『ヘタリア大帝国』
TURN140 死線
遂にだった、ホワイトホールから。
「来ました」
日本妹が真剣な顔で田中に報告する。
「富嶽二体、ニガヨモギ三体にです」
「イモムシ連中はどれ位だよ」
「二十です」
それだけ来たというのだ。
「それぞれ大型の宇宙怪獣程の実力があります」
「そうか、じゃあな」
「はい、今からですね」
「出撃だ、いいな」
こう日本妹に言う。
「四十個艦隊だ」
「四十ですか」
「ああ、まだ全部出す状況じゃねえ」
今はそれ位で充分だというのだ。
「とはいっても予備戦力は何時でも出せる様にしてな」
「そのうえで、ですね」
「出撃だ、いいな」
「了解です」
日本妹は田中の指示に敬礼で応えた、そうしてだった。
人間達の軍、連合艦隊と称する彼等は出撃した。その中には超戦艦や超空母の建造を進められている面々もいた。
東郷もだ、彼は田中の指揮下にいつつ改装さて第十世代のさらに上の性能となった大和の艦橋において言うのだった。
「さて、田中の采配を見せてもらうか」
「はい、それも楽しみですね」
大和の艦橋には秋山もいる、東郷の横で言うのだった。
「一体どういった指揮を執るのか」
「乗っているのは潜水艦だな」
「はい、そうです」
それだというのだ。
「これまで通り」
「第十世代の潜水艦か」
「それです」
「第十世代の艦艇の配備も間に合ってよかったな」
「全くですね」
人類にとってはこのこともプラス材料だった。
「大怪獣が相手ですから」
「これでさらに生存確率が上がった」
「耳栓もメカニズム化されたもので命令がそのまま届くものになっていますし」
「やはり聞こえることは大きい」
「ラメダス達の声を遮断したうえで」
「万全に万全を期しているな」
それが今の連合艦隊だった。
「大修理工場に軍事基地も置いたしな」
「出来る用意は全て用意しました」
半年耐える為のだ、それはというのだ。
「ですから後は」
「半年だ」
まさにそれだけだとだ、東郷は言った。
「今超艦艇が建造されている」
「完成まで堪えれば」
「攻められる」
ホワイトホールの向こうの敵の本拠地にだ。
「その時はな」
「今は待つ時ですね」
「待つことも戦争だ」
このことはこれまでの戦いでよくわかっていることだ、彼等も時としては待ちそのうえで勝利を収めてきたからこそ。
それでだ、こう言うのだった。
「今がまさにそれだ」
「それでは」
こう話してそしてだった。
連合艦隊はホワイトホールから出て来た大怪獣達を迎え撃った、まずは。
田中は機動部隊にだ、こう命じた。
「いいか、まずはイモムシ共だ!」
「連中ですか」
「まずは」
「ああ、連中の声を聞いたら終わりだからな」
耳栓をしていても油断ならない、だからだった。
「まずはあいつ等を全部潰すんだよ」
「では艦載機はですか」
「奴等に」
「優先して出せ」
そしてだというのだ。
「真っ先に潰せ、いいな」
「了解です」
「それでは」
連合艦隊の将兵達もすぐに応えてだ、そして。
艦載機が宇宙を進むイモムシ達に殺到した、その不気味かつ巨大な姿を見てだった。
パイロット達は目を顰めさせてだ、耳栓を通じてこう言うのだった。
「実際に見ると余計に嫌だな」
「ああ、気持ち悪い奴等だよ」
「こんな連中には食われたくないな」
「全くだよ」
こう話してそしてだった。
彼等はイモムシ達に次々と装備しているビームやミサイル、爆弾で攻撃した。その攻撃を受けてだった。
イモムシ達は赤子の声で叫び声を挙げた、その声を聞いてもだった。
「嫌な声だな」
「ああ、赤ん坊の声でも人間の言葉じゃねえな」
「本当に嫌な声だよ」
「本当にな」
こう話すのだった、攻撃を加える間も。
倒すと爆発四散し消え去った、肉片は銀河に飛び散った。
その爆発の後と肉片を見てだ、指揮にあたる田中は言った。
「あの肉片から分裂するとかはねえよな」
「安心するのだ、それはない」
パイロット達を指揮する柴神が答える。
「奴等はそうした生き物ではない」
「倒したら終わりなんだな」
「そうだ」
だから大丈夫だというのだ。
「流石に肉片が復活するということはないからな」
「よし、じゃあこのまま倒していくか」
