『ヘタリア大帝国』




                           TURN10  アイドルレーティア

 ドクツとポッポーランドの戦いは終わった。ドクツ軍は一隻の損害も出すことなく勝利を収めた。ポーランドは降伏しシャイアン星域はドクツのものとなった。
 その主星であるワルシャワにだ。今黒い軍服と制帽の少女が降り立った。
「ジークハイル!ジークハイル!」
「総統万歳!」
 そのレーティアを将兵達が敬礼で出迎える。その彼女がだ。
 グレシアを従えたうえでだ。出迎えたドイツ達にこう尋ねてきた。
「ここに来るまでに戦場跡を見てきた」
「そうですか。御覧になられたのですか」
「それでどうでしたか?」
「完勝だな。報告通りだ」
 レーティアは微笑みドイツとプロイセンに答えた。
「ではだ。マンシュタインとロンメルはいるか」
「はい、今ここに来ます」
「間も無く来られます」
「そうか。では待とう」
 レーティアが言うとだ。すぐにだった。
 そのッマンシュタインとロンメルが来てレーティアの前で敬礼をしてだ。こう言ってきた。
「ジークハイル!」
「うむ。ではだ」
「はい」
 敬礼を終えてからだ。二人はレーティアに応える。そのうちの一人マンシュタインがだ。
 その謹厳な声でだ。レーティアに問うてきた。
「総統、御呼びですね」
「そうだ。よく来てくれた」
「では」
「戦いのことだ」
 レーティアはそのマンシュタインの巨体を見上げながら言う。
 見れば一メートルは違う様に見える。実際は五十か六十程だが。
 それでもそれだけの違いを周囲に感じさせる中でだ。レーティアはマンシュタインに対して言った。
「報告を聞かせてもらい戦場跡を視察してきた」
「如何だったでしょうか」
「素晴らしい!」
 レーティアはここで満足した笑みを見せた。
「素晴らしいぞ!よくやってくれた!」
「お褒めに預かり光栄です」
「あそこまでの勝利を収めてくれるとはな。見事だ」
「そう言って頂き何よりです」
「第一次宇宙大戦からの歴戦の勇者だけはある」
 レーティアの褒め言葉が続く。
「これからも宜しく頼むぞ」
「はい、ドクツと総統の為に」
 マンシュタインは絶対の忠誠も見せた。レーティアもそれを受けた。
 そしてレーティアは今度はだ。ロンメルに顔を向けた。だが、だった。 
 ロンメルにはいささか面白くなさそうな顔でだ。こう言ったのである。
「ロンメル、御前は余計なことをし過ぎだ」
「そうでしょうか」
「そうだ。色々動き回っていたな」
「楽しんでいました」
「楽しむことはないんだ。勝てばいいんだ」
「性分ですのね」
「全く。仕方のない奴だ」
 ロンメルも見上げながらだ。レーティアはやれやれといった顔で述べた。
「報告を聞いて思った」
「何とでしょうか」
「御前とはチェスをしたくないな」
 腰の左右に両手を当てて俯いて。レーティアは首を横に振って言った。
「負ける気はしないが嫌な気持ちになりそうだ」
「だからですか」
「だがそれがよくもあるがな」
 ロンメルも認めていることは間違いなかった。
「だがそれでも思った」
「左様ですか」
「しかしよくやってくれた」 
 レーティアはまた顔を上げて今度は微笑みになりロンメルに話した。
「これからも頼むぞ」
「はい、それでは」
「二人、そして祖国達と将兵達には勲章を用意してある」
 ここでグレシアが出て来てだ。レーティアの前に整列する彼等にあるものを差し出してきた。それを見てだ。
 マンシュタインがだ。目を瞠ってこう言った。
「まさかそれは」
「そうだ。ポッポーランド戦の勝利を記念してのコインだ」
 所謂記念コインだった。黄金のそれにはレーティアがいる。
「これを授けよう」
「総統閣下御自身の手で我々に」
「授けたい。そうしていいか」
「光栄の極みです」
 マンシュタインだけでなくロンメルもだった。声を昂ぶらせて言う。
 そしてそのうえでドイツ達もだ。そのレーティアからだ。
 コインを受け取り勲章も貰った。そうしてだった。
 彼等はレーティアに勝利を褒め称えられた。その後でだ。
 マンシュタインはロンメルにだ。戦艦アドルフのその機械的な、一切装飾のないあくまで実用的な艦橋の中でコーヒーを飲みながらだ。こう言われていた。
