『ヘタリア大帝国』
TURN114 ソビエトの真実
ゲーペはあらゆることを話しだした、今その話を聞いているのは東郷と秋山に津波、それと日本とイタリアだった。
その彼等にだ、津波は話していく。
「私は元々は小学校の教師でした」
「はい、そのお話は知っています」
秋山がゲーペのその話に頷く。
「グルジアのですね」
「グルジアに生まれ育ち」
カフカス星域のその惑星にだというのだ。
「子供達を教えていました」
「それでカテーリン書記長さん達もだったよね」
イタリアもここで言う。
「グルジア生まれだったよね」
「その通りです、そして」
ゲーペはさらに話す。
「カテーリン書記長とミーリャ首相は私の教え子でした」
「担任のクラスの生徒さんだったの?」
「そうでした」
それが彼女達だったというのだ。
「私が赴任していた小学校のあった村は辺境の寒村でして」
「貧しかったのですね」
「はい、皆農業で生計を立てていました」
そうした村だったというのだ、銀河の時代であっても農業は必ずなくてはならない。それでこの村もだったのだ。
「カテーリン書記長は村の教会の娘、ミーリャ首相は農家の娘でした」
「二人共その頃から親友同士だったのか」
東郷は二人のことも問うた。
「そうだったのだな」
「二人共とても仲が良く」
その頃からだったというのだ、カテーリンとミーリャの絆は。
「そしてとても真面目で」
「本当にその頃からだったんだな」
「よく勉強をしていつも皆のことを考えていました」
こうしたところも昔からだった、カテーリンとミーリャはその頃から彼女達だったのだ。
「そして私はその頃」
「社会主義」
「はい、その思想にです」
共有主義の前段階とされている思想だ、労働者は農民の権利の保障と拡大を進めていくという考えである。
「影響を受けていまして」
「それで、ですね」
秋山も問う。
「カテーリン書記長とミーリャ首相にも」
「そうです、社会主義のことを話していました」
そうしていたというのだ。
「よく」
「それでだな」
ここまで聞いてだ、東郷もわかった。
「二人は社会主義を学んでか」
「そこからでした」
「さらに急進的な思想になったな」
こうだ、東郷は察した。
「それが共有主義だな」
「そうでした、共有主義は社会主義と似ていますが」
だが、だった。共有主義はというと。
「社会主義よりさらに急進的です」
「それもかなりだな」
「そうです、社会主義は個人財産の否定や職業の決定まではしていません」
そうした完全なコントロールまではというのだ。
「給食制も」
「全ての労働者と農民の権利の保障と拡大だな」
「それが社会主義の主張でした」
「それも斬新的にだったな」
これが社会主義の考えである。
「議会を通じて」
「私もそう考えていたのですが」
だがそれがだというのだ。
「共有主義は全てを国家が管理してです」
「労働者と農民の権利を保障するか」
「あらゆる階層を平等とし」
これが共有主義の思想の根幹だ、社会主義はエイリスやオフランスからはじまった思想でありそこまで考えられてはいないのだ。
「個人財産も否定しています」
「そして定年制の徹底だな」
「カテーリン書記長がその思想に至ったのは」
「彼女の生真面目さ故だな」
「学校でもいつもクラス委員や生徒会長を自ら立候補してです」
そしてだったというのだ。
「勤めていました」
「真面目なのですね」
「今と変わらず」
そうだとだ、ゲーペは日本にも答えた。
「そうした方なのです」
「成程、そうでしたか」
「その生真面目さ故にです」
「共有主義という考えを生み出され」
「ある日、二年前でした」
その時だったというのだ。
「その手に赤い石を付けられていまして」
「それでなのですか」
「はい、そうです」
そしてだというのだ。
「あの石を見ていると書記長の言葉が正しいと思えるのです」
「それからだったな」
「はい、そうでした」
それ故だったというのだ。
「瞬く間に賛同者を広められ」
「革命を起こしてか」
「ロシア帝室を追放しました」
彼等はエイリスに亡命している、今ではそこで暮らしている。こう東郷に話した。
「一部祖国に残ったクワトロ提督の様な方をラーゲリに隔離しはしましたが」
「革命の後ソビエトを樹立してか」
「はい、そうです」
