『ヘタリア大帝国』




               TURN121  カメルーンとケニア

 イギリスから直接言われてだ、カメルーンはこう答えた。
「はい、それでは」
「戦ってくれるんだな」
「そのつもりです。ですが」
 カメルーンは礼儀正しい態度と口調でイギリスに話していく。
「戦後のことですが」
「ああ、その権限だよな」
「国民の皆さんのことを」
 カメルーンの国民達のことをというのだ。
「御願いします」
「わかってるさ、ただな」
 だがそれでもだと言うイギリスだった。カメルーンの提案をよしとしても。
「貴族連中がな」
「あのかたがたですか」
「あの連中はな」
 どうかというのだ、エイリスの貴族達がだ。。
「どうしようもないからな」
「その様ですね、南アフリカでも問題を起こしていますし」
「パルプナには悪いことをたよ」
 イギリスは苦い顔になって彼女のことも話した。
「俺も気付かなかった」
「そうですね、ですが」
 それでもだというのだ、カメルーンも言う。
「エイリスの植民地はあまりにも広いので」
「俺の目も行き届きにくいな」
「あえて言わせてもらいますが」
 カメルーンは心を前に出して言った。
「エイリスの植民地政策自体がです」
「それ自体がかよ」
「はい、問題があるのでは」
 こう言うのだった。
「そう思います」
「いや、それはな」
 イギリスは植民地政策の否定については引いた。そしてそのうえでカメルーンに苦い顔で言うのだった。
「エイリスの基本政策はな」
「植民地政策ですね」
「ああ、そうだよ」
 それこそが、というのだ。
「それを否定するとな」
「エイリス自体が成り立たないですか」
「わかるだろ、そのことは」
 イギリスは真剣な顔でカメルーンに言う、二人は同じテーブルに向かい合って座って紅茶を飲みながら話をしているがその紅茶は殆ど口をつけていない。
 そのうえでだ、こう言うのだ。
「植民地がないとうちはやっていけないんだよ」
「本土だけでもそれなりの国力があるのでは」
「それだと欧州の一国に過ぎないんだよ」
「欧州の中でも強国では」
「エイリスは世界帝国なんだぞ」
 この自負もだ、イギリスは出した。
「だからな」
「植民地はですか」
「否定出来ないんだよ」
 その政策もだというのだ。
 だが、だった。イギリスはカメルーンにこうも言った。
「もう貴族の横暴はな」
「止めますか」
「女王さんを信じてくれ」
 セーラ、彼女をだというのだ。
「あの人はしっかりした人だからな」
「そうですね、あの方は」
 カメルーンもセーラのことは知っている、何度も会っているが悪い印象を受けたことはただの一度もない。
 だが、だ。彼はそれでも言うのだった。
「ですが政策自体が」
「植民地もローマ帝国みたいにな」
「植民地民の権限をですか」
「ああ、エイリスの市民権もな」
 与えるというのだ。
「そう考えているからな」
「それは有り難いです、ですが」
 それでもだとだ、まだ言うカメルーンだった。
「そのお話は戦前に聞いていれば」
「よかったか」
「現実としてエイリスは植民地を維持出来ると思われますか?」
 カメルーンはあえてこの現実を指摘した。
「それは」
「いや、それはな」
 そう言われるとだった、イギリスも口ごもった。
 それで何とか言葉を選び気持ちを落ち着かせてカメルーンにこう答えた。
「何とかな」
「出来ると」
「この戦争に勝てばな」
 出来るというのだ。
「絶対にな」
「あの、若し枢軸諸国に勝てたとしても」
 カメルーンはもうそれも無理だと思っていたしイギリスも実はわかっていると確信していた、だが今はそうした読みを隠してこう言うのだった。
「国力をかなり消耗しますし」
「それからもかよ」
「ドクツがいます」
 この国のことも話に出した。
「あの国ですが」
「絶対に信用できねえな」
「ヒムラー総統は危険です」
 レーティアとは違った意味で、というのだ。
「アドルフ総統は信用出来た方でしたが」
「ヒムラーはな」