「ラメダス達は任せてくれ」
機動部隊にというのだ。
「そしてそちらはだ」
「ああ、大怪獣だな」
「五体いる」
一体でも厄介なことこの上ない相手がだというのだ。
「全て倒せるな」
「ああ、絶対にな」
田中は柴神にも自信を見せる。
「だから任せてくれ」
「よし、ではな」
「いいか、全員で囲んでな」
そしてだというのだ。
「ビームで一気に焼き払うからな」
「戦艦のビームで」
「そうしますか」
「そうだ、攻撃を受けたら下がれ」
後方の大修理工場にというのだ。
「それで修理してくれよ」
「潜水艦艦隊はどう使うの?」
リディアが田中にこのことを問うた。
「私達は」
「敵の下に回り込む」
そしてだというのだ。
「それでそのドテッ腹に思いきり撃ち込んでやるんだよ」
「止めを刺すのね」
「そうだよ、じゃあそれでいいな」
「了解、それじゃあね」
リディアは田中の言葉に頷いた、そのうえで。
まずは戦艦を軸とした艦隊が大怪獣達をそれぞれ囲む、そのうえで。
彼等は攻撃を浴びせる、そしてだった。
大怪獣からの攻撃を受ける、だがそれでもだった。
誰も動いてはいない、それで言うのだった。
「これまでは大怪獣の攻撃だと一撃で艦隊が壊滅したのにな」
「ああ、耐えられてるな」
キャシーにキャヌホークが応える。
「かなりのダメージにしても」
「流石第十世代っていうのかい?」
キャシーは戦場に立っている己の艦隊の艦艇達を見回しながら言った。
「それだけの性能だって」
「そうみたいだね」
キャヌホークも自分の艦隊を見つつキャシーに応える。
「どうやら」
「そうか、じゃあな」
「ああ、いけるよ」
例え相手が大怪獣達でもだというのだ。
「勝てなくとも半年はね」
「耐えられるね」
「例え敵が毎日来ても」
大丈夫だというのだ、そして。
連合艦隊は大怪獣達にさらに攻撃を浴びせてだ、そのうえで。
止めにその腹に潜水艦達が魚雷を放った、その腹に直撃を浴びせてだった。
大怪獣達を倒した、初戦は鮮やかな勝利だった。
しかしその勝利にもだ、柴神は険しい顔で言うのだった。
わかっていると思うが」
「ああ、すぐに来るんだな」
「うむ、今日にでもな」
来るというのだ、敵が。
「だから油断はしないことだ」
「わかったぜ、じゃあな」
それではとだ、田中は柴神に応えたうえで。
勝利に喜ぶことなく全軍を港に下がらせた、そうしてだった。
提督と将兵達にだ、こう言った。
「じゃあいいな」
「はい、今はですね」
「休め、いいな」
そうしろというのだ。
「運動をしてもいいけれどな」
「英気を養えと」
「そう仰るのですね」
「そうだよ、英気は養える時に養えよ」
戦いの中でだ、そうしろというのだ。
「長い戦いになるからな」
「わかりました、それでは」
「今は」
「俺は食う」
田中はそうするというのだ、では何を食べるかというと。
「寿司か鉄火丼でもな」
「そこでも海の幸なんですね」
そのことを聞いてだ、小澤が突っ込みを入れた。
「田中さんらしいですね」
「ああ、魚が一番好きだからな」
実に魚屋の息子に相応しい言葉だった。
「ちょっと寿司屋に行って来る」
「では私はエロゲをしています」
「女がエロゲをするのかよ」
「ボーイズラブのものを」
エロゲはエロゲでもそちらをするというのだ。
「これが中々楽しいのです」
「そうなのかよ」
「そうです、では」
こんなことを話してだった、それぞれ英気を養う。初戦には勝っても油断できないことは誰もがわかっていた。
実際に次の日にまた来た、その次の日も。
ラメダスと大怪獣達は毎日来た、時には一日に二度三度とだ。連戦に次ぐ連戦だった。
皆次第に疲労が蓄積されていく。だが第十世代の艦艇と大修理工場に軍事基地を置いた万全の備えが功を奏していた。
それに率いるのは歴戦の提督達だ、提督達には犠牲者を出すことなく将兵の損害も軽微なまま三ヶ月が過ぎたのだった。
その中でだ、東郷は日本に言った。
「田中の采配もいいな」
「そうですね、これまでは突出が目立っていましたが」
二人は今食堂でカレーを食べている、その中で話しているのだ。
「今は冷静ですね」
「しかも的確な采配だ」
「かなり成長されましたね」
