『ヘタリア大帝国』




                   TURN78  ファーストデート

 エイリスはドクツとjの講和を終えて今は戦力の再編成に専念していた。イギリスはその中でロレンスから枢軸側の事情を聞いていた。
「アラビア、それにマダガスカルにか」
「はい、艦隊を集結させています」
「百個艦隊もかよ」
「満州jにもその程度置いています」
「あっちは人口が違うからな」
 そこから編成される軍の規模もだった。
「それ位は出せるな」
「インドだけでもかなりですが」
「中帝国やガメリカも向こうにいったしな」
「そこにインドネシア等も入りますので」
「出そうと思えばそれ位は平気に出せるか」
 イギリスもその数から言う。
「百個艦隊位はな」
「しかもその二百艦隊で全てではありません」
「後方にはまだまだいるんだな」
「どうやら五百個艦隊はいる様です」 
 今の枢軸全てであった。
「そうおいそれとは攻められないかと」
「そうだな。ここは慎重にいくか」
 イギリスは話を聞きながら言った。
「こっちから積極的に攻めないでな」
「隙を伺うか機を待つべきかと」
「女王さんにも話しておくか」
「そうしましょう。インド洋方面には柴神が総司令官としていますし」
「あの神様なあ。何回か会ってるけれどjな」
 それでもだというjのだ。
「よくわからない神様だよ」
「祖国殿とあの神は長いお付き合いでしたね」
「俺達八人、ロマーノとかプロイセンも入れて十j人な」 
「所謂原始の八国ですね」
「出て来たらもういたんだよ」
「祖国殿が生まれられたらすぐにですね」
「ああ、いたんだよ」
 ロレンスにその頃のことを話す。
「最初からな」
「原始からおられるのですね」
「そうなんだよな、何者だろうな」
「神にしても」
 それはわかるがそれでもだというのだ。
「素性は不明ですか」
「こっちの世界にいるんだよ。しかしな」
「しかしとは」
「何かを必死に隠してる気がするんだよな」
 この辺りは直感として感じていた。
「妙にな」
「隠しているとは」
「それがかなり重大なものみたいでな」  
 それでだというのだ。
「本当にわからないんだよ」
「聞けませんか」
「ああ、無理だな」
 そうだというのだ。
「あの神様に聞くのはな」
「しかし何かを隠していますか」
「それは間違いないな」
「その辺りが気になりますね」
「俺達国家は国民が国家っていう意識を持ったら生まれるんだよ」
 それで原始の八国も生まれたというのだ。
「そうなったんだけれどな」
「柴神は最初からいましたか」
「俺達は人類jの誕生とほぼ同時に生まれたんだよ」
 その彼よりも前にいたのが柴神だというjのだ。とにかくかなり古い存在であることは間違いがなかった。
 イギリスはそれ故にかと予想を立てた。
「この世界のはじまりとかのことか?」
「それを知っているというのですか」
「そうじゃねえかな。まあとにかくな」
「はい、今はですね」
「戦力の再編成が出来てもな」 
 それでもだというのだ。
「暫くは様子見だな」
「そうしますか」
「隙を見せた時かこっちに何かが出来た時にな」
「攻めますか」
「そうしましょう」
 こうした話をした彼等だった、そして。
 彼等は枢軸側の戦力を見ながら自分達もい戦力の再編成に入っていた、戦いは今は干戈を交えていないだけで続いていた。
 その枢軸側は今は連合国よりもアステカが相手になっていた。テキサスに参加する戦力が揃っていた。
 その顔ぶれは錚錚たるものだった、ダグラスもその艦隊と提督達の顔触れを見てそのうえでこう言うのだった。
「これはまた凄いな」
「はい、主な国家と提督が集結しています」
 枢軸のだというのだ。
「満州方面の総司令官になられた日本の伊藤首相とインド洋方面の柴神さん以外の主な国家と提督がこのテキサスにいます」
「そうだな、規模にして七十個艦隊を超えるしな」
 ダグラスは艦隊も見ながらクーに話す。
「こんな凄い規模の軍ははじめて見たぜ」
「はい、ただ」
「ああ、油断は出来ないな」
