※このお話はPCゲーム「とらいあんぐるハート3」とTVアニメ「魔法少女リリカルなのは」の融合作品です。
 しかし基盤となるのは「とらいあんぐるハート3」なので、士郎は死んでますし、恭也はALLエンド&フリーです。
 「魔法少女リリカルなのは」はキャラ追加のみを目的としたと捉えてください。







「あの―――もし宜しければ、自分とお茶して頂けませんか?」

「え?」






『 Dreieck Herz -Lyrical- 』 ACT.03






突然掛けられた声に真っ白になるフェイト。
しかも声を掛けてきたのは―――

「きょ『初めまして。自分は恭也といいます』…っ」

先程まで目の前の店内で働いていた男性店員、高町恭也である。
恭也はフェイトの呼びかけを遮るように自己紹介をした。

「?? おにいちゃんだ〜れ?」

一方、みきは突然現れた全身真っ黒の男に首をかしげるばかりだ
恭也はそんなみきの前に腰を下ろし、頭を撫でながら優しく語り掛ける。

「ああ。俺は恭也と言うんだ。
 お嬢ちゃんは何て言うのかな?」

「みき?みきはみきっていうの!」

先程のフェイト同様、恭也の雰囲気に悪意はないと感じ取ったのか、みきは既に恭也を味方と認識しているようだ。

「みきちゃんか。いい名前だな」

「うん!ふぇいとおねえちゃんもそういってくれた!」

そう言われてフェイトを見上げる恭也。
当のフェイトは今だ状況を飲み込めず呆然としている。

「そうか。こちらの女性はフェイトさんとおっしゃるのか」

初めて会ったわけでもないのに、フェイトの名前を初めて知ったかのような反応の恭也。
フェイトはもうわけがわからない。

「うんっ!ふぇいとおねえちゃん、すっごくきれいで、すっごくやさしいんだよ!」

「…そうか」

そう言うみきの頭を更に撫でながら、我が事のように笑顔を見せる恭也。

「それでおにいちゃんはどうしたの?ふぇいとおねえちゃんのおともだち?」

『おともだち?』の所でなんとか再起動を果たしたフェイトが答えようとするが

「そ『いや、こちらの方とは初対面だ』…」

またもや恭也の強引な会話によって遮断された。
さらに恭也からトンデモナイ発言が飛び出す。

「恥ずかしい話なんだが……お兄ちゃんはこちらのフェイトさんとおっしゃる女性に一目惚れしてしまってな。
 …なので出来るだけお近づきになりたいと思って、一緒に食事をして頂けないかと誘っているんだ」

「「……………」」

「「……………」」

「「……………」」

「「…………え」」



「「ええーーーーーー!?」」



二人の少女から驚きの声が上がる。

「ふぇいとおねえちゃん、すごーい!」

ナンパの現場を見たみきは、何やら興奮している。
どうやら恋愛沙汰に関して女の子が敏感というのに、年齢は関係ないらしい。
逆にフェイトはもうパニック度MAXである。
心寄せる男性から突如『一目惚れをしたので食事に付き合ってください』などと言われれば、誰でもそうなってしまうだろう。

「えっ?えっ?」

オロオロしながら恭也とみきを交互に見やるフェイト。
みきは夢見る少女のように目をキラキラさせてフェイトを眺めている。
そんな折、隙を見てフェイトに囁く恭也。

「(―――申し訳ありませんが、ここは話を合わせて下さい)」

「(――コクコク)」

突然恭也に耳元で囁かれますます顔を赤くするが、なんとか頷くことには成功する。
未だに恭也の真意は掴めていないが。

フェイトの合意が取れたのを見計らって

「それで―――フェイトさんとおっしゃいましたか?
 ……これから私と一緒に食事でもして頂けないでしょうか」

「は……はい。
 あ、でも今は…」

そう言って、みきを見る。
しかし恭也は当然と言った顔で

「あ、もちろんそちらのみきちゃんも一緒で構いません。
 時間も時間ですし、ちょっと早いですけど三人で一緒に夕食にしましょう」

と二人を食事へと誘った。

「あ―――」

そこでフェイトはようやく恭也の意図に気付く。
恭也は先程から自分達のやり取りを見ていたのだ。
二人の少女がお腹を空かせ、その上片方は年端もいかない少女。
お金も無く行き詰っていた所を見かねて、助けに来たというわけだ。
しかし『知り合いの男に食べ物を用意してもらった』となれば、間違いなくこの小さな少女は迷惑を掛けたと自分を責める。
それを感じさせないためには第三者による演出が不可欠だったため、
恭也は『ナンパ』という手段でこの問題を解決しようとしたのだ。


「みきちゃんも、俺がお邪魔していいかな?」

「うん!
 あ、でもふぇいとおねえちゃんのおよめさんにはみきがなるから
おにいちゃんはとっちゃダメだよ?」

「ははは。そうか、それは困ったな」

みきの言葉に苦笑を返す恭也。

「じゃあまずはみきちゃんのお許しを頂かないといけないわけだ」

「そうだよ〜。ふぇいとおねえちゃんとなかよしさんになるのはきびしいんだからね!」

二人はいつの間にやら手を繋いで翠屋のドアを開けている。

「では、フェイトさんも行きましょう」

「は、はい」

振り返った恭也がそう言うと、ようやく我に返り、二人の後を追うフェイトだがすぐさま別の思考へと旅立つ。

一瞬で状況を把握し、それでいて最も的確な行動を取った恭也の気遣い。
自分の惚れた人の男らしい行動を今まで以上に好ましく思った一方、
『一目惚れ』が方便だと知ったフェイトは、3人で翠屋をドアをくぐりながらもどこか悲しそうな顔をしていた。