日本はカレーを食べつつ微笑んで言う。
「田中さんも」
「どうやらこのままだとな」
「東郷さんにですか」
「とって代われるな、面白い」
「あの、それは」
「ははは、俺が何時までも連合艦隊司令長官ではかえって駄目だろう」
「代替わりは必要だというのですね」
日本も東郷の言いたいことを理解して応える。
「そういうことですね」
「そうだ、だからな」
「田中さんの成長は嬉しいのですね」
「さて、俺からどうして連合艦隊司令長官の座を奪い取るか」
即ちヘッドの座をというのだ。
「見せてもらうか」
「今はいい勝負かと思います」
「俺と田中はか」
「そう思います、ですが」
「それでもか」
「田中さんも別世界への攻撃に参加されたいのですね」
「今もそう言ってるな」
どうしてもと言っているのだ、田中は。
だがそれでもだ、日本は難しい顔で述べる。
「しかし艦艇が」
「ないからな」
「はい、どうしても」
だからだというのだ。
「田中さんのその願いは適えられません」
「あいつにとっては残念なことにな」
「そうですね、しかし」
「ないものは仕方がない」
どうしようもないというのだ。
「だからな」
「それではですね」
「十九隻だ」
別世界に送り込む艦艇とメンバーはもう決まっていた。
「それ以上は増えそうにないな」
「あと三ヶ月です」
日本はその十九隻の艦艇の完成までのリミットも述べた。
「三ヶ月耐えれば」
「超艦艇達が完成する、そして」
「別世界に突入しラメダス達の女王を倒し」
「世界を救う」
「今超艦艇の開発は順調ですね」
日本は東郷にこのことも確認した、そのことを言いながらもカレーを食べるスプーンの動きは止まらない。
「遅れていませんね」
「安心してくれ、そちらはな」
「それは何よりです」
「今はとにかく凌ぐしかないからな」
残り三ヶ月、その間というのだ。
「まだ三ヶ月ある、英気を養いつつ戦っていこう」
「そうですね、よく眠りよく身体を動かし」
「よく遊んでな」
そうしてだというのだ。
「英気を養いつつ戦おう」
「そうですね、今は」
こう話してだった、今は。
残り三ヶ月を耐えることにした、それしかなかったからだ。
その中で田中は陣頭指揮を執り続けていた、その采配は見事なものだった。
だがその彼にだ、戦いの合間に平賀が言ってきた。
「いいか」
「何だよ、久重」
「話してるのは確かに私ですけれどね」
平賀の頭の久重が自分の口で応える。
「津波様のお言葉ですから」
「その辺りまだ慣れないな」
「そうですか」
「ああ、とにかくだよな」
「はい、津波様のお言葉です」
ここから彼女の言葉になる。
「実は君に話したいことがある」
「何だよ」
「実は新型の潜水艦を考えている」
「新型?」
「うむ、それに乗ってもらってだ」
そしてだというのだ。
「戦ってもらえるか」
「ああ、それならな」
話に乗るとだ、田中も応えた。
「正直こっちは少しでも戦力が欲しいところだからな」
「そうだな、ではだ」
ここで平賀は田中にこっそりと話をした、話を聴き終えた田中はまさかという顔でしかし目を輝かせて言うのだった。
「その話信じていいんだよな」
「私は嘘を言う趣味はない」
これが平賀の返答だった。
「ではいいな」
「ああ、それじゃあな」
「若しかするとだ」
平賀は久重の口からさらに言った。
「二隻いけるかも知れない」
「二隻!?」
「そうだ、新型の潜水艦がな」
二隻建造出来るかも知れないというのだ。
「まだそこははっきりわからないがな」
「二隻かよ」
「どうだ、期待出来るか」
「ああ、若し二隻建造出来たらな」
どうして欲しいかとだ、田中は平賀に熱い声で言った。
「あの人に渡してくれるか」
「彼女にだな」
「ああ、そうしてくれるか?」
こうだ、田中は平賀の口元に顔を寄せて小声で頼んだ。
「あの人ならいいだろ」
「実は最初からそう考えていた」
平賀も田中にこう返す。
「私もな」
「そうなのかよ」
「潜水艦といえばだからな」
それでだというのだ。
「考えていた」
「そうか、じゃあ話は早いな」
「うむ、ではだ」
「一隻、出来れば二隻か」
「潜水艦も考えている」
「これからは潜水艦も重要な兵器だからだよな」
