『ヘタリア大帝国』
TURN82 ケツアル=ハニー
スペインとイスパーニャ夫妻は一時間遅れで部屋に入って来た、まずはスペインが至って能天気な調子で一同に言ってきた。
「ああ、待ってくれてたんやな」
「よく寝られたか?」
フランスは慣れた感じでそのスペイン達に尋ねた、彼はシャルロットと一緒に今までバレエのDVDを鑑賞していた。
「どうだったんだ、それは」
「ああ、ぐっすり寝られたで」
「ははは、起きて少し身体を動かしてしまったよ」
「二人でね」
イスパーニャ夫妻は笑顔で言う。
「いや、それで少し遅れてしまったかな」
「四時までというのは少し短いわね」
「ああ、兄ちゃん達来たんだ」
「早いじゃねえかこの野郎」
イタリアとロマーノはここで起きた、彼等も今までシェスタをしていたのだ。
二人は寝ぼけ眼をこすりながらこう言う。
「じゃあ今からだよね」
「政治の話だな」
「そうとも。さて、同盟の話だが」
イスパーニャはソファーに、右にスペイン、左にローザを置いてそのうえで深々と座ってからそのうえで言った。
「喜んで受けたい」
「何か随分あっさりと決まったな」
ドイツはいつもの難しい顔で呟いた。
「待った割にはな」
「伊勢志摩はこんなものですが」
オーストリアがそのドイツに言う。
「待ちますがそれでもです」
「決まることはあっさり決まるか」
「おそらく既に決めていたのでしょう」
「この話をこちらからした時にか」
「はい、その時に」
伊勢志摩としては決めていたというのだ。
「後は我々は待つだけだったのです」
「朝、そして今もか」
「同盟を結べそれが利益になることを考えれば一日位どうということはありません」
オーストリアはこの辺りは割り切っていた。
「一日が何年にもなりますから」
「それはそうだな」
「外交に焦りは禁物です」
実際に落ち着いて言うオーストリアだった。
「では今回の同盟締結を祝福しましょう」
「どうも外交では御前には劣るな」
ドイツもこのことを認める、自分で。
「俺も勉強しなくてはな」
「外交は経験です」
オーストリアはドイツにこうも言う。
「何度も何度も失敗をしてそれで身に着けていくものです」
「失敗をか」
「私も何度も失敗してきました」
「そうは見えないがな」
「それを見せないだけです」
その失敗をだというのだ。
「それだけのことです」
「そうか」
「はい、そうです」
「失敗を見せないことか」
「それもまた政治であり外交ですので」
「そういえばこの連中は」
ドイツはフランス、そしてイアリア兄弟をここで見た。
「失敗も多いがな」
「特にフランスはですね」
何気にフランスのことを言うオーストリアだった。
「何度も痛い失敗をしていますが」
「おい、俺にはそれかよ」
「安心して下さい、本音を出していますので」
「そんなもの出さなくていいからな」
「では気にしないで下さい」
「ったく、煮ても焼いても食えない奴だな」
フランスから見ればオーストリアはそうだった、そのオーストリアはさらに言う。
「何度も失敗してそれなりに身に着けていっています」
「それなりか」
「はい、それなりにです」
やはりフランスを見て言うオーストリアだった。
「少なくともどちらも私やエイリスと渡り合えるまでにはなっています」
「東のハプスブルク、それにか」
「西のエイリスです」
かつて欧州ではそう言われていた。
「全ては経験があってこそです」
「外交はセンスではないのか」
「センスは磨かれるものです」
経験、それによってだというのだ。
「そういうものなので」
「そうか、では俺もか」
「これから学ばれることです」
ドクツ第三帝国は敗れたがまだ先があるとも言うオーストリアだった、そうした話もこの場でしたのである。
そしてイスパーニャは明るい顔で言った。
「では私達も参戦させてもらおう」
「条件があるにしてもね」
ローザも微笑んで言う。
「私達はエイリスとは戦わない」
「伊勢志摩軍は絶対に」