翠屋へと入った3人……いや、正確には2人はメニューと格闘中である。

「うーんと、えーと……」

「……………」

みきはどうやら結構優柔不断らしく、シュークリームのとき以上に悩んでいる。
まぁ翠屋にはお子様ランチといったメニューがないため仕方ないかもしれないが。
フェイトは声こそ出さないものの、昨日の晩から質素な食事を続けているだけあって
『好きなものを好きなだけ食べてもいい』今の状況は何事にも代え難いため、これでもかというくらい真剣だ。

「………(ズズッ)」

恭也はコーヒーを飲みながら、そんな2人をどこか疲れたような顔で眺めている。
『ナンパ』した手前、当然男である恭也が支払いを持つ形になった。
そのこと自体に不満はないし、それを言ったときの2人の喜びようが尋常でなかったため、むしろ嬉しいくらいなのだが
彼が疲労感を漂わせているのは、この状況を厨房の奥から隠れてみている『つもり』である母親兼翠屋店長の視線だ。

「(………あの人は経営者の自覚がないのだろうか)」

この23年間で培ってきた経験が、あの状態の母に何を言っても無駄とわかっているため敢えて口を出さない恭也だが
その不満そうな雰囲気は、メニューに没頭していた2人の少女にも感じ取られてしまった。

「あの、きょ………高町さん、どうかなされたんですか?」

「? おにいちゃん、おかおこわいよ?」

その言葉にハッとする恭也。

「あぁ、すみません。なんでもないですよ……(何をやっているんだ俺は…)
 それよりお二人とも決まりましたか?」

「……はい、私は。みきちゃんは決まった?」

「うん!」

二人とも一応は決まったようだ。

「まぁ途中で追加したいものがありましたら、そのときに改めて注文すればいいですしね」

恭也はそう言いながらコールボタンを押すが、フェイトは少し気まずそうな顔をしている。

「あ、あの…ホントに好きなだけ頼んでしまってよろしいんですか?
 自分で言うのも何ですけど……私もみきちゃんもすごくお腹が空いてるんで、その………」

恭也の前で大食らいをすることもあってか、フェイトは少し遠慮がちだ。
みきは逆に不満そうな声を上げる。

「えー?おにいちゃんがいいっていってるんだよ?
 ふぇいとおねえちゃんもおなかなってたからたくさんたべようよ〜」

「み、みきちゃん……///」

お腹が鳴っている程空腹であることを暴露され、真っ赤になるフェイト。

「はは、大丈夫ですよ。これでも自分はそれなりにお金を稼いでますから」

恭也は笑いながらそう言うが、実際に恭也はお金を稼いでいる。
それもその辺のアルバイトとは桁の違う額だ。
この高町恭也という男―――礼儀正しい美形の青年というだけではない。
今は使い手がほとんどいない『御神流』と呼ばれる古流剣術を
義妹の美由希とともに、現代に伝える若き剣客である。
その腕を買われ、大学時代は副業で行っていたボディーガードの仕事を今は本業としており、
己の理に反するような人物の依頼は絶対に受けないが、ひとたび依頼を受ければ全力で対象者をガード。
一般市民からの要請もあるが、政界の要人警護も多くあるためその報酬額は半端ではない。
この齢にして彼の財産はサラリーマンが一生に稼ぐといわれる金額を軽く超越している。

そんな恭也にしてみれば、言っては悪いが翠屋のメニュー全てを注文された所で痛くも痒くもない。
それがわかってるのかどうかは分からないがみきは続ける。

「ほら。おにいちゃんもこういってるし。
 ……それにぃ〜、おにいちゃんはふぇいとおねえちゃんをすきになったんだから、
ふぇいとおねえちゃんはおにいちゃんをとりこにしたおんならしく、おごられなくちゃいけないんだよ♪」

「み、みみみみみきちゃん……っ!」

「は、はは……」

昼ドラの見過ぎでは?と思うくらい、お姫様のマセた一言に
店員である高町美由希が注文を取りに来るまで、フェイトは真っ赤に、恭也は苦笑せざるを得なかった。















注文を取り終えた3人はしばらく談笑していた。
一応この会合は『3人とも偶然知り合った』という名目だが
元々恭也とフェイトが知り合いなことと、みきが2人によく懐いてることもあり
みきはともかく、口下手な2人が居るにもかかわらず話は弾んでいるようだ。
そこに

「お待たせしました。
 こちらがカルボナーラとホットケーキ、ミックスサンドになります。
 あと、こちらの方が………」

注文した大量の品が来たので会話を一時中断して食事に掛かろうとする3人……いや、2人。
恭也は最初に注文したコーヒーをしぶとく飲んでいる。

「それでは品物も来たようですし……頂きましょうか」

「…そうですね」

「うん!みき、おなかぺこぺこ!」

「「「いただきます」」」

余程お腹が空いていたのか、もの凄い勢いで食べ始める少女×2。
みきは子供とは思えないほど沢山食べるし、フェイトも最初は遠慮がちな食べ方だったが、
段々と食欲の方が勝ってきたのか幸せそうな顔をしながら食べている。
そんな2人を恭也は優しげな視線で見つめていた――――






