『ヘタリア大帝国』




                          TURN20  エルミーの来日

 東郷にだ。日本が話してきた。
「ドイツさんから連絡が来ています」
「あの人からか?」
「はい、会われますか?」
「そうだな。ではドイツ大使館に行こう」
 大使館の中なら国家は自由に行き来できる。それでだ。
 東郷は日本と共にドイツ大使館に向かった。その西欧風の建物に入るとだ。
 すぐに黒の軍服、ドクツ軍のそれを来たドイツが出迎えてきた。ドイツは日本と握手をしてからだ。こう東郷に対して言ってきたのである。
「こちらの総統閣下からの話だが」
「レーティアさんからですか」
「そうだ。そちらに援軍を送りたいとのことだ」
「援軍ですか」
「日本はガメリカと緊張状態にあるな」
「はい」
 その通りだとだ。日本はドイツの問いに素直に答えた。
「否定はできません」
「そうだな。それでだ」
「ガメリカとの戦いの為にですか」
「援軍を送りたいとのことだ」
 あらためて話すドイツだった。
「既に人選も整えている」
「それは誰だい?」
 東郷がドイツに尋ねてきた。
「そちらの妹さんだったら歓迎だが」
「いや、残念だがそれはない」
 ドイツは東郷のことを知っている。だからいささか引いた目になって彼に応えた。
「一応言っておくが人間は国家と交際はできないからな」
「ははは、それは俺もわかっているさ」
 東郷は余裕のある態度でドイツに返した。
「だがそれでも女の子が増えることはいいからな」
「そうなのか。しかしだ」
「しかし?」
「ここに来るのは女の子だ」
「女性提督か」
「そうだ。そして艦隊も一つ来る」
「誰でしょうか、一体」
 東郷に代わって日本がドイツに尋ねた。
「ドクツから派遣されるその方は」
「エルミー=デーニッツ中将だ」
 ドイツは彼女の名前を日本と東郷に伝えた。
「最新兵器による艦隊と共に来る」
「成程。マジノ線だな」
 東郷はドイツの話を聞いてすぐに言った。
「あの要塞線を攻略した兵器だな」
「何っ!?何故そう考えた!?」
 流石に詳しいことは同盟国相手でも言えなかった。だがドイツは東郷の今の言葉に驚きを隠せずだ。その顔を驚愕させて彼に言葉を返したのである。
「貴方は何者だ!?」
「いや、ちょっと予想しただけだが」
 東郷はここでも余裕のあるまま返した。
「違うのならいいが」
「言うことはできない」
 その驚愕した顔で返すドイツだった。言っているのも同じだったが。
「だがそれでもだ」
「その提督と兵器による艦隊か」
「それを送らせてもらいたいが」
「そうですね。それでは」
「少しこちらで話をしていいか」
 決断はだ。それからだとドイツに返す日本と東郷だった。
「援軍、しかも最新兵器となるとです」
「こちらでも色々と話し合わないといけないからな」
「わかった。では明日返事をしてくれるか」
 ドイツは会議の時間を考えて二人に言った。
「明日またここに来るからな」
「わかりました。それではです」
「その時にまた会おう」
 日本と東郷はドイツに応えてだ。それからだった。
 一旦帝の前に赴いた。そこには山下と秋山、柴神がいた。だが宇垣はいない。東郷は彼がいないことについてだ。それで少し残念そうに言ったのだった。
「宇垣さんがいないとそれはそれで寂しいな」
「よくそんなことが言えるな」
 即刻だ。山下はその東郷を睨みすえて言ってきた。
「外相のお話を一番聞かないのは誰だ」
「俺だと言いたいのかな」
「そうだ。閣下も困っておられるぞ」
 それでも見捨てず注意し続けるのが宇垣である。
「貴様のその不真面目さにはな」
「ははは、俺は堅苦しいことは苦手だからな」
「海軍長官としてあるまじき言葉だと思わんか?」
「特に思わないと言えば?」
「貴様のそのふしだらさを軽蔑する」
 既にそうしているがそれでも言う山下だった。
「全く。とんでもない奴だ」
「てっきり斬るとか言うと思ったが」
「帝も来られる。それに祖国殿の御前だ」
 だからだというのだ。
「その様なことはしない」
「じゃあ俺は命拾いをした訳か」
「残念ながらな。とにかくだ」
「間も無く帝が来られます」
 秋山が言う。
「それではです」
「はい、それぞれの席につきましょう」
 日本も言いだ。そうしてだった。
 一同はそれぞれの席に着いた。そのうえで帝を迎えた。帝は己の席に着座するとすぐにだ。東郷達に対してこう問うた。
「ドクツからの援軍ですね」
「はい、ドイツさんからお話がありました」
 日本が帝のその問いに答える。
「最新兵器による艦隊を送らせてもらいたいとのことです」
「最新兵器ですか」
「そうです。おそらくですが」
「あのマジノ線を攻略した兵器でしょうね」
 東郷がここで帝にこのことを話してきた。
