『ヘタリア大帝国』




               TURN143  ラストバトル

 連合艦隊は別世界に入った、その世界はというと。
 キャロルはモニターに映っている大宇宙を見てそのうえでこう言った。
「あたし達の世界と変わらないわね」
「はい、そうですね」
「この世界はですね」
「別に変わらないですね」
「宇宙の状況は」
「ええ、そうよね」
 乗艦のクルー達にも返すキャロルだった。
「宇宙自体はね」
「宇宙も惑星も同じだ」
 柴神がモニターからそのキャロルに言ってきた。
「諸君等の世界とな」
「けれど、よね」
「うむ、我々スコープドッグがいてだ」
 そしてだというのだ。
「あの者達がいる」
「イモムシがね」
「そうだ、だからだ」
 それでだというのだ。
「人類は常に驚異に晒されているのだ」
「そうよね、それだけれど」
「ラムダス達だな」
「連中はまだ出て来ないの?」
「この宙域にはいない」
 柴神はこう答えた。
「だからそのことは安心してくれ」
「そうなのね」
「しかしだ」
 柴神は鋭い目をして言った。
「女王の下に向かうまで二つの巣がある」
「そこで戦闘だな」
 東郷もここで言う、別世界の銀河の中を進みつつ。
「連中と」
「既に話しているが連中は大怪獣と融合出来る」
 柴神はここでこのことも話した。
「そうでなくともそれなりの戦闘力がある」
「そうでしたね」
「戦うにあたっては注意してくれ、だが」
「それでもですね」
「まず艦載機で攻撃を仕掛けビームで攻撃したならばだ」
 その超艦艇達のだ。
「まず攻撃を受けずに倒せる」
「では先手必勝だな」
 レーティアもここで言う。
「私もそのことを念頭に置いて設計、開発したが」
「ラムダスの索敵能力はこの超艦艇達程ではない」
 柴神はこのことも話した。
「まず発見し先制攻撃を仕掛けていこう」
「そういうことだな」
「警戒を怠らないでくれ」
 普段以上にというのだ。
「今の我々は修理能力は弱いからな」
「ちょっと修理部隊はあまり連れて来られなかったからね」
 キャロルは残念な顔でこのことを話した。
「だからね」
「うむ、流石に彼等はな」 
「精鋭を連れて来るだけでやっとだったわ」
 そこまで余裕がなかったのだ、彼等にとっても。
「だからね」
「仕方ないことだな」
「ええ、けれどそれならそれでやるしかないわ」
 戦うしかないというのだ。
「それじゃあね」
「行くぞ、このままな」
「そうするしかないからね」
 こうした話をしつつ先に進む一行だった、そして星域を二つ超えて三つ目の星域に入ったところでだった。
 柴神は一同にこう言った。
「ここだ」
「ここですか」
「この星域が」
「ラムダス達の巣だ」
 その一つだとだ、東郷と日本に答えた。
「奴等は恒星の傍にいる」
「あれ?ひょっとして」
 イタリアはここでモニターで恒星の傍を出した。そこにだった。
 そのイモムシ達がいた、さらにだった。
 大怪獣もいた、そのどれもが。
「あいつ等の顔がついてるよ」
「気持ち悪いな、おい」
 ロマーノはその彼等を見て顔を顰めさせていた。
「只でさえ気持ち悪い姿なのにな」
「ううん、何か近寄りたくないな」
「しかしそうも言っていられない」
 ここでこう彼等に言う柴神だった。
「奴等を倒さなければだ」
「そうだよね、やっぱり」
「じゃあ戦うしかないんだな」
「その通りだ」
 こうイタリアとロマーノに話す。
「そして今向こうはこちらに気付いていない」
「それでは今から」
 東郷はモニターに映る敵はただそこにいるのを見て彼等が実際に自分達にまだ気付いていないことを見抜いた、それでだった。
 艦隊を星と星の間を進ませそしてだった。
 ラムダス達の後方に来た、射程に入るとすぐにだった。
「艦載機だ」
「わかりました」
 日本が応える、そして。
 九隻の超空母から夥しい数の艦載機達が発艦した、彼等を指揮するのは柴神だ。
 柴神は乗機からパイロット達に告げる。
「いいか、それではだ」
「はい、我々はですね」
「このまま」
「そうだ、一撃離脱攻撃を仕掛ける」
 ヒットアンドアウェイをというのだ。
「いいな」
「その一撃にですね」
「我々の攻撃を総てですね」
「的は大きい」
 大怪獣、星を襲える程の巨大さだ。それ故にだ。
「狙いは定めなくてもいい」
「攻撃は自然に当たるからですね」
「だから」
「普通に照準を合わせて攻撃を浴びせてだ」
 そしてだというのだ。
「すぐに離脱してだ」
「大怪獣の攻撃をかわすのですね」
「イモムシ共の」
「奴等に捕まるな」
 これは絶対に、というのだ。
「諸君等も餌になりたくないだろう」
「ええ、それは勘弁して欲しいですね」
「流石に食われて死にたくないですから」
「特にあんな気持ち悪い連中には」
「どうしても」
「そうだ、だからだ」
 それ故にだというのだ。
「攻撃を仕掛ければだ」
「即座にですね」
「母艦に戻るのですね」
「そうするべきですね」
「触手には気をつけろ」
 ラムダス達のそれにというのだ。
「では今からだ」
「はい、ミサイル発射ですね」
「一斉に」
 柴神の言う通り照準は適当だった、そして。
