『ヘタリア大帝国』




               TURN84  山下の焦り

 枢軸軍はキューバ、メキシコでの戦いに勝利しこの二つの星域と国家を手に入れた。このことはアマゾンのハニーにも伝わった。
 だがハニーは全く動じずにこう言うのだった。
「心配ないホーーーーー!」
「負けたのにですか?」
「所詮は緒戦だホーーーー!」
 心配する顔ののぞみに駄洒落で返す。
「だから心配ないホーーーーー!」
「そうですか」
「そうだホーーーーーー!」
 のぞみにこう言う。
「だからいいんだホーーーーー!」
「あの、それでは」
「次はペルーだホーーーー」
「そこで決戦ですか?」
「いや、そこでも決戦ではないホーーーー」
 そうだというのだ。
「最悪アマゾンまで引き込むんだホーーーー」
「このアマゾンまで」
「戦いは長く楽しい方がいいんだホーーーー」
 お祭り好きなハニーらしい考えではある、彼は自分の帝国が占領されるとは考えていないのだ。
「それでは行くんだホーーーー」
「ううん、じゃあペルー星域での戦いは」
「のぞみもハニーも出ないんだホーーーーー」
「こんなのでいいんでしょうか」
「何の問題もないんだホーーーーー」
 ハニーにとってはだ、そうしたことを言ってだった。
 ハニーは二つの星域を失っても何とも思わずお祭りを楽しむのだった。その頃メキシコに集結した枢軸軍の間で議論が行われていた。
 ガメリカ大統領であるダグラスが最初に言った。
「ガメリカとしてはどうでもいいな」
「アステカ帝国の領土はガメリカには組み入れないぞ」
 アメリカも言う。
「アステカはアステカだ」
「そうだ、太平洋経済圏には入って欲しいがな」 
 それでもだというのだ。
「アステカには勝っても領土はどうでもいい」
「向こうが講和すると言えばそれでいいと思うでごわす」
 オーストラリアもこう言う。
「正直なところ」
「問題はアステカが何時降伏するかですね」
 それを言うのはクーだった。
「果たして」
「アマゾンまで占領したら降伏する的な?」
 香港は長期戦を予想した。
「それこそ最後の最後まで」
「それは勘弁して欲しいわね」
 セーシェルはそう聞いて困った顔になる。
「ちょっとね」
「そう思いますね、出来ればすぐに終わって」
 そしてだと言うマカオだった。
「連合軍に対したいのですが」
「訳のわからねえ相手だしな」
 フランスから見てもハニワ達はそうなる。
「余計にな」
「何かよ、あんな連中ってな」
 プロイセンも首傾げながら話す。
「はじめてだから余計に戸惑うな」
「全くだ。人間にしてもな」
 ドイツもやや難しい顔になっている。
「奇妙な連中だ」
「そもそも何食ってんだ、あいつ等」
 ロマーノはふとこのことについて考えた。
「そもそもな」
「ああ、それやけどな」
 スペインがこの謎について話す。
「何も食う必要がないんや」
「何だよそれ」
「何やって言われてもそうした身体の構造なんや」
「じゃあ飲み食いの必要ねえってのかよ」
「エロゲ鑑賞とかで栄養を補給するんや」
 今語られる衝撃の事実だった。
「エロ要素があいつ等の栄養なんや」
「どういう身体の構造ですか?」
 日本もその話を聞いて真剣にいぶかしむ。
「食事の必要がなくてそれとは」
「全身陶器やしな」
「だから割れるのですね」
「割れてすぐにくっついてな」
 そうした意味で不死身だった。
「しぶといことはしぶといで」
「実に興味深い生命体ね」 
 ドロシーは話を聞いていてぽつりと述べた。
「一度よく調べれてみたいな」
「そうだな」
 レーティアも生物学者の顔を見せる。
「命を奪うつもりはないが」
「色々と研究してみたいわ」
「全身陶器でエロスで栄養を摂る生命体か」
「実に興味深いわ」
