『ヘタリア大帝国』




                          TURN23  タイの話

 東郷と日本の耳にもだ。連合国が結成されたとの報告が入った。それを聞いてだ。
 東郷は海軍の司令部において秋山と日本にだ。こう言った。
「これで原始の八国は完全に二つに分かれたな」
「はい、連合と枢軸に」
「それぞれの陣営で戦うことになりました」
「数だけで言えば五対三だ」
 アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国にだ。日本、ドイツ、そしてイタリアだ。
 だが東郷は数よりもだ。力の差を言うのだった。
「国力差はどうにもならないな」
「そうですね。我が国の国力はガメリカの十分の一です」
 秋山は暗い顔で東郷のその指摘に応えた。
「中帝国のかなりの部分を占領している今も」
「ガメリカとの差はかなりだ」
「残念ですが」
「しかもガメリカだけじゃない」
 東郷はさらに言う。
「今現在も最大の国家エイリスも向こうにいる」
「エイリスの国力はガメリカ以上です」
 秋山はエイリスについても言葉を返した。
「衰えたりとはいえ。まだ人類最大の国家です」
「しかもソビエト。あの国の意図はわからないがな」
「一応中立不可侵条約を申し出てきていますが」
「それは結ぶべきだな」
 条約についてはだ。東郷は賛成した。だが、だった。
「しかし。何時その条約を破るかわからない」
「あの国はそういう国ですからね」
「ソビエトは共有主義を広める為なら手段を選ばない」
 そうした国だとだ。東郷は看破した。
「その為には国家間の条約の一方的な破棄もだ」
「彼等にとっては何ということはありませんね」
「賭けの連続だが一気にアラビアまで占領してだ」
 東郷はここでも己の戦略を秋山と日本に話す。
「ガメリカとの本格的な戦いに入りあの国と中帝国を倒す」
「一気に、ですね」
「太平洋を一気に掌握する」
 そしてだというのだ。
「ソビエトに備える。次はな」
「それが我が国の戦略ですね」
「時間的な余裕は少ない」
 東郷は言っていく。
「ドクツは間違いなくソビエトとの戦いに入るがな」
「勝てると思いますか?ドクツが」
「勝てるか、じゃない。負けた場合を考えてだ」
「最悪ケースを考えてですか」
「戦略を立てる。だからな」
「わかりました。それでは」
 秋山は東郷のその言葉に頷く。こうしてだった。
 日本帝国の戦略があらためて確認されもした。そしてだ。
 日本もだ。こう東郷に言ったのだった。
「では何はともあれですね」
「ああ、祖国さんにも頑張ってもらうがな」
「ガメリカ、そしてエイリスとの戦争ですね」
「中帝国は重慶で足止めだ」
 中帝国のことも忘れてはいなかった。
「そしてそのうえでだ」
「アラビア、太平洋をですね」
「一気に掌握しないといけない。忙しいな」
「私はまだアメリカさんや中国さんとはお話ができますが」
 しかしそれでもだった。日本の問題は。
「ですがロシアさんとはです」
「話ができないか」
「無理ですね」 
 日本とロシアの仲は悪い。お互いに激しい拒絶反応を持っているのだ。
「あの方とは日露戦争でも激しくやり合いましたから」
「しかも今は共有主義もあるからな」
「何としても。防がなければならないです」
「俺も祖国さんと同じ意見だ」
「そうですか」
「日本帝国の本当の敵は共有主義だ」
 帝を戴いている君主制国家であるだけにだ。それは尚更だった。
「あの国こそ。何とかしないとな」
「なりませんね」
「その通りだ。ソビエトとの戦いは腰を据えてやりたい」
 エイリスやガメリカとの戦いは一気に進めたいのと対象的に、だった。
「あの国は広いうえに自然環境も凄いからな」
「特に冬になるとです」
 また秋山が述べてきた。
「恐ろしいまでの寒さと吹雪で進めません」
「そうした国だからな」
「余計に、ですね」
「長期戦を覚悟している」 
 ソビエト戦はそうだというのだ。
「そして最初はだ」
「はい、ガメリカとの戦いですね」
「その準備をしよう」
 こう話してだ。彼等は彼等の戦いの用意をしていた。その彼等のところにだ。
 小澤が来た。小澤は海軍の敬礼からこう日本に述べた。
「お客様です」
「私にですか」
「日本さん、できれば東郷さんもですね」
「俺もということは」
「はい、国家のかなり重要なことです」
 それだとだ。小澤はいつも通り淡々と述べていく。
「既に山下さんにも報告がいっています」
「そうか。場所は皇居だな」
「すぐにそちらに行かれて下さい」
「わかった。では祖国さん」
「はい」
 二人は小澤の言葉を受けて互いに顔を見合わせた。そのうえでだ。
 すぐに皇居に向かった。帝の御前には既に山下がいた。そしてだ。