「それを送ってくれるとのことです」
「我が国がガメリカに遅れを取ると判断してのことですね」
「はい、だからです」
 それ故にだと話す東郷だった。
「それで帝はどう思われますか」
「日本帝国とガメリカ共和国の国力差は圧倒的です」 
 帝もよくわかっていた。このことは。
「それを覆すことは容易ではありません」
「その通りです。やはりガメリカは強大です」
「しかも相手はガメリカだけではありません」
 帝はこのこともわかっていた。それも痛いまでに。
「エイリスもいますしまだ中帝国もいます」
「敵は多い」
 柴神がここで言った。
「劣勢という言葉でもまだ足りない位だ」
「だからです。私としてはです」
 帝がこう言うとだ。東郷はその帝にすぐに尋ねた。
「では帝はこのことについてどう思われますか
「はい、いいと思います」
 賛成だというのだ。ドクツからの援軍について。
「こちらとしても有り難い話です」
「そうですね。奴等と戦うにはです」
「戦力が少しでも必要です」
 山下と秋山も己の意見を述べる。
「ですからドクツの援軍は有り難いことです」
「新型兵器のこともわかりますし」
「私も賛成です」
 最後に日本が言った。
「お受けしましょう」
「私も賛成です」
 東郷は帝の御前なので一人称を畏まったものにさせていた。流石の彼も帝の御前ではあらたまった態度になっている。それでも山下達から見れば無礼であるが。
 全員賛成だった。それを見て帝は言った。
「ここで首相がいれば完璧でしたが」
「伊藤閣下はまだ傷が癒えていません」
 山下がその首相について話した。
「満州でのテロの傷がまだ」
「そうですね。復帰はまだ先ですね」
「残念ですが」
「しかし。平良提督といいです」
 帝はこの男の名前を出したうえで困った顔になりこう述べた。
「韓国さんの国の人のテロが目立ちますね」
「しかしです。首相にしても平良少将にしてもです」
 どうかとだ。山下は帝に話す。
「韓国に対して好意的な人物ですが」
「そうですね。それもかなり」
「その人物がテロの標的になるというのもおかしな話です」
「平良もですね」
 彼の場合は良民を虐げる元両班を懲らしめたところその背中を刺された。不覚と言えば不覚だがそれでも韓国の為に動いた結果であることは間違いない。
「彼等はいいことをしたと思いますが」
「だからこそ訳がわかりません」
 山下は眉を顰めさせ帝に話す。
「そもそも首相は併合反対派でしたし」
「やはりあの併合はするべきではなかったのではないのか」
 柴神は本気で言った。
「今更ではあるがな」
「そうですね。ですが併合してしまいましたし」
 帝も困った顔で言う。
「この問題もどうにかしたいですね」
「帝には何かお考えが」
「少し考えてみます」
 秋山にもだ。帝は答えた。
「このことについて」
「私も考えてみる」 
 柴神もここで言う。
「何か答えがある筈だ」
「そうですね。それでは」
「少なくともこうテロが続くとです」
 日本も首を傾げさせている。
「無視できませんから」
「はい、本当に」
 日韓併合の話もするのだった。そうしてだ。
 日本と東郷はその次の日にドイツ大使館に行きだ。ドイツに御前会議での決定のことを伝えたのだった。ドイツはそのことを聞いて言った。
「わかった。では俺から総統閣下に伝えよう」
「はい、わかりました」
「そうしてくれるな」
「すぐにそちらに援軍を送らせてもらう」
 その艦隊をだというのだ。
「暫く待っていてくれ」
「それではですね」
 日本が応えた。こうしてだった。
 ドクツから艦隊が送られることになった。そして実際に暫くしてだ。
 日本本土にその艦隊が到着した。港に入ったその艦隊を見て言ったのは田中だった。
「何だありゃ、駆逐艦じゃねえな」
「はい、違いますね」
「もっと小さい感じだね」
 彼の傍にいる小澤と南雲が応える。
「外観ものっぺりしていますし」
「普通の艦じゃないのはわかるね」
「あれは何ていうんだ?」
 田中はその艦艇達を見ながら言う。
「それでよ」
「潜水艦というらしい」
 秋山が田中達のところに来て話す。
「それがあの艦の名前だ」
「潜水艦?」
「そうだ。私もはじめて見るがだ」
「あれが新兵器なあ」
「空母とはまた違いますね」
 小澤は空母を引き合いに出して話す。
「あの様に大型ではなくですか」
「隠れて戦うんだね」
 南雲は潜水艦という名称からもこう見た。
「こっそりと近寄って」
「はい、そうです」
 ここでもう一人出て来た。小柄な白人の少女だ。
 見ればドクツ軍の軍服とミニスカートを着ている。頭には略帽がある。その少女が来たところでだ。
 秋山は彼女を手で指し示しながらだ。三人に話した。
「この方が客員提督となられる方だ」
「エルミー=デーニッツです」