「あれは画期的な発明だ」
そこまでのものだとだ、平賀は潜水艦に賞賛の言葉さえ述べた。
「レーティア=アドルフ総統の偉大な発明の一つだ」
「そうだよな、俺も実際に乗ってみて思ったよ」
「うむ、隠密性が高く奇襲に向いている」
「ソナーで見つかっちまうけれどな」
「だがあれは素晴らしいものだ」
ソナーで見つかってしまうという弱点がありしかも見つかると後は脆い船でしかないとしてもだ。
「天才だからこそ出来る発見であり発明だ」
「全くだな」
「うむ、それでその潜水艦だが」
「これからは戦艦や空母と同じだけ重要になるんだな」
「間違いなくな、ではな」
「期待しているからな」
「そうしてもらって結構だ」
平賀はこう田中に述べた。
「君の力も必要だろうからな」
「ああ、やってやるぜ」
「この戦争は勝利で終わらねばならない」
ラメダス、彼等との戦争はというのだ。
「さもなければ我々は滅ぼされる」
「あんな連中の餌とか真っ平だからな」
「誰もが思うことだ」
あの様な連中の餌になるなぞとはだ、このことは誰であろうが思うことだった。おぞましさを感じずにはいられないと。
それでだ、平賀も言うのだ。
「あの様な連中は滅ぼさなくてはな」
「駄目だよな」
「だからだ」
それ故にだというのだ。
「君もあの連中に止めを刺しに行ってもらいたいのだ」
「その言葉受けさせてもらったからな」
「私もこの戦争が終われば」
ここでだ、こんなことも言う平賀だった。
「幸せになりたいからな」
「幸せ?」
「宇垣外相とな」
ぽつりとだが頬を赤らめさせての言葉だった。
「そうなるのだ」
「?どういうことだよ」
「私は宇垣外相と結婚することになった」
「おいおい、それは本当のことかよ」
「そうだ、目出度くな」
「戦争が終わったら婚姻届を出してですね」
久重は自分の言葉で田中に話した。
「結婚式も」
「そういえば外相さん独身だったな」
「私もだ。共に結婚したこともない」
「それでかよ」
「私達は結婚する」
そうするとだ、平賀は田中に話す。
「君にも来てもらう」
「何か凄いことになってるな」
「そうだろうか」
「だってよ、あんたと外相さんが結婚するなんてな」
そのこと自体がだというのだ。
「想像もしてなかったぜ」
「実はタイプなのだ」
「外相さんがかよ」
「うむ、ああした武骨で厳しい者がな」
平賀は自分の好みも話す。
「昔から好きだ、それにその性格もだ」
「悪い人じゃないな」
田中も宇垣のことはよくわかっている、同じ海軍に属していることもあるが彼も宇垣に色々と世話になっているのだ。
「面倒見がいいし公平でな」
「生真面目で意外と気がつく」
「紳士だしな」
「そうしたところが好きなのだ」
宇垣の性格もだというのだ。
「だからだ」
「そうか、じゃああんた達を幸せにする為にもな」
「勝って来るのだ」
「待ってろよ、イモムシ共の女王をやっつけてきてやるぜ」
「期待している」
こうした話もしたのだった、田中は平賀と重要な話をしたがこのことは誰も気付いていなかった、彼等以外は。
戦いはまだ続く、損害こそ軽微だが戦う面々はいうと。
疲労の蓄積は深刻なものだった、ブラックホースは疲れを隠せない顔で同じく疲れを顔に出しているカナダにこう言った、二人共テーブルに疲れた顔でいる。
「大丈夫か」
「何とかね」
カナダは目の下にクマを浮かべている、横にはクマ二郎がいるが彼とはまた違ったクマである。クマはクマでもだ。
「やっていってるよ」
「ならいい」
「ブラックホースさんも大変だね」
「最近戦う以外はだ」
その時以外はというと。
「食って寝てトレーニングをして」
「それだけだよね」
「本等にそれだけだ」
それ以外のことをする余裕がないというのだ。
「毎日出撃しているからな」
「だよね、僕達もね」
「しかしあと少しだな」
「うん、超艦艇が完成するのはね」
「二ヶ月を切ったというが」
「四十五日だよ」
超艦艇達の完成にというのだ。
「本当にもう少しだよ」
「そうだな」
「あと少し」
カナダは疲れきった顔のままだ、だが。
その前に十二段のホットケーキを出して来た、そして。
