『ヘタリア大帝国』
TURN37 マレー解放
日本はタイの提案を受け入れてエイリスの植民地を解放し独立させたうえで環太平洋経済圏を築くと宣言した。それを受けてだ。
すぐにだ。ベトナムは密かにマレーシアのところに来てこう話した。
「タイから既に話は聞いていたのだ」
「そうだったのね」
「そうだ。時が来れば話すつもりだった」
「それが今なのね」
「その通りだ。それでだが」
「悪い話ではないわね」
マレーシアも真剣に検討している顔だった。
「正直なところね」
「そうだな。それではだ」
「乗るわ。植民地のレジスタンス達にもね」
「話すか」
「まだエイリスの本国艦隊はここには来ていないわね」
「もうすぐ私の国に入る」
ベトナム、そこにだというのだ。
「マレーには間に合わない」
「そうね。じゃあ私はこのままで大丈夫ね」
「日本に占領されて独立すればだ」
どうなるかということもだ。ベトナムは話した。
「ガメリカと中帝国が承認する。エイリスも認めざるを得ない」
「いい話ね。それはまた」
「ガメリカも中帝国も植民地には反対だ。それにだ」
「それに、なのね」
「彼等も環太平洋経済圏を築こうとしている」
このこともだ。ベトナムはマレーシアに話した。
「だからだ。日本が入ればだ」
「それでいいわね」
「マレーシアはそれでいける。私はだ」
「そうはいかないわね」
「間も無く本国艦隊が入る」
ベトナムはまたこのことをマレーシアに話す。
「一旦この星域で決戦となる」
「そちらは大変ね」
「そうだな。そうなる」
「エイリス本国艦隊ね」
難しい顔になってだ。マレーシアは話す。
「かなり強いわね」
「そうだ。私もまずはエイリスに協力するしかない」
このこともだ。ベトナムは述べた。
「しかしだ。本音ではだ」
「独立したいわよね」
「何としてもな。そうしたいところだ」
「そうね。植民地なんてもう勘弁してもらいたいわ」
これが彼女達の偽らざる本音だった。植民地となっている国々の。
「だから。そっちはね」
「日本が勝つかどうかだ」
「それにかかっているわね」
「日本の勝利を願っている」
自分では何も出来ないからだ。ベトナムは言う。
「本来は私自身で勝ち取るべきだが」
「それができないことが植民地の辛いところね」
「その通りだ。ではだ」
「ええ、それではね」
「また会おう。今度はだ」
「独立国同士としてね」
こうした話をしていた。植民地の国々もだ。
東南アジア、オセアニアでのエイリスの勢力圏は完全に消えようとしていた。そしてそれは実際に進んでいた。
ニュージーランドも占領された。次はいよいよだった。
東郷は動ける艦隊を全て集めてだ。そのうえで提督達に告げた。
「では今からだ」
「マレーの虎侵攻ですね」
「そうだ。我が軍は今からマレーの虎に侵攻する」
小澤に応える形でだ。東郷は参戦する全提督に述べた。
「敵の数も多い。注意してくれ」
「あそこが陥ちたら東南アジア、オセアニアが完全になくなるからね」
南雲がここで言う。
「言うなら戦略上の拠点だからね」
「そのエイリスの植民地の要所を今から攻略する」
そうするとだ。東郷は述べる。
「マイクロネシア、ラバウルに置いている艦隊以外全てを動員してだ」
「よし、僕も頑張るぞ」
ネクソンもいる。確かに案山子そっくりだ。
「じゃあ一気にマレー侵攻だ」
「おい今度は運の方は大丈夫なんだろうな」
髪を茶色に戻しメイクも落としているキャシーがそのネクソンに問う。
「あんたいつも急にアンラッキーになるからな」
「ははは、僕は運がいいぞ」
「何処がだよ。とにかく靴の紐には気をつけろよ」
それを言うのだった。
「しいな。さもないとこっちまで危ういからな」
「君達もかい?」
「当たり前だろ。戦線の綻びはそのまま戦局全体に影響するからね」
だからだとだ。キャシーはきつい顔でネクソンに言う。
「本当に靴紐には注意してくれよ」
「全く、キャシーは心配性だな」
「心配性も何も実際のことだろ」
キャシーは真剣な顔でネクソンに言っていく。
「本当に頼むよ」