 少女は自分からドクツの敬礼と共に名乗った。
「宜しくお願いします」
「ああ、宜しくね」
 三人は日本帝国の敬礼で応える。そして南雲が気さくな言葉を出してきた。
「可愛いお嬢ちゃんだね」
「可愛い、ですか」
「自分ではそう思っていないのかい?」
「確かに。言われて悪い気はしませんが」
 頬を微かに赤らめさせて返すエルミーだった。
「ですがそれでもです」
「おや、言うのは駄目かい?」
「私は軍人です」 
 だからだというのだ。
「そうした言葉は慎んでもらった方が」
「いいんだね」
「はい、お願いします」
 こう南雲に言うのだった。
「くれぐれも」
「わかったよ。じゃあ言わないね」
「はい」
「それでだけれどさ」
 南雲はあらためてエルミーに言ってきた。
「あの潜水艦だね」
「はい、あの艦ですね」
「あれは具体的にはどういった兵器だい?」
「異次元に一時潜行し身を隠し」
 エルミーは南雲達のその潜水艦の説明をはじめた。
「そのうえで敵に接近し鉄鋼弾等で攻撃するものです」
「つまり見えない駆逐艦ですね」
「簡単に言えばそうです」
 そうだとだ。エルミーは小澤の問いに答えた。
「元々は駆逐艦を改造した艦艇です。ですが」
「隠れることができることがですか」
「そこが大きく違います。その異次元の存在はです」
 潜水艦が潜航するだ。そこのことも話される。
「我が総統閣下の発見の一つです」
「レーティア=アドルフ総統ですね」
「はい」
 エルミーは秋山の問いにその顔を上気させて応える。
「あの方は本当に天才です。私達なぞでは及びもつかない方です」
「その様ですね。多くの発明と発見を為されています」
「我がドクツは総統閣下と共にあります」
 エルミーの言葉はその声をさらに上気させた。
「あの方がおられる限りはです」
「そうですね。ではこれからです」
「お願いします」
 エルミーは今度は礼儀正しく秋山に応えた。
「枢軸の為に」
「枢軸?三国同盟のことだよな」
「そうです」
 エルミーは田中に対してすぐに答えた。
「我がドクツに日本帝国、そしてイタリンの三国の同盟です」
「だよな。俺達が枢軸で」
「どうやらガメリカ達も同盟を結んだらしい」
 秋山はその目を顰めさせて言った。
「こちらは連合だ」
「ガメリカ共和国、エイリス、中帝国、オフランス、そしてです」
「人類統合組織ソビエトも加わったとか」
「彼等は連合というそうですね」
 エルミーは秋山と話していく。
「五カ国による同盟です」
「オフランス王国は占領したのですが」
「マダガスカルに臨時政府を置きましたね」
「フランス兄妹が逃れ」
 彼等も敗北を認める訳にはいかなかった。その結果だった。
「そうなりました」
「しぶてえな。ったくよ」
 田中はオフランスの事情を聞き学生、柄の悪いそれめいた悪態をついた。
「負けたらさっさと降伏すりゃいいのによ」
「私もそう思います。ですが」
「オフランスは生き残りました」
 秋山は事実を淡々と述べた。
「そうして連合が結成されました」
「つまりあれだね」
 南雲は秋山の話を聞いて言った。
「枢軸対連合の戦いになるんだね」
「構図は一次大戦と同じですね」
 小澤は先の大戦のことから話す。
「ただ。枢軸の顔触れが変わっていますが」
「連合の顔触れは先の世界大戦と同じですね」
 エルミーはその連合の顔触れにはこう話した。
「やはりあの五国です。しかしです」
「はい、ドクツには及ばずながら我々がいます」
 秋山が真剣な面持ちでデーニッツに言ってきた。
「ではこれからはです。友軍としてです」
「宜しくお願いします」
 エルミーは秋山の言葉にまた敬礼で返した。こうして彼女は己の潜水艦隊と共に日本帝国軍に加わった。そのうえで秋山を潜水艦のところに案内しようとする。
 だがここでだ。エルミーはふとこう言ったのだった。
「あの、それでなのですが」
「はい、何でしょうか」
「秋山少将は参謀総長ですね」
「その役職を仰せつかっています」
「では連合艦隊司令長官は」
「もうすぐ来られると思いますが」
「ますがとは?」
 エルミーがその不明瞭な言葉に首を捻るとだ。二人のところに日本が来た。
「あっ、こちらにおられましたか」
「日本さんでしょうか」
「はい、そうです」 
 その通りだとだ。日本はエルミーに敬礼をして応えた。
「私が日本です」
「この国ですか」
「ドイツさんからお話は聞いていると思いますが」
「はい、自分でも調べさせて頂きました」
 返礼をしながらだ。エルミーは日本に答える。
「そうさせてもらいました」
「では私のことは御存知ですね」
「人類最古の歴史を持つはじまりの八国の一つ」
 エルミーは日本をこう表現した。
「その中でもとりわけ古い国家ですね」
「生まれたのは同じ頃です」