「まずは完勝ですね」
「そうだな。それにだ」
「はい、勲章のお褒めの言葉も頂きました」
「我々が勝てたのは総統閣下のお陰だ」
「はい、まさにあの娘のお陰です」
 ロンメルがレーティアを『あの娘』と言ったのを聞いてだ。それでだった。
 その目をやや顰めさせてだ。こう言ったのだった。
「前から思っていたがだ」
「俺の呼び方ですね」
「そうだ。総統閣下に対して不遜だ」
 マンシュタインはこう言ってロンメルを咎める。
「訂正すべきだ」
「堅苦しいのは苦手なんですよ。それにです」
「心はか」
「ええ、あの娘への熱い心」
 ロンメルは確かな微笑みでマンシュタインに話す。
「それは貴方と同じですよ」
「そうだな。御前は確かに態度には問題があるがだ」
 謹厳実直そのもののマンシュタインから見ればだ。確かにロンメルの態度は軍人としてどうかと思われた。しかし彼の内面を知っているからこそ。こうも言えた。
「それでもな」
「心こそが大事ですから」
「私は前はその言葉を信じなかった」
 マンシュタインはこうも言った。
「だが今はだ」
「違いますね」
「御前を見たからな」
 それ故にだというのだ。
「軍人に必要なものは心だ」
「忠誠心ですね」
「あの方はまさにドクツの為におられる」
「はい、その通りです」
「あの方あってのドクツだ」
「だからこそです。俺も」
 忠誠を誓っている。そうだというのだ。
「少なくとも偽りはないつもりです」
「言う必要はない。わかる」
 ロンメルのその心がだというのだ。
「だからいい」
「それはまたどうも」
「そしてだ」
 さらに言うマンシュタインだった。
「ポッポーランドとの戦いは終わった」
「ポーランドも降伏しましたね」
「あの国もドクツに入ることになった」
「ええ、それもすぐに進めないといけないですね」
「我々はすぐに北欧に向かう」
 戦いはこれで終わりではなかった。まだ行われるのだ。
「そして今度は北欧連合と戦うがだ」
「問題はエイリスですね」
「アイスランドから艦隊を送ってくるな」
「間違いなくそうしてきますね」
 話は軍事に関するものになっていた。その中でだ。
 ロンメルはその金色の目を輝かせてだ。こう言ったのである。
「ポッポーランドでの俺達の勝利を見て」
「完勝だっただけにな」
「警戒して。送ってきます」
「エイリスとオフランスが宣戦布告してきた」
 マンシュタインはロンメルにこのことも話してきた。
「彼等との戦闘にも入る」
「ええ。それと共にですね」
「今外務省がルーマニア、ブルガリアとの外交交渉に入っている」
 レーティアの計画通りだ。ポッポーランドへの完勝からそうした話もはじまったのだ。
「そしてトリエステ提督とベートーベン提督の艦隊がギリシアに向かう」
「オーストリアさん、それにハンガリーさんと共に」
「ギリシアでも勝つ」
 完勝する、そうなるというのだ。
「これで東欧は完全に我々のものになる」
「ですね。彼等もドクツに組み込んで」
「そのうえで北欧も攻める」
 そうなっていくというのだ。
「まずは順調だな」
「そうですね。ただ問題はです」
「オフランスだな」
そうです。あの国です」
 まさにその国が問題だとだ。ロンメルはマンシュタインに話す。
「あの国は平和主義に偏り過ぎて軍事費をかなり削っていますが」
「そして軍自体もな」
「かなり弱体化しています。しかしです」
「まだまだ侮れない力を持っている」
 マンシュタインは右手に彼の巨体から見れば実に小さいそのコーヒーカップを手にして言った。
「決して侮れる相手ではない」
「その通りですね。だからこそです」
「油断できない。しかも向こうにはマジノ線もある」
「バリア艦を用意する手もありますがね」
「建造する余裕がない」
 バリア艦の建造はだ。今はできないというのだ。
「今はあらゆる戦力を今ある艦艇の建造に回している状況だからな」
「俺達も懐具合は寒いですからね」
「そうだ。今我々は十二分の力で戦っている」
 そうだとだ。マンシュタインは彼と共にコーヒーを飲むロンメルに話す。
「その中ではだ」
「ええ、とてもじゃないですけれどね」
