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廃墟の中大河とべリオは周囲を警戒しながら歩いていた。敵の姿が見えないからといて油断するなど言語道断。細心の注意を払って聴覚に集中していた。
「大河くん」
だが、常に集中しっぱなしというのは人間には不可能というモノ。自ずと気を緩めるために口が開いてしまう。
「なんだ?」
「つれないじゃないですか」
すすっと大河の胸元に近づいてきたべリオは大河の胸を人差し指でくりくりといじり始めた。ついでにいうとなんか眼が潤んでいるし、頬の血のめぐりも良くなっている。簡単に言ってしまうと発情しているといっても仕方ないぐらいの痴態?だった。
「ちょっ!? えっ、ベリオ?! 今敵地の真ん中っ! そういう事する場所じゃないぞ!」
「私だって女の子なんですから二人っきりになったら……」
とんでもなく色っぽかった。場所させ選んでいてくれれば確実に抱いていた。もう色気に負けてしまいそうというか負けていた。ただ、ギリギリ理性が勝っているだけ。後何か、均衡を崩すようなモノがあれば、確実にいたしてしまう。
優等生のベリオらしくない。
「――――――って、パピヨンかよっ!!」
「遅いね、大河。このまま抱かれちまうかと思ったよ? それでも良かったけど」
「状況を弁えろよ」
呆れた様子で大河はベリオを引き剥がした。ベリオじゃない行動だったためにやっぱり理性が勝利をおさめていた。
「そうかい? 男と女が二人っきりになったらする事は一つだろ?」
「いや、状況がヤバイから。それにベリオだったらそういう事言わないぞ?」
「………………一応、ベリオも望んでいたんだけどね〜。私も随分とご無沙汰だったし」
「なんか言ったか?」
「い〜や、なんでもないよ」
何かあります的な不機嫌な表情で言い切られてしまった。だが、大河はパピヨンがズバズバモノを言う性格だからと本当に気にしてないようにしていた。
女心の機微がわからない男だ。
「これから戦闘が起こるからさ、ベリオに変わってくんねぇか? お前が邪魔って訳じゃないんだけど、今は後衛が欲しいんだ」
チーム分けをする時にわざわざ前衛と後衛を一人ずつにしたのは戦闘が起こった際になるべく長く戦えるようにする為だった。
ブラックパピヨンはどちらかというと前衛系である為にバランスが悪い。
そんな事は分かっているとばかりにパピヨンは頷くがベリオに変わる気配がなかった。
「分っているよ。けどね、一つだけあんたに忠告しようと思ってね」
「あぁ〜、何だ? 女心をもっと理解しろとかそんなのか?」
「いや、本気で学んで欲しい所だけど、今回はそっちじゃない。大河、ずばり言うよ。アイツに――蛍火に気を許すな」
有無を言わせぬ断言に大河は――――――呆れていた。
無論、大河がパピヨンを信頼していないわけではない。だが、さすがにパピヨンの口から聞かされても信頼できない情報というものがある。
「蛍火を信じるなって、アイツは仲間だぜ?」
「大河がそう思っていても相手がそう思っているとは限らないよ。いいかい? アイツに心を許すな。気づいたら背中からアイツに刺されているって可能性があるんだ」
「いや、あり得ないだろ?」
「〜〜〜〜〜〜っ!! アタシよりもアイツを信じるのかい!?」
「そういう訳じゃないんだけどな」
歯切れの悪い返事しか大河は口に出せなかった。折角の女の子の助言、可能なら信じたい。だが、大河の中ではいろいろと世話になった蛍火の事を信じるなというのは別となる。同様に心の友であるセルを信じるなと言われても同じ返事しかできない。
大半の人が家族を疑えと言われても疑えないだろう。例外は確実に存在するだろうが、一般的な話で。
大河にとって家族を疑えと言われているも同然。素直に言う事を聞けない。
「あぁ〜〜、今は信じられなくていい。けど用心だけはしておいてくれ。実感した後じゃ遅いんだからねっ!」
「まぁ、気をつけるだけ気をつけてみるわ」
気のない返事に腹を立たせながらもパピヨンは気を静めた。聞かされているのと何も聞かされていないのでは随分と異なる。
「んで、何でそう思ったんだ?」
「アタシも裏に属しているから色々とそういう方でのアイツを知っているからっていうのと、女の勘」
「………………微妙にこえぇな」
女の勘と言われてしまえば男には言い返せない。物理的な証拠がなくても女の勘というだけで信頼度がなぜかぐっと上がる。本当になぜだろう?