「アステカ帝国の状況もわかりましたが」
 明石の調査によってだ。
「その規模は侮れません」
「ハニワ艦隊に一般の艦隊だな」
「宇宙怪獣も多く棲息しています」
「特に何だこいつは」
 ダグラスはクーから手渡されたそのファイルにあるものを見て言った。
「幻獣ハニーか」
「アステカ帝国の首都アマゾンにいるそうですが」
「わからない奴だな。これはまた」
「そうですね。私もその幻獣はよく知らないのですが」
 それでもだというのだ。
「どうやら大怪獣jに匹敵する力を持っています」
「大怪獣か」
「エアザウナの巣もアマゾン近辺にあるとのことなので」
「あいつとの戦いもあるかもな」
「アステカ帝国との戦いはかなり苦しいものになる可能性もあります」
「そうだな」
「はい、ですからこれだけの艦隊でも」
 油断ならないというのだ、そうした話をしてだった。
 ダグラスは出撃準備に余念がなかった、その彼に今度はハンナとアメリカ妹がこんなことを
言ってきた。
「アステカ戦より前に伊勢志摩に行くことになりそうよ」
「あそこにね」
「伊勢志摩?確かあそこは内戦中だったな」
「ええ、そうよ」
「そこに行きそうだよ」
「伊勢志摩をこっちに取り込むのか?」
 ダグラスはこう言った。
「そうなるのか?」
「ええ、伊勢志摩はアステカと縁が深いわね」
「国交があったな」
「アステカと数少ない交流があった国よ」
「それでそjの伊勢志摩をか」
「こっちに取り込むのよ。ただね」
 ここでこう言うハンナだった。
「今の伊勢志摩ではこちらに入ってもらうにしてもね」
「ああ、内戦中じゃな」
「それ以前ね。それでなのよ」
「内戦に介入して終わらせてか」
「こっちに入ってもらうのよ」
 そういう考えだというjのだ。
「さっき外相会議でそうした話が出ていたのよ」
「わかった。俺はそれでいい」 
 ガメリカ大統領としての言葉だ。
「仲間が多い方がいいからな」
「ええ、プレジデントは賛成ね」
「国家元首としての言葉だと思ってくれ」
「わかったわ。ただ」
「ただ。何だ?」
「あの国が枢軸に入ったらエイリスが五月蝿いわね」
「そういえばエイリス軍は今オフランスにもいるな」
「そこから攻めて来られたら戦線がまた増えることになるわ」
「それが厄介だな」
「ええ、それは避けたいところよ」
 こう言うのだった。
「そこが難しいところね」
「智恵が必要だな」
「その辺りは明日の外相会議で話すわ」
「終わったら俺に報告してくれ」
「わかってるわ。まあアステカ侵攻は暫く先ね」
 そうなるというのだ。
「伊勢志摩以降よ」
「わかった、じゃあな」
「そういうことでね。それと」
「あの娘だけれどね」
 アメリカ妹も言ってくる。
「まだ駄目だよ」
「レーティア=アドルフか」
「艦隊も用意できてるんだよ」
 レーティアが指揮する艦隊がだというのだ。
「もうね。人員もいるよ」
「ドクツからの亡命者か」
「ベートーベン提督も来たしね」
 彼等はスイス経由で亡命してきた。
「人はいるんだけれどね」
「それでもか」
「ああ、あの娘がね」
 そjのレーティアがだというのだ。
「どうもね」
「あのままか」
「そこが難しいんだよ」
 アメリカ妹も言う。
「あの娘がなあ」
「正直に言うがな」
 ダグラスはこう前置きしてからレーティアについて言った。
「あの娘は今やこっちの鍵だからな」
「そうね。あの天才ぶりが戦略にも戦術にも発揮されることになるわ」
 ハンナも何故彼女が鍵になるかわかっている。
「科学技術にも経済にもね」
「あの娘が本領を発揮すれば太平洋は今の倍以上の力になるからな」
「はい、あの人は経済学の権威でもあります」
 クーも言う。
「ですから太平洋経済圏もさらによくなりますが」
「けれど今の状況じゃね」
 アメリカ妹も難しい顔だ。
「どうにかならないかね」
「何か日本のヘルスエンジェルスが声をかけているな」
 ダグラスはガメリカの言葉で言った。
「潜水艦隊の司令官だったな」
「あっ、田中大将ですね」
 クーがすぐに言う。
「あの人がですか」