 柴神の横にだ。あの国がいたのだ。日本が彼の姿を見て言った。
「タイさんではないですか」
「お久し振りです」
 タイは柴神の横から日本に応えた。
「お元気そうで何よりです」
「はい、こちらこそ」
 タイは合掌で、日本は頭を垂れて互いに挨拶をした。そのうえでだ。
 柴神がだ。こう一同に言った。
「今回タイが来た理由だが」
「タイさんは中立国だな」
 東郷が言った。そのタイの立場から考えながら。
「そしてベトナム等エイリスの植民地に囲まれている。つまりだ」
「おわかりですか」
「ある程度察しがつく。彼等は独立したいんだな」
「そうです。日本帝国がエイリス帝国との戦争に入った場合です」
 タイは東郷に応えながら話した。
「植民地の諸国家の独立を支持して欲しいとです」
「あちらから要望があったんだな」
「その通りです。このことを伝えに来ました」
「そうか。それでなんだな」
「日本帝国としてはどうでしょうか」
 東郷に話してからだ。タイは帝や山下、そして日本にも話した。
「エイリスの植民地の独立は」
「どう思われますか?」
 帝は己の決断より前にだ。山下と日本に彼等の考えを問うた。
「このことについて」
「是非共。独立を支持すべきです」
 山下は即座にだ。血気にはやった感じで答えた。
「そもそも植民地の民を一部の貴族が虐げ搾取するなぞ人倫に反します」
「山下はそう考えているのですね」
「はい、ここはむしろエイリスに攻め込みです」
 その正義感のままだ。山下は右手を拳にして帝に話す。
「彼等を解放し独立してもらいましょう」
「そうすればです」
 タイもここで言う。彼も考えて言っている。
「ベトナムさん達は貴国の頼りになる同盟国になってくれますよ」
「そう。それならばです」
 拳を振りかざしながらだ。山下はさらに言う。
「我等の苦境も脱せます。同盟国が手を差し伸べてくれるのですから」
「では祖国さんはどう思いますか?」
 山下の正義感と義侠心が前面に出た意見の後でだ。帝は日本にも意見を求めた。
「このことについては」
「やはり。私もです」
「賛成なのですね」
「はい、私も植民地は好きではありません」
 日本もだ。植民地というものには好意的ではなかった。
「ですから台湾さんや韓国さんも我が国の一部になっていますから」
「我が国は植民地を認めない」
「ですから。あちらに進出した場合はです」
「独立してもらうというのですね」
「資源等は購入した方が遥かに安くつきます」
 経済的な概念からもだ。日本は話す。
「そしてこちらのものを買ってもらい技術援助等も行い各国の国力を高めれば」
「それが私達にも返ってくるのですね」
「経済圏を築き上げるべきかと」
 日本はこう帝に話した。
「ですから。私もです」
「独立に賛成ですか」
「はい、そうです」
 その通りだとだ。日本は帝に答えた。
「そう考えます」
「わかりました。それでは」
 帝は日本の意見も聞いた。そしてだ。
 最後にだ。東郷に顔を向けて彼にも尋ねたのだった。
「東郷はどう思いますか」
「はい、私も賛成です」
「その理由は」
「植民地というものは好きになれません」
 やはりだ。彼もそうだった。
「現地の民衆から一方的に搾取するというのはどうしても」
「よくないですね」
「それでは彼等を苦しめしかもその搾取に対する反発を抑える為に軍も置かなくてはなりません。そうした面からも経済的に非効率的です」
「では独立してもらってですね」
「貿易をしていくべきです」
 東郷も日本と同じ意見だった。
「そうしていくべきかと」
「わかりました。私もです」
 帝もだ。にこりと笑って自分の考えを述べた。
「植民地化よりも独立してもらって交流を深めたいと思っています」
「では、ですね」
「はい。ベトナムさん達にお伝え下さい」
 帝は微笑んでタイに顔を向けて告げた。
「日本帝国は植民地諸国の独立を支持します」
「では時が来ましたら」
「その時にですね」
「独立します。そしてその時は」
「支持させてもらいますね」
 こう応える帝だった。こうしてだった。
 日本帝国は植民地各国の独立を支持することになった。このことは決まった。
 日本はこの決定を妹や他の国家達に話した。その時にだ。
 香港がだ。こう日本に尋ねた。
「一つ気になる的な?」
「といいますと」
「俺達今日本さんのところにいるけれど」
 それでもだとだ。日本に言うのだった。
「その考えだとこの戦争が終わったら俺達は先生のところに帰る的な?」
「中国さんのところにですね」
「そうなる的な?中帝国に」
「そうだ、その通りだ」
 場には柴神もいた。彼はこう香港に答えた。
「君達はこの戦争の後で中帝国に戻ってもらう」
「いいのですか、折角占領したというのに」
