『ヘタリア大帝国』




                    TURN90  密林という名の迷路

 ムッチリーニはイタリア兄弟と共に東郷の前に来た、そのうえで彼女が考えたアステカ帝国との講和条件を話した。  
 東郷の横には日本兄妹もいる、そのうえでだった。
 ムッチリーニが話し終えるとまずは日本が言った。
「それは考えつきませんでした」
「私もです」
 日本妹もだった。
「そうしたやり方もありますか」
「外交として」
「うん、アステカの主要産業がそうしたものでね」
 そしてだというのだ。
「あの人達が大好きっていうのなら」
「それを講和条件に提示すれば」
「どの国にもそうしたゲームとか漫画があるわよね」
「実は」 
 ここで日本妹が少し恥ずかしそうに述べた。
「我が国はそうしたゲームは」
「ないの?」
「かなり多いです」
 日本の隠された真実だ、だから彼女も恥ずかしい顔で言うのだ。
「漫画も同人も」
「あっ、じゃあ好都合ね」
「その、かなりメジャーな娯楽の一つにもなっていまして」
 ゲーム自体がそうだがそうしたゲームは特にだというのだ。
「それをアステカにも輸出すれば」
「講和の条件としていいじゃない」
「それはそうですが」
「少し恥ずかしいものがありますね」
 日本も微妙な顔になっている。
「この講和条件は」
「しかしこれでアステカと講和出来るならいいな」
 東郷は自分もそうした方面に、リアルであるが長けているので余裕の態度で述べた。
「悪い話じゃない」
「長官さんは賛成なんだ」
「いいと思う」
 イタリアにも明るい顔で返す。
「アマゾンでの最後の決戦は避けられないがな」
「そこで奴等を倒してかよ」
「それからだな、講和の話は」
 ゲリラ戦を避けることが出来るというのだ。
「だからな」
「アマゾンでの戦いの前は無理かよ」
 ロマーノは戦うことになると聞いてそのことに対して嫌なものを見せつつ話す。
「ったくよ、戦いなんて怖いだろ」
「それは仕方ないかと」
 日本妹がそのロマーノを宥める。
「全面戦争になっていますし」
「それならかよ」
「はい、アマゾンで勝って」
 そしてだというのだ。
「講和のテーブルにつきましょう」
「じゃあまずはアマゾンを占領してね」
 ムッチリーニも話す。
「それからアステカと講和しましょう」
「わかった、それならな」
 東郷も頷く、だがだった。
 彼はここでムッチリーニに対してこうも言ったのだった。
「だが俺だけでは話がな」
「外相さんね」
「宇垣さんが交渉するからな」
 やはり外相である彼の話になるというのだ。
「だからな」
「それでなのね」
「外相もお呼びするか」
「それでは」
 日本が早速動いた、携帯でメールを入れる。
 するとすぐに宇垣が来た、彼は場に来るとすぐにこう言った。
「いかがわしいゲームや漫画が講和の材料になるとは」
「いかがわしいって?」
「そうした猥褻なゲームはよくありません」
 こうムッチリーニにも言う。
「男女のことはやはり健全であるべきで」
「じゃあそういうゲームをするのはかよ」
「漫画を読むこともです」
 生真面目な顔でトマーノにも返す宇垣だった。
「よくありません」
「けれどそれで戦争が終わるならいいだろ」
「それはそうですが」
「日本の外相さんって頭硬くないか?」
 ロマーノはいぶかしむ顔になって東郷に顔を向けて問うた。
「前から思ってたけれどな」
「ああ、ロマーノさんも気付いたか」
「まあな」
「悪い人じゃないんだがな」
 東郷は余裕のある顔のまま宇垣を見ながら話していく。
「ちょっとばかり頭が硬いんだよ」
「だからこうしたこともかよ」
「中々気付いてくれなかったりする」
「普通は気付かんぞ」
 宇垣はむっとした厳しい顔で東郷に返した。
「何故そんなことが考えられる」
「じゃあ私が考えついたのって」
「独創性といいますか」
 日本が真面目な顔でムッチリーニに返した。
「イタリンの外交センスでしょうか」
「それなのね」
