『ヘタリア大帝国』




              TURN81  内戦介入

「凄い国だな、何度聞いても」
「そうですね、本当に」
 ベトナムとタイはそれぞれの乗艦の艦橋でモニターを通して話していた、彼等は既に伊勢志摩の宙域に入っている。
 他の国家や提督達もいる、その前には既に伊勢志摩の艦隊が展開している。
 だがその伊勢志摩軍は枢軸軍には向かっていない、二手に分かれ対峙していた。
 その両軍を見てタイはこうも言った。
「僕達は敵じゃないんですね」
「相手から見ればな」
 そうなるとベトナムも言う。
「我々はどうでもいいのだろうな」
「ううん、確かに侵略で来たのではないですが」
「それでもだな」
「ああした内戦というのは」
 ない、タイが言いたいのはそういうことだった。
「夫婦喧嘩ですか」
「本当にな、凄い国だ」
 またこう言うベトナムだった。その顔は引いている感じだ。
「どういう国だ」
「これでそれなりに豊かで国民生活も安定しています」
「失業率も低いな」
「はい」
 そして国民所得も高い方だ。
「いい国です」
「政治はしっかりとしているか」
「ただ喧嘩をしているだけですね」
「わからない国だ、しかしだ」
「うん、今からどちらかにつくのよ」
 フェムがここで二人に言う。
「それで内戦を終わらせるけれど」
「戦力的にはこちらが圧倒的だから」
 フィリピンは彼等の戦力を見ている、七十個を遥かに超えている。それに対して伊勢志摩軍はどちらも数個艦隊規模だ。
「僕達がついた方が勝つよ」
「それは間違いないけれど」
 フェムは不安な面持ちだった。
「問題はどっちにつくの?」
「難しいな」
 いささか引いている顔で言うベトナムだった。
「正直な」
「どっちが正しいのかしら」
「どっちもどっちだ」
 ベトナムはフェムにこう返した。
「理由もな」
「そうよね、二人共」
 フェム達はそれぞれが持っている伊勢志摩の資料を見た、そこには二人の男女の笑みを浮かべた写真もあった。
 ダークブラウンの鬣の様な豊かな髪に爽やかかつ精悍な顔立ちの男だ、年齢は二十代後半位であろうか。白い歯と額の十字の傷が目立つ。
 服は赤と紫の目立つものであり襟や袖が凄い、スタイルもよく出ており胸には紅の薔薇がある。
 黒く長い髪を後ろで束ねた艶やかな女だ。ダークパ^−プルの瞳は切れ長で左目の付け根に泣き黒子がある。唇は小さく紅で鼻立ちもいい。
 豊かな胸がはっきり出ている肩のない黒と赤のドレスを身にまとっている。艶やかという言葉をそのまま表した感じだ。
 男はフェリペ=イスパーニャ、伊勢志摩の国王だ。女はローザ=イ」スパーニャ、フェリペの妻であり王妃だ。この二人が楽しげに話していた。
「さあローザ、今日は君に御免なさいと言わせよう」
「それは私の台詞よ、フェリペ」
 ローザもローザで夫に笑みで返す。
「今日こそはよ」
「言うものだね、君も」
「何度でも言うわ。それではね」
「今からはじめましょう」
 二人で話をしている、ベトナムはその彼等を見てフェムに言う。
「どう違うんだ、本当に」
「あの、ですから喧嘩をする理由は」
「これがあれなんや」
 スペインが彼等のモニターに出て来た、何でもないといった笑顔だ。
「朝のパンに付けるジャムはどっちがええかで」
「喧嘩してるんですか?」
「そなんや。王さんはオレンジでな」
「王妃様は?」
「苺なんや」
 そのどちらがいいかという話になってというのだ。
「で、言い合いになってや」
「今に至るか」
「そういうこっちゃ」
 スペインはベトナムにも話す。
「まあいつもの感じや」
「これがいつもって」
「ちょっと」 
 イオンドネシアとマレーシアも呆れる。
「本当に凄い国だね」
「驚くしかないわ」
「まあとにかくや」
 スペインが率いる数個艦隊は動いていない、枢軸の方に入っている。
「どっちについてもな」
「同じじゃjないの?」
 クリオネも呆れている顔だ。
「この場合は」
「まあ好きな方についてや」
 スペインもこんな感じだ。
「あんた等のな」
「凄いいい加減ね。けれど実際にね」
 クリオネは朗ながらも言う。
「そんな感じね。どうしたものかしら」
「日本はどう思う」
 ベトナムは日本に尋ねた。
「ここは」
「難しいですね」
 日本も微妙な顔になり顔に汗を出している。
「この場合は」
「どちらについてもどう考えても」
 秋山も困った顔だ。
