『ヘタリア大帝国』




                 TURN97  ソープ帝国

 元に攻め込んだ枢軸軍は瞬く間に四つの星域を攻略した、騎馬艦達がいたがその彼等を全て一蹴したのだ。
「所詮鉄鋼弾だけだとな」
「造作もないです」
 アフガンを攻略した田中に副司令を務める小澤が言って来た、丁度今日本陸軍と同盟国の陸戦隊達が惑星を陥落させたところだ。
「彼等が攻撃する前に倒せます」
「艦載機にビームだな」
「あとこちらの水雷駆逐艦と潜水艦の索敵能力もあがっています」
 このこともあった。
「ですから」
「何だよ、歯応えのない相手だな」
 数も少ない、それではだった。
「つまらねえな、おい」
「そう思っていてです」
 これがだというのだ、小澤はこう言い加えた。
「元本星に行きますと」
「ああ、敵の主力がいるんだな」
「いつもこういうパターンですね」
「言われてみればそうだな」
「そうです、ですから」
 小澤も冷静に状況を話しているのだ、彼女らしいクールなシニカルを言いはしても。
「油断大敵です」
「そうだな、じゃあ元はか」
「モンゴルさんとそれにです」
「この国の国家元首か」
「ランス=ハーンというそうですが」
「名前聞いただけでわかったぜ」
 田中は直感的に察したのだ、彼のことを。
「相当な女好きでしかも外道だな」
「鬼畜です」
 そうした人間だというのだ、小澤も感じていた。
「とはいっても根はそこまでではないですが」
「うちの長官みたいな感じか?」
「長官は女好きです」
 そこが東郷とそのランスの違いだった。
「ランス=ハーンさんは手段を選ばないです」
「そいつが今回の相手だな」
「そうなります」
「しかも強いよな」
「このことも間違いないです」
「じゃあ元での戦いは覚悟していくか」
「これからはな」
 こうしたことを話してだった、そのうえで。
 枢軸軍は元に攻め込むことにした、元との戦いは決戦に入ろうとしていた。
 その元ではランスが平気な顔でモンゴル達に話していた。
「本当にあっさりだったな」
「うん、モンゴルもカザフも陥落したよ」
 そうなってしまったとだ、ランスは何でもないといった口調で話す。
「後はこの元だけだよ」
「敵は今月にも来ます」
 シィルも話してきた。
「迎撃の用意をしましょう」
「うん、頑張ろう」
 コアイがシィルのその言葉に頷く。
「ここはね」
「ただ。彼等は艦載機やビームが充実しています」 
 シィルはこれまでの戦闘のことからこのことを理解していた。
「こちらが攻撃を仕掛ける前にやられています」
「ああ、そのことだな」
「このことはどうするんですか?」
 こうランスに問う。
「騎馬艦ではどうしようもないです」
「奇襲を仕掛ける?」
 ここでモンゴルが提案してきた。
「ここはね」
「奇襲ですか」
「騎馬艦は機動力と索敵能力が高いし」
 このことに加えてだった。
「ここは僕の国だよ、何でもわかっているよ」
「地の利もあるんですね」
「そう、あるからね」
 それでだというのだ。
「奇襲を仕掛ける?」
「そうするか」
 ランスもモンゴルのその提案に腕を組んで応える。
「それしか戦いになりそうにもないしな」
「うん、じゃあね」
「よし、全軍で出撃だ」
 即決だった、ランスは言った。
「陽動部隊にあえて動いてもらってその隙に敵の後方に回ろう」
「後方に回る部隊が主力だね」
「そちらは俺と祖国さん、それにだ」
「コアイも行くよ」
 コアイは自分から名乗り出た。
「奇襲にね」
「じゃあ陽動部隊はだ」
「私になりますね」
 シィルしかいなかった、ここは。
「それではです」
「流石にやられっぱなしじゃ頭に来る」
 ランスの性格的にだ、やりっぱなしは好きだが。
「反撃を仕掛けてやるか」
「ではです」
 シィルも言う、そしてだった。
 元軍は枢軸軍に奇襲を仕掛けることにした、全軍で出撃して。
 枢軸軍は元への侵攻前にその入口で集結した、そしてだった。
 そこから元に向かう、その時に。
 中国が東郷に怪訝な顔で言った。
「ここは要注意ある」
「敵の動きか」
「モンゴルは匈奴の頃から奇襲が得意ある」