「バリア艦まで建造する余裕はない」
「今ある艦艇の数も充分じゃないです」
「数を戦術や質で補うしかないのだ」
 これがドクツの実状だった。彼等は余裕がないのだ。それもかなりだ。
「だからだ。あの要塞はだ」
「あれで、ですね」
「攻略するしかない」
「そうですね。デーニッツ提督に期待ですね」
「あの娘ならやってくれる」
 今度はマンシュタインが『あの娘』と言った。しかしだ。
 その対象が違っていた。そのうえで言うのだった。
「必ずな。だからだ」
「オフランス戦は油断していないにしてもですね」
「負ける気はしない」
 そうだというのだ。マンシュタインは。
「全くだ」
「まずはオフランスが正念場ですね」
「そしてエイリスだな」
「はい、エイリスを倒しそのうえで」
「ソビエトだ」
「一気にウラルまでいきましょう」
「あそこまで占領すればソビエトも終わりだ」
 マンシュタインはその重厚な声で言った。
「総統閣下の計画はここまで進めればだ」
「後はガメリカだけですね」
「そこまで強くなればガメリカにも負けない」
「そのうえでドクツは」
「世界の盟主となりあの方が人類の指導者となるのだ」
 レーティア=アドルフ、他ならぬその彼女がだというのだ。
「遂にな」
「ですね。じゃあ俺達も頑張りましょう」
「あの方の為にな」
「はい、あの娘の為に」
「全く。そこは変わらないな」
 マンシュタインはロンメルをここでまた咎めた。
「仕方のない男だ」
「許して下さい。悪気はないです」
「悪気があれば許してはおけない」
 レーティアの忠臣としてだ。それは絶対だった。
「その時はな」
「総統への奸臣はですか」
「やはり今度出るだろうか」
「あの娘は人を見る目も確かですがね」
 だから彼等も抜擢されたのだ。そのレーティアによって。
「しかしですね」
「どうしても出るものだからな」
「ではそうした輩は」
「ゲッペルス宣伝相と協力してだ」
 レーティアの第一の腹心である彼女と共にだというのだ。
「排除せねばな」
「そうですね。絶対に」
「そういえばだ」
「そういえばとは?」
「近頃親衛隊という者達がいるそうだな」
 マンシュタインは彼等のことに言及してきた。
「総統閣下の為の」
「親衛隊ですか」
「貴官は聞いたことがあるか」
「いえ、初耳です」
 ロンメルはこうマンシュタインに答えた。
「総統親衛隊ですか」
「総統閣下の熱狂的な支持者で構成されているらしい」
「俺達とはまた違い」
「軍とはまた違う」
 そうした組織ではないというのだ。
「かといって警察でもない」
「武力組織ですか?」
「どうだろう。私兵でなければいいが」
「私兵は危険です」
 ロンメルはその存在は認めなかった。
「それは統制が効かないですから」
「そうだな。正規軍でなければな」
「危険です」
「少し見る必要があるな」
 マンシュタインはコーヒーカップを置いて言った。
「彼等についてもな」
「そうですね。ですが今は」
「戦争だ。まだはじまったばかりだ」
「次は北欧です」
「幸い我々は一隻の艦艇も失っていない」
 まさにだ。完勝だったのだ。
「だからだ。このまま進める」
「その通りです。北欧連合王国にも勝ち」
「東欧と北欧を押さえてだ」
「いよいよオフランスですね」
「そこが第一の正念場だ」
 マンシュタインは断言した。オフランス戦こそがだというのだ。
「あの国はやはり強い」
「ええ、マジノ線もありますし」
「だが。総統閣下ならばだ」
「そのマジノ線も」
「突破できる。あの娘はその為にいるのだ」
「デーニッツ。あの娘はね」
「あの娘は総統閣下もとりわけ目をかけておられる」
 そのデーニッツという少女についてだ。マンシュタインはかなり認める言葉を出した。
「自分の後にドクツを任せられるとまでな」
「そこまで仰ってるんですか」
「そうだ。だからだ」
 それ故にだと。さらに言うマンシュタインだった。
「あの娘ならやってくれる」
「我々の正念場を勝利に導くことを」
「確かにマジノ線は堅固だ」
 マンシュタインはよくわかっていた。このことが。
 そして決して侮ってはいない。だからこその言葉だった。
「しかし。破れないものはないのだ」
「人間の造ったものなら」