「同じ状況、同じ結果です」
「そうですね」
「あの、本当にこれは難しいです」 
 参謀である秋山もこう言う程だ。
「どっちにすべきか」
「厄介ですね」
「長官はどう思われますか」
 秋山は東郷に判断を問うた。
「この場合は」
「そうだな、ここはな」
「はい、ここは」
「どちらにもつかないでおくか」
 東郷が出した選択肢はこれだった。
「強いて言うならスペインさんにつく」
「俺にかいな」
「少なくともあの二人の喧嘩に介入してもだ」
 どうかと、東郷も言う。
「展開も結果も同じだ」
「だからかいな」
「そうだ、スペインさんにつこうと思う」
 こうスペインに言うのだった。
「これでどうだろうか」
「そうですね、実際に国王についても王妃についても」
「同じだからな」
「はい、そうです」 
 だからこそ秋山も困っていたのだ、何しろ二人共言っていることもやっていることも全く同じものであるからだ。
 それでどうかと思っていた時に東郷がこう言ったのだ。
「よし、じゃあな」
「全軍スペイン殿につきますね」
「そうする」
 枢軸軍はスペインにつき戦場に向かう、今にもお互いに攻撃をはじめようとしていたがそこで彼等は戦場に来た、それを見てだった。
 イスパーニャもローザも東郷達にこう言うのだった。
「悪いが話は後にしてくれるか」
「今立て込んでるのよ」
 夫婦喧嘩そのままのやり取りだった。
「今私は運命の時を迎えているのだ」
「お話は聞くからね」
「ああ、夫婦喧嘩ならだ」 
 東郷はその二人に言った。
「決闘で解決してみたら如何か」
「決闘!?」
「フェシングかしら」
「フェシングでも何でももいい」
 何でするかまでは東郷も言わない。
「とにかくだ」
「艦隊での決戦ではなくか」
「それで決めろというのね」
「それならすぐに済むしな」
 少なくとも艦隊決戦よりもだというjのだ。
「だからだ。どうだろうか」
「そうだな。貴殿の言うことも一理ある」
「それもいいわね」
 二人も東郷の提案に乗った。
「それではだ」
「祖国さん、立会い人をお願いできるかしら」
「最初からそれで決めたらええとも思うけど」 
 スペインは首を傾げさせながら言う。
「まあそれやったらな」
「よし、それではだ」
「はじめるわよ」
 二人は早速それぞれの艦艇から伊勢志摩に戻ってフェシングで決闘をはじめた、立会人はスペインが務めた。東郷や日本達は観客になっている。
 二人はお互いに激しいやり取りを演じる、激しい金属音が響く銀の火花が飛び散る、百合二百合と続いたところで。
 スペインは疲れた感じの顔になって二人に言った。
「あっ、お昼やで」
「むっ、もうそんな時間か」
「早いものね」
「お昼にせえへんか?」
「そうだな。そしてその後はシェスタだ」
「その時間ね」
「もう料理もワインも用意できてるで」
 実際に料理と赤ワインがテーブルの上に用意されている。それも見てだった。
 イスパーニャとローズはお互いに笑みを浮かべて言い合った。
「では今日の夫婦喧嘩は終わりだ」
「そうね。お昼だからね」
「では食事の後シェスタに入り」
「後は政治ね」
「政治は夜に行うもの」
「だからこそね」
 それでまずは食べるというのだった、かくして。
 二人は向かい合ってテーブルに着き盛大に飲み食いをした、そこにスペインも加わる。
 それが終わってからだった、スペインはギャラリー達に言った。
「ほな今からシェスタの時間やから」
「政治の話はなしか」
 ドイツがそのスペインに問い返す。
「俺達もだな」
「休んどいてや。俺もシェスタに入るさかい」
「全く、どういう奴等だ」
「これが俺達の習慣やさかいな」
 文句は言うなということだった。
「そういうこっちゃ」
「それではだ」
 東郷はスペインの言葉を受けて言った。
「今は俺達も休憩だな」
「昼食も用意してあるしたっぷり食べてや」
「わかった、それではシェスタの後でだな」
「また話しような」
 こうして政治の話は後になった、そして。
 東郷達はスペインが用意した昼食を食べた、それからだった。
 イタリア達もシェスタに入った、だが大抵の面々は起きてそれで話をしていた。
 サフランは憮然としている山下にこう尋ねた。
「ご不満ですか?」
「いささか」
 実際にこう返す山下だった。
「我々は真面目に話をしにきたのです」
「だからこそですね」