「ああ、こっちもそれは言わないさ」
フランスが夫妻に笑顔で応じる。
「それ以外の相手には宜しく頼むな」
「後ですが」
今度はフランス妹が言ってきた。
「お願いがあるのですが」
「お願い?」
「それは何かしら」
「夫婦喧嘩はお止めになって頂ければ」
幸いだと、フランス妹は切実な顔で夫妻に言う。
「これから」
「何を言っているんだ、あれは私達の恋愛だ」
「喧嘩する程と言うじゃない」
「それで誰も殺してもいないし怪我もさせていない」
「問題があるのかしら」
「戦争中に内戦は幾ら何でも」
フランス妹は常識から話す。
「ですから」
「むう、そう言うのか」
「それでなのね」
「艦隊をそれぞれ率いられての内戦は」
それだけはというのだ。
「だから本当にお願いします」
「それじゃあこうしないか?」
ここでフランスはオーストリアも認めはしているその外交を見せた。
「艦隊じゃなくてさっきやったみたいなフェシングでな」
「夫婦喧嘩を行う」
「そうしろというのね」
「ああ、それでどうだ?」
これがフランスの提案だった。
「これなら艦隊戦みたいに大掛かりでもないし内戦にもならないからな」
「しかもいい運動にもなる」
「だからなのね」
「ああ、そっちの方がずっといいと思うんだがな」
「そうだな、ではこれからはだ」
「毎日フェシングで手合わせをするわ」
二人もフランスの提案に笑顔で頷いた。
「では私達は二人共だ」
「艦隊を率いて参戦させてもらうわ」
「勿論俺もや」
スペインは右手を頭の後ろにやって名乗り出た。
「エイリス軍以外と存分に戦わせてもらうで」
「お願いします。それでなのですが」
日本はスペインの言葉を受けてから早速言ってきた。
「アステカ帝国のことですが」
「これから戦争するとこやな」
「あの国のことを詳しく知りたいのですが」
「あそこなあ。変な国やからな」
スペインはアステカ帝国についてまずこう言った。
「何ちゅうかな」
「近代国家とはまた違う国ですね」
「欧州や太平洋と同じ様に思ったらあかんで」
「やはりそうですか」
「あそこにはハニワもおるし宇宙怪獣もおる」
「宙形もですね」
惑星で言う地形である。
「それもまた」
「ごっつけったいや」
「惑星はジャングルばかりですね」
「降下する際は気をつけるんや」
惑星も厄介だというのだ。
「しかもそこにはえげつない生き物がわんさとおるしな」
「巨大な蛇や高圧電流を出す鰻ですね」
「他にも鰐とかピラニアとかな」
「恐ろしい生物にはこと欠かないですね」
「魔境やで」
まさにそれだというのだ。
「あそこは生半可やないで」
「降下しても危険ですか」
「宇宙怪獣自体めっちゃ多いしうぽぽ菌とかイナゴとか台風とかもな」
災害も多いというのだ。
「後な、これ俺もはっきり確かめてへんけれどな」
「他に何が」
「エアザウナの家っちゅうか巣もあるな」
「あの大怪獣の」
「そや、それっぽいな」
スペインもこのことは真剣な顔で話す。
「やばいことやけどな」
「ううむ、そのことが事実だとすると」
日本も深刻な顔になって言う。
「まずいですね」
「そやろ」
「中南米は恐ろしい世界とは聞いていましたが」
「多分そっちの想定以上やで」
「人間もいるにしても」
「人間とハニワ、怪獣が混住してるんや」
それが中南米、アステカ帝国だというのだ。
「それでそこの皇帝やけどな」
「ハニワが皇帝とは何だ」
レーティアが少しいぶかしながら問うた。
「あれは」
「ああ、あれな」
「人間族が皇帝ではないのか」
「あそこはちゃうねん」
「そうなのか」
「ポルコ族とかおるやろ、それぞれの国に」
人間族以外の種族もだというのだ。
「それでや」
「たまたまハニワがいてか」
「で、国家元首になってるだけや」
「そうか。しかし」
常識派のレーティアはスペインの話を聞いても頷く。
「訳のわからない世界もあるのだな」
「人間だけが種族ちゃうからな」
この辺りこの世界は複雑だ。
「っちゅうか人間ってこっちの世界じゃ後から出て来た種族みたいやで」
