『真に守るべきモノ』
第一章「長き旅路の始まり」
〜数年後〜
「ふ、ああああぁぁぁ」
男が草原に寝転び、大きな欠伸をしながら空を見上げていた。
誰にも言うわけでもなく独り言を呟く。
当真大河。
赤の主にして救世主。
救世主戦争に終止符を打った人物でもある。
女好きと言う欠点を持っていたりもするが・・・・・。
「・・・・・・・あっと言う間に時間が過ぎるな。
平和って言えばそれまでなんだが、退屈というか何と言うか・・・・。
ちょっとした事件でも起きないかな??」
「・・・・あんたね、何物騒な事言ってんのよ」
横から凛とした声が響く。
目だけ向けると、赤い髪を伸ばしマントを羽織った女が視界に入る。
リリィ・シアフィールド。
世界最高の魔術師で、約千年前の救世主クラスにその名を連ねたミュリエル・シアフィールドの義娘であり、前回の救世主戦争を共に戦った仲間、救世主クラスの一人。
つり上がった目をしているが、大河の発言に呆れた目を向ける。
「平和なのは良い事じゃない。
未だに居る破滅のモンスターがワラワラ沸く状況でひたすら戦いたいって言うの?」
「・・・・・・・それは何と言うか、嫌な状況だな」
「・・・・・そうね、自分で言って失敗したと思ったわ」
救世主戦争が終わったすぐ、他の仲間達と国中を飛び回り残存する破滅のモンスターを消滅させる日々を過ごしたらしい。
だが、それもこの一、二年少なくなりつつようだ。
正確には大河が帰ってきた辺りからであるが・・・・。
「まぁ、平和なのが一番ってのは納得なんだが・・・・・」
「が?」
「やっぱりどうも落ち着かん」
「・・・・・あんた、戦闘狂になったんじゃない?」
呆れを通り越して、かなり引き気味のリリィに大河は反論を加えようとしたが・・・・。
「師匠〜〜〜〜、リリィ殿〜〜〜〜」
声がそれをかき消し、忍の格好をした緑のショートヘアの女が走ってきた。
ヒイラギ・カエデ。
大河を師匠と慕い、血が苦手というトラウマを持っていた忍者で、同じく救世主クラスの一人。
何かと伝達に使われる事が多いのだが本人はあまり気にしていないようだ。
「ふぅ、未亜殿に聞くとここじゃないかと聞いたので来て見れば・・・・・・・・・。
リリィ殿、抜け駆けはずるいでござる!」
「はぁっ!?何よ抜け駆けって!?」
「だって、師匠と二人っきりでござるよ??
師匠の事だから、あ〜んな事やこ〜んな事するかもでござる」
「なっ!?何でこんなやつと!!」
(本人の目の前で『こんなヤツ』はないだろ?)
カエデの発言に一気に顔を赤らめるリリィを見ながら、大河は静かにツッコむ。
ここで、リリィが反論し出すと中々止まらなくなるので大河がカエデに声をかける。
「で、カエデ。
何かあって呼びに来たんじゃないか?」
「ちょっと、まだ話が・・・・・・・」
「あ、そうでござった」
ものの見事にリリィの発言権は剥奪される。
カエデが少し顔つきを真剣なものへと変える。
「師匠、リリィ殿。
救世主クラスに緊急の収集が掛かったでござる。
すぐに宮殿へ向かうでござるよ」
ここで初めて大河が体を起こし、カエデへと体を向ける。
「緊急の収集?
何でまた・・・・」
「それはわからんでござる。
とにかく、全員集合との事でござる」
「ふ〜、仕方ない。
あんまり遅いとクレアが怒りそうだ」
立ち上がり、宮殿へと足を進める。
カエデもそれに続く。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ」
「緊急事態って事で断る」
「あ、あんたねぇ〜。
こんな時だけ、都合の良い理由を向けるな!」
リリィの反論を無視して、大河とカエデは宮殿へと向かう。
このまま立ち尽くすのも何なので、リリィも大河達を追いようとしたがすぐに立ち止まる。
(・・・・・・・・・?)
僅かに、違和感を感じる。
本当に僅かな違和感。
が、それも今では感じなくなっている。
(・・・・・・何?何か凄く後ろ髪を引かれる。
視線・・・・・じゃないわね。魔力?)