「東郷が一騎打ちを勧め艦隊戦より時間を短くさせたことはいいとしても」
「まあ仕方ないな」
 当の東郷はあっさりとしたものだった。
「伊勢志摩の風習だしここは伊勢志摩だからな」
「人に合わせるものだがな」
 山下が怒っている理由はそこにあった。
「それでシェスタとは」
「その前に食事もでしたし」
「何がしたい、一体」
「おそらくこれはです」
 サフランは怒る山下に言う。
「私達を試しているのでしょう」
「試しているとは」
「おそらく決闘はガチです」
 夫婦の間のことに過ぎないというのだ。
「それは。ですが」
「昼食にシェスタは」
「私達を焦らしそのうえで」
「我々を試しているか」
「ここで怒るなり帰ったりしてはです」
「同盟締結どころではないか」
「伊勢志摩にしても枢軸への参加には決断が必要です」
 彼等には彼等の国益がある、だからだ。
「それがあるからです」
「わざと焦らして試してきているか」
「そうしていると思います」
「ではここは」
「はい、待ちましょう」
 サフランは山下だけでなく一同にも言った。
「私達もシェスタをするなりして」
「私は昼寝はしないが」
 生真面目な山下は昼は働く主義だ、だからそうしたことは決してしないのだ。
「それでもか」
「では読書なり鍛錬なりをして」
「時間を潰せばいいのだな」
「とにかく焦らず怒らないことです」
 今はそれが第一だというのだ。
「そうしましょう」
「では素振りをしよう」
 山下が選んだ選択はこれだった。
「鍛錬あるのみだ」
「では俺は寝よう」
 東郷はこちらを選んだ。
「郷に入っては郷に従えだ」
「では私は仕事を」
 秋山は早速ノートパソコンを出す。
「書類整理を」
「休んだらどうだ?」
「いえ、そういう訳にはいきません」
 こう東郷に返す。
「今は」
「あまり働き過ぎると禿げるぞ」
「禿げていません!」
 このことはムキになって否定する。
「私の髪の毛は健在です!」
「いや、危ないでしょあんたは」 
 キャロルはその秋山に真顔で突っ込みを入れる。
「それもかなり」
「くるよ、絶対に」
 アメリカ妹も言う。
「というか既にね」
「育毛剤ならあるわ」
 ドロシーはそっと塗り薬を出してきた。
「使って」
「あの、ですから私は」
「いいから」
 無表情だが親切なドロシーだった。
「遠慮しないで」
「そうですか」
「ええ、髪の毛は長い友達よ」
 日本や中帝国の文字からの言葉だった。
「だからこそね」
「では」
 秋山も何だかんだで受け取る、しかもレーティアまで言ってきた。
「君はこのままだとまずいな」
「確か総統は」
「そうだ、私は医学の博士号も持っている」
 そちらの分野でも天才なのだ。
「育毛の特許も持っているがな」
「私の髪の毛はですか」
「このままだと確実だ」
 絶対に禿げるというjのだ。
「だから気をつけるのだ」
「ですから私は」
「気持ちはわかるが言ってどうにかなるものではない」
 レーティアはシビアだった。
「現実はな」
「さもないと宇垣さんになりますよ」
 小澤も来た。
「ツルッパゲに」
「待て、わしは剃っているのだ」
 宇垣の口から今衝撃の事実が語られる。
「禿ではないぞ」
「えっ、禿じゃなかったんですか」
「剃ってたんですか」
「そうだ」 
 驚く一同に言う。
「訳あってそうしているのだ」
「実は宇垣さんはふさふさです」
 日本も言う。
「剃っておられるだけですから」
「じゃあ秋山さんよりずっと恵まれていますね」
「そうあるな」
 リンファと中国妹も容赦がない。
「そういうことでしたら」
「剃っているのと禿は違うある」
「髪の毛の問題って深刻だからね」
「はっきり言って秋山さん、貴方危機的状況あるよ」
「ですから私はです」
 自分だけは頑なに言う秋山だった。
「禿げてはいません」
「安心するのだ、薄毛や禿の問題は解決されている」
 レーティアは無自覚に秋山を攻撃していく。
「秋山参謀総長、君の髪の毛は私の開発した毛生え薬で蘇る」
「ドクツに禿はいなくなったからな」 
 プロイセンは笑いながら秋山の肩を叩いていた。
「よかったな、秋山さん」
「全く、皆さんは優しいのかそうでないのか」
「私は善意のつもりだが」
 レーティアには悪意はなかった。
「気を悪くしたら済まない」
「ではそのお薬をですね」
「塗り薬だ、頭に塗ればいい」
「はい、それでは」