 柴神のその言葉にだ。マカオは驚いた顔で問い返した。
「私達をミスターのところに戻して」
「日本帝国には広大な領土は不要だ」
 柴神は言うのだった。
「貿易で栄える。そのことを目指す」
「だからですか」
「そうだ。だから中帝国の領土は戦争終結後全て返還する」
「では北京や西安も南京も」
「当然満州もそうなる」
「何と。では本当に」
 マカオは柴神の言葉にさらに驚いた。彼等にとっては信じられない話だった。
 そうした話からだ。さらにだった。
 柴神は韓国や台湾にもだ。こう言ったのだった。
「君達もその時が来れば独立していい」
「えっ、俺達もなんだぜ!?」
「本当にいいんですか!?」
「いい。何度も言うが日本帝国は広大な領土を求めない」
 彼等にも言うのだった。
「それ故にだ。その時はだ」
「そうなんだぜ!?」
「私達もまた」
「そして共に太平洋経済圏を築こう」
 彼等にとってもその方が遥かに利益になるだ。それをだというのだ。
「ではな。まずは戦いの準備を進めよう」
「そのことですが」
 香港妹が言ってきた。ここで。
「ドクツが遂にまた動く様です」
「エイリス侵攻ね」
 マカオ妹は香港妹の言葉を聞いてすぐにそれだと察した。
「それにかかるのね」
「どうやらね」
「じゃあいよいよエイリスとの決戦ニダな」
「これは大変な戦争になるね、今まで以上に」
 韓国妹も台湾兄も気色立っている。
「この戦争、どうなるニダか」
「読めないね」
「ドクツは今日の出の勢いですが」
 それでもだとだ。日本妹はドクツとエイリスのことを考えながら述べた。
「ですがエイリスの国力もかなりのものです」
「この戦いは読めませんね」
 日本も顎に右手をやって述べる。
「果たしてどうなるのか」
「両国の戦い次第で戦局は大きく変わる」
 柴神も両国の戦いのことについて言う。
「しかしそれでもだ。我々はだ」
「エイリスが生き残ることを想定してですね」
「戦略を立てよう。それでいいだろうか」
「わかりました」
 日本が最初に応えた。そのうえでだった。
 彼等は開戦の準備に入った。その時は確実に迫っていた。そしてだ。
 日本の御前会議においての返事を受け取ったタイはすぐにベトナムのところに赴き彼女にとっても他の植民地の国々にとっても朗報を渡した。それを聞いてだ。
 ベトナムは確かな顔でだ。こう言うのだった。
「ではだ。その時が来ればだ」
「はい、独立を宣言されますね」
「その時を待つ。しかしその前にだ」
「艦隊の数が随分減っていましたね」
 今彼等はベトナムの家にいる。その途中に入った港のことをだ。タイは言ったのだ。
「エイリス本土に送られたのですね」
「そうした。今ここには最低限の戦力しかない」
「エイリスとドクツの戦いですか」
「私も行く」
 両国の戦いに参加するというのだ。連合国側に立って。
「そのうえで戦う。フランスも義勇軍の形で行くそうだ」
「そうですか。フランスさんも」
「マダガスカルに引き篭もってばかりもいられないらしい」
「大変ですね、フランスさんも」
「そうだな。本当にな」
「では頑張って下さいね、そちらの戦争も」
「今後の為にもな。しかしだ」
 それでもだとだ。まだ言うベトナムだった。
「私達のやることは決まった」
「独立ですね」
「そうだ。その時が来たのだからな」
「その為に連合に入りそして」
「時が来れば独立する。枢軸に入る」
 立場は変わるがだ。目的は変わらないというのだ。
「そうしよう。ではな」
「私もできるだけのことはしますので」
「戦いに参加するのか」
「太平洋経済圏に入りますから」
 それ故にだ。彼も時が来れば参戦するというのだ。
「そうします」
「わかった。それではな」
「さて、お話はこれで終わりですね」
 ベトナムにだ。タイはここでこう言った。
 それでだ。彼はにこやかに笑って提案したのだった。
「では後は」
「何だ?何か食べるのか?」
「僕が何か作りましょう」
「いや、御前は今は客だ。客にそんなことはさせない」
「では貴女が」
「何がいい?それで」
「麺と。そして」
 タイはそのにこやかな笑顔のままベトナムに希望を話していく。
「生春巻きをお願いします」
「わかった。ではな」
「それでは」
「少し待っていてくれ」
 料理を作るそれまでの間はだというのだ。
「それまで茶でも飲んでいてくれ」
「そうさせてもらいますね。そういえば」
「何だ、今度は」
「貴女の料理を御馳走になるのも久し振りですね」
「そういえばそうだな」
「僕と貴女も色々ありますが」
「独立は支持するのだな」
 タイのその穏やかな微笑みを見つつだ。ベトナムはその彼に問うた。
「そのことは」
「はい、その通りです」
「その方が御前にとっていいだけでなく」
