秀でてるんだね」
「勉強のこともスポーツのこともね」
そのどちらもだというのです。
「興味があることには徹底的にだから」
「わかったよ、そのこともね」
「多分先生が教える学生さんも一緒だよ」
「楽しみだよ、ただイギリスでは学問もスポーツもだけれど」
「そうした人もいるけれどね」
「全体的な傾向としてだね」
「そう、一芸だから」
日本人、そして八条学園の人達もだというのです。
「そこもイギリスと違うよ」
「僕もそうなるかな」
先生は自分がスポーツは不得意なことから述べました。
「どうも身体を動かすことは子供の頃からね」
「そうだろうね、そこは先生と似てるかもね」
「やっぱりそうなんだね」
「だとしたらこの学園でも幸せにやっていけるかな、いやこの学園は懐が広いから」
ただ敷地面積が広いだけではないというのです。
「誰でもやっていけるよ」
「僕でもだね」
「そう、大抵の人が幸せにやっていけるだけの広さがあるから」
多くの人達がだというのです。
「安心してね」
「そうさせてもらうね」
「じゃあ次はね」
ここで二人共お昼を食べ終わりました、王子はそのタイミングで先生に対してあらためて言いました。
「農学部、そして医学部の方も巡って」
「僕の勤め先だね」
「流石に医学部の施設には入ることは出来ないけれど」
「まだ勤務はしていないからね」
「けれど教室とかは観られるよ」
「それじゃそうした場所を観て」
「うん、三時はね」
その時間になりますと。
「お茶を飲もうね」
「うん、その時はね」
先生にとっては欠かせないことです、お茶のことは。
「楽しみにしているよ」
「是非そうしてね」
そうしたことをお話してでした、そうして三人は食堂を後にしました。
そして医学部や農学部も回って森も観てです、三時のお茶も楽しんで。
三人で学園の中を観て回った頃にはです、もう夕方になっていました。
赤くなったお日様に照らされつつです、先生は長くなった自分達の影を見ながら王子に帽子を脱いで一礼してから言いました。
「今日は有り難う」
「どうかな、この学園は」
「うん、ただ広いだけじゃなくて」
「凄く色々な設備があってね」
「いい学園だね、ただ今日回ったのは」
「ざっと回っただけだからね」
だからだというのです、王子も。
「まだまだ広いよ」
「そうだね」
「この学園は本当に広いから」
王子は先生にお話するのでした。
「一つの場所、動物園も美術館も」
「じっくり回った方がいいんだね」
「その時はまたね」
「王子と一緒にだね」
「うん、回ろう」
是非そうしようというのです。
「そうしようね」
「いや、今日は本当に楽しかったよ」
先生は満面の笑顔で言いました。
「こんなに色々回ったのははじめてだよ」
「今日ははじまりに過ぎないから」
「これからもっとだね」
「楽しくなるよ」
王子はこう先生に返します。
「期待していてね」
「そうさせてもらおうかな」
「じゃあ後はね」
「後は?」
「学校だけじゃなくてね」
「というと?」
「街も回るといいよ」
学園の外もだというのです。
「そこもね」
「街もだね」
「そこもいいから。商店街もあって」
王子はそうした場所のこともお話します。
「駅前とかね。イギリスとは全然違って」
「そういえば日本は鉄道もいいんだったね」
「凄いよ、この学園を運営している八条グループは鉄道会社も持ってるけれど」
その鉄道会社がだというのです。
「日本全土の路線を持っていてね」
「じゃあこの神戸からもだね」
「日本の全部の都道府県に行けるんだ」
「ううん、イギリスにはそんなものはないよ」
先生はここでも唸るのでした。
「凄い鉄道会社もあるんだね」
「日本にはね。最近日本の鉄道会社は、特にこの関西はおかしくなってる企業も多いみたいだけれど」
「八条鉄道はだね」
「大丈夫だから、サービスもいいし」
「日本のど何処にも行けて」
「料金も良心的だしね」
王子はその鉄道のことも笑顔でお話していきます。
「旅行とか他の街に行く時はね」
