『リング』




         ニーベルングの血脈  第二章


 暫くその好きでない仕事をやる羽目になった。ジークムントは悶々とした日々を送っていたがやがてそれも終わる時が
来た。その探していた者が向こうからやって来たのである。
「来たのか」
「はい」
 ヴィントガッセンが答える。
「今軍港に来られています」
「よし、じゃあ今から行こう」
「いえ、それには及ばないそうです」
「?どうしてだ?」
「あちらから来られるそうで。司令はここで待っていて欲しいとのことです」
「何だよ、律儀な奴だな」
 それを聞いて半ばあげていた腰をまた沈めた。
「折角こっちから来るってのによ」
「まあ急ぎの話でもないので落ち着かれてよいかと」
 ヴィントガッセンは彼を宥めるようにして言った。
「その間にこちらでも会見の準備をしておきますので」
「ああ、頼むぜ」
 ジークムントは言った。そしてここは大人しく待つことにしたのであった。
「それでは」
「おう」
 ヴィントガッセンは退室した。そしてジークムントだけが部屋に残ることになった。彼は一人になったのを確かめるとふと呟いた。
「まさか向こうから来るなんてな」
 彼にとってはいささか計算外のことであった。
「まあいいか。だったらじっくりと話を聞いてやるぜ」
 しかしここで考えを転換させた。そしてこう思うことにした。やがて向こうが到着したとの報告があり、彼は会見の場に赴くことになった。
「おう、ようこそ」
 会見の間でまずはいつもの様に飾らない挨拶を送った。
「この辺りの宙域の司令官をやってるジークムントだ」
「ジークムント=フォン=ヴェルズング司令官ですね」
「ああ」
 彼は黄色い髪に金属で出来た重厚な服を身に纏った男に言葉を返した。見れば如何にも正体不明といった感じの男であった。だがジークムントには彼が何者か、少なくとも名前だけはわかっていた。
「パルジファル=モンサルヴァートだったな」
「はい」
 その男、パルジファルは答えた。
「その通りです」
「話は少しだが聞いてるぜ。武器商人だってな」
「はい」
 パルジファルはまた答えた。
「その通りです」
「しかも帝国に反抗する奴にだけ武器を売る。それはどういうことなんだ?」
「私もまた帝国と対立する立場にあるからです」
 それが彼の答えであった。これまでと同じように感情の見られない声であった。
「それはまたどうしてだ?」
 ジークムントはそれに問うた。
「それは」
「まずは座ってから話をしようか」
 二人は立ったままであった。ジークムントはそれに気付き彼に座るように勧めたのだ。その方が話もし易いからだ。
「わかりました。では御言葉に甘えて」
「おう、じゃあな」
 二人は同時に椅子に座った。パルジファルはそのままの態勢で手を両膝に拳を作って置き、ジークムントは足を組んで座った。それから話を再開した。
「で、何で帝国と対立しているんだ?」
 ジークムントは先程の問いをまた繰り返した。
「俺達みたいに元々あのニーベルングの奴等と対立していたわけでも連中のやり方と合わないってことか?」
「ニーベルングの統治に従えないのは事実です」
 彼は答えた。
「ですが他にも私が帝国と対立する理由はあります」
「それは何だ?」
「それは今思い出している最中です」
「最中!?ああ、そうだったな」
 ジークムントはここで彼に関するデータを思い出していた。
「あんたは、記憶をなくしているんだったな」
「はい」
「それは。戻ってきているかい?」
「少しずつですが」
 彼は答えた。
「戻ってはきています」
「そうか、それはよかったな」
「ですがそれは私の記憶ではありません」
「!?どういうことだ、それは」
「私が生まれる遥か前、宇宙創造からの記憶が甦ってきているのです」
 パルジファルはまるで何かを見るような声で語った。
「それは常に、そして少しずつ蓄積されています。私に何かを教えるかのように」
「何か大変みたいだな」
 途方もない話であったがジークムントはそれを信じる気になれた。どういうわけか彼の言葉には妙な説得力があったのである。
「いえ、それがそうでもないのです」
