『ヘタリア大帝国』




                TURN139  銀河の真実

 柴神だった、一同に言ったのは。
 彼は教会の中に漂う気配に怯えさえ見せてそのうえで言うのだ。
「地下室に行ってはならない」
「それは何故だ?」
「行くと必ず後悔するからだ」
 だからだとだ、柴神はレーティアの問いに答えた。
「だからだ」
「その姿のおぞましさにか」
「貴殿は見たのだな」
「見たから言っているのだ」
 レーティアも真剣な顔で返す。
「あの不気味なものにな」
「そうだな」
「しかし何故今になって言う」
「見るなということをか」
「そうだ、何かを察したと見受けるが」
「地下室まで、この教会の全てを今すぐ焼くか爆破するのだ」
 柴神はかなり過激な解決案を出した。
「いいな」
「待て、随分過激だな」
 ドイツは柴神の今の言葉に怪訝な顔で言った。
「貴方にしては」
「そうするしかないからだ」
 だから言うとだ、柴神はドイツに答える。
「ここはだ」
「だからか」
「そうだ、そうするのだ」
 一刻も早く、そうした口調だった。
「わかったな」
「いや、そういう訳にもいかない」
 柴神のその主張に対してレーティアが反論する。
「見てもらわないと何かわからないからな」
「わかっているから言うのだ」
 柴神は言ってしまった、取り返しのつかない言葉を。
「去るのだ、今すぐにここから」
「!?今何て言ったんだよ」
「わかっているって言ったな、今」
 柴神のその失言に最初に気付いたのはイギリスとフランスだった、二国は怪訝な顔になって彼に問い返した。
「総統さんが言う化物のことをかよ」
「わかってるのかよ」
「そ、それは」
「そうだな、今の口調はな」
 レーティアも柴神にあらためて言う。
「そうしたものだったな」
「何なんだ、それじゃあ」
「地下にいるのは」
「くっ、しまった」
 柴神は自身の失言に歯噛みした、だが言ってしまった言葉は消せない。取り繕うにも最早手遅れだった。
 それでだ、覚悟をして言うのだった。
「仕方がない、最早な」
「観に行っていいんだな」
 ダグラスは柴神の不穏な気配に警戒しながら応えた。
「俺達は」
「うむ、ではな」
 柴神は観念した顔で応えた、そうしてだった。
 一行はドイツが開けた礼拝堂の中央から入る降りる階段を見た、そしてその階段から。
 彼等は降りた、階段はかなり長かった。
 だがその長い階段を降りる、その降りた先は。
 そこも礼拝堂の様だった、暗い部屋の中は秋山達が照らした。そのうえで中を見回すと。
 レーティアが一同に険しい顔で告げた、その礼拝堂の台座の上にあるものを指差して。
「あれだ」
「!?何だあれは」
「宇宙怪獣、いや違うあるな」
 アメリカも中国も彼等を観て言う。
「イモムシの顔に赤ん坊の顔があるぞ」
「触手も多く、何あるかあれは」
「誰か知らないか」
 レーティアはあらためて一行に問うた。
「これが何か」
「だから何よ、これ」
 キャロルはその何かを化物を見る目で観つつレーティアに問い返した、質問に質問で返すがそれでも言うのだった。
「こんな宇宙怪獣知らないわよ」
「四国総督に聞いてたらどうかしら」
「そうよね、あの人なら知ってるかもね」
 リンファとランファもそれを観つつ話す。
「これが何か」
「どういった宇宙怪獣なのか」
「いや、これは宇宙怪獣ではない」
 ここで柴神が再び語った。
「そんな生易しいものではない」
「だからすぐに処分しないといけないんだね」
 ロシアもその化物を引きながら見ている。
「何かわからないけれど」
「そうだ、すぐにだ」
「こいつ近寄ったらまずいな」
 その化物を見て言う田中だった、彼も同行しているのだ。
「銃でやるか」
「そうしてくれ」
 柴神は田中のその言葉に頷いてよしと答えた。
「どうやら精神は崩壊している様だがな」
「本当に気持ちの悪い奴だな」
 田中もそのイモムシを見て顔を顰めさせている。
「赤ん坊の頭が余計にな」
「正直見ているだけで吐きそうよ」
 一行の中でとりわけ幼いカテーリンは特に嫌悪感を見せている。
「何よ、本当に」
「とにかくやっちまうからな」
 田中は銃を出した、それも自動小銃をだ。
 連射にセットして照準を定める、だがここで。
 それの目がカッと光った、それでだった。
 何か奇怪な言葉を出してきた、その言葉の中に。
「ノープドッグ・・・・・・」
 その禍々しいめで柴神を見ての言葉だった。
「この世界にもいるか」
「ノープドッグ!?柴神様のことですか?」