「難攻不落であってもだ」
「絶対に陥落しない要塞はありません」
「必ず弱点があるものだ」
 マンシュタインはこう断言した。
「それはマジノ線も同じだ」
「それにです。オフランス軍はマジノ線に頼り過ぎています」
 ロンメルはこのことを指摘した。
「あれを破れば」
「オフランスはそれだけで敗れるな」
「はい。呆気なく」
「パリまで一気に進める」
「そうなりますね。ただ」
「ただ、だな」
「それだけではないですね」
 ロンメルはマンシュタイン、その自分より年齢が一回り以上年上の親友の岩石の様な顔を見た。そしてそのうえでだ。こう彼に問うたのである。
「貴方にもお考えがありますね」
「わかるか」
「はい。先の戦いで我々はベルギー、オランダからオフランスに迫りました」
「シュリーフェンプランに基きな」
「あれは確かにいい計画ですが」
「だが二度そのまま使うことはな」
「幾らオフランスが平和主義に浸っていても馬鹿ではありません」
 ロンメルもだ。オフランスは決して侮ってはいなかった。
「ですから。二度やるとです」
「簡単に見破られる」
「オランダやベルギーへの侵攻も絶対に必要ですが」
「そこから主力をオフランスに向けることはな」
「止めた方がいいですね」
「私もそう見ている」
 実際にそうだとだ。マンシュタインはその厳しい顔で語った。
「それはしてはならない」
「ではそのことを」
「総統閣下に具申する」
 実際にそうするとだ。マンシュタインは答えた。
「私のその考えをな」
「ええ、期待していますよ」
「人は不可能と思っていたことでもだ」
 どうかというのだ。それでもだ。
「可能であることが多いものだ」
「その通りですね」
「マジノ線の攻略も然りだ」
「ですね。では今は北欧への出撃の準備に入りましょう」
 ロンメルは話を進めてきた。
「そしてそのうえで」
「そうだ。我等の総統閣下の為に」
「我等のドクツの為に」
 二人は共にだ。笑みを浮かべ合い言い合う。
「勝利をこの手に」
「栄光をこの手に」
 こう二人で話すのだった。彼等はそのうえで出撃準備に入った。その頃。
 ポーランドはふてくされてだ。リトアニアに電話をしていた。
「もーーー、超信じられんっていうか」
「ああ、負けたんだね」
「そうなんよ。あっという間だったんよ」
 こうだ。そのふてくされた顔でリトアニアに電話で話していた。
「八個艦隊壊滅したんだよ」
「それでドイツさん達はだよね」
「そうそう。パーフェクトだったんよ」
「で、降伏して?」
「俺ドクツの国家の一つになったんよ」
「ううん、それはわかったけれど」
 電話の向こうからだ。こう言うリトアニアだった。
「何かさ。今のポーランドって」
「俺が?どないしたん?」
「凄いお気楽なんだけれど。いつも通り」
「だってあれじゃね?悩んでもはじまらんっていうか」
 実際にいつもと全く変わらない態度で言うポーランドだった。
「だからなんよ。俺は深刻にならんのよ」
「そのことは安心してるけれど」
「そうなん?だったらええけど」
「ポーランドこれからドクツに入るんだ」
「そう、今度ドクツの軍服も支給されっから」
 このことについてもだ。ポーランドはいつもの調子で言うのだった。
「今度着てみっから。似合ってたら写真送るしーーー」
「それはいいけれど。ただね」
「ただ?何なん?」
「そっちにドクツの総統さん来てるって?」
「ああ、今ワルシャワに来とるんよ」
 ポーランドは何でもないといった顔でリトアニアにだ。このことも話した。
「そんでコンサート開くんよ」
「ああ、ファンシズムだから」
「そうそう。アイドルでもあるんよ」
「それは羨ましいね」
 リトアニアはぽつりと本音を漏らした。
「国家元首の方が歌って踊ってくれるって」
「ソビエトにはないん?そういうの」
「歌はあるよ」 
 それはあるというのだ。ソビエトにもだ。
「けれど。それでもね」
「それでも?どないしたん?」
「革命とか。そういう歌ばかりで」
「ふうん、そうなん」
「それで歌うのがロシアさんなんだ」
 ここでいよいよだ。電話の向こうのリトアニアの顔と声が暗くなる。だがポーランドがわかるのはそのうちの半分、彼の声の調子だけである。