「じゃあ靴紐のない靴を履くか」
「そうしてくれ。冗談じゃなくてな」
「そうだよね。私もその方がいいと思うよ」
ララーもだ。キャシーと一緒になって話す。
「今度の戦いは最初の正念場だからね」
「それで作戦ですが」
参謀の秋山が提督達に話す。
「マレーに侵攻して最初にエイリス軍を攻撃します」
「その際だ」
東郷も言う。
「植民地艦隊は狙わない。狙うのはあくまでだ」
「エイリス艦隊だけです」
彼等だけだというのだ。
「植民地軍には解放すると宣言してだ」
「あえて攻撃をしません」
「事前にこれを言う」
そうするというのだ。
「それを行ってからだ」
「攻撃に入ります」
「若しもだけれど」
ランファはここまで聞いてから東郷に問うた。
「植民地艦隊がそれでも攻撃してきたらどうするの?」
「ははは、それはないさ」
確信している笑みでだ。東郷は答えた。
「絶対にな」
「本当にないの?」
「明石大佐から連絡があった。既に植民地艦隊及びレジスタンスからは中立の約束を取り付けている」
そうしているというのだ。
「だから何の問題もない」
「事前にそうした話をしてたの」
「そういうことだ」
「ああ、つまり政治なのね」
そういうことだとだ。ランファもわかった。
「それでなの」
「ああ。だから狙うのはな」
「エイリス艦隊だけなのね」
「彼等だけを攻撃して倒す」
また言う東郷だった。
「それでは行くとしよう」
「了解したわ」
ランファは微笑んで答えた。
「それじゃあ行きましょう」
「ただな」
「ただ?」
「急ぐ必要はある」
長期戦は避けたいというのだ。
「それはな」
「さもないと本国から来るっていうのね」
「既にエイリス艦隊はインドの各星域を通過した」
このこともだ。東郷は述べた。
「間も無くベトナムに入るだろう」
「若しマレー攻略に手惑い彼等がマレーに入れば」
どうなるかとだ。リンファも言う。
「勝ち目はなくなる」
「我々の戦力はそれ程多くはない」
こうもだ。東郷は言った。
「長期戦になればだ」
「敵の援軍が来れば」
「倒される。だからだ」
それでだというのだ。
「短期戦で終わらせる。いいな」
「了解」
リンファはランファと違い真面目な様子で返答を述べた。敬礼も真面目な感じで行っている。この辺りに性格が出ている。
こう話してだ。そのうえでだった。
日本軍はマレーに入った。その艦隊の状況を見てだ。インドネシアは首を少し捻ってこうニュージーランドに囁いた。
「何か凄いね」
「日本軍の艦隊ばい?」
「うん、艦艇よりもね」
普通の艦艇よりもだというのだ。
「魚の方が多いわよね」
「そうばいな。本当に」
「色々な魚があるけれど」
そちらの方が遥かに多かった。日本軍の今は。
その艦艇を見てだ。インドネシアはまた言った。
「癖が強い能力だし」
「ううん、異様な艦隊たい」
「これで勝てるのかしら」
「そうばいな。ここは」
「ここは?」
「まあこの魚達を使いこなすしかないたい」
これがニュージーランドの出した結論だった。
「それしかないたい」
「それが結論だね」
「そうたい」
また言うニュージーランドだった。
「それしかないたい」
「そういうことなのね」
「少なくとも日本軍は今まで勝っているたい」
「インドネシアもニュージーランドも攻略したし」
彼等の国の艦隊もだ。そうなっている。
「それなら」
「後は東郷さんの采配たいな」
「それもあるね」
「インドネシアでの戦いはどうだったたい?」
「鮮やかでね」
それでだ。どうだったかというのだ。
「もう瞬く間に勝ったよ。包囲して降伏勧告してね」
「じゃあ噂通りの名将たいな」
「そう思っていいと思うよ」
「じゃあこのままいけばいいたいな」
「そういうことだね」
また言うインドネシアだった。そうしてだ。
彼は今度はマレーシアについてだ。ニュージーランドにこう話した。
「マレーシアには元気のいい娘がいたね」
「ああ、あの娘たいな」
「あの娘とマレーシアはどうするのかな」
「マレーシアは確実に参加してくれるたい」
彼女については大丈夫だというのだ。
「あの娘はね」