大量の食べ物も、気がつけばほぼ平らげられている。
それでも二人は腹八分といったところだ。

「……お二人とも、他には注文されなくてよろしいですか?」

2人の様子に気付いた恭也が尋ねる。

「え、えっと…///」

「みき、でざーとたべたい!」

二人とも依存はないようだ。
再びコールボタンで店員を呼んだ恭也は追加のデザートを適当にいくつか見繕って注文している。
そんなとき、みきがこそこそとフェイトに耳打ちするように告げた―――


「(ねぇねぇ、ふぇいとおねえちゃん)」

「(…ん。どうしたの?)」

「(おにいちゃんってやさしいね)」

「(…そうだね)」

「(それにすごくかっこいいし。みき、てれびでもあんなにかっこいいひとみたことないよ〜)」

「(そ、そうだね)」

恭也の内面・外面両方を誉められ、なぜか顔を赤くするフェイト。

「(おにいちゃん、ふぇいとおねえちゃんのことすきっていってたけど………おねえちゃんは?)」

「(えっ……!?)」

「(おへんじはしなくていいの?)」

「(えっ、でっ、でも今日知り合ったばかりだし…)」

「(みきもきょう、ふぇいとおねえちゃんとあったばっかりだけど……おねえちゃんのこと、だいすきだよ?)」

その言葉に思わず微笑むフェイト。

「(みきはこどもだからよくわからないけど……きょうとかきのうとか、あんまりかんけいないとおもうんだ)」

「(おにいちゃんとふぇいとおねえちゃんはとしもちがうけど、おにいちゃんはそれでもふぇいとおねえちゃんのことすきだっていってたし)」

「(………みきちゃん………)」

フェイトは目の前の少女が、自分より遥かに大人に見えた。
確かに恭也のことは好きだし、そうなったのも昨日今日の話ではないので、事情を知らないみきの話は場違いかもしれない。
だからと言って、恭也を好きになるのに時間が必要だったか?と聞かれれば、そうではないと答えるだろう。
『どれくらい時間が経ったら好きになっていい』なんて明確な定義があるわけでもない人の気持ちに
今日あったばかりだからという理由で、好きである気持ちを否定するのは何とも愚かしいことだ。
恋愛感情を知らないみきが言う『好き』が、フェイトの『好き』と同じという確証はないが、
例え今日初めて恭也と知り合ったと仮定しても、彼の優しさに惹かれるのにそう時間は掛からなかったハズだ。
ならば――――



「(そう………だね。うん。
  私も高町さん………ううん、恭也さんのこと、好きだよ)」



この日、フェイトは初めて『恋』を知った。
『憧れ』だけの感情ではない、本当の『恋』を。




――『恋』

前から知っていたはずの感情。
ただそれを再認識しただけ。
なのにフェイトは改めて……いや、以前よりも遥かに胸が張り裂けそうなくらいに高鳴る。
年齢の問題もあり、この恋は叶わぬものだとどこかで諦めていたせいもあるかもしれない。

しかし目の前の少女が教えてくれた。
好きならそれでいい、と。
時間も年齢も関係ない。必要なのは自分の気持ち。

恐らく友人であり、ライバルであるアリサはこのことを理解しているのだろう。
事ある毎に自分に『勝負』を持ちかけてきた彼女を子供っぽいと思ったことがあるが、今ならわかる。
一体子供だったのはどちらだったのか―――と。
彼女といい、目の前の少女といい、周りの人達と比べるとどれだけ自分が矮小な人間かを思い知らされたが
そのお陰でようやく友人と同じスタートラインに立てた。
そのお陰でようやく恭也を好きでいることの覚悟を持てた。
そのお陰でようやく―――好きな人を『好き』と口に出せた。

数え切れないほどの『勝負』をしてきたが、これからが本当の『勝負』。
彼女はこんな自分をもうライバルと認めてくれないかもしれないが、それでも自分がやるべきことは決まった。
そう決意し、向かいの席にいる想い人を見つめるフェイト。



迷いの無いその横顔は、みきの目に凛々しくも美しく映った―――。
















注文を終えた恭也が見たフェイトの顔は今までに見たこと無いほど美しかった。

「(…なにか心境の変化があったのだろうか?)」

朴念仁の彼に女心を理解するスキルは持ち合わせていなかったが、
それでも目の前の少女、いや女性は思わず見惚れてしまうほど美しい。
先程まで夢中で食事をしていた人物とは思えない。

そんな折、目の前の女性と目が合う―――


   ドクン!