その多段のホットケーキにシロップをたっぷりとかける、ブラックホースの前にも同じものが出されている。
そのホットケーキのセットを出してだ、カナダは彼に言うのだった。
「食べてね」
「悪いな」
「英気を養わないといけないからね」
それでだというのだ。
「僕達もね」
「食って元気をつけろか」
「うん、そうしよう」
「ほら、食べよう」
クマ二郎もカナダに言う。
「ブラックホースも」
「俺の名前は間違えないか」
「俺は目立つ奴の名前は忘れない」
カナダを観ながらの言葉だ。
ブラックホースは目立つから」
「だからか」
「そう、それと」
ここでさらに言うクマ二郎だった、彼から見て右手に顔をやると。
そこにはスイスとリヒテンシュタインもいた、それで言うのだった。
「あの二国もちゃんといる」
「永世中立国なんだけれどね、あの二国は」
カナダも彼等を見ながら応える。
「ちゃんとね」
「当然だ、吾輩達も世界があの様な連中に支配されては大変だ」
「私達も世界の一員ですから」
スイスとリヒテンシュタインは一緒にチーズフォンデュを食べている、そうしながらカナダ達に応えたのである。
「だから今回はである」
「一緒に戦わせてもらっています」
「それでも戦争が終わったらなんだね」
「永世中立国に戻るのである」
スイスはカナダにこのことは確かだと答えた。
「欧州経済圏にも入らないである」
「私もです」
リヒテンシュタインもだというのだ、スイスと同じく。
「そうしたものには入りません」
「それが吾輩達のやり方である」
「それでも戦力になってくれているから」
クマ二郎は二国、特にスイスを見て言った。
「今は頼りにさせてもらうから」
「うむ、最後の最後まで戦うのである」
「皆さんと一緒に」
「うん、今は世界の皆が一つにならないと」
駄目だとだ、クマ二郎も応えてだった。
カナダ達はホットケーキを食べてスイス達はチーズフォンデュを食べた。そのうえで英気を養うのだった。
世界がまさに一つになり戦っていた、それはミクロネーション達もだった。
シーランドはエイリス軍の空母に着艦した、戦闘機から降りてそして言うのだ。
「イモムシの野郎共またやっつけてやったのです」
「ああ、よくやってくれたな」
出迎えたイギリスがそのシーランドに応える。
「もうちょっとだけ頼むな」
「その言葉受けてやるのです」
シーランドもその顔には疲労の色がある、だがなのだ。
その顔でだ、こうイギリスに返すのだった。
「最後の最後までやってやるのです」
「そうしてくれ、それで超艦艇達が完成したらな」
その時はだとだ、イギリスはシーランドにはっきりと言い切った。
「俺達が終わらせてやるからな」
「そうするのですイギリスの野郎」
こう返したシーランドだった、こうした時でもいつもの口調だ。
「今回ばかりは頼むのです」
「今回ばかりはかよ」
「そうなのです」
こうイギリスに返す。
「さもないとシー君達も大変なのです」
「誰もあんな連中の餌になりたくないからな」
「うん、そのことはね」
「本当にそう思いますね」
パイロット姿のワイとセボルガも出て来た、彼等もパイロットとして戦争に参加しているのだ。見ればモロッシアやクーゲルムーゲル、ラドニアにハットリバーもいる。皆参戦しているのだ。
その中のモロッシアがイギリスにグラサン姿で悪態をつく様に言ってきた。
「おい、いいかよ」
「ああ、何だよ」
イギリスもその彼に応える。
「あからさまに何か言いたそうだな」
「何で御前のところの飯は酷いんだよ」
「はい、僕もそのことは気になっていました」
「嫌がらせかな」
セボルガとラドニアもこう言う。
「あまりにも酷いので」
「拷問なのかなってね」
「ですがエイリス軍の皆さん同じ食事ですから」
「そうでもないみたいだし」
「あのまずさも芸術なのか?」
クーゲルムーゲルに至ってはこう言う始末だtった。
「そうなのか?」
「ああ、イギリスさんこうだから」
「いつもこうだからね」
ワイとハットリバーは一同にこう話した。
「本当に料理は酷いから」
「そう割り切るべきだよ」
「そういう最低な料理センスは相変わらずなのです」
シーランドもここで言う。