「この銀河の先住生命体の一つだ」
 ここで柴神は己の言葉に注意しながら話した。
「そうした意味でポルコ族達と同じだ」
「あたし達ともだね」
 ビルメも言ってくる。
「そうなるね」
「そうだ」
「人間族はどっかから来てそれで一気に広まったみたいだね」
「・・・・・・うむ」 
 複雑な顔で頷く柴神だった。
「その様だな」
「そうだね、アフリカにはそれで色々な部族もいてね」 
 ビルメですら今の柴神の微妙な変化に気付かない、そのまま話していく。
「ガメリカ大陸のネイティブにしても中南米にしてもね」
「ああ、それな」 
 メキシコが応える。
「皆どっかから移住してハニワ族に暖かく迎えられたんや」
「それで国家が出来てや」
 キューバも一同に話す、その口にはいつも通り葉巻きがある。
「僕等が生まれたんや」
「そうなったんや」
「ハニワ族に迎えられたんだね」
 総督はそのことに注目した。
「それも暖かく」
「そや」
「寛容な種族なんだね、やはり」
「好戦的でもないしいな」
「あくまで興味はそうした分野なんだね」
「とにかくエロゲが大好きなんや」
 それが彼等だというのだ。
「一番な」
「本当に悪い種族じゃないんだね」
「そうなんや」
「むしろ人類に好意的だね」
「ちょっと変わってるかも知れへんけどな」
「ちょっと!?」
 キャロルはメキシコのその言葉に眉を顰めさせた、そのうえで窓の外のピラミッドや船やハニワの看板、空を飛ぶロケットや踊り叫ぶ様々なハニワ達を見たのだった。
「ちょっとじゃないでしょ」
「まあ慣れてないとそう思うかも知れへんな」
「こんな変てこな世界他にないわよ」
「けど皆共存してるで」
「それも仲良くよね」
「そや」
 その通りだというのだ。
「幸せな国やで」
「まあ皆楽しく暮らしてることは間違いないわね」
「その通りや」
「何か異様ではあるけれど」
 それでもだと言うキャロルだった。
「和気藹々としていることは間違いないかしら」
「ハニワだからって偏見は無用なのね」
 ムッチリーニはいつも通り明るく考えている。
「そういうことね」
「そうそう、イタリンの統領さんはよくわかってるやん」
「いやらしいのが好きっていうと」
 ここから考えるムッツリーニだった。
「私の水着グラビアとかは」
「そういうのも好きやで」
「やっぱりそうなのね」
「ハニワ族はグラビアも大好きやからな」
「それじゃあ私の水着写真集とかも」
「下着も好きやからな」
 ハニワ達はそちらも好きだというのだ、とにかくそうしたことがとにかく好きなのが彼等だというのである。
「どんどんなってや」
「じゃあグラビアも頑張らないとね」
「そうね。それじゃあ」
 グレシアは自分の横にいるレーティアをちらりと見て言った。
「貴女もね」
「私もか」
「水着も頑張らないとね」
「水着は好きじゃないんだが」
 自分のスタイルにあまり自信がないからである。
「それでもか」
「何言ってるのよ、レーティアのグラビアは人気があるのよ」
「それがわからないが」
「水着もね」
 レーティアの自信のないそれもだというのだ。
「大人気だから」
「私は小柄で胸もないが」
「だからなのよ」
「だからだというのか?」
「そうよ。小柄で貧乳」
 レーティアのコンプレックスである。
「それがいいって人も多いのよ」
「世の中わからないな」
「ああ、それわかるよ」
 イタリアが出て来た。
「俺も総統さんいいと思うよ」
「イタリア君はそうした好みか」
「俺胸が大きいのも小さいのも好きだよ」
 どちらもだというのだ。
「背もね」
「それは誰でもではないのか?」
「違うよ、それぞれいいところがあるんだよ」
 胸の大小もだとそうだというのだ。
「だから総統さんもね」
「そうなのか」
「そう、安心していいよ」
 こう言うのだった。