「イタリンは。私が見たところですが」
 この前置きからの言葉だ。
「昔から外交が上手なので」
「それは確かにですな」
 宇垣もこのことは認めて頷く。
「イタリンは外交上手です」
「そのそれぞれの国で外交の上手下手がある様なので」
 日本はさらに話す。
「ムッチリーニさんも思いつかれたのではないかと」
「そうなるのね」
「この考えは凄いです」
 日本は猥褻とは言わずこう評した。
「では早速」
「それじゃあね」
「ううむ、わかりました」
 宇垣は釈然としない顔だがそれでもよしとした。
「それでは講和の条件に入れます」
「よく考えると貿易にもなります」
 日本妹は国益から考えて述べた。
「そうしたゲームや漫画の輸出ですから」
「輸入にもなる」
 東郷はこのことも述べる。
「中々面白い話だ」
「これで一つの産業の発展につながりますか」
「産業だったのですか、ああしたものも」
 宇垣は東郷と話す日本妹に対してやはりいぶかしむ顔になってそのうえで問うた、今回もそうした顔になっている。
 それでだ、また言ったのである。
「いや、わしにはどうも」
「やっぱりこの人頭硬いな」
 ロマーノは今も言う宇垣を見て述べた。
「もう少し柔らかくなったら違うだろうな」
「親切で優しい人だしね」
 イタリアも言う。
「本当にもう少しだけね」
「柔軟になれたらな」
「うん、もっとよくなるよね」
「外相としてもいいから残念だな」
「本当にもう少しだからね」
「わしは褒められているのか」
「褒められてますよ」 
 東郷が宇垣にまた言う。
「しっかりと」
「そうなのか」
「俺も外相を頼りにしてます」
 その通りだ、口には出さないが東郷は宇垣を尊敬もしているのだ。彼にとって宇垣は真面目でかつ誠実な先輩である。
「ですからそれでお願いします」
「わかった。それではな」
「アマゾン戦の後の交渉を」
「戦いが終わればそれに越したことはない」
「はい、本当に」
「だからだ。わしは喜んで向かおう」
 こう言ってそしてだった。
 宇垣はムッチリーニの提案した交渉条件を入れた、アステカとの講和の話が大きく変わった。
 そのうえでだった、枢軸軍はブラジルからアマゾンに攻め入ることになった。その際イスパーニャが東郷に話した。
「あの星域は気をつけてくれ」
「熱帯ですね」
「湿度が並ではない」
「しかも宇宙にも密林があり」
「雨も多い」
 フェムが降らすそれがだというのだ。
「迷路の様な密林に加えてな」
「雨もとなると」
「かなり厄介な戦場になる」
 それがアマゾンだというのだ。
「しかも宇宙怪獣の数もこれまでよりかなり多い」
「そして特に」
「私も名前を聞いただけだが」
「明石大佐の送ってくれたファイルにも名前がありますが」
 東郷はそのファイルを実際に手にしたままイスパーニャに応える。
「それでもです」
「よくわかっていないな」
「幻獣ハニーのことは」
「それの存在もある、これまで以上に厄介な戦場だ」
「尚且つ地の利は向こうにあります」
「容易にはいかない、慎重に行こう」
「それでは」
 イスパーニャの言葉も受けてだった、東郷は軍をアマゾンに進めた。アマゾンに入るとそこは実際にだった。
 まさに迷路だった、しかも雨がかなり多い。
「湿気が凄いですね」
「艦内の除湿機能及びクーラーを効かせることだ」
 東郷は秋山に返した。
「さもないと戦闘どころじゃない」
「そうですね、コンディションの維持も必要ですから」
「だからだ、ここはだ」
「コンディションを維持させたうえで」
「攻めていこう。後は」
 ここで東郷はモニターにあるものを映し出した、それは何かというと。
 このアマゾンの宙図だった、立体に映し出されたそれを見てまた言った。
「この宙図に従ってだ」
「攻め入っていきましょう」
「大佐が作ってくれた地図だ、有り難く使わせてもらいましょう」
「敵のいると思われる場所ですが」
 秋山はすぐに宙図の中に幾つかポイントを示した、そこは何処も要所であったり惑星の近辺であった。