 何気に髪の毛の話を自分にとっていい感じで収めた秋山だった、もっとも皆このことは気付いていたが言わない。そして。
「四時か」
「そうよ、シェスタは四時までよ」
 グレシアがベトナムに答える。
「それまで待つかないわね」
「どうして時間を潰すかだな」
 ベトナムは腕を組んでそのことを考えだした。
「そうだな、ここは」
「釣りしません?」
 フェムはベトナムにこう提案した。
「祖国さんの趣味の釣りを」
「それか」
「若しくはトランプか」
「ポーカーでもするのかい?」
 ラスシャサがフェムに言ってきた。
「そうするかい?」
「ポーカーか。いいな」
 ベトナムがそのポーカーフェイスで応える。
「それではな」
「じゃあ私もね」
 マレーシアは微笑んでその話に入った。
「ポーカーに淹れてくれるかしら」
「当たり前だろ、祖国さんと一緒にしないでどうするのさ」
 ラスシャサは微笑んで自分の祖国に応えた。
「それじゃあね」
「僕もね」
 インドネシアも話に入る、そこにタイも入る。
 そしてフィリピンもララーにこう言ってきた。
「僕達もポーカーに入れてもらおうよ」
「うん、ただ私ってね」
「ああ、時々凄いことになるよね」
「本当に時々だけれどね」
 ララーの山勘と強運は思わぬ時に発揮される、それで凄いことをするのだ。
 だから今フィリピオンも言うのだ。
「それも見たいからね」
「じゃあ私達もなのね」
「うん、一緒に行こう」
「それじゃあね」
 こうしてフィリピン達も話に加わる、東南アジア組は集まって仲良くポーカーをはじめた。その他にはというと。
 インドはサフランとアグニにこんなことを言っていた。
「僕達も何かして時間を潰すたい」
「はい、それで何をしますか?」
「お料理作ります?」
「それもいいたいいが」
「別のことで、ですね」
「時間を潰しますか」
「瞑想はどうたい」
 インドが提案するのはこれだった。
「瞑想をしていれば時間は自然に過ぎていくたい」
「しかも己を高められる」
「いいですね、確かに」
「ではそれでいくたい」
「私もね。ちょっといいかしら」
 三人のところにクリオネも入る、いつの間にかインドの要人になっている。
「実は最近肩凝りが酷くて」
「歳ですね」
「はいそこそれは禁句よ」
 クリオネはむっとした顔でサフランに言い返す。
「私はまだ三十歳よ」
「まだまだこれからというんですね」
「そうよ、これからだから」
 クリオネも何気に必死だ。
「とにかく。それでね」
「肩凝りたいな」
「瞑想でどうにかなるかしら」
 このことをインドに尋ねる。
「祖国さん整体とかにも詳しいから」
「それでは瞑想ではなくヨガたいよ」
「そっちなの?」
「では今から瞑想ではなくヨガにするたい」
 クリオネのことを考えてそちらにした、それでサフランとアグニに対してもそれでいいかと尋ねたのだった。
「それでどうたい?」
「はい、ではジャージに着替えてきます」
「それでお願いします」
「ではクリオネさんもジャージに着替えてくるたい」
「わかったわ。じゃあヨガをしてね」
「整体と一緒に時間を潰すたい」
「お願いするわね」 
 こう話してそしてだった。
 インド系の面子はヨガで時間を潰すことにした、そして。
 オーストラリア達は彼等は彼等で一つになって話をしていた。
「まあ四時まで暇でごわす」
「どうして時間を潰すばい?」
「それが問題だけれど」 
 オーストラリアとニュージーランド、トンガは顔を見合わせて話をしていた。
「ポーカーなり瞑想もしているでごわすが」
「そっちに入れてもらうばい?」
「そうする?」
「あっ、ちょっといいかな」 
 話をする三人に総督が声をかける。
「今面白いモバゲ見つけたけれど」
「モバゲ?」
「うん、怪獣を育てるゲームなんだ」
 如何にも総督の好きそうなゲームだった。
「それしない?四時まで」
「そうでごわすな。それでは」
「一緒にやるばい」
「そうしようね」
 三国も笑顔で応える、そしてだった。
 三人は総督と一緒にゲームをはじめて時間を潰したのだった。
 ゴローンはゴローンでだった。
 総督達のところに来てこんなことを言った。
「俺もいいゲームを知ってるぞ」
「あっ、女の子のゲームだね」
「ああ、そうだ」
 彼はこれだった、胸を張って言う。
「最近やっているゲームだがな」
「あんたまたエロゲしてるでごわすな」
 オーストラリアは笑顔でゴローンに言った。
「そうでごわすな」