 はじまりの八国の生まれた頃はだ。同じだったというのだ。
「ですが柴神様と共に今の国家を築いたのは」
「人類ではじめてでしたね」
「政府のある国家になったのはそうですね」
「その日本さんですか」
 エルミーは無意識のうちに神秘を見る目になっていた。眼鏡の奥のその目は少女の、好奇心に満ちた目だった。その目になっていたのだ。
 そしてその目でだ。エルミーは日本にまた言った。
「御会いできて光栄です」
「いえ、そう言われますと」
「何か?」
「気恥ずかしいので止めて欲しいののですが」
「そうなのですか」
「はい、そうお願いできるでしょうか」
「それでしたら」
 エルミーが日本のその言葉に応えるとだ。ここでだ。
 軍服の前をはだけさせ紅いマフラーを出している青年が来た。その隣には奇麗な女性、日本帝国海軍の士官の軍服を来た女性がいる。その彼を見てだ。
 エルミーは今度はその顔をやや曇らせてだ。こう言った。
「東郷毅長官ですね」
「如何にも」
 東郷は女性同伴のまま陽気に返す。
「俺のことも知っているみたいだな」
「お話は常々窺っています」
 警戒するものも含んでだ。エルミーは東郷に返す。
「確かに優秀な軍人ですが」
「ですが、なんだな」
「その素行は問題があると」
「ははは、自覚はしているさ」
「今日もですか」
「同意のうえさ。そして相手がいる場合は手を出さない」
 これが東郷のポリシーだった。
「相手が誘ってきてもな」
「ですが今交際されている相手は何人ですか?」
「二十人かな」
 東郷は飄々とした感じでエルミーの問いに答えた。
「それ位か」
「あの、二十人も同時とは」
「駄目だというのかい?」
「ふしだらではないですか?」
 警戒にさらにだ。嫌悪と軽蔑を込めて言うエルミーだった。顔にもそれが出る。
「仮にも海軍長官ともあろう方が」
「真面目にしていてそれで結果が出る訳じゃないと思うが」
「それでもです。軍人ならばです」
「真面目にか」
「そうです。客員提督ですが」
 だがそれでもだというのだ。
「謹言させて頂きます」
「聞かせてもらおうかな」
「はい、そうしたふしだらなことはお止め下さい」
 先程と同じことを言う。
「軍人、そして海軍長官としてです」
「悪いが女の子は大好きでね」
「お止めにならないのですね」
「何、誰にも迷惑はかけないさ」
 その自信はあった。確信の域に達した。
「安心してくれ。そうしたことは」
「安心できません。そもそもですね」
「やれやれ。秋山がもう一人増えた感じだな」
「誰が見てもそうです」
 秋山の名前が出るとだ。本人も言ってきた。
「長官はそもそもです」
「ははは、世話女房だな相変わらず」
「女房ではありません。私は参謀としてです」  
 参謀総長である。海軍の。
「長官をお諫めしているのです」
「まあ迷惑はかけないからな」
「そういう問題ではないとです」
 秋山はエルミーと共に言おうとする。しかしだった。
 二人と東郷の間にだ。日本が入って来て言うのだった。
「まあ。それ位にして」
「祖国殿もそうして長官を甘やかされるから」
「いえ、長官は頑張っておられますから」
 この辺りは確かに優しい日本だった。
「こうしたことは多少は大目に見て」
「多少どころではないですが」
「まあそこは秋山さんもエルミーさんも抑えられて」
「祖国殿がそこまで仰るのでしたら」
 秋山も強く言えなかった。祖国が相手ではだ。
「わかりました」
「そういうことでお願いします」
「はい。しかしです」
 秋山は東郷への小言は止めてだ。そうしてだった。
 そのうえで潜水艦を見た。潜水艦は彼等のすぐ横にある。
 何隻かあるがそのうちの最も大きなものを見てだ。こう言うのだった。
「これで巡洋艦位の大きさですね」
「小さいと言われるのですね」
「大きいとは言えないかと」 
 秋山は向かい合う形で共にその潜水艦を見るエルミーに答えた。
「巡洋艦程の大きさですね」
「はい、この潜水艦は巡洋艦を参考に設計、開発されたものです」
「やはりそうですけ」
「フォルケーゼといいます」
 それがこの巡洋艦の名前だというのだ。
「ドクツ潜水艦隊の旗艦です」
「ではこの艦にですか」
「私は乗っています」
 まさにそうだというのだ。
「何でしたら中に入られますか?」
「宜しいのですか?」
「同盟国として。技術援助も兼ねての来日ですから」
 それ故にだ。エルミーはそれもいいというのだ。
「ですからこちらとしてもお願いします」
「わかりました。では好意に甘えまして」
 秋山はエルミーのその提案に応えた。こうしてだ。
 日本帝国軍の主立った幹部達がその潜水艦フォルケーゼの中に入った。エルミーの案内でだ。その中には科学技術長官の平賀もいる。
 平賀は潜水艦の狭く機能的な艦内を見回す。そうしてだった。