「どうなんだ?あの大将さんはレディーと付き合ったことがないな」
 ダグラスはもうそのことを見抜いていた。
「彼女は大事にしそうだがな」
「どうかしらね。何か合わない気がするけれど」
 ハンナの見立てではそうだった。
「暴走族と金髪アイドルだと」
「ああした兄ちゃんにはもっとあれだよね」
 アメリカ妹も自分のイメージを言う。
「清楚可憐な喧嘩は止めてっていうかね」
「そういう娘の方が合ってるな」
「あっちの祖国の妹さんみたいなね」
 田中にはそうした女の子が「似合うというのだ。
「そっちの方が合うね」
「そうだな、俺もそう思う」
 ダグラスもアメリカ妹と同じ見立てだった。
「あの兄ちゃんとレーティア総統は合わないな」
「まああの人が立ち直ってくれると有り難いからな」
 ダグラスは現実的な視野から言った。
「田中大将には頑張ってもらうか」
「応援するのかしら」
「そうなるな」
 ハンナにもこう返す。
「頑張って欲しいところだ」
「わかったわ。それじゃあね」
「とりあえずあの娘の復活を祈ってそれで伊勢志摩とも話をするか」
「ええ、そっちのことだけれど」
 ハンナはダグラスにあらためて伊勢志摩のことを話した、そしてだった。
 アステカ帝国との戦いの前の準備を進めていた、だが実際に攻め込むことはまだ先のことになりそうな気配だった。
 ランファもふとエルミーにこレーティアのことを尋ねた、中国妹も一緒だ。
「ねえ、総統さんだけれど」
「大丈夫あるか?」
「実は食欲もあまりなくて」 
 エルミーは困った顔でランファと中国妹に返した。
「心配です」
「だったらこっちで美味しいもの作るわよ」
「料理なら任せるある」
「有り難い申し出ですが」
 それでもだというのだ。
「どうも今は」
「中華料理も駄目なの」
「食べられないあるか」
「食事自体が喉を通らないです」
「そうなの。総統さん菜食主義っていうから色々考えてたけれど」
「無理あるか」
「すいません、ベルリンを脱出されてからずっとああで」
 虚脱状態のままだった。
「お身体のことも心配ですが」
「どうしたものかしらね、それは」
「このままだと命の危険も」
「はい、私もそれが心配です」
 やはりそうだった。
「どうにか立ち直って欲しいです」
「それでだけれど」
 ここでランファはこう言ってきた。
「今総統さんに日本帝国の田中さんが寄ってるわよ」
「彼ですか」
 ここでエルミーの顔がぴくりと動いた、そのうえでの言葉だ。
「実はそれは」
「あれっ、何か表情が変わったけれど」
「まさかと思うあるが」
「総統閣下は永遠の方です」
 エルミーは時系列から話した。
「人類世界に現れた最高の天才です」
「そうね。あれだけの人はね」
「これまでいなかったあるよ」 
 ランファと中国妹もそうだと言う。
「それにトップアイドルだしね」
「あんな可愛い娘もそういないある」
「そうです。あれだけの方に見合う方は」
 エルミーの口調は何処か熱を帯びていた。
「おられません」
「だから田中さんにも?」
「声をかけて欲しくないあるか」
「田中さんは確かにいい方です」
 このことはエルミーもお認めることだ。
「一本気で仲間思いです」
「提督として立派だしね」
「何だかんだで有能ある」
「東郷さんの後釜を狙うっていうけれどね」
「それだけの資質は備わっているあるな」
「そうです、ですが」
 それでもだと言うエルミーだった。
「あの方は英雄です」
「それも人類史上最大の」
「しかも最高のアイドルあるな」
「そうした方です。田中さんには他に相応しい方がおられます」
 エルミーの言葉にはさらに熱が入ってきていた。
「総統には誰にも」
「じゃああの人が総統さんに声をかけるのは嫌なのね」
「そうあるか」
「私は断固反対します」 
 エルミーの目は完全に心酔からくるものだった。
「何があろうとも」
「そのうえで総統さんに立ち直って欲しい」
「それがエルミーさんの考えあるか」
「あの方は必ず再び立ち上がられます」 
 エルミーはこのことも確信していた。
「私は及ばずながらその力になりたいのです」