 シャルロットはその柴神を見て言った。
「それでなのですか?」
「しかしこの言葉は」
「一体」
 それはまだ呟く、それを聞いているうちに。
 皆自然にだ、柴神に殺意を感じだしていた。そうして。
 柴神を囲もうとする、だがそれより前に。
 柴神は自ら銃を抜いてそれの額を射抜いた、そのうえで言うのだった。
「黙れ!この世界の子供達まで害するか!」
「・・・・・・・・・」
「死ね!消えるのだ!」
 言いながら何発も放つ、それでそれを完全に殺した。
 柴神は肩で息をしていた、皆それが死ぬと我に返った。
 そしてだ、こう言うのだった。
「どうして柴神様を憎いと思うのか」
「これは一体」
「何故また」
「そんなことを思うのか」
「こうなっては仕方がない」
 柴神は強張った顔で一同に言う。
「真実を話す、そしてだ」
「そして?」
「そしてといいますと」
「すぐにチェリノブにいる戦力に厳戒態勢を取らせてくれ」
 カテーリンとロシアにだ、柴神は言うのだった。
「いいな、すぐにだ」
「!?チェリノブなの」
「あの星域になんだ」
「そうだ、すぐにだ」
 まさに即座にだというのだ。
「いいな」
「何かよくわからないけれど」
「あそこに何かがあるんだね」
「全軍、全市民に至るまでだ」
 柴神の言葉は続く、まさに矢次早だ。
「耳栓をさせるのだ」
「耳栓って!?」
「それをしないといけないの?」
「そうだ、指示等は目でやってくれ」
 耳ではなく、というのだ。
「奴等の言葉を聞いてはならないからな」
「ひょっとして今の言葉を?」
 カテーリンはここで気付いた、柴神の言葉の意味に。
「聞いたらいけないんだ」
「察してくれたか」
「うん、それでなのね」
「そうだ、奴等の言葉を聞けば奴等にコントロールされる」
 それでだというのだ。
「だからだ、そして今銀河にある戦力を出来るだけ多くチェリノブに集めるのだ」
「ソビエト軍だけじゃなくて」
「足りない、まだな」
 数の多さでは定評のあるソビエト軍でもだというのだ。
「わかったな、それではだ」
「わかりました、それでは」
「すぐに艦隊を集結させよう」
 太平洋と欧州のそれぞれの中心国である日本とドイツが応えた。
「あの化物達に対してですね」
「それでか」
「こいつ等は成長すれば大型化し艦艇位の大きさになる」
 柴神は自身が殺したそれを見つつ言っていく。
「そして宇宙空間でも動けるのだ」
「随分厄介な奴だな」
 フランスはそこまで聞いて顔をこれ以上はないまでに顰めさせて言った。
「本当にどんな奴なんだよ」
「そのことも話す、とにかく奴等の言葉は聞くな」
 このことは絶対にだというのだ。
「第八世代の艦艇なら奴等は防げる、だが」
「だが?」
「だがというと」
「それは防ぐだけだ、大本はどうにも出来ない」
 柴神は今は彼だけが知っていることを言う、しかしそこには明らかな危惧そして怯えがあった。
 そのうえでだ、彼は言うのだ。
「皆すぐに日本に来てくれ、帝の前で話したい」
「わかりました、それでは」
 秋山が応える、そうしてだった。
 一行はすぐに御所に入った、そこでだった。
 彼等は柴神の話を聞いた、それは驚くべきことだった。 彼はまず自分のことから話した。自分が何者かとだ。
「私は最初からこの世界にいた訳ではない」
「えっ、そうなのですか!?」
「違ったの!?」
 この話には皆驚いた、日本とイタリアも声をあげる。
「柴神様はこの世界の神様ではなかったのですか
「そうだったんじゃ」
「済まない、今まで黙っていた」
 そこがだ、違っていたというのだ。
「私はノープドッグという種族だったのだ」
「あの化物が言っていたか」
「その名前だったあるか」
「そうだったのか」
 こう言うのだった、アメリカと中国にも。
「東郷達が迷い込んだあの世界にいたのだ」
「あの世界にですか」
「そうだ」
 こう東郷にも答える。
「ワープ空間の向こうにあるな」
「潜水艦でも入るあの世界の向こう側の世界か」
「この世界とあの世界はワープ空間でつながっているのだ」
 今このことも明らかにされるのだった。
「そしてあの世界にだ」
「あれがいるのですね」
 スカーレットも『あれ』の姿を見て強張った顔だ。
「そうなのですね」
「あれが宇宙怪獣を操り、大怪獣もな」
「あの大怪獣もかよ」
 イギリスはあの世界のことを思い出して顔を顰めさせた。
「連中の餌かよ」
「いや、駒だ」
「駒!?」
「そうだ、駒なのだ」
 それだというのだ、大怪獣達は彼等にとって。