「何故だ?」
「これが。私の運命であるような気がするからです」
 彼はまた語った。
「運命か」
「はい、それが私の運命だと」
「また途方もない運命だな」
 ジークムントは眉を少し顰めさせた。
「宇宙が出来た頃からの記憶を背負い込むなんてよ」
「ですがそこでわかったことがあります」
「何だ?」
「私達の運命もです。そう、貴方の運命も」
「俺の運命もか」
「ジークムント=フォン=ヴェルズング提督」
 パルジファルは彼の名を呼んだ。
「ああ」
「貴方はこれから大きな戦いを乗り越えられることでしょう」
「戦いをか」
「はい、そしてその後で大きな巡り合いがあります。そして」
「そして!?」
「また私と出会われることでしょう」
「俺とか」
「はい」
 彼は答えた。
「そこには貴方だけではありません。他の方々もおられます」
「まさかと思うがローエングリン司令でもいるとかじゃねえよな」
「彼もおられます」
「おいおい、本当かよ」
 それを聞いて思わず苦笑せざるを得なかった。
「またあの司令と一緒になるのかよ」
 上司と部下の関係であるがそれ以上に固い絆で結ばれた親友であった。彼とローエングリンは互いを認め合う仲だったのである。
「それが運命ですから」
 パルジファルはまた言った。
「そして。私とも」
「とにかくあんたとはまた出会うことになるんだな」
「はい」
 彼は答えた。
「運命がそう教えています」
「わかった、じゃあまたその時会おうぜ」
 ジークムントはそこまで聞いて言った。
「その運命ってやつが本当ならな。俺達はまた出会うのか」
「そして帝国と戦うのです」
「それじゃあ俺はその帝国を倒してやるぜ。いいな」
「はい」
 パルジファルはまた頷いた。
「その時は。私も一緒です。ですが」
「ですが。何だ?」
「運命は。貴方に苦難を課すことになるでしょう。それでも宜しいでしょうか」
「苦難!?上等だぜ」
 だが彼はそれに構うことはなかった。胸を張りこう返したのであった。
「そんなの怖くて帝国を向こうに回せるかよ」
 その声に迷いはなかった。
「メーロトの奴だろうが誰だろうが倒してやるぜ」
「そうですか」
「ああ。帝国の奴等は一人残らずな。この手でまとめて倒してやる、それが俺の戦いだ」
「では御自身の道をお進み下さい」
 口調によっては皮肉に思えるがこの時のパルジファルの口調は穏やかでありそうではなかった。
「そしてまた御会いしましょう」
「おう、またな」
 ジークムントは豪快な声を返した。
「何なら食事でも付き合うか」
「いえ、そこまでは」
「遠慮する必要はないぜ。どうせ軍隊のまずい食事だ」
 彼は食事に関しては無頓着な方であった。美食よりも量さえあればよかった。味に五月蝿くはないのは彼自身もわかっていることであった。そしてそれを恥じることもなかった。
「どうだい、一緒に」
「いずれ御一緒することになりますが」
 パルジファルはジークムントの豪快な言葉に対して丁寧な口調で言葉を返した。
「それでも宜しいでしょうか」
「構わないぜ」
 ジークムントは特に考えることもなく返した。
「先に食べてもな。罰は当たらないだろう」
「それでしたら」
 パルジファルも受けることにした。
「御一緒させて頂きます」
「おう、一緒にやろうぜ」
 こうして二人は食事を共にすることになった。食事自体はすぐに終わり何のトラブルもさしたる情報もなかった。二人は別れの杯を交わした後で別れた。この際ジークムントは彼から多量の新型艦艇を購入していた。
「またかなりの数の新型艦艇ですな」
「そうだな」
 ジークムントはメルヒオールの言葉に頷いた。既にパルジファルは去り、何処かへと立ち去っていた。
「これだけの数があれば艦隊が三つは作れます」
「だがそれだけでは駄目だな」
 しかしジークムントの言葉は楽観したものではなかった。
「戦争ってのはな、兵器だけでするもんじゃねえ」
「戦略及び戦術と」
「兵隊でやるもんだ。いい兵隊はまだまだ少ない」
「はい」
「俺の戦術について来れる兵隊が必要なんだ。いいな」
「といいますと精鋭を」
「そうだ、大勢いても何もならねえからな」
「わかりました。それでは」
