注意書き

これは、硝子越しの想いの数年後のIF物です。

読まれる上で切なくなるかもしれない事をお覚悟の上でお読みください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なのは、準備はいいか?」

 

 高町家の玄関で中に向かって声をかける恭也。

 

 少しだけ落ち着きがなく、しかしいつもより少しだけ引き締めた面持ちで。

 よく見ると恭也の服装は何時もと少し違う。

 黒いのには変わりないがそれでもいつもよりも少しだけおしゃれをしているように思える。

 

 

 

「お待たせ、お兄ちゃん♪」

 

 恭也の言葉に応えるように玄関に出てきたなのは。

 

 なのはも普段とは違う。

 髪はツインテールではなく、サイドポニー。そして服装も余所行き用の可愛らしさよりも大人っぽさを前面に出した服。

 

 そして、悲しい決意を秘めた、自らの心を押し殺そうとしてる者特有の眼。

 

 

「行くか」

「うん♪」

 

 

 今日はなのはが小学校を卒業した祝いと証したデート。

 

 そして、二人の………、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

重なる想い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なのはが小学校の高学年になるに連れて、なのはは子供らしさを取り払って女性になっていった。

 

 細かった腕も、小さかった身体も、胸も、そのどれもが女性らしくなってきた。

 日を追う毎に女性らしくなっていくなのは、

 時折見せる、恭也を慕っているのではないかと勘違いしたくなる視線。

 

 それは恭也にとって苦行のようなものだった。

 

 愛している。だから、少しずつ女性らしさを身につけていくなのはに女を意識してしまいそうになる。

 愛している。だから、その女性らしくなったなのはを自分のものにしたくなる。

 

 そんな想いが日に日に強くなっていく。

 

 けれど、そんな事が出来ない事などわかっている。

 兄妹だから…、

 この世界で唯一血の繋がった妹だから…、

 

 

(誓っただろう。俺の心に、なのはに。

俺は傍でいられるだけで幸せなのだから。

なのはが幸せなだけで俺は幸せだから。

あぁ、だからなのはと必要以上に触れ合わないためにけりをつけよう)

 

 

 それはなのはが中学校に上がるからこその決意。

 

 中学校に行けば、女子校といえど同年代の少年とも接触を持つ事もある。

 その中で、なのはが恋をする可能性もある。

 

 だから、必要以上に触れ合う事をしないために。

 なのはが幸せになれるために……、

 

 

 

 

 

 

 

 小学校の高学年になるにつれて背も伸びていった。

 胸も母ほどではないが大きくなった。

 色々な事を覚えて、少しは大人に近づけた。

 少しずつ恭也に近づいていく。

何よりも辛かったのは、時折見せてくれたなのはを慕っているのではないかと勘違いしたくなる視線。

それはなのはにとって苦行のようなものだった。

 

 愛している。だから、少しずつ近くなっていく恭也に男性を意識してしまいそうだった。

 愛している。だから、女性らしくなった自分を恭也のものにして欲しくなる。

 

 そんな想いが日に日に強くなっていく。

 

 けれど、そんな事が出来ない事などわかっている。

 兄妹だから…、

 

 

(誓ったから、私の心に、お兄ちゃんに。

私は傍でいられるだけで幸せだから。

お兄ちゃんが幸せなだけで私は幸せだから。

だから、だからお兄ちゃんと必要以上に触れ合わないために終わらせよう)

 

 それは恭也と近づけたからこその決意。

 

 大学を卒業すればさらに女性との付き合いが増えてしまう。

 その中で誰か好きになる人が出来る可能性もある。

 

 だから、必要以上に触れ合う事をしないために。

 恭也が幸せになれるために……、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遊園地に着き、色々と巡る。

 

 その中で、恭也となのはは腕を組んで歩いていた。

 

 どちらからともなく組んだ腕。

 

これが最後にしようと想っているから、

だから、触れ合いたかった。

例え、身体の一部だけでも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼食の時間になり、何処に行くか恭也は思案していたがそこになのはの声が掛かる。

 

「お兄ちゃん、お昼は作ってきたの。だから、ベンチで食べよう?」

 

 思いがけないなのはの言葉に恭也は驚く。

 

 なのはは早起きを特に苦手としている。

 それなのに自分に気付かれずに料理をするなど朝の鍛錬の時間ぐらいしかない。

 

 

 眠い眼をこすりながらお弁当を作っているなのはが恭也の脳裏の浮かんだ。

 

 心の底から嬉しかった。

 

「あぁ、そうしようか」

 

 

 恭也は微笑みながら、なのはの提案をすんなりと受け入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 穏やかな空気が流れる。

 

 恋人と似た、兄妹の昼の一時。

 

 食べさせ合いなどないがそれでも穏やかで不可侵のような空気が流れていた。

 それが二人だけの世界を作っていたようで。

 

(あぁ、今この時が永遠に止まれば……)

(ずっとこうしていられたらいいのに……)

 