それでだというのだ。
「今に至ります」
「そうなりました、最初はミーリャ首相と私と」
ゲーペは革命を起こした時の賛同者の話もした。
「祖国さんと妹さんだけでしたが」
「五人だけからだったんだ」
「はい、そうです」
こうイタリアにも話す。
「そこから話を聞く人を全てあの石で同志にしていき」
「革命を果たした」
「そうなりました」
これがロシア革命の真実だった、だが謎はまだあった。
津波は表情は変えていないが久重にあえて普段より強い口調にさせてそのうえでゲーペに対して問うた。
「その赤い石だが」
「それのことですね」
「時々気になってはいた」
そうだったというのだ。
「カテーリン書記長は演説でここぞという時に手袋を脱いでいた」
「お気付きでしたか」
「そのうえで赤い石を演説を聞く者に見せていた」
そうしていたことに気付いたというのだ。
「私はそこに洗脳めいたものを即座に察してその瞬間は目を逸らす様にしていたが」
「あの石が何処でカテーリン書記長に備わったのかは私も知りません」
このことはゲーペも知らなかった。
「ですが」
「それでもか」
「あの石を見るとどうしてもです」
「洗脳されてしまうな」
「そうした感じになってしまいます」
それこそだった、まさに。
「蟻が女王蟻の言うことに従う様に」
「まさにそうした感じだな」
「そうです、そうなるのです」
そうなるというのだ。
「カテーリン書記長が仰るには倒れていた旅人、フードを被った妙な男性から死ぬ時に授けられたそうです」
「フードの?」
「何処かの教団の人だったそうですが」
これはカテーリンの話からだった。
「教団内の争いで新しく入ったドクツ人の若者に敗れ」
「ドクツのか」
「グルジアに潜伏しようと隠れ家を探している時にです」
その時にだったというのだ。
「既に一服盛られていて道で倒れそこに書記長が通りがかられ」
「石を授けられたか」
「そう聞いています」
ゲーペがカテーリンから聞いた話だ。
「書記長は嘘は申されないので」
「では真実だな」
「はい」
ゲーペは津波にそうだと答える。
「その様です」
「そうか、わかった」
「そして秘密星域等のことですが」
今度はこの話だった、カテーリンに続いて。
「あの星域は祖国殿と妹殿だけが御存知でした」
「ではロシアさんからですね」
「教えて頂いたものです」
そうだったというのだ。
「ロシア帝国皇室も知っていたそうですが」
「皇室は使わなかったのですか」
日本はゲーペの話を聞いて述べた。
「そうだったのですね」
「はい、そうでした」
それがカテーリンが知ってからだというのだ。
「書記長はあの星域を極秘の軍事基地、研究施設とされました」
「そこで、だったのか」
津波はここまで聞いて全てを察した、その察したこととは。
「クローンや人造人間を研究し生み出していたか」
「そうです」
まさにその通りだった。
「ロリコフ=バイラー博士というソビエトにおけるその分野の権威を置いてです」
「それでか」
「そのうえであの星域からモスクワにクローン人間や人造人間を送っていました」
「そしてその秘密星域はか」
「モスクワの南にあります」
やはりそこだった、その秘密星域があったのは。
「そちらに」
「その秘密星域にか」
東郷も再び言う。
「カテーリン書記長達はいてか」
「反抗を考えておられます」
そうだというのだ。
「クローンの戦力で」
「成程な、ではだ」
「今すぐにでも反攻に入られます」
カテーリンもそう考えているというのだ。
「その様に」
「ではだ、迎撃の用意だ」
「あの、私は」
「講和だな」
「そう考えています。枢軸国は領土と捕虜を全て返して下さいますね」
「そのことは約束します」
東郷に代わって秋山が答える。
「我々は他国の領土にも人材にも興味はありません」
「資源にもですね」
「経済圏を築き交易により欲しいものを手に入れていきます」
これが今の枢軸諸国の考えだ。
「あくまで経済圏を築くことを考えていますので」
「では」
「ソビエトとの戦いが終われば」
その時はというのだ。
「領土と捕虜を全て返還します」
「それでは」
「ソビエトとの講和です」
それをするというのだ、そうしてだった。
ゲーペとのことは約束された、彼女にとってはこのことは安堵することだった。
