『ヘタリア大帝国』




                 TURN80  スペインとの交渉

「総統の復活は有り難い」
「と、津波様が申しております」
 久重がいつも通り津波の傍から彼女の代弁をして東郷と日本に話している。
「お陰で艦艇の開発がさらに進みそうだ」
「今我々は第六世代の艦艇を使っていますが」
「八だ」
 津波は久重の口から日本に答えた。
「第八世代の艦艇を開発、建造出来そうだ」
「第八世代ですか」
「旗艦大和に山本長官のものになった長門もだ」
 日本帝国の誇るこの二隻の戦艦達もだというのだ。
「第八世代の性能に出来る」
「それは有り難いな」
 東郷もこのことは笑顔で歓迎する。
「性能は高いに越したことはない」
「大和はノイマン長官がシステムのバージョンアップを行い性能が上がっているがな」
「それに加えてか」
「そうだ、さらに強くなる」
 今でさえ枢軸最強の戦艦であるがだというのだ。
「それに艦艇の開発、製造費もだ」
「安くなるか」
「あの総統の開発、製造計画は完璧だ」
 レーティアの天才はそこにも発揮されているのだ。
「合理的、効果的になりだ」
「より多くか」
「アステカ帝国との戦いまでに第八世代の艦艇は用意できる」
 そしてだった。
「下図も精鋭艦隊の分は用意できる」
 東郷が率いる枢軸の名のある提督や国家達の分だ。
「かなり凄い艦隊になる」
「ソビエトやエイリスの第六世代の艦艇にも勝てるか」
「かなり凌駕出来る、無論ドクツの艦艇にもだ」
「凄いな、流石はレーティア=アドルフ総統だな」
「しかもです」
 内相に就任している五藤ミサキも言ってくる。
「その政策プランですが」
「それも違うか」
「素晴らしいです、総統の政策通りにいけば」
「どうなるんだ」
「太平洋経済圏は毎年二桁の成長率を達成できます、しかも」
 それに加えてだった。
「インフラや資源の採取も飛躍的によくなりますし」
「ドクツの様にだな」
「僅か二年で復活し世界の大国になったドクツの様に」
 まさにそうした感じでだというのだ。
「太平洋は成長できます。それに総統のアドバイスで太平洋共同体の議会も設立されることになりました」
「議会もか」
「勿論共同の統治システムや国家元首も定められます」
「国家元首は誰だ、最初は」
「まずは我が国の帝です」
 彼女が務めることになったというのだ。
「二期八年務められ二代以降の元首は選挙で選ばれるとのことです」
「ファンシズムなのによくそこまで考えられたな」
「ファンシズムはドクツ復活に必要だったとのことです」
 そして太平洋及びインド洋にはというのだ。
「この地域には民主主義の方がいいだろうと」
「かなり色々な人間がいるからだな」
「はい、そうです」
「成程な。あの総統のお陰で枢軸は一変するな」
「まさに別の組織の様に。ただ」
 ここで五藤は将来のことを考えて顔を曇らせてこう言った。
「あの方がドクツに戻られると」
「ドクツは開戦直前より遥かに強大な国になるな」
「欧州を纏め上げる超大国になると思います」
「太平洋連合に対抗出来るまでの大国になるな」
「敵になると恐ろしい相手になります」
 味方になった時とはうって変わってだというのだ。
「何しろ資源の発見にも恐ろしい才能を発揮されています」
「物凄いものが見付かった」
 津波がまた久重の口から話す。
「日本帝国の星域に太平洋全域を数百年も養える様な膨大な資源を持ったアステロイド帯や惑星が見付かった」
「えっ、本当ですか!?」
 日本は津波の今の話に瞬時に表情を変えて問い返した。
「初耳ですが」
「実は私達はここに来る直前にわかった」
「それで祖国さんにお話しに来たのです」 
 津波と五藤が東郷達のいる海軍司令部に来たのはそれが為だったのだ。
「総統から話を聞いて確認してだ」
「それで来たのです」
「実はね」
 今度はララーが出て来て言ってきた。
「あたしが何かありそうだって思ったらね」
「そこにあった」
「そういうことですか」
「うん、そうなの」
 ララーのヤマカンにレーティアの才能が合わさってのことだった。