「あの人は後ろから斬り付けてくる人です」
「だろうな、会談の時に思ったよ」
 英独ソの会談の時にだ、イギリスはその時にもうヒムラーがどういった人間なのかを見抜いているのだ。
「あの人は危険だな」
「ですから」
「ドクツともやらないといけないからか」
「エイリスの国力は戦争が終わった時には」
 例え勝ってもだというのだ、
「最早本国を維持するのがやっとでは」
「いや、何とかな」
 まだ言うイギリスだった。
「戦後もな」
「だといいのですが」
「その為には今だよ」
 今の戦いに勝つしかないというのだ。
「俺は絶対にやるからな」
「そして私にもですね」
「協力してくれよ」
「わかっています、それでは」
「ああ、一緒に戦おうな」
「それでカメルーンの戦力は」
「二十個艦隊だ」
 この戦力で守るというのだ。
「まあそれだけだけれどな」
「艦艇は」
「第四世代だよ」
 最早旧式になっているその世代の艦艇しかないというのだ。
「悪いけれどな」
「そうですか」
「俺はケニアにいるからな」
 今の防衛ラインはそこだった、イギリスは南アフリカ戦で残った戦力をそこに集結させているのだ。
 そのうえでカメルーンにこう言うのだ。
「頑張ってくれよ」
「はい、南アフリカからどちらに攻めて来るかですね」
「両方もあるだろうな」
 ケニア、カメルーン双方にというのだ。
「それで後ろにはな」
「アンドロメダですね」
「あそこがある、万が一になってもあそこに入る」
 そしてそこでだというのだ。
「最後の守りにするさ」
「わかりました、そのことも」
「ああ、戦おうな」
「ですが私はカメルーンで敗れたら」
 アンドロメダの話は確かに聞いた、しかしそれでもだというのだ。
「その時点で、です」
「おい、まさか」
「カメルーンでは全力を尽くします」
 このことは約束した、確かに。
 だがそれでもだ、彼はこうイギリスに言った。
「ですがカメルーンで敗れたなら」
「枢軸諸国に降伏するか」
「そうさせてもらいますので」
「そうか、わかった」
 カメルーンのその言葉を聞いてだ、イギリスは止めなかった。それはこれまで通りだった。
「それじゃあな」
「申し訳ないですが」
「いいさ、それがこの世界のルールだからな」
 降伏した相手に加わって戦うというのも、というのだ。
「だからな」
「正直私は植民地についても」
 否定しているというのだ。
「では」
「ああ、その時はそれでいいさ」
 イギリスも認めるしかなかった、彼もルールに従うしかないからだ。
 彼はカメルーンの協力を取り付けはした、だが。
 彼はそれと共にカメルーンもまた植民地政策を否定していることを知った、そのうえでケニアに戻ってだった。
 ケニアに集結している将兵達に対してこう言うのだった、その艦隊に戻って。
「枢軸の動きはどうだ?」
「はい、今のところですが」
「動きはありません」
 将兵達はこう彼に答えた。
「あくまで今のところですが」
「仕掛けては来ていません」
「ですが国境に戦力を集結させてきています」
「油断は出来ません」
「来るな」
 イギリスはこのことを確信した、彼等の話から。
「それもまずはな」
「このケニアですね」
「全力で来ますね」
「それからカメルーンだな」
 暫時攻めて来るだろうというのだ。
「そうしてくるな」
「そうですね、それでは」
「このケニアでは」
「防衛ラインは整えているからな」
 もう既にだというのだ。
「守るか」
「カメルーンに迂回して攻めてきませんか?」
 ここで参謀の一人がこうイギリスに言った。
「その可能性は」
「それでケニアを挟み撃ちか」
「はい、枢軸軍の常ですから」
 その迂回戦法は、というのだ。
「特にドクツ系の軍がいますから」
「それもそうだな」
 イギリスもその言葉に考える顔になった、そのうえでこう言った。
「有り得るな」
「ではどうされますか」
「カメルーンに言っておくか」
 その彼にだというのだ。
「あそこの軍は数もあまりないしな」