そしてだ、東郷はゲーペにさらに話した。
「そしてカテーリン書記長のことだが」
「あの、書記長は」
「ソビエトの政治は厳し過ぎるところがあるな」
「確かに規則や刑罰は厳格です」
さながら校則の様にだ。
「ですがよく御覧になって頂きたいのですが」
「あの娘に私はないな」
「常に人民のことを考えておられ」
そしてだというのだ。
「公平かつ平等な政策を行っておられます」
「そして指導力もあるな」
「まだ幼いですが」
子供であることは事実だ、だがだというのだ。
「それでも資質もありまして」
「ソビエトにとって必要な人だな」
「はい、ですから」
「我々は他国のことには干渉しない」
東郷は必死の顔で語るゲーペにこのことを保障した。
「帝がそう決めておられる」
「では」
「ソビエトのことはソビエトの人民が決めることだ」
他ならぬ彼等がだというのだ。
「だからだ」
「我々はですか」
「そうだ、君達で決めればいい」
「わかりました。では」
「だが戦争には勝たせてもらう」
このことは絶対だというのだ。
「そうさせてもらう」
「講和はなりませんか」
「こちらは何度も交渉を申し出ていますが」
秋山はゲーペに答えた。
「ですが」
「そうでしたね、枢軸側は何度も」
「講和を申し出てきましたね」
「私もこうなるまで講和は無用だと思っていました」
ソビエトの勝利を信じていたからだ、だが今となってはだった。
「しかしこのままではと思いまして」
「ソビエト、そしてあの娘達がだな」
「こう言っては何ですが私は教師です」
生粋のだ、それに他ならないというのだ。
「ですから」
「それでか」
「はい、教師は生徒を愛するものです」
尚このことが出来ている教師は案外少ない、生徒を虫けらの様に思っている教師はわりかし多いものだが。
「ですから」
「あの娘達を守りたいか」
「そう考えています」
「いい先生だったんだな、長官は」
ここまで聞いてだ、東郷は述べた。
「そしてあの娘達も」
「いい娘達です、ですからこのことも何としても」
ソビエトと人民、そして二人もだった。
「御願いします」
「帝を信じて欲しい、このことはな」
答えはこれで出た、そうして。
帝もだ、その話を通信で聞いてこう答えた。
「はい、私としてもです」
「宜しいのですね」
日本がモニターの帝に問う。
「その様にして」
「我々は他国とは友好関係を築いていきたいですが」
「その領土や臣民はですね」
「欲しくはありません」
「そして他国の政策についても」
「介入はしません」
だからだというのだ。
「戦争が終われば領土と捕虜は返還し」
「そしてカテーリン書記長達も」
「そうしたことはソビエトの人達がです」
他ならぬ彼等がだというのだ。
「決めることです」
「では」
「東郷長官の言う通りです」
それでいいというのだ。
「私に異存はありません」
「わかりました、それでは」
こうしてだった、ソビエトやカテーリンのことは東郷がゲーペに告げた通りになった、そうしたことが全て決まり。
ソビエトとこれからどうなっていくかの枢軸軍の方針は決定した、ただ太平洋経済圏に迎え入れるかどうかというと。
ゲーペはだ、微妙な顔で答えた。
「難しいかと」
「やはりそうか」
「我々は共有主義ですので」
だからだというのだ。
「経済圏に入ることは」
「そうか、わかった」
東郷も今は強く言わなかった。
「ならそのことはな」
「いいのですね」
「今すぐ決めなくてもいいことだ」
だからだというのだ。
「特にいい」
「では」
「そちらでゆっくり考えてくれ」
ソビエト側でだというのだ。
「入ることも入らないこともな」
「そうさせてもらいます」
「しかしだ」
だが、だとだ。ここで東郷は釘を刺す様にしてこのことは告げた。
「軍事のことだが」
「講和の後で、ですね」
「連合国からは離脱してもらう」
このことは絶対にだというのだ。
「出来れば枢軸国に参加してもらいたい」
「最悪でも中立で、ですね」
「そうなってもらいたい」
このことは絶対だというのだ。
「それでいいな」
「わかっています、そのことは」
ゲーペも軍事のことは毅然として答えることが出来た。
「そうさせて頂きます」
「それならいい、ではだ」
東郷はまた話題を変えた、今度言うことはというと。
「君のことだが」