「問題はあの娘たい」
「ええと。名前は確か」
ここでマレーシアは彼女の名前を言った。
「ラスシャラだったね」
「うん、そうたい」
「あの娘は。そうだね」
「どうすると思うたい?」
「あの娘は独立派だから」
それでだとだ。インドネシアは述べる。
「大丈夫だと思うよ」
「そうたいな。じゃあ」
「マレーシアとラスシャラだね」
「二人参戦たいな」
「そうだね。それじゃあね」
「今はこれでいくたい」
こう言ってだ。そうしてだった。
彼等はマレーシアのこれからについては楽観的に話せた。そしてニュージーランドは彼のことも話題に出した。
「で、相棒たいが」
「オーストラリアだね」
「あそこの総督はいい人たい」
この人物の名前も出た。
「エイリスの貴族出身といっても」
「悪い人じゃないよね」
「ああいう貴族もいるたいよ」
つまりだ。殆どのエイリス貴族はということでもあった。
「中には」
「ううん、じゃああの人は」
「何かあったら助けようと思ってるたい」
「そうするんだね」
「とりあえず日本帝国は捕虜の扱いはいいみたいたいが」
東郷も山下もそうしたことは好まない。その結果だ。
「それでもたい。いざとなれば」
「四国総督は助けるんだね」
「そのつもりたい」
「そうなんだ。まあ四国は資源も多いし」
エイリスの植民地の中でもだ。そうした意味でオセアニアの最重要星域である。エイリスも開発を続けてきている。
「だから日本帝国の環太平洋経済圏に入ったら」
「立場は結構なものたい」
「そうなるね。オーストラリアはね」
「とにかく独立はこちらとしても歓迎たい」
ニュージーランドはこのことは素直に言うことができた。
「イギリスさんには悪いたいが」
「ははは、イギリスさん今凄く苦しんでるだろうね」
「悪い人ではないたいが」
「ちょっとね。素直じゃないしお料理下手過ぎるし」
「独立したいと思っていた時たい。じゃあ」
「とりあえずは日本帝国のお手並み拝見だね」
こうした話をしながらだ。彼等は日本と共にマレーに入った。マレーではいきなりだった。植民地の艦隊は戦線を離れた。それを見てだ。
エイリス軍の司令官は難しい顔になり言った。
「何っ、どういうつもりだ」
「まさか日本帝国の独立を保障するという宣言にでしょうか」
「同調してのことでしょうか」
「おそらくはそうだな」
司令官は難しい顔のままで将校達に返した。
「乗せられるとは思ったがな」
「そうですか。しかし」
「現金な者達ですな」
「全く。独立宣言なぞお題目に過ぎないというのに」
「それに踊らされるとは」
「覚えておくがいい」
難しい顔でだ。また言う司令官だった。
「日本帝国軍はここで破る」
「ではこのままですね」
「あの魚の軍団を攻めますか」
「何だ、あの艦隊は」
司令官は日本軍の彼等から見てはかなり異様な艦隊を見て言う。
「鮫やエイがいるではないか」
「亀に烏賊もいます」
「魚屋の様ですね」
「魚なぞ鱈か鮭位ではないか」
エイリスでは魚はそうしたものしか食べない。エイリスの食生活は他の国から見れば恐ろしいまでに貧しい。
「鯨や何なりとな」
「日本は奇妙な国ですが」
「魚を艦隊に使うとは聞いていましたが」
「実際に見ると異様ですな」
「いや、全く」
「大した相手ではなさそうだな」
司令官は魚を見てすぐにこう思った。
「よくここまで来られたものだ」
「ええ。しかしそれもですね」
「ここで終わりですね」
「奴等の進撃も」
「数も少ない」
司令官は敵の数も見ていた。見ればエイリス軍の半分程度だ。
その数も見てだ。司令官は言うのだった。
「どうということはないな。ではだ」
「はい、それではですね」
「このまま正面から攻めましょう」
「エイリス軍らしく正々堂々と戦い勝ちましょう」
「名乗りを挙げて」
「東洋の魚屋に騎士の戦いを教えてやろう」
司令官はもう勝った気でいた。完全に。
「では全軍進撃だ」
「了解です」
「それでは」
幕僚達も司令官の言葉に応える。そうしてだった。
エイリス軍は実際にだ。前にいる日本帝国軍に対して堂々と名乗りを挙げてきたのだった。司令官の言葉通り。