「奴等は大怪獣と融合しその頭脳を乗っ取り動かすのだ」
「だから駒かよ」
「言うならば連中の軍だ」
「大怪獣がかよ」
「無論そのままでも戦うことが出来る」
 そのイモムシの身体のままでもだというのだ。
「人を操り自分達の餌としてだ」
「喰うんだな」
「そうだ」
 その通りだとだ、柴神はフランスにも話した。
「生きたままだ」
「そんなことしそうな連中だけれどな」
「我々の世界は奴等が支配している」
「酷い世界ね」
 キャロルはその話を聞いて顔を顰めさせた、これまで生きた中で最も。
「あんな連中が支配者で大怪獣を操って人間を餌にしてるって」
「というか大怪獣は元々は」
「あの世界から来てるのね」
 リンファとランファがここで気付いた。
「だから富嶽も」
「あの辺りから日本に来ていたの」
「元々この世界に大怪獣はいなかった」
 普通の宇宙怪獣はいてもだ。
「チェリノブから迷い出て来たのだ」
「そうだったのですね」
「そのこともわかったわ」
 二人もそれを聞いて納得した、大怪獣の謎もわかった。
 だが柴神の話は続く、今度の話はというと。
「連中は大怪獣を操るが」
「ヒムラーは生贄を使っていたらしいな」
 レーティアは自身が調べたことを話した。
「その生贄はか」
「大怪獣を操る為の巫女だったのだ」
「私と同じなのですね」
 帝がここで言った。
「富嶽を退ける」
「パルプナ嬢もですね」
 セーラは彼女のことを思い出した、今は南アフリカ軍の提督を務めている。
「彼女も」
「宇宙怪獣を操ることと大怪獣を操ることは同じだ」
 実際にそうだというのだ。
「そして大怪獣を操ることは人間にとってかなりの負担になる」
「だからサラマンダーへの生贄は多く必要だったのか」
「トルカ嬢もですね」
 帝は彼女のことも言った。
「あの大怪獣は極めて温厚なので負担は少ない様ですが」
「そうだ、帝という存在は国家の象徴としての君主であると共にだ」
「富嶽を抑える存在であるのですね」
「そうなっていたからだ」
 それでだというのだ。
「私は自ら帝を選んでいたのだ」
「私もですね」
「その通りだ」
「それでだけれど」
 ムッチリーニが帝に問うてきた、今問うたこととは。
「柴神さんはあっちの世界の人よね」
「そうだ」
「それであのイモムシと戦っていたの?」
「その通りだ、あの世界には奴等と人間、そして私達ノープドッグの三つの種族が存在している」
 柴神はムッチリーニに応え自身の世界のことも話した。
「私達は元々人間達と共にいて彼等に文明や技術、様々なことを教えてきた」
「神様ですか?」
「人はそう言ってくれた」
 今の柴神の様にだというのだ。
「私達は人間を護ってきた、だが」
「あの連中はかよ」
 田中はイモムシのことを言い顔を顰めさせる。
「あっちの世界の俺達を餌にしてか」
「その通りだ、大怪獣達も操りな」
「で、柴神様達はか」
「連中と戦ってきた、そしてその中でだ」
 柴神は自分のことを話していく。
「この世界に向かう穴、ホワイトホールを密かに見つけた。そこは奴等も知らない場所だった」
「それでこの世界に来られたのですか」
「うむ、人間達の一部を連れてな」
 そうしてだったというのだ、山下に話す。
「この世界に逃れた、今日本と言われる星域に入りそこを拠点として文明を築いていった」
「日本帝国をですか」
「数万年前、連れて来た者の数は数万程度だった」
 そこからはじまったというのだ。
「国家も築いていった、多くの星域に移住させていってだ」
「そして私達も生まれたのですね」
 日本もここでわかった。
「国家達も」
「最初の原始の八国がな」
「そうでしたか」
「そうだったのだ、我々はな」
「ううむ、この世界のルーツはあちらの世界にあってですか」
「数万年のうちに増えたものだ」
 今では二千五百億だ、数万年の間に増えたのである。
「栄えている、しかしその文明を守る為にだ」
「私達は戦わなくてはなりませんね」
「まずはチェリノブに戦力を集結させる」
 そしてだというのだ。
「しかしそれでは不十分だ」
「あちらの世界に行ってですね」
 そしてだとだ、こう言う東郷だった。
「大本をどうにかしないと駄目か」
「ホワイトホールを自由に行き来出来しかも奴等の戦力を難なく撃退出来てだ」
 柴神の注文めいた言葉が続く。
「しかもだ」
「しかも?」
「奴等の女王を倒せる艦艇を開発しなければならない。奴等は女王だけを中心としているのだからな」
「女王というとだ」
 レーティアは柴神の今の話から言った。
「蟻か」
「その通りだ」