「(……っ、何を考えている。馬鹿馬鹿しい……。そもそも俺は……)」

女性を見て湧いてきた感情を即座に否定する恭也。
その恭也の頭には栗色の髪をした女の子が思い描かれていたが
女性の傍らにいる少女はそんな恭也に何かを感じたようだ。


「ねぇ、おにいちゃん」

みきが尋ねる

「……ん?どうかしたかい?」

「…おねえちゃんのどこがすきになったの?」

「「!……っ」」

2人の息を呑む音が聞こえる。
恭也にとってこれ以上ないほど最悪なタイミングで尋ねられた。
先程までなら、適当な理由を言って誤魔化していただろう。
無論、今でも誤魔化すことは簡単だが、それは何か違うと今は思っている。
何より、ここで誤魔化すことは話に乗ってくれたフェイトに失礼と感じたからだ。
返答に窮している恭也を見て、みきはさらに続ける。

「ひとめぼれってことは、ふぇいとおねえちゃんのおかおをすきになったの?
 おねえちゃん、びじんさんだもんね〜♪」

「………」

顔が好み。
確かに『一目惚れ』の理由としてはこれが一番真っ当だろう。
事実、フェイトは間違いなく美人だ。

だが、目の前に居る女性がそれだけの女性でないことは恭也も良く知っている。
口数は少ないが他人を思いやれる優しさ。
自らの出生の過酷さを乗り越えた強さ。
素っ気無い態度を取っていても、彼女の周りには自ずと人が集まってくる。
恭也が好ましく思っているのは彼女のそんな所だ。
だから彼は――――

「………いや、そうじゃない……と思う」

その言葉にフェイトは誰が見ても分かるほど落ち込む。
友人達に可愛いと言われた事はあるが、恭也本人の口から自分は好みの顔ではないと言われてしまった。
普通のナンパなら好みじゃない人を誘ったりしないが、今回はみきのための方便だと理解もしてるので尚更だ。
そんなフェイトを見て恭也は慌てて弁明する。

「あ、い、いえ、違うんです!フェイトさんが美人ではないということではなくて……」

どうやら恭也が言いたかったことは容姿のことではないらしい。
フェイトはほんの少し安心したが、だからと言って美人と言われているわけでもないので微妙だ。

「……俺がその……フェイトさんに惹かれたのは、何というか……その"在り方"なんです」

「ありかた?」

「………」

ちょっと難しい単語が出てきたので、みきはクエスチョンマークを浮かべている。
逆にフェイトは今から語られるのが恭也の本心とわかり、今までに無いくらい真剣な目をしている。

「フェイトさんそのもの……というんでしょうか。
 …不器用だけども他人を思いやれる優しさ。
 大事な人を何としても守るという強さ。
一見無口だけれども、話してみればその優しげな雰囲気が伝わってくる……。
俺が思わず声を掛けたのは……そんな所に惹かれたからです」

「「………」」

2人は恭也の話をじっと聞いている。

「勿論これは俺の勝手な想像かもしれません。
 しかし、見ていたのはほんの数分ですが、
 お二人が姉妹や特別な関係でないのはすぐわかりましたし、
警戒心の強い子供が、会って間もないはずのフェイトさんにあんなに懐いてる…。
それだけで俺はフェイトさんが素晴らしい女性と確信できました」

「「………」」

恭也から見たフェイトという人物像。
言われた本人がどう感じてるかはわからないが、他人が聞けば間違いなく『一目惚れ』だ。

「(…ねぇ、ふぇいとおねえちゃん)」

「(……?)」

「(ほかのひとはわからないけど………みき、ふぇいとおねえちゃんにはおにいちゃんがぴったりだとおもうよ)」

みきのその言葉が何よりも自分の気持ちを後押ししてくれた。
やはり自分は恭也が好きなのだと。

「…………更に言わせてもらえば」

その上、顔を赤くした恭也から追い討ちがかかる。

「普段は美人ですけど……みきちゃんに向けている笑顔は本当に可愛らしかった―――というのも理由です」

先程有耶無耶になった言葉を、今度はハッキリと聞く事が出来た。
しかも『美人』と『可愛い』のツープラトン攻撃。
フェイトの頭の中は真っ白だ。

「だから俺はそんなフェイトをさんを『み、美樹!!!』」

と、恭也が続きを言おうとした所で店内にひとりの女性の声が響く。

「「え?」」

「え?あ、おかあさん!!」

みきが走り出す。
どうやら入口で美由希と話している女性は、みきの母親のようだ。

「美樹っ…美樹っ!」

「うええぇぇぇ〜ん!おかあさぁぁ〜〜ん!!」

母娘は思いがけぬ所で感動の再会を果たす。
それを見て恭也は一息つくが、フェイトはちょっと煮え切らない様子だ。

無論、みきが母親と会えたのは喜ばしい。
自分も一緒になって探していた分思い入れも深い。
しかし、何もこのタイミングで―――恭也の本心を聞きそびれてしまった。

一瞬、母親を恨めしく思ったりもしたが、まだ全ての問題が片付いていない今はこれでよかったと思うことにし、
思考を切り替えてみきのもとへ駆け寄った。











この母娘の苗字は岡野、母親の名前は秋子というらしい。
母親は非常に温和そうな一方、奔放さも兼ね備えているように見受けられる。
『可愛い子には旅をさせよ』という訓示を掲げてそうな雰囲気で
みきが礼儀正しく、他人を思いやる事が出来ているのは間違いなくこの女性のお陰であるとわかった。
最も母親本人は本当に旅をさせることになるとは思っていなかっただろうが。

「本当に―――本当にどうもありがとうございました。
 何とお礼を言っていいか……」

それにしてもこの女性は若い。一体何歳だ?と思うくらいだ。
とても子持ちには見えないが恭也の母親の例もあるし、話し方が丁寧でそれなりに歳を召しているだろうと思うことにした。