「ああ、俺と一緒にいようよ」
イタリアがここで言う。
「さっきのお話通りさ」
「そうさせてもらって宜しいのですね」
「遠慮はいいよ、俺も遠慮はしないから」
だからだというのだ。
「楽しくやろうね」
「そう言って頂けるのなら」
「何でも楽しまないとね」
実にイタリアらしい言葉だった。
「世の中面白くないよ」
「それでは」
こうしてゲーペは今はイタリアと共にいることになった、そうしたことを全て決めた次の日だった。
その南からだった、ソビエト軍が来た。ゲーペはその報告を聞いて顔を曇らせて言った。
「同志書記長、それは」
「早いですね」
秋山がそのゲーペの横で言った。
「まさかもう来るとは」
「準備が万全でない筈です」
ソビエト軍の攻勢へのそれがだというのだ。
「まだ」
「焦っていますか」
「間違いなく」
ゲーペは秋山に深刻な顔で答えた。
「クローン兵士の訓練は不十分な筈です」
「ソビエトには後がない」
東郷はカテーリンの早過ぎる反撃についてこう述べた。
「だからだな」
「では長官」
秋山は東郷にも言う。
「今より迎撃に出ましょう」
「敵の艦隊は幾つだ」
「三十です」
それだけの艦隊が来ているというのだ。
「それだけです」
「ソビエト軍にしては随分少ないな」
「どうやらモスクワが手薄と見ての奇襲かと」
「それでか」
「幾ら後がないといってもソビエト軍ならそれの何倍もの数を出してきます」
今までがそうだったからだ、秋山もこう言うのだ。
「ですが今の数を見ますと」
「そういうことだな」
「では今回の迎撃に出るのは」
「まずは俺だ」
東郷自身だった、最初に出撃を決められたのは。
「それと今モスクワにいる」
「各提督と国家の方々ですか」
「祖国さんにな」
日本もいる、そしてだった。
「イタリアさんとな」
「ちょっと怖いけれど頑張るよ」
「アメリカ妹さんに丁度戻って来た中国妹さんだな」
この二人もだった。
「それとスカーレット、六人か」
「ええ、そうね」
そのスカーレットも言って来た、にこりと微笑んでの返事だった。
「それじゃあ今からね」
「出撃だ、六個艦隊だがやり方次第だ」
数では負けているが勝機は充分にあるというのだ。
「行こう。そして勝とう」
「わかったわ。それではね」
スカーレットが一同を代表して東郷に応えた、そうしてだった。
枢軸軍は出撃しソビエト軍を迎え撃った、その前にいるソビエト軍はというと。
軍人の動きだった、だが。
その艦隊の動きを見てだ、中国妹がいぶかしみながら言った。
「何かおかしいあるな」
「ああ、あんたも気付いたんだね」
アメリカ妹がその中国妹に応える。
「連中の動きに」
「軍人の動きある」
その艦隊の動きはというのだ。
「けれどそれでもある」
「何か固いね、動きが」
「ただ才能で動いているだけある」
「兵器のことは知っていてもね」
だが、だった。彼等の動きから見えるものは。
「経験とかが感じられないね」
「新兵ではない感じあるが妙あるな」
言うならば色紙だった、まだ何も書かれていない。
その彼等の動きを見てだ、二人は東郷に言った。
「長官、何か変な相手あるが」
「どう戦うんだい?」
「そうだな、俺から見てもおかしな感じの敵だがな」
東郷もこう言うのだった、彼等を見て。
「敵の数は多い、一撃離脱でいこう」
「それでいくんだ」
「六個艦隊が一まとまりになってだ」
そのうえでだというのだ。
「一旦攻めて離れる」
「それを繰り返すんだね」
「そうして攻めよう」
こうイタリアにも答える。
「今はな」
「わかったよ、それじゃあね」
「今から」
日本も東郷に応える、こうしてだった。
枢軸軍はソビエト軍、その軍人の的確な動きを見せているが妙に経験が感じられない軍に向かう、そしてだった。
艦載機、ビームによる一撃を浴びせる、そして。
すぐに離脱する、ここでイタリアが気付いた。
「ううん、俺から見てもね」
「イタリア君も気付かれましたか」
「あっ、日本もなんだ」
「どうも最初からおかしいと思っていました」
日本もだというのだ、このことは。
「新兵とは違う、的確な動きですが」
「さっきの攻撃もすぐに反応してきたしね」
「しかしです」
だが、だというのだ。
「今の反応も言うならば」
「マニュアルかな」
そうした動きだというのだ。