 メルヒオールは頷いた。
「将兵の訓練も。合わせて行いましょう」
「頼むぜ、当分一個艦隊で防がなくちゃならねえからな」
「はい」
「その間に兵を整えてくれ。いいな」
「畏まりました」
 最後に敬礼で応えた。こうして新兵の訓練も合わせて行われた。ジークムントは全てを整えるまで決して動こうとはしなかった。そしてその間に兵を整えていたのであった。
 それから暫く経った。彼の手許には周辺星系と四個艦隊が手に入っていたのであった。
「さてと」
 彼は執務室でその四個艦隊のデータに目を通していた。
「いよいよだな。準備はいいか」
「はい」
 そこには参謀達だけでなく彼の配下の主立ったスタッフ達が集まっていた。皆ジークムントの前に整列している。
「いよいよ俺達が動く時が来た。この四個艦隊でな」
「四個艦隊で」
「まず一個はブレーメン及び周辺星系の防衛にあたってくれ」
「その指揮官は」
「コロ」
「はい」
 部下の一人の名を呼んだ。
「御前が頼む」
「わかりました」
 コロと呼ばれた若い提督がそれに応えた。
「そして残りの三つの艦隊の提督は俺と共に遠征に向かう」
「遠征に」
「そうだ。その司令官はホフマン、ヴィッカーズ、そしてイェルザレムの三人だ」
「我々ですか」
「頼むぞ。御前等にかなりの部分がかかっている」
「わかりました、では」
 三人はその言葉に頷いた。
「必ずや御期待に」
「そして参謀はこれまで通りヴィントガッセンとメルヒオールが務めてくれ」
「はっ」
「畏まりました」
 二人はそれを受けて敬礼する。
「主要なスタッフはそれでいく。異存はないな」
「はい」
 彼等はそれに頷いた。皆特にそれで異存はなかった。
「明朝出撃するぞ。それに備えて英気を養っておけ。いいな」
「了解」
 こうして彼等は一旦解散した。そしてジークムントは一人執務室に残っていた。だがここで彼の部屋に何者かが入って来たのであった。
「ああ、あんたか」
 それは執政官のボードレールであった。彼はにこやかな笑みを浮かべてジークムントの前にやって来た。
「明日出発されるのですね」
「知っているのか」
「艦艇の動きを見れば」
 そのにこやかな笑みを浮かべる目に光が宿っていた。
「おおよそのことは察しがつきます」
「そうか、鋭いな」
「鋭くなくてはこの時代は生き抜けませんので」
 彼はしれっとした声で返した。
「違いますかな」
「俺をここに迎えてくれたのもそれか」
「さて」
 だがまずはとぼけてきた。
「何のことやら」
「まあいいさ。お互い持ちつ持たれつだ」
 ジークムントの方でもそれを咎めるつもりはなかった。
「そうじゃないのか」
「政治的にはそうですな」
 それはボードレールの方でも認めた。
「ですが人間的には別です」
「どういうことだ?」
「まあここじゃ何ですから」
「いや、ここでいいぜ。あんたとは一度じっくりと話してみたいと思ってたんだ」
 そう言いながら机の下から何かを取り出した。
「どうだい、コップも二つあるしよ」
「用意のいいことで」
 それはブランデーのボトルだった。丁度杯も二つあった。
「チーズもあるしな。悪くないだろ」
「悪くないどころか」
 ボードレールはそれに応えて言った。
「最高ですな」
「そうか、気に入ってもらえたみたいだな」
「はい、ではまずは乾杯といきますか」
「少し待ってくれ」
 ジークムントは杯にそれぞれ酒を入れた。琥珀色の液が杯を満たす。
「これでよし」
「では」
 ボードレールの方もそれを受け取った。そしてジークムントもそれを手に取りまずは杯を打ち合わせた。
 それからそれぞれ一口飲む。その後でまずはジークムントが口を開いた。
「今から行って来るぜ」
「出撃ですか」
「ああ、こっちには一個艦隊を置いていく」
 彼は言った。
「それでいいよな」
「私としては異存はありません」
 彼はにこやかに笑ってこう返した。
「提督の望まれるままに」
「何も言わないんだな」
「私は文官ですので」
 彼は答えた。
「何故口を挟むことができましょうか」
「専門外のことは知らないってわけか」
「その通りです。軍事のことは提督にお任せしておりますので」