「それに艦艇も旧式ですし」
 今の枢軸軍を相手に出来ないというおだ。
「ですから」
「ああ、それじゃあな」
 イギリスもすぐに断を下した、そしてだった。
 モニターからカメルーンに対してだ、こう言った。
「こっちに来てくれるか?」
「カメルーンを放棄しろと」
「いや、若しそっちに枢軸軍が来たらな」 
 迂回してそうしてきたならというのだ。
「戦わずにな」
「ケニアに集まってですか」
「それで一緒に戦ってくれるか」
 こう提案するのだった。
「若しもの時はな」
「いえ、私もです」
 カメルーンはイギリスの言葉を聞いてからまずは目を閉じた。そのうえで再び目を開いてからこう彼に答えた。
「私の星域を護り」
「そしてか」
「はい、最後まで戦います」
 例え数が少なく艦艇も旧式になっていてもだというのだ。
「そうします」
「どうしてもだな」
「はい、そうさせてもらいます」
 譲らない声だった、どうしても。
「ですから」
「ならいいさ、じゃあな」
「守りきることは約束しますので」
 つまり最後の最後まで逃げず戦うことはするというのだ。
「私はケニアには」
「そこまで言うんならな」
 イギリスもそれ以上は言えなかった、それでだった。
 カメルーンと彼が指揮する艦隊を動かすことは出来なかった、そして。
 今度は暗黒宙域の方を見た、見ればそこには。
 木造の、どう見ても宇宙船ではないそれの艦隊があった。彼はその艦隊を観てそのうえで将兵達に言った。
「あの連中はな」
「今はですね」
「無視ですね」
「ああ、構ってる暇はないからな」
 だからだというのだ。
「いいな」
「はい、わかりました」
「彼等については」
「というかあいつ等どういう船なんだ?」
 イギリスは彼等を観ながら首を傾げさせて言う、
「木造で宇宙にいられるなんてな」
「沈めても泳いで帰っていきますし」
「訳のわからない連中です」
「人間だよな、あいつ等」
 生物的にだ、彼等は人類だろうというのだ。
「そうだよな」
「その様ですが」
「しかしそれでも」
「わからない奴等だな」
「全くですね」
「彼等は」
「まあそれでもな」
 彼等については今は、というのだ。
「放置してな」
「枢軸軍ですね」
「何につけても」
 エイリス軍の将兵達も応える。
「それでは」
「今から」
 こう話してそしてだった、彼等は。
 枢軸軍を待っていた、そして枢軸軍は彼等の予想通りの動きで来た。
 主力はケニア方面に置いている、だが。
 一部をカメルーンに向けた、ロンメル達を向かわせたレーティアはケニアの方を見ながらドイツに言った。
「相手もわかっているだろうが」
「それでもだな」
「そうだ、ここはだ」
 得意の機動戦を仕掛けるというのだ。
「ロンメル達がカメルーンを破りだ」
「それと共にだな」
「ケニアに同時に攻め込む」
 これがレーティアの今の作戦だった、二つの星域を同時に頭に入れての作戦だった。
「そのうえであの星域を攻略する」
「わかった、ではだ」
「カメルーンをまず攻める」
 あの星域をというのだ、そのカメルーンに向けている戦力で。
 そうしてからだった、彼等は。
「肝心のケニアだ」
「ケニアを両方から攻めますか」
 オーストリアも言う。
「あの星域を一気に攻めるのではなく」
「そのやり方も考えたがな」
「ここは、ですか」
「カメルーンをまず攻める」
 ケニアではなく、とうのだ。
「そうする、ではな」
「今は守り」
 こう話してそしてだった。
 彼等は今は動かなかった、そのカメルーンでは。
 カメルーン率いるエイリス軍の植民地艦隊、正確に言えばカメルーンの現地艦隊が枢軸軍と対峙していた。枢軸軍は素早い動きで迫っていた。
 その彼等を観つつだ、カメルーンは己の将兵達に言った。
「では今からです」
「はい、全力で戦いですね」
「そのうえで」
「勝ちましょう、ですが」
 それでもだというのだった、彼等に対しても。
「無駄に命は落とさないで下さい」
「それでは」
「若しもの時は」
「降伏して下さい、私もそうしますので」