「こうした場所です」
「そこに敵がいる、だが」
「はい、 分散配置になっています」
 要所が多いならそれだけだった。
「我々はこれに対してです」
「戦力を集中させていくか」
「分散には集中です」
 秋山は対し方も話した。
「航路は狭い場所も多いですが何とか集中させて行ける間隔です」
「それならだな」
「各個撃破、そしてです」
 これだけではなかった、秋山のここでの作戦は、
「敵の各戦隊の通信、連絡を絶っていきましょう」
「と、なるとだ」
「別働隊を編成するべきです」
 秋山は参謀総長としてその頭脳を回転させていた。
 そのうえでこう東郷に話したのだ。
「機動力があり隠密性にも秀でている」
「潜水艦だな」
「彼等に戦闘の都度後方に回ってもらい」
「そして敵の通信、連絡を遮断してもらいつつだな」
「攻めていきましょう、これでどうでしょうか」
「わかった」
 東郷は秋山の提案をよしとした、そしてだった。
 枢軸軍は全軍で最初の攻撃目標に向かった、その進撃の際。
 ダグラスは己の乗艦であるエンタープライズ、大規模な改装により驚異的な性能上昇を果たしてその艦橋においてこう漏らした。
「参ったな、渋滞だな」
「きつきつの進軍だね」
「ああ、お互いにぶつからないようにしないとな」
 アメリカ妹にもサングラスの奥の目を顰めさせて言った。
「しかも速度を維持してだからな」
「きついね。雨も多いし」
「ミノフスキー粒子も相当な量だ」
 視界だけでなくレーダーにも悪影響が出ていた。
「手探りに近いな、これは」
「しかも道は迷路だしね」
「よくもこんな戦いにくい場所があったものだ」 
 ある意味関心しているダグラスだった。
「クーラーと除湿機がなければやっていられないな」
「全くだね、ここは酷い戦場だよ」
 まさに最悪の、だというのだ。
「宇宙にまで木があってね」
「その分空気は美味いがな」
 ダグラスは何とかジョークも出した。
「俺が戦ってきた中で最悪の戦場だな」
「それでも何とか行進速度は順調だよ」
 維持出来ているというのだ。
「何とかね」
「奇跡だな」
「奇跡っていうかね」 
「努力の結果か」
「それと訓練と実戦のね」
 この三つが合わさってだというのだ。
「それでだよ」
「まあ俺達もかなり戦ってきてるしな」8
 敵味方に分かれていた時期も含めての言葉だ。
「それでだな」
「そういうことだね。じゃあミスターもいいね」
「ああ、最初の戦域に来たらな」
「派手にやるよ」
「最初に花火を上げるか」
 ダグラスのサングラスの奥の青い目が光った、その光はまさに猛禽類が獲物を狙う時のものに他ならかった。
「そこでな」
「勝利の花火だね」
「それだよ」
 まさにだというのだ。
「それを上げてやるか」
「そういうことでね」
 全軍は最初の星域に向かう、そこはというと。
 宇宙怪獣の大軍がいた、それを見て総督が言った。
「ううん、見たところだけれど」
「どうしたでごわすか?」
「新種の怪獣も多いね」
 こうオーストラリアに話す。
「それもかなりね」
「そうでごわすか」
「やっぱりここは凄いよ」
 怪獣学者でもある総督から見ればである。
「色々と調べたいね、けれどね」
「今は、でごわすよ」
「うん、戦争に専念しないと」
 今度は提督の顔になって言う。
「全ては戦争の後だよ」
「そうでごわすよ。ただ中南米が確かに凄いでごわすな」
「宇宙怪獣だけじゃなくてね」
「ハニワ、それにイースター星には」
 そこもだった。
「モアイがあるでごわす」
「アステカの文明についても興味があるね」
 総督はまた学者の顔になっている、そのうえでの言葉だ。
「色々と調べたいよ」
「では今はでごわす」
「うん、戦おう」
 その戦域にいる敵軍に向かう、敵も迎撃に来る。そこでだった。
 東郷はまずは仕掛けなかった、それを見て台湾兄が東郷に問うた。
「攻撃しないのですか?」
「今はな」
 いつもの余裕のある態度で答える東郷だった。