「俺総統さんの写真集全部持ってるよ」
「そんなに私の胸がいいのか」
「全然いいよ、胸が小さいこともまた素晴らしいんだよ」
「それがわからないが」
「自分のいいところって自分だとわからないものだからね」
「そうか」
「そうだよ、安心してね」
「そうよ、イタちゃん達の言う通りよ」
 グレシアも笑顔で言う。
「貴女はスタイルもいいのよ」
「そうか」
「じゃあいいわね、グラビアも頑張るわよ」
「何かな」 
 グレシアにとってはいい話だがレーティアにとっては困った話だった、こうして彼女はまた水着写真集を出すことにもなった。
 ハ二ワ族についてはメキシコにキューバが話す。
「皇帝さんもエロゲ欲しくてお祭りしたいだけや」
「枢軸に悪意ないさかいな」
「まあ戦争が何処まで続くかわからんけど」
「仲良くはできるさかいな」
「わかった。俺もハニワ族は面白い人達だと思う」
 東郷もあっさりと言う。
「仲良くやっていけるな」
「問題は戦いが何処まで続くかだけですね」
 秋山も窓の外の楽しげなハニワ達と彼等と共に遊ぶ人間達を見ながら言う。
「出来るだけ早期に終わらせましょう」
「ただ、講和はできんからな」
 スペインは何気に歓迎されていないことを言う。
「あの皇帝さん戦争はお祭りやと思っててな」
「ではこのままですか」
「アマゾンまでいくのも有り得るさかいな」
「そうですか」
 秋山はスペインの話を深刻な顔で聞いた。
「連合のこともありますし早急に終わらせたいですが」
「その連合国ですが」
 小澤が言う。
「どうもそのダメージが彼等の予想を遥かに超えていて」
「それでか」
 東郷は話を聞いて言葉を出した。
「暫くは来ないか」
「時間的余裕はあります」
「欧州もかなり派手にやり合ったからな」
「ああ、欧州は壮絶だよ」    
 ハンガリー兄が欧州の現状を話す。
「エイリスも相当な損害を出してね」
「無事なのは星域だけか」
「うん、かなり疲弊してるよ」
 そしてだった。
「ドクツとその占領地域、それにイタリンとソビエトの大部分もね」
「戦場になったな」
「総力戦でかなり消耗したし」
「それでだな」
「うん、戦力の再編成に手間取っていてもね」
「不思議じゃないか」
「兵器も随分壊れたし」
 それにだった。
「将兵もね。戦死者こそ少なくても」
 それでもだというのだ。
「負傷者が多いから」
「主要四国全てか」 
 エイリスにソビエト、ドクツ、それにイタリンだ。
「そうした状況か」
「あっ、イタリンは殆ど無傷だから」
 ハンガリー兄は東郷にこのことも話した。
「戦場になったけれどね」
「ダメージを受けたのはドクツ軍だけか」
「そうなんだ、イタちゃん達はね」
「だって怖いじゃない!」
 イタリアは泣きそうな顔でハンガリー兄に叫ぶ。
「エイリス凄く強いんだよ!凄く怖かったから!」
「それでも戦うことが基本だが」
 ドイツはそんなイタリアの言葉を呆れながら聞いて呟く。
「全く、困った奴だ」
「イタリアらしくていいと思いますが」
 オーストリアはドイツの横で普通に言う。
「いいと思いませんか」
「何故御前といい相棒といいイタリア達に徹底的に優しい」
「嫌いでないですから」
 優しい理由としては十分jだった。
「ですから」
「それでか」
「はい、だからです」
「俺も確かにイタリア達は嫌いではないが」
「貴方の場合は嫌いではないからこそですね」
「放っておけない」
 ドイツの厳しさも好感故のことだった、この辺りにドイツとオーストリア、プロイセンの違いがあると言える。
「だからだがな」
「そういうことで」
「とにかくイタリンのダメージは少ない」
 このことは確かだった。
「しかしだな」
「三国共あまり数には入れてないみたいだよ」
 ハンガリー兄が言う三国は言うまでもなかった。