「連中は蟻だったのか」
「生態はそのままだ」
 まさに蟻としてだ、女王を頂点としているというのだ。
「女王は代替わりで争い次の女王が立つがな」
「ではその女王がいなくなるとか」
「連中は組織だった動きが出来なくなりだ」
「滅ぼせるか」
「我々もそうしたかったが」
 だが、だとだ。柴神はこのことは苦い声で答えた。
「残念だがな」
「それまでの力がなかったか」
「これまではな」
 そうだったというのだ、あちらの世界にいた頃は。
「しかしこちらの世界では軍事技術が発達した、特にだ」
「私か」
「貴殿の存在が大きい」
 そのレーティアを見ての言葉だ。
「貴殿はこの世界の文明のあらゆる分野を驚異的に発展させる様々な技術を生み出しているがだ」
「軍事においてもか」
「第一世代の艦艇では到底連中には勝てない」
 第一世代ではだ、だがだというのだ。
「しかし第八世代では相手に出来てだ」
「さらにだな」
「その上の世代ではな」
「既に第九、第十世代も開発出来るが」
「いや、それよりもだ」
「それよりも?」
「ここにいる者達だけがそれぞれ動かす強力な艦艇が欲しい」
 柴神が今言うことはこうしたことだった。
「よりな」
「というと」
「超戦艦、それに超空母だ」
 そうしたものが必要だというのだ。
「一隻で大怪獣を倒せる位のものがな」
「そこまで強力な艦艇をか」
「そうだ、必要だ」
 無論ホワイトホールも行き来できるだけの航宙能力も必要である。
「開発出来るか」
「安心しろ、私を誰だと思っている」
 レーティアは柴神に問いに毅然として答えた。
「レーティア=アドルフだ」
「出来るということだな」
「当然だ、私に不可能はない」
 まさにだというのだ。
「どんな船でも開発してみせよう」
「では頼むぞ」
「暫く時間がかかるが」
 それでもだというのだ。
「必ず開発する」
「どれ位かかる」
 柴神はレーティアにその開発期間を尋ねた。
「開発、製造まで」
「半年か」
 それ位だとだ、レーティアは答えた。
「それ位あればな」
「そうか、では半年耐えるか」
「それでいいのだな」
「早ければ早い程度いいが」
 それでも半年あればというのだ。
「凌げる、チェリノブで充分にな」
「随分手強い相手なのですね」
 山下は柴神の話からこのことを察して言った。
「どうも」
「油断出来ない相手だ、戦闘力だけでなく」
 その他にもというのだ。
「厄介なことは大怪獣を操ることとこちらを洗脳してくることだからな」
「しかしあの外見だとな」
 ダグラスはそのイモムシの身体から言う。
「そんなに知能は高くないだろ」
「そうだ、知能自体は言葉はあるが」
「高くないんだな」
「獣よりも低い位だ」
 その程度だというのだ。
「さして高くはない」
「やっぱりそうか」
「そして女王に全てを支配されている」
「蟻なんだな」
「まさにな」
「本能だけか、じゃあ戦術は効果があるな」
 普通の人間に対してもだ、ダグラスは柴神と話をしながらこのことを洞察した。
「わかったぜ」
「しかしだ、奴等は女王の下組織的な行動を取る」
 柴神はこのことは釘を刺した。
「陣形を組むこともある」
「蟻みたによね」
 キャロルはこのことを確認した。
「そうよね」
「そうだ、まさに蟻なのだ」
「蟻よりもずっと気持ち悪い姿だけれどね」 
 だがキャロルは蟻だと認識した。そうしてだった。
 そのうえで考えてだ、こう言うのだった。
「ならこっちも陣形を崩さずに冷静にいくわね」
「それとなのですが」
 今度はリンファが柴神に尋ねる。
「その名前ですが」
「連中のだな」
「はい、何というのですか?」
「ただのイモムシじゃないわよね」
 ランファも柴神に問う、このことについて。
「やっぱり」
「うむ、我々はラメダスと呼んでいる」
「ラメダスね」
「しかし名前は別に構わない」
 何と呼んでもだというのだ。
「イモムシでも別にだ」
「宇宙イモムシとでもしたらどうだよ」
 田中は柴神の話を聞いてこう述べた。
「それならな」
「そうだな、別にそれでいいだろう」
 構わないとだ、柴神も田中に返す。
「名前はどうでもいい」
「とにかくあいつ等を叩き潰さないと駄目だってことだな」
「女王までな、そうすればだ」
「あいつ等がこっちの世界に来なくなるんだな」
「あの世界でもだ」
 別世界、即ち柴神が元々いた世界でもだというのだ。
「もうあの連中に悩まされることはない」
「連中の数は多いのかよ」 
 イギリスはイモムシ達の数について尋ねた。
「あんなl気持ちの悪い連中がうじゃうじゃいるのか?」