第七十四話 不信の種
パピヨンからベリオに戻ってから数分。
遺跡内部を探るように歩いていた二人は建物を介してモンスターがいる事を察知した。敵は隠れるようにして何かを待ち受けているように見えた。
「敵が多いな。それになんつーか」
「何かを探っているというよりも待っているって感じられますね」
ミュリエルから言い渡された任務では遺跡の中で何かを探っているモンスターの排除。だというのにモンスターは少し待って見ても何かを探るような様子は一向に見られなかった。
「なぁ、ベリオ。スプラッシュを使って混乱させられるか?」
「大丈夫です」
爆発するまで魔法が見る事が難しいスプラッシュを使っての奇襲。魔法に精通していない者ならばまず爆発寸前まで発見する事は不可能。奇襲にはもってこいの魔法である。
「んで、爆発させたら俺が前に出る。魔法使ってこっちの援護頼むわ。それと出来ればホーリーシールドは張る前になんか合図してくれ。戦ってる最中に味方が張った壁にぶつかりましたじゃ、しゃれにならねぇだろ?」
「くすくす、確かに。後ろは任せてください」
「おうよ、信頼してるぜ」
二人して緊張感のない笑顔を浮かべながら静かだった遺跡に爆発音が鳴り響いた。
同時刻
「ナナシさん。貴方は一体何ですか?」
リコは前を能天気そうに歩いているナナシに訝しんだ眼をしながら睨みつけた。
ナナシと出会ってからリコはナナシにある人物の面影を見ていた。そう、ルビナス・フローリアスに。
肌の色、髪の色など、数多ある次元世界の中では珍しくもない。だが、ふとした仕草までが似ているとなれば疑いをかけない方が難しい。
「リコ――いえ、あえてオルタラと言った方がいいわね」
「やはり…………ルビナスでしたか」
リコの事をオルタラだと知っているのはリコの主観では現時点で二人。イムニティと大河のみ。後三人ほど実はいるがこの際割愛。
イムニティとナナシは接触しているはずがなく、大河とて馬鹿そうに見えても無用な事を口にするほどではない。
「お久し振りでいいのかしら?」
「どちらでも構いません。それで、私に隠さないという事は何かあるのですね?」
錬金術師という事もあってルビナスの行動は無駄が少ない。歴代の赤の主の中でも大河に次いで異端だと言える存在。
戦力を隠している方がいざとなった時に役に立つのにそのメリットをあえて捨てた事がリコに考えさせた。
「えぇ、貴方に聞きたい事があって」
「マスターの事なら答えません。えぇ、貴女になんか教えてやるもんですか」
ぺっと唾を吐きそうな勢いでリコは拒絶した。物凄く動作が可愛くない。これが大河が見ていたら随分と可愛らしい姿になるのだろうが……恋する乙女は怖い。
「聞きたいといえば聞きたいんだけど――――というかオルタラ、変わりすぎてない?」
「初めて、恋したんです。譲りたくありません。例えかつての主であっても、戦友でも」
まさしく恋する乙女だった。その気持のありよう、そのまっすぐさは恋する乙女としか言いようがない。
その姿にルビナスはちょっとばかり羨ましそうにしていた。彼女はまだ完全に表に出るには時期が早い。ゆえにストレートに傍にいられてまっすぐに感情を表せるリコが羨ましかった。
「まぁ、私もそこは手を抜く気はないわ。それは今は置いておいて」
今はその事で争うべきでない事を二人とも分かっている。この戦争が終わってから思いっきり正妻の座をかけて争えばいい。
目の前の事を終わらせずにうつつを抜かせるほど彼女たちは無責任ではない。
「新城蛍火――――彼は何?」
何者なのかでもなく、どんな人物でもなく、蛍火の存在自体を問うた。
ルビナスからすれば――否、ある程度のこの戦いに知識を持っていれば、蛍火に疑いを掛かってみればそう思うのは必然かもしれない。
「……………………」
ルビナスの偽ることを許さぬ視線にリコは答えられなかった。答えなかったのではない、答えられなかったのだ。
リコとて蛍火の事を疑った事が無い訳ではない。だが、未だに結論を出せずにいたまま。
「リコ」
「マスター――大河さんは蛍火さんを信じています」
疑いを持っていてもリコが積極的に蛍火を調べなかったのはそれが理由だった。
親しい人物に疑いをかけられれば誰だって気分が悪くなる。大切な人が信じている人を信じたいと思うのは人として悪いことだろうか?