 長年に渡る彼との戦いから熟知しているのだ。
「だから今もある」
「何時来てもおかしくないか」
「騎馬艦の機動力に加えてある」
 そこにだというのだ。
「ここはモンゴルの国ある」
「しかも本拠地か」
「地の利は向こうにあるある」
 東郷にこのことを真剣な顔で話すのだ。
「何時奇襲を仕掛けて来てもおかしくないある」
「言われてみればそうだな」 
 東郷も中国のその言葉に頷く、そのうえで顎のその薄い髭に右手を当ててそのうえでこう言ったのだった。
「ここでもだな」
「奇襲に持って来いの場所あるな」
「ああ、特に後ろからだ」
 後方が問題だというのだ。
「側面もだがな」
「では長官、どうするあるか?」
「このまま進む」
 進撃はするというのだ。
「敵に奇襲を察していると気付かれては元も子もない」
「じゃあここは」
「ここはこうしよう」
 東郷はその余裕の微笑みで話した、今回の策を。
 そのうえで中国にあらためて問うた。
「これでどうだろうか」
「それあるか」
「いけると思うが」
「いいと思うある」
 中国は納得した顔で東郷の言葉に頷いた。
「それで」
「よし、それではだ」 
 東郷は軍をそのまま進めさせた、そのうえでシィルが率いる元軍を発見した、見ればその元軍の動きは。
 しきりに上下左右に動いている、アメーバの様に。 
 秋山はその敵軍を見て東郷に言った。
「あれはどうやら」
「陽動だな」
「はい、間違いありません」
 こう東郷に話すのだ。
「あの動きは」
「陽動を仕掛けてそうしてだな」
「奇襲を仕掛けて来ますね」
 中国の読み通りだというのだ。
「そうしてくるかと」
「では作戦通り行こう」
 東郷は前を動くその元軍を見ながら話す。
「ここはな」
「わかりました、それでは」
「奇襲を破るにはコツがある」
 東郷は前方の元軍の動きを見ながら述べた。
「敵に奇襲に気付いていると思わせないことだ」
「奇襲は相手が気付いていないからこそです」
「効果があるからな」
「だからこそですね」
「中国さんに言った通りだ、あれで行く」
「わかりました」
 秋山は東郷のその言葉に頷いた、そしてだった。
 前にそのまま進む、その彼等に。
 ランス率いる元軍の主力部隊は枢軸軍の後方に来ていた、これまで枢軸軍の動きに全く気付いた気配は見られない。
 ランスはその状況を見てモンゴルにモニターから言った。
「順調だな」
「うん、ここまで来たらね」
「後は隠れる必要がないな」
「一気に敵の後方を攻めよう」
 まさにその奇襲を仕掛けるというのだ。
「そうしよう」
「それではだ」
「突撃するよ」
 コアイが応える、こうして。
 モンゴル軍は枢軸軍後方に雪崩込んだ、そのまま鉄鋼弾で一気に粉砕するつもりだった。だがその鉄鋼弾を放とうとした矢先に。
 急に動きが止まった、これにはランスも驚いた。
「!?何だ一体」
「網!?まさか」
「電磁ネット!?」
 モンゴルとコアイもだ、この事態に目を丸くさせる。
「それで動けなくなったの!?」
「そんなの使って来たの!?」
「おい、これはまずいぞ」
 ランスも動けなくなった自軍を見て言う。
「動けない軍なんてな」
「どうしようもないよ」
 特に機動力を活かせない騎馬艦はだ。
「それにこのままだと」
「おい、早くネットを破れ!」
 ランスはこの苦境を脱する指示を出した。
「電磁カッターだ、それを持って外に出ろ!」
「それしかないね、ここは」
「くっ、今ここで敵が来たらな」
 どうなるか、ランスは自分も電磁カッターを受け取りながら言った。
「終わりだぞ」
「こうした時に来るんだよね」
 モンゴルも言う。
「敵もわかってるだろうし」
「あの、ハーン」
 コアイがここで言って来た。
「前から敵が来ているよ」
「くそっ、予想通りだな」
「電磁ネットを切る前にやられるよ」
 ネットはかなり複雑な構造でしかも何重にもなっていた、これを破るのはすぐには無理だった。
「どうしよう」
「こっちの世界での戦いは知らなかったな」
 今になって苦い顔を見せるランスだった。
「俺としたことがとんだ失敗だな」
「とにかく敵が来てるし」