「凄いな」
「凄いですか」
「これは天才の造るものだ」
 こう言うのだった。ただしそれは平賀が言うのでなかった。
 久重だった。彼が今回も平賀の言葉を代弁していた。
「ここまで画期的な艦はかつてなかったものだ」
「そうですか。ところで」
「ところで?」
「何故猫が喋っているのですか?」
 エルミーは平賀の頭の上にいる久重を見て言う。お互いに小柄なのでエルミーの頭の高さに久重を見る形になっていた。彼をやや見上げている。
「先程もしゃべる犬や猫がいますが」
「ああ、アストロコーギーにアストロ猫に」
「パンダに猿も」
「彼等は私と同じなんですよ」
 久重は自分の言葉でエルミーに話す。
「津波様に喋る様にしてもらったんです」
「平賀博士にですか」
「はい、脳と声帯を改造してもらいまして」
「それで貴方もですか」
「私は津波様の代弁役です」
 そうだとだ。久重はまた自分から話す。
「以後お見知りおきを」
「はい。日本帝国には色々な動物がいますね」
 言いながらだ。エルミーは柴神も見た。
「犬と人の合いの子の方も」
「いや、私は合成獣ではなく元からこの姿だ」
「犬人ですか」
「言うなら犬神か」
 やや不吉な祟り神ではない。文字通りのそれだというのだ。
「私はそれになるか」
「神だというのはですか」
「君達の概念で言えば神になるか」
「そうですか」
「そう考えてくれていい。だが特別視しないでもらいたい」
「神でもですか」
「私は私だ。飾ることもしないしな」
 だからだ。人間達も敬うこともだというのだ。
「そうしてくれ。普通に接してもらいたい」
「わかりました。それじゃあ」
「それではな。しかしだ」
 柴神も潜水艦の中を見回す。そうして言うのだった。
「画期的な兵器だ。しかしだ」
「しかし?」
「危うくもあるな」
 こうも言ったのだった。
「この兵器はな」
「危うい。そうですね」
 エルミーも柴神のその言葉に応えて述べる。
「一歩間違えればそのまま別の次元に言ってしまいますので」
「これまでのテストでそうなってしまった艦はあるか」
「機械操作で何度も」
 あったというのだ。
「流石に人ではありませんが」
「よかったな。それは」
「はい。ただ何度か危うい場面はありました」
「そうか」
 エルミーのその話を聞いてだ。柴神は犬のその顔に暗いものを見せた。
「気をつけてくれ。若しも向こうの世界に行けばだ」
「向こうの世界とは?」
「いや、何でもない」
 自分が言おうとしていることにだ。柴神は気付いた。それでだ。
 己の言葉を止めてだ。こう言ったのだった。
「とにかくだ。この兵器をか」
「日本でも開発できるでしょうか」
「私は新たな兵器の開発は不得意だが」
 平賀が言ってきた。やはり久重の口で。
「だがよりよい兵器にする自信はある」
「では」
「一度試作型を造ってみる」
 平賀は言った。
「そしてそのうえでだ」
「はい、実戦配備ですね」
「それを目指す。早いうちにな」
「試作型空母は見せてもらった」
 東郷はこう平賀に述べた。
「まさかあれ程のものとはな」
「あくまで試作型だ」
「ではまだまだか」
「これから通常空母も大型空母を設計、開発していく」
 平賀はまた話す。
「楽しみにしておいてくれ」
「頼む。魚で何時までも戦えないからな」
 魚達での戦いにもだ。東郷は見切りの時を考えていたのだ。
「第三世代の艦から配属していきたいな」
「わかった。そしてだ」
「開発費や建造費の軽減も計るか」
「そちらも研究していく」
 平賀は東郷に述べる。久重の口を通じて。
「あとは航路の研究もだな」
「どうもガメリカの方にあるみたいだな」
 東郷はその航路の話もした。
「ハワイからガメリカ本土に向かう航路とは別にか」
「ある様だな」
「若しあればガメリカ戦で戦略の選択肢が拡がるな」
「いいことだな。君にとっても」
「ああ、あれば見つけておきたいな」
 航路のこともだ。東郷は話した。その話の途中もだ。
 彼は艦内を見回っていた。厨房を見れば。
「狭い厨房だな」
「はい、極限まで狭いものにしました」
 エルミーはそのことを恥じることなく答えた。
「潜水艦は小型でなければならないので」
「その為だな。それでか」
「それで?」
「ここを開ければだな」
 座る場所のクッションの部分を手で開けるだ。その中からだ。
 ジャガイモが出て来た。見れば中に一杯である。
 そして天井にはソーセージが鍾乳洞の様にある。ザワークラフトの壺も壁に埋め込まれる形である。東郷はそうしたものを見て言うのだった。
「コンパクトにかつ合理的にか」
「そうしています」
「考えたものだな。そしてドクツだな」
「我が国だというのですか」
「ジャガイモにソーセージにザワークラフト」