些細な出来事かもしれないそれに、リリィは中々足を前へと運べずにいる。
だが、それを調べる術が無いのではどうしようもないと悟ると、すぐに宮殿へと足を進めるのであった。
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ギィィ
「失礼します」
声を掛けながら、自分の身長より大きいドアが開く。
赤い絨毯が敷き詰められ、天井にはシャンデリア。
そして、一体何人の人間が入れるんだとばかりの広さの部屋。
王族の宮殿なのだからと言うとそれまでだが、普通では想像出来ない広さの部屋だった。
その中には資料を見ている女性と、その足元に服を引っ張っている男の子がいた。
「ね、ね、母上、遊ぼ、遊ぼ」
男の子は仕事をしている母にじゃれ付く。
母上と呼ばれた女性、クレシーダ・バーンフリート。
根の国『アヴァター』で最高位に君臨する女性は真剣に資料に目を向けていたが、目線を息子へと移し諭すように話しかける。
前回の救世主戦争での容姿からは想像も付かない程大人びており、すでに女性としての魅力と母としての飽和、そして女王としての貫禄をかもし出していた。
「すまぬな、タイガ。
まだ母は仕事が終わっておらぬ。
だから、暫くダリアと遊んで・・・・・って、ダリアと遊んでおったのではなかったのか??」
「うん、遊んでたよ。
でも、ダリア面白くないんだもん。
だから逃げてきた」
(・・・・・ダリアよ。乳母の役割を果たして欲しいものだな・・・・・・・)
ここに居ない、自分の部下に軽く悪態をつく。
が、さすがに自分の息子を無下には出来ないので仕方なく相手をしようとしたが・・・・・。
「じゃ、私達と遊ぼうか?タイガ君」
不意に、正確には先程入ってきた者がタイガに声をかける。
「未亜おねえちゃん、ルビナスおねえちゃん」
黒い髪と白い髪の女性が二人。
黒い髪の女性は当真未亜。
救世主クラスの一人で大河の義妹にあたる。
白の主、破滅側の救世主であったが最後まで破滅には付かず、白の力を発現させて仲間と共に戦った。
白い髪の女性はルビナス・フローリアス。
前回の救世主戦争と、約千年前の救世主戦争の救世主クラスであり、元赤の主。
大河の一つ前の赤の主である。
千年前の救世主戦争で死した自分を前の戦争での折、ホムンクルス体へと転生し現在を生きている。
声をかけた未亜に飛びつくタイガ。
未亜には相当懐いており、このままダリアの代わりに乳母となって欲しいと思う事もしばしある。
が、やはり救世主クラスの人間を留めるより他の方法がある故にそれを頼めないでいた。
「すまぬな、未亜。
皆が揃うまで頼んでよいか?」
「うん、全然オッケーだよクレアちゃん。あ、女王様」
「無理に変えずともよいと言ったぞ?未亜。
同じ男を好きな者同士、遠慮はいらんと言っただろうに・・・・・・・」
「あ、うん。
分かってはいるんだけど何かつい・・・・・・」
バツが悪そうに未亜はクレアを視線から切り、タイガへと向ける。
横でルビナスが可笑しそうに静かに笑いながら口を開いた。
「仕方ありませんよ、陛下。
もともと身分の高い人には反射的に敬語になってしまうものです」
「そうかもしれんが、今までのようにしてくれるとこっちとしては有り難いんだがの・・・。
それに、それを言うならそなたはもっと地位が高いではないか?」
「あら、私はしがない救世主候補ですよ♪」
「・・・・・・『しがない』って一体どんなんだよ?」
自分達では無い声が聞こえ、四人は扉へと顔を向け、声の主を見る。
ドアから少し入ってルビナスの言葉に軽いツッコミが入る。
「お兄ちゃん」
「大河君」
「大河」
三人はそれぞれ大河に気づく。
タイガが見つけると、とても嬉しそうな声で呼んだ。
「パパ!」
「お?タイガ、いい子にしてたか??」
「うん!」
「よしよし」
タイガの頭に手を乗せ、撫でている姿は父親のそれだ。
救世主戦争で結ばれた大河とクレアの間に生まれた子、それがタイガであった。
だが、その戦争中に神を追い異次元へと行った大河は生まれてすぐの我が子を抱いていない。
今は子供との関わりをより多く持つようにしている為、タイガもすぐに懐いたようだ。
そして、優しい目で我が子を見ながら話しかける。
「何してたんだ?」
「あのね、未亜おねえちゃんと遊んでもらうところだったんだよ」
「そうかそうか、未亜おばさんと・・・・・」
バチンッ
「いってぇぇえぇ!!」
大河の言葉を遮るかのように、甲高い音が響き大河が叫ぶ。
いつの間にか、大河の横に立って召喚器を手にして横に立っている未亜。
「あれ?どうしたのお兄ちゃん?