「総統さんには忠臣がいるのは間違いないね」
「良臣と言うべきあるな」
 それが誰のことかは言うまでもない。
「あの人にはついてきてくれる人が沢山いるから」
「そのことをまた見られるかどうかあるな」
「エルミーさんみたいな人がいてくれるから」
「きっと立ち直るあるよ」
「私もそう思っています。ですから今から」
 エルミーも眼鏡の奥に情熱を込めて言う。
「あの方のところに行ってきます」
「うん、頑張ってね」
「応援するあるよ」
 二人も二人で応援していた、レーティアのことは枢軸全体の関心ごとになっていた。彼女の復活が枢軸のこれからにも関わっていた。
 エルミーはそのこともよくわかっていた、それでだった。
 今はグレシア、そしてドイツと会っていた、密室の中で珍しく本音を出していた。
「私は田中大将の行動には反対です」
「私もよ」
 グレシアもすぐにこう答える。
「レーティアに声をかけてデートをするのは」
「言語道断です」
「若し指一本でも触れたら」
 グレシアは瞬時に変装した、奇妙な仮面を付け黄金のウィッグを被り普段とは違う軍服を着てこう言うのだった。
「このハップスブルクレディが許さないわよ」
「その格好での艦隊指揮は止めてくれるか」
 ドクツが横から呆れた顔で突っ込みを入れる。
「前から思っていたが」
「こっちの方が調子が出るけれど」
 艦隊指揮の時はだというのだ。
「それでもなの」
「何というかな」
 ドイツは俯き難しい顔で言った。
「特撮ではないからな」
「祖国さんは相変わらずお堅いわね」
「堅いかどうかはともかくだ」
「この格好は駄目なのね」
「普通の姿で指揮にあたってくれ」
「本当にこっちの方が調子が出るけれど」
「それでもだ」
 ドイツはグレシアに言う。
「フォローはするから頼む」
「わかったわ。祖国さんが言うのならね」
「そういうことでな」
 グレシアは普通の格好に戻ることになった、だが言うことは変わらない。
「その時は只では済まさないわよ」
「はい、これがあります」
 エルミーはエルミーでショックガンを出す。
「死にはしませんがこれで撃てば」
「懲らしめられるわね」
「最大出力にしています」
 本気の目での言葉だ。
「いざという時は容赦しません」
「私にもこれがあるわ」
 グレシアはグレシアで今度はボウガンを出す。
「何、死にはしないわ。先は丸めてあるから」
「制裁を加えてやりましょう」
「その時はね」
 二人は何処か病んでいる感じの目で全身から青い炎を出して言っていた。そうした話をしてそのうえで田中を監視せんとしていた。
 だがその二人にドイツはこう言うのだった。
「二人共今はだ」
「アステカ帝国との戦いね」
「そのことですね」
「そうだ、伊勢志摩との交渉にも入る様だしな」
「それはこれからね」
 グレシアはドイツにそのことも言う。
「話を進めていくから」
「交渉に入られればいいな」
「そうね。スペインさんアステカに詳しいから」
「明石大佐の調査はかなり細かいものだったがな」
「知っている人が多いに越したことはないわ」 
 グレシアが言うのはこのことからだった。
「スペインさんにも入ってもらいましょう」
「アステカ以降のことも考えるとそれがいいな」
「ええ、それじゃあね」
 そうした話もしてだった、エルミーとグレシアは田中を監視していた。とはいっても田中はレーティアとデートを重ねていてもだ。
 レーティアに一切手を触れない、手を出そうとすらしない。
 横からあれこれと話を振る、しかしだった。
 レーティアは一言も返さない、虚ろな目で歩いているだけだ。 
 服も色気も何もない黒のジャージにオーバーだ。三つ編みの髪もツヤがなく表情には何の生気も存在しない。
 だが田中はそのレーティアに話を振り続けそのうえでだった。
 色々な場所に連れて行く、だが監視しているグレシアはその連れて行く場所についてエルミーに呆れた顔で言った。
「駄目よ」
「センスがないですか」
「女の子をバイクショップや魚屋さんに連れて行くのはね」
 それはもうだというのだ。