「貴女も。他の方々も一緒に経済圏を築いて動けるのならこれだけいいことはありません」
「仲間か」
「友人ですね」
 それにあたるというのだ。
「これからまたお友達になりましょう」
「そうか。では友人としてな」
「宜しくお願いします」
 こうベトナムに言うタイだった。そしてだ。
 彼はベトナムが作るその麺と生春巻きを食べたのだった。そうしてだ。
 彼等も動くのだった。太平洋での戦争が本格的にはじまろうとする中で各国はそうしていた。
 太平洋は動こうとしていた。そしてそれに対して。
 欧州は動いていた。レーティアはグレシアと共にパリに入った。
「ジークハイル!ジークハイル!」
「諸君、時は来た!」
 レーティアは自分を迎えるドクツの将兵達に対して演説した。
「我々は既に東欧と北欧を掌握し憎むべき宿敵の一つオフランスを倒した!」
 まずはドクツの緒戦の勝利のことを言う。
「このことはかつてない偉業だ。ドクツに最早敵はない。しかしだ」
 ここでだ。こう言うのだった。
「まだ宿敵は残っている。その宿敵こそは」
「エイリス!」
「エイリスです!」
「そうだエイリスだ。諸君等の家族、そして諸君達を苦しめたあの国がまだ存在している!」
 このことを彼等に言う。訴えると言ってもいい。
「彼等はまだ生きている。しかしだ」
 そのエイリスがだ。どうなっているかというのだ。
「今そのエイリスを目の前にしている。それならだ」
「はい、倒しましょう!」
「エイリスを!」
「その通りだ。我々は間も無くエイリスに総攻撃を仕掛ける!」 
 レーティアは断言した。ドクツのこれからの軍事行動を。
「そしてあの国を倒す!復讐を完遂するのだ!」
 こう言ってだ。さらにだった。
「我がドクツの復讐!それを果たすのだ!」
「ジークハイル!ジークハイル!」
「ドクツに栄光あれ!」
 ドクツの将兵達は右手を掲げレーティアの演説に熱狂する。その声を受けてだ。
 レーティアは控え室、質素だが女の子のそれらしくぬいぐるみ等があり可愛らしい内装の部屋に戻った。そしてそこでグレシアに言うのだった。
「さて、間も無くだな」
「そうね。いよいよエイリスとの決戦ね」
「そうだ。我が軍は今戦力をオフランスに集結させているがな」
「掌握している全ての国を動員してね」
「そして提督達も集めている」
 ドクツの誇る彼等もだというのだ。
「後はだ」
「ええ、貴女が攻撃命令を出すだけよ」
「だが艦隊の数がな」
 レーティアは自分が率いる艦隊の数についてだ。ここで言った。
「提督は四人だ」
「ええ、そして国家艦隊がね」
「ドイツの兄妹、プロイセン兄妹にオーストリアとハンガリー」
「ポーランド、ルーマニア、ブルガリア、ギリシアの東欧組に」
「アイスランド以外の北欧の四個艦隊だ」
「それとオランダとベルギーね」
「合わせて二十個艦隊か」
 レーティアはその数を述べた。これがドクツの今の総戦力だ。
「対するエイリスは」
「百個艦隊以上よ。植民地からもかき集めてきたわ」
「五倍以上か」
「尋常な数じゃないわね」
「流石に世界を指導すると自負しているだけはあるな」
 レーティアもエイリスを侮ってはいなかった。冷静な戦力分析も行っていた。
「だが植民地の戦力はだ」
「旧式艦ばかりね」
「エイリスの艦艇は最新鋭は見るべきものがあるな」
「問題はその戦力ね」
「そして騎士提督もいるな」
「ロレンス提督がいるわよ」
 エイリス本土にはだ。彼がいるというのだ。
「ネルソン提督もいるかしら」
「太平洋に行くという情報があったな」
「じゃあもう言ったかしら」
「いや、まだだろう」
 残っているとだ。レーティアは見ていた。
「まだ太平洋では戦闘ははじまっていない。だからだ」
「彼もまだ残っているのね」
「そうだ。そして女王であるセーラ=ブリテンだ」
 レーティアにとって宿敵とも言える彼女の名前も出した。
「妹もいたな」
「そして先女王であり母親でもあるね」
「エイリスにも人がいる」 
 人材はいるというのだ。エイリスにもだ。
「そして国家もな」
「イギリスの兄妹ね」
「イギリス兄妹も倒す」
 レーティアはその青い目から強い光を放っていた。そのうえでの言葉だった。
「必ずな」
「そうね。エイリスを倒して次はね」
「ソビエトだ。あちらの作戦の準備も進めているがな」
「防寒対策も進んでいるわよ」
「ソビエトは寒い。私もそれを考えて防寒艦を考えた」
 そうしたというのだ。レーティアは先の先を読んでいた。
「ソビエトの武器は国力だけじゃない。寒さもある」
「それに対してどうするか」
「だからだ。私はあえて防寒艦も考えたのだ」
「そういうことね。やっぱり貴女は天才ね」
「先の先を読んで仕掛け動く」
 英邁、まさにそれだった。
「運ではなくそれによって戦うものだ」