「ただ、あたしが見付けたのは入り口だけでそれだとちょっとしか採れなかったの」
「全て見付けられたのは総統です」 
 五藤がここでまた話す。
「日本は一躍資源大国にもなりました」
「ガメリカや中帝国にその面でもひけを取らないまでに
 津波も言う。
「そこまでになりました」
「凄いことにな」
「いや、本当に凄いです」 
 実際にこう返す日本だった。
「まさか私が資源大国になるとは」
「祖国さんにとっても夢みたいなお話ですね」
「全くです」
 その通りだというのだ。
「そしてこれで太平洋はさらに」
「全体の力が上がりますね」
「総統のお陰で格段に強くなっていますね
「これまでは十としますと」
 それがだというのだ。
「三十位になります」
「三倍ですか」
「しかも貧富の差がかなり少ない国に」
「なりますか」
「まさにそうなります」 
 五藤の声も上気していた。そして津波も言う。
「それに私の夢も適うことになった」
「あの戦艦か」
「そうだ、人工知能で動く戦艦」
 それこそはだった。
「夕霧が就航出来そうだ」
「今度は人工戦艦か」
「アステカ帝国との戦いに間に合うかは微妙だが」
「それでもだな」
「そうだ、しかも四番艦まで就航出来る」
 一隻だけでなく他の艦もだというのだ。
「大きい、本当に」
「何もかもが大きく変わってきているな」
「その通りだ。やはりあの総統は人類史上最高の天才だ」
 それに他ならないというのだ。
「その復活が太平洋を一変させた」
「これまではただ大国が集まっただけでしたが」
 寄り合い所帯に過ぎなかった、それがだというのだ。
「しっかりとした組織になりそうですね」
「あの総統の力でな」
 津波は日本にも話す。
「真の意味での勢力になった」
「私もそう思います」
「これで普通の艦隊にも第六世代の艦艇を回せるな」
 東郷はこのことについても考えを及ばせた。
「これでな」
「そういえば今は満州とインド洋方面に防衛戦力を集結させていますね」
 五藤もこのことを知っていて話す。
「満州は伊藤首相と山本副司令が指揮にあたられ」
「インド洋の方は柴神様とギガマクロ酋長だ」
「その方々を軸として護りを固められていますね」
「ああ、そうしている」
「山本さんはアステカ戦には参加されないのですね」
「本当は参戦して欲しいがな」
 だがそれでもだというのだ。
「それが難しい」
「お身体のことですか」
「今度攻略戦に参戦したら今度こそ、そんな気がする」 
 東郷は直感としてこのことを感じ取っていた。
「だからな」
「それでなんですね」
「爺さんに死んでもらうと寂しいからな」
 これは東郷だけでなく日本軍全体で感じ取っていることだ。
「だからな」
「それでなんですね」
「防衛艦隊に入ってもらっている」
 そうだというのだ。
「そういうことだ」
「わかりました。私も山本さんにはまだまだいて欲しいです」
 笑顔で言う五藤だった。
「あの人とまた一緒に飲みたいですし」
「ははは、爺さんは酒も好きだからな」
「お酒に博打にですね」
「可愛い娘も好きだからな」
「不思議とそれで嫌味がないんですよね」
「屈託や陰がないからな。それにあっさりとしてる人だ」
「だからいいんですよね」
 五藤もそれがよくわかっている。
「私もよくお尻を触られますけれど」
「俺もそうだがな」
「若し樋口提督だったら」
 あの悪名高き人物はだと、五藤は彼については眉を顰めさせてそのうえでこう言う。
「最悪です」
「あいつは出ているからな」
「はい、下卑たものが」
 それで樋口の場合は問題なのだ。
「だから駄目ですね」
「本当にな。しかしこれから太平洋はどんどん変わるな」
「日に日によくなっていきますよ」
「ありとあらゆることに才能を見せる天才、噂以上だな」
「はい、本当に」
 五藤も笑顔で言う、レーティアの復活は太平洋を一変させた。
 フランスもスペインを待っている間にその話を聞いた、そしてこう言うのだった。
「俺達が伊勢志摩に向かっている間に随分とあったんだな」
「その様ですね」