「このままじゃ全滅するだけだからな」
 ランスはこのこともわかっていた、そして言うことは。
「おい、ここは仕方ない」
「どうするの?」
「降伏だ、やられるよりましだろ」
 これがランスの今の判断だ。
「枢軸側に降伏を打診しろ、すぐにな」
「それしかないね」
 モンゴルもランスのその言葉に頷く、こうしてだった。
 動きを止められ奇襲に失敗した元軍は枢軸軍に降伏を打診した、それを受けてだった。
 東郷は穏やかな顔でこう言ったのである。
「これで終わりだ」
「降伏を受諾されるのですね」
「ああ、そうする」
 隣にいる秋山に答える。
「いつも通りな」
「わかりました、それでは」
「戦わずに済むに越したことはない」
 東郷らしい言葉をここでも出す。
「そういうことでな」
「では」
 こうして秋山は元軍の降伏は受諾された、かくして元での戦いは僅か二月で終わった。その元に対して。
 東郷は降伏受諾と講和の場でこうランス達に言った、首相の伊藤と外相の宇垣、そして陸相の山下も同席している。内相の五藤は外交に関係がないのでいないが。
「そちらさえよければ枢軸に参加してくれないか」
「おい、いいのかよ」
 ランスは東郷の申し出に驚いた顔で返した。
「領土の割譲はなしだよな」
「そうだ」
「それに賠償金もなしでな」
「そのうえでだ」
 枢軸に参加して欲しいというのだ。
「太平洋経済圏に入ってもらいたい」
「また随分寛大な条件だな」
「枢軸に入るということは戦ってもらうということだが」
「それは常識だろ」
 ランスはこう東郷に返した。
「負かした相手を戦場の楯にするのはな」
「そこまではしないがな」
 東郷は楯にすることも否定した。
「戦ってもらうにしてもな」
「本当にそれでいいのかよ」
「その通りだ」
 あくまでこう言う。
「元も太平洋経済圏の一員になってもらいたい」
「ううん、こっちも一国だけじゃ限界があるしね」
 モンゴルは東郷の言葉に考える顔で返した。
「悪い条件じゃないね」
「はい、領土の割譲も賠償金もありませんし」
 このことはシィルも言う、今も馬の姿だ。
「連合国との戦争の参加で済むのなら」
「いい条件だね」
「敗戦国とは思えないまでの」
 そこまでの好条件だというのだ。
「ここは受けましょう」
「うん、コアイもそう思う」
 コアイもそれで賛成する。
「滅ぼされずに済むし」
「まあそれでいいか」
 ランスも腕を組んだままで頷いた。
「それじゃあな」
「この条件でいいですな」
「ああ、わかった」
 伊藤の言葉にも応える、こうしてだった。
 元も枢軸側に加わることになった、無論そこにいる者達も。
 ランスは元の枢軸への参加を決めたうえでその歓迎レセプションの場で東郷達にこう言ったのである。
「俺は元々こっちの世界の人間じゃないがな」
「ああ、そうらしいな」
「たまたま別の世界へのゲートを見つけてな」
 そこから来たというのだ。
「ここではまあ遊びに来たっていうかな」
「そうした感じだな」
「そうなんだよ」
 東郷に酒を飲みながら話す。
「まあ異次元とかじゃなくてな」
「パラレルワールドだな」
「そういう世界だよ。とはいってもハニワはいたな」
 ハニー達も見て言う。
「似た様なところは多いけれどな」
「ただ。どういう訳か」
 馬のシィルが言って来た。
「私は馬になりました」
「その姿から変わらないな」
「さっき元の世界に戻ったら」
 元の姿になっていたというのだ。
「ですがこちらに来たら」
「馬になるんだな」
「そうなんです」
 こうランスに話す。
「不思議なことに」
「わからない理屈だな」
「そうですよね、言葉は喋れますけれど」
「馬の姿だと何も出来ないな」
 ランスはそうした方面のことを言った。
「全く忌々しいことだ」
「それでもハーンはオルドはそのままだよね」
「ああ、さらに大きくしていくつもりだ」
 モンゴルの問いにスケベそうな笑みで応える。
「今以上にな」
「そうするんだね」
「オルド、ハーレムだな」
 ランスの世界ではこう呼ばれる。
「男の夢だ、どんどん大きくしていくぞ」
「コアイもその中にいていいよね」
