『ヘタリア大帝国』




               TURN112  独裁者の名

 コンドラチェンコとスノーも枢軸軍に参加した、そしてだった。
 二人は東郷にその旨を伝えてからジューコフの部屋に入った、するとそこにはリディアと亜空もいた。
 リディアが二人を見て笑顔でこう言ってきた。
「あっ、これからまた宜しく御願いします」
「こっちこそな」
 コンドラチェンコは今はウォッカを飲んでいる、その赤ら顔で陽気に応える。
「まあ所属する陣営は変わったがな」
「そうですね、書記長さんには悪いですけれど」
「あの人相当怒ってるだろうな」
「多分私達全員戦争の後で廊下に立たされますね」
「バケツ持たされてな」
「一時間ってところでしょうか」
「朝から夕方までだろ」
 コンドラチェンコは笑ってこう返した。
「書記長さん厳しいからな」
「そうなりますか」
「ああ、悪い人じゃないんだけれどな」
「やっぱり厳しいですよね」
「そこがな」
 問題だというのだ。
「もうちょっと心に余裕が欲しいな」
「そうですね」
「まあこの戦争はな」
「勝敗は決した」
 ここでジューコフが言った、五人でソファーに座りウォッカと干し肉を楽しむその中でも彼の声は重厚だった。
「最早な」
「そうね、もうね」
 スノーがジューコフのその言葉に応えた。
「戦力も少ないし」
「しかも戦術は全て破られた」
「これ以上戦っても」
 そうしてもだというのだ。
「何もならないわ」
「その通りだ」
「ここは講和すべきだが」
 亜空も言う。
「しかしだ」
「書記長さん頑固なのよね」
 リディアは少し苦笑いになってカテーリンの性格のこの部分も指摘した。
「あの人はね」
「意志の強い方だ」 
 ジューコフはこう言う。
「生真面目で清廉だが」
「そして一度はじめたことは諦めない」
「国家元首としての資質としては確かにいいが」
「過ぎるのよね、あの人は」
「何でもな」
 ジューコフが言うカテーリンの問題点はそこだった。
「素晴らしい努力家なのだが」
「もう少し柔軟性があれば」
 それでだというのだ。
「違うのだがな」
「まだこれからの人でもあるのね」
「そうだ、あの人はやはりロシアに必要だが」
「もう少しだけね」
「パンは小麦粉だけでは作られない」
 ここでこうも言ったジューコフだった。
「水も卵も必要だ」
「しかも黒パンだけだと飽きますね」
 コンドラチェンコはここでジューコフにこう返した。
「ピロシキもないと」
「そうだ、今のあの方は小麦粉だけのパンだ」
「何か。どうにも」
「最上級の小麦を最上級の職人が焼いているが」
 しかも最上級の設備でだ、だがだというのだ。
「小麦粉だけだ」
「ちょっと違いますね」
「少しでいい、水や卵や砂糖も必要だ」
「それで最高のパンになりますね」
「まだこれからだからな」
 ジューコフは何処か自分の子供を観る様な目で一同に話す。
「あの方は」
「そういうことだな、カテーリン書記長には余裕がない」
 亜空も髪の毛に住んでいるカメレオンが動いているのを確認しながら言う。
「精神的な、な」
「それって結構まずいんですよね」
「人は遊びも知らないとならない」
「そうそう、お酒にしても」
 リディアの顔派もう真っ赤だ、飲んでいる量はコンドラチェンコより少ないが彼より遥かに赤くなってしまっている。
「必要よね」
「流石にこれはあるけれどな」
 コンドラチェンコは今も飲んでいる。
「酒がないと我が国は成り立たないからな」
「ウォッカがないとソビエトは動かない」
 ジューコフも言う。
「決してな」
「カテーリン書記長もウォッカについては何も言わないわ」
 このことはスノーも知っている、スノーは酒は飲まないが。
「制限もしていないわ」
「我が国で酒を制限すれば暴動が起こる」
 ジューコフは真顔でこうも言った。