「ええ。そして今回も」
「エイリスに対してもそうする。しかしだ」
「しかし?」
「ドクツは大丈夫だがな」
 微妙な顔になったレーティアだった。ここで。
 そしてそのうえでだ。こう言うのだった。
「だがな。問題は」
「イタリンかしら」
「北アフリカ戦線は大丈夫なのだろうか」
「掌握したらしいわよ」
「そしてエイリス軍はか」
 アフリカ戦線の彼等はどうかというのだ。
「スエズに追い詰められているか」
「そうなっているわ。イタリン軍はスエズに入ろうとしているわ」
「攻めているか。そしてスエズも占領できればな」
「私達にとって大きいわよ」
「しかし本当に大丈夫なのだろうか」
 どうしてもだ。レーティアはイタリンへの不安を払拭できなかった。顔にもそれが出ている。
 そしてその不安な顔でだ。グレシアに言うのだった。
「イタリンはな」
「ドウーチェがあれで?」
「悪い人ではないのだがな」
「努力もしてるけれどね」
「あの人はな。嫌いではない」
 レーティアは個人的な感情も口にした。
「ムッチリーニ総帥はな」
「私もよ。それにレーティアはイタちゃん達も子豚ちゃん達も好きよね」
「プロイセン君が特にそうだが憎めないのだ」
 プロイセンはドクツの中でも随一の親イタリン派なのだ。そしてレーティアも実はだった。
「あの国の全てがな」
「好きなのね」
「いい国だ。食べ物も美味しければ気候もいい」
「そして奇麗な風景に建物」
「ドクツにはないものが全てある」
「イタちゃん達も可愛いわね」
 グレシアもイタリア達が好きだった。彼等のことを話していてにこにことなっているのが何よりの証だ。ドクツは感情的にイタリンが好きなのだ。
 レーティア自身もだ。しかしだった。
「だが兵器も提督達もだ」
「なってないっていうのね」
「黒ビキニの提督も問題だが」
「兵器も酷いものね」
「あれで勝てるのか」
 甚だ疑問だというのだ。
「エイリスも強いのだぞ」
「彼等も馬鹿じゃないわね」
「そして極端に楽観的でもない」
「戦場でも逃げないし」
 楽観的で逃げるんはどちらか。言うまでもなかった。
「手強い。ましてや北アフリカにも騎士提督が赴いている」
「油断できないわね」
「マンシュタインかロンメルを援軍に向かわせたいが」
「その余裕がないわね、我が国も」
「エイリス相手に戦力が一杯だ」
「ここで一個艦隊でも減らせば」
「勝てない」
 エイリスにだ。そうだというのだ。
「間違いなくな」
「私もとりあえず艦隊を率いようかしら」
「祖国君からの愛情を受けてか」
「ええ。それに貴女もそうする?」
「そうするべきか。しかしここで二個艦隊は大きいがだ」
「それでもなのね」
「楽観はできない。まして私達が艦隊を率いてもだ」
 それでもどうかと。レーティアは悩む顔で述べていく。
「それは予備兵力にしなければならない」
「そうね。その時はね」
「だが二個艦隊。私達の分も用意しよう」
 早急にだ。このことも行うことが決まった。
「今ならまだ間に合う」
「ええ、それじゃあね」
「イタリンには不安だが期待しよう」
 そうするしかできなかった。彼等の国ではないからだ。
「ではだ。我が国はこれよりだ」
「エイリスとの決戦ね」
「それに入る」
「それで作戦名は何にするのかしら」
「作戦名か。そういえば決めていなかったな」
「それはどうするの?」
「そうだな」
 ここでだ。レーティアはだ。
 部屋の中のぬいぐるみの一つ、海驢のそれを見た。そしてこう答えた。
「海驢だ」
「海驢ね」
「そうだ、作戦名を海驢作戦とする」
 咄嗟にだ。それにしたのである。
「海驢作戦だ。いいな」
「わかったわ。では今から海驢作戦をね」
「発動する。いいな」
「ええ、では今より」
「海驢作戦発動!勝利をこの手に!」
 レーティアが言いだ。早速だった。
 ドクツ軍はエイリスに向かった。その中にはだ。
 ドイツもいた。彼は己の旗艦の艦橋で腕を組んでいた。そうしてだ。
 モニターに映るプロイセンにだ。こう言ったのだった。
「いよいよだな」
「ああ、エイリスをぶっ潰すか」
「まさかここまで一気に行けるとは思わなかった」
「だよな。それでだけれどな」
「何だ」
「相棒、最近どうなんだよ」
 プロイセンはドイツに対してだ。彼のことを尋ねたのである。
「疲れとかないか?」
「ないが。また急にどうした」
「いやな。こうして連戦だからな」
「それは相棒もだろう」
 ドイツもだ。プロイセンを相棒と呼んでこう言った。
「戦いが続いている。だがそれでもだな」
「疲れ自体はないさ。むしろ絶好調だぜ」
「ならいい。俺もだ」
「じゃあこの戦いもいけるな」
「そう思う。勝機は充分にある」
 ドイツはエイリスに向かって進撃するドクツ軍も見た。そのうえでの言葉である。