 コアイはこうランスに問うた。
「そうしてもね」
「勿論だ、この世界でも可愛い娘は皆俺のものだ」
「何か旦那みたいなこと言う人だね」
 南雲はそんなランスの言葉を聞いて笑った。
「似ているところがあるけれどね」
「俺もそう思う」
 東郷もランスを見つつ応える。
「ハーンと似ているところがあるな」
「しかし俺は手段を選ばないからな」 
 可愛い娘を手に入れる為には、というのだ。
「そこはこの旦那とは違うか」
「俺はクリーンでいく主義だ」
 東郷は確かにかなりの女好きだがそこはそうしているのだ。
「しかしハーン、ここはだ」
「この世界ではだな」
「自重してもらいたい」
 つまり手段を選んでくれというのだ。
「鬼畜王とか言われることはしないでくれ」
「わかった、まあ今でオルドには百人いるからな」 
 全てランスの女である。
「それで満足するか」
「そういうことでな。さて、これからだが」
 東郷はランス達との話を一段落させてから応えた。
「満州に戻りソビエトと戦うか」
「遂に第八世代の艦艇達が完成しました」
 秋山が言う。
「製造の予算も確保していましたので」
「主力艦隊全てにだな」
「配備出来ます」
「よし、第八世代の大型空母に戦艦に」
 それにだった。
「巡洋艦、水雷駆逐艦にだな」
「潜水艦にバリア戦艦もあります、全ての艦艇に防寒、防塵設備も備えてあります」
「駆逐艦にはソナーもだな」
「あります、航空潜水艦もあります」
 まさに全てが備わっていた。
「最早ソビエトの冬も恐るに足りません」
「時は来た」 
 ソビエトへの反撃の時がだというのだ。
「ではシベリアに攻め込もう」
「それでは」
 秋山は東郷の言葉に応えた、だが。
 ここでだ、ハルが一同のところに来てこう報告して来た。
「皆さん、一大事です」
「ソビエトがまた攻め込んで来たのですか?」
「いえ、ソープ帝国です」
 この国のことだった。日本に話すのだ。
「あの国から救援の要請が来ています」
「是非助けて欲しいと」
「そういえばあの国は今通信が途絶していますね」
「何とかこの方が日本のソープ大使館まで来られまして」
「おう日本、久し振りだねい」
 トルコが来た、その顔は仮面で見えない。
「他の面々も元気そうだねい」
「お元気そうですね」
 かつて彼と剣を交えたオーストリアが応える。
「交流が途絶えていたのでどうなっていたのかと思っていましたが」
「俺は元気さ、けれどねい」
「宇宙怪獣がですね」
「今あちこちにいて困ってるんでい」
 仮面の奥の目を顰めさせて言う。
「で、中央アジアを制圧したっていうからねい」
「我々に助けて欲しいと」
「そうしてくれるかい?若し何とかしてくれたら枢軸に入らせてもらうぜ」
 そして彼等と共に戦うというのだ。
「そうするからどうでい?」
「帝はこの申し出を受けたいと仰っています」
 ハルが話す、実質的に太平洋諸国即ち枢軸諸国の盟主となっている彼女がそう考えているというのである。
「その様に」
「では決まりですね」
「そうだな」
 ハルのその話を聞いて日本と東郷が顔を見合わせる。
「我々としましては今度は」
「ソープ帝国救援だな」
「帝は困っている人を見捨てることはされません」
 ハルは強い声で言い切る。
「では宜しくお願いします」
「それでは」
「祖国殿、宜しくお願いします」
 ハルは東郷に対して言う。
「長官のお目付けも」
「おや、俺には言葉はなしか」
「貴方程の破廉恥な方にかける言葉はありません」
 ハルはむっとした顔で言い返した。
「この前宮廷に来られた時何をしましたか」
「何?普通にメイドの娘達に声をかけただけだが」
「宮廷の、しかも帝にお仕えする我等を誘惑するなぞ」
「そうしてはいけない決まりがあったのかい?」
「ありません、しかしです」
 それでもだというのだ。
「貴方のその破廉恥さは」
「おやおや、俺は破廉恥だったのか」
「女官長の仰る通りだ」
 山下はハルに同意して東郷に言って来た。
「貴様はあまりにも節操がなさ過ぎる」
「今後その様なことをされたら」
 ハルは強い声で言う。
「容赦しませんよ」