 ミサイルを放ってだ、彼等はすぐに離脱した。ジェットはレシプロとは性能が全く違う、その速度でラムダス達ようやく連合艦隊に気付いた彼等の反撃をかわした。
 攻撃はまだあった、今度は。
 東郷は超戦艦の指揮官達にこう告げた。
「よし、次はだ」
「ええ、私達に」
「総攻撃だ」
 それを仕掛けるとだ、スカーレットに答える。
「今からな」
「一撃で倒せる状況の相手も多いな」
 レーティアは艦載機の攻撃で傷ついているラムダス達を見て言う。
「それではだ」
「ああ、一撃で倒せる相手には一隻向ける」
 それで止めを刺すというのだ。
「そうでない相手にはだ」
「複数の艦艇で攻撃ね」
「そうする」
 こう話してそしてだった、連合艦隊はラムダス達に昇順を合わせこれまで人類が持っていなかった大口径のビームを放った。 
 巨大な光の柱が幾条も放たれた、その矢達が。
 ラムダス達、そして彼等が融合している大怪獣達を貫いた。大怪獣達は赤子の声に似ているが人間のものとは全く違う不気味な断末魔の声を挙げて爆発四散し消えていく。
 怪物達は一体また一体と滅び一斉攻撃が終わったところで全ていなくなっていた。その状況を見てだった。
 日本は敵がいなくなった戦場を見て冷静な声でこう述べた。
「まずは幸先がいいと言うべきでしょうか」
「うむ、しかしだ」
 その日本に柴犬が応えて言う。
「この巣は奴等の巣で最も小さい巣だ」
「数が少ないというのですね」
「そうだ、もっとも奴等は個体数自体は決して多くない」
「ですが大怪獣達と融合出来元々の力も強いですね」
「だからだ」
 それでだというのだ。
「数は少なくともだ」
「それでもですね」
「油断は出来ない、そしてまた言うがこの巣はだ」
「最も少ないのですね」
「次の巣はこれの倍はいる」
 そうだというのだ。
「だからだ、この勝利で慢心はしないことだ」
「わかりました」
「それではだ」
「はい、次の星域に向かうのですね」
「そうするとしよう」
「まだ小さいラムダス達がいるか」
 ドイツはここで柴神にこのことを問うた。
「いれば倒しておくか」
「いや、余計な時をかけるよりもだ」
 それよりもとだ、柴神はドイツのその問いに答えた。
「まずは女王を倒してだ」
「それからか」
「女王を倒せば後は烏合の衆だ」
 それに過ぎないからだというのだ。
「まずは女王を倒す」
「わかった、ではな」
「次の巣に向かう」
 柴神は日本の乗艦日本帝国の艦橋から言った。
「そうするとしよう」
「それでは」
 日本も柴神の言葉に頷く、そしてだった。
 最初の戦いを終えた連合艦隊はそのまま次の戦場に向かった。そして星域を四つ通過した。その間の星域には大怪獣達も何体かいたが彼等は集中攻撃で倒していった。
 富嶽も倒した、アメリカは大爆発を起こして消えたその大怪獣を見て言う。
「これで大怪獣は三体目だぞ」
「多いな、おい」
 四つの星域で三体だ、フランスもおいおいといった顔で言う。
「危ないにも程があるだろ」
「だからこの世界では人口はあまり多くない」
 柴神は彼等にこの事情も話す。
「大怪獣達が惑星や銀河に出る艦艇を襲いだ」
「それにあの連中がいるからあるな」
 中国はラムダス達のことを話に出した、そして柴神もその通りだと答える。
「そうだ、諸君等の世界よりも人口は少ない。だが文明は私が去った頃であちらの世界よりも多少進んでいる位だった」
「だからあっちの世界に逃げられたんだな」
 イギリスはそのことを察して言った。
「そういうことなんだな」
「その通りだ、時折艦艇もいるな」
 この世界の人間達が乗っているものであることは言うまでもない。
「彼等がそれだ」
「あれだね」
 ロシアはここで今自分達がいる宙域から少し離れた場所で航海をしている艦艇を見て言った。
「ううん、僕達の普通の船位かな」
「君達の世界は急激に技術や文明が発達している」
 このことも話す柴神だった。
「この世界は君達の世界よりも先に文明が生まれたがその発展は君達の世界よりも遅いのだ」
「世界によって文明の発展が違うのか」
 レーティアはその話を聞いて少し目を瞠った。
「そうなのか」
「そうだ、私もあちらの世界で君達の発展を見てわかった」
 世界によって文明の発達の度合いや速度が違うことがというのだ。
「同じ人類でもな」
「そういえば太平洋でも各国で文明や文化は違いますね」
 ここで言ったのは山下だった、彼女も連合艦隊に同行しているのだ。陸戦の時の指揮官兼憲兵総監として来ているのだ。
「欧州でも各国で」
「そうだ、国によって文明が違うこの世界でも同じでだ」
「私達の世界でも」
「また違う、そして文化や文明はそれぞれ様式も発展している部分も違いだ」
 そこから言えることだった、このことは。
「同じ物差しでは測れないのだ」
「ではどの国もですね」
「同じ人間が作っているものだ」
 柴神はセーラにも答えた。
「それぞれ大した変わりはない」
「そうなのですか」
「どの国もどの人間もだ」
 種族が違ってもというのだ。
「変わらないのだ」
「そういうものなのですね」
「そのことは諸君等もわかってきていると思う」
「相対的に見ればな」
 ダグラスはその見方から話した。