いきなり大声出してビックリするじゃない」
「・・・・・・・っっっう、み、未亜?
お、お前今何で殴った??」
「え?私何にもしてないよ?
気のせいじゃない?」
「いや、ジャスティを出して真横に居る時点で既に説得力無いんだが・・・・・」
「あ、いつの間に出てきたのジャスティ?」
あまりにも堂々とした嘘に大河は勿論、クレアもルビナスもカエデも苦笑するしかない。
二人のやり取りが始まったところでタイガは母の足元に来ており、カエデもクレアとルビナスの横へと移っている。
兄妹のこの行為も二日に一度の割合であり、巻き込まれない為に避難する。
「相変わらず恐ろしい速さで攻撃するでござるな、未亜殿は・・・・・」
「そうね、殺気を感じさせずに一瞬で召喚器を手に握って大河君を叩いてるものね。
並みの速さじゃ無いわ」
「・・・・大河もよく飽きもせず未亜をからかうのが好きじゃのぅ。
いい加減学習しても良いじゃろうに・・・」
「師匠の場合は分かっていてやってるでござるが・・・」
「「「はぁ」」」
小声で話しながら三者三様に溜息をつく。
未亜は『おばさん』と呼ばれるのを嫌う。
実際、タイガからすれば叔母なのだがやはり年齢的に言われるのが嫌みたいだ。
なので、タイガにも『おねえちゃん』と呼ばせている。
最初はタイガも『おばさん』と言いかけたが、大河が先に未亜を『おばさん』と呼び、その後のやり取りを見て『おねえちゃん』と呼ぶように子供ながらに心がけている。
もし、大河が先走らなければ一生のトラウマを抱える事になったのではなかろうか?
大河はそれを予見したのかその役を自分から買って出たのか、はてさて・・・・。
未亜と大河の応酬はそれから暫く続き、終わった頃にはルビナス、カエデ、いつの間にか部屋へと入って来ていたリリィがタイガの相手をし、クレアは先程の資料を真剣な表情で読んでいる。
一度、召集をかけているいるので再確認の意味を込めて読み返しているのである。
さすがにいつまでの続けても仕方がないので、未亜と大河どちらからとも無く切り上げる。
「すいません、遅くなりました」
入り口から青と白の修道服を着た眼鏡をかけた女性と、小柄な女の子が二人。
修道服の女性はベリオ・トロープ。
大河達と同じく救世主クラスの一人。
過去、ブラックパピヨンと言う人格が存在していたが今では統合されている。
僧侶であるが幽霊などが苦手という一面を持つ。
小柄の女の子は黒を基調としているのはイムニティ、白を基調としているのはリコ・リスである。
イムニティは、元破滅の将。
破滅側で白の書の精であった。
白の主であった未亜とは今でも主従関係にあり、未亜をマスターと呼ぶ。
現在は大河に力を抜かれ、普通の人間として生きている。
が、もともとのポテンシャルの高さから人間としても救世主クラスと渡り合える力を持っている。
リコ・リスは救世主クラスであり、赤の書の精であった。
イムニティと同じく大河により力を抜かれ、人間として生きているが力は備わったままである。
リコは大河をマスターと呼んでいる。
「遅くなりました」
「・・・・・・・・」
リコは謝罪を述べ、イムニティは黙ったままである。
入り口から入ってきた者達に視線を上げ、クレアは声をかけた。
「よい、これで全員揃ったな」
顔を見回し改めて全員が居るのを確認する。
「ああ。
で、一体何があったんだクレア?