悪くはない。大切な人が――本気で恋をした相手ならば尚更。
「彼は不透明な部分が少しありますけど――それでも私たちの事を思っています」
リコの発言は随分と過少された言葉だった。蛍火の不透明な部分が少しだとリコとて思っていない。否、寧ろ――
「そうかしら? 彼の大半が不透明じゃない?」
大半が不透明。実際はそれですら優しい表現。蛍火の全てが不透明だといっても過言ではない。
蛍火はあまりにも隠し事が多すぎる。一度しか正規に接触を計っていないルビナスでさえ、蛍火自身については何もつかめていないに等しい。
「だけど――」
「大河くんに嫌われたくないのは分かっている。けどね――彼は私を起こす方法を知っていた。ついでに言えば貴女がオルタラである事も――――知っていた」
「――――っ!?」
それはリコにとって驚愕するに値する情報だった。オルタラを知っている。つまりは千年前の戦争を知っている事となる。
あってはならない事実。あるはずもない事実。
「どういう――」
「言葉通りでしかないの。どこまで知っていて、彼は何を知らないのか。情報を引き出すためのカードすらこちらにない状況」
情報を引き出すには必要なカードがいる。情報を渡してもらうに値する同等かそれ以上の情報、相手の弱み、暴力。
だが、どれも通用するとは二人には思えない。相手の事すら知らないのであればカードはカードの意味すらなさない。
「――私にどうさせたいのですか?」
「知っていて欲しかっただけ。救世主クラスの中で誰か一人ぐらいは彼の危険性を理解していて欲しかっただけ。正直、こんな話をしても信じてくれるのが貴女しかいなかったってだけだけど」
「そうですか…………」
それ以上、言葉は紡げなかった。何を話してもきっと今は無意味。
痛いほどの沈黙が二人を覆っている状況で敵を発見した。大河とベリオの時のようにモンスター達は待ち構えているように佇んでいた。
「敵……ですね」
「あっ、リコ。まだ私、表舞台に完全に上がる気はないから、戦闘よろしく〜」
「えっ? ルビナス!?」
目の前にはかなりの数のモンスター。倒しきれない事はないが、ルビナスでないナナシが相棒となれば困難を極める。
何をするのか理解できないし、どんな戦い方をするかもわからない。フォローのしようがない。
「――――殲滅です」
気分を悪くされてその上、敵前逃亡を果たしてくれたかつての親友のあんまりな態度にリコも堪忍袋の緒が切れてしまっていた。
バチバチと手のひらの魔力を震わせながら雷をモンスターめがけて落とした。
「――――あの時のリコちゃんは恐ろしかったですの〜〜〜っ!!!」
後日、あの時のリコの行動について聞かれた時、ナナシは大河に泣き付きながらこう述べた。
その頃、蛍火と未亜は、
「いけぇっ!!」
「シッ!」
大河たちよりも先に敵と遭遇した二人は無駄口を叩かずに速攻で戦闘に移行した。
そもそも蛍火は一人での戦闘しか行ってこなかったので無駄口を叩く事はありえず、蛍火と組んでいる時は蛍火が口を開かない事をよく知っている未亜は戦闘中に余計な動作を行う事をしない。無論、二人とも話す必要があれば口を開くがそれも滅多にない。
未亜の援護を受けて蛍火は進軍する。
矢が蛍火の標的となるであろう敵に先に到着して敵に隙を生じさせてそこに蛍火がとどめをさす。蛍火の後ろに敵が回りそうになれば未亜が大きな声を上げながら強めの技で蛍火に視線が集中している敵を排除する。
無論、蛍火とて未亜のフォローは忘れていない。前面にでるが一定以上は踏み込まず、後ろにいる未亜へと敵を流さないようにしている。そのため、未亜は安心して蛍火のフォローを続けられる。