「結局どの国も何処の人間も一緒だな」
「そうですね、誰もが」
「同じなのよね」
 リンファとランファも言う。
「人間なら」
「変わらないわね」
「文化や文明、宗教とかイデオロギーも」
 カテーリンも言うのだった。
「同じなのよね」
「そういうことだ、人間も文明も変わらない」
 柴神はこう彼等に話しえいく。
「それこそ怪物でもない限りだ」
「コアはそれになりますね」
 ここでだ、秋山は彼等の名前を出した。
「彼等は」
「うむ、人間は何故人間か」
「人間の心があるからですね」
「それ故に人間となる」
「しかし彼等は人間の心がなかったですから」
 殺人鬼、それもサイコ殺人鬼にはというのだ。
「それでは」
「人間ではなかったのだ」 
 それがコア達だというのだ。
「怪物になっていたのだ」
「まさにですね」
「それがコアだったのだ」
「最悪の事態にならなくて何よりでした」
 東郷もその時のことを振り返り言う。
「そのことは本当に」
「全くだ、そしてラムダス達もだ」
「怪物ですね」
「連中は生かしてはおけないのだ」
 人間が生きる為にというのだ。
「それ故にだ」
「今からなのね」
 ムッチリーニは眉を曇らせて柴神に言葉を返した。
「やっつけに行くのね」
「女王を倒した後は相当だ」
 この別世界でもだというのだ。
「幸い奴等は隠れることは下手だ」
「嫌が否でも目立ちますね」
 シャルロットはその不気味な姿からこのことを察した。
「だからですね」
「その通りだ、そもそも奴等は隠れるということを知らない」
 目立ちそのうえでだというのだ。
「見つけることは容易で見つけたらだ」
「倒す、それだけですね」
 日本も言う。
「そうですね」
「うむ、ではこのまま行こう」
 柴神は案内を続けていく。別世界の銀河は大怪獣こそいるがまだ決戦の時にはなっていなかった。その中で。
 カテーリンは微妙な顔になりモニターからロシアに言った。
「ねえロシア君」
「どうしたのかな」
「うん、ミーリャちゃんがいないとね」
 どうもだとだ、カテーリンは言うのだった。
「寂しいね」
「そうだね、書記長さんいつも首相と一緒だからね」
「ずっと一緒だったから」
 物心ついた時からだ、二人はいつも一緒にいるのだ。
 しかし今はカテーリンは出撃していてミーリャは元の世界に残っている。離れ離れになっているのだ。
 それが為にだ、カテーリンは寂しい顔で言うのだ。
「寂しいなって」
「けれどね」
 それはだとだ、ロシアはカテーリンに話した。
「それは仕方ないよ」
「そうだよね、行ける人は決まっていたから」
「ここは我慢しよう」
 これがロシアのカテーリンへの言葉だった。
「それで帰ったらね」
「ミーリャちゃんと一緒になのね」
「お祝いしようね」
 ロシアは素朴な笑顔でカテーリンに告げた。今の笑顔はそうしたものだ。
 そしてロシアは柴神にこう問うた。
「ところで冬将軍のことだけれど」
「寒さか」
「うん、それはラムダスには効くのかな」
 最初の戦いでは使わなかったがどうかというのだ。
「それはどうかな」
「残念だが奴等は寒さにも熱さにも強い」
「どれもなんだ」
「雨にも砂塵にも強い」
 そのどれにもだというのだ。
「気候の変化には極めて強い」
「じゃあ僕の冬将軍も」
「効果がない」
 スノーに匹敵するだけのその力もだというのだ。
「ロシア殿にとっては残念なことだがな」
「じゃあ仕方ないね」
「このまま戦うしかない」
 そして倒すしか、というのだ。
「では行こう」
「うん、それじゃあね」
 ラムダスの気候への強さも確認された、そうした話もしながら銀河を進んでいき遂にだった。
 連合艦隊はラムダスの巣に着いた、そこはというと。
 最初の巣の倍はいた、しかも。
「小さいのも多いな」
「そうだな」
 山下は顔を顰めつつモニターを見つつ東郷に答えた。
「ここは」
「小さいのは艦載機で倒すか」
「若し艦に入るなら」
 その時はとだ、山下はその刀を手にして言った。
「任せてもらおう」
「出来る限りそうならない様にするがな」
 触手に絡め取られて食い殺されるからだ、東郷はクルーがそうなることは何としても避けるつもりなのだ。
「ではまずはだ」
「はい、小型のラムダスには艦載機ですね」
「そしてだ」
 東郷は今度は秋山に言う。
「残ったものでだ」
「大型のラムダス、そして大怪獣と融合しているものにですね」
「攻撃を浴びせる、ビームにミサイルにな」
「そして鉄鋼弾も」
「それで倒せない場合はだ」
 今彼等はラムダスの巣の上にいる、そこから急降下の要領で攻撃を仕掛ける。まだ彼等には気付かれていない。
 だがそれで倒せない場合、その時はというのだ。
「敵の数も多い、反撃を受けるな」
「そしてその祭のダメージはですね」
「かなりのものになるだろう」
 大怪獣の恐ろしさは誰もが骨身に滲みて知っている、伊達に戦い倒してきた訳ではない。
「そのこともだ」
「覚悟して、ですね」
「戦うしかないな」
「出来ればこの戦いではまだだ」
 柴神もここで言う。
「ダメージを受けたくはないが」
「次に備えてですね」
「次は女王との戦いだ」
 ラムダスの女王とだというのだ。