「そ、それはな」
柴神はスペインの今の話に首を捻る。
「その様だな」
「そういえば柴神さんそういう話は」
「いや、それはだ」
「知らへんのかいな」
「あまりな。よく知らない」
何かを隠している感じだったがそれでもこの辺りは誰も気付かなかった、レーティアにしてもそうだった。
「だから言えない」
「そやねんな」
「そうだ、しかしあの国だが」
柴神もアステカ帝国のことを言う。
「普通の国とは全く違うことは間違いない」
「それは間違いないですね」
東郷も明石から送られた資料を見てそれはわかっていた。
「普通の戦い方では苦戦するでしょう」
「宇宙怪獣にも気をつけてくれ」
「ううん、見たところだけれど」
怪獣に詳しい総督もこう言う。
「中南米には道の怪獣も多いね」
「多いどころではないな」
ここでこう言う柴神だった。
「最早な」
「そうですね、これは」
「長い間見ていない間に」
柴神はこうも言う。
「えらく増えたな」
「中南米は未開の地でもあります」
総督は学者としての一面も見せる。
「迂闊に入ってはいけないです」
「その通りだ、ここはだ」
「はい、ここはですね」
「星域を慎重に攻略していこう」
「まずはメキシコだな」
アメリカが言う。
「あの星域ならまだわかるぞ」
「そういえばアメリカさんメキシコさんとは」
「友達だぞ」
こう日本にも答える。
「長い付き合いだぞ」
「そうでしたね」
「最近見ないと思っていたんだ」
その見ない間に、だったのだ。
「アステカに入っていたんだな」
「ではまだメキシコは」
「話が出来るぞ」
そうだというのだ。
「もっとも南米は僕もわからないがな」
「そういえば中国さんの別荘も」
日本は今度は中国に顔を向けた、彼は太平洋や欧州の各国、ある国だけを除いて別荘を持っているのだ。
「中南米には」
「ないある」
中国は難しい顔で日本に答えた。
「というか行ったことがないある」
「そうですか」
「あそこは本当の秘境あるからな」
「だからですね」
「無理ある、韓国も無理だったあるが」
それはその『ある国』である。
「あそこには行くことすら無理だったあるよ」
「そうした世界だからこそ」
「何もわかってきていなかったある。そもそもあのハニワも訳がわからないあるよ」
「趣味がめっちゃ変態なんや」
ここで言ったのはスペインだった。
「SMとか好きですぐに割れてな」
「割れる?どういうことですか?」
ユーリはスペインの今の言葉に怪訝な顔になって問い返した。
「それは」
「ハニワって身体が陶器でな」
「陶器の生命体ですか」
「硬うてビームとかには強いんや」
「それで陶器だからですか」
「割れるんや、けどな」
割れはする、しかしだった。
「簡単にくっついて復活するんや」
「不死身ですか?」
「死にはするけれど簡単には死なへん」
そうだというのだ。
「寿命も長いんや」
「そうした種族ですか」
「そや、まあ色々とある種族や」
「ですね、本当に」
「その連中と戦うさかいな」
それでだというのだ。
「まあ色々と用心していこうな」
「とりあえずハニワ相手にはビーム攻撃は控えましょう」
秋山は具体的な戦術を述べた。
「ビームは人間や宇宙怪獣相手です」
「あたしは別だね」
ここで言ったのはキャシーだった。
「あたしは貫通させられるからね」
「はい、ブラッドレイ中将はそのままお願いします」
「わかったよ、じゃあね」
キャシーは秋山の言葉にも頷く。
「あたしはいつも通りでね」
「それでお願いします」
「つまりハニワ相手には艦載機ね」
クリスは自身の得意分野を使えると思い楽しげな笑顔になっていた。
「それで攻めるといいわね」
「そういうことです。幸い大型空母の配備も出来ています」
このこともあった。
「ですから」
「攻撃の仕方も出来てきたわね」
「それに新兵器もあります」
秋山はこのことkも言った。
「平賀博士が開発された兵器が」
「うむ、遂に完成した」