救世主クラス全員を集合させるって事はそれなりの事件か何かが起きたって事だろ?」
「その通りじゃ、大河。
実はここ最近、王家直属の魔術師達が妙な報告をしてきておる」
「妙な報告?」
「ええ、そうよ。」
クレアからでは無く、別の声が響く。
声がした方向を見ると、自分達が師事し今ではクレアの片腕として国を支える女性の姿があった。
ミュリエル・シアフィールドである。
「お義母さま・・・」
「実はその報告は私もしたの。
ここ最近、違和感のようなものを感じるとね」
「それは魔術的な何かって事ですか?」
「その可能性は高いであろうな。
今の所、魔力を持つ者からの報告ばかりじゃからな。
大河は何も感じんのか?」
「いや、何も感じない」
「そうか・・・・・」
「その違和感、さっき私も感じました。
視線かとも思いましたが・・・・・・」
リリィはさっき感じたものを報告する。
それを聞いたミュリエルは難しい顔をし、クレアへと向く。
「・・・・・・・・リリィまで感じたと言う事はもう『何か』があると考えるべきですね」
「そうじゃな。
気鬱であって欲しかったのじゃが・・・・」
「あの・・・・いいでしょうか?」
クレアが続けようとしたが、ベリオが遮る形で意見を述べた。
「実は、その事で私達も女王様に報告しようと思ってたんです」
「ふむ。
何か気づいた事でもあったのか?」
「気づいたと言うよりも、調べてきたわ」
「イムちゃん?」
未亜が疑問の表情をし、クレアはすぐにイムニティへと視線を向ける。
「何かわかったのか?」
「ええ」
得意そうに、それでいて真剣に難しい顔をし説明を始める。
「まず『違和感』って言うのは、私とリコの結論として『次元の乱れ』よ」
「『次元の乱れ』?」
「そう。
数日前、私は『違和感』では無く『危機感』を感じたわ。
勿論、女王様が言った通り気鬱の可能性もあった。
でもどうしても私は見逃せなかったの。
それで、癪だけどリコに協力を頼んで調べる事にしたの」
「召喚士の私達には少し感じ方が違ったんです。
でも、今の私達は普通の人間です。
長時間の調査は難しい。
ですから、ベリオさんに頼んで魔力を分けてもらいながら調査を進めました」
リコが続けて説明をする。
「『次元の乱れ』はアヴァターの各地で確認されました。
ですが、普通の人には感知されない事からこの現象は召喚士によるものだと思います」
「・・・・・・ちょっと待ってよ。
アヴァター全土でそんな事起こす事出来るわけないじゃない!」
「確かに、普通は無理ね。
でも普通じゃ無ければ出来るって事よ」
「なっ!?」
「なんじゃと!?」
「さらに言えば、アヴァターだけに留まっていません。
恐らく、アヴァターを根とする『木』の世界全てで起こっていると思われます」
「そ、そんな大規模に事を起こせるのって・・・・」
「・・・・神か」
大河の言葉に全員が視線を集める。
だが、一番信じられないのは当の本人だ。
あの時、間違いなく倒す事に成功した存在。
それが月日を経て復活したかも知れない。
が、それに対し今度は大河が別の『違和感』を感じていた。
「・・・正直マスターが倒されたと言われるので信じられないのですが、可能性は無くは無いと思います」
「でも、わからないの。
生き返っていたら、間違いなく大河が気付くでしょう?
けど、大河は気付いていない。
いくらバカでも見過ごす事はしないはずだし・・・・」
「言ってろ。
だが、可能性が無いわけじゃないんだ。
一度向こうの次元に見に行った方がいいな」
「無理なんじゃないかしら?
『次元の乱れ』って事は次元が不安定って事でしょ?
すんなり向こうへ行けると思えないわ」
ルビナスによる的確な発言。
が、イムニティがそれを否定する。
「そうでもないわ。
確かに、次元は乱れているけど一度作った道を通る事は難しいことじゃない。
土砂が道を塞ぐならそれを退ければ良いだけ・・・」
「成る程。
それなら通れるでござるな」
「幸い、召喚士も二人居るし大河一人を向こうに送るのはそれほど難しくは無いはずよ」
「それなら早速行くか」
「それは出来ないよ・・・」
声が響く。
甲高い、透き通るような声。
「誰だ!?」
部屋の隅に魔方陣が出来、光に包まれる。
目が眩むが、少しずつ光が薄れ目を開くことが出来るようになる。
見ると桃色の髪が流れるように靡き、黄色い澄み切った瞳を持つ青年が立っている。
綺麗な顔立ちに細い体の美青年である。
「何者じゃ!?」
「初めまして、クレシーダ女王様。
僕はイース。イース・ターカクタス。
他にもストケシアやアキレア、フロックス、アンモビウムって言うのもいる。
それと、今話し合ってた『次元の乱れ』は僕の仕事だよ」
「な、なんじゃと?」
「と、言う事はお主は破滅でござるか!?」
「違うよ。
破滅なんて必要無い」
「でもアンタは、『次元の乱れ』は自分の仕事と言ったわ」
「そうだよ、あれは僕の仕事だ」
「では召喚士なのですね?」
リコがほぼ確信を得た問いをぶつける。
が、青年はそれを見事に粉砕した。
「それも違うよ。
僕は召喚士じゃない」
「『次元の乱れ』がお主の仕業である事はわかった。
だが、何故こんな事が出来る??