「えへへ。ふぇいとおねえちゃん、ありがとう!」

「……あ、いえ。気にしないで下さい。
 私もみきちゃんとお友達になれて……嬉しかったですから」

「うん!みき、ふぇいとおねえちゃんとおともだちになったんだ〜♪」

「こら、美樹……。
 フェイトさん、とおっしゃいましたか。
 そう言ってもらえると助かります…。
 あの、後日改めてお礼をしたいのでお住まいの方を教えてもらえませんか?」

秋子のある意味、当然の行動にフェイトは難色を示す。

「……いえ、本当に結構です。
 私は……損得でみきちゃんとお友達になったわけではないので、あまりそういうのは…」

フェイトの言葉に、秋子が申し訳なさそうな顔をする。

「あ、ごめんね。
 でもそんなつもりで言ったわけじゃ……」

「あ、い、いえ!こちらこそすみません。
 秋子さんの行動はこの国の礼節でしょうし、どちらかと言えば外から来た私の方が間違ってると思います…」

「「……………」」

話は平行線を辿るが、フェイトがひとつの打開策を提案した。

「あの……でしたら今度みきちゃんを連れて遊びに来て頂けませんか?
 "お礼"ということでしたら、みきちゃんが来てくれることが一番嬉しいです……」

フェイトのその言葉に秋子は一瞬目を丸くしたが、すぐさま優しげな笑みに変わる。

「……貴女は本当に優しい人なのね。
 美樹も貴女のような人と出会えて、きっと嬉しかったでしょう。
 ね、美樹?」

「うんっ!ふぇいとおねえちゃんやさしいし、びじんだし、それにみきといっしょでたくさんたべるんだ〜」

「み、みみみきちゃん……っ」

余計な情報までリークされてしまったフェイトは途端に焦る。
『…そんなに食べてたかなぁ』と思い返してはみるが、別段普通という結論しか出なかった。

「ふふふ。フェイトさんも沢山食べるのね。
 それじゃ、よければ今度私の料理を食べて頂けないかしら?
 もうすぐ美樹の誕生日なの。
 時間があれば是非来てちょうだいね」

「…わかりました。その時は必ず」

「ふぇいとおねえちゃん、ぜったいきてね〜」

「……うん。約束」

「やくそく〜♪」

みきとフェイトの約束も取り付けたので、秋子が自分の家の住所を書いた紙を渡す。

「これが私達が現在住んでいる所なの。
 先日越してきたばかりなので、まだ周辺の地理もよくわかってないんだけど」

『実は結構方向音痴なのよ』と笑う秋子から受け取った紙を何となく眺めたフェイトは目を見開く。

「……え?」

「………?」

「あ、あの……これって、ひょっとして海辺の近くにあるマンションのこと……ですか?」

「ええ、そうなの。思ったよりも安かったし、景色もよかったんですぐ決めちゃったのよ」

「……………」

「…?ふぇいとおねえちゃん、どうしたの?」

「えーと、その………私の家も…そこなんだ……」

『あ、あはは』と苦笑するフェイト。

「あらまぁ」

と秋子。

「ホントに!!?」

とこれはみき。
尻尾があれば振りまくっているであろうくらいの喜びようだ。

「じゃあこれからはふぇいとおねえちゃんといっしょのおうちなんだ!」

ぱあっ、と目を輝かせるみきだが

「こら美樹。一緒のお家って言っても、マンションなんだからそう頻繁には会えないわよ。
 一緒の階とかだったら会える機会も増えるだろうけど……」

秋子の言葉にしゅん、となる。

「……あの、それが秋子さん。
 これ、間違ってなければ……………お部屋が隣なんです」

「「え?」」

ハモる岡野母娘。

「お隣って、ひょっとしてハラオウン…さん?」

「あ、はい。そうです。
 フェイト・テスタロッサ・ハラオウンと言います」

ぺこり、と頭を下げるフェイト。
みきは横で『やった〜〜〜!!』と大喜びしている。

「そっか〜そうだったのね〜。
 お隣さんが外国の方みたいだから、ちょっと不安だったんだけど…
貴女のような人で安心したわ。
――――フェイトさん、これから娘共々、よろしくお願いします」

「あ、いえ。こちらこそ……」

ぺこぺこと日本人特有の挨拶を交わす2人。
段々と近所のオバサンたちの井戸端会議のようになってきた。
大喜びしていたみきもそんな雰囲気に耐えかねたのか、

「ねーおかあさん。みき、もうあしがくたくた…」

「あぁ、ごめんね美樹。………っしょっと」

みきを背中に抱える秋子。

「それじゃあもう遅いし、そろそろお暇しようか?」

「…ぅ…ん」

みきは母の背に安心したのか、既に寝息をたてている。

「………あらあら。よっぽど疲れちゃったみたいね。
 まぁお昼から傍に居てやれなかった私が悪いんだけど」

自嘲気味に呟く秋子。

「……いえ。そのお陰と言っては失礼ですけど……
 みきちゃんと会えましたし、秋子さんには感謝してます」

フェイトが微妙なフォローをするが、フェイトの真意を掴んだのか秋子は穏やかな笑みを浮かべた。

「……そう。そう言って貰えると助かるわ」














―――翠屋閉店間際。

店内に客は数える程しかいない。


「―――それでは私はこれで失礼しますね。
 お店の方々にもご迷惑をお掛けしたみたいで」

そう言って恭也、美由希、なのはに目を向ける。

「いえ。お気になさらず。
 俺もみきちゃんと話して楽しかったですし」

「そうですよ。ロリコンの恭ちゃんからすれば、願ったり叶ったりな状況だった……あぅっ!?」

美由希が誠意の欠片も感じられないフォローをするが、当然それは恭也によって制裁を加えられた。

「………ほほぅ。貴様は兄をそのような目で見ていたわけだな?
 ついこの間まではシスコン呼ばわりしていたと記憶しているが、それはもう終わったのか?」

手を振り上げながら愛弟子に詰問する。

「だ、だって恭ちゃん、なのはにはいつまで経っても甘いし!
 私はいつまで経ってもイジメられるし!
今までシスコンと思ってたけど、それなら私にも優しくしてくれるはず……
だから今日からは違うんだよ!
恭ちゃんは自他共に認めるロリコふぎゃっ!!?」