「ただそれをなぞってる感じだよね」
「やはり経験を感じません」
そうだというのだ。
「ただ来ているだけです」
「本当にね」
「クローンはオリジナルの能力を受け継ぎますが」
外見だけでなくだ、だから技術として優れてはいるのだ。
「ですが」
「経験まではなんだ」
「知識は受け継がれていても」
頭では、というのだ。
「経験がありません」
「それはなんだ」
「経験は身体で感じ身体で覚えるものです」
頭で覚えるものではない、それでだというのだ。
「動きにも影響します」
「具体的に言うと今みたいな動きになるんだね」
「その様ですね」
「それじゃあ今の敵は」
「確かに軍人だ、優秀なな」
東郷はこう分析した。
「しかしだ、ただそれだけだ」
「経験を積んでいないからだね」
「そうだ、それだけの軍だ」
「言うならば紙かな」
「軍人という色がついたな」
ここでも色紙だと言われる彼等だった。
「それに過ぎない」
「マニュアル通りにしか動かないんだ」
「マニュアルはいいがな」
東郷はそうしたことにはとらわれないが認めはしていた。
「だがそこから人は経験を積んで身に着けていく、その身に着けたものが大事だ」
「ううん、そういえば俺も」
イタリアは自分のことからも考えて述べた。
「今まで生きてきたから」
「イタリアさんもその経験から身に着けていることが多いな」
「パスタもさ、本だけ読んで作ってもね」
それでも作ることは出来る、だがだというのだ。
「ただ美味しいだけなんだよ」
「そこからだな」
「そう、それがないとね」
「それまでだな」
「そういうことなんだ」
「それなら勝てる」
今の戦力が開いている状況でもだというのだ。
「一撃離脱を繰り返して戦おう」
「攻勢による防衛ね」
「その通りだ」
そうだとだ、東郷はスカーレットにも微笑んで述べた。
「ではそれで攻めよう」
「わかったわ」
スカーレットも夫の言葉に頷く、そうして。
枢軸軍は一撃離脱、鉄鋼弾でもそれを浴びせてソビエト軍の数を減らしていく。マニュアル通りの動きはもう彼等の敵ではなかった。
何度か繰り返しているうちにソビエト軍は数がなくなっていた、それでだった。
戦力をなくした彼等はやはりマニュアル通りに撤退する、そこまで見てまた言う東郷だった。
「どうもな、ここまで見てもな」
「マニュアルですね」
「そうした敵だな、クローンは」
「では今度の戦いは」
秋山も撤退する彼等を見ながら東郷に話す。
「マニュアルの敵とですか」
「戦うことになる」
そうなるというのだ。
「名将が揃っていてもな」
「成程、では」
「まずはソビエトの諸星域に散開したままの主力艦隊を呼び寄せよう」
彼等の全てをだというのだ。
「その後には防衛艦隊を置きだ」
「治安及び防衛にあたってもらいですか」
「秘密星域を攻める」
ソビエトのそこをだというのだ。
「そうしよう」
「ではいよいよですか」
「決戦だ」
それも最後の、だというのだ。
「ソビエトとのな」
「ソビエトとの戦いは長かったですが」
「それもやっと終わる」
「ではすぐに主力艦隊をモスクワに集結させましょう」
「話がそれからだ」
決戦は、というのだ。こうした話をしてからだった。
枢軸軍主力はすぐにモスクワに集められた、そのうえで。
その秘密星域へのワープ航路も確認された、提督や国家達はその航路を会議室で確認した。そうして言うことは。
最初にだった、グレシアが鋭い目になってこう言った。
「まさか秘密星域があったなんてね」
「そうだな、想定もしていなかった」
レーティアも言う。
「そんな場所があるとはな」
「これまでも中南米や中央アジアみたいな場所はあったけれど」
これといって開拓されていない秘境の様な場所はというのだ。
「それでもね」
「宙図にない場所か」
レーティアはまた言った。
「名前は何というのか」
「ゲーペさんから聞いたけれどね」
彼女と今一緒にいるというか保護しているイタリアの言葉だ。
「エカテリンブルグっていうらしいよ」
「あっ、エカテリーナ二世ですね」
新加入のリトアニアが星域の名前を聞いて言った。
「その名前ですね」
「あっ、そういえばそうなるね」
「はい、カテーリン書記長はあの人を尊敬していまして」
だからだというのだ。
「その名前になりました」