「そうした状況だよ」
「三国共ダメージは大きいか、なら願ったりだ」 
 ダグラスは鋭い目でその状況をよしとした。
「連中が手間取ってる間にアステカとの戦いを終わらせる。長期戦になってもな」
「この戦いは半年だな」
 ベトナムが言う。
「その間連合は動けるか」
「半年なら無理です」
 何処からか声がしてきた。
「彼等はもう暫く動けません」
「?この声は一体」
「明石大佐です」
 日本が姿のない声の主を探し周囲を見回したベトナムに言った。
「大佐はお姿を出すことは滅多にないので」
「諜報部員だからか」
「そうです」
 だからだというのだ。
「ですが我が軍の軍人なので」
「安心していいか」
「そうです」
「ならいいがな」
 ベトナムもこれで納得した、そうした話をしてだった。
 とりあえず連合のことは安心していいということになった、枢軸軍は今度はペルー、南米の入り口に兵を進めることになった。
 この話になったところで急に山下が言って来た。
「いいだろうか」
「はい、何でしょうか」
「今度のペルー攻略戦だが」 
 山下は秋山に応えながら強い目になっていた。
「我が陸軍のみでやらせてもらいたい」
「あの、それは」
 秋山は山下の主張に戸惑いながら言う。
「無理です」
「無理だというのか」
「はい、とても」
 こう言って山下を止めるのだった。
「普段通り海軍がまず宇宙の敵軍を退けますので」
「そしてそれからだというのだな」
「そうです」
 秋山は何とか山下を止めようと丁寧に話す。
「それまでは海軍にお任せしたい」
「陸軍は陸軍で艦艇を回してもらいたい」
「えっ、元帥今何と」
 秋山は山下の今の言葉に一瞬我が耳を疑った、だがそれが間違いでないと己の中で確認してから言った。
「あの、陸軍が艦艇を持つのですか」
「戦艦に空母を持ちたい」
「それは無理ですが」
 秋山は唖然としながらも山下に話す。
「幾ら何でも」
「出来る、既に旧式化した艦艇があるな」
「第四世代の艦艇等ですか」
「それを回してもらいたい」
「そして日本陸軍だけでペルーの攻略を」
「そうしたいのだ」
「それは」
 秋山はここまで聞いて何とか落ち着きを保ちながら山下に述べた。
「無理です」
「何故だ」
「陸軍は艦艇とは専門外ですよね」
「既に訓練を積んでいる」
「そういう問題ではありません」
 秋山も引かない。
「実戦経験がないですから」
「それは今から積む」
「ですからそれはあまりにも」
「何が言いたい」
「無謀です」
 山下にはっきりと告げる。
「どう考えましても」
「ではどうしてもか」
「はい」 
 まさにそうだというのだ。
「諦めて下さい」
「あの、私もそれは」
 日本も山下に言う。
「無理だと思います」
「祖国殿、しかしです」
「長官、落ち着いて下さい」
 日本もかなり慎重に山下に言う。
「陸軍は降下戦及び陸上戦担当ですね」
「そして治安維持だ」
「それならです」
「艦隊は指揮出来ないというのか」
「それは海軍です」
 日本は海軍の軍服を着ている、山下はそれも見て微妙に嫌なものを感じているがそれは表には出さない。
「ですからここは」
「止めろというのか」
「少なくとも今すぐに艦艇は回せません」
「そもそも旧式の艦艇もです」
 また秋山が話す。
「全て使用していまして」
「それでか」
「とても陸軍まで回せません」
 そうだというのだ。
「ですから諦めて下さい」
「くっ、わかった」
 ないものは仕方がない、それでだった。
 山下も遂に諦めた、そのうえで。
 ペルー攻略は普段通り海軍が星域周辺の敵艦隊等を退けてから陸軍が惑星攻略にあたることになった、だが。
 この話を目の当たりにした一同はそこに深刻なものを見た、特に。
 韓国、陸軍と縁の深い彼は密かに彼の軍事顧問である平良にこう問うた。