「そしてそこではここよりもだ」
「ラムダスの数も多いんですね」
「比較にならない」
 そこまで多いというのだ。
「ここの何倍もいる」
「だからここではですか」
「まだダメージを受けたくはない」
 最後の戦いで受けるダメージを考えてだというのだ。
「出来ればだが」
「倒せればいいがな」
 レーティアも鋭い顔で柴神に告げる。
「私の計算では三体の大怪獣が生き残るな」
「三体か」
「そうだ、それだけだ」
 見れば大怪獣の数も最初の巣よりも多い、その彼等がだというのだ。
「ラムダスを後回しにするやり方もあるが」
「いや、奴等は放っておくと思念で同族に知らせる」
「援軍を呼ぶか」
「そして女王にもだ」
 知らせるというのだ。
「だから知らせる前に倒すべきだ」
「女王にも奇襲を仕掛けたいからですね」
「敵は強い、気付かれる前に攻めて戦いの流れを手に入れてだ」
 そうして戦いたいからだというのだ。
「進めたいからな」
「ではまずは」
「ラムダスだ」
 彼等をだとだ、柴神は秋山に告げる。
「大怪獣と融合している者は大怪獣を操ることに集中している為思念を同族に送ることは出来ないからな」
「だからまずはラムダスを優先してか」
「攻撃を仕掛けるべきだ」
 その事情からだというのだ。
「ではいいな」
「わかった、それではな」
 レーティアも頷いて了とした、こうしてだった。
 連合艦隊は今度は上から攻める、まさに急降下爆撃の要領でだった。
 艦載機で小型のラウダスを次々と撃破しそのうえで大型のものや大怪獣まで倒す、艦載機やビームだけでなくミサイルも鉄鋼弾も放つ。
 奇襲を受けたラムダス達は次々と、今回も倒されていく。だが。 
 レーティアの計算通りだった、大怪獣が三匹残った。その残った大怪獣はというと。
「富嶽にサラマンダーが二体か」
「まずいですね」
「ああ、奴等は艦隊全体に攻撃をを仕掛けてくるからな」
 東郷は大怪獣達を見ながら秋山に述べる。
「全体がダメージを受けるな」
「バリアは備えていますが」
「大怪獣の攻撃だからな」 
 その威力の大きさ故にだった。
「やはりダメージを受けることは避けられない」
「まずいことだ」
 柴神は腕を組み難しい顔で言った。
「次はこんなものではないというのに」
「一隻が前に出て盾になるか」
 東郷は言いながら大和を前に出そうかと考えた。
「大和なら連中の攻撃を受けても何とか耐えられる」
「では」
「全艦下がってくれ」
 東郷は決断を下した、大和が自ら盾になり全体にダメージが及ぶことを避けようとしたのだ。大和が前に出る。
 大怪獣を動かすラムダス達は本能で動く、だから彼等は大和だけを狙おうとした。今まさに大怪獣達
攻撃を仕掛けようとしていた。
 東郷はその彼等を前に見つつ大和の乗員に言った。
「総員衝撃に備えよ」
「はい、それでは」
「今は」
「そしてダメージコントロールの用意だ」
 ダメージを受けることを前提にしての指示だった。
「いいな、それではだ」
「了解です、では」
「何とか耐えましょう」
「安心しろ、大和は沈まない」
 大怪獣達の攻撃を受けてもだというのだ。
「次で反撃だ」
「わかりました」
「それでは」
 肉、いや骨の半ばまで切らせて反撃をするつもりだった。東郷は次の戦いのことも考えてあえてそうした。大怪獣達の全身を光が包み攻撃が放たれようとしていた。
 だがここでだ、突如として。
 大怪獣達を横から衝撃が襲った、凄まじい爆発が幾つも置き彼等はそれにより息の根を止められてしまった。
 大和は間一髪助かった、だが。
「今の攻撃は何だ」
「いえ、私もどうなったのか」
 わからないとだ、秋山も呆然とした声だった。
「わかりません」
「誰か側面に移動していたか?」
「いえ、一隻も」
 秋山は艦隊の陣形を見た、見れば一隻もだった。
「ありません」
「では今のは一体」
「!?ソナーに反応です」
 ここで日本が東郷に言って来た。
「潜水艦、しかもかなり大型のものがです」
「潜水艦ですか!?」
「はい、それも三隻です」
 日本は驚きの声をあげる秋山に答える。
「これは一体」
「よし、間に合ったみたいだな」
 ここでモニターから彼が出て来た、それは誰かというと。
 田中だった、あの威勢のいい顔でモニターに出て来たのだ。
「よお、助けに来たぜ」
「田中元帥!?」
「まさか!」
 日本も秋山もモニターに出て来た田中を見て顔も驚かせた。
「どうしてここに」
「いらしたのですか!?」
「私が設計、開発した超潜水艦に乗っているのだ」
 今度は平賀が出て来た、今も久重の口から話す。
「三人共だ」
「総統、お助けに参りました」
「カテーリンちゃん、大丈夫!?」
 今度はエルミーとミーリャがモニターに出て来た、そのうえでそれぞれの主と親友に言うのだった。
「ご命令に逆らい申し訳ありません」
「また一緒に戦おうね」
「いや、ここに来るなという命令は出していない」
 レーティアはまずそれはよしとした、そのうえでエルミーに言うのだ。
「しかし御前も来たのか」
「総統だけではと思いまして」
「私もなの」
 ミーリャはカテーリンに言う。
「それで平賀長官が開発してくれた超潜水艦に乗ってここまで来ました」