 こう彼等に告げたのである。
「ではいいですね」
「わかりました」
「それでは」
 カメルーンの将兵達は彼の言葉に頷いた。そのうえで高速で移動する枢軸軍に向かう。
 だが速度が違い過ぎた、彼等がようやく動きだしたところに。
 枢軸軍は側面に来て一気に攻めた、それを受けて。
 カメルーンの二十個艦隊はいきなり大きなダメージを受けた、枢軸軍はその火力もかなりのものであった。
「なっ、強い!」
「これが第八世界の火力か!」
「艦載機も何という数だ」
「これでは」
 艦載機からビーム、そして鉄鋼弾の攻撃を受けると。
 彼等はいきなりだった、総崩れになり。
 反撃する余裕もなくだった、彼等は一方的に押され。
 敵の二度目の攻撃がはじまる前にだ、カメルーンは枢軸軍にこう通信を入れた。
「降伏します」
「そうするんだな」
 プロイセンが彼に応える。
「それじゃあな」
「受け入れて下さいますか」
「ああ、じゃあ武装解除してな」
 そしてだというのだ。
「降伏の手続きをしような」
「わかりました、それでは」
「よし、じゃあな」
 こう話してそしてだった、カメルーンは枢軸諸国に下りカメルーン星域も独立することになった。ここまであっという間だった。
 その一瞬の出来事にだ、話を聞いたイギリスも何も言えなかった。
「そうか」
「あの、どうも」
「わかっておられた様ですが」
「考えていたさ、この場合もな」
 想定していたというのだ。
「けれどそれでもな」
「実際にこうなるとですか」
「どうにもなのですね」
「ああ、へこむな」
 気落ちしてしまうことはどうしようもないというのだ。
「どうにもな」
「そうですか、それでは」
「カメルーンさんに関しては」
「仕方ないな」
 これで済ませるしかないというのだ。
「それじゃあな」
「わかりました、それでは」
「あらためてですね
「戦うか」
 ケニアで枢軸軍とだというのだ。
「南アフリカ、そしてカメルーンから来る連中とな」
「了解です」
「それでは」
 エイリス軍の者達も覚悟を決めた、そうして。
 ケニア、カメルーンから来る枢軸軍を迎え撃った、レーティアが率いる彼等はイギリスの読み通り二方向から攻めてきた。
 ケニア方面の指揮はレーティアが執っている、レーティアはモニターからカメルーン方面の指揮を執るジューコフに問うた。
「そちらはどうだろうか」
「順調です」
 ジューコフはその低く重い声でレーティアに答えた。
「ケニア方面軍と同じ速度で進んでいます」
「それではだ」
 それを聞いてだ、レーティアはこう言った。
「二方向から同時にだ」
「エイリス軍に攻撃を浴びせるのですな」
「予定通りだ、そのうえで勝つ」
「わかりました、それでは」
「さて、一つ気になることはだ」
 ここでだ、レーティアはケニア星域全体を見て言った。
「暗黒宙域の方だが」
「あれは木造船ですね」
 ここでエルミーが言ってきた。
「信じられないですが」
「木造で宇宙に出ているのか」
 レーティアもいぶかしみながら言う。
「どうもな」
「信じられないですね」
「うむ、そんなことが出来るのか」
「真空の中でもとは」
「有り得ないな、だがだ」
 レーティアはその彼等を見ながら全軍に告げた。
「彼等は戦場予想ポイントにはいない、それにだ」
「我々に攻撃をしてくる気配もありませんね」
「中立の様だ、ならばだ」
「彼等についてはですね」
「無視する」
 攻撃対象はあくまでエイリス軍だというのだ。
「そうする、いいな」
「わかりました」
「とにかくエイリス軍を退けてだ」
 そのうえでだというのだ。
「ケニアを占領するぞ」
「はい、わかりました」
「では彼等は無視して」
「そのうえで、ですね」
「エイリス軍に全力を」
 こう話してそしてだった。
 枢軸軍は二方向から同時にエイリス軍に向かう、そして。
 彼等を同時に攻めた、セオリー通りの艦載機からビームと攻撃をしていく。イギリスは攻撃を受ける自軍を見て言った。
「今回もな」