「エイリスに勝てる」
「ならいいな。それでイタちゃん達も攻勢に出るらしいぜ」
「そこのことだがな」
 レーティアもだ。ドイツの旗艦のモニターに出て来て二人に告げてきた。
「アフリカは彼等に任せることにした」
「そうか。アフリカはイタリンか」
「イタちゃん達に任せるんだな」
「私達はエイリス侵攻に専念する」
 これがレーティアの今の作戦方針だった。
「一気に終わらせる」
「だが。イタリア達は大丈夫なのか」
 ドイツは真剣に憂いていた。イタリンのことを。
「あいつ等は戦争についてはどうしてもな」
「弱いというのだな、祖国君も」
「率直に言うがな」
「それは私もわかっている。しかしだ」
 だがそれでもだとだ。レーティアはドイツに言う。
「私達には援軍を送る余裕がない。エイリスに専念することがベストの選択だ」
「その通りだな」
 レーティアもドイツも同じ考えだった。そしてこの選択は正しかった。だが、だった。
 レーティアはドイツに対しては冷徹なまでに完璧に分析できた。他ならぬ彼女が率いている国であり何もかもがわかっていたからだ。だが、だった。
 イタリンのことはわかっていてもだ。それでもだった。
「しかしな」
「イタリンはか」
「イタリンだ。ドクツではない」
 このことが問題だった。
「だからだ。どうしてもな」
「そうだな。戦争を指揮することはできない」
「だからイタリンに任せるしかない」
 レーティアは不安ながらもだ。政治的判断を下すしかなかった。
「ここはな」
「何もなければいいがな」
「まあそうだな」
 プロイセンもだ。ここで言った。
「イタちゃん達は妹さん達は強いんだけれどな」
「あの兄弟は弱過ぎる」
 ドイツは暗い顔でロマーノとイタリアのことを言い切った。
「弱いにも程がある」
「援軍を送りたい。正直に言うとな」
 首を捻りながら言うレーティアだった。
「難しいものだな」
「戦争は政治の一手段か」
「そういうことだ。だから政治的に判断した」
「わかった。ではな」
 ドイツも自分の上司の言葉に頷く。そしてここでだ。 
 マンシュタインもモニターに出て来た。そのうえで彼等に言ってきた。
「では総統、祖国殿、プロイセン殿」
「うむ、敵艦隊を発見したな」
「はい、今前方に発見しました」
 マンシュタインはモニター越しにレーティアに述べた。
「これより攻撃を開始します」
「頼んだぞ。まずは主砲による一斉射撃だ」
「はい」
 敬礼でレーティアの言葉に応える。
「そうします」
「敵は多い。油断するな」
 レーティアはマンシュタインに告げた。
「では今から攻撃をはじめる」
「それではな」
「今からやるか」
 ドイツにプロイセンも応えてだ。そのうえでだ。
 ドクツ軍から重厚な光の帯が放たれた。それは一直線に銀河の闇を切り裂きエイリス軍を撃った。忽ちのうちにエイリス軍の艦艇の何隻かが撃たれ炎に変わった。
「ドクツの攻撃か!」
「相変わらず何という射程だ!」
 エイリスの将兵達はその攻撃を受けて叫んだ。
「こちらの射程に入るのはまだか!」
「すぐに敵の攻撃が来るぞ!」
「ビームだけじゃない!気をつけろ!」
 イギリスがだ。その彼等に叫んだ。
「すぐに高速艦隊も来る。うろたえるんじゃねえ!」
「は、はい!」
「わかりました!」
「今は落ち着いて陣形を維持しろ!」
 攻撃を受けてもそうしろというのだ。
「いいな!守れ!」
「そうよ。祖国ちゃんの言う通りにしてね」
 マリーもだ。戦場にいた。
「ここは守ってね」
「そうだ。我々は今はだ」
「守りに徹しよう」
 ロレンスにネルソンもいた。彼等も戦場に立っている。
「ここが正念場だ。少しでも乱れれば」
「そこにドクツ軍が入ってくる」
 だからだというのだ。
「隙を見せてはならない、今は」
「守り抜くことだ」
「そういうことです。だからです」
 イギリス妹もだ。戦場に立って言う。
「ここは慌ててはなりません」
「いいか、絶対に退くな!」
 イギリスも普段のすました感じはなかった。必死なものが前面に出ている。
「ロンドンを陥落させられたら終わりだ!わかったな!」
「そうです、一歩も退いてはなりません!」
 戦場にだ。セーラもいた。
「この戦いがエイリスの運命の時です。戦うのです!」
「女王陛下!」
「陛下も戦場に!」
「エイリスの女王は誰も戦いを他の者に任せはしません」
 エイリスの伝統だ。国家元首は女王であると共にだ。
 その女王は戦場に自ら赴いて戦うのだ。それがエイリスなのだ。
 だからセーラもだ。この戦場にいた。エイリス帝国の総旗艦ビクトリアの艦橋にいる。
 その艦橋に立ちだ。彼女は言うのだった。
「全艦隊迎撃用意!」
「はい!」
「わかりました!」
 将兵達も彼等の女王の言葉に応える。
「ではここで守り抜きましょう!」