「ああ、エロゲもしてるさ」
 そいのことを否定しないゴローンだった。
「毎晩な」
「あんたも相変わらずでごわすな」
「しかし普通のゲームもやっているんだ」
「エロゲが一般になったバージョンばいな」
 ニュージーランドはこう予想を立てた。
「それも面白いばいが」
「ああ、それだよ」
 まさにそれだった。
「で、学園の日々だけれどな」
「あのゲーム酷くない?」
 総督は少し暗い顔になってゴローンに返した。
「ヒロイン同士の関係とか」
「エンディングもだな」
「うん、ルートによってはね」
「だがそれがいいんだよ」
 ゴローンはにやりと笑って言い切った。
「いいルートも悪いルートもあるからな」
「僕はハッピーエンドが好きだけれど」
「何だよ、バッドエンドも味があるんだよ」
「エロゲでも?」
「そうだよ」
 まさにそうだというのだ。
「だから俺はエロゲもやり続けるんだよ」
「あの、ゴローンさんいいかな」
 トンガはそっとゴローンに言った。
「まさかお昼から皆の見ているところでエロゲするとか?」
「いや、エロゲは夜に一人でする主義だ」
「こっそり楽しむんだね」
「その通りだ、だからだ」
「まあ今しないんだったらいいけれどね」
「昼はギャルゲだ」
 それをするというのだ。
「それで学園の日々の通常バージョンをな」
「今からやるんだ」
「面白いぞ、かなりな」
「ハッピーエンド中心のゲームがいいけれど」
 総督はぼやく様にそちらの方を言う。
「まあ僕達も人のこと言えないかな」
「おいどん達はゆるゆる系だからハッピーエンドでもいいでごわすが」
「ううん、どのゲームをしようかな」
「そうだな。じゃあ鬼畜王か戦国はどうだ」
 ゴローンは今度はこの系列を話に出した。
「何か妙に気になる主人公だがな」
「それはそうと兄さんってお給料のどれだけをゲームとかに注ぎ込んでるの?」
 妹は兄にそのことを尋ねた。
「晴れてニートの魔法使いから提督でもある魔法使いになったけれど」
「ああ、給料か」
「お仕事のない時はいつもゲームしてるわよね」
「コスプレの衣装や同人誌も買っているぞ」
「本当にどれだけのお金を注ぎ込んでるの?」
「家も服も飯もあるからな」
 元々代々魔法使いの家でそうしたことには困っていない。
「しかも税金も払っている」
「つまりそれは」
「ああ、全部j注ぎ込んでいる」
 その給料の全てをだというのだ。
「まさにな」
「わかったわ。ただ」
「ただ、何だ?」
「借金はしないでね」
 しっかり者の妹としての言葉だ。
「それだけはね」
「借金?そんなことするか」
 ゴローンは借金についてはムキになって否定する。
「提督だから給料は充分貰ってるからな」
「だといいけれど」
「ついでに言えば御前の生活費だがな」
「私のことは気にしないで」
「やっていけているんだな」
「収入はあるから」
「占いか」
「そう、それをしてるから」
 この辺りは兄妹だ、彼女は彼女でそちらに通じているのだ。
「心配しないで」
「だといいがな」
「まあ兄さんが就職できてよかったわ」
「それはいいが俺の所属はどの軍だった?」
「インド軍だったと思うけれど」
「アラビアはインド領になったのか?」
「といあえず戦争が終わるまで信託統治領よ」
 今のところそうなっているのだ。
「暫定的に決まったのよ」
「インドのか」
「うん、だからね」
「そうか、俺はインド軍だったのか」
 今はじめて知る事実だった。
「意外だな」
「意外っていうか自分の所属が何処か位は覚えておかないと」
「駄目か」
「ええ、しっかりしてね」
 こう言う妹だった、ゴローンは仕事は手に入れたがそれでも根は相変わらずだった。しかし友人も出来今は彼等と共に時間を潰せた。
 彼はあらためて総督達に言った。
「じゃあどのゲームにする」
「怪獣育成ゲームに興味あるかな」
「それ面白いのか?」
「やってみる?それから判断してくれたらいいから」
「わかった、やらせてもらう」
 ゴローンは新たな世界にも入った、そうしたゲームも知っていったのだ。
 彼等はそれぞれ世界を知っていっていた、そして。
 〆羅はアストロ犬とパンダに対して漫画を読みながら尋ねたのだった。
「次の巻何処?」
「今僕が読んでるよ」
 犬が答える。
「少し待ってね」
「そうなの、じゃあね」
「一巻何処かな」
 パンダも同じ漫画を読みながら〆羅に問う。
「誰か読んでる?」