それを受けてだ。秋山は真面目な顔で東郷に対して述べた。
「やはりエイリス軍は騎士ですね」
「そうだな。正面から名乗りを挙げてだからな」
「正面から我々に向かってくるとは」
「面白い国だ。料理はまずいがな」
東郷もエイリスの料理のまずさは知っていた。
「ではだ。我々もだ」
「正面から戦われますか」
「戦力は半分だ。普通に戦えばな」
「正面から戦うと敗れますね」
「そうなる。間違いなくな」
「しかしですね」
「敵の艦隊は旧式なものばかりだ。エイリス軍の中ではだ」
東郷は敵の艦隊の艦種も見ていた。よくて第二世代のものだ。
「さて、それに対して我々はだ」
「はい、確かに癖はありますが」
「魚は第四世代に匹敵する強さがある。正面から戦っても勝てる」
「ではこのままですね」
「正面から戦いそして勝つ」
東郷は日本軍の作戦を述べた。
「わかったな、ではまずは小魚を出そう」
「了解です」
小魚が出される。そしてだった。
その小魚達がエイリスの艦載機を退けそのうえでエイリス艦隊の襲い掛かる。東郷は呆気なく退けられたエイリスの艦載機を見て言った。
「何かな」
「はい、艦載機の質がですね」
「相変わらず悪いな」
「シーファイアにソードフィッシュですが」
「どれも大した戦力ではないな」
「はい、我々の小魚の敵ではありません」
秋山はこう東郷に答える。
「予想以上に順調に敵艦隊への攻撃に取り掛かれますね」
「ああ。では次はだ」
「海亀がいる艦隊を前に出しましょう」
秋山は東郷に進言した。
「それで敵のビームを集中させて防ぎ」
そうしてだった。
「こちらから反撃を加えましょう」
「とはいっても敵よりもこちらの方が索敵能力は高いからな」
「はい、攻撃はこちらが先になりますね」
「そうする。ではだ」
既に照準はセットしており後はビームの射程に入るだけだった。そしてそのエイリス艦隊が射程に入ったその時にだった。
東郷はその瞬間に全軍に命じた。
「撃て!」
「撃て!」
攻撃が復唱されて日本軍から一斉にビームが放たれる。そのビーム達がエイリス艦隊を貫き次々と炎に変えていく。
次々に脱出ポッドが出て行き戦場を離脱していく。しかしエイリス軍も負けていない。
ビームを放つ。司令官が選んだ攻撃目標は。
「あの敵の前にいるだ」
「亀のいる艦隊ですね」
「二つあるがあの艦隊を重点的に攻撃する」
こう幕僚に話す。
「そうするぞ」
「了解です。では」
幕僚も頷く。これによりエイリス軍の作戦は決まった。即座にだ。
エイリス軍は攻撃を加える。その海亀のいる艦隊達に。だが、だった。
ビームはあえなく無効化される。その艦隊をそれぞれ率いる南雲とパンダは笑いながらこう話した。
「まんまと乗ってくれたね」
「そうだね。海亀はバリア艦と同じ力があるけれど」
「エイリス軍はそのことを知らなかったみたいだね」
「こちらの読みは成功だね」
「ああ。向こうさんのビームはかなり防いだよ」
南雲は楽しげな笑みで述べる。
「さて、じゃあ後は」
「ミサイル、そして鉄鋼弾だね」
「派手にやるか。次の小魚の攻撃までに敵の数を半分位にしておくか」
南雲はビームを無効化されて驚くエイリス艦隊に対して突っ込む。それにパンダの艦隊も続く。その後に日本軍の主力が続く。
日本軍は進みながらミサイルを放つ。そしてだった。
いよいよだ。日本軍の得意とする攻撃に取り掛かるのだった。東郷は余裕の笑みで秋山に対して述べた。
「やるか」
「はい、鉄鋼弾ですね」
「接近しそのうえで決める」
「そうしましょう。どうやらエイリス軍の旧式艦は」
「ビームへの防御は考えられているがな」
それでもだとだ。東郷は指摘した。
「他のものへの防御は弱いな」
「エイリス軍は元々大艦巨砲主義の国ですから」
「実際にそうした巨砲攻撃で勝ってきた」
数多くの世界帝国になるまで、なってからもその地位を守る為の戦いもだ。エイリス軍ビームの火力で買ってきたのだ。
それでだ。その防御思想もだったのだ。
「艦載機やミサイルにはな」
「弱いですね」