「ロンドンを!」
 エイリス軍も決死の覚悟で戦闘に入っていた。両軍の死闘がはじまっていた。
 この戦いがはじまったことは当然ガメリカにも伝わっている。それを聞いてだ。
 四姉妹達はアメリカ兄妹達と一緒にピザやコーヒーを楽しみながらだ。こう言うのだった。
「できることなら今はエイリスには生き残って欲しいけれどね」
「そうよね。ここでエイリスが敗れるとドクツはさらに強くなるわ」
 ハンナにキャロルが話す。
「だからここはね。何とか頑張って欲しいわね」
「ええ。ただ今の状況だとね」
 どうかとだ。ハンナはソファーに座って足を組んでコーヒーを飲みながら述べた。
「危ういかも知れないわね」
「エイリスが負けたらどうするんだい?」
 アメリカは陽気にそのハンナに尋ねた。
「エイリスを陥とされたら終わりだぞ」
「その時は東南アジア、オセアニアの植民地に一斉に独立してもらうわ」
「そしてなんだな」
「ええ、ガメリカの同盟国になってもらうわ」
 そしてだとだ。ハンナはアメリカに話していく。
「日本を囲むわ。太平洋諸国で完全に包囲するわ」
「そして降伏させるんだな」
「今エイリスが負けたらね」
 そうするというのだ。
「そうなってもらうわ」
「そうか。それはそれでいい流れになるんだな」
「ガメリカにとってはね。そして勝てばね」
「このままだな」
「日本にエイリス領を占領してもらうかエイリスに消耗してもらってね」
 そしてだというのだ。
「後は一緒よ」
「そうなるんだな」
「ええ。ただフィリピンさんは」
「今来たわよ」
 アメリカ妹は部屋の扉が開いたのを見てハンナに話あした。
「丁度いいタイミングね」
「そうね。フィリピンさんいいかしら」
「戦争のことかな」
「ええ。まあ一緒にピザ食べて」
 ハンナはフィリピンを自分達の食事に誘った。フィリピンもそれを受けてだ。
 席に着く。そのうえで彼もピザとコーヒーを飲み食いする。その彼にだ。ハンナは言った。
「日本軍がフィリピンに来て。対処できなかったらね」
「撤退するんだね」
「一時そうしてもらうわ。ハワイまでね」
「わかったよ、じゃあその時はね」
「日本をそこで倒せたら一気に日本本土まで侵攻ね」
 キャロルも楽しげに話す。
「で、ソビエトに向かってもらってね」
「エイリスはこの戦争で間違いなく消耗するわ」
 ドロシーはエイリスについて淡々と述べた。
「今のドクツとの戦いに勝っても」
「今の時点で植民地の艦隊まで動員しちゃってるしね」
 キャロルは楽しそうにこのことを指摘する。
「生き残っても植民地維持できるかしら」
「維持をさせないのよ」
 ハンナはシビアにだ。そうすると言い切った。
「その為に私達が仕掛けるからね」
「どうなってもエイリスは東南アジア、オセアニアを失うわ」
 ドロシーがまた言う。
「そしてその後は」
「あの、ただ問題は」
 この場でははじめて言葉を出すクーだった。
「日本をどれだけ叩くかだけれど」
「日本にはこの戦争の後でソビエトと対峙してもらうわ」
「じゃあ。それなりの国力を残しておかないと」
「日本に対しては限定戦争を仕掛けるわ」
 ハンナは悠然とした姿勢でクーに述べる。
「特に恨みもないしね」
「それに危険な思想も持っていないから」
「プレジデントは違う考えみたいだけれどソビエトは危険よ」
 財閥の代表者としての立場からだ。ハンナも他の四姉妹の面々もそう見ていた。
 そのうえでだ。彼女はアメリカに言うのだった。
「祖国さんもそこはわかってくれてるわね」
「当然だ。それにロシアじゃないか」
「そう。ただ共有主義があるだけじゃないのよ」
「ロシアは敵だぞ、ガメリカにとって最大の」
 アメリカはハンナに対して力説する。
「それに日本と僕はあまり何もないぞ」
「日本帝国は太平洋経済圏にいて何の問題もないわ」
 ハンナもだ。日本についてはこうした考えだった。
「むしろ下手に弱くなってもらったら困るわ」
「あたし達でロシアをぶん殴ったら駄目なのかい?」
 アメリカ妹はハンナにこう尋ねた。
「そっちの方がわかりやすいと思うんだけれどね」
「それも手だけれどね」
「不都合でも?何か」
「今すぐにそれはするべきではないわ」
 ハンナはアメリカ妹に対しても先の先を見ているその青い目で述べた。
「まずは太平洋経済圏の確立よ。それにソビエトとの直接対決はリスクが大きいわ」
「それでなんだね」
「ロシアだけでも厄介だけれど」
 それに加えてだというのだ。
「ウクライナやベラルーシもいるわね」
「後はバルト三国だね」
「しかも冬将軍もあるわ。暫くは日本帝国だけでやってもらうわ」
「というかね。日本にはちょっと苦労してもらわないとね」
 キャロルが少しばかりむっとした顔になって言ってきた。