「そこにあるにゃ」
 アストロ猫が自分の前をその右の前足で指し示すとそこにあった。
「今誰も読んでないにゃ」
「うん、じゃあね」
「いや、一巻から面白いよね」
 猿も同じ作品を読みながら言う。
「百巻も続く筈だよ」
「スナイパーが主人公っていうのがいいわよね」
 〆羅は先に最新刊を手に取って読む。
「そうよね」
「そうそう、マシーンみたいな主人公だけれどね」
 犬が〆羅の今の言葉に応える。
「それがまた個性的で」
「うん、いい感じよね」
 こんな話をしながら彼等は漫画を読んでいた。彼等は彼等で快適に時間を潰していた、そして東郷もまた。
 料理のレシピの本を読みながら福原にこう言った。
「和食だが」
「お料理のことですか」
「ああ、今度娘に新しいメニューを作ろうと思っているが」
「和食のメニューで」
「何がいいだろうな」
 レシピを読みながらの話だった。
「本当にな」
「ううん、娘さんですから」
 福原はこのことから言う。
「味はあっさりとしていて」
「食べやすいものだな」
「はい、それでいて栄養があるものを」
「だとすれば何がいいか」
「鍋はどうでしょうか」
 福原の横には平良がいる、その彼の言葉だ。
「あれならば味の加減も調整出来ますし」
「それぞれでだな」
「はい、しかも色々なものを入れられるので」
 それで余計にいいというのだ。
「お子さんの身体にもいいかと」
「じゃあちゃんこか」
 東郷は平良の話からそれを連想した。
「それがいいか」
「ちゃんこを作ったことはなかったのですか」
「家ではなかった」
 東郷はこう福原に返した。
「すき焼きや水炊きはあるがな」
「そうだったのですか」
「そうか、ちゃんこか」
 東郷は考える顔で言葉を出した。
「それがいいか」
「ただ。だしは和風ですね」
「ああ、和食を食べさせたいからな」
「それが少し残念ですが」
 福原はこう漏らした。
「私としてはやはり」
「台湾の味だな」
「はい、そうです」
 台湾の軍事顧問を務め最近の福原の嗜好はそちらに大きく傾いている、だからこその今の言葉だった。
「私としてはそれをお勧めしたいですが」
「私もです」
 平良も言う、彼のお勧めはというと。
「やはりキムチで」
「そっちか」
「はい、韓国風に」
「だから和食でいきたいからな」 
 台湾料理でも韓国料理でもなくというのだ。
「そういうのは少しな」
「わかりました、それでは」
「以後発言を控えます」
「いや、いいアドバイスだった」
 今は台湾風も韓国風もないがそれでもだというのだ。
「別の機会に作ってみる」
「そうされますか」
「娘さんにご馳走されますか」
「料理も同じものだと飽きるからな」
 父親としてそこがどうしても気になることだった。
「毎日色々考えているんだ」
「それはいいことですが」
 ここで平良は持ち前の謹言癖を出した、今言うことはというと。
「お言葉ですが贅沢になっては」
「ああ、それはない」
「それならいいですが」
「家庭の料理だからな」
 だからだというのだ。
「そんなに金はかけない」
「軍人たるもの贅沢は禁物ですので」
「平良中将は相変わらず厳しいな、その辺りは」
「軍人とは何か」
 平良が常に考えていることだ。
「やはり質実剛健であるべきです」
「そうですね、平良中将の仰る通りです」
 福原もにこやかに平良の言葉に頷く。
「軍人はやはり」
「俺は特に贅沢に興味はないがな」
 東郷は漁色家だがそちらへの興味は実際にない。
「だから特にな」
「やはり軍人は」
 平良はさらに言う。
「質素倹約であるべきですね」
「よく言われることだな」
「奢侈は人を堕落させます、怠惰もです」
「今のシャスタもか」
「本音を申し上げますと」
 平良は周囲を目で見回してから東郷に言った。
「私は賛成できません」
「そうか」
「昼は寝ずに働くべきです」 
 実に平良らしい言葉だった、見事なまでに。
「私はそう考えます」
「しかしここは伊勢志摩で日本ではないからな」
「シェスタもですね」
「ああ、当然のことだ」
 彼等の生活の中ではというjのだ。
「そのことはわかっておいておくれ」
「個人的にはどう思っていてもですね」
「他国の風俗習慣を理解して受け入れることも必要だ」 
 それが出来る度量や識見を備えるべきというのだ。
「そのことも覚えておいてくれ」
「だから今もですね」
「時間を潰してくれ、四時までな」