「使えばいいんだね」
「そうだよ、是非ね」
こう言うのでした。
「わかったよ、鉄道もだね」
「鉄道は元々イギリスからはじまったんだよね」
「そうだよ」
先生はこのことについて王子に笑顔でお話しました。
「産業革命の中でね」
「そうだよ、そうなったんだよ」
「そうなんだ」
「けれど日本はそのことでもイギリスを超えたみたいだね」
先生は唸ると共に少し寂しそうに言いました。
「どうもね」
「鉄道もって」
「今では日本の方がずっと国力も高いし経済力もあってね」
「それで鉄道もなんだ」
「そうみたいだね、少なくともイギリスが世界をリードしていた時代じゃないよ」
今ではというのです。
「そのことは仕方ないよ」
「何かそこであれこれ言わないのがね」
「言わないのが?」
「先生らしいね。とにかく今はね」
「うん、学園を出てだね」
「街に行ってね」
そして駅前にも行ってだというのです。
「観てみたら。何なら僕も一緒に行くけれど」
「いや、そこまで気を使ってもらうのはね」
「いいんだ」
「うん、今日は学園を案内してくれたから」
もうそれで充分だというのです。
「これ以上お世話になったら悪いよ」
「それじゃあ」
「そう、一人で街を歩いてみるよ」
こう言ってなのでした、先生は一人で街を歩いてみようとしました。しかしここでこれまで静かに黙っていた執事さんがこう言ってきました。
「あの、先生は街に行かれるのは」
「はじめてだよ」
「左様ですか」
「地図は持ってるけれど」
「しかしはじめて行かれる場所ですから」
だからだとです、執事さんは先生に言うのでした。
「土地勘がありませんね」
「確かに。そのことは」
「そうですね、では」
「やっぱり僕が一緒にいた方がいいかな」
王子は先生と執事さんのやり取りを聞いてこう言いました。
「今は」
「その方がいいかもね」
「ううん、けれどね」
「だから、先生と僕の仲じゃない」
王子は笑顔で言います。
「そんなの気にしなくていいよ」
「そう言ってくれるんだね」
「そう、それじゃあね」
「街もだね」
「案内するよ。僕は街でも楽しくやってるし」
「日本のだね」
「八条町でもね、この町でも」
王子は今自分達が住んでいる町についてもお話するのでした。
「毎日楽しく過ごしてるよ」
「八条町はいい町なんだね」
「凄くね。綺麗だし」
「そして神戸も」
「あと大阪や京都もいいから」
神戸の近くにあるそうした町もだというのです。
「色々行くといいよ、ただ」
「ただ?」
「大阪は騒がしいよ」
王子は大阪についてはこう言いました、ですがそのお顔はとても楽しそうです。どう見ても愉快な場所についてお話するお顔です。
「ロンドンよりもずっとね」
「ロンドンよりもなんだ」
「言葉もね、コックニーみたいで」
「ふうん、あんな感じの喋り方なんだ」
「大阪はね」
その街はそうだというのです、大阪は。
「けれどその騒がしさがいいから」
「大阪もだね」
「是非楽しんできてよ」
「わかったよ、じゃあ少し落ち着いたらね」
大阪にも行ってみよう、先生は心から思うのでした。
「お家の皆と行ってみるよ」
「そうしようね」
「そう、じゃあ今から」
「今度は街を案内するよ」
八条町をだというのです。
「日が落ちるまでだけれど」
「夜になるまででしたら」
執事さんがここでまた言ってきました。
「急ぎましょう」
「そうだね、じゃあね」
「すぐに街に行こう」
こうお話してでした、先生は今度は街を案内してもらうのでした。それが終わってからでした。
先生はお家に帰りました、その時にはもうお外は真っ暗になっています。その真っ暗な窓の外を見ながら動物達にお話するのでした。
「いや、今日は楽しかったよ」
「学校の中だけでなく街も観てきたんだ」
「そうしたんだね」
「そうだよ、それでだけれど」
先生はここで皆に尋ねました。今先生達は皆でちゃぶ台を囲んでいます。そうして和食を食べているのです。
お魚を切ったものをお醤油で煮たものを見てです、ダブアブに尋ねました。