 二人の思いは重なり合う。

 しかし、それが叶えられる事はない。

 

 世界とはあまりにも無慈悲で残酷なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間も過ぎ、もはや空が茜くなり、終わりを告げようとしている。

 

 二人はずっとこうしていたいと思った。

 けれど叶えられない事を誰よりも二人は知っている。

 

 だから……、これが最後と、デートよりも前に決めていた決意を固めるために観覧車に向かう。

 

 

 

 

 二人向かい合って座りあう。

 

 もう以前のように気軽に包み込んではいけない。

 もう以前のように気軽に寄り添えない。

 

 

 

 

 

 

 

 夕日に照らされたなのはの表情はとても綺麗だった。

 ずっと意識してきたが、それでも今はさらに。

 

 あぁ、今この時、なのはを抱きしめられたら。

 あぁ、今この時のなのはの表情を俺だけのものに出来たら。

 

 でも出来ない事など俺には分かりきっている。

 

 だから、なのは…、

 俺にそんな表情を向けないでくれ。

 何時か誓った決意が揺らいでしまう。

 

 倫理や、法など全て捨て去ってなのはを俺だけのなのはにしてしまいたくなる。

 今この時、なのはを抱きしめてしまいたくなる。

 俺から離れられないようにしてしまいたくなる。

 

 あぁ、だから。俺に微笑みかけないでくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 夕日に照らされたお兄ちゃんはとても格好よかった。

 今までもずっと意識してきたけど、今はさらに。

 

 本当に、今この時お兄ちゃんに抱きしめて貰えたら。

 今この時のお兄ちゃんとずっと一緒にいられたら。

 

 お兄ちゃん…、

そんなに優しく微笑みかけないで。

 そんなに私を包み込むように微笑みかけないで。

 

 耐え切れないよ。

 ずっと前に、そして今も誓ったよ。

 

 けど、私だって女の子なんだよ?

 好きな人に微笑みかけられて我慢なんて出来ないの。

 全部捨ててお兄ちゃんと二人で一緒にいたいの。

 私の全てを包み込んで欲しくなるの。

 お兄ちゃんから離れられなくして欲しくなるの。

 

 だから、……微笑みかけないで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 恋人のようにと思ってこの観覧車を選んだなのは。

 友人に聞いた頂上で好きな人とキスをすれば永遠に結ばれると噂のある観覧車。

 

 キスをする気などない。

 けどせめてその空気ぐらいは味わいたかった。

 好きな人と結ばれる夢を見たかった。

 

 だが、それは皮肉でしかなかった。

 

 

 

 

 頂上が近づくごとに切なくなる心。

 頂上が近づくごとに苦しくなっていく心。

 

 頂上を過ぎれば終わり。だから切なく、苦しくなってくる。

 

 

 

 そんな事を露とも知らない恭也はなのはを心配する。

 

 最愛の人が悲しんでいる。

 だから、せめて……、

 

「なのは、俺はずっと傍にいるぞ」

 

 夕日を背に己の心を恭也は晒す。

 心だけで想っていた事を、口にする。

 

 せめて、その苦しみが和らぐように。

 

 

 

 

 

 夕日を背にして口にされた告白がなのはを貫く。

 

 耐え切ろうと思っていたのに、

 ……もう無理だった。

 

「お兄ちゃん」

 

 全てをかなぐり捨てて、恭也にキスをした。

 触れるようなキス。

 精一杯の想いを乗せたキス。

 生涯する事がないと思っていた最愛の人とのキス。

 

 

 

 

 

 

 

 突然のなのはの行動に恭也は動けなかった。

 

 そんな事をするとは思えなかった。

 けど、心の全てがそれを望んでいて、拒む事など出来なかった。

 

 

 

 

「なのは……」

 

 恭也は何処か呆然としながら呟く。

 

 恭也が覗き込んだなのはの表情は……

 泣いていた。

 

 

「耐え切れないの……、もうお兄ちゃんの傍にいるだけじゃ耐え切れないの!!

 兄妹だから結ばれないって知ってるけど、それでも耐え切れないの!

 お兄ちゃんの傍にいたい!お兄ちゃんと幸せになりたい!!

 けど兄妹だから出来ないって私も知ってるの。

 だから…、今日で終わりにしようと思ってたのに、それでもお兄ちゃんの顔を見たら……」

 

 なのはの激情。

 初めて見た、なのはの心の叫び。

 

 

「あははっ、ごめんねお兄ちゃん、………迷惑だよね」

 

 なのはは泣きながら、己を自嘲し、苦しんでいた。

 

 

 

 

 それが引き金だった。

 

 最愛の人が同じ想いで、それ以上に苦しんでいて。

 恭也が願ったのはなのはの幸せ。

 

 だからこそ恭也は行動に移す。

 

 

 

「ん…!?」

 

 なのはが行ったものよりも少しだけ情熱なキス。

 

 突然の行動になのはは驚いたが、そのあまりにも甘美な麻薬に犯された。

 

 

 