場には津波もいた、それでだった。
「四番艦までな」
「と、津波様が申しております」
いつも通りここで久重が自分の言葉を出す。
「そういうことです」
「ではその兵器も投入しよう」
東郷は冷静に答える。
「さて、面白い総力戦になるな」
「面白いですか?」
「厳しい戦いでも余裕は持たないとな」
東郷は日本妹に持ち前の余裕も見せる。
「硬くなると失敗するものだ」
「長官がいつも仰っている様に」
「そうだ、気持ちはほぐしていこう」
「わかりました」
こうした話をしてそのうえでだった、枢軸軍は伊勢志摩も加えてそのうえでアステカ帝国との戦いに入った、そのアステカ帝国では。
「ホーーーーー!」
「ホーーーーー!」
「ホーーーーー!」
人間達が青いハニワ達と共に騒いでいた。
「祭り!祭り!」
「戦いだ!戦いだ!」
「日本が来る!ガメリカが来る!中帝国が来る!」
「ドクツも来る!オフランスも来る!」
「ついでにイタリンも来る!」
最後はあまりどうでもいい感じだった。
「祭りだ!やるぞ!」
『戦うぞ!」
「奴等に我々の力を思い知らせてやれ!」
「ハニワの強さ!」
「ハニワの凄さ!」
こうしたこを叫んでいた、そして。
独特の、階段が中央にありその左右に日本帝国で言うシーサーや狛犬の頭を思わせる像を置いたピラミッドの頂上に白いハニワがいた。
黒い目と口は他のハニワと同じだ、黄金の王冠に赤いマント、それに胸には黄金の飾りがある。
この怪しいにも程があるハニワこそアステカ帝国の皇帝ケツアルハニーだ、このとりわけ怪しいハニワの言葉だ。
「臣民達いいか!」
「ホーーーー!」
「ホーーーー!」
ハニワも人間達も叫ぶ。皆入り混じって仲良く一緒に叫んでいる。
「我々は戦いそして勝つ!」
「奴等は敵じゃない!」
「枢軸が何だ!」
「そして奴等を屈服させ何をするか!」
「エロゲを差し出させるべきだ!」
「それしかない!」
何故かここでこれが出て来る。
「エロゲ万歳!」
「エロゲ三昧の日々!」
「特に日本帝国はエロゲの産地だ!」
この世界でも実際にそうだったりする。
「貢物は凄くなるぞ!」
「日本待っていろ!」
「御前達には期待している!」
「そしてだ!」
さらに言うハニーだった。
「女神!女神が増えるぞ!」
「のぞみ以外にも女神が来てくれる!」
「そうなるのか!」
「そうだ!女神は多ければ多いだけいい!」
ハニーはピラミッドの頂上から主張する。
「いいな、のぞみも!」
「えっ、私も!?」
見ればハニーの後ろにはメキシコにキューバ、アルゼンチン、チリ、ペルー、そしてハニーにとって祖国であるブラジルもいる。一応人間の服を着てはいる。
そしてハニーの横には中南米の神の儀式の服を着た女がいた、見れば。
茶色のボブで眼鏡をかけた気弱そうな顔立ちの少女だった、その少女にだ。
ハニーは顔を向けてこう言うのだった。
「そうだ、我等jの女神も戦うのだ!」
「そもそも私女神じゃないですよ」
「いや、女神だ!」
ハニーはあくまで主張する。
「それに違いない!」
「私日本人ですけれど」
「そのエロゲのメッカ日本から来た!」
これが理由だというのだ。
「この国に流れ着いてきたな」
「それはその通りですが」
「あの時のことは覚えている」
ハニーの口調が妙に懐かしむ優しいものになっていた。
「のぞみ、御前や皆は宇宙船に乗っていたがな」
「急に出て来たエアザウナの動きに巻き込まれまして」
「そうだった、皆は無事だったが」
だが宇宙船は動けなくなりそしてだったのだ。
「この国に流れ着いた」
「折角四国にいるお祖父ちゃん達のところに行こうと思ってたのに」
「何故お父さんやお母さんはいなかった?まだ幼かったが」
「叔父さんが一緒じゃないですか」
「あの叔父さんか」
「今あっちにいますけれど」
「ホーーーー!」
見れば年配の禿げたアジア系の男がハニワやアステカの人達と一緒になってそのうえで楽しく叫んでいる。
「何か昔のこと全然忘れていて」
「この国は楽しいからな」