「おそらく新型艦は違ってきているだろうが」
「はい、それでも旧式艦は」
「弱いな」
また言う東郷だった。
「ではその弱点を衝こう」
「鉄鋼弾を撃ちますか」
「駆逐艦及び鉄鋼弾を放てる魚を前に出す」
そしてだというのだ。
「これで敵の戦力を半分程度に減らそう」
「そうしましょう。ただ」
「それだけではなくだな」
「はい、敵の旗艦は判明しています」
見れば敵艦隊の先頭にだ。一隻の見事な、明らかにエイリス軍のものである戦艦があった。
モニターにあるその戦艦を見ながらだ。秋山は東郷に述べた。
「あの戦艦に対しても」
「攻撃を仕掛ける」
「では」
こうしてだった。日本軍の水雷部隊が前に出て高速で移動しながらだ。
既にかなりのダメージを受けているエイリス軍に攻撃を浴びせた。エイリス軍は東郷の予想通り鉄鋼弾にも弱かった。
今度もまた次々に爆発し炎となっていく。その中でだ。
日本が己が率いる艦隊の将兵達に言っていた。
「あの敵司令官の乗る戦艦にです」
「はい、鉄鋼弾をですね」
「集中的に浴びせますね」
「そうします。敵の司令官の乗艦を沈めれば」
「この戦いの勝利は決定しますね」
「それによって」
「はい、ですから」
だからこそだというのだ。
「あの戦艦にも攻撃を浴びせます」
「了解です」
「それでは」
こう話してだ。そのうえでだった。
日本が率いる艦隊は敵の司令官が率いる艦隊とその乗艦に向かった。光の様な速さで進む。
そして至近距離になったところでだ。日本が命じた。
「攻撃です!」
「了解!」
「それでは!」
日本の言葉を受けてだ。そのうでだ。その鉄鋼弾が放たれる。
鉄鋼弾を受けて艦隊が薙ぎ倒される。そして。
司令官の乗る戦艦も攻撃を受けた。艦内に衝撃が走る。
司令官も衝撃で打ちのめされる、しかし何とか立ち上がりだ。
部下達に損害状況を聞いた。その状況は。
「大破です、このままではです」
「沈みます」
「くっ、やられたか」
何とかだ。周辺は大丈夫だった。だが。
被害を伝える警報が鳴り響く。しかもそれは乗艦だけではなかった。
「第七艦隊壊滅!」
「第十五艦隊旗艦リバイアサン撃沈!」
「第二十三艦隊戦力が半分になりました!」
「敵艦隊包囲に入ろうとしています!」
戦況報告は彼等にとって悲観的なものだった。それを聞いてだ。
司令官は苦々しい顔でだ。こう言ったのだった。
「これ以上の戦闘はだ」
「無駄ですか」
「最早」
「そうだ。これ以上の戦闘はいたずらに損害を増やすだけだ」
こう言うのだった。
「だからだ。撤退するぞ」
「はい、無念ですが」
「ベトナムにまで、ですね」
「迂闊だった。魚達は案外強い」
司令官も今わかったことだった。
「このこと覚えておこう」
「そうですね。では次は」
「ベトナムだけは守りましょう」
部下達も無念の顔で応えてだ。そのうえでだった。
戦場を離脱していく。こうしてエイリス軍はベトナムまで撤退しマレーの虎は日本帝国軍の占領するところとなった。
日本はすぐにマレーの虎の解放と独立を宣言した。これによってだ。
マレーシアもまた日本軍に加わることになった。彼はすぐに日本のところに来た。
そのうえでだ。笑顔でこう日本に言うのだった。
「では私も」
「はい、私達と共にですね」
「環太平洋経済圏に入っていいかしら」
「どうぞ」
微笑んでだ。日本も答える。
「是非お願いします」
「それじゃあね。ただね」
「ただとは?」
「私だけじゃないけれどね。入りたいのはね」
「我々の軍にですか」
「うん、この娘よ」
マレーシアは笑顔で自分の後ろを手で指し示した。そこにはだ。
ラスシャラがいた。マレーシアは彼女を日本の紹介して言うのだった。
「ラスシャラっていうのよ」
「ラスシャラさんといいますと」
「ええ。独立運動のリーダーでね」
「私達に加わってくれますか」
「いいかしら。私と一緒にね」
太平洋軍に加えて欲しいというのだ。
「そうして貰えるかしら」
「はい、是非共」
日本は微笑んでだ。マレーシアの申し出を受けた。
「参加して下さい」
「じゃあね。ラスシャラもいいわね」