「厳しいなあ、ハルさんは」
「厳しくあって当然です」
 ハルはそれもまたよしとする。
「女官長たる者は」
「全くです、女はどうあるべきか」
 山下は完全にハルと同じ意見だった、そのうえで共同して彼女と共同してそのうえで東郷に対して言うのである。
「やはり慎ましくです」
「そう、そして毅然として」
「破廉恥な男なぞ許してはなりません」
「その通りです」
 こう二人で話す、その二人の言葉を聞いてだった。
 ランファはそっとコアイに囁いた。
「あの二人は特別だからね」
「特別厳しいのね」
「そう、山下さんなんてね」
 特に山下を見て言うのである。
「完全に風紀委員だから」
「あの人確かに厳しいね」
「いつもああだから」
「カルシウム足りないの?」
「日本陸軍って白い御飯ばかりだからね」
 ほぼ主食で三食済ませているのだ。
「お味噌汁とお漬物だけよ」
「まだそんな食事の人いるんだ」
「そう、元の食事はもっといいでしょ」
「普通にお肉と乳製品だよ」
 この二つがモンゴルの主食である、遊牧民の伝統の食事だ。
「そんな白い御飯ばかりってのはね」
「ないわよね」
「というか栄養バランスどうなってるの?」
「栄養バランスもいいらしいけれどね」
 陸軍側が言うにはだ。
「けれどどう考えても粗食にも程があるから」
「カルシウムも足りないの」
「牛乳は飲んでいる」
 その山下からの言葉だ、何と地獄耳だった。
「栄養は充分だ」
「本人はそう言うけれどね」
「どう考えてもカルシウム足りないよ」
 コアイが見てもである。
「あのハルさんって人もだけれどね」
「私も質素にしています」
 ここでハルもまた言って来た。
「女官もまた贅沢であってはなりません」
「日本ってこんな人多いの?」
「この二人だけよ」
 今度はキャロルが言って来た。
「悪い人達じゃないけれどね」
「難しい人達ね」
「残念ながらそうなのよね」
「全く以て破廉恥な」
 ここでまた言ったハルだった。
「東郷長官、貴方にはもう少し節度を」
「やれやれだな」
「やれやれではありません」
「どうもこの人と利古里ちゃんは苦手だな」
「この人強いねい」
 トルコははじめて見る東郷にある意味感心していた。
「何言われても動じないねい」
「だからこそ頼りになります」
 日本がトルコに話す。
「ご自身を失われることがないので」
「そうだねい、じゃあ道案内させてもらうぜ」
 トルコはその役目を申し出た。
「こっちの上司さんも困っているからねい」
「そういえばソープ帝国の今の国家元首は誰だ?」
 ドイツがこのことを問う。
「オスマン帝国から王朝が交代したが」
「その話はおいおいだねい。ちょっとややこしいんでい
「複雑か」
「そうなんでねい、じゃあ来ねい」
 トルコは早速彼等を案内しはじめた、主力艦隊は元からそこに隣接するソープ帝国領に入った、するとだった。
 宇宙怪獣達の群れがいた、それを見てだった。
 総督が難しい顔でこう述べた。
「まずいね、凶暴な怪獣ばかりだよ」
「確かに大型のものばかりでごわすな」
「数も種類も多いばい」
 オーストラリアとニュージーランドが総督の言葉に応える。
「それを考えるとでごわす」
「ここでも激しい戦いになるばいな」
「うん、なるよ」
 総督はまた言う。
「まずいかな」
「損害は覚悟のうえだ」
 東郷は総督のその言葉にこう返した。
「そうそういつも戦わずにとはいかない」
「元の時の様にはだね」
「そうだ、なら戦おう」
「それで今回はどうするの?」
 総督は東郷に今回の戦術を尋ねた。
「正攻法かな」
「それでいく」
 オーソドックスな艦載機、ビーム攻撃からはじめるそれをだというのだ。
「敵もこっちに気付いたからな」
「全軍で正面からこちらに来ています」
 日本が東郷に話す。
「その数は百個艦隊規模です」
「星域の通信が途絶える筈だな」
 東郷のその数を聞いて言う。
「それだけ多いとな」
「そうですね、それでは」
「ああ、全軍正面に攻撃を集中させる」
 まさにそこから来る敵達にだというのだ。
「そうする」
「それでは」
「何かわかっている感じだねい」