「元々エロゲ好きだったかも知れないですけれど」
「ついでに言うと毎日祭りに宴会があるぞ」
「そうした国だからですね」
「そうだ、染まる人間はすぐに染まる!」
そして過去のことも忘れてしまうというのだ。
「それがアステカ帝国だ!」
「それはいいんですけれど」
「御前は自分を人間だと言うのか、まだ」
「だから私は人間なんです」
のぞみは訴えかける顔になっている。
「紛れもなく」
「いや、女神だ!」
ハニーに普通のやり取りは効果がない、それでだった。
「エロゲの聖地日本帝国から来た女神だ!」
「そもそも戦争してどうするんですか?」
「だから勝ってだ」
とりあえずこれは絶対だった。
「各国に女神とエロゲを差し出させるのだ」
「征服とかは」
「征服?何だそれは」
全然知らないという感じの返答だった。
「アステカ帝国はそんなことはしないぞ」
「領土とかはいらないんですか」
「領土はもう充分ある」
中南米のその七つの星域があるというのだ。
「だから充分だ」
「領土も資源もいらなくて」
「エロゲと女神だ!」
今度はエロゲが先になる。
「それこそが必要なのだ!」
「そうですよね、アステカは」
「枢軸も連合も関係ない!」
アステカにとってはまさにそうした考えだった。
「エロゲこそが至高!女神こそが最高!」
「では今から」
「勝つ!」
アステカ帝国においては基本的に侵攻や迎撃も大した問題ではなかった。
「絶対に!」
「何か他の国と戦う目的が違いません?」
「他の国は他の国だ!」
それで済む話だった。
「うちはうち!これでいい!」
「それはそうですけれど」
「ならのぞみも戦う!そうしよう!」
「何かよlくわからないですけれど」
アステカ帝国はこうしたやり取りを経て戦いに入ることになった、だが。
のぞみはピラミッドの上から様々な色、見れば青以外の色のハニワ達も多い。そして帝国全体に出店やトーテムポールや戦艦におでんの看板がある。ロケットも飛び月は青い土星状のものだ、随分と変わった感じだ。
その帝国の中を見回してだった、のぞみはこう漏らした。
「何かこの国って」
「どないしたんや?」
ダークグリーンの迷彩のアステカの軍服を着たキューバが応える。
「面白い国やろ」
「明らかに普通の国じゃないですよね」
「普通ってガメリカとかと比べてやな」
「はい、伝え聞く限りではな」
「そやな、アステカはな」
「昔からこうですよね」
「気付いたら国があってな」
その建国過程もよくわかっていないらしい。
「それでや」
「今に至るんですか」
「そや、それでや」
「何か色々ある国になったんですね」
「人間とハニワがおってな」
「宇宙怪獣に惑星にも一杯生き物がいて」
「ジャングルやしな」
それに囲まれているというのだ、星は。
「俺もアメリカの奴とは昔付き合いがあったわ」
「凄い仲悪かったんですよね」
「今でもや、それはな」
キューバは葉巻きを吸いながら不機嫌な顔を見せる。
「まあそこで他の国も見たけどな」
「アステカと全然違いますよね」
「ビルっていう石の大きな建物が立ち並んでてな」
「こうしたピラミッドとか看板は」
「もっとずっとすっきりしとるんや」
ピラミッドもなかったというのだ。
「そうした国や」
「そうですか」
「人間ばっかりで静かですっきりした面白うない国や」
「ううん、そうですか」
「やっぱりこの国がええわ」
キューバの口調はしみじみとした感じになっている。
「それは皆もやで」
「僕もやで」
メキシコも言ってくる。見ればキューバと同じく明るい感じの青年だ。
「アステカのこの賑やかで混在した感じはええと思うで」
「いやらししいゲームが大好きでもですか」
「それがええんや」
メキシコが言うにはそうなる。
「ほんまにな」
「そうなんですか」
「そや、それでや」
メキシコはさらに言う。
「のぞみちゃん日本のことは覚えてるんか?」
「いえ、それが」
のぞみはこのことも話す。
「あまりというか全然」