「そうなんだ」
「そうです、ただ俺達も」
ソビエトを構成していた国家であったリトアニア達でもだったというのだ。
「そんな場所があったなんて」
「知らなかったの?リトアニア達も」
「はい、全く」
「ううん、ソビエトの国家だったのに」
「ロシアさんと妹さんだけだったかな」
ソビエトの主要国家である彼等だけが知っていたというのだ。
「ロシアさんの中にある星域だから」
「俺達って自分の中にあることはわかるけれど」
イタリアも自分のことから言った。
「その外になるとね」
「そうですね、俺もリトアニア星域のことはわかりますけれど」
しかしそれ以外になるとだ、リトアニアの場合はリトアニア星域から出ると。
「モスクワのことにしても」
「見たり聞けばわかるけれどね」
「逆に言えば見聞きしなければ」
秘密にされて触れなければ、というのだ。
「全く」
「そうだよね、じゃあ」
「上手に隠されていました」
「前から何処からクローンを出してくるのかと思っていたんですが」
ここでエストニアも言う、難しい顔で腕を組んで。
「まさかそんな場所があってそこから生み出されていたとは」
「思うもよりませんでしたね」
ラトビアはエストニアの言葉に応えながら一同に言った。
「本当に」
「ロシア、奥が深い国だ」
レーティアも唸るまでだった。
「そんなものまであるとはな」
「しかしそのロシアともこれで最後だよ」
ここで言ったのはキャシーだった。
「次の決戦で終わるんだからさ」
「そうね、私達の勝利でね」
クリスはあえて占わなかった、そのうえでの言葉だ。
「油断は駄目だけれど自信を持って行きましょう」
「そういうことだよ、じゃあな」
それでjはとだ、キャシーが今度言うことは。
「飯にするか?ステーキでもさ」
「いや、ここは俺が用意するさ」
フランスが名乗り出て来た。
「お兄さんのフランス料理を食べながら勝利の前祝いといこうか」
「あっ、それはいいんですけれど」
そのフランスにだ、ウクライナが言って来た。
「ちょっと注意して欲しいことがあります」
「注意?何をだよ」
「はい、ソビエトは寒いので」
当然モスクワもだ。
「ですからそれを考えて」
「料理が冷めない様にか」
「そのことを気をつけて下さい」
「じゃあ料理を一度に出したら駄目か」
「フランスさん時々そうされますよね」
「一度に出した方が見栄えがよくてな」
それでだというのだ。
「一度に出してな」
「食べてもらいますね」
「けれどそれだとか」
「お料理が冷めますので」
ロシアの寒さの前にだ、そうなってしまうからだというのだ。
「注意されて下さい」
「そうか、それじゃあな」
フランスはウクライナの言葉に考える顔になった、そして言うことは。
「一品ずつ出すか」
「若しくは暖房を効かせるか」
そのどちらかだというのだ。
「そうするかですね」
「ただ。私はそれだと」
スノーが言って来た、彼女が言うことは。
「弱るわ」
「ああ、あんたはそうだよな」
フランスはスノーの言葉を受けて彼女に顔を向けて述べた。
「暖かいの苦手だったな」
「極端に暑くない限り溶けないけれど」
「若し溶けたらどうなるんだ?」
「お水になって」
溶けてだ、そうなってだというのだ。
「もう一度凍る必要があるの」
「そうか、あんたも大変だな」
「正直寒くないとね」
冷気を漂わせながらの言葉だ。
「困るわ」
「じゃあどうするかだよな」
ここまで聞いてまた言うフランスだった。
「やっぱり一品ずつだな」
「それで御願いするわ」
「じゃあ皆それぞれテーブルに着いてな」
そうしてだというのだ。
「それから一本ずつ出していくからな」
「おう、じゃあそれで頼むな」
今度はトルコが応える、彼もかなりの美食家なのだ。
それでだ、フランスは皆に席に座ってもらって一本ずつ出すのだった。ラトビアはそのフランスの作った料理を食べて言うのだった。
「やっぱり違いますね」
「美味しいですね」
そのラトビアにリディアが応える。
「何ていうか忘れていた味です」
「給食だと」
ソビエト名物のそれなら、というのだ。
「何か決まっていた感じで」
「そう、味も栄養もでしたね」
「美味しくて身体によくはあっても」
それでもだったのだ、ソビエトの給食は。
「こうした味じゃなくて」
「普通のままでしたね」