「政治はあんたでな」
「それで問題はないと思いますが」
「まあな。それでここでは上手くやってきているしな」
「はい。そう思い提督をこちらに向かい入れたのです」
「それだけか?」
 だがここでジークムントは彼に問うてきた。
「といいますと」
「それだけか、って聞いているんだ。あんたは」
「何のことやら」
「いや、もうとぼける必要はないぜ」
 ジークムントはニヤリと笑った。そのうえでボードレールに問うてきているのだ。
「ここは俺とあんただけだ。さしだからな」
「つまり私に逃げ場所はないと」
「それはお互いだ。で、あらためてあんたに聞きたい。まあ座ってくれ」
「はい」
「別にあんたをどうしようってわけでもねえからな」
「では何をされるおつもりで?」
「だから聞きたいだけさ」
 ジークムントは答えた。
「あんた、帝国に恨み持っていないか」
「私が?」
「そうさ」
 ジークムントは言った。
「何もなしで帝国と戦っている俺にすんなりと施設や物資を提供したり、全面的に協力したりするわけがねえ。つまりあんたも帝国と何かあるってことだ」
「ここは元々第四帝国の忠実な勢力圏でしたが」
「それもあるか」
「はい。市民はニーベルングの支配をよしとはしていませんので」
「まずはそれがあるな」
「ええ」
 彼は頷いた。
「そして・・・・・・あんたはどうなんだ」
「私ですか」
「ああ。帝国を語るあんたの目、憎悪に燃えている」
「ほう」
 ボードレールはジークムントのその言葉を聞きにこやかに笑った。だが目は決して笑ってはいなかった。
「あんた、帝国との間に何があったんだ?」
「私には年老いた妻がおりました」
 それに応じてか彼はゆっくりと口を開きはじめた。
「かみさんか」
「はい。長年連れ添っておりましてね。子供はいませんでしたが長い間二人でやってきました」
「そのかみさんで何かあったのか」
「はい。妻はあの時バイロイトに出掛けていました」
「バイロイトに!?」
「長い間会っていない姉夫婦と会いに。ですがその時」
「そうだったのか」
「妻は私にとってかけがえのない存在でしてね。それが急にいなくなるということがどんなことか」
「わかるぜ。そこまで言うことはねえよ」
「どうも」
「そういうことだったのか」
「まあ些細なことです」
「いや、それを聞いてよくわかったよ」
 ジークムントは低い声で言った。
「あんたが。どうして俺を必要としていたのか」
「貴方にお願いがあったからです。そして貴方もそれを目指している」
「そうした意味で。俺達は同じだったんだな」
「そうですね」
「共に帝国と戦う身だってことか。立場は違えど」
「私は剣を握ることすらできませんがその剣のもとになる鉄を用意することはできます」
「そして俺はその剣で奴等を倒す」
「そういうことです。ですから後ろのことはお任せ下さい」
「ああ、わかったぜ」
 彼はその言葉に頷いた。
「ニーベルングはこの俺がやってやる」
「期待させて頂きます」
「そのかわり、後ろは頼むぜ」
「はい」
 二人は杯をまた合わせた。これを盟約の、暫しの別れの杯としたのであった。次の日ジークムントは出撃した。そのまま帝国軍を追うのであった。
「今帝国軍は何処にいる」
「只今入りました情報によりますと」
 ヴィントガッセンが彼に応えてローゲのスイッチを入れた。
「ドルトムント星系を壊滅させたそうです」
「ドルトムントをか」
「あの星系も帝国に対して反旗を翻していたそうですから」
「だが壊滅とはどういうことだ」
「星系にいた者を全て攻撃対象としたのです」
「何っ!?」
 それを聞いてジークムントだけでなくジークリンデの艦橋にいた多くの者が声をあげた。
「非戦闘員までもか」
「はい」
 ヴィントガッセンはそれに答えた。
「恐ろしいことに。そして星系にいた者全てが」
「何とういう奴等だ」
「そして星系への攻撃は何を使ったんだ?」
 だがジークムントはその激情をかろうじて抑えていた。人一倍血の気の多い彼であったがここは何とか抑えた。そして指揮官としてヴィントガッセンに問うた。
「あのファフナーという兵器か?」