手を振り下ろし、暴言を吐く弟子を力ずくで黙らせた師範代。
弱肉強食の世界で生きる彼らにとっては、ある意味正しい姿だ。

「……全く。滅多なことを言うもんじゃない。
 周りの人達が誤解したらどうするんだ?」

「誤解も何もそれは真実…イエ、ナンデモナイデス。
 デスノデソノニギリコブシヲシマッテイタダケナイデショウカ」

魔眼並みの睨みで義妹を黙らせる兄。
フェイトはいつものことだと、寝ているみきに視線を移した瞬間、秋子と目が合った。

「(´∀`)ニヤリ」

「!!!」

フェイトの全身を言いようの無い悪寒が襲う。
―――マズイ。
今、目の前の女性は一児の母ではない。悪魔だ。
何をするかはわからないが、今のうちに止めないと大変なことになるっ……!

しかし目の前の女性から

「(まぁまぁ、フェイトさんにとっても悪い話じゃないから、黙って見てなさいな♪)」

という声が聞こえた。
『悪い話じゃない』という所に惹かれたこともあるが、恐らく今の彼女には何を言っても無駄と思った事の方が強いだろう。







「―――さて、愛しい弟子よ。他に言うことはあるか?」

「うううぅぅ。あれだけ体罰を加えておいて今更弁解の余地を与えるなんて…
 シスコン・ロリコンに加えて、Sな一面まであうちっ!?!?」

「……ククク。今宵の八景は血に飢えておるわ……」

そういって懐から本当に愛刀・八景を取り出す恭也。
その顔はかなりイっちゃっててやヴぁい。

兄妹のやり取りがヒートアップしそうなのを止める意味でも、秋子はちょっとイタズラ心を含めて尋ねてみた。
ちなみに恭也が刀を持ってることに突っ込まない彼女も只者ではない。

「恭也君って、ロリコンなの?」

「違いますっ!」

全力で否定した。
今日初めて会った人にまで言われてしまった恭也はちょっと凹み気味だ。

「うーん、でも確かに美樹とは楽しそうに話してたし…
 それだとフェイトさんと仲良さそうなのも頷けるわね」

「……え?」

突然話を振られたフェイトは意味が分からずきょとん、としている。

「そうですよねー。
 あれだけ周りに綺麗所が揃ってるのに、恭ちゃんが話すのってなのは関係の人達ばかりじゃない?
特にアリサとフェイトには優しいし」

美由希は味方が出来たので嬉しそうだ。
『まぁアリサはある意味しょうがないかな』などとも言っている。

「そうなの?
 でもフェイトさんと…そのアリサちゃんって子も中一になったばかりよね?
 中学に入ったら多少は見方が変わるかも知れないけど、
 恭也君との年齢差を考えたら…これってどう見てもロリコ『違いますっ』……(ニヤソ」

恭也が秋子の発言を遮る。
その時の秋子は洋風喫茶店店長に勝るとも劣らないほど極悪な笑みを浮かべていたが、
恭也のロリコン疑惑でいっぱいいっぱいなフェイトは気付かなかった。

「違う……って、何が?」

わかってるくせに聞く。顔は当然ニヤけている。

「アリサもフェイトさんも……十分に大人です。
 確かに年齢こそまだ幼いかもしれない。
けれど俺は、2人が誰よりも素晴らしい女性だと分かってる。
あと数年もすれば、彼女達は今よりもっと素敵な女性になってるはずだ」

そう言って、つい熱弁してしまった自分に気付いた恭也は『コホン』と咳払いをして
テーブルにおいてあるアイス宇治茶をすすった。

「……つまり、恭也君は彼女達を大人として見てるから、ロリコンというカテゴリーには入らない、と?」

「えぇ…まぁ…。端的に言うとそうなりますが……」

「それでも世間はそう見てくれないけど……まぁロリコンっていう人はそういうものだって言うし」

「い、いや、だから…」

恭也=ロリコンの図式が離れない秋子に、なんとか考え直して欲しいと思う恭也だが

「恭也君」

不意に真剣になった秋子の声に押し黙った。
皆も突然変わった雰囲気に思わず秋子を見つめる。

「フェイトさん……そのアリサちゃんでもいいけど、仮にどちらかと貴方が恋人同士になったとするわ」

頷く恭也。

「君がどう思っていても、貴方達の年齢差は覆せない。
 それが原因で貴方も、その彼女も謂れのない中傷を受けることもあるでしょう」

「………」

「人一人の力では、"常識"という概念は覆せないと思うわ。
 その時の貴方を『世間』という『常識』で捉えた場合、誰が何と言おうともロリコンと呼ばれる人。
その自分を否定することは極端な話、今の彼女を愛してはいない、というのと同義ではないかしら?」