「いや、数自体は多くはない」
 それ自体はというのだ。
「然程な」
「そうか、まああんな奴等がうじゃうじゃいたら嫌で仕方ないな」
「大怪獣もだ、しかし奴等は貪欲だ」
 このことが問題だというのだ、例え数は少なくとも。
「一度の食事で多くの人間を貪り喰う」
「そうなのですか」
 シャルロットはその話を聞いて顔を曇らせた、人を喰らう化物というおぞましい存在に対して。
「だからあちらの世界では」
「大怪獣に怯えあの連中に怯えている」
 それが柴神がいた元の世界だというのだ。
「大怪獣達はこの世界よりも遥かに多い」
「数自体は少ないけれどだね」
 ロシアがここで言う。
「それでもなんだ」
「数は相対的だ、大怪獣が星を襲い連中が人間を餌としている世界だ」
「文明は発達していそうにないな」
「そうあるな」
 アメリカも中国もそう察した。
「あまりいい世界じゃないな」
「この世界より遥かに悪そうある」
「うむ、私のいた頃にはワープ技術がもうあったが」
 そのことを考えるとこの世界より文明は先に進歩していた、だがそれでもだというのだ。
「連中が常に暴れ回っている世界だからな」
「今では僕達の世界の方が進歩していそうだな」
「特に軍事関係があるな」
「そうだ、怪獣や連中に襲われ喰われるよりも人間や国家同士での争いの方がずっとましだ」
 例えそれが破壊であってもだというのだ。
「競うことになりそれが文明を高めていく一面があることは確かだからな」
「しかし大怪獣やラメダス達は」
 この者達はどうかとだ、セーラは察して言った。
「ただ破壊し貪るだけですね」
「後には何も残さない」
「そうした世界だからですか」
「人類は残っていると思うが」
 それでもだとだ、柴神は心配する顔で述べていく。
「それでもだ」
「左様ですか」
「この世界も守らないとならない、そして」
 それにだというのだ。
「あの世界も何とかしたい」
「柴神様は二つの世界を救われたいのですね」
 その話を聞いてだ、帝が言う。
「そうなのですね」
「そうだ、そう考えている」
「なら必ず」
 帝は柴神の話を聞いて微笑んでいる、微笑んでいるがその声は確かなものだった。
 そしてその声でだ、こう言うのだった。
「勝ちましょう」
「そうしてくれるか」
「まずは半年、チェリノブで彼等を抑えましょう」
 そうしてだった。
「そのうえで精鋭艦隊をあちらの世界に送り込んで女王を倒しましょう」
「その際の案内役は任せてもらおう」
 柴神は女王までの案内役も申し出た。
「何処にいるかはわかっている」
「では」
「皆戦おう」
 柴神もだとだ、そう言ってだった。 
 彼はあらためて会議にいる者達を見回しそしてこう言った。
「人類の未来の為に」
「はい、それでは」
 東郷はここで一同を見回した、そのうえで言うことは。
「戦艦と空母だな、それならば」
「どうするのですか、配備は」
「国家さん達は空母に乗ってくれるか」
 こう日本に返す。
「つまり空母は八隻だな」
「私達全員が空母ですか」
「そうだ、そうしてくれるか」
「わかりました」
 日本は東郷の言葉に頷いた、そして他の国家達もだ。
 まずは空母が決まった、そのうえで。
「戦艦はだ」
「東郷さん達がですね」
「俺とスカーレット、ダグラスさんにキャロルにな」
 まずはこの四人だった。
「リンファ、ランファ、セーラさんにシャルロットさんに総統さん、統領さんもだな」
 今会議に出ている面々だった、皆。
「それと書記長さんもだな」
「わかったわ」
 カテーリンは東郷の言葉を受けて強い声で応えた。
「じゃあ私も戦うから」
「ああ、頼むな」
「戦艦は十一隻だな」
 柴神は東郷が挙げた面々の頭数から述べた。
「十九隻か」
「そうなります」
「よし、ではその十九隻の超戦艦と超空母の開発、建造に入ろう」
「すぐに」
「私は東郷と共にいることになるか」
 陸軍の山下はそうなるのだった。
「そうか」
「艦内に入って来る敵じゃなさそうだがな」
 それでもだというのだ、東郷も。
「若しもの時は頼む」
「わかった、その時は任せてもらおう」
「ではな」
「おい、俺はどうなるんだよ」
 ここで言うのは田中だった、顔を顰めさせて東郷に問う。
「俺だけ名前がないぜ」
「御前は潜水艦乗りだからな」
 それでだとだ、東郷はその田中に答えて言う。
「今回はな」
「潜水艦を開発しないからかよ」
「そうだ、チェリノブでの防衛戦の指揮にあたってくれるか」
 そうしてくれというのだ。
「それでどうだ」