「どうにもならないわね」
「テーマパークや本屋さんにも案内していますが」
「どっちもねえ」
 グレシアは腕を組んで難しい顔で言う、二人は今は喫茶店の中で向かい合って座って話をしている。同じ店にその田中とレーティアが言う。
「今だって話題がバイクとか喧嘩でしょ」
「はい」
「テーマパークで連れて行った場所もあれでしょ。男だけが行く様な」
「そんな場所ばかりですね」
「ええ、しかもね」
 それに加えてだった。
「本だってあれじゃない。不良漫画とか雑誌で」
「そういうのも駄目ですか」
「最悪もいいところよ」
 そうだというのだ。
「彼、女の子と交際したことがないから」
「そういうことがわからないんですね」
「奥手だから何もしないのはいいけれどね」
 二人にとってはだ。
「それでも。あれはね」
「センスがないですか」
「レーティアもそうした経験がないから気付いていないけれど」
「田中さんには恋愛センスがないですか」
「絶無よ、どうにもならないわ」
「では田中さんが総統に指一本触れることは」
「ないわ」
 それは全くだというのだ。
「だからある意味で安心出来るけれどね」
「そうですか」
「しかしね。どうしたらいいのかしら」
 グレシアはあらためて言う。
「レーティアが立ち直ってくれないのは」
「どうしたらいいでしょうか」
「私にもわからないわ。ただ」
「ただ、ですね」
「絶対に立ち直ってもらうわ」
 グレシアは強い声で断言した。
「何があってもね」
「そうですね。本当に私も」
「提督、力を貸してね」
「そうさせてもらいます」
 二人はあくまでレーティアの為に動いていた、田中については安全牌だとわかったがそれでもレーティアのことはだった。
 立ち直っていなかった、虚ろなままだった。
 東郷もその彼女を見てテキサスに置いた司令部で日本にふと漏らした。
「田中は頑張ってくれているがな」
「それでもですか」
「届いていないな」
 こう言うのだった。、
「心二」
「そうですね、難しいことですが」
「俺としてもあの人には立ち直って欲しい」
 枢軸の為でもあるがそれ以上に東郷自身の思っていることだ。
「だからな」
「どうにかするべきですね」
「どうにかするものだからな」
 なって欲しいではなく、というのだ。
「こういうことは」
「そうです。しかし」
「俺達で出来ることは限られている」 
 東郷は現実も言った。
「今は特にな」
「そうです、残念ですが」
「見ているだけかも知れない」
 こうも言う。
「俺達は」
「田中さんだけですか」
「あいつ任せかもな。しかし」
「その田中さんがですね
「奥手だしそもそもだ」
 誰が見てもわかることだった、それこそ恋愛に疎い麺目以外は。
「田中にはそうした経験がないな」
「それも全くですね」
「ああ、ない」 
 初心者も初心者だというのだ。
「どうしようもないな」
「長官からのアドバイスは」
「しない」 
 それはしないと日本に即答する。
「あいつはあいつのそうしたやり方を見つけるべきだからな」
「それも難しそうですが」
「そもそもあいつは遊び人じゃない」 
 東郷と違いだ。
「生真面目に動く方だ」
「確かに。田中さんは」
「恋愛センスがない。戦略戦術はともかくな」
 田中は東郷と違いどちらかというと戦術家だが伊達に連合艦隊副司令長官にまでなっている訳ではない。
「無理だな、誰が言っても」
「そうですか」
「ここは他の要素が必要だ」
 これが東郷の結論だった。
「日本からも他の国から仕掛けてもな」
「何にもなりませんか」
「田中と同じだ、どうするべきか」
「私達だけで無理としますと」
「ドクツか」
 レーティアの愛するその国だというのだ。
「あの国しかないか」
「幸いドクツからの亡命軍人も多いです」
「かなりの数になっているな」
「はい」
 その規模は艦隊を編成出来るまでだ。
「だからだ」
「あの方々がどうされるかですか」
「そうなるな。果たしてどうなるか」
 東郷はこれからのことも考えていた、しかし悲観はしていなかった。
 むしろ彼らしく楽観して日本に言った。