「民謡とかもあるけれどね」
「ロシア?あいつやっぱりまだ怖いん?」
「それは言わないけれど」
 もっと言えば言えないことだった。
「とにかくね。カテーリンさんは真面目だし」
「真面目なん。あの娘」
「すっごく真面目だよ」
 リトアニアの顔と声はさらに暗くなる。
「もうね。学級委員長、いや生徒会長かな」
「学校?」
「そう、学校みたいな感じだよ」
 それがソビエトだというのだ。
「それでさ。凄く厳しくて」
「そんなに?」
「生徒会長兼学級委員会議長兼風紀部長かな」
「それって全権ちゃうの?」
「まさに全権だよ」
 リトアニアの顔がまた暗くなっていた。
「それで凄く真面目な人で」
「ふうん、真面目なのはいいことって思うけど」
「確かに国家運営は順調かな」
 誰から見てそうなのかは言わないリトアニアだった。
「とりあえず。俺生きてるから」
「だったらええけど」
「そのことは心配しないで。とにかくだよね」
「そう、俺これからドクツに入るから」
「元気でね。ドイツさん達と揉めないでね」
「平気平気オーストリアさんもいっし」
 だからだというのだ。
「特に寂しくないと思うんよ」
「だったらいいけれどね」
「じゃあまた電話すっから」
 何があっても気楽な感じのポーランドだった。
「今から招待されているコンサートに出っから」
「うん、楽しんできてね」
「そうすっから」
 こんな話をしてだ。ポーランドは電話を切った。そうしてだ。
 家を出て国民達にだ。こう言うのだった。
「じゃあ今からコンサート行かん?」
「ええ、それじゃあ」
「今から行きましょう」
「まあ負けたけど俺等生きてるしーーー」
 ポーランドは項垂れている国民達にもこう言う。
「気を取り直してコンサート聴きに行こうな」
「何か祖国さんにそう言われると」
「かなり気が楽になりました」
「本当に」
「そうそう。負けたけど何とかなるんよ」
 ポーランドは生きている。それならばだというのだ。
「じゃあ行こうな」
「ですね。確かにポッポーランドは負けましたけれど」
「ポーランドさんも俺達も生きていますし」
「それなら新しい上司の下ですね」
「生きますか」
「そうそう。フリカッセ食わん?」
 ポーランドは懐からその細長い棒状の菓子を取り出して食べはじめた。そしてその菓子を周りにいる自分の国民達に勧めもしてきたのだ。
「美味いんよ。今日もまた」
「あっ、すいません」
「じゃあ頂きます」
「何本でもあるし好きなだけ食うてええんよ」
 コンサート会場に向かって歩きながら言うポーランドだった。
「ほなこれ食いながらコンサートに行って」
「新しい上司の歌聴きますか」
「そのレーティア=アドルフの」
 こう話してだ。彼等はレーティアのコンサートに赴いた。そこでの彼女は。
 まさにアイドルだった。可憐な容姿で華麗な歌を歌い。
 そして見事に舞う。それを見てだ。
 ポーランドは唖然としてだ。こう言った。
「凄いしーーー」
「ですよね。これは」
「ちょっと」
「かなりのものですよ」
「これ程とは」
 誰もがだ。唖然として言うのだった。
 その国家用の席でだ。ポーランドは周りにいる国民達に話した。
「この上司ならよくね?」
「ですね。負けて悔しかったし」
「何でドクツに入るんだって思ってましたけれど」
「この人が上司なら」
「俺達も文句ないですよ」
「レーティア=アドルフ、最高だしーーー」
 こうも言うのだった。
「俺これからドクツの一国になる。喜んでそうなるよ」
 こうしてだった。ポーランドも国民達もレーティアに魅了されてだ。
 そのうえでドクツの一員となったのだった。ポッポーランドは完全にドクツとなった。
 そしてその中でだ。ルーマニアとブルガリアがだ。それぞれドイツのところに来た。それを見てだ。
 ドイツと共にいるグレシアがだ。笑顔で彼等に言ったのだった。
「あら、早速ね」
「ああ、来たずら」
「ドクツに入れさせてもらいます」
「快諾してもらって何よりよ」
 グレシアは微笑んで二人に述べた。
「じゃあ。ルーマニアさんとブルガリアさんもね」
「早速国家艦隊率いるずらな」
「そうなりますね」
「そうよ。それで星もね」
 それぞれの星域の話にもなたt。