「わかりました、それでは」
「今は」
 福原も頷く、二人はそれぞれの本を取り出して読書をはじめた。見れば日本も同じ様に本を読んでいる。
 それぞれの時を凄し四時になった、そしてだった。
 一同は壁の時計と扉を見た、だが。
 スペイン達は来なかった、五分経ったがそれでもだった。
 扉は開かない、早速平良が憮然とした顔で言い出した。
「けしからんですな」
「はい、全くです」
 福原も平良に続く。
「四時と言ったら四時に来なければならないというのに」
「五分前行動です」
 平良は海軍の伝統も出した。
「それが出来ないとは」
「伊勢志摩はたるんでいます」
「全くだ」
 山下も二人に続いて言う。
「シェスタもいいがこれでは困る」
「その通りです、こうなれば」
「うむ平良中将、国王陛下達を起こしに行くとしよう」
「せめて誰か読んで来てもらいましょう」
「是非共」 
 時間に五月蝿い二人はこう言いだす、だが。
 席を立とうとする二人と福原を止める者がいた、それは宇垣だった。
 宇垣は厳しいながらも丁寧な口調で彼等に言った。
「ここは待ってくれ」
「ですが外相、外交において時間は絶対です」
「四時と言えば四時です」
 山下と平良は強い口調で宇垣に言う。
「それで来られないというのは」
「流石に注意すべきです」
「四時まで寝ていてすぐに来られるものではないだろう」
 これが宇垣の言い分だった。
「ベッドから起きて着替えてだ」
「そしてですか」
「そのうえで来られるからこそ」
「そうだ、そのことを考慮に入れるのだ」
「では御三方が来られるのは少し後」
「待つべきですか」
「ましてや起こすなぞもっての他だ」
 宇垣は二人を嗜めもした。
「他国の国家元首ご夫妻、そして国家にそういうことをしてはならない」
「確かに、それは」
 山下もここで完全に止まった。
「ではここは」
「待つことも政治ではないか」
 宇垣もまたこう言うのだった。
「ではいいな」
「はい、わかりました」
「それでは」
 二人、そして福原も静かになった。彼等のやり取りを見てだった。
 ハンナは意外といった顔でこうアメリカ妹に囁いた。
「人は顔によらないわね」
「そうだね」
 アメリカ妹はその宇垣を横目で見ながらハンナのその言葉に頷いた。
「宇垣さんってあれで穏健派なのね」
「それもかなりね」
「顔だけ見たらあの人が一番過激そうだけれど」
「私もそう思っていたわ」
「けれど実際はね」
「あの人は日本の穏健派なのね」
「実はそうなんです」
 日本妹が二人に話してきた。
「宇垣さんは穏健派で平和主義者です」
「確かうちとの戦争主張してなかった?」
 アメリカ妹はかつての開戦前のことを日本妹に問うた。
「そうじゃなかった?」
「外相が主張されるのは止むを得ない時だけです」
「じゃあ避けられる戦争は」
「はい、避けようとされる方です」 
 それが宇垣だというのだ。
「そして前線においても」
「ああ、前線外交だね」
「それでも戦闘を回避されようとされます」
 宇垣の得意技の一つである、この前線外交は。
「私も最初は強硬派と思っていました」
「けれど実際はなのね」
「穏健な方です」
 日本妹はハンナにも話した。
「それも非常に」
「私もその辺りは見誤っていたわ」
 ハンナはガメリカ国務相として反省すべきものも見ていた。
「全く、私もまだまだね」
「あたしもね。この戦争結構見誤ってるからね」
 アメリカ妹も苦笑いになっている。
「その辺り、本当にね」
「難しいところね」
「まあ反省もいいあるが」
 中国妹はきりのいいところで言ってきてハンナ達の反省を止めた。
「まだ少し待つことになりそうあるおから」
「お茶ね」
「今淹れたあるよ」
 にこにことしてハンナに早速一杯勧める。
「さあ、飲むある」
「有り難う、それじゃあね」
「早速飲ませてもらうね」
 ハンナもアメリカ妹も茶を受け取って飲みはじめる、そして。
 中国妹は日本にも笑顔で茶を一杯勧めて言った。
「あんたもある」
「あっ、どうも」
「遠慮はいらないある。どんどん飲むよろし」
「これは中帝国のお茶ですね」
「勿論あるよ」
 これは最早言うまでもないことだった。
「私が直接淹れたお茶ある。だから美味しいあるよ」
「お茶はやっぱり中帝国ですね」
「日本も凄いと思うあるが」
 中国妹は日本の抹茶の話をする。
「あれは最初飲んでびっくりしたあるよ」