「ちっ、折角の見せ場だってのにな」
 苦い顔でだ、田中は東郷の言葉に歯噛みした。
「そうなるのかよ」
「悪いがな」
「潜水艦がなしなんてな」
「巨大潜水艦というものはだ」
 レーティアが田中に話す。
「どうしてもだ」
「ないってのかよ」
「潜水艦は隠密性が重要だ」
 だから小型なのだ、潜水艦は見つかってしまえばもうただの脆い的でしかない。そのことは発明者であるレーティアが最もよく知っていることだ。
「だからだ」
「無理かよ」
「大怪獣を一隻で倒せるだけの艦だぞ」
 レーティアは田中にこのことから言う。
「それを潜水艦で出来るか」
「いや、それはな」
「無理だな、だから御前はだ」
「チェリノブにいろっていうんだな」
「若し大怪獣を沈められるだけの装備を収められるだけの巨大さで隠密性を維持出来る潜水艦があれば別だが」
 そうした潜水艦があれば田中も参戦出来るというのだ、最後の戦いに。
「残念だがそれは不可能だ」
「ちっ、そうかよ」
「安心しろ、私達は必ず勝つ」
 レーティアは田中にこのことを約束した。
「待っていてもらう」
「じゃあ今はか」
「うむ、それではな」
 こうして田中の参戦は見送られた、流石に今回はどうしようもないと思われた。
 十一隻の超戦艦と八隻の超空母の開発、製造はすぐにはじまった。その設計図はレーティアが瞬く間に完成させた。
 レーティアは東郷と柴神にそのそれぞれの艦の設計図を見せた、二人はその設計図達を見て感嘆の言葉を漏らした。
「素晴らしい艦だな」
「うむ、そうだな」
 柴神は東郷のその言葉に応えて頷いた。
「これだけの艦艇ならな」
「大怪獣にも勝てる」
 まさに一撃で吹き飛ばせるというのだ、大怪獣ですら。
「艦載機の数もビーム、ミサイルの威力も半端じゃない」
「いける」
「そしてだ」
 レーティアは東郷達にさらに話した。
「それで倒せなくともだ」
「鉄鋼弾が」
「それも備えさせたか」
「日本軍の水雷駆逐艦を見て装備を決めた」  
 日本軍の誇る酸素魚雷と高い索敵能力、機動力を誇る艦艇だ。日本軍の隠れた決戦兵器と言っていい。
「あの酸素魚雷なら若し撃ち漏らしてもだ」
「止めを刺せる」
「だからか」
「そうだ、二段攻撃だ」
 超戦艦も超空母もだというのだ。
「そうして奴等を必ず倒すべきだ、それと」
「うむ、しかもだな」
「各鑑にか」
「バリアも装備させた」
 それもだというのだ。
「大怪獣やイモムシ共の攻撃はビームだな」
「それで攻撃してくる」
 柴神もその通りだとだ、レーティアに答える。
「かなりの威力だ」
「だからだ、バリアでだ」
「ダメージを軽減させるか」
「それもただのバリアではない」
 並のs営農ではないというのだ。
「ハニワ族の艦艇やハニワ族自身を参考にしただ」
「あれだけの威力のバリアか」
「そこまでか」
「そうだ、ダメージを完全に防げなくともだ」
 それでもだというのだ。
「ダメージをかなり軽減出来る筈だ」
「そこまで考えているとは」
「流石だな」
「しかし予算はかなりかかる」 
 そこまで盛り込んだ故にだというのだ。
「それこそ今の人類の総力を結集させてだ」
「造らねばならないものか」
「それだけのものか」
「ドクツ一国では私か祖国君の艦を造るだけでやっとだ」
 それでようやくだというのだ。
「それだけで国家予算の三年分だ」
「それだけかかるか」
「ドクツでも」
「だからこそ人類の総力を結集させなければならない」 
 十九隻の超艦艇を全て建造するにはというのだ。
「だからだ」
「それでか」
「全人類の力をか」
「そうだ、結集させねばならない」
 人類が勝ち生き残る為にはだ、絶対にだというのだ。
「必ずな」
「では今からだ」
「全人類の力を集めよう」
 東郷と柴神も応えてだ、こうしてだった。
 今は太平洋も欧州もソビエトもなく全銀河の総力が結集されて十九隻の超艦艇が建造されることになった、それと共に。
 戦場となるチェリノブに次々と建造されていく、それは。
「大修理工場に軍事基地か」
「二つ共ですね」 
 ランスはもうチェリノブにいる、敵はまだ来ていないが彼等は港に乗艦と共にいる。そこから建造されている二つの施設を観ながらシィルと話しているのだ。
「凄いな、その二つを築いてか」
「守りきるんですね」
「もう一般市民は避難したんだよな」
「はい」
 そうだとだ、シィルはランスに答える。
「既に」
「戦争に巻き込んだらまずいからな」
「ですから」
 そのことを配慮しての決定だというのだ。
「そうしました」