「はい、どうもですね」
「カメルーンに下がることも出来ませんし」
「ああ、予想していたがな」
 今回の機動力を駆使した分進合?もだというのだ。
「こうして仕掛けられるとな」
「充分な要塞線がない場所ですと」
「辛いですね」
「このままじゃな」
 どうかとだ、苦い顔で言うイギリスだった。
「損害ばかり増えるな」
「それでは、ですか」
「撤退ですか」
「ああ、そうするしかないな」
 イギリスは今回は早々と決断を下した、そして。
 すぐにだ、こう決断を下したのだった。
「アフリカの最後の護りまで退くか」
「アンドロメダ、ですか」
「あそこまで、ですか」
「ああ、撤退だ」
 こう全軍に告げた。
「じゃあいいな」
「はい、それでは」
「今は」
「損害ばかり増えるんならな」
 戦う意味がない、こう決断してだった。
 エイリス軍は今回は早いうちに撤退した、枢軸軍はそれを見てからケニアを占領した。こうして西アフリカ方面からエイリスの勢力を完全に駆逐した。
 だが、だった。レーティアはケニアに入城してからあらためてこう言った。
「あの木造船のことだが」
「あの船達のことね」
 マリーがレーティアのその言葉に応える。
「暗黒人の」
「この星域の原住民達だな」
「うん、そうだよ」
 その通りだとだ、マリーはレーティアに微笑んで答える。
「あの娘達はね」
「そうか」
「エイリス軍がケニアに進出してからレジスタンスっていうかね」
「彼等にしてみれば故郷奪還のか」
「それでエイリス軍に何度も仕掛けてきてるのよ」
「そのことは私も聞いていた」
 そのことも既に調べているレーティアだった。
「後々のアフリカ統治のことを考えてな」
「流石ね、そこまで考えていたのね」
「そうだった、原住民達の統治も重要だからな」
 かつてのドクツの統治方式を踏まえての言葉である。
「だが暗黒宙域についてはな」
「知らなかったのね」
「資料がないな」
 レーティアはこうマリーに返した。
「暗黒宙域のことは」
「そうなの、あそこに探検隊を何度も送ってるけれど」
 エイリスとしても調べないではいられなかった、それでだったのだ。
 暗黒宙域に探検隊を送ってきたのだ、だがそれでもだったのだ。
「帰って来た人はいないのよね」
「そうか」
「それであそこのことはエイリスも知らないの」
「まさに暗黒宙域か」
「それで暗黒人のこともね」
 彼等についてもだというのだ。
「全くわからないのよ」
「そうだったのか」
「そう、何もね」
 マリーはレーティアに首を傾げさせながら答えた。
「だから資料もないのよ」
「私が知らないのも道理だな」
「そう、それで暗黒人達のことだけれど」
「彼等のことか」
「あの子達は戦闘の時は放置したわね」
「我々の敵はあくまでエイリス軍だからな」
 だから無視した、レーティアはマリーにありのまま答えた。
 だが今はだとだ、レーティアはマリーに対して言った。
「しかしケニアを解放したからにはだ」
「これからは、っていうのね」
「カメルーン君も呼ぼう」
 ここで彼の名前を出したレーティアだった。
「彼なら暗黒人のことも知っているだろう」
「近いからね」
「よし、では決まりだ」
 レーティアは決断を下した、そのうえでだった。
 カメルーンも呼ばれた、彼はレーティアに対してその暗黒人達のことを話した。彼等はどういった者達かというと。
「彼等の願いはあくまでこのケニア星域を取り戻すことです」
「つまり独立か」
「そうです」
 その為にエイリスと戦っていたというのだ。
「つまりここは」
「我々の政策通りにか」
「ケニアも独立させてです」
 そしてだというのだ。
「彼等に星域を返還すべきかと」
「わかった、本当にこれまで通りだな」
 レーティアはカメルーンの言葉を受けて静かに頷いた、そしてだった。
 暗黒宙域の方に自身の艦隊を向かわせた、そのうえで宙域から出て来た木造船の艦隊に対してこう告げた。
「諸君等と話がある」
「ホシをカエせ!」
「そのつもりだ」