「だからこれだけはない」
「それがあるのはいいですけれど」
 だが、だとだ。リディアはまた言った。
「問題は」
「とにかくあの書記長さんは余裕がないからな」
「意固地ですから」
「まだ戦いは続くか」
「カテーリングラードでの戦いに敗れても」
 まだ、だというのだ。そして実際にだった。
 カテーリングラードに入ったカテーリンは全軍にムキになった声でこう宣言していた。
「いい!?絶対になんだから!」
「戦争の継続ですね」
「これからも」
「そうよ、ここに立てこもるのよ!」
 そうしてだとだ、将兵達に応える。
「それで絶対に最後は勝つから!」
「あっ、カテーリンちゃん」
 ミーリャは横からそのカテーリンに言う。
「ドクツ軍はもうドクツ領に撤退したよ」
「うん、知ってるよ」
「それでイタリン軍もね」
 彼等もだというのだ。
「一目散にイタリンに帰ったから」
「ソビエト軍だけっていうのね」
「それでも戦うのね」
「そうよ、共有主義を皆に教えてあげる為にね」
 まさにその為にだというのだ。
「そうするわ」
「わかったわ、じゃあね」
「カテーリングラードの防衛施設を強化して!」
 そしてだというのだ。
「ここは絶対に負けないから」
「はい、では攻撃用衛星の数を増やします」
「それもまた」
「そう、他の星域からも持って来てね」
 そこまでしてだというのだ。
「ここは守るから」
「それは名前のせいですか?」
 ラトビアは天然で普通誰も聞かないことを聞いた。
「書記長さんのお名前の星域だから」
「祖国君、ラトビア君にお仕置きして」
「うん、じゃあね」 
 ロシアはカテーリンの言葉に従いラトビアを人間アコーディオンにかけた、忽ちのうちにラトビアの絶叫が木霊した。
「うぎゃああああああああ!!」
「ラトビアアアアアアアアーーーーーーーーーッ!!」
 エストニアも叫ぶ、だが話は続くのだった。
「ここはソビエト軍の燃料弾薬の集結地よ、要地だし」
「それに、だよね」
「ここで敵を凌いで反撃に転じるから」
 カテーリンは今度はミーリャに応えて話す。
「絶対に負けないから」
「だからこそですね」
「そう、ここで負けるつもりはないから」
 ロシア妹にも答える。
「皆頑張って!防衛体制を整えるのです!」
「わかりました、同志書記長」
「これより」
 将兵達も応える、そしてだった。
 ソビエト軍の将兵達は防衛体制を整えていた、艦隊も急ピッチで修理にかけそしてだった。カテーリンはさらに行った。
「私も出撃するから」
「同志書記長もですか」
「そう、そうするから」
 ゲーペに対して強い声で応える。
「私だけ何もしないって大嫌いだから」
「それは今もですね」
「皆で動いて皆で幸せになるの」
 カテーリンはゲーペに言いながらせっせと動いていた、そうしながらの言葉だった。
「共有主義はそうでしょ」
「はい、誰も分け隔てなく」
「だから皆と一緒に戦うから」
 そうするというのだ。
「試作艦を出してね」
「じゃあ私も出るよ」
 ミーリャもここで名乗り出た。
「私も戦わないといけないからね」
「有り難う、じゃあミーリャちゃんもね」
「うん、戦うよ」
 首相である彼女も戦うことになった、ソビエト軍は国家主席と首相も出撃しまさに後がないことを窺わせる状況だった。
 だがその中でだ、ゲーペはそのカテーリンとミーリャ、そしてロシア兄妹にそっと囁いた。
「若しもの時ですが」
「あの星域に入るんだね」
「はい、既にロリコフ博士がいます」
 こうロシアに答える。
「そしてそこには」
「クローンがだね」
「艦艇も用意されています」
 だからだというのだ。
「再起も用意していますので」
「じゃあ万が一ここで負けても」
「はい、まだ我々は戦えます」
 それが可能だというのだ。
「ですからご安心下さい」