「成程な」
「これで後はですね」
「ああ、気兼ねなく戦えるな」
 ランスは今度はホワイトホールの方を見た、そのうえでシィルに答える。
「ダメージを受けても大修理工場ですぐに修理出来るしな」
「それに軍事基地もありますから」
「万全の態勢だな」
「言い換えれば万全の態勢でなければ」
 とてもだというのだ、この戦いは。
「ならないです」
「ラスボス前だな、まさに」
「そうですね、私達の本来の世界で言えば」
 そうなるとだ、シィルも言う。
「この世界にいて結構になりますが」
「長いな、確かに」
「何時でも帰ることは出来ますよ」
 それは可能だというのだ、実は。
「元星域にルートがありますから」
「ああ、それは俺もわかっている」
「けれどそれでもですね」
「乗りかかった船だ」
 それならというのだ。
「最後の最後まで乗ってやるさ」
「そういうことですね」
「ああ、やるからな」
 絶対にだとだ、ランスも言う。
「俺もな」
「それでは」
「イモムシ共が来ればな」
 その時はというのだ。
「やってやるさ」
「私も」
「こっちの世界じゃどうも女の子とはあまり遊べなかったがな」
 このことはランスにとっては残念だった、何しろそれが生きがいであるからだ。それでもこの世界では、だったのだ。
「どういう訳かな」
「仕方ないですね、そのことは」
「本来の世界じゃないからか」
「はい、ですから」
「そこは諦めてか」
「戦いましょう、皆で」
「そうだな、こっちの世界の祖国さんともな」
 ここでモンゴルも見る、彼も共に港にいてホワイトホールの方を見ている。その彼に対しても言うのだった。
「やっていくか」
「うん、最後の最後まで宜しくね」
 モンゴルの方もランスに笑顔で応える。
「折角だしな」
「そうだな、じゃあ今はな」
「羽根をのばすんだね」
「クミズでも飲むか」
 モンゴルの酒だ、馬乳から作る酒である。
「それと羊肉なりチーズなり食うか」
「モンゴルといえば羊ですけれど」
 シィルもここで言う。
「乳製品もよく食べますね」
「うん、そっちも沢山食べるよ」
 肉だけでなく、というのだ。
「穀物とか野菜は食べないからね」
「そうですね、今も」
「僕はこうしたのとお茶で充分だよ」
「遊牧民ですね、まさに」
 シィルもその話を聞いて頷く、そうした話をしてだった。
 ランス達はモンゴルと共にクミズとモンゴル料理を楽しみだした、程なくしてその場にコアイも来てだった。
 四人になってからも楽しむ、そうしてだった。
 その中でだ、コアイはこうモンゴルに尋ねた。
「祖国さんはこの戦争の後どうするの?」
「太平洋経済圏に入るかどうかだね」
「そこはどうするの?」
「入るよ」
 実に率直にだ、モンゴルはコアイに答えた。
「実際にね」
「そうなの」
「うん、入ってそうして」
「その中で生きるの」
「遊牧民もそれだけで生きてはいられないよ」
 これからはというのだ。
「各国とも貿易をしないとね」
「生きていられないの」
「元々遊牧民は貿易もしていたし」
 ただ草原で羊を飼って生きていただけではないというのだ、交易も行いそれでも生きてきたのが彼等なのだ。
「だからね」
「そうなのね」
「うん、だからコアイも」
「コアイも貿易するの」
「いや、コアイは提督のままでいいから」
「じゃあ祖国さんが貿易をするの」
「外交とかね」
 そうしたことはモンゴルがするというのだ、国家である彼が。
「だから任せてね」
「わかった、じゃあ」
「そういうことでね、けれどそれも」
 太平洋経済圏に入る、それもだというのだ。
「生き残ってからだね」
「それからだね」
「イモムシの連中を倒して」
 負けたらそれで終わりだ、だから余計にというのだ。
「そのうえでだよ」
「そうだね、じゃあ」
「敵が来たら」
 そのイモムシ達がというのだ。
「戦ってそして」
「生き残ろう」
 コアイも応えて言う。
「後の為にね」
「さて、この戦いが終わったら俺達はな」
「これでお別れになりますね」
 ランスとシィルは微笑んでいるが何処か寂しそうに言った。
「元の世界に帰るからな」
「そうしますので」
「そうなんだ、長い付き合いだったけれどね」
 それでもだとだ、モンゴルも名残り惜しそうに応えた。
「その時はだね」
「ああ、縁があったらまた、になるな」
「お会いすることに」
「遊びに来ればいいよ」
 コアイがここで三人にこう言った。
「そうすればね」
「ああ、道はつながってるしな」
「そうすればいいですね」
「何時でも来てそうしてね」
「楽しめばいいな」