「レーティアが行くから」
「それポーランドの後ずらな」
「そうなりますよね」
「そうよ。もう計画は立てているから」
 それはもう既にだというのだ。
「安心してね。そして楽しみにしててね」
「そうずらよ。今から楽しみずら」
「それでなのですが」
 ここでブルガリアがグレシアに問うてきた。
「レーティアさんのポーランドでのコンサートは」
「御免なさい、もう終わったわ」  
 それはもうだ。既にだというのだ。
「ついさっきね」
「そうですか。終わったんですか」
「そうずらか」
「ええ。だから楽しみにしててね」
 グレシアはブルガリアだけでなくルーマニアにも話した。
「貴方達の星域に行くその時をね」
「はい、そうさせてもらいますね」
「もうすぐずらからな」
「そうだ。それでだが」
 今度はドイツがだ。二人に対して言ってきた。
「御前達もドクツに加わったということはだ」
「何かおいらの星をドクツ軍が通るって?」
「僕のところもですよね」
「そうよ。オーストリア星域からね」
 まさにだ。そこからだというのだ。
「それぞれ二手に分かれてギリシアに向かうわ」
「ギリシアは和平を言ってきているのか」
 ドイツはここでこのことを考えた。
「どうなのだろうか」
「大使館にドクツに入る様に勧めるよう伝えたけれどね」
「駄目だったのですか」
「ええ、返答はナイン、だったわ」
 グレシアはそのドイツに話した。
「彼等は戦闘を選んだわ」
「そうですか。それでは」
「ええ。レーティアはトリエステ、ベートーベン両提督にメールで出撃を伝えたわ」
 まさにだ。予定通りにそうしたというのだ。
「そしてオーストリアさんとハンガリーちゃんにもね」
「わかりました。全ては予定通りですね」
「これで私達は東欧全域を掌握することになるわ」
 グレシアは微笑んでこんなことを話した。
「そして次はね」
「北欧ずらな」
「計画は聞かせて頂いています」
 ルーマニアとブルガリアがこう話す。
「東欧と北欧を完全にドクツにするずらか」
「遠大ですね、まことに」
「けれどそれだけではないずらな」
「それに加えてですね」
「そうよ。次はオフランスよ」
 ドクツにとっての宿敵の一つ、その国だった。
「一気にいくからね。ただね」
「ただ?」
「ただっていいますと?」
「伊勢志摩だけれど」
 その国についてはだ。グレシアは。
 少し微妙な顔になってだ。こうドイツ達に話したのだった。
「ちょっと。ねえ」
「オフランス戦の後でもずら?」
「何もされないのですか」
「あの国も確かに大事だけれど」
 欧州掌握を考えればそうなるとだ。グレシアもわかっていた。
 だがそれでもだとだ。彼女は国家達に話すのだった。
「まずオフランス、そしてエイリスにね」
「ソビエトですね、その次に」
「レーティアはこう計画を立てているのよ」
 欧州掌握の為のだ。それをだというのだ。
「アフリカも掌握するけれど」
「しかしスペインはですか」
「どうなのかしらね」
 首を傾げさせながらだ。グレシアは話していく。
「あの国だけは。何かレーティアも後回しにするって言ってるし」
「伊勢志摩も人口は多く豊かですが」
 ドイツがその伊勢志摩のことをだ。グレシアに話す。
「それでもですか」
「あの国って。夫婦喧嘩ばかりしてるでしょ」
「スペインもぼやいている様です」
「だからよ。レーティアって夫婦喧嘩とかには弱くて」
 意外なレーティアの弱点だった。
「そうしたいざかいが理解できないっていうのよ」
「感情における戦争はですか」
「レーティアは戦争は政治の一手段って考えてるからね」
 政治家としても考えだった。まさに。
「それで。夫婦喧嘩で艦隊を動かすってのはね」
「それはとてもずらか」
「理解できなくてですか」
「そうなのよ。だから伊勢志摩はどうしたらいいかってね」
 グレシアもだ。首を傾げ続けながら国家達に話す。
「今判断をつきかねているのよ」
「だから伊勢志摩はずらか」
「放置ですか」
「そう。少なくともオフランス戦の後で兵は向けないわ」
 そしてだ。どうするかというとだった。
「エイリスに向かうわ」
「あの国にですね」
「エイリスも。宿敵だしね」