 シャルロットも応える、二人でそれぞれの携帯に入っているフランス妹からのメールを受け取って事情を知ったのだ。
「あの総統さんの復活にな」
「それに日本帝国の資源に」
「太平洋議会か」
「立法府、行政府も出来て」
 そしてだった。
「政策も画期的なものが次々と出され」
「太平洋の主まで決まるなんてな」
「太平洋は一変しますね」
「ああ、本当にな」
 まさにそうなる、フランスはシャルロットに答えた。
「兵器も第八世代か」
「開発、製造の費用も飛躍的に低くなり」
「本当に変わるな」
「今よりも遥かに大きな勢力になりますね」
「あの総統さんはやっぱり天才だよ」
 フランスはかつての敵であり今は戦友である彼女の話をした
「ここまで出来るなんてな」
「そうですね。本当に」
「こりゃドクツに戻ったら凄いな」
「ドクツはさらにですね」
「とんでもない国になるぜ」
「欧州の盟主になるでしょうか」
「なるだろうな。その時はソビエトもエイリスも叩かれてるからな」
 あくまで枢軸が勝った場合の話だ。
「ドクツがそうなるな」
「総統が戻ったドクツが」
「そうなる、確実にな」
 こうした話になる、そしてだった。
 フランスはシャルロットに自分達のことも話した、そうなった場合の彼等を。
「オフランスは残念だけれどな」
「ドクツの後塵を期しますね」
「そうなるな」
 確実にそうなるというのだ。
「残念だけれどな」
「そうですね、やはり」
「仕方ないな。相手が悪過ぎる」
 フランスは携帯を収めて両手を己の頭の後ろで組んでソファーに背中をもたれかけさせてぼやきを口にした。
「本当にな」
「レーティア=アドルフ総統は」
「あそこまでの天才は味方なら凄いさ」
「しかし敵になると」
「マジノ線は序の口だったよ」
「あのまさかの敗戦も」
「あのお嬢ちゃんの力はあんなものじゃない」
 その天才は底知れないものだというのだ。
「今だってな」
「その才の全てを出していない」
「そうだろうな。太平洋を段違いにしてもな」
「まだ才能は底がありますか」
「その全てはドクツにおいて発揮されるな」
 彼女の力は必然t的に愛する祖国でこそ全てが発揮される、そうなるというのだ。
「怖いぜ、相手にしたら」
「オフランスは戦うべきではありませんか」
「俺は戦わないで済む場合は戦わないんだよ」
 フランスは愚かではない、その辺りの見極めもしっかりしているのだ。
「だかから」
「それはですね」
「しないでおこうな」
「わかりました、では私も」
 シャルロットもフランスのその言葉に頷く。
「オフランスの為に」
「ドクツと揉めるよりもな」
「融和ですね」
「あの娘は話はわかるしな」
 幸いだ。しかも平良や福原の様に話はわかるがそこからおかしなベクトルに向かう傾向もレーティアにはない。
「だからな」
「協調路線ですか」
「その頃の欧州は欧州だけになってるからな」
「エイリスもアフリカの植民地を失い」
「ソビエトも向こうについてるか?」
 太平洋にだというのだ。
「連中が人類の八割位の力を持ってるかもな」
「八割ですか」
「欧州は辺境になってるからな」
 これまでは欧州が人類社会の中心だった、だがそれがだというのだ。
「あの手を抜かない総統の力もあって太平洋は凄くなるからな」
「そしてその総統が戻ったドクツが軸となる欧州では」
「オフランスも生きるからには」
「ドクツと協調ですか」
「こいつ等みたいにな」
 ここでフランスはイタリアとユーリを見た。
「まあそうなるな」
「欧州全土がですね」
「全部この戦いに勝ってからにしてもな」
 そうなるというのだ。
「まあ。生きる為には当然だな」
「その中にはエイリスも入りますね」
「絶対にな。あいつもな」
 フランスは今度はイギリスのことを思い浮かべながら言った。
「意地を張ってばかりっていうのもな」
「よくないですか」
「植民地のないあいつは正直な」
「欧州の大国ですね」
「ああ、大国は大国でもな」
 最早世界帝国ではなくなる、そうなるというのだ。
「そうなるからな」
「ですか。それにしても」
 シャルロットはフランスとここまで話してそのうえでまずは顔を上げて嘆息した、そして己の祖国にこう言った。