「山下さんどう思うんだぜ」
「あの発言には私も驚きました」
 平良は感情を表情に出さないがそれでも言った。
「有り得ないです」
「そうなんだぜ。陸軍が艦艇!?」
「言うなら陸戦部隊が艦艇を持つのです」
「無茶苦茶なんだぜ」
「そうです、あれはかなり」 
 韓国軍は陸軍も海軍も統一している、韓国がそうさせたのだ。
 それで陸軍と縁の深い彼も言うのだ。
「余計なトラブルの元と思っていたんだぜ」
「今の様な事態がですか」
「何かやばそうと思っていたんだぜ」
 それでしかなかったというのだ。
「俺も日本軍を見ていて」
「我が国の伝統ですので」
 陸軍と海軍に分かれているのはというのだ。
「以前より衝突はありましたが」
「それでもあれはないんだぜ」
「まさか陸軍が艦艇を持とうとは」
「何であんなこと言ったんだぜ?」
「おそらくですが」
 こう前置きしてから答える平良だった。
「焦っておられるのかと」
「焦り?」
「はい、銀河での戦いはまず艦隊が戦いますね」
「それから陸戦部隊が惑星を占領するんだぜ」
「全てまずは艦隊戦からです」
 つまり主は艦隊、従は陸戦隊だというのだ。
「ですから日本軍にしましても」
「海軍主体なんだぜ」
「それは韓国殿もご存知ですね」
「よくわかったんだぜ」
 日本にいてだというのだ。
「やばい感じはしていたんだぜ」
「それがです」
「今回噴き出したんだぜ」
「もっと言えば前からでしたが」
 問題になってはいた、実際に東郷と山下の対立、山下が一方的に向けているものだがそれは日本中枢において問題になっていた。
 それは韓国も察してはいたのだ。
「遂になんだぜ」
「どうしたものでしょうか」
 さしもの平良も難しい声である。
「ここは」
「平良さんでも解決案を見出せないんだぜ?」
「難しいです」 
 あくまで嘘は言わない平良だった。
「まして私は海軍です」
「その対立している一方だからなんだぜ?」
「その通りです」
「ううん、じゃあどうするんだぜ」
「それこそ日本か帝さんしかいないんだぜ」
 この状況を収められるはというのだ。
「本当にそうなんだぜ」
「祖国殿か陛下かですか」
「そう思うけれどどうなんだぜ?」
「そうですね。少し祖国殿にお話してみます」
 平良も韓国のその提案によいものを見出していた。
 そのうえでこう言ったのだった。
「そして帝にも」
「このままだと枢軸全体にとってよくないんだぜ」
「やはり日本軍は枢軸の軸だからですね」
「そうなんだぜ」
 その通りだからだというのだ。
「陸戦隊で最強は日本陸軍なんだぜ」
「最初から鍛え上げれた精鋭揃いでしたが」
 訓練と軍規軍律は当初からかなりのものだったが山下が長官になってからそれがさらに厳しくなったのである。
「今は平賀長官の兵器もありますし」
「陸軍の兵器も第六世代になったんだぜ」
「そして第八世代にまでなります」
 これはレーティアの手腕による。
「質、装備共に見事なもので」
「陸戦部隊においても最強なんだぜ」
「そして海軍もです」
 韓国の軍事顧問として『我が』という言葉は一歩引いて加えなかった。
「やはり枢軸軍の主力の一つですね」
「最精鋭部隊なんだぜ」
「その両軍が対立したままというのは」
「難しいんだぜ」
 韓国も難しい顔で述べる。
「というか危ないんだぜ」
「すぐに祖国殿と帝にお話します」
 こうした話をしてだった、平良は実際に日本と帝に話した。日本はその話を受けてから妹と共に御所において帝、そして首相である伊藤と話した。
 伊藤は話を聞いてこう言った。
「そうですな、ここは」
「ここは?」
「ここはといいますと」
「はい、今はです」
 伊藤は冷静な顔で語る。
「陸軍さんに活躍してもらいましょう」
「では艦艇を?」