 どれもドクツで非常によく食べられるものだ。特にジャガイモは主食と言っていい。
「そしてパンは」
「乾パンです」 
 エルミーはそれだと答えた。
「コーヒーもあります」
「質素だな、それはまた」
「質素なのはいいことだ」
 山下もいる。彼女は東郷をやや剣呑な目で見ながら言うのだった。
「海軍がそもそも贅沢過ぎるのだ」
「いや、国民の平均的な食事だが」
「平均では駄目なのだ。仮にも国家の基幹を預かる者ならだ」
 どうかとだ。山下はその右手を拳にして力説する。
「質素であるべきだ。だから陸軍もだ」
「玄米と少しのおかずか」
「それで充分の筈だ。だからこそデーニッツ殿の考えやよし」
 エルミーを褒めもする。
「軍人は常に質素でなければならないのだ」
「はい、その通りです」  
 生真面目なエルミーもだ。山下の力が入った言葉に応える。
「総統閣下も非常に質素な方ですので。ドクツ軍人である我々もです」
「質素なのだな」
「ドクツ人はジャガイモとパンとソーセージ」
 まずはこの三つだった。
「ザワークラフトとアイスバインがあれば戦い抜けます」
「あとビールもだな」
「ビールは必須です」
 エルミーは東郷の突っ込みに迷うことなく答える。
「ビールがなければ何ができますか」
「じゃあこの艦内でもか」
「勿論ビールも積んでいます」
 これは忘れていなかった。ドクツ人らしく。
「ビール製造機もあります」
「そうか。ビールは欠かせないか」
「当然ではないでしょうか」
 エルミーはドクツ人の考えから東郷に尋ね返す。
「それは」
「まあ日本ではまた違うがな」
「日本ではビールはあまり飲まれないのですか」
「飲むことは飲むがドクツさん程沢山飲まないな」
 東郷がこう言うとだ。日本も言う。
「私も。日本酒が主ですね」
「日本帝国のお酒ですか」
「デーニッツさんもどうでしょうか」
 日本はエルミーに自分の国の酒を勧めてきた。
「和食も。どうでしょうか」
「和食ですか」
「どうでしょうか」
「はい、機会があればお願いします」
 そうするとだ。エルミーも少し微笑んで日本の申し出に応えた。
「和食にも興味があります」
「ではこの見学の後に」
「えっ、今ですか」
「駄目でしょうか」
「いえ、お願いします」
 より後のことだと思ったので日本のいきなりの申し出に驚きはした。だがすぐに気を落ち着かせてだ。エルミーは日本に対してまた応えた。
「ではこの後で」
「お願いしますね」
「そうさせてもらいます」
「さて、ではだ」
 平賀がまた言う。久重の口から。
「早速試作型潜水艦の設計、開発もはじめよう」
「問題は誰が艦隊の指揮を執るかですね」
 秋山はこのことについて考える。
「誰がいいでしょうか」
「〆羅だな」
 東郷はまず彼女の名前を出した。
「あの娘は向いているな」
「ではまずは」
「そうだ。それにだ」
「それに?」
「もう一人欲しいな」
 東郷は艦内を見回しながら秋山に話す。
「潜水艦隊の司令官はな」
「その一人は誰にしますか」
「少し考える」
 今すぐにだ。結論は出さないというのだ。
「待っていてくれるか」
「わかりました。では」
「さて、新しい戦力が加わった」
 東郷はこのことに対して素直に喜んでいた。
「後はだな」
「平良提督の復帰も近いです」
「そして憂国獅子団からだが」
 平良と同じくだった。
「台湾駐留部隊から一人抜擢したいな」
「誰をですか?」
 日本が東郷にその抜擢する人物について尋ねた。
「台湾さんのところといいますと陸軍でしょうか」
「いや、海軍からだ」
「というと提督ですか」
「そうだ。福原いづみ少佐だ」
 日本帝国海軍で才媛と言われているうちの一人だ。人間的にも生真面目なことで知られている。
「あの娘を抜擢したい」
「そうですね。福原少佐なら」
「祖国さんもいいな」
「賛成です。ただ平良少将は」
「どうもな。韓国に行ったことは正解だったが」
 だがそれでもだとだ。東郷は難しい顔で述べる。
「予想以上にな」
「御考えが変わられたというのですね」
「国粋主義から妙に融和路線になったな」
「憂国志士団自体がそうなりましたね」
「台湾、韓国のことを知りな」
 そうしてだ。彼等は変わったというのだ。
「平良は少し韓国贔屓に過ぎる」
「いいことではないか」
 山下は東郷に対してだ。韓国贔屓はいいと述べた。
「少なくとも差別よりは遥かにいい」
「それはそうだが過ぎるとな」
「バランスが悪くなるというのか?」
「陸軍も韓国には優しいな」
「我々は公平なだけだ」
 陸軍は公平であることを誇りとしている。確かにそれは海軍以上である。
「誰であろうが優秀ならばだ」
「用いるんだな」
「貴様等海軍とは違うのだ」
 山下はここでも真面目に、生真面目なまでに言い切る。
「我が陸軍は差別なくだ。優秀な者は用いるのだ」