「そうしたの」
「資源は三隻の潜水艦を建造するだけのものがあった」 
 平賀もここで話す。
「それで建造してみた」
「そうだったのか」
 レーティアは平賀のその言葉を聞いて頷いた。
「それで来たのか」
「ああ、俺も戦わせてくれるかい?」
「駄目だと言って断りはしないな」
「誰がそんな命令聞くかよ」
 田中は東郷の問いにいつもの激しさで答えた。
「とことんまでやるに決まってるだろ」
「そうだな、では最後まで戦え」
「ああ、それで今度こそあんたから長官の座を奪ってやるぜ」
「ははは、そうでないとな」
 面白くなくかつ田中らしくない、東郷も受けて立っている。
「ではだ」
「最後の最後までやらせてもらうからな」
「では私もです」
 エルミーもあらためてレーティアに言う。
「総統、お傍に」
「うむ、宜しく頼む」
 レーティアもエルミーを受け入れて返事を返した。
「それではな」
「はい、それでは」
 エルミーも受け入れられた、そしてミーリャはというと。
 カテーリン自らだ、こう彼女に言うのだった。
「じゃあ今もね」
「うん、一緒に戦おうね」
「私ミーリャちゃんがいたら最後まで戦えるから」
「それじゃあね」
 こう二人で笑顔で話していた、二人はもうそうなっていた。
 こうして三隻の超潜水艦も合流した、大和も無傷で済んだ。
 柴神もこのことについて満足している顔でこう言った。
「思わぬ事態だ、しかしだ」
「いいことですね」
「無傷で決戦に挑める、それにだ」
「三隻も加わりました」
「やはり潜水艦の存在は大きい」
 この兵器のことも日本に言うのだった。
「超潜水艦はな」
「ではこの戦いは」
「勝利は間違いない」
 これまで以上にだ、それは確かになったというのだ。
「二つの世界を救える」
「それでは」
「全軍このままだ」
 進もうというのだ。
「決戦の場にな」
「それでは」
「それでなのだが」
 日本に言ってからだ、柴神はモニターから田中の乗艦にいる平賀に問うた。その問いはというと。
「貴殿まで来るとはな」
「外相に我が儘を言って来させてもらった」
 もうすぐ自分の夫になる宇垣にというのだ。
「絶対に帰って来ると言ってな」
「それでか」
「そういうことだ、そして艦名だな」
「それも聞きたかった」
 柴神はまさにだとだ、平賀に答えた。
「三隻の潜水艦の名は何というのだ」
「まずはビスマルクだ」
 エルミーの乗艦を見ながらの言葉である。
「エルミー提督の乗艦はな」
「ドクツを築き上げた鉄血宰相か」
「その名前にした」
「そうか、その名前はか」
「提督自ら名付けた」
 ファルケーゼでなくだ、それにしたというのだ。
「その名がいいと言ってな」
「成程な」
「ミーリャ首相の乗艦はボレイという」
 今度はミーリャの乗艦の名前だった。
「その名だ」
「それもミーリャ首相が名付けたか」
「うむ」
 その通りだというのだ。
「そうした」
「まさかカテーリン書記長を助けに来るとはな」
「友情故だ」
 カテーリンとのそれ故にだというのだ。
「エルミー提督の忠誠心と同じだ」
「心か」
「心があるからこそだ」
 ここまで来たというのだ。
「それは田中副長官も同じだ」
「田中元帥が来たかったことは察していたが」
「しかしだな」
「来られるとは思っていなかった」
「私ももう少し戦力が必要だと思ってだ」
 それで三隻の潜水艦を用意したというのだ。
「田中副長官の意も入れてな」
「ではその乗艦の名は何という」
「黒潮だ」 
 それが彼の乗艦の名だというのだ。
「伊号ではないからな」
「黒潮か」
「いい名だと思うがどうか」
「田中元帥が付けた名だな」
「そうだ」
 あの艦も指揮する提督自らがそうしたというのだ。
「それがあの三隻の超潜水艦だ」
「わかった、ではだ」
「彼等と共にだな」
「女王を倒す、いいな」
 こう話してそしてであった。
 連合艦隊は星域を幾つか越えていった、そしてだった。
 遂に巣の前の星域まで来た、そこに入ってであった。
 柴神は緊張している顔でだ、こう一同に言った。
「ではだ」
「今からですね」
「そうだ、女王のいる巣に入る」
 まさにラムダス達の本拠地にだというのだ。
「いいな」
「はい、それでは」
 東郷も確かな顔で答える。
「今から」
「いいか、次の戦いでだ」
 柴神はその緊張と共に東郷だけでなく連合艦隊に参加している全ての者に対して告げた。
「全てが終わる」
「勝ってですね」
「激しい戦いになる、しかしだ」
「それでもですね」
「我々は勝つ」
 間違いなく、というのだ。
「それではだ」
「安心してですね」
「向かうだけだ」 
 こう言ってそのうえでだった、彼等は。
 その星域の中に入った、するとそこは。
 まさに巣だった、ラムダス達が途方もない数で存在していた。
 大怪獣達の数も多い、星域の至る場に不気味な者達がいる。
 そしてその奥にだ、白くとりわけ禍々しい巨大な姿をした怪物がいた。それがだった。
「あれがだ」
「ラムダスの女王ですか」
「そうだ」
 柴神はこのことも東郷達に告げた。数が多いせいかラムダス達は連合艦隊が入って来たことにすぐに気付きやって来る。
「あれこそがだ」