「イギリスの野郎に料理の腕は期待しないことがいいのです」
「御前までそう言うのかよ」
「実際に酷いからなのです」
「そんなに酷いかよ、俺の料理」
「パンとオートミールだけってね」
「有り得ないですよ」
ラドニアとセボルガは実際にそのメニューについて指摘した。
「もう少し栄養とか考えた方がいいだろ」
「味も」
「戦争中だから食えればいいとは思わないんだな」
「そういう発想が駄目なんだろ」
モロッシアははっきりと否定した、イギリスのその考えを。
「本当によ、食えればいいって何なんだよ」
「栄養な野菜ジュースがあるぜ」
これ位はあるというのだ。
「飲むか?」
「こいつ本当に料理のセンスねえな」
「野菜ジュースはちゃんとした料理だろ」
「皮剥いた野菜を適当にミキサーに入れて終わりだろうがよ」
「果物だって入れるだろ」
「それの何処が料理なんだよ」
こうした話をする彼等だった、しかし。
クーゲルムーゲルはイギリスの野菜ジュースについてだ、こう言うのだった。
「遠慮するぞ」
「ああ、そうかよ」
「イギリスさんの料理はどれもまずいからな」
実に、見事なまでにはっきりとした口調での返答だった。
「僕はオーストラリアさんのところで食べるぞ」
「私もそっちに行くか」
ワイもオーストラリアの中のミクロネーションとして話した。
「そうするか」
「シー君はスーさんのところに行くのです」
「スウェーデンと休戦して行くか」
ラドニアアもシーランドについて行こうというのだ。
「ここで食べるよりずっとましだろうし」
「あの強烈な缶詰が楽しみなのです」
「あれはあれで一興だしね」
シュールストレミングだ、この缶詰の破壊力は健在だ。
「あれを一緒に食べるのです」
「そうしようか」
「僕はやっぱりイタリアさん達のところで」
セボルガは彼の居場所があった、ちゃんと。
「ご馳走になります」
「俺はアメリカさんのところに戻るぜ」
モロッシアもだった、彼の居場所があった。
「そこでステーキにアイスに色々食うか」
「何だよ、全員この船を出るのかよ」
イギリスは難しい顔で彼等の言葉を受けた。
「寂しくなるな」
「安心するのだ、私が来た」
モナコだった、ここで出て来たのは。
「尚私はもう食事を済ませた」
「モナコかよ」
「後はお茶だな、それとティーセットだけ貰おう」
「そういうのだけ食えるからっていうんだな」
「君の食事のセンスについてはあえて言わない」
「いや、もう言ってるだろ」
「とにかくそれを貰おう」
紅茶と三段セットをだというのだ。
「今からな」
「まあな、じゃあ休憩にな」
「そもそももうお昼の時間は過ぎている」
モナコは冷静に突っ込みを入れていく。
「そろそろお茶の時間だ」
「ああ、そういえばそうだな」
ここでイギリスも自分の左腕の腕時計を見た。見れば三時前だった。
「じゃあいいな」
「はい、それじゃあ」
「今から」
こう話してそしてだった、彼等は。
一緒にお茶を飲むことにした、だがミクロネーション達はそれぞれ行きたい場所に行ってしまっていなかった。
それで一緒にいることになったモナコにだ、こう言った。
「飲むか、今から」
「うむ、それではな」
こう話してそしてだった、イギリスは昼食も兼ねたティータイムを楽しむことが出来た。彼も一人ではないのだ。
一人ではないからだ、誰もがだった。
戦えた、そうして。
いよいよだった、期限が近付いてきていた。戦士達は確かに疲労の極みにあったが。
あと少しだった、それで秋山は確かな顔で日本に言った。
「祖国殿、そろそろです」
「はい、超艦艇に乗る用意をですね」
「心構えをお願いします」
言うのはこのことだった。
「是非」
「テスト運用は」
「残念ですが実戦がです」
そのままだというのだ。
「それになります」
「ぶっつけ本番というのですね」
「そうです」
まさにそれになるというのだ。
「そこまでの時間的余裕がないので」
「しかしですね」
「そうです、完成間近なので」
それでだというのだ。
「心構えをお願いします」
「わかりました、それでは」
「あと一週間です」
超艦艇達の完成までというのだ。
「完成まで」
「本当にいよいよですね」
「はい、ですがこれが十日になっていましたら」