 唇を名残惜しげに離し、恭也は語りかける。

 

「なのは、俺も同じだ。今日で終わりにしようと思っていた。

 なのはの幸せを願って終わりにしようと思っていた。

 だが、なのはがそう願ってくれるのなら、

 なのはの幸せが俺と結ばれる事なら、

 俺は誓う。

 どんな障害があろうともなのはと共に幸せになると」

 

 

 強い、今まで一番心の篭った言葉。

 

 

 その言葉はなのはにとってとても嬉しかった。

 

 けれど戸惑った。叶うはずがないと思っていた。

 倫理や法がまだなのはを縛り付ける。

 

「私だってそうしたいよ。けどお兄ちゃんと私は兄妹なんだよ?」

「みんなが祝福してくれないなら、何処かに行けばいい。やりようは幾らでもある」

 

「結婚できないよ?」

「戸籍なんて改竄できる。それに誰も知らなければ意味がない。

 だから、なのは。俺と共に、幸せになってくれ」

 

 

 もう二人を縛り付ける物はない。

 もう二人を邪魔するものはない。

 

「お兄ちゃん」

「なのは」

 

 二人が顔を近づけ、さらに深いキスをする。

 

 求め合うように、お互いを離さない様に、お互い以外の全てを拒絶するように。

 

 

 重なる唇は、まるで麻薬のように二人を犯す。

 想いを重ねあう事がこれほど幸せだと、唇を重ねあうだけで幸せだと。

 

((もう、離れられない。離さない))

 

 

 折りしもその時は丁度二人が乗っているゴンドラが頂上を通過している時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 これから、幾多もの障害が二人を阻むだろう。二人を引き裂こうとするだろう。

 

 険しく、辛い道であろうが、せめて願わずにいられない。

 

 兄妹であり、親子であり、恋人である二人の幸せを……、

 

 

 

 


後書き

 

 今回で恭也となのはが結ばれましたが、かなり切なくなってしまいました。

 私はこの二人が好きです。とても好きです。しかし二人が結ばれる光景というのが思い浮かべにくいのです。

 もちろん、何かきっかけがあって想いを告げあって誰もが二人を祝福してくれる話は好きです。

 けれど二人は兄妹で、だからこそ沢山の障害があって想いを伝えられなくて。

 そして、もしこの二人が想いを伝え合う時はこんな形ではないかと思いました。

 

 これはIFとして書いたものですが、もしからしたらこれこそが互いを愛し合い、互いの幸せを願った二人の未来として正しい物かもしれません。

 

 

 

 という訳で今回はハイパーゼクターさん、ホークスさん、FLANKERさん、テンさんが願ってくださった二人が結ばれるエンド。

ちびざから「相変わらず切ないな」

 うん、そうだね。

 定められた型から逸脱しようと思えばそれは苦しくなるだけ。

 けど二人はそれを選んじゃったから。

ちびざから「まったく、お主は一度その精神構造を咲殿に解剖してもらって直して来い」

 恐ろしい事いうなよ!!

ちびざから「まぁ今はいい」

 必ずやられるんだ……、

ちびざから「確認するが二人は幸せなんじゃな?」

 さぁ?幸せの定義は人それぞれ、私は二人の想いが重なり合ったところを書いただけだから分からない。

ちびざから「無責任め!!」

 無責任じゃないよ。小説なんてものは読む人によって喜劇にも悲劇にも変わる物だから。

 

 フェイトにメイド、なのはにメイド、フェイトに巫女服、なのはにエプロンドレス、フェイトに黒ロリ、なのはにワンピース。

 フェイトにブルマ、なのはにスク水、フェイトにチャイナ、なのはにチャイナ。

ちびざから「壊れたか?」

 いや、今度FLANKERさんとの合同作で二人にコスプレさせっからその案を纏めてるの。

 しかし、この鉛筆便利だね。紙さえあれば浮かんだネタを書き記せる。

ちびざから「ほぉ、咲殿の発明品を上手く使っているようじゃな」

 ん、でも私はメモ用紙を持ち歩かないから使えないけどね。

ちびざから「阿呆が!!」

 ぐばら!!!

ちびざから「まったく、またしても咲殿の好意を無視しよって」

 

 最後まで読んでいただき、真にありがとうございます。

ちびざから「それではまた他のお話で」





メイド、メイド、メイド、メイド、メイド〜〜〜〜〜!!
美姫 「今更聞くのもアレだけれど、何をしてるの?」
勿論、今度の合作でなのはとフェイトにコスプレさせる衣装を念じている。メイドの一念岩をも通す!
美姫 「そんな諺はない!」
ぶべらっ!
美姫 「今回のお話は結ばれた二人というお話ね」
こういうのも大好きです! 周囲の目があるが、それでも尚欲してしまう心。
その上で結ばれる二人。これはこれでいいもんですな〜。
美姫 「これもまた一つの愛の形よね」
うんうん。投稿ありがとうございました。
美姫 「ありがとうね〜」



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