 ドクツにとって不倶戴天の。だからこそだというのだ。
「オフランス戦の後は。総攻撃よ」
「わかったずら。じゃあその時にはずらな」
「ドクツの総力を挙げてですね」
「エイリス侵攻よ」
 こう言ってだった。グレシアはドイツ達にこれからの計画を話したのだった。そうしてだった。
 今オーストリアからだ。四個艦隊が出撃した。その艦隊を見てだ。
 オーストリアは自分の旗艦の艦橋でだ。こう士官達に言っていた。
「この戦艦はです」
「御気に召されませんか」
「そうだというのでしょうか」
「少し。私の趣味ではありませんね」
 ドクツの軍服を着ているがそれでもだ。こう言うオーストリアだった。
「どうも」
「オーストリアさんはそうですよね」
「もっと優雅な」
「そうしたものをお好みですよね」
「はい」
 その通りだと答えるオーストリアだった。
「そうです。これはドイツですね」
「まあ。それはですね」
「ドクツはドイツさんが中心ですから」
「そうした国家ですから」
「そこは仕方ありません」
「そのことは理解しているつもりです」
 オーストリアもだ。このことは受け入れてはいた。しかしだったのだ。
 コーヒーを飲みながらだ。彼は言うのだった。
「音楽ですが」
「あっ、音楽隊は用意してあります」
「何を聴かれますか?」
「シュトラウスをお願いします」
 オーストリアが今リクエストした音楽家は彼だった。
「ラデッキー行進曲を」
「わかりました。それでは」
 オーストリアも頷きだ。その曲でいいとした。そしてだ。
 そのラデッキー行進曲を聴きながらだ。彼はモニターを開きだ。ショートの黒髪にオリーブ色の光を放つ鋭い目をした。いささかきつい感じの美女に問うた。
 見れば灰色の軍服に膝までのスカート、そしてタイツだ。かなり真面目な格好である。
 その彼女にだ。オーストリアは問うたのである。
「トリエステ=シュテテルン提督」
「何だ、オーストリア殿」
「私はルーマニアルートでしたね」
「そうだ。そこからギリシアに入ってもらう」
 その提督、トリエステはオーストリアにきびきびとした声で答えた。
「そこはベートーベン提督が向かう」
「そうだ。いいだろうかオーストリア殿」
 モニターにもう一人出て来た。見ればかなり印象的な風貌をしている。鬣の様な白髪にライオンの様な顔の初老の男だった。黒いドクツ軍の軍服を着ている。
「私と共にルーマニアからギリシアに向かおう」
「わかりました。それでは」
「二人でルーマニアからギリシアに向かってくれ」
 シュテテルンはオーストリアだけでなくベートーベンにも話した。
「私はハンガリー殿と共にブルガリアから入る」
「わかりました」
 モニターにまた出て来た。今度はハンガリーだ。
 その彼女がだ。真面目な声でシュテテルンに答えたのである。
「では提督、共に行きましょう」
「そうしよう。それでだが」
「それでとは」
「ギリシア戦はすぐに終わらせる」
 そうするとだ。シュテテルンは強い声でハンガリーに述べた。
「そしてだ」
「その次ですね」
「オフランス戦の用意に入る」
 戦争はギリシア戦だけではないというのだ。
「それがあるからな」
「そうですね。オフランスとの戦争こそがですね」
「正念場ですね」
 ここで言ったのはハンガリーだけではなかった。オーストリアもだった。
「私達にとっての本当の戦いになりますね」
「まさに」
「そうだ。ではこれより一旦二手に別れる」
 また言うシュテテルンだった。
「そうするぞ」
「わかりました」
 ハンガリーは敬礼でシュテテルンに応えた。そうしてだった。
 ドクツ軍は二手に別れてギリシアに侵攻した。途中でルーマニアとブルガリアも合流した。こうして六個艦隊になった彼等はギリシアに侵入したのだった。
 ギリシアも艦隊を用意して彼等を迎え撃つ。しかしだ。
 己の国のその艦隊を見てだ。こう言ったのだった。
「これだけか」
「はい、三個艦隊です」
「これが今の我々の戦力です」
「敵は六個艦隊」
 その数はだ。ギリシアは既に把握していた。
「そして物凄く強い船ばかり」
「ポッポーランドは一瞬にして敗れました」
「まさに完敗でした」
「それなら俺も」
 どうかとだ。ギリシアは彼の旗艦にいる軍人達に話した。