「伊勢志摩の内戦に介入する場合だが」
「はい、その場合ですね」
「あの人にも参戦してもらう」
 レーティアにだというのだ。
「是非な」
「では」
「絶対に立ち直ってくれる」 
 このことを確信しての決断だった。
「まあこれは伊勢志摩との交渉次第だがな」
「スペインさんのところは複雑なままですね」
「内戦中だからな。しかしあの内戦は」
「国王と王妃の間で行われています」
「夫婦喧嘩だな」
「はい」 
 まさにそのものだ。
「それに他なりません」
「犠牲者も出ていないしな」
「そうしたやり方はしていませんので」 
 例えそれが艦隊戦であってもだ。
「安心して見ていられます」
「変わった内戦だな」
「本当に。それでスペインさんに来て頂くと」
「大きいな」
「そうですね、かなり」
「戦力的にもな。ただ問題は連合側と新しい境を接することになる」
 このことが問題だった。
「それをどうするかだな」
「そのことですね」
「スペインさんはエイリス、フランスと中立条約めいたものを結んでいるが」
「それを正式なものにすれば」
「伊勢志摩が両国から攻められることはない」
 それがなくなるというのだ。
「このことは大きいがな」
「ではそうしたことも話していきますか」
「そうするべきだな」 
 こうしたことも話された。そして。
 二人のところに秋山が来た、そのうえでこう言ってきた。
「あの、宜しいでしょうか」
「ああ、何だ」
「何かありましたか」
「夕食の時間ですが」
 言うのはこのことだった。
「こちらに持ってきましょうか」
「いや、食堂に行く」
「そうさせてもらいます」
 こう秋山に返す。
「それで食べよう」
「三人で」
「そうしましょう。そういえばです」
 ここでこんなことも言う秋山だった。
「食堂には田中大将も行っていましたね」
「一人でか?」
「いえ、お二人で」
「お相手は総統さんだな」
「そうです。あの方と」
「本当にセンスがないな」
 東郷は微かにだが呆れた顔になって呟いた。
「軍の食堂に女の子を案内するなんてな」
「?それはよくないのですか?」
 秋山もこうした意味で田中と同じだ、それで眼鏡の奥の目をしばたかせてそのうえで東郷にこう言葉を返した。
「女の子を食堂に連れて行くのね」
「この男も駄目だからな」
 東郷は日本に顔を向けて言う。
「食事はちゃんとした場所に連れて行くんだ」
「軍の食堂ではなく」
「軍の食堂は風情がない」
 だから駄目だというのだ。
「レストランやバーならともかくな」
「軍の食堂はないのですね」
「普通はしない」
 絶対にだというのだ。
「秋山も浮いた話がない筈だ」
「仰る意味がわかりませんが」
 秋山はまた目をしばたかせ東郷に言う。
「どういうことでしょうか」
「ああ、わからないならいい」 
 東郷は理解出来ないどころか気付いてもいない秋山にこう述べた。
「軍事関連のことじゃないからな」
「ならいいですね」
「ここでこう言うのが駄目だな」
 また言う東郷だった。
「まあこいつは俺の娘と結婚するからいいか」
「ですから今から何を仰っているのですか?」
「これは厄介ですね」
 日本も今の秋山を見て呟く。
「私でも少し、と思います」
「祖国殿も何を」
「いえ、何も」
 日本も言わなかった、とにかく気付くことのない秋山だった。こうした意味で彼は田中と同じだと気付いた日本だった。


TURN78   完


                            2012・1・6



田中とデートするも、やっぱりレーティアは復活せずか。
美姫 「まあ、流石にそれだけでどこうはならないでしょね」
しかし、いつまでレーティアのこの状態は続くんだろうか。
美姫 「他の人たちもやっぱりレーティアの復活には注目しているしね」
だろうな。正に天才だからな。
美姫 「果たしてどうなっていくのかしら」
次回も待ってます。
美姫 「待ってますね〜」



▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る