「わかったわ、けれどここで絶対にね」
 カテーリンもゲーペの話は聞いた、だがそれでもだというのだ。
「勝つから」
「そうです、ですが若しもの時の備えは必要ですね」
「それはね」
 このことはカテーリンもわかる、こうしたことまで考えが及ばなくては国家元首としてやってはいけないからだ。 
「絶対に」
「そうです、ですからあの星域にも用意しています」
「若しカテーリングラードで負けても」
「我々には後があります」
「ここで負けたらあそこに入るんですね」
 ミーリャもこうゲーペに尋ねた。
「そうするんですね」
「そうです、ただあの星域に入るのは」
 その顔触れはというと。
「私達五人だけになります」
「あの星域の存在を知っている私達だけですね」
「はい」
 その通りだとだ、ゲーペは今度はロシア妹に答えた。
「他の人達は敗れた場合は」
「降伏してもらいます」
 枢軸軍にだというのだ。
「一時は」
「わかりました」
「では今はです」
 ゲーペはカテーリンの前に三次元地図を開いた、そして今周りにいる四人に対してその機械的な声で言った。
「作戦会議といきましょう、秘密警察も全軍で戦います」
「前線に出てくれるのね」
「そうさせてもらいます」
 ゲーペは確かな声で答えた。
「是非共」
「頼むわね、もう数でも枢軸軍の方が上だから」
 カテーリンは数の信奉者だ、それでこのことをとりわけ気にしているのだ。
「ここはね」
「そう、皆が前線に出て頑張らないと」
 どうしようもないというのだ。
「私も出るから」
「出来ればです」
 ここで微妙な顔になってだ、ゲーペハカテーリンに言った。
「同志書記長は」
「出撃したら駄目なの?」
「国家元首自ら出撃されますと」
 どうしても色々齟齬が生じるというのだ。
「ですから」
「私そういうこと嫌いだから」
 自分は何もしないのは、というのだ。
「だから」
「そうですね、同志書記長は昔から」
「あのセーラ=ブリテン女王も前線で戦ってるのよ」
 実はカテーリンはセーラを嫌っている、資産主義でありしかも君主である彼女はカテーリンから見れば宿敵以外の何者でもない。
「だったら私も」
「そうですか、では」
「うん、あの試作艦に乗るから」
 また言うカテーリンだった。
「ミーりゃちゃんは」
「私は駆逐艦に乗るから」
 それにだというのだ、ミーリャは。
「それで戦うよ」
「わかったわ」
「さて、じゃあ敵が来たらね」
 最後にロシアがその素朴な声で言う。
「戦おうね」
「そして勝つから」
 カテーリンはここでも毅然としていた、ソビエト軍は何とか敵と正面から戦う戦力を集めそのうえで待ち受けていた、彼等はまだ諦めていなかった。
 対する枢軸軍はモスクワの修理工場をフルに動かしてロシア平原での戦いのダメージを回復させていた、その中で。
 東郷はモスクワに置いた仮の司令室において三次元宙図のモニターを観ながら日本兄妹に語った。置いている場所はミーリャの首相官邸だ。
「カテーリングラードを攻略してもまだソビエト軍が戦うならだ」
「それならですね」
「さらにですね」
「そうだ、ソビエトの各星域を攻撃していく」
 そして攻略していくというのだ。
「そこからだな」
「さらにですね」
「ソビエトの後は」
「ドクツだ」
 次はこの国だというのだ。
「ポッポーランドやハンガリー方面から攻めていこう」
「エイリスはそれからですね」
「ドクツの後ですね」
「イタリンもだがな」
 この国もだというのだ。
「とりあえずはオフランスの手前までだ」
「攻略しますか」
「そこまで」
「北欧もだ」
 この星域の話もする。
「攻略しよう、噂ではエイリス軍があの星域に巨大な兵器を置いているそうだが」
「巨大な兵器ですか」
「それは一体」
「まだよくわからない、だがだ」
「その兵器も置いてですか」