「しない」
「というとやはり」
「敵が攻撃を仕掛ける瞬間だ」
 まさにその時にだというのだ。
「仕掛ける。艦載機の用意は出来ているな」
「大丈夫です」
 小澤がモニターから答える。
「何時でもいけます」
「よし、それじゃあ今はだ」
 攻撃を控えるというのだ。
「攻撃も効果的にしないとな」
「こちらは間も無く配置につけます」
 モニターにデーニッツが出て来た。
「そしてそのうえで、ですね」
「まずはそちらから頼む」
 仕掛けてくれというのだ。
「頼んだぞ」
「わかりました、それでは」
「敵の攻撃射程はもうわかっている」
 これまでの戦闘で把握済のことだ。
「後はそこに入った瞬間だ」
「まずは潜水艦の魚雷だ」
 それで攻める、しかもだ。
「後方から攻めてくれ」
「配置についたうえで」
「アマゾンでの戦闘は続く、ここでダメージを多く受けるとな」
「後の戦闘に支障が出ます」
 今度は秋山が言ってきた。
「ですから」
「そういうことだ、じゃあな」
「はい、それでは」
 こう話ししてそのうえでだった。
 枢軸軍は今は仕掛けなかった、敵は攻撃射程に入ろうとしていた。
「何か大人しいホーーー」
「敵が仕掛けて来ないホーーーー」
 ハニワ達が言う。
「一体どういうつもりだホ?」
「あのスケベ長官何を考えてるホ?」
「とにかくだホ」
 この戦域の指揮官である赤いハニワが言った。
「ここは前に出るホ」
「そしてそのうえで、ですね」
「宇宙怪獣達も使って」
「総攻撃だホ」
 赤ハニワは普通の人間達にも答える。
「そうするホ」
「わかりました、それでは」
「射程に入りましたら」
「攻撃をするホ」 
 こう言ってそのうえでだった。
 ハニワ達は前に進み射程に入ろうとした、そして攻撃射程に入りだった。
 赤ハニワは強い顔で目を怒らせて全軍にこう言った。
「攻撃開始だホーーーー!」
「ホーーーーー!」
「ホーーーーー!」
 他のハニワ達も声をあげる、そしてだった。
 枢軸軍に攻撃を浴びせようとする、だが。
「攻撃開始!」
「了解!」
「それでは!」
 エルミーの言葉に 部下達も応える、、そのうえで。
 潜水艦艦隊がアステカ軍に後方から魚雷を放つ、魚雷達は攻撃を仕掛ける瞬間の敵艦艇に次々と炸裂した。
 攻撃に集中していたアステカ軍は一転して動揺した、そして。
「な、何だホ!?」
「何があったホ!」
 必死に周囲を見回す、だが潜水艦達は見えずだった。
「見えない敵がまた出て来たホーーーー!」
「後ろから来たホーーーー!」
「落ち着くんだホ!」
 ここで言う赤ハニワだった。
「前からも敵が来ているホ!」
「いや、後ろだホ!」
「後ろから来る謎の敵だホ!」
「あいつ等だホ!」
 ハニワ達の中には彼等に向かおうという者達もいた、アステカ軍は混乱していた。。
 その混乱を見逃す東郷ではなかった、アステカ軍を見て言った。
「よし、ここでだ」
「総攻撃ですね」
「艦載機、ビームの一斉攻撃からだ」
 モニターにいる台湾兄に言う。
「いいな」
「では今から」
「その後で鉄鋼弾だ、大体はこれで終わるな」
「そうですね、この戦域での戦いは」
「敵の撤退は見過ごす」
 あえて逃がすというのだ。
「むしろここで徹底抗戦をさせるよりはな」
「今は損害を軽くして」
 そしてだとだ、台湾兄も察した。
「そのうえで、ですね」
「次の戦域に向かおう」
「わかりました、では」
 こうして鉄鋼弾攻撃も浴びせたところでだ。攻撃を受けて一旦割れた赤ハニワはくっついてからここで言った。
「撤退だホーーーー!」
「はい、後方に下がりましょう!」
「それでは!」
 将兵達も応える、アステカ軍は枢軸軍があえて空けておいた退路から必死に逃げた。
 東郷は戦域を制圧してからこう全軍に言った。
「アステカは迷路の様な宙形だ、だからだ」
「この戦域にですね」
「防衛の為に艦隊を置いておこう」
 こう秋山に話す。
「その艦隊だが」
「どの艦隊を置きますか?」
「二個艦隊程だが」