「あれを倒せばですか」
「倒せる」
 必ずだというのだ。
「それではだ」
「はい、それでは」
「一隻も離れてはならない」
 今の陣からというのだ。
「わかったな」
「離れればそこで、ですね」
「そうだ、その艦は奴らに食い尽くされる」
 柴神はこうエルミーに答えた、
「それだけでな」
「そうなりますね」
「そしてだ」
 柴神はさらに話す。
「この戦い、一隻でも失えばだ」
「戦力を失うことによって」
「勝利の可能性が減る」
 即ち人類の未来が脅かされるというのだ。
「何としても勝たなければならないのだ」
「では」
「総員陣から離れてはならない」
 柴神は強い声で告げた。
「そしてだ」
「生きて帰るんですね」
「元の世界に」
「これは私からの命令であり願いだ」
 その両方だというのだ。
「ではだ」
「はい、それじゃあ」
「今から」
 総員柴神のその言葉に頷いてだった、そうして。
 彼等は戦いに入った、既に周りはラムダスで満ちていた。その彼等を見てだった。
 東郷は総員にだ、こう告げた。
「艦載機も対空ミサイルも止まることなくだ」
「放ってですね」
「そうだ、敵を寄せ付けぬな」
 こう指示を出す。
「そして前方に集中攻撃を浴びせてだ」
「道を開きますか」
「そうすることだ」
 秋山にも述べる。
「わかったな」
「女王の前までの距離はそれ程ではないですが」
「それでもな」
 そこまでにいるラムダス達の数が尋常ではない、それでだった。
「険しい道になることは間違いない」
「けれどやるしかないでしょ」
 キャロルがここで東郷に言う。
「そうでしょ、今は」
「その通りだ、周りを固め前を薙ぎ払ってだ」
 そうしてだというのだ。
「前に進むとしよう」
「周りはですね」
「弾幕と艦載機で防ぐ」
 周りに群がろうとしているラムダス達はというのだ。
「そして前にだ」
「集中砲火ね」
「照準jは定めない」
 敵を狙わずその範囲を攻撃するというのだ。
「それで穴を開けてだ」
「その中を突き進むのね」
「そうする、ではいいな」
「わかったわ、女王さえ倒せばね」
「ラムダス達はコントロールを失う」
 柴神はキャロルにこのことを告げた。
「今すぐここにいるラムダス達を倒さずともだ」
「女王さえ倒せば後はどうとでもなるのね」
「烏合の衆なら何ということはない」
 女王のいないラムダス達こそそれでありそうなってしまった彼等なぞ今の連合艦隊の敵ではないというのだ。
「だからだ」
「ではまずは女王だ」 
 東郷はその惑星、大型のそれに匹敵する巨大さのそれを見つつ言った。
「あれを何とかしよう」
「艦載機は周りを防ぎながら艦隊から離れるな」
 柴神は艦載機のパイロット達にこう告げた。
「編隊を組みながらだ」
「わかりました、それでは」
「そうして」
「私も出る」
 他ならぬ柴神もだというのだ。
「ここが最後の戦いだ、ではだ」
「はい、今から」
「総員出撃ですね」
 まずは艦載機が出る、対空砲座やミサイルランチャーもスタンバイする、そうして前方に主砲や対艦ミサイル、鉄鋼弾がセットされて。
 そしてだった、彼等は。
 周りをガードしつつ前方に攻撃を出す、大怪獣もラムダスも薙ぎ払う。東郷はその開いた穴を見つつ全軍に言う。
「先にだ」
「少しでも先にですね」
「女王まで行く」
 そうするからだというのだ。
「進むぞ」
「了解です」 
 秋山も頷いて応える、全艦その開いた穴の中を進む。
 穴はすぐにラムダス達に塞がれんとする、だがそこにだった。 
 連合艦隊は攻撃を浴びせ再び穴を開ける、その中を進み続け。
 次第に女王に近付いていく、だが。
 周りから来る攻撃もかなりのものだった、ラムダス達は数を頼りに殺到して来る。
「グガマナゴ」
「ガギシガズ」
 意味のわからない言葉を奇怪な声で呟きながら目からビームを出し触手を伸ばそうとする、その触手を。
 艦載機のビームが撃つ、絶叫する怪物の顔をミサイルが撃ちそのまま爆発させる。
 その彼等を見つつだ、イタリアは言った。
「うわ、本当に多いよ」
「今更何を言っている」
 ドイツがそのイタリアに言う。
「ここに来てわかっている筈だが」
「それはそうだけれど」
「今は進むだけだ」
 ドイツはこう言ってイタリアの怯えを止めようとする。
「そして女王を倒すだけだ」
「そうしないとどうしようもないからね」
「前に進んでいる」
 この激戦の中でだというのだ。
「だから怯むな」
「うん、わかったよドイツ」
「確かに戦いは激しい」 
 ドイツもこのことは否定しない。
「しかも奴等の姿は生理的に受け付けないものがある」
「それでもだよね」
「勝てる、絶対にな」
 ドイツは腕を組み確かな声で言い切った。
「だから前に進むぞ」
「そうだね、ダメージも受けているけれど」
「沈まない限りは大丈夫だ」
 そうなるまで、というのだ。
「幾らダメージを受けてもな」
「それにどの艦艇もだね」
「簡単に沈む艦艇ではない」
 伊達に超艦艇ではない、連合艦隊の艦艇はどれも相当な頑丈さだ。それこそ大怪獣に匹敵するまでの。
「落ち着いて行くぞ」
「前に前にだね」
「そうだ、怯んでは何にもならん」
 ドイツは己の乗艦である超空母ドクツの艦橋で言う。