「そのうえで」
「あの星域でも決戦を挑むつもりらしいな」
 どうやら、というのだ。
「あの国も諦めないな」
「確かに、アフリカのこともありますし」
「エイリスもまだまだ侮れませんね」
「オフランスはおいそれとは艦隊を通してくれない」
 絶対平和主義だからだ、東郷はここからも言うのだった。
「外交交渉が必要だがその間にだ」
「エイリスのアフリカの植民地もですね」
「攻略していこう、どちらにしてもエイリスとの決戦ではあの国の戦力が少ないに限る」
「では」
 日本は東郷のその言葉に答えて頷いて言った。
「ドクツ戦の後は」
「アフリカに取り掛かろう」
「わかりました」
 これからの戦略方針も語られる、東郷は既にソビエト戦からのことも考えだしていた、そしてであった。
 艦艇の修理が全て終わるとだ、彼はすぐに言った。
「ではだ」
「はい、これよりですね」
「カテーリングラードに向かう」
 今回は秋山に答える。
「そうする、そしてそれからダメージを受けていない艦隊でだ」
「ソビエトの残る星域を攻略していきますか」
「後は一気呵成だ」
 ソビエトの多くの星域はというのだ。
「占領していこう」
「そしてソビエトが降伏したならば」
「ドクツだ、最終目標はベルリンだ」
 ドクツの首都であるこの星域だというのだ。
「あの星域まで行くぞ」
「そしてヒムラー総統は」
「彼か」
「彼はどうなるのでしょうか」
「それはドクツ側が決めることだ」
「つまりレーティア総統がですか」
「やはりドクツの国家元首は彼女だ」 
 それならばというのだ。
「彼女に任せよう」
「我々が口出しせずに」
「カテーリン書記長と同じでな、そうしよう」
 こう言うのである。
「とはいってもあの総統さんは謎が多いが」
「悪事はですね」
「これといってしていない」
 東郷が知っている限りだ、そしてそれは枢軸の全ての者がそう考えていることだ。
「全くな」
「簒奪もしていませんし」
「ドクツを立て直し善政を敷いている」
「妙に特定の宗教を贔屓していますが」
「ドーラ教だな」
「あの宗教への肩入れが気になりますが」
 だが、だと。秋山は東郷に彼のヒムラーへの見解を語った。
「やはり悪事は行っていません」
「そうだな」
「では、ですね」
「総統さんも彼が特に逆らわないとな」
「元の鞘に収めるだけですか」
「親衛隊長にな」
 それに戻るだけだというのだ、ヒムラーも。
「むしろ彼女がいない間にドクツを守った功労者としてだ」
「以前より厚遇されますか」
「そうではないだろうか」
 こう秋山に語る。
「まあそれは全部総統さんが決めることだ」
「そうなりますか」
「それではだ」
 ここまで話してだ、東郷は主力の全てをカテーリングラードに進ませた。
 カテーリングラードはソビエト軍の艦隊がいた、だがだった。
「ドクツ軍とイタリン軍はいねえな」
「もうどちらもそれぞれの領土に撤退したわよ」
 キャシーにクリスが答える。
「祖国の防衛を固めるという名目でね」
「そりゃ嘘だろ」
「ええ、実際のところはソビエトを見捨てたのよ」
 そうしたとだ、クリスはキャシーに説明する。
「要するにね」
「世知辛いねえ、そりゃまた」
「そういうものよ、ましてや連合国はそれぞれ同床異夢だから」
 同盟を結んでいるが思惑はそれぞれ違うというのだ。
「見捨てる時は簡単に見捨てるわ」
「あたし達とエイリスもそうだったな」
「あの時と同じよ」
 旧連合国と変わらないというのだ、その辺りは。
「私達が抜けてドクツとイタリンが入ったけれどね」
「何で連合国ってお互い仲悪いんだろうな」
「それが政治よ」
「手を結んでいてもだね」
「ええ、裏では色々となのよ」
 思惑がありそれぞれで動いているというのだ。
「だから今はドクツ軍とイタリン軍はね」
「いないんだな」
「ソビエト軍だけよ、それではね」