 東郷は今アステカに来ている艦隊の名簿を見た、そして言った。
「あっ、そうだったのか」
「そうだったとは」
「いや、カナダさん達も来ていたんだな」
 枢軸軍全体の実質的な司令官であるが彼等のことは把握していなかった。
「そうだったんだな」
「あっ、そうでしたか」
 しかも秋山もだった。今気付いた顔だ。
「カナダさんに妹さんの艦隊もですね」
「来ていたんだな。しかもアステカとの戦いに最初からな」
「はい、私も気付きませんでした」
「あれっ、カナダさん来てたの?」
 ガメリカの外交を預かるハンナもモニターから驚きの顔で言う。
「そうだったの」
「それは知らなかったたい」
 インドも知らないことだった、知らないことを知っているとブラフを言う彼ですら今はこう言うのだった。
「あの人もいたたいか」
「ああ、そうだった」
「カナダさんはどうしてもね」
 ハンナはいささか気まずそうな顔になっていた、そのうえで言う。
「気付かないから、いても」
「それは影が薄いということたいな」
「まあ。言うなら」
 さしものハンナも視線を左右に泳がせている。
「そうなるわね」
「とりあえずはです」
 秋山もカナダ兄妹の存在をようやく認識してから述べた。
「ここに残る艦隊、二個ですし」
「丁度いいな、カナダさん達に残ってもらうか」
「はい、それでは」
 こうして制圧した戦域の防衛艦隊も決まった。東郷は主力を率いて次の戦域に向かう、そして残ったカナダはというと。
 このうえなく悲しい顔でこうクマ二郎さんに漏らしたのだった。
「ねえクマ三郎さん、僕何時になったら皆に覚えて貰えるかな」
「誰?」
「君の飼い主のカナダだよ」
 いつものやり取りだった、カナダ妹も項垂れてホットケーキにシロップをかけて食べるだけだった。
 次の戦域でも同じだった、潜水艦を敵の後方に回してそのうえで敵の攻撃の瞬間に攻撃を仕掛けた、それで倒してだった。
 この戦域も掌握した、この戦域はというと。
「ここからは第三、第四の戦域まで一直線ですので」
「守りの艦隊を置く必要はないな」
「はい、敵のゲリラ攻撃の心配はありません」
 秋山も言う。
「ではすぐに」
「次の戦域に向かおう」
「わかりました」
 こうして青ハニワが率いる敵軍、赤ハニワの軍も加わった彼等も逃げるのを見届け。
 そのうえで次の戦域に向かう、そして第三の戦域で。
 蜃気楼の様に朧な巨大ハニワがいた。そのハニワを見てアルゼンチンが言った。
「あれや」
「あれが幻獣ハニーか」
「そや」
 こうレーティアに答える。
「俺もはじめて見たで」
「アステカの国家でもか?」
「そや、このアマゾンの奥はな」
 ここはだというのだ。
「ハニーさんとブラジル、ここの現地民しか入られへんのや」
「それはどうしてだ?」
「宙形が複雑でや」
 それが理由だというのだ。
「知ってる奴やないととてもな」
「入ることが出来ない、そしてだな」
「出ることも出来んで」
「それがこのアマゾンの奥か」
「さっきの戦域までは行ったことがあるんや」
「だがここにはか」
「来たことがない。それはな」
 アルゼンチンはキューバ達の艦隊をここで見た。
「あの連中もやで」
「普段はブラジルが中心やねんや」
 そのキューバが答える。
「帝都や、けどな」
「このアマゾンの奥は何だ?」
「最後の隠れ場所、そして秘儀を行う場所や」
 そうだというのだ。
「ここはそうなんや」
「まさに国の最深部か」
「ほんまに俺等でもな」
 ブラジル以外の国家でもだというのだ。
「ここまで入ったことはないんや」
「ううむ、そうか」
「ハニーさんとブラジルにな」
 そしてだというのだ。
「のぞみちゃんとここの現地のハニワさん達だけが出入りしとるな」
「のぞみ?」
「ああ、のぞみちゃんっておってな」
「名前を聞く限り日本人に思えるが」
「そや、日本から来た娘で遭難して中南米に流れ着いたんや」
 それがそののぞみという娘だというのだ。
「それでハニーさんが女神って崇拝してるんや」