「………」

「それでも貴方は周囲の人に『自分はそうじゃない』と言い続ける?」

「……それは」

「今の君は、"今"の彼女達が好きなのにも関らず、彼女達を『無理矢理大人と見る』ことで、
 『ロリコン』というカテゴリーから自分を外そうとしている保身的な態度しか見えないわ。
 言い換えれば、彼女よりも世間体を気にしてるのよ」

「………っ!」

恭也は何も言えなかった。
秋子の言っていることは、己ですら気付いていなかった利己的な部分を的確に突いてきたからだ。

確かに自分は2人を大人と見ている。
しかしそれは秋子の言うように、世間体を気にした自らの保身のための方便ではないとは言い切れない。
事実、先程もそうだが、美由希たちからロリコン呼ばわりされる度、周りの人達の反応を第一に心配していた。


「『自分は彼女を大人の女性と見ている』とか
 『好きになった人がたまたま幼かった』とか、己の信念を貫くのも立派。
 でもそれは結局貴方の自己満足に過ぎないわ。
貴方は良くても、彼女もそれでいいとは限らないし」

「だから頭ごなしに否定するのだけはやめなさい。
 彼女を愛してる自分、特殊な趣味かもしれない自分、どちらも受け止めた上で彼女を愛せなければ
いつか必ず後悔するときが来るわ」

「…別にそういった嗜好がいい、なんて言うつもりはないのよ。
 やっぱり年齢差があると色んな所で摩擦が生じるでしょうし。
でも、それでも貴方が彼女を愛してると言うなら……
――――すべてをかけて……いいえ、全てを捨てる"覚悟"を以って、彼女を護りなさい」





――――護る。

今まで幾度となく使ってきた言葉。
しかしその意味を正しく理解していなかったようにも思える。

大切な人を護れる強さ――
それを追い求めて幼い頃から鍛錬に鍛錬を重ねてきた。
しかし、護るために死ぬという結果は結局の所自己満足に過ぎない。
護られた方にどれだけの重荷を背負わせてしまうか―――
そんなことは昔、父が姉的存在を護って逝ったときに自らが問い詰めたことではなかったか。

父が死んでから十数年。
いつの間にか御神の剣士として、いや、人間として大切なことを忘れていた気がする。
そしてそれを思い出させてくれた目の前の女性に深く感謝しなければならない。

「……ありがとうございます。
 お陰で………目が覚めました」

「そう?だったら良かったわ。
 偉そうな事言っても、所詮これもひとつの考え方に過ぎないからね。
『俺が好きなのは彼女だけで、幼い子全体が好きなわけじゃない』なんて言われたら、それはそれで解決するわけだし」

「……いえ、確かにそうかもしれませんが……結局の所、貴女がおっしゃりたかったのは
 そういったことを含めた上での『心構え』のお話。
例え状況は違っても、"覚悟"がなければ自己満足で終わってしまう―――そういうことでしょう」

そういう恭也を、よくできました、とまるで生徒を見るかのような目で見つめる秋子。
恭也もひとつ成長できた自分が嬉しいのか、どこかしら笑顔だ。

そんな秋子と、今は秋子の腕の中にいるみきを、フェイトはやはりこの二人は母娘なのだと思った。
先程もみきに言われた言葉。

『(みきはこどもだからよくわからないけど……きょうとかきのうとか、あんまりかんけいないとおもうんだ)』

この言葉も秋子と同じ考えを持ってるからこそ出てきたのであろう。
常識や世間体を気にしない、と言ってるわけではない。
周りの言葉に耳を貸さないだけでは、それはただの我侭、ただの自己満足だ。
秋子も言ったように、それを受け止める覚悟こそが必要なのだと。

自分も秋子に諭された恭也と同じように、夕刻、みきに教えてもらったが
もし、今日この二人に出会わなければ恭也と結ばれることは間違いなくなかっただろうと確信できる。

秋子が言った『悪い話ではない』というのは、終わってみれば今の自分に最も必要な話だった。
だからこそ感謝したい。


「(―――ありがとうございます―――)」


心の中でお礼を言う。
そんなフェイトに気付いたのか、秋子は軽くウィンクをしてみせ、

「(……それじゃ、あとはフェイトさん次第ね。がんばって〜♪)」

と、フェイトだけに聞こえるように耳打ちした。
どうやら恭也を好きであることは、既に見抜かれているようだ。












――――翠屋店内。

既に営業時間は終了し、店内に居るのは関係者のみとなっている。

「それじゃ、今度こそホントにお暇するわ。
 大分遅くなっちゃったし」

「………こちらこそ、貴重なお話、ありがとうございました。
 是非またいらしてください」

恭也が頭を下げる。

「ありがとう。美由希ちゃんになのはちゃんも付き合わせてゴメンね」

「「い、いえっ、そんなことないです」」

ハモる姉妹。
そんな中、美由希が続ける。

「私も……今まで恭ちゃんをロリコン、ロリコン言ってからかってましたけど………
 相手の気持ちも考えず、常識だけに捉われて……ホントはいけないことだったんですね」

「あ、それは違うわよ♪」

「「「「え?」」」」

「だって………誰が何と言おうとも恭也君はロリコンだし。
 これをからかわなくてどうするのよ?」

「「「「………」」」」

「ロリコンである恭也君は色々と頑張らなきゃいけないけど……
 そんなこと知らない私達は今まで通り、中傷を浴びせることが使命なのよ〜( ´∀`)ニヤニヤ」

「「「………」」」

恭也・フェイト・なのはが絶句する中、ただ一人美由希だけは違った反応を見せる。

「フ、フフ、フフフフフフ」

「お、お姉ちゃん?」

姉の豹変振りに引き攣る妹。

「そうだよね……ふふ。どんなに言い繕っても恭ちゃんがロリコンであることに変わりはないんだ……
 その上シスコンとまでなれば、これはもう"世の中"に恭ちゃんの味方は一人もいないってことだね……」