「いえ、流石にそれは出来ません」
 伊藤にしてもそれは無理な話だった、即座にきっぱりと断った。
「それはあくまで海軍さんの仕事です」
「そうなりますね」
「陸軍さんは無茶を言っていますな」
 ひいては山下がだというjのだ。
「これは首相である私も認めません」
「ではどうして花を持たせますか」
「はい、惑星攻略」
 今度のペルーでの戦いにおいてだというのだ。
「それは日本陸軍が主力、先陣を務めてもらうということで」
「他の国ともお話をしてですね」
「そうしましょう」
 先陣で功績を挙げてもらいというのだ。
「陸軍さんの対抗意識は海軍さんの功績に対する焦りもありますので」
「むしろです」
 ここで日本妹が言う。
「それが由々しき問題ですね」
「この戦いで海軍さんの功績は」
「東郷長官の活躍もあり、ですね」
「はい、かなりのものになっています」
 東郷と主な提督達は軍神とまで讃えられている程だ。
「ですが陸軍さんは」
「功績があっても」
「惑星攻略では限られています」
「それで、ですね」
「はい」
 まさにそれで、だった。
「軍神と讃えられているのは」
「その山下さんだけですね」
「臣民の中には、特に学者は」
 所謂知識人だ。その影響力はかなり大きい。
「海軍さんの功績だけを見て」
「陸軍を軽視する傾向があると」
「はい」
 そのことが問題だというのだ。
「中には海軍さん主体で陸運さんを吸収する形で」
「統合軍をですか」
「そうした意見も出ています」
「それはかなり」
 日本は伊藤のその話に難しい顔になる。
「まずいですね」
「はい、統合軍もです」
「我が国にはそぐわないですな」
「海軍と陸軍は国家の両輪です」
 まさにそれになるというのだ。
「ですからそれは」
「はい、我が国には両軍が必要です」
 その海軍と陸軍がだというのだ。
「ですからそれは」
「統合軍は我が国にはそぐわないです」
 日本も伊藤もこう考えている、そしてだった。
 帝もここで言う。
「私も軍の統合は考えていません」
「そうなのですね」
「はい」
 微笑んでいない、いつもとは違うその顔で日本妹に応える。
「やはり両軍はそれぞれ国家の両輪です」
「では海軍への吸収も」
「無論考えていません」
 そうだというのだ。
「とてもです」
「帝がそう仰るのなら」
 日本妹もここで言う。
「決定ですね」
「そうなりますね」
 やはり日本帝国の国家元首は帝でありその権限は強い、こうした国家や閣僚達もいて議会もある、だが帝の権限はかなり強い。
 その帝がはっきりと言った。
「統合軍は置かず」
「そしてですね」
「陸軍に艦艇は不要です」
「現状のままですね」
「そのうえで両軍の融和を計ります」
「海軍と陸軍の」
「親睦と相互理解を深める為に交流を進めるべきですね」
 穏健だが確実な方法、帝はその選択肢も出した。
「むしろこれまでは」
「なかったですね」
「それも全く」
 日本兄妹はそれぞれ帝に答えた。見れば日本は海軍の軍服、妹は陸軍のそれを着ている。そのうえでの言葉だった。
「私達は兄妹ですが」
「両軍は」
「他国の軍との交流は盛んです」
 ここでまた言う伊藤だった。
「それもかなり」
「しかし中はといいますと」
「今気付いたことは」
「そう、ありませんでした」
 伊藤は日本兄妹にこの事実を話した。
「お互いに向かい合った時も」
「敬礼はし合いますが」
「それでも」
「はい、疎遠です」
 もっと言えばそれどころではない。
「むしろ時代によっては敵同士の様でした」
「今も関係はかなり悪化していますが」
「やはりお互いこそはです」
「最も交流がなかったですね」
「私も今気付きました」
 伊藤にしてもそうだった。
「海軍さんと陸軍さんの交流は疎遠でした」
「ではそれをですね」