「祖国さんがいいのなら」
ラスシャラは厳しい顔だがマレーシアにはこう返した。
「私もそれで」
「これで私達は独立国ね」
「はい、ですが」
「ですが?」
「日本さんに言っておくことがある」
日本を見てだ。マレーシアはその厳しい顔で言ったのだった。
「独立は喜んで受け入れさせてもらう」
「そして参戦もですね
「そうだ。そのことは礼を言わせてもらう」
独立、それはだというのだ。
「しかしだ。念を押すが」
「独立のことですか」
「若しもそれがお題目に過ぎないのならだ」
「はい、その時はどうぞ」
日本もだ。確かな顔でラスシャラに答える。
「私の前を去って下さい」
「そして真の独立を勝ち取らせてもらう」
「私に仰りたいことがあれば何でも仰って下さい」
日本もだ。ラスシャラの言葉を正面から受けていた。
「お話を聞かせて頂きます」
「貴国を信じてか」
「その様な偉そうなことは言いませんが」
「それでもだな。わかった」
「はい、宜しくお願いします」
日本も緊張、真摯なそれを以てラスシャラに応えた。そうしてだった。
ラスシャラは太平洋軍に加わった。彼女の祖国と共に。日本は無事にマレーの虎に入った。それからすぐにだった。
東郷はそのマレーにおいてだ。こう秋山に話した。
「さて、次はな」
「はい、四国ですね」
「そうだ。四国を占領、まあ解放だな」
「独立してもらってからですね」
「ベトナムだ。そこからインドに向かおう」
「ここまでは順調ですね」
「とりあえずはな。しかしな」
「はい、それでもですね」
「そろそろだな。エイリスの本国艦隊が来るな」
「来月辺りになるかと」
秋山は目を鋭くさせて答えた。
「我々が四国を占領している間にです」
「来るだろうな」
「マレーの防御を固めておきますか」
「そのうえで四国を攻めよう」
「はい、それでは」
「とりあえず東南アジア、オセアニアの大部分は経済圏に組み入れた」
ベトナム以外はだ。既にそうなろうとしていた。
「太平洋経済圏もそれなりになってきた」
「間違いなく」
「そうだ。しかしだ」
だが、だ。それでもだというのだ。
「まだベトナムがある」
「そしてインドですね」
「インド洋まで勢力圏としないとな」
「ガメリカには対抗できませんね」
「そうだ。油断は出来ない」
「確かに。その通りです」
「とはいってもな」
見れば東郷はいつもの飄々とした表情だ。
そしてその表情でだ。こう言ったのである。
「力を張る必要はない」
「といいますと」
「勝てると思うことだ。慢心せずにな」
「待ち受けるエイリスの本国艦隊にもですか」
「戦力は充実してきている」
東郷はこうも言った。
「それもある。それにだ」
「経済圏が充実してきて、ですね」
「資源も技術もあがってきている」
それでだというのだ。
「そろそろ新型艦も建造できるな」
「今は第三世代ですが」
「コストは安く出来るか」
「その研究は平賀長官が行っておられます」
「そうだな。それならな」
「はい、第四世代の建造もです」
秋山が言う。
「そろそろ」
「視野に入ってきたな」
「その通りです。ですが」
「ガメリカに対抗するとなると」
「やはり第五世代の艦艇が欲しいですね」
「ガメリカ軍の艦艇は強い」
東郷はこのことについても言った。
「それにだ」
「数も多いですからね」
「魚もそろそろ戦力的にな」
「限界ですね」
「水族館にj戻ってもらうか」
「その時もやがては」
「来る。アラビア、マダガスカルまで進出する頃か」
あくまで順調にいった場合の話だ。
「そうなるとな」
「その頃には」
「もう魚からだ」
通常艦艇に替えるというのだ。
「そうしていこう」
「そうですね。それでは」
「艦艇は常に進化している」
東郷は誰よりもわかっていた。そのことを。
「だからだ。その頃にはな」
「魚から艦艇に」
「替えていくか。とにかくだ」
「はい、マレーも太平洋経済圏に入りましたね」
「引き続き四国に向かう」
東郷はいつもの調子で秋山に話す。
「それといよいよあの二人が戻ってくるな」
「平良提督と福原提督ですね」