「ああ、やってやるかい」
 クリスは楽しげな笑みを浮かべた、そして右手に持っているハンバーガーを豪快にかじりながらモニターのクリスに言った。
「あの邪魔な人工衛星は頼んだよ」
「艦載機で、よね」
「ああ、そうしてくれよ」
 こうクリスに言うのだ。
「あたい達は艦隊を潰すけれどな」
「そちらは頼んだわよ」
「ああ、じゃあな」
「行くよ、キャシー」
 アメリカ妹もモニターに出て来てキャシーに言って来た。
「派手に攻めるよ」
「ああ、それじゃあね」
 こう笑顔で話してだ、そしてだった。
 カテーリングラードでの戦いがはじまった、カテーリンは自ら前線に立ちソビエト軍の将兵達に大きな声で告げた。
「全軍攻撃開始!」
「攻撃開始ですか?」
「そう、前に出て!」
 こうリトアニアに言う。
「そして敵をやっつけて!」
「いえ、それは」
 リトアニアは戸惑いながらカテーリンに返す。
「防衛戦ですから、我々は」
「何もするなっていうの?」
「違います、人工衛星の陣の中に入って」
「戦えっていうの?」
「その方がいいです」
 こうカテーリンに言う。
「今は」
「そうなの」
「攻める時じゃないです」
 今は、というのだ。
「ここは守りましょう
「長官はどう思うの?」
 カテーリンはリトアニアの謹言を聞いてからゲーペに問うた。
「今は」
「はい、私もリトアニア君と同じ考えです」
 モニターに出たゲーペは生真面目な声で答えた。
「今はです」
「そうなの、じゃあ」
「ここは守りましょう」
 ゲーペはあらためてカテーリンに進言した。
「そうしましょう」
「わかったわ」
 カテーリンは少し渋ったがゲーペの言葉に頷いた、そしてだった。
 ソビエト軍は人工衛星の間に展開して枢軸軍を迎え撃った、その彼等を見てだった。
 ジューコフは静かに、だが確実な声で全軍に言った。
「オーソドックスで隙のない布陣だが」
「それでもですか」
「この陣は」
「破ることが出来る」
 それは可能だというのだ。
「防空システムのない人工衛星も多い」
「あっ、そういえば確かに」
「そうですね」
「そうした衛星から攻撃をしてだ」
「破壊してですね」
「そのうえで」
「次に敵の艦隊だ」
 衛星の守りがなくなった彼等をだというのだ。
「攻めていけばいい」
「見たところ旧式の人工衛星が多いので」
 リディアも今のソビエト軍を観て言う。
「そうした衛星から破壊してですね」
「そうだ、バリアを備えている衛星は多いがな」
 だがそれでもだというのだ。
「防空体制があるものは少ない」
「うちはずっと艦載機を軽視してましたからね」
 コンドラチェンコもジューコフに応えて言う。
「ですから古い衛星になりますと」
「しかも他の星域から持って来た人工衛星が多い」
 それでだというのだ。
「旧式のものをな」
「新型なら防空体制が整っていますが」
 また言うリディアだった。
「旧式のものは違いますから」
「どうしてもだ」
「はい、艦載機には弱いですね」
「それならだ」
「まずはそうした衛星から破壊して」
 そしてだというのだ。
「艦隊もまた」
「そうしますか」
「今は」
 コンドラチェンコとリディアがジューコフの言葉に頷く、そうしてだった。
 枢軸軍は守りを固めるソビエト軍への攻撃をはじめた、まずは防空体制が備わっていない人工衛星からだった。
 艦載機で攻撃を仕掛ける、それを観てだった。
 カテーリンはすぐに憤る、そして言うのだった。
「敵の艦載機を何とかして!」
「もう迎撃のヘリを出していますが」
 ウクライナがそのカテーリンに応える。
「ですが」
「それでもっていうの?」
「はい、ヘリは動きが普通の艦載機より遅く」
 そしてだというのだ。
「まだ操縦に慣れていないので」
「運用は?」
「それにもです」
 やはり慣れていないというのだ。