 バイロイト、そしてヴァルターのいたニュルンベルグを壊滅させたあの謎の兵器である。それに関する情報も彼の下に入っていたのである。
「いえ、ファフナーはこの近辺では確認されていません」
「じゃあ通常の攻撃でか」
「はい。惑星を包囲し、宇宙から無差別攻撃を仕掛けたとのことです」
「そうか。どちらにしろとんでもない奴等だな」
 ジークムントは怒りを押し殺してこう述べた。
「その結果周辺星系は帝国にこぞって帰順を申し出ているそうです」
「つまりびびったってわけか」
「はい」
 ヴィントガッセンは答えた。
「その通りかと」
「これにより帝国軍はその勢力をかなり伸ばしております」
「恐怖で人を支配するやり方だな。あいつ等らしいぜ」
「ですが司令」
 ここで部下達が彼に対して言った。
「このままですと」
「わかってるぜ。それならそれで方法がある」
 しかし彼は特に慌てたところも怯えたところもなかった。
「要はその恐怖を取り除きゃいいんだろ」
「簡単に言えばそうですが」
 参謀の一人であるヘップナーがここで声をあげた。
「相手は」
「構うこたあねえよ」
 ジークムントはそれでも強気であった。
「相手の兵力がどれだけ多くてもな、やり方ってのがあるんだよ」
「やり方ですか」
「そうさ、どれだけ来てもな、まともに戦える状況じゃなきゃ戦力にはならねえんだ」
「ですがそれはあくまで相手が無能であった場合でして」
「今回はそれが期待出来ないってか」
「残念ながら」
 敵将はメーロトである。彼のことは皆知っていた。だからこそ彼等はジークムントのその言葉を信じる気になれず、不安を拭い去ることが出来なかったのだ。
「少なくとも今の戦力のままでは」
「安心しな」
 それを言われても彼は強気であった。
「そんなに信じられないならな、今すぐ軍を抜けな」
 そしてここまで言った。
「軍を」
「そうだ。俺が信じられねえ奴はすぐにでも抜けていい。俺はそれを咎めるつもりはない」
「・・・・・・・・・」
 彼等はそれを聞いて沈黙してしまった。
「さっきも言ったろ、戦争ってのはどれだけ数があってもまともに戦える状況じゃなきゃ勝てはしねえんだ」
「ですが今回は」
「そのまともに戦えるにはな、一つにまとまっていることが前提なんだよ。わかるか」
 さらに言う。
「それができねえ奴はいてもらっても困るんだ。わかったらさっさと決めろ」
 有無を言わさぬ口調であった。
「俺を信じるならよし、信じられないなら」
 そして立ち上がった。
「今すぐ俺の前から消えな。二度は言わないぜ」
「・・・・・・わかりました」
 皆それを聞いて覚悟を決めた。
「我等の命、提督にお預け致します」
「そして勝利を」
「それでいいんだな」
 彼はもう一度問うた。
「はい」
 彼等もそれに応じてきた。
「提督だからこそ」
「我等もこの命、預けましょう」
 ジークムントは粗野で短気な一面があるのは事実である。だが飾り気がなく、戦場においては常に鮮やかに勝利を収めてみせる。それは最早天才的な程である。その軍事的才能にカリスマを見出されているのである。彼は部下達からそのカリスマ性を慕われているのである。
「わかった」
 ジークムントは自身のそれを知ってはいない。だがここは頷いた。
「じゃあ御前達の命、預かるぜ」
「はい」
 彼等はまた頷いた。
「この命、帝国との戦いの為」
「たった今より提督にお預け致します」
「よし、じゃああらためて出発だ」
 彼は指示を下した。
「全軍このまままずはブレーメンに向かうぞ」
「はっ」
「まずはその近辺を取り戻す。そのうえで帝国を誘き出すぞ」
 彼は既にその頭の中で戦略を描いていた。そして攻撃に出るつもりであった。彼の用兵に防衛はあまりない。攻めて倒す、それこそが彼の用兵であった。





ブレーメンへと向かう一行。
美姫 「その先に待つのは、どんな激しい戦いなのかしら」
うーん、一体どうなるのやら。
美姫 「パルジファルの言う運命の時も近づいてきているのね」
次回がどうなるか。
美姫 「待っています」



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