「そうなんですか」
「美味しいある、また飲みたいあるな」
「では今淹れますが」
「あっ、そうしてくれるあるか」
「はい、皆さんさえよければ」
 笑顔で応える日本妹だった。そして早速。
 その抹茶を淹れて一同に振舞う、ハンナはその茶も飲んでそのうえで確かな笑顔になりこう言ったのだった。
「日本のお茶もいいわね」
「美味しいですか?」
「ええ、飲めば気が晴れるわ」
 これはお茶全体に言えることだった。
「すっきりするわね」
「コーヒーもそうだけれどね」
 アメリカ妹も抹茶を飲みつつ言う。
「いや、お茶っていいわね」
「お茶は美味しいだけでなく目も覚ましてくれますので」
「だからいいあるよ」
 日本妹だけでなく中国妹もそうだと話す。
「本当に素晴らしい飲み物です」
「しかも今は安いある」
 かつては非常に高価だったが今は違うというのだ。
「ですからどんどん飲んで下さい」
「何度も言うあるが遠慮は無用あるよ」
「そういえば山下長官ってあれよね」
 キャロルも茶を貰ってそのうえで言う。
「茶道免許皆伝よね」
「華道も日舞も書道もです」
「凄い人なのね」
「しかも漢籍や英文にも通じておられます」
「で、武道もよね」
 剣道に柔道、居合に合気道に空手で免許皆伝だ。
「凄い人じゃない」
「まさに文武両道の方です」
「能力は高いのね」
 キャロルは山下の先程のことを思い出しながら話した。
「ううん、けれどね」
「余裕がないわね」
 ハンナは山下の難点を既に見抜いていた、そのうえでの言葉だ。
「それが問題ね」
「余裕がないですか」
「ええ、生真面目に過ぎるわね」
 こうも言うハンナだった、山下を冷静に見て言うのだった。
「それに海軍への対抗意識が強いわね」
「あの、前から思っていましたが」
 今度はリンファが言う、リンファもお茶を飲んでいる。
「日本帝国軍は何故海軍と陸軍に分かれているのですか?」
「そのことですね」
「それが不思議だったのですが」
「建国の時からでして」
 遥か彼方からのことだった、このことは。
「帝、そして国家と国民を宙で護るのが海軍でして」
「惑星が陸軍ですか」
「そう決められていまして」
 そのうえでだというのだ。
「柴神様もそれでいいと仰っています」
「対立しませんか?」
「っていうか実際にしてない?」
 キャロルは少し懸念している感じだった。
「軍で亀裂が出来たらまずいわよ」
「それはその」
「というかね、普通海軍だけでしょ」
 キャロルは日本帝国軍の立場に己を置いて考えてみてそのうえで日本妹に対して言った。
「陸軍は海軍の下にあって」
「他の国で言う陸戦隊ですね」
「それになるでしょ、普通は」
「我が中帝国でもそうです」 
 リンファがまた言う。
「それは」
「そうそう、分かれていたらよくないと思うけれど」
「それでいいいというのは」
「かなりわからないけれど」
「何でも。国家を護る両輪が必要だと」
 日本妹は柴神の言葉をキャロル達に紹介した。
「それで、ということらしいです」
「ううん、そうなの」
「それでなのですか」
「それが柴神様のお言葉です」
「だったら他国のあたし達が言うことじゃないけれど」
「内部での衝突は止めて下さいね」  
 キャロルとリンファは自分達の懸念を日本妹に話した。
「これからアステカに連合国との戦いがあるから」
「内から崩れたらどうしよもないですから」
 他国から見ても日本帝国においての海軍と陸軍の関係は気になることだった、そうした話をしているうちに時は過ぎていく。 
 遂に一時間経った、五時になってだった。
 部屋の扉が開いた、ここでようやく話が動くのだった。

TURN81   完


                          2012・1・12




殆ど何も動きがなかったな。
美姫 「伊勢志摩らしいかもね」
夫婦喧嘩の仲裁から昼寝になってしまったからな。
美姫 「東郷とかならのんびりと待ってそうだけれどね」
流石に他の人たちはそれぞれに違う過ごし方をしたみたいだな。
美姫 「で、約束より一時間が過ぎてようやくね」
だな。次回で夫婦喧嘩は決着するのだろうか。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。



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