「それはまだです」
「じゃあ今は」
「はい、今のところはです」
 人工衛星は攻撃されるしかないというのだ、防空体制のないものは。
「それしかありません」
「そして敵艦隊も来ています」
 ベラルーシも報告してきた。
「彼等には艦隊で迎え撃って宜しいでしょうか」
「使える衛星も向けて」
 すぐにだ、カテーリンはこの指示を出した。
「そうして」
「わかりました、それでは」
「とにかく、今は守らないと駄目っていうのなら」
 カテーリンはゲーペに言われたことを素直にインプットさせていた、そのことから判断して言うのである。
「守って、絶対に!」
「は、はい」
「それでは」
 ウクライナとベラルーシがそれぞれ敬礼で応える。そしてだった。
 ソビエト軍は組んだ陣で枢軸軍を迎え撃った、ここでは数と艦艇の質がものを言った。
 ソビエト軍の艦艇は次々に撃破されていく、総督は己の艦隊にビーム攻撃を命じながら言う。
「何か今はね」
「楽でごわすな」
「これまでのソビエト軍との戦いと比べてね」
「やっぱり数でごわあすな」
 オーストラリアはこう分析した。
「それがなくなっているからでごわす」
「うん、戦争は数だし」
 総督はさらに言う。
「特にソビエト軍の戦法は物量作戦だから」
「それに頼るでごわすな」
「ぶつ力作戦には弱点があるんだ」
「数が劣っていれば、ですな」
「そう、それで駄目になるんだ」
 数に頼るからこそその数がなくなればというのだ。
「もうね」
「そうでごわすな」
「そう、だからこの戦いはね」
「いつもより楽でごわすな」
「元々装備はこちらの方が上になっているし」
「提督と将兵の質もでごわすな」
「それならね」
 そこまで条件が揃っているのなら、というのだ。
「楽になるよ」
「そういうことでごわすな」
「だからこそ」
「ここで、でごわすな」
「ソビエト軍を叩いていこう」
「殲滅ばい」
 ニュージーランドがそれを聞いて言った。
「そればい」
「そう、ソビエト軍に僕達とまともに戦わせる戦力をなくさせるんだ」
 ここで殲滅して、だというのだ。
「そうしよう」
「何か総督さん戦闘に慣れてきたね」
 トンガは総督の話を聞いて言った。
「それも随分」
「うん、かなり戦ってきたからね」
 そのせいでだとだ、総督も応える。
「それに最近波に乗ってるしね」
「怪獣ばい」
「そう、パルプナさんのこともあるし」」
 それにだというのだ。
「後はエアザウナにニガヨモギに」
「大怪獣もでごわすか」
「あの怪獣達もばい」
「そう、どうも調べていると」
 総督は戦いを続けながら言う。
「怪獣は元々こちらの世界にはいないね」
「そうなの?」
 パルプナがここで総督に問う。
「怪獣は」
「うん、どうやらね」
 そうだというのだ。
「この宇宙にいた存在じゃないみたいだね」
「では何処から来たのかな」
 トンガもこのことには首を傾げさせる。
「大怪獣は四国にもいるけれど」
「あの怪獣を調べていても不思議に思っていたんだ」
 その頃からだというのだ。
「明らかにこの宇宙の生態系とは離れているから」
「だからなの」
「うん、じゃあどうしてここに来たのか」
 総督はパル@ウナに応えながら話していく。
「そこも調べていこうかって思ってるんだ」
「そうなの」
 こう話してそしてだった。
 総督は怪獣のことを考えながら戦闘を続けていた、ソビエト軍は陣地を破壊され艦隊も撃破されていっていた。
 その中でだ、リトアニアがカテーリンに言った。
「あの、我が軍の損害ですが」
「今どれ位なの?」
「遂に五割を超えました」
 そこまでだというのだ。
「そしてこのままでは」
「まだやられるの?」
「八割に達してです」
「戦力でなくなるっていうのね」
「このままでは残る星域を守れなくなります」