破滅でも無く召喚士でも無い主の目的は一体なんだというのだ!?」
「それは・・・・・」
「俺達を倒す為・・・・いや、世界を作り直す為か」
大河へと全員が向く。
大河はイースと名乗った青年をじっと見る。
「お前が現れてから感じた事のある空気に成った。
他でも無い、神だ。
あの空気をを持つようなヤツだ。
大方、目的も同じって事だろう?」
「・・・・・・うん、半分正解」
「半分だと?」
青年――イースが目を一度閉じ、改めて開くとその場に居る全員が戦慄した。
先程と違い、あまりにも冷たい目で視線を送ってきているからだ。
対等に見るのでは無い。
遥か高みから弱者を見下ろす冷たい目。
「そう、半分。
結論とするなら、君の答えで合ってるんだよ、当真大河。
だけど過程では間違いになる。
だって君達を倒すのと、世界を滅ぼす喜びが今の僕にはあるからね」
「喜びだと?」
「神は救世主を使って根を滅ぼし世界を造り替えようとした。
でも、僕は違うんだ。
代わりを用意しない、自分で手を振るう。
そして、根を滅ぼすのは最後。
葉から全部滅ぼしていこうと思ってね」
「なっなんですって!?」
あまりにも子供染みた答えにミュリエルは目を見開く。
非効率極まりない行為。
だが、彼は本気でそれを行おうとしている。
「効率は悪いけど、せっかく持つことができた自我だからね。
有効に使わせてもらおうと思うんだ、当真大河」
「何?」
「神はもともと自我を持ち合わせちゃいなかったんだ。
でも、君に殺されたおかげで感情が生まれ、僕が生まれた。
そう言う意味では君に感謝しているんだ。
なんせ君に殺されないと生まれて来なかったんだから」
「自我を持っていると言うのなら、命の大切さは分かるのではござらんか!!」
「そうだよ、世界だってとても綺麗で素敵なのにそれを滅ぼそうと言うの!?」
「神と言うのなら、命を、世界を滅ぼす権利など無いと分かるのではないですか??」
「・・・・・何を言ってるんだ君達は?
神の言う事を聞かない世界なんて必要ないじゃないか・・・・」
「んな!?」
「説得のつもりだったのかもしれないけど、無駄だよ?
僕はイースとして存在しているけど基本は神。
世界を造り替えるって言う基盤に揺らぎは無いからね」
自我を持つ者ならば、無益な争いは防げると考えての発言。
しかし、それは傲慢な神を露見する事となる。
救世主戦争で倒した神、それの生まれ変わりになるイース。
自我を持つ神は狡猾で残忍であり滅亡を望む者だった。
「そんな事と思ったぜ」
大河は予想しており、すぐさま召還器を手元に出す。
その姿に、救世主クラスは全員が臨戦態勢を取った。
「クレア!
タイガを連れてここから離れろ。
学園長、クレアを頼む」
「イムちゃん!