「流石にエイリスの料理とは違いました」
あそこまでまずくはなかったというのだ、給食は。
「そうでしたけれど」
「ここまで美味しいものは」
「とても。ありませんでしたね」
「御馳走なんてありませんでした」
美食もだ、給食にはだ。
「皆が同じものを食べれば差別はないですから」
「それはそうだけれどな」
ここで作ったフランスが言う。
「食ってるものも同じならな」
「差別はないですし一体感もありますし」
「同じ釜で、だよな」
この場合はパン焼き窯である。
「それでもだよな」
「何か毎日が味気ない感じでした」
三食給食では、というのだ。
「時間が来たから食べるという感じで」
「何となくわかるな、それは」
「フランスさんもですね」
「それだと面白くなくなるんだよ」
食事ですらそうなるというのだ。
「どうにも」
「何か共有主義って生きてるだけか?」
フランスは話を聞いてこう思った。
「そんなのか?」
「そうかも知れないです」
「やっぱり面白くないよな」
それだと、というのだ。
「食っていてもな」
「実は日々の生活も」
それ自体がだというのだ。
「どうにも、でした」
「生きているだけか」
「娯楽はあっても真面目なものばかりで」
この辺りはカテーリンの性格からくるものだ、生真面目な彼女は娯楽も真面目なものしか認めなかったのだ。
「限られていました」
「テレビやネットでゲームも出来ましたけれど」
流石にソビエトでもこうした娯楽はあったというのだ、だがだった。
「少しでも風俗に関する様なゲーム、資産主義的なゲームは」
「じゃあエロゲも駄目なんだぜ!?」
「そんなの持ってるだけで一日中逆立ちで立たされますよ!?」
ラトビアは韓国の驚きの言葉にさらに驚いた顔で返した。
「それこそ!」
「何っ、恐ろしい国なんだぜ!」
「本当に真面目なゲームしか出来ないですから!」
だからだというのだ。
「ソビエトはそうした国ですから!」
「俺絶対ソビエトにはいたくないんだぜ」
韓国はラトビアの話を聞いてしみじみと言った。
「本当にそう思うんだぜ」
「もう少しゆとりがあった方がいいな、ソビエトも書記長さんもな」
フランスはアダルトゲーム厳禁と聞いてしみじみと思った。
「そんなのじゃアイドルの写真集もそうした漫画も駄目なんだな」
「ですから逆立ちの刑になりますから」
フランスにも言うラトビアだった。
「問題外ですよ」
「あの書記長さんはまだまだ子供か」
フランスはここまで聞いてこのことを察した。
「立派なレディー、うちの王女さんみたいになるのはもっと先だな」
「あの、私はまだとても」
「ははは、もう充分だよ」
シャルロットには笑顔で返すのだった、そしてだった。
そうした話をしてだ、フランスが作った料理を楽しみソビエトとの最後の決戦の前に英気を養うのだった。
ソビエトとも最後の戦いの時になろうとしていた、日本妹はその中で彼女の兄に問うた。
「今どうしたお気持ちですか?」
「今ですか」
「はい、ソビエト戦はかなり激しい戦いが続きましたが」
「まだ油断は出来ませんが」
それでもだと、日本は妹の問いに答えた。
「これでまた一つの戦いが終わると嬉しく思っています」
「そうですか」
「まだ戦いは続きます」
エイリス、そしてドクツが控えている。イタリンも。
「しかしまた一つの戦いが終わりますので」
「そのことは嬉しいですね」
「満足のいく終わらせ方としたいです」
これが日本の今の願いだった。
「そうしましょう、それでは」
「そうですね、心地よくですね」
「終わらせて。次の戦いに向かいましょう」
こう言ってそうしてだった、彼等はソビエトとの最後の戦いに赴く。ソビエトの秘密星域であるエカテリンブルグでの最終決戦がはじまろうとしていた。
TURN114 完
2013・6・6
ゲーペから語られたカテーリンたちの過去。
美姫 「それでも、石の詳細や出所は分からずね」
まあ、貰った本人も貰っただけみたいだからな。
美姫 「とは言え、ドクツに教団と何やら意味ありげな言葉は出てきたけれどね」
だな。まあ、その辺りを今は気にしても仕方ないな。
美姫 「そうね。いよいよ秘密星域の場所も分かった事だし」
正真正銘、ソビエトとの最後の戦いだな。
美姫 「どうなるのか、気になる次回は……」
この後すぐ!