「危ない。それなら」
「降伏ですか?」
「そうされますか?」
「うん。戦っても負けるのなら」
 ぽつぽつとした感じでだ。ギリシアは軍人達に話していく。
「そうしよう」
「わかりました。それでは」
「仕方ありませんね」
「ドクツ軍に使者を出す」
 ギリシアはこう言った。
「そして降伏する」
 こうしてだった。ギリシアは戦闘に入る前に降伏したのだった。
 東欧はポッポーランド戦だけで終わった。そうしてだった。
 レーティアはグレシアと共にだ。ルーマニアやブルガリア、そしてギリシアも回った。その中でだ。
 レーティアは浮かない顔でだ。こうグレシアに言ったのである。
「しかしだ」
「またステージ衣装の話?」
「そうだ。今度はあの格好か」
「日本帝国風にね」
「着物だったな、あの変わった服は」
「下のあれは袴よ」
「上が白、下が赤だが」
「向こうじゃ巫女の格好なのよ」
 グレシアはにこにことしてレーティアに話す。
「いいでしょ」
「よくない」
 憮然とした顔になってだ。レーティアはグレシアに言い返した。
「あんな格好の何処がいいのだ」
「人気あるのよ。ドクツでもね」
「そうなのか?」
「楚々とした中にも可愛さがあるっていうことでね」
「動きにくそうだな。あの袴というのは」
「いえ、それが結構動きやすいらしいのよ」
「そうなのか?」
 そう聞いてもだ。レーティアは信じられなかった。
 それでだ。首を捻ってまたグレシアに言った。
「軍服の方が遥かに動きやすそうだが」
「はい、そこで軍服を比べないの」
「軍服は別だというのだな」
「そうよ。とにかく今度の巫女ルックはね」
「何故そうしたのだ?」
「同盟国への配慮よ」
 それによるというのだ。
「日本帝国のね」
「その日本か」
「そう。日本との同盟を祝福するって意味もあるのよ」
「それでなのか」
「他にもイタリンのものも用意してるわよ」
「イタリン?ローマ帝国になるのか?」
「いえ、今度は男装よ」 
 そちらになるというのだ。イタリンの場合はだ。
「ロミオになってもらうわ」
「今度はロミオか」
「ロミオとジュリエットのね」
「何故私がロミオなのだ」
「男装萌えって人もいるのよ」
 だからだというのだ。
「それでその格好にしたのよ」
「巫女に男装か」
「かなり不満そうね」
「その通りだ。何故御前のステージ衣装はいつもそうなんだ」
「アイドルのステージ衣装は奇抜さだけでなく萌えも大事なのよ」
「わからないな。服なぞ着られればいいだろう」
 レーティアの本音が出た。ここで。
「軍服やジャージでだ」
「ジャージって」
「ジャージはいい。動きやすいうえに洗濯も楽だ」
「だから。ジャージは駄目よ」
「普段着としていいだろう」
「それで演説とかステージに出るつもりなの?」
 グレシアは呆れた顔でレーティアに返した。
「全く。そんなのだからあの時もね」
「御前しか気付かなかったというんだな」
「そうよ。女の子は服も大事なのよ」
 グレシアもグレシアでその持論を述べる。
「何度も言ってるでしょ。服のことは私に任せてね」
「そうすれば上手くいくというのだな」
「レーティアのことなら何でもわかってるわ」
 グレシアはにこりとしてそのレーティアに話した。
「だから任せて。貴女は最高のアイドルよ」
「そして総統か」
「そう。そしって私はそのアイドルをね」
「プロデュースするというのだな」
「その通り。任せてね」
 こう話してだ。レーティアはグレシアと共にツアーを続けるのだった。
 そしてそのうえで東欧の国民の心も掴んだ。今ドクツはまさに飛ぶ鳥を落とす勢いだった。


TURN10   完


                     2012・3・12



ドクツの勝利後の話だな。
美姫 「みたいね。着実に地盤というか、ファンを獲得してるわね」
だな。同時に次の侵攻に関しても色々と考えているしな。
美姫 「何処まで行くかしらね。ちょっと楽しみだわ」
うんうん。快進撃を続けれるか、次回も待ってます。
美姫 「待ってますね〜」



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