三日、それだけでも遅れていればというのだ。
「危うかったかと」
「そうですね、皆さんの疲労がもう」
「限界です」
それに達していたのだ、既に。
「ですから」
「一週間が十日になれば」
「崩壊していました」
間違いなくだ、そうなっていたというのだ。
「疲労が限界に達していますので」
「三日でもですね」
「遅れていれば破滅していました」
それを今言うのだ。秋山は。
「ですがそれでもです」
「間に合ったからですね」
「一週間で、ですから」
「私達は戦線の崩壊を迎えず」
そのうえでだというのだ。
「ホワイトホールに突入出来ますね」
「そうなります、ですが」
「別世界の戦いもですね」
「容易ではありません」
死闘、それになるというのだ。
「間違いなく」
「そうなりますね、あちらの世界でも」
「女王への道は柴神様が導いてくれますが」
それでもだというのだ。
「どうやらそこに至るまで二度です」
「戦いがありますか」
「大怪獣、ラメダス達の巣を通ります」
そこが二つあるというのだ。
「ですから」
「二度の戦いを突破しなければですね」
「女王の下には辿り着けません、しかも」
「まさか女王の周りも」
「そこが最も大きな巣とのことです」
女王のいる星域、そここそがだというのだ。
「ですから」
「そこでの戦いがですね」
「最大にして最後の戦いになりますが」
「そこで何としても勝たねば」
「私達に未来はありません」
辛い戦いになる、しかしその戦いに勝たねばというのだ。秋山が日本に話す現実は彼がこれまで話したどの現実よりも過酷だった。
だが秋山も日本もその現実を見てそして言うのだった。
「しかしそれでも」
「勝たねばなりませんね」
「ご安心下さい、如何に辛い戦いであろうとも」
確かな声でだ、秋山は日本に語る。
「私達は勝ちます」
「必ずですね」
「アドルフ総統が設計、開発されている兵器です」
人類史上最大の天才と言われている彼女がそうしたものだからだというのだ。
「ですから」
「勝てますね、私達は」
「例えどれだけ辛い戦いであろうとも」
それでもだというのだ。
「私達はです」
「勝ち、そしてですね」
「生き残ることが出来ます」
まさにそうなるというのだ。
「ですから」
「絶望せずにですね」
「絶望は何も生み出しません」
それは何一つとしてだというのだ。
「しかし希望はです」
「生み出しますね」
「そうです、ですから最悪の事態を想定しながらも」
「前向きにですね」
「ただの楽観もあってはなりませんが」
これもまた何にもならないものだ、根拠のない楽観に基づいて物事を行っていくことは愚か者の為すことである。
「ですから」
「はい、希望を持ってですね」
「進みましょう」
こう日本に言う秋山だった、その秋たまの言葉を聞いて。
日本はこう彼に言った、その言った言葉とは。
「秋山さんも変わられましたね」
「楽観を観る様になったというのですね」
「はい」
そこが変わったというのだ。
「開戦前はそうではなかったですが」
「そうですね、実際に」
「真面目さに加えてですね」
「どうも長官の影響を受けまして」
このことをだ、、秋山は苦笑いと共に日本に語った。
「そのせいかと」
「ではいい影響ですね」
「ははは、そうですね」
そうだとだ、秋山は今度は明るい笑顔で答えた。
「私もいい意味で変わりました」
「そうですね、楽観もまた大事ですね」
「最悪の自体を想定しつつ」
絶望せずにだというのだ。
「それが最もいい作戦を立てられることがわかりました」
「ではですね」
「いよいよです」
明るい顔でだ、日本は秋山に話した。
「世界を護る為に」
「最後の戦いに」
超艦艇達が遂に完成しようとしていた、歴戦の英雄達は遂に最後の戦いに赴こうとしていた、希望を胸に。
TURN140 完
2013・9・18
どうにか半年耐えたか。
美姫 「とは言え、流石に兵たちもぎりぎりだったみたいね」
だな。流石に延々と来れれればな。
美姫 「それでも、いよいよ反撃の時ね」
だな。それに田中と平賀の話からすると……。
美姫 「そこらも気になる所ね」
だな。そんな気になる次回はこの後すぐ!