「このまま進むぞ」
「じゃあ俺も皆と一緒にね」
「行くぞイタリア」
「うん、ドイツ」
 イタリアはドイツの言葉で完全に気を取りなおした、そしてだった。
 連合艦隊は激しい戦いを続けながら前に前にと確実に進んでいく。どの艦も何度もダメージを受けたがそれでもだった。
 遂に女王の少し前まで来た、だがその前に。
 大怪獣達が幾体もいた、その数はこれまでよりも多いものだった。秋山はその大怪獣達、十二体はいる彼等を見て東郷に難しい顔で問うた。
「どうされますか?」
「前に行くしかないがな」
「しかしこの数の大怪獣達は」
「やるしかない、ここはだ」
「はい、ここは」
「全体攻撃に切り替えるか」
「全艦ですか」
「そうだ、全体攻撃だ」
 それを目の前の彼等に浴びせるというのだ。
「そうするか」
「それでは」
「今からだ」
 その全体攻撃を仕掛けるというのだ。
「特にここは」
「ここはとは」
「潜水艦だな」
 彼等の力を使うというのだ。
「そうするか」
「うむ、実はだ」
 ここでだ、その超潜水艦達を開発した平賀が語る。
「どの潜水艦もこれまでの潜水艦とは違う」
「その攻撃方法がだな」
「これまでの潜水艦は魚雷発射口から魚雷を放って攻撃していた」
 それがレーティアが開発した潜水艦だ、攻撃方法は基本的んいそのモデルとなった駆逐艦と然程変わらないのだ。
「しかしだ、この潜水艦達はだ」
「艦体にでかい発射口が幾つもあるんだよ」
 田中がここで話す。
「どの艦にもな」
「その魚雷の大きさはこれまでとは格段に違う」
 平賀はさらに話す。
「これまでの魚雷の五倍はある」
「五倍か」
「それを一度に二十以上出せる」
 それが三隻の超潜水艦だというのだ。
「無論全体攻撃も可能だ」
「超戦艦や超空母と一緒だな」
「そうだ」
 まさにだというのだ。
「この三隻も加わる、だからだ」
「勝てるな」
「確実にな」
 超潜水艦達の攻撃も加わればというのだ、そしてだった。
 潜水艦達の魚雷発射口が開いた、そこから巨大な魚雷達がミサイルの様に発射される。そしてそれと呼応して。
 超戦艦はビームと鉄鋼弾を同時に一斉に放った、超空母達はその周りを艦載機達で護衛させて攻撃の瞬間を護る、まさに攻防一体だった。
 そしてだった、その一斉攻撃で。
 大怪獣達を薙ぎ倒した、怪獣達は戦艦と潜水艦の総攻撃を受けそれぞれ大爆発を起こした、その衝撃が艦隊を襲うが。
 その衝撃の中でだ、東郷は言った。
「よし、これでだ」
「女王への道が開きましたね」
「見えてきたぞ」
 こう日本に答える。
「それではだ」
「はい、いよいよですね」
 日本も見た、その女王を。
 白く人間とシロアリを合わせた様な禍々しい、下手な惑星よりも巨大なその姿を見た。柴神はその胸にある赤い巨大な石も見て言った。
「あの石だ、わかるな」
「私の石と同じね」
「あれはほんの破片でだ」
 そしてだというのだ。
「あれが本体だ」
「あの石を粉々にしないと駄目ね」
「女王が死ねば完全に消え去る」
 原子レベルでだというのだ、その赤い石を備えていたカテーリンへの言葉だ。
「そうなる」
「女王さえ倒せば」
「女王とあの石は完全に一体化している」
 その女王さえ倒せばというのだ。
「完全に消え去る、そうなるからだ」
「ではここは」
「一撃で決めなければならない」
 柴神はここで東郷に告げた。
「反撃を受ければ連合艦隊といえとだ」
「耐えられませんか」
「そうだ、出来ない」
 とてもだというのだ。
「だからだ」
「ここは」
「全ての攻撃を女王に浴びせる」
 今の連合艦隊のそれをだというのだ。
「ではいいな」
「わかりました、それでは」
「艦載機も使いましょう」
 日本も柴神に応えて言う。
「それでは」
「周りへの防御はなくなる、、しかしだ」
「ここで女王を倒さねばですね」
「我々は生きられない」
 それ故にだというのだ。
「全ての攻撃をぶつける、いいな」
「それでは」
 日本も柴神の言葉に応える、そしてだった。
 艦載機は艦隊から離れ一斉に女王に向かった、その間に超戦艦と超潜水艦達も。
「いいか、ここで主砲が溶けてもいい」
「あるだけのエネルギーを注ぎ込んで、ですね」
「女王に攻撃を浴びせる」
 東郷は大和の艦橋で秋山に告げた。
「ではいいな」
「エネルギー充填完了です」
 砲雷長が東郷に言って来た。
「ではですね」
「攻撃目標はあの石だ」
 女王のその巨大な赤い石だというのだ。
「あそこを撃て、いいな」
「わかりました」
「ではだ」
 流石の東郷も緊張を感じていた、額から汗が流れ落ち喉がごくりと鳴った、そしてだった。
 自ら発射ボタンを押した、艦のエネルギーが今主砲達から放たれる。
 他の艦からもだった、そして潜水艦からも無数の巨大な魚雷が放たれる。どの艦も放てるだけの鉄鋼弾を放つ、ミサイルも。まさに人類の懇親の一撃が今放たれた。
 その全ての攻撃が女王を撃った、赤い石も頭も身体も。
 惑星、いや恒星をも壊さんばかりの攻撃を受けてだ。さしもの女王も。
 まずは動きを止めた、そして。
 断末魔の、これまで誰も聞いたことのないおぞましい絶叫を挙げてその巨体を揺るがせる。そしてそのまま。