「この戦争で欧州が失うものは大きいですね」
「あの連中がこれからでかい顔をしていくな」
 フランスは今回は日本にアメリカ、中国の顔を思い浮かべた。
「あとインドか」
「何気に凄い顔触れですね」
「俺もそう思う、それでだけれどな」
 フランスはまたイタリアを見た、見れば彼は気持ち良さそうに寝ている。
「こいつは本当によく寝るな」
「シェスタですね」
「それ好きだよな」
「それはスペインさんもですね」
「あいつもまだ寝てるんだろうな」
 フランスも言いながらコーヒーを飲みスイーツを口にしている。
「気楽だな。っていってもな」
「フランス殿は祖国殿をいつも可愛がってくれますね」
「だから嫌いじゃないんだよ」
 起きているユーリへの言葉だ。
「イタリアもロマーノもな」
「そうですね」
「昔からな。すげえ弱いけれどな」
 最早その弱さは伝説だ。
「こっちにいても戦力としては計算できないさ」
「申し訳ありません」
「いいさ。戦争はしないに限るからな」
 頭を下げるユーリをすぐにフォローする。
「大体イタリアは外交だからな」
「確かに。昔から我が国は」
「だと?あちこちばらばらだった時、いやローマの爺さんの頃に培われたな」
「あのローマ帝国に」
「あの爺さんあれで人付き合いも上手だったんだよ」
 ただ強く戦いたいだけの国ではなかったというのだ。
「そっちでも才能があってな」
「その血を祖国殿とロマーノ殿も受け継いでおられるのですか」
「そうなるだろうな、強さは妹さん達にいってな」
 イタリンは女の方が強い、それでそうなるのだ。
「バランスよくなってるのか?」
「そうなるでしょうか」
「まあとにかくこいつは外交なんだよ」
 またイタリアを見て言うフランスだった。
「それでスペインもな」
「外交が上手ですね」
「交渉は真剣にやらないとな」
 さもなければ成功もしないというのだ、フランスは覚悟も見せた。 
 そのうえでコーヒーと菓子を楽しみながら待っていると遂にだった、部屋にスペインが来たのだった。
「ああ、待ったか?」
「ったくよ、寝てたんだな」
「そや」
 平然として答えるスペインだった。
「四時までな」
「今四時半だけれどな」
「眠気覚ましにシャワー浴びてたんや」
 やはり平然としている。
「まあちょっと時間食うたな」
「相変わらずだな、おい」
 フランスも特に怒らず笑顔でスペインに返す。
「マイペースっていうかな」
「それでもそっちも楽しんでたみたいやな」
「食ってたぜ」
 菓子は今もテーブルの上にある。
「それにコーヒー飲んでな」
「そうしてたんやな」
「そうだよ。こっちもわかってるしな」
「イタちゃんは今も寝てるしな」
 ソファーに座ったまま気持ちよさそうに今も寝ている。
「イタちゃんらしいわ」
「そうだよな、こいつはこうでないとな」
「あかんわ。それで話やけど」
「それな。まあ座れよ」
 客のフランスがホストのスペインに言う。
「じっくりと話をしような」
「ほな今からな」
「コーヒーに食い物もあるからな」
 飲み食いしていいというのだ。
「遠慮せずにやってくれよ」
「ほなそうしてな」
 こうした話をしてスペインはフランス達と向かい合う位置のソファーに座った、イタリアもユーリに声をかけられる。
「祖国殿、スペインさんが来られました」
「ああ兄ちゃん久し振り」
 イタリアはスペインの言葉に置き目をこすりながら挨拶をした。
「元気だった?」
「ばりばり元気やで。そういえば二人共今太平洋やったな」
「ああ、色々あってな」
「今は日本のところにお邪魔してるよ」
「イタちゃん達の亡命の話は聞いてるで」
 既にだというのだ。
「あとポルコ族も結構亡命してるみたいやな」
「四個艦隊編成してるよ」
 それが太平洋のイタリン艦隊だ。
「統領さんにユーリさんに俺にね」
「ロマーノやな」
「うん、皆元気だよ」
「それは何よりや。ただあれや」
「あれって?」
「イギリスもロシアもイタちゃん達の亡命については何も言うてへんで」
 全くのスルーだというのだ。