 トルコは東郷達のやり取りを聞いて彼の乗艦から言った。
「頼りになるねい」
「トルコさんも頼りにしたいな」
 東郷はそのトルコに笑みで返す。
「これからはな」
「俺もかい?」
「ああ、第八世代の艦艇を用意する」
 その新型艦達をだというのだ。
「それで戦ってくれ」
「合点でい、じゃあこの戦いの後でな」
「頼む」
 こう話してだった、まずは大型空母から艦載機達が次々と発艦し。
 そのうえで宇宙怪獣達を襲う、そこからだった。
 ビームも放つ、しかし宇宙怪獣達も多く強い。
 反撃の攻撃を浴びせる、両軍は正面からぶつかり合った。
 その中にはトルコもいる、彼はその激しい応酬の中で言った。
「これだけの宇宙怪獣にはまずいと思ったけれどねい」
「それが、ですね」
「こうしてですね」
「ああ、戦えてるぜ」
 枢軸軍がそれが出来ているというのだ。
「凄いことだぜ」
「はい、確かに」
「これでは」
「まあ俺でどうにか出来ないってのは恥ずかしいな」
 こう自分の将兵達に話していく。
「昔の俺だったら宇宙怪獣なんか一捻りだったんだけれどな」
「流石に百個艦隊規模もいましては」
「一国だけではどうしようもないですよ」
「そうなるかい?」
「はい、十個位ならばともかく」
「百にもなりますと」
 多過ぎるというのだ。
「しかも出て来たものがどれも大型で凶悪なものばかりです」
「惑星達を守れているだけでも凄いです」
 攻められないだけ、というのだ。
「それは祖国さんがいてくれるからですから」
「祖国さんは充分に果たしてくれています」
「だったらいいけれどねい」
「では今は、ですね」
「このまま攻め合い」
「怯んだら負けだな」
 そうした戦いだというのだ。
「じゃあわかってるな」
「はい、最後まで戦いましょう」
「そのうえで」
「競り勝つぜ」
 そうするというのだ。
「野郎共、行くぜ」
「それでは」
「このまま」
 トルコ達もその応酬を続ける、そしてだった。
 数で押そうとする怪獣達をその艦艇の質と的確な戦術で防いだ枢軸軍が勝利を収めたのだった。それが終わってから。
 枢軸軍はソープ帝国の帝都に降り立った、すると。
 白い肌と青い瞳、そして銀髪の楚々とした美女が現れた、だが。
 グレシアがその彼女に怪訝な顔で問うたのだった。
「この国の国家元首は」
「男性だと」
「詳しいことは知らないけれどその筈よ」
 こう言うのだった。
「違ったのかしら」
「私はメル=ト=ランディ」
 美女はこう名乗った、ソープ帝国の露出の少ない黒い服を着ている。
「そして」
「そして?」
「ゼン=ト=ランディでもある」
 外見が瞬く間に変わった、声も。
 褐色の肌に切り揃えられた髭のターバンの男になった、その姿で言ったのである。
「私はだ」
「!?これは」
「そうした種族らしいな」
 レーティアが眉を顰めさせたグレシアに話した。
「二つの性を持ち姿形が変わる」
「そうした種族もいるのね」
「聞いたことがある、実際にソープ帝国のある中央アジアではだ」
 そのランディの様な種族がいるというのだ。
「見た通りな」
「そうなのね」
「そうだ、私も存在は知っていたが」
 それでもだというのだ。
「この目で見たのははじめてだ」
「銀河は本当に広いわね」
「全くだ、それでだが」
「助けて頂き有り難うございます」
 ランディは女の姿に変わって言って来た。
「それでなのですが」
「ああ、話はついてるぜ」
 トルコがランディに話す。
「助けてくれた見返りにな」
「枢軸諸国への参加が」
「決まったぜ」
 問題なく、というのだ。
「だから後は大丈夫でい」
「それは何よりです。ですが」
「艦隊のことですね」
 日本が応える。
「そのことはご心配なく」
「かなりの損害を受けたと思いますが」
「今から日本に戻りそこで修理しますので」
 その大修理工場でだというのだ。
「ですから」
「大丈夫ですか」
「はい」
 心配無用だというのだ。
「ですから」
「ではここは」
「日本に来て頂けますか」
 日本はランディ、そしてトルコにこう申し出た。
「そこであらためてお話したいですね」
「わかりました、それでは」
「行かせてもらうぜ」