クレアちゃん達をお願い」
「わかりました、マスター」
クレア達を離脱させ、その護衛をミュリエル、イムニティにそれぞれ頼む。
横目で見送り、イースへと改めて対峙する。
「さあ、始めようか」
「こいつの発言にムカムカしていたのよ、出てきてすぐで悪いけど消えてもらうわ!」
「あのような悲劇を繰り返させません!」
「・・・・ふぅ。
そう、構えなくてもいいのに。
僕の目的は『次元の乱れ』だって言ったでしょ?」
「何だと?」
疑問の目を向けるとイースが手を振り上げる。
その瞬間、大河達の足元に高速で線が走る。
「な、なに?」
「なんなんでござる??」
「こ、これは?」
「魔方陣・・・・!?」
「違う、これは・・・・召喚陣。
・・・まさか!?」
それぞれの驚きの中、リコは召喚陣の正体へと気付く。
リコが顔を召喚陣からイースへと向けるとイースは得意げな顔をする。
「そう、そのまさかだよ元白の精。
君達を逆召喚させてもらうよ」
「なんですって!?」
キッっとリリィの目が驚きを含みつつも、イースへと鋭い眼差しを向ける。
勿論、このまま思い通りに進ませない為に攻撃を開始しようとするが次への動作へと起こすことが出来ないでいる救世主クラスの面々。
それを確認した上でか、イースが言葉を続ける。
「もともと、『次元の乱れ』は君達の為に行ってたのさ。
この世界で一番の力を持つ君達は正直邪魔なんだ。
だから、別の世界で君達を滅ぼそうと言う結論に達したんだ」
「く、体が動かない・・・」
「ああ、さっき召喚陣に目が向いた隙に全員の動きを止めさせてもらったからね」
皆の異変に気付いたクレア達が部屋を出ずに振り返った。
その光景は誰一人身動きできず、危機を迎える姿。
居ても立ってもいられず、名を叫びながら駆け寄ろうとする。
「大河!!」
「来るな、クレア!
こっちに来たらお前まで逆召喚に巻き込まれる。」
大河の静止にクレアは立ち止まる。
が、それでも止まる事を拒絶するかのように言葉を紡ぐ。
「しかし!!」
「いいか? 俺達は必ず帰ってくる。
だからそれまでこの世界を、アヴァターを頼む」
もう、間に合わない。
悟っている大河はクレアに自分の不在を任せるしかない。
それを理解したか、未亜、リリィが大河の言葉に繋げる。
「イムちゃん、クレアちゃん達をお願い」
「お義母さま、あとは頼みます」
それぞれが、それぞれ後を任せるべき人へ。
信じている人へと言葉を投げかけ、それを最後に部屋が眩い光に包まれ晴れた時には救世主クラスの姿は無かった。
部屋を見渡すが、イースの姿も無い。
「・・・マスター、ご武運を」
「・・・・・気をつけて、リリィ」
もうこの場に居ない主へと義娘へと言葉を呟く。
残されたクレアは傍らに居るタイガを抱きしめ、大河達が帰って来る場所を守る決意する。
「ミュリエル!全軍に緊急指令!
新たな敵勢力を迎え撃つ為の軍の再編、次元の乱れの調査。
以上を最優先事項として通達しろ!」
第二章へ続く
〜*あとがき 一章編*〜
ぜぇ、ぜぇ、こ、ここまでくれば大丈夫なはず。
はい、どもです。
いきなり見ず知らずの女性に刀を持って追い掛け回されたルシファーでございます。
今回は第一章。
Duel Saviroの面々がアヴァターを追い出されてしまいました。
・・・・・・まぁ、こうしないと他の面々とクロスできそうに無かったってのが本音(苦笑)
更に強引なオリキャラの登場。
この辺りがいきなり自分の文才の無さが露呈。
???:まぁ、そうでしょうね。
貴方は基本的に行き当たりばったりの人だもんね。
うんうん。
・・・・・・・ん?
???:で、遺言はもう済んだかしら?
・・・・・・・・・・・・い、いやぁ、まだ若いし、そうそう人生に終止符は打ちたくないなぁと思うのは私のワガママかな??
???:うん、わがまま。
((((;゚o゚))))ガクガクブルブル
???:取り合えず、書くんでしょ?
え?
???:だからSSをよ。
今度はちゃんと書くんでしょ?
も、勿論!
頑張って書くに決まってるじゃないか!
???:・・・なら今回は許してあげるから、頑張って書きなさい。
おおおおおお!!!!神様仏様AYU様〜〜。
ありがとうございます〜。
AYU:しかも、メチャクチャどさくさに私の名前暴露してるし。
コホン、私AYUと言います。
ルシファーが頼りない分、私が色々とフォロー等をまかされておりますので、この人共々よろしくお願いします。
完全に自己紹介あとがきになってしまったが、まぁ、気にしてはダメだ、うん。
AYU:いや気にしなさいよ。
って言っても始まらないか。
ともかく今回はこれまでって事で。
ではでは〜(^^)ノシ
おお、行き成りラスボスの登場。
美姫 「しかも、大河たちは異世界へと飛ばされて」
一体、これからどうなっていくのか。
美姫 「続きがとても楽しみね」
次回も待っています。
美姫 「待ってますね〜」