 こう告げたのである。
「我々は君達に独立を約束する」
「ドクリツ?ナンだそれは」
「ケニアの星域を君達に返すということだ」
 幼女に近い少女の声にだ、レーティアは答える。
「そうさせてもらう」
「ナニっ、カエすのか」
「そうだ、そうさせてもらう」
 声の問いに答える。
「是非共な」
「ウソではないのか」
「嘘を言う必要もない」
 レーティアは胸を張り相手に言い切った。
「それに我々は嘘を言うことはない、君達に返そう」
「ウソじゃないならアおう」
 声が言って来た、そしてだった。
 木造船はレーティアの乗艦に近付く、レーティアもドイツ、グレシアと共に彼等と会談をすることにした。そして艦のダンスホールにおいてだった。
 彼等は会談の場を設けた、相手は二人いた。
 漆黒の肌にまだ発育途上の身体を黒い褌と胸の布で覆っている、ピンク色の髪を後ろだけ伸ばし金と黒の杖にあちこちに金や赤や黒の総力を付けた青い目の少女だ、気の強そうな顔で幼いながらもおっと乗っている。見れば尻のところにピンクの長い尻尾がある。
 やはり漆黒の肌だった、大柄で筋骨隆々としており獣の赤い仮面の周りには黄金の装飾がある。身体のあちこちにやはり装飾物を着けており服は黒い褌と赤いマントだ。その二人がこう名乗った。
「マウマウだ!」
「ベホンマ!」
 これが彼等の名前だった。
「ケニアのジョオウだ!」
「センシチョウだ!」
「ケニアをウバいカエすタメにタタカっている!」
「ホントウにカエしてくれるのか?」
「そうだ」
 その通りだとだ、レーティアは彼等に冷静に答えた。
「だからこうして会っているのだ」
「エイリスのヤツラはワタシタチから土地をウバった」
 マウマウは怒りに満ちた顔でレーティアに話した。
「オマエタチはチガうのか」
「我々は植民地を求めてはいない」
 レーティアはそのマウマウと向かい合っている席から答えた。
「君達に独立してもらいだ」
「そうしてか」
「交易をしたい。それが我々の望みだ」
「マウマウムズカしいことはわからない」
 マウマウはレーティアの説明にまずはこう返した。
 だが、だ。レーティアやドイツ達の目を見てこうも言った。
「けれどオマエタチはウソはイっていない」
「そのことはわかってくれるか」
「わかる、それならだ」
「ケニア星域は君達に返還する」 
 そうするとだ、レーティアは約束した。
「後の統治は君達が行うのだ」
「後はカメルーン君ともよくお話してくれるかしら」
 グレシアも彼等に言う。
「彼とね」
「ソコク?あいつもオマエタチとイッショにいるのか」
「ええ、そうよ」
「ソコクがいるのならいい」
 マウマウは確かな顔になってグレシア達に答えた。
「ケニアにモドったらあいつと話をしたい」
「ええ、いいわよ」
「アトはあいつとキめる」
 こう話してそしてだった、マウマウはケニアに戻ると早速カメルーンと話した。そのうえでレーティア達にこう言ったのだった。
「ソコクからキいた、それでだが」
「どうするのだ?これから」
「オマエタチとコウエキをする」
 そうするとだ、マウマウは答えた。
「そしてだ」
「そしてだな」
「オマエタチにはホシをトりモドしてもらった、そのオレイにだ」
 何をするのか、マウマウは言う。
「ベホンマとイッショにオマエタチとタタカう、そうする」
「わかった、ではだ」
「マウマウスウジク!スウジクでタタカう!」
 杖を高々と掲げてここで宣言した。
「そうさせてもらう!」
 こうしてだった、ケニアは独立し枢軸諸国に参加することになった。そしてマウマウはベホンマと共に一個艦隊を率いて枢軸軍に加わった、そして。
 エルミーはマウマウ達に木造船を見せてもらった、そこから帰ってレーティアに対して信じられないといった顔で話した。
「本当に木造でした」
「古代さながらのか」
「はい、まさにです」
 そうした船だったというのだ。
「とても宇宙に出て動く様には」
「思えないか」
「修理費はかなり休む済みそうです」 
 エルミーはレーティアにこのことも話した。