「あそこの馬鹿司令には色々思うところがあるし」
「東郷かい?」
「そうよ。祖国ちゃんも知ってるわよね」
「勿論だ。そして君は」
「そこから先は言わないでね。わかってるから」
 キャロルはアメリカにもそのむっとなった顔を向けた。
「自分でね」
「なら言わないぞ」
「そうしてくれると有り難いわ。それでね」
「ああ、日本との戦いになったら」
「あたしが国防長官として仕切るから」
 戦略は彼女が立てるというのだ。
「あとはフィリピンちゃんのところに送った」
「ダグラスさんだね」
「そう。フィリピンちゃんにも頑張ってもらうから」
「わかってるよ。僕もやるからね」
 フィリピンは微笑んでキャロルのその言葉に応える。
「頑張らせてもらうよ」
「ただ。今は無理はしないでね」
 キャロルはフィリピンへの気遣いも見せた。彼女もただ血の気が多いだけではないのだ。
 それ故にアメリカの友人でもあるフィリピンにだ。こう言ったのだ。
「本格的な戦いはもっと後だからね」
「ハワイだな」
 アメリカが明るくこの場所を話に出した。
「じゃあ大王にも話しておくか」
「あの王様ねえ」
 キャロルは王と聞いてだ。今度は微妙な顔になった。
「ちょっとね」
「あっ、キャロルは大王は苦手だったか」
「だってね。普通に宇宙空間で動けるのよ」
「しかも攻撃もできるな」
「そんな人だからね。怪獣も倒せるから」
「凄い人だな」
「凄過ぎるのよ。ハワイを快く譲ってもくれたけれど」
 ハワイは元々はガメリカではなかったのだ。しかしその王がガメリカとの交渉の末ハワイの民達の立場や権益の完全な保障を条件にガメリカに譲ったのだ。
「敵じゃなくて何よりだけれどね」
「僕はあの人のことが好きだぞ」
「あたしも嫌いじゃないけれどそれでもなのよ」
「苦手なのか」
「どうもね。祖国ちゃんとも妹ちゃんとも仲がいいけれど」
 キャロルはここでアメリカ妹も見る。
「あたしはちょっとね」
「そうなのか」
「とりあえずあの人の力に頼らず既存の艦隊で戦うから」
 ガメリカ軍、彼等でだというのだ。
「ハワイがあれば何とでもなるわ。あそこから反撃するから」
「ハワイの要塞化も整ってるわね」
「ばっちりよ。任せて」
 キャロルは明るい顔でジェスチャーも含めてハンナに答えた。
「あたしと祖国ちゃんでしっかりやったわよ」
「そうなのね、祖国さん」
「ああ、キャロルは頑張ってくれたぞ」
 アメリカはハンナにも答える。
「ドロシーの科学技術も使った最新鋭の洋裁だぞ」
「祖国さんの為なら何も惜しまないわ」
 ドロシーはアメリカのことについても淡々と述べる。
「ガメリカ人だから」
「そうだな。ドロシーもいい娘だぞ」
「ちょっとばかり無表情だけれどね」
 アメリカ妹は右目をウィンクさせてそのドロシーに述べた。
「けれど頼りにしてるよ」
「有り難う」
「じゃあ。軍事費は調達するから」
 クーがまた言う。
「予算のことは任せて」
「ニューディール政策で何とか立ち直ったけれど」
 ハンナはまたシビアな口調で述べた。
「それでもまだ我が国は経済的に辛いわね」
「それは何とかできるから」
 クーはこうそのハンナに答えた。
「祖国さん達の体調も任せて」
「クーにもいつも助けられてるな、僕は」
「だから。ガメリカ人だから」
 それは当然だとだ。クーはその気弱そうな態度でアメリカに答える。
「気にしないで、祖国さん」
「いやいや、僕は感謝の気持ちは忘れないぞ」
 アメリカは明るくクーに返す。
「クーはよく頑張ってくれてるぞ」
「すいません」
「クーの方こそお礼はいいぞ。さて、それではだ」
 アメリカが場の音頭を取ってきた。
「これから正義の為に戦おう」
「ええ、ガメリカの正義の為にね」
 ハンナが最初にアメリカの言葉に応える。
「私達も戦いましょう」
「じゃあ。コーヒーとかコーラだけれど乾杯ね」
 キャロルは自分が持っているコーヒーカップを手にして一同に言った。
「ガメリカの為にね」
 こう言ってだ。アメリカ達と四姉妹は共にコーヒーやピザを楽しみながらこれからのことを考えていた。エイリスは他の国々に冷めた目でその国難を見られていた。


TURN23   完


                         2012・5・10



それぞれの思惑が入り混じりって感じだな。
美姫 「そうね。でも、ソビエトは共通してあまり受け入れられていないわね」
だな。後はエイリスも孤立に近い形だよな。
美姫 「そうよね。これで戦闘が始まったら、どうなっていくのかしらね」
どう展開していくのか、楽しみです。
美姫 「次回も待ってますね」
ではでは。



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