「何かどうでもええって感じや」
「えっ、大騒ぎになってないの!?」
「全然や。統領さんの亡命も情報が出ただけで処罰された人もおらんわ」
 そこまで軽視されているというのだ。
「イタリンは平和やで」
「戦争してるのになんだ」
「一応欧州の四国の一つになってるけどな」
「妹達頑張ってるよね」
「あの娘達はな。けれどイタちゃん達はどうでもええ感じや」
 連合は相変わらずイタリンを戦力とは見ていなかった、憎んでも嫌ってもいないにしても
「欧州も今再戦準備に忙しいけれどな」
「その戦争だけれどな」
 フランスは左手を少し開いて振る素振りでスペインに話した。
「御前今中立だけれどな」
「枢軸に入れっていうんやな」
「そうだ、どうだ?」
「まあなあ。何時までも中立でいられると思ってはないしな」
 スペイン自身もそこはそう思っていた。
「声がどっからかかかると思ってたわ」
「だよな。それじゃあ」
「あれやろ。アステカとの戦争にも協力して欲しいんやな」
「もうわかってるんだな」
「枢軸とアステカの緊張の話は聞いてるわ」
「相変わらず耳がいいな」
「アステカとは付き合いもあるしな」
 だから知っているというのだ。
「あそこの皇帝っちゅうんかな」
「ハニワだよな、確か」
「ケツアル=ハニーやけどな。悪い奴やないんや」
「おかしな奴だよな」
「そうなるけどな」
 そのケツアル=ハニーがだというのだ。
「妙な理屈で枢軸に喧嘩売ってきたんやな」
「エロゲがどうとか言ってな」
「相変わらずやな。で、アステカのことも教えて欲しいんやな」
「そうしてくれるか?」
「それはええけれどな」
 枢軸につくこと自体はいいというのだ。
「ただな」
「エイリスだよな」
「あそこと戦争になるのは避けたいわ。何だかんだで強いさかいな」
 こうフランスが淹れたコーヒーを飲みながら話す。
「そこをどうするかやな」
「それな。俺考えてるんだけれどな」
「エイリスと伊勢志摩は不戦条約を結ぶんやな」
「そうしたらどうだ?」
 二人の考えは同じだった、それでフランスも言うのだった。
「こっちも新しい戦線は作りたくないしい向こうもそうだろうからな」
「ほな伊勢志摩はエイリスとは不戦条約を結んでや」
「そのうえで枢軸に入るってことでな」
 外交の抜け道を使うことでスペインを安全に枢軸に入れようというのだ。
「伊勢志摩とオフランスの宙路は非武装地帯にしてな」
「俺達はエイリスとは戦争はせえへん」
「それでいいな、じゃあエイリスと話してくれるか?」
「わかった、話はしとくな」
「そうしてくれ、じゃあ伊勢志摩は枢軸に入るってことでな」
「基本それでええけど」
 だが、だった。スペインは困った顔も見せてきた。
「わかってるやろ、今のうちはな」
「内戦中だよな」
「王様と王妃様が夫婦喧嘩してるわ」
「夫婦喧嘩で内戦か」
「そうなんや、いつも通りな」
「そっちも大変だな。それを収めてか」
「それからやな」
 枢軸に入るのはというのだ。
「内戦収めるの手伝ってくれるか?」
「ああ、わかった」
 こう言ってくるのは枢軸全体でも予想しているのでフランスはスペインの言葉にあっさりと言葉を返した。
「それじゃあな」
「頼むわ。どっちかについてな」
 王か王妃にだというのだ。
「内戦収めてや」
「夫婦喧嘩を止めてか」
「それから頼むわ。あんじょうな」
「日本達にも伝えておくな」
「そういうことでな。じゃあ話は決まったし」
 伊勢志摩の枢軸への参加はあっさりと決まった、しかしだった。
 問題はその内戦を終わらせることだった、これに関しては。
 フランスから話を聞いて日本もこう言うのだった。
「ではすぐにですね」
「ああ、伊勢志摩に出兵だな」
「そうしましょう。ただどちらにつくかは」
「どうでもいいぜ、それはな」
 王についても王妃についてもだというのだ。
「大して変わりがないからな」
「そうなのですか」
「ああ、喧嘩の理由も大したものじゃないしな」
「そもそも何故お二人は喧嘩、内戦をしておられるのですか?」
「どのワインがいいかとかフラメンコの振り付けがどうかとかな」