「そうした娘もいるのか」
「その娘位やな」
「アステカには謎が多いな」
 レーティアはのぞみの話を聞いてあらためて呟いた。
「だが今はだ」
「明石大佐も何とか宙図を作ってくれたからな」
 実は第二戦域から先は流石に潜入出来ず現地のハニワ族に催眠術をかけて聞き出した宙形なので曖昧なことは否定出来ない。
 東郷はこのことを理解しながら話した。
「進んでいく」
「ほなハニー倒すんやな」
「そうする。この幻獣はどう攻めるべきか」
 アルゼンチンに応えながら言う。
「それが問題だが」
「ここは正攻法しかないだろう」
 レーティアは大怪獣に匹敵する巨大さを誇示する幻獣を見ながら東郷に言った。
「ここはな」
「そうだな。ではだ」
「多少の犠牲は仕方がない」
 東郷も今はそれを覚悟してる。
「行くか」
「それではな」
 全軍で射程を合わせる、そのうえで。
 機動部隊から艦載機を出しビームも放つ、ミサイルに鉄鋼弾も。
 だが幻獣は容易に倒れず反撃にビームを雨の様に放つ、それを受けて軍全体がかなりのダメージを受けた。
「戦艦ミズーリ中破!」
「空母長安被弾!」
「怯むことはない」
 東郷はこの状況でも声を荒げない、落ち着いたままだ。
「すぐに第二次攻撃に移る」
「このまめまですね」
「引き続き」
「そうだ、続ける」
 大和も被弾している、だがだった。
 東郷はそれに怯むことなく攻撃を命じる、そうしてだった。
 ハニーに攻撃を続ける、再び攻撃を受けてもだった。
 三度目の艦載機の攻撃で遂にだった。
 ハニーを倒す、第三の戦域も掌握した。
「さて、それではですね」
「ああ、いよいよ最後の戦域だ」
 東郷はモニターの日本に答えた。
「今から行くか」
「まさか幻獣がここまで強いとは」
「データもなかったしな」
「はい、戦闘力を想定出来ませんでした」
「それもダメージの大きさにつながったな」
 東郷は冷静にダメージが大きかった原因を分析した。
「その反省はしよう」
「そしてですね」
「今から最後の戦域に向かう」
 このことは順調に進めるというのだ。
「ではいいな」
「はい、それでは」
 日本は東郷の言葉に敬礼で応えてだった。
 そのうえで最後の戦域に向かう、そこにはこれまで以上の大軍がいた。
 中国はその大軍を見て言った。
「さて、最後の最後であるな」
「これまでで一番宇宙怪獣の数が多いわね」
 キャロルも敵軍を見て言う。
「それに撤退させて敵軍もね」
「いるあるな」
「さて、最後の最後で幻獣以上の難敵みたいだけれど」
「戦うしかないあるな」
「そういうことね」
 キャロルは中国の言葉に頷く、アメリカもだった。
 彼は敵の中でとりわけ目立つ白いハニワ艦隊達を見てイザベラに言った。
「じゃあ今からな」
「攻めますね」
「そうしよう」
 こう言ったのである。
「攻めないとはじまらないからな」
「長官、ここでの作戦は」
「宙形的に潜水艦艦隊を回りこませることは出来ない」
 敵軍の上下左右はアステロイドやジャングルだ、これではとてもだった。
「正面から攻めるしかない」
「だからですね」
「全軍突撃だ」
 東郷はイザベラに話した。
「そうしよう」
「わかりました、それでは」
 イザベラは敬礼で応えた、そしてだった。
 枢軸軍は全軍でアステカ軍の大軍に突撃する、その際東郷は言った。
「とにかく火力を正面に集中させる」
「その上で中央突破でしょうか」
「いや、格闘戦だ」 
 それを挑むというのだ。見れば。
 全軍を縦三列に布陣させている、それは。
「これが我が先祖の」
「そうだ、 ネルソンタッチだ」
 東郷はネルソンの問いに答えた。
「それを使わせてもらった」
「ではこのまま突撃を敢行し」
「敵を寸断し左右へ攻撃を行ってだ」
 そして倒していくというのだ。
「そうして戦う」
「まさかここでこの戦術を使われるとは」
「あまり面白くないことだけれどな」
 この戦術に負けているフランスはあまり浮かない顔である。