「これは何かな」
「鯖の煮付けよ」
「鯖?」
「日本に売っているお魚なの」
ダブダブはこう先生に答えます。
「それをスーパーで買ってきたのよ」
「誰が買ってきたのかな」
「僕だよ」
ジップが答えてきました。
「ダブダブやガブガブだと途中で悪い子に捕まりそうだからね」
「そうか、ジップが買ってきたんだ」
「字は僕が書いてね」
それはチーチーがしたというのです。
「ジップがお馬さんと一緒に買いに行ってくれたんだ」
「そうか、皆悪いね」
「お野菜もって思ってね」
ジップはさらに言います。
「そっちも買ってきたよ」
「ああ、これだね」
見れば緑のイボが一杯あるものを小さく切ったそれと細く小さなものと人参をスライスしたもの、それにです。
豚肉も入っています、それがでした。
「これは何かな」
「ゴーヤチャンプルだよ」
ポリネシアがお料理の名前を言ってきます。
「それはね」
「ゴーヤチャンプル?」
「そのイボが一杯あるのがゴーヤなのよ」
それだというのです。
「沖縄のお野菜よ。ヘチマの仲間だって」
「ふうん、沖縄だね」
「沖縄は知ってるわよね」
「日本に来る時に観たね」
先生は船で日本に来た時を思い出しながら答えました。
「あの島だね」
「そう、あの島のね」
お野菜だというのです。
「それよ」
「そうなんだ、あの島の」
「あそこも日本だからだね」
「沖縄産って表示で売ってたよ」
このこともお話するジップでした。
「それで栄養がよさそうだから」
「買ってきたんだ」
「あとその細くて白いのはね」
「これは何かな」
「もやしっていうんだ」
「もやし?」
「大豆から出来るものらしいんだ」
それがもやしだというのです。
「大豆から出た芽がね」
「もやしっていうんだ」
「そうなんだ、それでそのもやしもね」
「美味しいんだね」
「凄くね、しかも栄養がいいらしいから」
「それで買ってきたんだ」
「人参もだよ」
それに豚肉もだというのです。
「あとお味噌汁もね」
「あっ、これだね」
先生は今度はトートーに応えました。
「若布とこの黄色いのは」
「揚げっていうの」
トートーがそれについてお話します。
「日本のお豆腐の仲間らしいわ」
「それも買ってきてなんだ」
「ジップがね」
やっぱり彼が買ってきたというのです。
「私達で何を買って来て何を作るかお話をしてなの」
「それでお味噌汁もなんだ」
「材料を買って来てなの」
そうしてだったというのです。
「揚げもなの」
「色々買って来てくれたんだね」
「それと」
ここで、です。ホワイティも言ってきました。見れば食卓の中には黒に近い深緑の細いものが一杯集まったものもあります。
それは何か、ホワイティは先生にお話します。
「もずくもね」
「これは海藻かな」
「そうよ、若布と一緒よ」
「成程、それも買ってきてくれたんだ」
「身体によくて美味しいっていうから」
だから買って来たというのです。
「それをお酢で味付けしたの」
「どれも美味しそうだね」
「食べて食べて」
チープサイドが楽しそうに言ってきます。
「先生の為に作ったから、ダブダブがね」
「僕も早く食べたいよ」
ガブガブはもう待ちきれないといった感じです。
「だから先生がね」
「おっと、合図だね」
「神様に感謝をしてね」
ここはイギリスです、食べる前にすることは。
「お祈りをしてね」
「それで食べようね」
「うん、じゃあ今から」
先生も皆の言葉に笑顔で応えてです。
そのうえで両手を合わせます、他の動物達も前足や羽根をそうさせてです。
神様にお祈りを捧げました、そのうえで晩御飯も食べるのでした。
今回は学園をざっと回ったって感じだな。
美姫 「そうね。特に問題もなさそうだし良かったじゃない」
だな。話の殆どはやっぱり食べ物関係だったけれどな。
美姫 「よっぽど気に入ったみたいね」
良い事だな。暮らしていく上で食べ物というのは重要だしな。
美姫 「そちらの心配はないみたいだし」
次回はどんな話になるのか。
美姫 「次回も待ってますね」
ではでは。