「そやねんな」
「はい、幼い頃にここに流れ着いたので」
それでだというのだ。
「覚えてはいません」
「そやねんな」
「どういう国なのでしょうか」
自分でこう言う位だった、首を捻って。
「日本は」
「悪い国やないみたいやで」
のぞみに今度はペルーが話す。
「どうやらな」
「そうなんですか」
「何しろエロゲのメッカらしいしな」
これが彼等が日本がいい国だと言う根拠だった。
「そやさかいな」
「あの、そうしたゲームとは関係は」
「あるやろ」
「そやろ」
チリとアルゼンチンも言ってくる。
「モアイも大事やけど」
「それにサッカーも」
「ああしたゲームは最高の文化やで」
「のぞみちゃんもやってみたらどや」
「私は女の子ですから」
のぞみがそうしたものから離れている理由はこれだった。
「ですから」
「いや、そこでや」
「そこでやらんと」
チリとアルゼンチンは言う。
「人生面白うないで」
「エロいことも必要や」
「けれど皆さんそっちに専念し過ぎです」
のぞみから見ればそうなる。
「本当に。けれど侵略はしないんですね」
「何でもあるさかいな」
最後に言ってきた国はブラジルだった、このアステカ帝国の中心の国でもある。
「そやからな」
「あればもういらないんですか」
「土地とか資源はな」
そうしたものはいいというのだ。
「ええんや」
「じゃああくまで欲しいものは」
「エロゲだけや」
本当にそれだけだというのだ。
「むしろこっちから貿易したい位やけどな」
「戦争する意味は」
「あまりないっちゅうんやな」
「違いますか?」
のぞみはいぶかしむ顔でブラジルに問うた。
「それは」
「まあそれはな」
「そうなりますよね、そうしたゲームは普通に買えますし」
「日本も売ってくれるやろな」
「それなら余計に」
「そこはハニーさんやからや」
「あの人?だからですか」
ハニーを人と呼ぶことは少し躊躇した、あまりにも変わった生命体なので。
「戦争になるのは」
「あの人はお祭り好きなんや」
キューバはハニーを人だと言い切った、この辺りにのぞみとの違いがあった。
「それでなんや」
「戦争はお祭りですか」
「アステカではそや」
「そういえば生贄祭りとかも」
「実際には殺したりせんけどな」
それはこの国にはない。
「それでも生贄に扮した女の子の周りで賑やかにやって盛大に騒ぐやろ」
「私もいつもその中にいますし」
のぞみはいつも生贄役だ、そうした意味でも女神なのだ。
「それは知ってるつもりです」
「とにかくそうした国なんや、ここは」
「お祭りが大好きなんですね」
「それで戦争もするんや」
戦争はハレ、それ故にだというのだ。
「じゃあそろそろ枢軸も来るし」
「戦いですか」
「いっちょやるか。アメリカの奴いてこましたるわ」
キューバは何故かバットを出して血走った目になる。
「あいつとは色々あったさかいな」
「あの、キューバさんとアメリカさんは」
「おうよ、大嫌いや」
キューバはその血走った目でのぞみに話す。
「あいつだけはな」
「キューバさんがアステカに入る前は」
「色々揉めたんや」
そうしたことがあったというのだ。
「結構な」
「それで今もですか」
「大嫌いなんや」
とにかくそうだというのだ。
「他の連中とは何ともないけれどな」
「親分は好きやで」
メキシコが笑顔で言う。
「あの人は」
「親分ってスペインさんですよね」
「そや、伊勢志摩と付き合いは長いんや」
アステカとその国はそうだというのだ。
「そやからな」
「スペインさんとは仲がいいんですか」
「そういうこっちゃ。まあ親分とも仲良くやるか」
「スペインは歓迎するぞーーーー!」
ハニーも楽しそうに叫ぶ。
「伊勢志摩とも遊ぶ!」
「遊ぶ!遊ぶ!」
「楽しく遊ぶ!」
人もハニワ達も楽しそうに叫ぶ、ハニーに応えて。
「一緒に遊ぶ!」
「戦って楽しもう!」
「スペインもイスパーニャ夫妻も歓迎するぞ!」
戦争の相手としてそうするというのだ。
「思う存分楽しむ!」