「これからは」
「はい、早速親睦会を開きましょう」
 海軍と陸軍のだというのだ。
「ペルー戦の後にでも」
「祝勝も兼ねてというのはどうでしょうか」 
 ここでまた帝が言う。
「それですとあの堅物の山下長官もパーティーに参加しますね」
「実は山下長官や陸軍の方々は」
 日本妹がパーティーにおける彼等の話をした。
「そうしたことについては贅沢と仰い」
「そしてですね」
「出られません」
 山下をはじめとして陸軍は贅沢を徹底的に嫌う、それでなのだ。
「山海の珍味が揃っている宴なぞと仰って」
「利古里ちゃんらしいですね」
 帝はついつい山下の下の名前を出した。
「そうしたところは」
「美徳ではありますが」
「今時食事は贅沢ではありませんよ」
 相当なご馳走でもだというのだ。
「この銀河の時代に」
「それこそ食料は幾らでも作ることができます」
 首相である伊藤も話す。
「それこそ」
「その通りですね」
「確かに粗末にすることは言語道断ですが」
「宴に出て来る位の食事なら」
「どうということはありません」
 伊藤は日本妹に現実を話す。
「むしろ陸軍さんの普段の食事が」
「あれは凄いですね」
 帝もやや引く程度だ。
「御飯におかずにですね」
「味噌汁位です」
「栄養は考慮されていますね」
「それは充分にです」 
 流石に考慮されている、幾ら質素でもだ。
「ですがそれでもです」
「今でもそこまで質素ですか」
「酒も日本酒ですが」
「他のお酒はですね」
「出ません」
 出ない理由は言うまでもない。
「軍服も裏のほつれを縫い、徹底的に着倒します」
「靴も他の物品も」
「そうです、使い古します」
「手入れをしていることはしていますね」
「それも徹底してますが」
「質素に過ぎるのですね」
「あまりにもです」
 伊藤から見ても陸軍のそれはかなり極端だった。
「ですから親睦の宴も」
「参加しないと」
「中々難しいですね」
 帝はここまで聞いて言った、そしてだった。
 親睦会について少し考えを変えた、そのうえで伊藤と日本兄妹に対してこう言ったのだった。
「では普通の宴ではなく」
「どうされますか?」
「こうしてはどうでしょうか」
 帝は三人に言った。そうしてだった。
 まずペルー攻略戦だった、今度はメキシコに行った軍もキューバに行った軍も一緒だった。
 だがアルビルダだけは留守番だ、彼女は怒りながら今出撃するアイスランドに問うた。
「何故私はいつも攻略戦には参加させてもらえないのだ!」
「治安が回復してからの合流だね」
「そうだ、それは何故だ!」
「暴れるから」
 これが理由だった。
「占領地で」
「だからなのか」
「王女さんは暴れることが趣味だから」
 それも大暴れである。
「あんまり酷くて治安が乱れる」
「しかし私は強いぞ」
「強くても攻略後の治安回復の妨げになる」
 かなり重要である、これは。
「その星域の国家が加わってくれたら治安は即座に回復するけれど」
「じゃあ今度はペルーを仲間にしればいいぞ」
 アルビルダはアイスランドの話から解決案を出した。
「それで万事解決だ」
「それはそうだけれど」
「何かあるのか?」
「国家がそこで仲間に加わってくれるとは限らないから」
 それでだった。
「王女さんは攻略戦は駄目」
「ううむ、退屈だぞ」
「退屈なら格闘技でもしていて」
 アイスランドは無表情でアルビルダに言う。
「そこで好きなだけ大暴れして」
「格闘技か」
「そう」
 格闘技なら何でもいいというのだ。
「そうして」
「ううむ、何か腑に落ちないぞ」
「納得してくれなくても決まってるから」
 実際に暴れ回って驚いた日本陸軍の憲兵達が止めに入って大騒ぎになったことも何度もある、日本軍の憲兵達は勤勉だ。
「そういうことで」
「わかった、じゃあ日本軍の憲兵達と遊ぶぞ」