「そうだ。あの二人も復帰するな」
「はい、既にこちらに向かっています」
「そうか。新たに二個艦隊が加わるか」
「戦力的には有り難いですね」
「そう思う。しかしな」
だが、という感じでだ。東郷はこうも言ったのだった。
「平良だがな」
「そうですね。正義感があるのはいいのですが」
「それがいらぬ怪我につながる」
「良民を虐げる両班に後ろから刺されてでしたからね」
「あれには正直参った」
東郷は難しい顔になっていた。
「有能な提督が一人いない状況にはな」
「はい、全くです」
「有能な提督は一人でも多く欲しい」
これが日本の現状だ。中帝国との戦い以降の。
「それ故にな」
「そうですね。福原提督ですが」
「彼女はドクツ大使館勤務だったからな」
「何とか戻ってもらいました」
こうした事情があったのだ。
「ドクツ大使館としては優れた武官を手放したくなかった様ですが」
「しかしな。彼女も優秀な軍人だ」
「それ故にですね」
「提督になってもらった。あの二人ならだ」
「十分に活躍してくれますね」
「期待している。ただ平良だが」
彼はどうかとだ。東郷はさらに話す。
「韓国さんのお気に入りだからな」
「福原提督は台湾さんのですね」
「二人がそれぞれの軍事顧問になるか」
「帝とのお話からですね」
「韓国さんと台湾さんも独立した」
太平洋経済圏の国家としてだ。そうなったのだ。日本にしても特にデメリットもなくそうしたのだ。むしろ韓国への投資から解放されて安堵している位だ。
「二国への軍事顧問が必要だからな」
「それ故にお二人がですね」
「獅子団も性質が変わったからな」
日本にとっていいことにだ。そうなったのだ。
「国粋主義的な性質が韓国や台湾と交流してな」
「かなり国際的になりましたね」
「元々正義感と義侠心が強い連中だ。それならだ」
「後は視野を広げるだけでしたからね」
「そうだ。だがな」
「だが、ですか」
「正義感と義侠心も時には問題だ」
東郷はそうしたこともわかっていた。人の良心がそれがそのままいい結果を生み出すとは限らないのである。
それでだ。こう言ったのである。
「だから彼も怪我をしたのだ」
「ああしてですね」
「確かに後ろから刺す奴は取るに足らない奴だが」
難しい顔でだ。東郷は述べる。
「そうした奴を成敗する際にもな。気をつけることだ」
「正義感や義侠心だけでは怪我をしますか」
「悪人を成敗することはいいことだがな」
しかしそれが決していい結果を生み出すとは限らないというのだ。
「そうしたことも彼には見極めて欲しいな」
「そうなりますか」
「折角筋はいいのだ」
軍人としても武人としてもだ。平良の資質は見事だというのだ。
「だからだ。自重もしてもらおう」
「何かと難しいですね」
「ましてやエイリスの植民地では貴族達が横暴を極めている」
「彼の忌み嫌う者達が多いですね」
「そうだ。非常に多い」
こう話すのだった。
「彼が怒り狂うことは充分に考えられる」
「何もないと思う方がおかしいですね」
「ハワイから来るガメリカ軍に回そうとも思ったが」
「それでもですね」
「こちらに回した。ハワイ方面は戦力は充分だ」
「だからですね」
「とりあえず自重を促す」
くれぐれもだというのだ。
「そのうえで。インドやアラビアまで進もう」
「そうしますか」
こうした話をしながらだ。彼等は平良、福原いづみの歓迎も受けるのだった。何はともあれマレーは解放されマレーシアとラスシャラが参戦することになった。日本を中心とした太平洋軍は今度は四国に入るのだった。
TURN37 完
2012・7・10
マレーまで無事に侵攻できたな。
美姫 「これでエイリスにもダメージを与えられるかしらね」
まだベトナムやインドなどが残っているし、まだ先は長いがな。
美姫 「二人の提督も加わるけれど、防衛と進軍の悩みは簡単にはいかないわよね」
そこを上手くこなして勢力を広げていかないといけないのは何処も一緒だがな。
美姫 「次回は四国かしら」
どうなるのか、次回も待っています。
美姫 「待ってますね〜」