「ホーーーーーー!」
「ホーーーーーー!」
この叫ぶも出る、彼等は楽しく騒いでいた。
のぞみはその彼等を見て今度はアルゼンチンに言った。
「何かこの人達は本当に」
「賑やかで気がええやろ」
「野心とか悪意がないんですね」
「そやからずっと中南米におるんや」
そこからこれといって侵略もしてこなかったというのだ。
「楽しく平和に過ごしてるんや」
「色々とおかしなところがあっても」
「そのおかしなところがええんやないか」
笑ってこうも言うアルゼンチンだった。
「個性的でな」
「そうなるんですね」
「そや、さてこのお祭りの後はお昼御飯や」
「牛肉のお料理ですね」
「肉は大好きや」
アルゼンチンは目を輝かせて言う。
「どんどん焼くからのぞみちゃんもどんどん食べてや」
「はい、わかりました」
この話はあっさりと決まった、そうした話をしてだった。
アステカ帝国の面々は昼食も楽しんだ、そのうえでメキシコに来る枢軸軍を迎え撃つのだった。両軍の戦いが遂にはじまった。
枢軸とアステカの戦いのことはヒムラーも聞いた、彼はそのことについて首を捻りそのうえでこう部下達に言った。
「何かどうでもいい感じだね」
「両軍の戦いは、ですか」
「そうお考えですか」
「まあ今連合軍は戦力の再編成と戦線の構築に忙しいからね」
これはドクツとて例外ではない。
「だからその間枢軸が何処かと戦ってくれているのは」
「我々にとっては有り難い」
「こちらには仕掛けてこないだけに」
「そう、好都合ではあるよ」
それは間違いないというのだ。
「けれどそれでもね」
「戦局自体はどうでもいいですか」
「どちらが勝とうと」
「枢軸が勝つだろうね」
ヒムラーはあっさりと言い切った。
「アステカの状況はよく知らないけれどね」
「枢軸の方が国力が上」
「だからですね」
「枢軸は国力だけはあるんだよ」
「しかし頭はない」
「それが連合ですね」
「そう、だからね」
それでだというのだ。
「枢軸の方が勝つよ」
「問題は枢軸がどれだけ時間をかけてしまうか」
「それですね」
「アステカには精々粘ってもらいたいね」
枢軸とアステカの戦いについてはこの程度しか思っていないヒムラーだった。
「応援はするよ」
「出来るだけ粘って欲しい」
「それがアステカへの願いですか」
「援助もしないけれどね」
これも最初から考えていない。
「こちらも再編成に総力を使っているからね」
「そしてあの機械の兵達にも」
「彼等にもですね」
「そしてサラマンダーに機械の宇宙怪獣」
「彼等のことも」
「最後に勝つのは俺だよ」
ヒムラーはドクツではなく自分だと不敵な笑みで言い切った。
「枢軸でもエイリスでもソビエトでもなくね」
「どうも最近ソビエトの勢力が大きくなっていますが」
「それでもですか」
「エイリスと彼等は枢軸と潰し合ってもらうよ」
そしてそれからだというのだ。
「生き残った方を潰せば終わりさ」
「ドクツの世界が訪れますね」
「それで」
側近達、真の意味でのそれの彼等も頷く。
「我等がドーラ教の」
「その世界が」
「もうドーラ教はドクツの重要な宗教になった」
他ならぬヒムラーが定めたことだ。
「後はね」
「はい、次はですね」
「この世界を」
側近達も応じる、そうした話をしてだった。
ヒムラーは今は戦力の再編成に取り掛かっていた、それはドクツの為ではなく己の為だけにしていることだった。
TURN82 完
2012・1・15
伊勢志摩の勧誘はあっさりだったな。
美姫 「待った時間の方が遙かに長いわね」
まあ、でもらしいと言えばらしいかもな。
美姫 「確かにね。さて、これで次は」
ああ、いよいよ秘境たるアステカへ。
美姫 「ここは特に問題ないような気もするけれどね」
かと言って、楽にとまではいかないだろうがな。
美姫 「ヒムラーが力を蓄えている状況だし、出来れば早く終わらせたい所よね」
かと言って焦りは禁物だがな。
美姫 「さてさて、どうなるのか次回も待っていますね」
ではでは。