「木造ですから」
「それはいいことだな」
「ですが武器は小口径のビーム砲だけです」
「しかも脆いな」
「紙の様なものです」
 エルミーは木造船の脆さをこう表現した。
「戦力としては期待できないかと」
「そうだろうな、あれではな」
「ですがマウマウさん達はあの船以外は動かせません」
 文明の違いだ、それ故にだ。
「その代わり彼女達は宇宙空間でも身体に影響を受けないので」
「宇宙服も必要がなく、か」
「生存能力も高いです」
「いいことと悪いことが両方あるな」
 レーティアはここまで聞いてこう述べた。
「そうなるな」
「はい、そうですね」
「わかった、では戦線に参加してもらうがだ」
「正面から向かう戦力としてはですね」
「使えないな、だがそれならそれで構わない」
 用途はある、それでだというのだ。
「彼等も我々の仲間だ」
「そうなりますね」
「そうだ、それでだが」
 レーティアは自分から話題を変えた、エルミーにこのことを話した。
「暗黒宙域のことだが」
「あの場所のことですね」
「暗黒人達は入られるな」
「そうです、ですが」
「我々が入ってもか」
「あの場所はどうやら他にいない宇宙怪獣達も多く」
「迂闊に出入りは出来ないか」
 レーティアの目がここで鋭くなった。
「そうした場所だな」
「そのせいでエイリスの探検隊もこれまで」
「入ってもだな」
「出られなかったかと」
「調べるには相当な労力が必要な様だな」
「では今は」
「放置だな」
 これがレーティアの決定だった。
「とりあえずはな」
「そうされますか」
「今はアンドロメダを攻略してだ」
 そしてだというのだ。
「欧州に兵を進めなくてはならないからな」
「戦争の後ですか」
「その時にゆっくり調べよう、少なくともアンドロメダ攻略まではな」
 エイリスのアフリカでの最後の要衝を攻略するまでは、というのだ。
「暗黒宙域への立ち入りは禁止だ」
「民間船もですか」
「それはケニア政府が決める」
 つまりマウマウ達がだというのだ。
「我々ではない」
「それでは」
「そうだ、北アフリカでの戦いも終わったな」
「たった今です」
 エルミーは晴れやかな顔になってレーティアに答えた。
「我が軍の勝利です」
「それは何よりだ、ではだ」
「はい、北アフリカ方面軍と連絡を取り」
「アンドロメダも攻略だ」
 あの星域もだというのだ。
「そうする、いいな」
「わかりました」
「さて、ではだ」 
 ここまで話してだ、レーティアはまた話題を変えた。
 部屋の壁にかけてある時計を観た、その時間はというと。
「昼食だな、今日のメニューは何だったか」
「スパゲティです」
 エルミーは微笑んでレーティアに答えた。
「それになります」
「そうか、それはいいな」
 レーティアの好物だ、名前を聞いただけで笑顔になる。
「では早速行くとしよう」
「ペペロンチーノです、山菜と茸の」
「では和風だな」
「大蒜とオリーブも使っていますが」
 だが味付けは和風にしてあるというのだ。
「イタリアさんが日本さんに教えて頂いたものだとのことです」
「そうか、あの二人か」
「イタリアさんが作られます」 
 レーティアが食べる分は彼が調理するというのだ。
「それで宜しいですね」
「最高だ、やはりスパゲティはイタリア君の作ったものが最高だ」
「そうですね、それにしても総統はイタリアさんがお好きですね」
「嫌いになる要素があるか?」
 笑みを浮かべてだ、こうまで言うレーティアだった。
「イタリア君に」
「いえ、ありません」
 エルミーも笑みでレーティアに答える。
「可愛い国ですね」
「やはりドクツはイタリンと共にあるべきなのだ」 
 こうまで言うレーティアだった。
「ローマ帝国や神聖ローマ帝国と違い今はでは別の国同士だがな」
「それでもですね」
「お互いに助け合って生きていくべきだ」
「どうもドクツだけが助けていると言う人もいますが」
「それは違う、ドクツもどれだけイタリンに助けられているかわからない」