そう言って伝承刀・龍鱗を抜き放つ美由希。

「さぁ、恭ちゃん!今日こそお縄を頂戴しゲハァッ!」


 パタリ


「きょ、恭…ちゃん。秋子さ……んの話…を聞いてた……の…?」

「あぁ、聞いていた。
 俺は自他共に認める『シスコン』で『S』な奴だからな。
『周りの人達』に何を言われようとも受け止める"覚悟"があるので
遠慮なく、妹に暴力を振るったわけだ」

しかしそれは人間的な成長を果たした師範代によって沈黙させられた。
ちなみにシスコンとSは肯定してるが、ロリコンに関しては未だに認めていないようだ。

「そ、そんな……………ガクッ」

「ふっ。逝ったか……」

ピクリとも動かなくなった美由希を尻目に、恭也は平然とのたまう。

「……ところで秋子さん。夜ももう遅いですし……よろしければお送りいたしますよ」

「あら…そう?それじゃお願いしていいかしら。
 私も帰り道に自信がないし、ちょっと腕も疲れてきたから」

そう言って恭也にみきを背負ってもらう。

「フェイトさんも一緒にどうかしら。部屋もお隣なんでしょ?」

恭也と一緒に帰るという魅力的な提案ではあったが、
図らずとも翠屋の閉店時間になった今なら、桃子と話をする事ができるのでやんわりと断った。

「……あ、いえ。私はこちらの店長さんにお話があるので……」

「そうなの。じゃあ私は先に帰らせてもらうわ。また明日ね」

「はい」

「それじゃ。
 店長さんには会えなかったけど、よろしく言っておいてね」

そう言って翠屋を出て行く秋子と、それに付いて行く恭也。
店内は急に静かになってしまったので、なのはがフェイトに話しかける。

「フェイトちゃん」

「?」

「いい人達だったね」

「…うん」

本当にいい人達だった。
恭也への恋が実ったわけではないが、恩人とも言えるあの母娘にフェイトは尊敬の念すら抱いていた。




「……じゃあ、そーゆーわけでぇ〜」

不意に静寂が訪れた店内、なのはが突然軽快なノリで喋りだす。

「お待ちかね、翠屋従業員採用面接に行ってみよ〜〜♪」

「え、ちょ、ちょっと、なのは……!」


そうして翠屋次期店長に手をとられたフェイトは、奥にある事務所へと引き摺られて行った。








 第3話をお届けしました、幸のない物書き さっちんです。
???「また半端な……」
 まぁまぁ、それはもういいジャン?はっはっは。
???「だから威張るな!」ズビシッ!
 ぶもっ!?
???「更に言うならあの母親の名前は何よ?どこかで聞いたことあるような名前だし」
 いい名前が思いつかなかったから春夏秋冬の4択アミダで決めただけ。
???「な、なんていい加減な……」
 そもそもこの話、みきちゃんの行動でフェイト告白→ハッピーエンドで終了〜みたいな流れだったんだが
何を思ったか、突如もう一人の少女を参加させるハメになってしまったのだ。
母親が出てきたのもその辺が理由。この話がダラダラと続くのもその辺が理由。
???「……つまり、最初はフェイトひとりのつもりだったけれども、書いてる内にもう一人混ぜたくなったってわけ?」
 うむ。まぁもう一人ってのはバレバレだがな。
???「うーん、でも話の流れからしてフェイト中心の物語みたいだし、結局はフェイトENDなんでしょ?」
 ふっふっふ。そういう早合点は素人の意見よのぅ(扇子を仰いでいる
???「良いからとっとと言いなさい♪」
 ぐ、ぐるじい……お、お願いでずがら、ぐびをじめないで……
???「ほらほら。フェイト派のアンタがフェイトENDにしないなんて、ありえないこと言うからよ」
 ゲホゲホ……えーと、じ、実はまだ決まってないだけなんでsガハァッ!!?
???「うん?何か言った?フェイトENDなのよね〜〜?」(グリグリ
 だ、だからまだ検討ちゅゴフッ!?
???「早く吐けば楽になるわよ〜」
 (………………)
???「あらら。死んじゃったみたいね。それじゃまた次回〜♪」



※誤字脱字、設定ミス等ありましたらご連絡頂けると幸いです。





自他供にシスコンを認め、人として大きく成長した恭也。
美姫 「いや、それはどうなのかしら」
ともあれ、恭也にとってもフェイトにとっても秋子との出会いは悪くなかったはず。
美姫 「からかわれる知り合いが一人増えたけれどね」
まあ、それはそれだよ。
美姫 「さーて、フェイト以外にも誰かが参戦してくるみたいだけれど」
そっちも楽しみだよ〜。
美姫 「次回も楽しみにしてますね〜」
ではでは。



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