 そうした理由で喧嘩をしているというのだ。
「毎度毎度下らない理由なんだよ」
「よくそれで国家がもっていますね」
「喧嘩っていっても宇宙でやるしな」
「星域自体にはダメージを与えませんか」
「政治もちゃんとやってるしな」
「だからですか」
「そうだよ、伊勢志摩はそこそこ豊かだぜ」
 そうした国だというのだ、内戦はあくまで夫婦喧嘩に過ぎないというのだ。
 こうしてアステカ帝国との戦いの前にまずは伊勢志摩に向かいそしてそのうえで内戦を終結させることになった。だが。
 その話を聞いたドイツは難しい顔になりこう言うのだった。
「全く。下らない理由で内戦をする国だな」
「おいおい、今度はスペインに怒るのかよ」
 プロイセンがそのドイツに言う。
「相棒は相変わらずだな」
「確かに困ったことですが」
 オーストリアは至って冷静である。
「そこまで怒ることではありません」
「そうだよ、スペインらしいだろ」
 プロイセンはスペインにも優しく笑顔でこう言うのだった。
「だろ?それでいいじゃねえかよ」
「相棒はイタリアにだけ優しい訳ではなかったか」
「ああ、スペインも好きだしな」
 プロイセンもそのことを否定しない。
「好きだぜ」
「好きなのはいいが」
「甘やかすなっていうんだな」
「それが過ぎる、だからだ」
「逆に相棒が厳し過ぎるんだよ」
 プロイセンもプロイセンで言う。
「イタちゃん達もな」
「あまり言うなというのか」
「そうだよ、もっと優しくな」
「そういえばオーストリアもだな」
 ドイツはオーストリアも見て言う。
「イタリア達には優しいな」
「悪い子達ではないので」
 だからだというのだ。
「注意はしますが」
「その注意もあまりしないな。それにスペインはか」
「長い間パートナーでしたので」
 同じ上司の家だった縁である。
「よく知っていますし言うことはないと思います」
「全く、だからか」
「はい、そうです」
「言うものだな。しかし伊勢志摩出兵は決まった」
 既にその準備にも入っている。
「それからアステカだ」
「アステカなあ。そういえば中々向こうから攻めてこないな」
 プロイセンはふとこのことに気付いた。
「これがな」
「そうですね。如何にも攻めて来るという感じで」
 オーストリアも言う。
「中々」
「何でだろうな」
「どうやらずっと儀式をしているらしい」
 ドイツが二人にアステカが攻めて来ない理由を話した。
「アステカの奇妙な儀式をな」
「そういえばエロゲがどうとかいつも言ってるな」
 プロイセンも言われてこのことに気付く。
「あれだな」
「それに専念していてだ」
「まだ攻めて来ないんだな」
「どうやらあの国は戦争よりも宗教的儀式を優先させるらしい」
 もっと言えば祭りをというのだ。
「だからだ」
「おかしな国とは聞いていましたが」 
 オーストリアもその話を聞いて微妙な顔になる。
「それはまた」
「そうですね。変わった国ですね」
 ハンガリー兄も出て来た、そして言うのだった。
「戦争を仕掛けて来たのは向こうなのに」
「というかよ、ハニワって何だよ」
 プロイセンはそもそも彼等を妙に思っていた。
「訳わからねえんだけれどな」
「俺に聞かれてもわからない」
 ドイツも難しい顔で返す。
「どうもな」
「そうか、相棒でもか」
「スペインが詳しいらしいが」
 ドイツはよく知らないというjのだ。
「俺は中南米については殆ど何も知らない」
「洒落にならない位宇宙怪獣もいるらしいな」
「それもよく知らない」
 それについてもだというのだ。
「どうもな」
「まあ明石大佐からの情報もあるしな」
 それにだった。
「スペインも来てくれるからな」
「ある程度はわかる。ではだ」
「ああ、まずは伊勢志摩だな」
「そこに向かう」
 ドイツ系の面子がこんな話をしていた、だが。 
 ハンガリー兄はここでこうも言った。
「ところで僕何か急に出て来た感じですね」
「そうだよな。ずっと予備戦力だったからな」
「バルバロッサにはいざという時に出撃する予定でしたが」
 そのいざという時が来た、しかしだったのだ。