 このことについては真顔で言い切るレーティアだった。
「文化も気候も何もかもがドクツを魅了しているではないか」
「祖国さんもよく行かれていますし」
「イタリンへの旅行は平和になればさらに充実させたい」
 今以上に、というのだ。
「相互交流もな」
「そうですね、そうあるべきですね」
「ではだ、統領にも来てもらいな」
 ムッチリーニも呼んで、というのだ。
「祖国君、イタリア君達と共に昼食を採ろう」
「では今から」
「ドクツは戦争が終わってからもイタリンの友人だ」
 今と同じ様にというのだ。
「そうして共に生きていくぞ」
「はい、そうしていきましょう」
 二人はイタリンについては笑みを浮かべてこう話した、とかくイタリンを愛してやまないドクツの面々だった。
 そしてそのイタリンでは。ポルコ族達が相変わらず。 
 料理に歌に励んでいた、あとは女の子達と遊ぶことに。
 彼等は戦争の用意は一切していない、それを観ているエイリスやドクツの軍人達は苦笑いを浮かべてこう言うばかりだった。
「仕方ないな、本当に」
「またワイン飲んでるのか」
「イタリンにも枢軸軍が来るかも知れないってのにな」
「この連中は相変わらずだな」
「遊んでばかりだな」
 こう言ってもだ、彼等を注意しようとはしない。
 それでだ、彼等をよそに自分達で防衛ラインを建築していた。とはいってもエイリス軍は次々とマダガスカルに向かっていた。
「俺達はイタリンから撤退か」
「ああ、全軍マダガスカルに集結だ」
「あそこで最後の決戦だ」
「アフリカでのな」
 そこで何としても守り抜くというのだ。
「ここはドクツ軍か」
「あいつ等が戦うか」
「それで防衛ラインも敷いてるんだな」
「そうしているか」
 こう話してそしてだった。
 彼等はマダガスカルに向かう、イタリンから去っていく。
 北アフリカは陥落しそこから向かうことは出来ない、それでシチリアからマダガスカルに向かっているのだ。
 シチリアを通過し次々とマダガスカルに入る、だがそこは。
 イタリンとは違う、緊迫した空気があった。
 北アフリカからもケニアからも将兵が来ていた、敗残兵達の目は血走っている。
 そして彼等はだ、覚悟をしている顔で言うのだった。
「絶対にな、ここはな」
「守りきるぞ」
「ここまで取られたら終わりだ」
「エイリスは植民地を全部失うことになる」
「ここで踏ん張ってな」
「反撃に転じないとな」
「ああ、ここで絶対に勝つからな」
 イギリス兄妹もいる、イギリスが集結している将兵達に言う。
「何があってもな」
「はい、勝ちましょう」
「絶対に」
「モンゴメリー提督の意志は無駄にはしません」
 イギリス妹も言ってきた、彼は北アフリカから撤退するエイリス軍の後詰になり枢軸軍の捕虜になったのだ。
「ですからいいですね」
「わかっています、提督のお心は無駄にしません」
「我等も」
 将兵達も応える、イギリス妹の言葉に。
「このアンドロメダが最後の砦ですね」
「まさに」
「本国から最新鋭の艦艇も来てるからな」
 イギリスがまた彼等に言う。
「勝ちに行くぞ」
「了解!」
 エイリス軍の将兵は敬礼で応えた、エイリスは遂に最後の植民地の攻防というところまで追い詰められていた、アフリカでの戦いも終局を迎えようとしていた。


TURN121   完


                             2013・7・7



レーティアサイドの話。
美姫 「こちらも無事に勝利を治めたわね」
だな。それとケニアの解放というか返却と。
美姫 「マウマウたち新たな戦力も加わったけれど」
木の船か。レーティアの言うように戦力としては、だな。
美姫 「まあ、使い方次第よ」
ともあれ、いよいよ合流かな。
美姫 「そうね。アフリカもいよいよ終局って所ね」
さてさて、どうなるかな。
美姫 「次回も待ってますね」
ではでは。



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