 ランディもトルコも応える、そしてだった。
 枢軸軍は日本に戻った、そこで損害を受けた艦隊を修理して。
 そのうえでランディ達と話した、ランディ達は正式に枢軸に加わることになった。
 枢軸側はまた新たな仲間を加えた、このことはよかった。
 しかし問題はソビエトだ、彼等はというと。
「今は首相が満州におられるからな」
 宇垣が一同に話す。
「だからだ」
「今のところは大丈夫ですね」
「一月か二月はな」
 ソビエト軍の侵攻を食い止められるというのだ。
「前線外交を展開しておられる」
「それは有り難いです」
 秋山はこう宇垣に述べた。
「では我々が満州に戻るまでは」
「ソビエト軍の侵攻はない」
 まだ、だというのだ。
「暫くはな。しかしだ」
「二月が限度ですね」
「我等が満州に戻るまでだ」
 それ位しか敵の侵攻を止められないというのだ。
「だからだ」
「わかりました、それでは」
「軍が回復し次第な」
「はい」
 そうなればすぐにだった。
「満州に向かいます」
「そこで第八世代の艦艇に配備しなおす」
 東郷も言う。
「そしてだ」
「シベリアですね」
「あそこからはじまる」
 こう言うのだ。
「それからだ」
「目標はモスクワですね」
「まずはな」
 敵の首都、そこだというのだ。
「そこまで行こう」
「遠いたいな」
 インドはモスクワと聞いてこう言った。
「シベリアからは」
「確かに遠い」
 東郷もこのことは否定しない。
「ソビエトは広いからな」
「そうたいな」
「空間要塞ですね」
 小澤がこの言葉を出した。
「ソビエトは」
「空間要塞?」
「その広さがそのまま防衛になっているということです」
 こうインドに話す。
「広ければ距離を進み補給線が伸びますね」
「どうしてもそうなるたいな」
 インドにしても広く幾つもの星系を持っている、だから実感出来ることだった。
「そして広い場所を掌握しなければいけないから戦力も分散されるたい」
「そうなります、そしてそこで反撃を受けるので」
 それでだというのだ。
「空間、つまり距離もそのまま要塞となります」
「実はこれまでその距離を意識して戦ってきた」
 東郷も話す。
「太平洋でもインド方面でも中南米でもな」
「そういえば日本軍はいつも拠点や中継地を設けて攻めていたたいな」
 中帝国戦では満州、太平洋とインド洋ではマレー、ガメリカ戦ではハワイだ。アステカに攻め込む際もテキサスを足掛りにしている。
 今のソビエト戦も元との戦いでも満洲を拠点にしている、それでだった。
「つまりそれは、たいな」
「進撃は迅速にいかねばならないが」
 それと共にだというのだ。
「補給を忘れてはどうしようもないからな」
「だからたいな」
「いつも拠点、中継地を置いて戦ってきた」
 今もそうだというのだ。
「ソビエト戦でもそうする」
「中継地はチェリノブがいいわよ」 
 リディアが進言して来た。
「シベリア、ラーゲリっていってね」
「それからだな」
「そう、チェリノブまで進んで」
 そしてだというのだ。
「そこからウラル、ひいてはね」
「モスクワだな」
「ウラルからまだあるけれど」
 ソビエトはまだ広い、それでもだ。
「チェリノブがあるから」
「よし、ではだ」
 東郷はリディアの進言を入れてから全軍に命じた。
「満州に入りそこからまずはチェリノブに入ろう」
「了解です」
「それでは」
 全軍で応えそうして満州に向かうのだった、だが敵もさるものである。枢軸軍の思う様にはいかなかった。


TURN97   完


                             2013・3・17



元との決戦もソープ帝国の救援も無事に終わったようだな。
美姫 「急ぎ満州へって所ね」
だな。これで対ソビエト戦に集中できるか。
美姫 「とは言え、海賊の動きもあるしね」
確かにな。すんなりと行くかは難しい所だな。
美姫 「どんな展開になるかしらね」
次回も待っています。
美姫 「待ってますね〜」



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