「総統が倒れられたので」
「決断をする人間がいなくなってだな」
「それで出番がなかったんですよね」
 こうドイツにも言う、残念そうな顔で。
「いや、本当にやっと出られましたよ」
「アメリカの北にある国みたいになるなよ」
 プロイセンは笑ってこうそのハンガリー兄に言った。
「何とかいう国みたいにはな」
「そうした国もありましたね、そういえば」
「ああ、何とかいったよ」
 国の名前はプロイセンもハンガリーも知らない、カナダの存在感のなさは今も全く変わることがない。ドイツ達の間でも。
「その国みたいにな」
「なっては駄目ですね」
「今回の出兵にも参加するんだよな」
「そうじゃないんですか?」 
 ハンガリー兄のプロイセンへの返答は曖昧なものだった。
「やっぱり」
「そうか」
「はい、多分」
 こうした話もする、そしてだった。
 彼等は共に伊勢志摩に向かって出撃した。この国を枢軸に迎え入れる為の戦いもいよいよはじまろうとしていた。
 エイリスはその伊勢志摩と何なく不戦条約を結んだ、イギリスはロンドンにおいてスペインにこう言っていた。
「まあそういうことでな」
「ああ、俺はエイリスとは戦わへんで」
「ならいいけれどな」
 つまりドクツなりソビエトなりとは存分に戦えというのだ。相変わらずお互いを信用せず協調性のない連合国である。
「こっちはな」
「ほな伊勢志摩とパリの宙路は非武装地帯や」
「こっちからは絶対に攻め込まないから安心しろ」
 そしてこうも言うイギリスだった。
「そっちにも直接な」
「直接?」
「あっ、何でもないさ」
 イギリスは今言った言葉はすぐに打ち消してないことにした。
「気にするなよ」
「そうなんかいな」
「とにかく俺は約束は守るからな」
 これは絶対にだというのだ。
「そうするからな」
「そういえば御前条約は自分から破らへんな」
「そういうことは嫌いなんだよ」 
 だからしないというのだ。
「安心していいからな」
「勿論俺からも攻めへんで」
 スペインも言う。
「安心したらええや」
「ああ、こっちに何もしないのならいいさ」
 あくまでそれは割り切っているイギリスだった。
「それじゃあそれでな」
「ほなそれでな」
 こうして二国の不戦条約は結ばれた、スペインは伊勢志摩に戻りイギリスも応急jに戻った、彼は応急に戻るとエルザにこう言われた。
「伊勢志摩は枢軸に入るけれど」
「ああ、それでもな」
「こっちには攻めないということね」
「それで話は決まったからな」
 安心していいというのだ。
「ただ。危うくあの宙路のことを言いかけたからな」
「それは気をつけてね」
「ああ、済まない」
「あの宙路のことはまだセーラちゃんにも言ってないから」
「そろそろ言うか?今の女王さんにも」
「もう少し先ね」
 今ではないというのだ。
「時が来ればね」
「エイリスがどうしようもなくなった時か」
「その時にね」
 話せばいいというのだ。
「焦ることはないわ」
「どちらにしても知ることになるか」
「だからね」
 今すぐでなくていいというのだ。
「あれは我が国の最後の切り札だから」
「迂闊には話せないな」
「セーラちゃんでもね」
 女王である彼女でもだというのだ。
「あくまで今はね」
「俺とエルザさんだけの秘密か」
「そうとね」
「モンゴメリー提督だよな」
「三人だけよ、まだね」
「わかったさ、それじゃあな」
「今はセーラちゃんにも内緒よ」
「そういうことだよな」
 こうした話をしてだった、彼等は今はあることを秘密にしたままにした。イギリスはそのうえでエリザにこのことも尋ねた。
「戦争準備はいいとしてな」
「何かあるのかしら」
「いや、植民地の総督連中な」
 アフリカにいる彼等がどうかというのだ。
「東南アジアやインドと同じでな」
「腐敗しているわね」
「特に南アフリカにスエズか」
「どっちも酷いらしいわね」
「ああ、らしいからな」
「少しスエズに行ってみようかしら」
 こうも言うエルザだった。
「そしてね」
「腐敗の状況を調べるんだな」
「そう考えているけれどどうかしら」
「それならあいつ連れて行ってくれるか?」