「迷惑をかけないでね」
 その憲兵達にだというのだ。
「あの人達も仕事があるから」
「早く治安を回復するのだ!」
「ちょっと待ってて」 
 こうした話をしてアイスランドも出撃した、この戦いにはキューバやメキシコも加わり前にも増して充実した戦力での戦いとなった。
 戦闘はここでも艦載機を上手に使った枢軸軍の勝利に終わった、彼等は南米への入り口を確保したのだった。
 ペルーも仲間に加わった、だがだった。
 帝の提案した親睦会、それは茶会だった。
 しかしそれは日本の茶道のそれだ、ダグラスはその茶会で座布団に座りながら苦しい顔をして脂汗を流していた。
 そのうえで国務長官のハンナに問うた。
「おい、いいか?」
「正座のことね」
「これは何の拷問だ?」
「日本の正規の座り方よ」
「日本人はこんな座り方でいて平気なのか!?」
「帝はいつもこうして座ってるけれど」
 答えるハンナの顔も苦しげである。
「それでもね」
「これはたまらないな」
「私もよ」
「国務長官もか」
「こんなのははじめてよ」
 ハンナは何とか苦痛に耐えながら言う。
「日本人、恐るべきだな」
「あっ、足は崩していいですよ」
 主催者の帝からの言葉である。
「慣れない方」
「そうしていいんですね」
「茶道は楽しむものです」
 だからだというのだ。
「苦しむものではないので」
「有り難い、それじゃあな」
「私もね」
 ハンナも言う、そしてだった。
 見れば日本人以外のほぼ全員が足を崩しだした、日本に長くいた韓国兄妹や台湾兄妹は流石に違っていたが。
 動物達も同じだ、皆やっとほっとした顔になったのだった。
「いや、これは地獄だったな」
「まさかこのままずっとと思ってたわ」
 ダグラスとハンナはまだ残る足の痺れを堪えながら言う。
「茶道には興味があったが」
「正座のことは知らなかったわ」
「これが日本の文化なんだな」
「侘び寂びだったわね」
「はい、そうです」
 日本が二人に答える。
「これもまたです」
「そして他にもだよな」
「華道というのもあったわね」
「それはまた後で」
 催されるものは他にもあった。
「そして日舞も」
「日本文化、本当に奥が深いな」
「色々なものがあるとは聞いてたけれど」
「今日はまた変わった催しだな」
「こうした祝勝もあるのね」
「今回は特別でして」
 日本はちらりと東郷と山下を見た、二人というか山下の方が東郷を睨んでいる。
 その二人を見てそして言うのだった。
「こうしたものにしました」
「酒は出えへんのやな」
 酒好きのキューバらしい言葉だ。
「それがちとな」
「日本酒が後で出ますので」
「ああ、そやねんな」
「今宵はじっくりとお楽しみ下さい」
「ほなな、楽しませてもらうで」
「はい、それでは」
 こうした話をしてだった、そのうえで。
 宴がはじまった、海軍と陸軍のその対立を緩和し解消していく為の宴がはじまろうとしていた、帝や日本達が目指すそれが。


TURN84   完


                           2013・1・19



進軍に関して特に問題はなさそうだな。
美姫 「連合軍の方もすぐには動けないみたいだし、今の所は目の前の事に集中できそうね」
でも、他の所で問題発生というか、とうとう大きくなってきたといった所かな。
美姫 「確かにね。海軍と陸軍の確執が出てきたわね」
幸いと言うべきか、先にも言った様に連合軍の動きがないだけましというか、今で良かったというべきか。
美姫 「まだ解決してないから何ともいえないけれどね」
さて、どうなるのか。
美姫 「次回も待ってますね」
ではでは。



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