「こうして飲んで食べて」
「うん、楽しくやろう」
 笑顔でランスとシィルに話す。
「戦争が終わってもね」
「そうだな、戦いが終わっても」
「楽しめばいいですね」
 二人もコアイの言葉を受け入れた、そうして戦争の後も友人のままでいることにしたのだった。そうした話をして。
 クミズにモンゴル料理を楽しんでいく、そして。
 大修理工場に軍事基地も完成した、これで戦いの用意が出来たのだった。
 その軍事基地を観つつだ、防衛軍の指揮官を務める田中が言った。
「じゃあ戦うか、気合入れてな」
「はい、別世界に入る艦艇が完成するまでの間は」
「守り抜きましょう」
 平良と福原がその田中に応える。
「何、敵が強くともです」
「私達もまたかなりの強さを持っている筈です」
「後は油断せずに戦うだけです」
「ラメダス達と」
「いいか、誰も死ぬな」
 田中は仲間達にこうも言った。
「ここが最後の気合の入れどころだからな」
「そうですな、我々主力艦隊には第八世代から第十世代の艦艇が配備されています」
「そっちの配備は終わったよな」
「既に」
 そうなったとだ、ジューコフは田中に謹厳に答えた。
「出来ています」
「そうか、しかしな」
「何かありますか」
「いや、ジューコフさん元帥だよな」
 ソビエト軍元帥だ、ソビエト国防大臣でもありまさにソビエト軍を背負っている男だ。
 その彼の階級から、田中は言うのだ。
「元帥さんに敬語で話されるのはな」
「何を言っておる、御前さんも元帥になったぞ」
 山本がここで田中に右目をウィンクさせた愛嬌のある笑顔で言って来た。
「今日な」
「えっ、そうなのかよ」
「司令室に行くのじゃ、辞令が来ている筈じゃ」
「俺が元帥かよ」
「何しろ全人類を守る艦隊の司令官ですから」
 〆羅もここで言う。
「それも当然ですね」
「おい、俺が元帥かよ」
「考えてみれば連合艦隊副司令長官だしね」
「潜水艦艦隊司令長官で」
 手長猿とパンダもここで話す。
「そのこともね」
「当然だよ」
「元帥になるなんて思いも寄らなかったな」
 田中は唖然とした顔になっていた、その顔での言葉だ。
「まさかな」
「おいおい、御前さんは東郷にとって代わって連合艦隊司令長官になるのじゃろ」
「そのつもりだけれどな」
「だったら元帥になるじゃろ」
 連合艦隊司令長官は海軍長官と兼任だ、日本帝国ではその役職にあるべき階級は元帥だと定められているのだ。
 だからだ、その時はというのだ。
「知らぬ訳ではあるまい」
「それはそうだけれどよ」
「とにかく御前さんは海軍元帥になったぞ」
 階級では東郷に並んだというのだ。
「だから頼むぞ」
「ああ、まだ信じられねえけれどな」
「ヘマするんじゃないわよ」
 ハニートラップも田中に言って来た。
「いいわね、あんたのヘマが全軍に影響するからね」
「具体的に言うと突出はしないことよ」
 ハンナは田中にこう忠告した。
「貴方はすぐ調子に乗ってしかも頭に血が上りやすいから」
「何だよ、言われることは変わらねえな」
 その性格の難点を指摘されるのだった。
「ったくよ、どうなんだよ」
「それだけ田中さんを好きということですよ」
 エルミーは田中に微笑んで話した。
「ですから前向きに考えて下さいね」
「愛の鞭ってのかよ」
「それになるかと」
 だからだというのだ。
「お気を落とされずに」
「戦えっていうんだな」
「そうです」
 こう言うのだった、そうして。 
 エルミーは田中にあらためてドクツの敬礼をしてから言った。
「司令、ご命令を」
「ああ、総員厳戒態勢だ」
 これが田中の今の命令だった。
「全軍ホワイトホールから目を離すなよ」
「わかりました」
「出て来たら倒すからな」
 こう言ってだ、田中は全軍を指揮しながら今にも来ようとする敵に仲間達と共に向かうのだった。共に長い間戦ってきた彼等と。


TURN139   完


                            2013・9・16



この世界の成り立ちが柴神によって語られたな。
美姫 「驚きの事実ね」
だな。にしても、ようやく戦争が終わったと思ったら。
美姫 「今度は別世界との戦いと中々忙しいわね」
とは言え、今度の今まで以上に負ける訳にはいかないしな。
美姫 「半年後の反攻に備えて、今は防御に専念しないとね」
一体、どうなるのか。
美姫 「次回も待ってますね」
ではでは。



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