「それはいいが。日本と台湾、韓国のバランスを考えていかないとな」
 国家同士のだ。それをだというのだ。
「あまり台湾、韓国を贔屓するとそれはそれで祖国さんの立場が微妙なものになるからな」「私は別に気にしませんが」
「連合国家だとそれが問題になる」
 差別はよくないが贔屓も同じだけよくないというのだ。
「まあそこも考えていくか」
「左様ですか」
「解決案は必ずあるからな」
 東郷はこの微妙な問題にも悲観していなかった。最悪の事態は想定していたが楽観ではあった。何ごとも前向きに考えるのが彼の長所と言える。
 そのうえでだ。潜水艦の中を見回しながらまた言うのだった。
「戦艦、空母、そして潜水艦だな」
「その三つの艦種をですね」
「軸に考えていきたい。巡洋艦もだ」 
 この艦についてもだ。東郷は秋山に己の考えを述べた。
「空母のことを考えてだ」
「防空巡洋艦ですか」
「それも開発できればいいか」
「無論開発中だ」
 平賀はその東郷にすぐに答えてきた。
「安心してくれ」
「そうか。あとはバリア艦に鉄鋼弾装備の駆逐艦だな」
「通常の駆逐艦ではないのか」
「それもいいが鉄鋼弾装備の駆逐艦の方がいいと思う」
 東郷の戦術ではだ。そうなるのだった。
「索敵は駆逐艦に任せてだ」
「見つけた敵艦隊は空母や戦艦で先に打撃を与えるのだな」
「それで残った敵を駆逐艦の鉄鋼弾で止めを刺す」
 東郷はこう平賀に話す。
「その戦術を考えている」
「わかった。では設計、開発はそういったところを重点に置こう」
「頼む。本当に何時までも魚には頼れない」
「魚は強いが癖が強い」
 平賀は久重の口からこうも語った。
「扱いづらさは確かにあるな」
「それは気にならないが?」
「それは君の用兵が優れているからだ」
 東郷の資質はこうしたことにこそ発揮されるものだった。
「戦術も。艦隊編成もだ」
「ははは、俺が優れているからか」
「かといっても過信してもらっては困るがな」
「安心してくれ。それはないつもりだ」
 自信家だが慢心はしない。それが東郷だ。
「俺としても日本帝国軍の戦力のこともわかってるからな」
「そして君自身の資質もか」
「わかっているつもりだ。だからこそだ」
「魚には何時までも頼ってはいられない、だな」
「第二世代までは何とかなる」
 魚でだ。やっていけるというのだ。だがそこから先はだった。
「しかし。ガメリカやエイリスの正規軍と正面から戦うとなるとな」
「魚では辛いな」
「だからこそだ。兵器の設計、開発を頼む」
 あらためて言う東郷だった。
「宜しくな」
「わかった。では任せてくれ」
「ああ。それでこの潜水艦にしても」
「この見学が終わればすぐに取り掛かる」
 そのだ。設計、開発にだというのだ。
「試作型からだな」
「ではまずはこの潜水艦隊を使おう」
「お任せ下さい」
 エルミーは真面目な声で東郷に応える。
「必ず。戦果は出しますので」
「わかった。それじゃあな」
 こう話してだった。彼等は一旦見学を終えた。それからだった。
 東郷はエルミーをその日本帝国軍の主立った幹部達と共に食事に誘った。とはいっても長門の士官室である。そこに入ったうえでテーブルに着くとだ。
 早速だ。山下が憮然とした顔でこう言うのだった。
「陸軍の様に質素にはいかないのか」
「だから国民の普通の食事なんだがな」
「軍人たるもの質素であるべしだ」
 ここでもこう言うのだった。東郷を睨み据えながら。
「それで何故だ。ステーキだの何だのと」
「あの、山下長官」
 秋山もだ。少し唖然として山下に問い返した。
「今時ステーキが贅沢でしょうか」
「陸軍ではそうだ」
「ステーキは焼き魚と同じ値段ですが、秋刀魚等と」
 宇宙の時代だ。今時牛肉は普通だった。だが陸軍はだった。
「しかしなのですか」
「陸軍では牛肉の大和煮の缶詰だ」
「それが最大の御馳走なのですか」
「そもそもだ。ステーキなぞ贅沢にも程がある」
「では焼き魚もですか」
「いや、鰯はいいが」
 それはよかった。だが秋山は不安になってさらに問うた。
「鶏肉等は」
「鶏肉はいい」
「しかし牛肉はなのですか」
「安心するのだ。体格の維持の為に牛乳は奨励している」
「牛乳はいいのですか」
「安価だからな」
 ここでも質素さが考慮される陸軍だった。
「後は玄米と味噌汁と少量のおかずさえあればだ」
「陸軍はいいというのですか」
「何度も言うが海軍は贅沢に過ぎる」
 山下は憮然とした顔で語る。
「今回もデーニッツ提督の歓迎でなければここにはいない」
「ううむ、山下さんもです」
 その山下にだ。日本が言ってきた。
「落ち着いて下さい」
「祖国殿がそう仰るのなら」
「お願いします。今は親睦の場ですから」
「わかった。それでは」