 女王の身体の中から爆発が起こりそれは次から次に誘爆を起こし。
 恒星の爆発を思わせる大爆発を起こして女王は消え去った、そこには最早破片すら残っていなかった。
 女王が死ぬとだ、ラムダス達は。
 急に動かなくなった、女王が死ぬ直前の瞬間まで連合艦隊に殺到せんとしていたが。
 まるで呆けた様だった、柴神はその彼等を見て東郷に言った。
「ではだ」
「はい、柴神様が仰った通りですね」
「最早この者達は何にもなってはいない」
「では今のうちに」
「掃討することだ」
 残った彼等をというのだ。
「暫く自分で動くことも出来ないからな」
「わかりました、それでは」
 連合艦隊は最後の掃討戦に入った、最早それはただ的に当てるだけのものでどうということはないものだった。
 その最後の掃討戦も終わろうとしているところでだ、星域に別の艦隊が来た。彼等は。
「まさかと思いますが」
「御主か」
 柴神はここでだった、モニターに出て来た犬の頭をした自分と同じ者を見て言った。白い狼を思わせる顔だ。
「リュタトゥスか」
「隊長ですか」
「久しいな、数万年振りだな」
「はい、全くですね」
「別れた時はまだ子供だったがな」
 柴神はその彼に笑いながら言う。
「大きくなったな」
「隊長が行方不明になられて心配していましたが」
「うむ、人間達の一部を連れて別世界に出ていたのだ」
「そうだったのですか」
「そうだ、そして今か」
「我々ノープドッグも人間達と文明を築きようやく彼等と戦えるだけの力を備えたのです」
「そのうえでだったのだな」
 今ラムダスの本拠地に入ってきたというのだ。
「だが女王はだ」
「隊長が倒されましたか」
「いや、倒したのは私ではない」
 柴神はそのことは首を横に振って否定した。
「私ではないのだ」
「では隊長の世界の人間達がですね」
「彼等が倒したのだ」
「そうだったのですか」
「彼等は私の仲間であり友だ」
 柴神は東郷達をこう紹介する。
「これからもな」
「では隊長は」
「この世界に戻るつもりはない」
 このことをだ、同族にはっきりと告げたのだ。
「私のいるべき場所を見付けたからな」
「それでは」
「そしてラムダス達だがもう女王は倒した」
「後は雑魚ばかりですね」
「ここのラムダス達もかなり倒した」
「後は各地にいるはぐれラムダス達を掃討すれば」
「この世界からもいなくなる」
 最早大勢は決したというのだ。
「御主達に任せていいな」
「はい、お任せ下さい」
「ではだ、私達は帰る」
「隊長がおられる世界にですね」
「そこで生きる、これからもな」
「ではまた」
「うむ、また会おう」
「平和になる二つの世界で」
「そうしよう」
 こう話してだった、柴神は古い仲間と再会と別れの挨拶をした。そのうえで別世界から去るのだった。
 連合艦隊はホワイトホールまで来た、そこで真希が父に言う。
「お父さん、これでなのね」
「ああ、終わりだ」
「私、いるだけだったね」
「そこまでの窮地はなかった、いいことだ」
 そのことを喜ぶ東郷だった。
「それではな」
「お家に帰るのね」
「お祝いだ、皆で楽しもう」
「うん、じゃあね」
 真希は東郷に満面の笑顔で応えた、皆戦いを終え満面の笑顔で彼等の世界に戻る。その彼等の世界では。
 カナダがだ、寂しい顔で自分の妹に話していた。その話はというと。
「あの、僕太平洋経済圏に入ってるよね」
「ええ、もうね」
「結構国力もあるのに」
「全然目立ててないわよね、私達」
「困ったね、いつものことだけれど」
「どうしたものかしら」
「気にしたらいけないよ」
「そうだ、祖国さん気にするな」
 そのカナダと兄と一緒に苦しい顔になっているカナダ妹にデカラヴィタとブラックホースが言う。
「私達は私達でやれることをやればいい」
「それだけだ」
「ううん、それでいいかな」
「目立てなくても」
「そうじゃないかい?」
「自分達のペースでやればいい」
「変に肩肘を張ることもない」
「そう思う」
 二人はこう自分達の祖国に言う、目立たなくてもいいかとだ。
 しかしだ、クマ二郎はこうカナダに言うのだった。
「誰もこっちに気付いていないからな」
「ううん、困ったねクマ四郎さん」
「ダリナンダアンタイッタイ(翻訳:誰なんだあんた一体)」
「君の飼い主のカナダだよ」
 このやり取りは健在だった、そして。
 東郷達が戻ると皆彼等を万雷の拍手と歓声で迎えた、カナダもそこに入るが彼を見ている者は一人もいなかった。


TURN143   完


                            2013・10・10



真希の出番はなかったな。
美姫 「でも、それは良い事よね」
だな。あの力は凄まじいけれど、代償がないとは言えないしな。
美姫 「ようやく別世界の女王を倒せたし、後は戻ってからね」
だな。流石に戦争で疲弊した国力なんかはすぐに元通りとはいかないだろうからな。
美姫 「彼らのこれからがどうなるのか」
次回も楽しみにしています。
美姫 「待っていますね〜」
ではでは。



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