 そこまでのダメージを受けるというのだ。
「ですから」
「駄目よ、撤退は」
 カテーリンは意固地な口調で答えた。
「ここで絶対に勝つから」
「だからですか」
「勝つの」
 絶対にだとだ、カテーリンは意固地な言葉を出した。
「何があっても」
「そうですか」
「全軍このまま持ち場を離れないで!」
 カテーリンは全軍に指示を出した。
「いいわね!撤退は許さないから!」
「いえ、ここはです」
 カテーリンはあくまで戦おうとする、だがだった。 
 その彼女にゲーペが言って来た、そして言うのだ。
「もう諦めて」
「撤退?」
「まだ切り札はあります」
「あれね」
「そうです、ですから」
 だからだとだ、ゲーペはカテーリンを止めていた。
「撤退しましょう」
「・・・・・・わかったわ」
 カテーリンもゲーペに言われては仕方がなかった、それでだった。
 ソビエト軍は撤退に入った、すぐに各星域に撤退にかかる。
「全軍各星域に逃げるのです!」
「はい、それでは」
「僕達も」
 リトアニアとラトビアが応える、そして。
 ソビエト軍は枢軸軍をそれぞれ何とか振り切って撤退した、だがその中でまたしてもかなりの損害を受けてしまった。その彼等を見てだった。
 秋山はソビエト軍がいなくなったカテーリングラードを見て言った。
「最早ソビエト軍は我々に対抗出来る戦力はおろか」
「各星域を守る戦力もだな」
「はい、なくなりました」
 そうだとだ、こう東郷に言うのである。
「各星域への侵攻は容易かと」
「そうだな、それではな」
「カテーリングラードでの損害は軽微ですし」
「では損害を受けた艦隊はモスクワに戻す」
 そして修理工場で修理をするというのだ。
「他の艦隊で攻めよう」
「各星域をですね」
「そうしよう」
「では早速ですね」
「まずはカテーリングラードを制圧する」
 敵がいなくなったこの星域をというのだ。
「そしてだ」
「そしてですね」
「他の星域への制圧にかかろう」
 早速そうするというのだ。
「では今からだ」
「わかりました、それでは」
 こう話してそしてだった、日本陸軍を中心とした陸戦部隊が星域を制圧した。こうしてカテーリングラードは枢軸軍の手に落ちた。
 それからすぐにだった、東郷の作戦通りソビエトの各星域に艦隊が送られた。
「もうソビエトに戦力はねえからな」
「はい、そうですね」
「艦隊を送ってですね」
「占領していくだけですね」
「こうして」
「ああ、そうだよ」
 その通りだとだ、田中は部下達に言う。
「じゃあ行くか」
「はい、副司令」
「行きましょう」
「降伏する奴はそのまま受け入れろ」
 田中は部下達に指示を出した。
「あと非戦闘員には何もするな」
「軍規に従え、ですね」
「つまりは」
「ああ、そうだよ」
 その通りだというのだ。
「だからいいな」
「ええ、わかってます」
「俺達も軍人ですから」
「軍人らしいことをしろ」
 田中はまた言った。
「軍規を破った奴は容赦なく銃殺だからな」
「了解です」
「何があっても」
 部下達もこのことはわかっていた、そしてだった。
 枢軸軍はソビエトの各星域への制圧に入った、ソビエトとの戦いはこれでもう終わりだ、誰もがそう思っていた。


TURN112   完


                              2013・5・18



カテーリン、粘るな。
美姫 「そうね。最後の防衛線のはずが更に撤退したみたいだし」
どこまで続くのか。
美姫 「東郷たちの計画ではこの後、ドクツ、アフリカみたいだったけれど」
まだ、そう簡単にはいきそうもない感じだな。
美姫 「さてさて、どうなるのかしら」
気になる次回は……。
美姫 「この後すぐ!」



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