「妹さんを?」
「ああ、あいつをな」
 他ならぬ彼女をだというのだ。
「そうしてくれるか」
「ええ、いいわよ」
 エルザも気兼ねなく己の祖国に返す。
「それじゃあね」
「太平洋の連中が大人しいうちにな」
 まさにその間にだというのだ。
「視察しないとな」
「南アフリカ方面にはマリーちゃんも言ってるけれどね」
「妹さんも頑張ってるよな」
「マリーちゃんもあれで真面目なのよ」
 母として笑顔で言えることだった。
「お姉さんには色々言うけれどね」
「いい娘だからな」
「そうでしょ。祖国さんにも懐いてくれてるし」
「赤ん坊の頃から知ってるけれどな」
 二人の縁もかなり深い。
「やっぱりいい娘だよ」
「祖国さんは私が子供の頃から、いえ」
「エイリス王家の最初からいるけれどな」
「ずっとよくしてもらってるね」
「国家だからな」
 エルザには屈託のない笑みも見せる。
「それも当然だからな」
「いつもそう言ってくれるしね」
「妹もいるし頼りにしてくれよ」
「エイリス王家は孤独にあらず」
 実際に言われていることだ。
「臣民、そして祖国と共にあるからこそ」
「そういうことだからな」
 イギリスはその笑顔でエルザに話す。
「困った時は何時でも頼ってくれよ」
「そうさせてもらうわ」
「じゃあ今丁度な」
「お茶の時間ね」 
「飲むか」
 その紅茶をだというのだ。
「お菓子も用意してな」
「今日のお菓子は何かしら」
「上はクッキーでな」
 まずはこれだった。
「真ん中はエクレアだよ」
「それで最後はケーキね」
「ロールケーキな」
 ケーキはケーキでもそれだった。
「それと切った苺だよ」
「スコーンとかとは趣向を変えたのね」
「今日はちょっとな」
 そうしてみたというのだ。
「女王さん達も呼んで楽しくやるか」
「皆で楽しんでこそだからのティータイムだからね」
「一人で飲んでもな」 
 これはお茶だけに限らず酒でもだ。
「あまり面白くないからな」
「そうそう、私はいつも祖国さん達がいるから」 
 エルザも笑って応える。
「いつも楽しいティータイムが過ごせるのよ」
「俺もだよ。何しろ国家としてはずっと一人だったからな」
「フランスさんは?」
「ああ、あいつな」
「何だかんででいつも一緒にいたけれど」
「ったく、星域が戻ったのにな」
 イギリスの言葉にぼやきが入る、顔にもそれが出ている。
「あいつも妹さんも戻らないなんてな」
「そのまま枢軸に残っているわね」
「連合に戻れるんだよ、あいつと妹さんは」
 二人はだというのだ。
「アメリカだの中国と違ってな」
「星域が解放されて上司の人もパリに戻ったから」
「それで戻らないのはな」
「少しね」
「ああ、残念だな」
 こう本音を言うイギリスだった。
「正直に言うとな」
「イタリアちゃん達も向こうに行ったし」
「あいつ等もな。実は嫌いじゃないからな」
「祖国さんイタリアちゃん達についてはそうよね」
「弱いけれどな」
 戦力としてはあてにならない、だがだというのだ。
「それでもな」
「愛嬌があって憎めないのね」
「そうなんだよな。まあこれからはな」
「欧州の連合ね」
「それでやっていくか」
「そうね」
 そうした話をしてティータイムを楽しみに向かう二人だった、イギリス妹にセーラ達を加えたそれは楽しいものだった。


TURN80   完


                         2012・1・10



レーティアの復活によって、軍備は元より太平洋経済圏の活性化までが。
美姫 「本当に逸材よね」
だよな。ともあれ、東郷たちの次の目的地はアステカか。
美姫 「かなり謎めいた惑星よね」
どんな展開が待っているのやら。
美姫 「一方でエイリスの方も何とか出来る事をしようとしているし」
さてさて、これからどう勢力図が書き換わっていくのか。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。



▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る