 山下も祖国に言われると弱い。生真面目で忠誠心の強い彼女なら尚更だ。
 しかしエルミーはその山下の言葉にだ。目を輝かせて頷いて述べた。
「日本帝国は素晴らしい軍人がおられますね」
「山下さんのことですね」
「はい、質素倹約を常に忘れず自分自身に非常に厳しい」
 まさに山下の本質である。エルミーは既にこのことをよくわかっていた。
「尚且つ優秀な方ですね」
「はい、軍人として何の不足もありません」
 日本が最もよくわかっていて保障できることだった。
「素晴らしい方です」
「そうですね。この山下将軍がおられるのなら」
 陸軍なので提督にはならない。将軍になる。
「日本帝国も安泰ですね」
「この男が身をあらためればな」
 山下は東郷をまた睨み据えた。
「そうなのだがな」
「ははは、利古里ちゃんは相変わらず手厳しいな」
「当然だ。若しデーニッツ提督と何かあれば」
 完全に本気の言葉だった。
「斬る。覚悟しておけ」
「ご安心下さい、私もです」 
 エルミーもしっかりとした目で山下に応える。
「その時は容赦なく射殺します」
「そうだ。そうするべきなのだ」
 拳を振りかざしだ。山下は力説に入った。
「女たるもの貞節を護るべきだ。夫となる方以外の殿方に肌を許してはいけない」
「その通りです。山下将軍に同意します」
「では機会を見て陸軍の食事も食べてもらいたいが」
「お願いします」 
 こうした話をしながらだ。エルミーは長門の士官室において海軍の食事を馳走になった。そうしてその後でだ。フォルケーゼに戻って部下達に話したのだった。
「日本帝国軍の食事ですが」
「どうでしたか?」
「どういったものでしたか?」
「洋食でした」
 そうだったというのだ。まずは。
「ですからフォークとナイフ、それにスプーンを使いました」
「では我々の食事と変わらないのですか」
「そうしたものだったのですね」
「はい。ただ」
「ただ?」
「ただといいますと」
「味は違いました」
 ドイツの味とはだ。また違っていたというのだ。
「どうも薄めで。それに」
「それに?」
「それにといいますと」
「ソイソースの味もしました」
 醤油だ。日本の醤油の味もあったというのだ。
「微かにですがどのお料理にも入っていました」
「ううむ、ではチーズやバターよりもですか」
「ソイソースの味がしたのですか」
「乳製品の味は弱かったです」
 そうだったというのだ。長門の食事は。
「そしてジャガイモも少なかったですね」
「ではパンの方が多かったのですか」
「そちらでしたか」
「それも白パンでした」
 パンと言っても色々だ。これは欧州では常識だが日本帝国では違っていたのだ。
「白のコッペパンが出ました」
「黒パンではないのですか」
「それでは」
 ドクツでは黒パンもよく食べられる。そこがかなり違うのだ。
「ううむ、白パンしかないとは」
「日本帝国は変わってますね」
「ですが美味しかったです」
 味は満足したというのだ。
「間違いなく我がドクツ軍のものよりもです」
「ははは、我が軍は粗食ですからね」
「それを心掛けていますからね」
「ドクツ軍はジャガイモとソーセージとザワークラフトです」
 実際に艦内にあるそうしたものを見回しながらだ。エルミーは話す。
「それと黒パン、贅沢をしてアイスバインがあれば」
「そうですね。戦えますね」
「我々は」
「ビールは言うまでもありません」
 これは必需だった。エルミーにしても。
「ですがビールはなかったです」
「ううむ、寂しいことですね」
「そのことについては」
「ワインを御馳走になりましたがやはり」
 どうかとだ。エルミーはワインのことは微妙な顔で部下達に話す。
「ビールがないのは寂しかったですね」
「では今から飲まれますか?」
「飲んで一息つかれますか?」
「そうしますか。では」
 艦内ではビールを飲みだ。エルミーはようやく一息ついた。日本帝国に入った彼女は緊張の中にあった。だが決意はあった。総統の為にこの国で戦うという決意が。
 そのことはビールを飲んでも忘れていなかった。彼女の決意は揺るがなかった。


TURN20   完


                         2012・4・17



エルミーが派遣されてきたな。
美姫 「更には潜水艦もね」
これで日本も戦力が強化できれば良いが。
美姫 「ガメリカとかも同盟を組んだみたいだしね」
まだまだ楽観できない状況だよな。
美姫 「すぐに技術が反映される訳でもないしね」
だな。ここからどう進むのか、非常に気になる所です。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。



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