「まあこれで勝てるんならいいか」
「ああ、絶対に勝てる」
 東郷はフランスにもこう返す。
「じゃあやるか」
「はい、それでは」
「思うところはあるけれどな」
 ネルソンとフランスはそれぞれ言った、そしてだった。
 枢軸軍はカナダ兄妹以外の全軍でネルソンタッチを仕掛けた、艦載機やビームを正面に放ちながら。
 敵軍をずたずたに寸断し左右に攻撃を浴びせる。駆逐艦達も動き回り鉄鋼弾を次々と浴びせる。
 こうなると艦載機や鉄鋼弾の多い枢軸軍のものだった。ビームも左右に放ち寸断した敵軍を各個に倒していく。
 陸軍、陸戦隊も惑星に降下してだった。
 アマゾンでの戦いは終わった、だが。
 ブラジルは投降したがハニーはだった。
「何処かに逃げたか」
「はい」
 秋山が東郷に答える。
「ハニワ族の抗戦派と共に」
「ゲリラ戦になるか、このままだと」
「では後は」
「ああ、宇垣さん達の出番だ」 
 東郷はこう返した。
「それじゃあな」
「では任せてもらおう」
 宇垣がここで出て来た。
「ゲリラ戦なぞさせんぞ」
「ではお願いします」
「全く、訳のわからん奴等だ」
 宇垣はハニー達のことを考えながら言った。
「楽しみたいから戦争をするとはな」
「まあまあ。それじゃあだけれど」 
 イタリアが顔を顰めさせている宇垣に声をかける。
「今からハニーさんに来てもらおうよ」
「何処に潜伏したかわかりませんが」
「ああ、来てもらえばいいからね」
 イタリアはまたこう言った。
「気にすることないよ」
「といいますと」
「来てくれたらそういう手のゲームや漫画を百作ずつプレゼント」
 イタリアは笑顔で右手の人差し指を立てて言った。
「これを出せばいいんだよ」
「それで彼等が来るのですか」
「絶対にね」
 そうなるというのだ。
「だからね」
「ううむ、ではここは」
「これを出そうね」
「それでは」
 こうしてイタリアはハニー達何処かに隠れたかわからない抗戦派にこの条件を公に発表したうえで見せた、するとだった。
 そのハニー達がブラジルに来た、これには宇垣も驚いて言う。
「まさかと思いましたが」
「ほら、来たよね」
「はい」
 驚きを隠せない顔でイタリアに答える。
「交渉の場に来ました」
「じゃあ後は実際の交渉でね」
「そのうえで、ですな」
「講話にまでもっていこうね」
「こういうの得意なの」
 ムッチリーニは右目を可愛らしくウィンクさせて言った。
「外交はね」
「そういえば貴国は」
 ここで宇垣はイタリンのこのことに気付いた。
「外交においてはかなりでしたな」
「さもないと大変なことになるからね」
 だからだとだ、イタリアが答える。
「それでだよ」
「外交があってこそですからな」
 それと内政である。
「戦争に勝ったとしても」
「逆に負けてもね」
「外交次第でその結果が大きく変わります」
「俺確かに弱いけれどね」
 このことは自分でも言うイタリアだった。
「それでも何とかやっていってるから」
「外交においてですか」
「こっちは得意だからね」
 それで今もだというのだ。
「頑張るよ」
「はい、それでは」
 こうしてだった。枢軸はハニー達との講和のテーブルに着くことになった。その相手を見事その座につけたうえで。


TURN90   完


                           2013・2・16



どうにかこうにか一区切りって所か。
美姫 「まあ、まだ肝心の講和自体はこれからだけれどね」
まあ、条件を見ればあっさりといきそうか気もするけれどな。
美姫 「確かにね。でも、早めに決着かと思ったけれど……」
災害に次ぐ災害で思った以上に時間が掛かったな。
美姫 「被害も小さくなかったわね」
それでも、どうにかここまで来たって所か。
美姫 「後はどうなるのか、よね」
気になる次回は……。
美姫 「この後すぐ!」



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