無論、遮蔽物がある為に建物を使って未亜の後ろに回り込まないとは限らないがそういう場合は確実に蛍火から未亜に連絡が行く。それが遅れていたとしても蛍火が飛針や投げナイフなどを使用して未亜に迎撃ができる程度の時間を与えていた。
蛍火と戦闘訓練を長く続けている未亜だからこそできる連携だろう。
救世主候補の中で恐らく最も蛍火の攻撃パターンを知っている――無論、まだまだ蛍火が隠している戦闘方式や武器は呆れてしまう程にあるが――のが未亜。この二人であれば、まだ蛍火の戦闘能力の減衰は少ない。
それでも減ってしまうのは単に蛍火の戦闘方式が単独である事を前提としているから。
目に見える範囲の敵も随分と減ってきた。大河達が戦闘を開始したことで戦力が分散してしまったのも原因としてあるだろう。
そんな中、蛍火は空を見上げた。そこには大きな鳥の群れ。鳥の群れというよりもなんとなくコウモリの群れのように見えなくもない。
「当真さん、大量に矢をっ!」
突然蛍火が声を上げた事に未亜は驚かず、またその意味を問う事もなくジャスティに矢をつがえ、解き放つ。
解き放たれた矢は幾重にも分岐して無限ともいえる程に増殖し続け敵を貫かんと矢の向きを下に変える。
蛍火も発射を確認するとすぐに乱戦用に使用していた小太刀を納刀して、観護を取り出した。
矢が獣たちに突き刺さる。眼に突き刺さるもの、開けていた口に突き刺さるもの、腕に、足に、肩に、胸に、未亜の矢が突き刺さる部位は獣の数だけ異なり、その反応も様々。だた、その反応に共通しているのは痛みに体をすくませている事。
「碧月・鎌鼬」
圧縮された風が抜刀と共に空間を駆け抜けていく。引き裂き、獣を寸断していく。血が飛び散り、獣の体の一部が飛び上がっていく。
「当真さん、すみませんが南に行ったシアフィールドさんとヒイラギさんと合流してください。ちょっと面倒な事になったので」
「でも、危ないですよ? それに二人だったら対処しやすいし」
「どうもガーゴイルの大群が来ているようで、上空で迎撃しないと遺跡を壊してしまいそうですから」
蛍火が指さす方向には黒い群れ。鳥の群れではなくコウモリのような翼膜を持った人型。
その数の多さに未亜も息を呑む。あれだけの大群を真っ向から相手にするのは無謀極まりない。
「飛びながら戦闘出来ればお願い出来たんですが……」
空を飛びながらの戦闘に慣れているのは蛍火とリコしかいない。リリィもベリオも空を飛ぶことはできるがそのまま戦闘となると魔力消費が大きすぎて長時間戦えない。
また飛行戦闘の経験がリリィとべリオには圧倒的に少ない。上空を飛んでいる敵というのはアヴァターの中では少ない事が影響している。
「大丈夫……ですよね?」
「平気です。それじゃ、片付けたら合流しますから」
蛍火は一人、空に向って駆けていった。誰一人として同じ場所に立つ事を望まずに。
その頃、リリィとカエデは、
「くっ、待ち伏せなんてやってくれるじゃないっ!」
「気配を察知したと思ったら、すぐに建物の影から出てきたでござるからな!」
気合一閃、振り返りざまにバックブローを当てつつカエデは敵を吹き飛ばした。
「囲まれたら前衛と後衛を組ませた意味が減衰じゃない」
「まぁ、でもこれだけ仕組まれていたのでござるから初めから個人で動いていたよりもマシだと思えば」
「そりゃねぇ〜」
会話しながら敵を近づけないように敵を吹き飛ばす。前衛と後衛を組ませたのは敵が前方に集中している事を仮定のもとに組まれたパーティ。
囲まれながらではその真価を発揮できない。そもそもこちらが奇襲をかける側だったのにかけられた側ではその布陣は力を減らす。
「他の連中はどうなってると思う?」
「同じではないでござろうか? 奇襲を受けないように気をつけてはいるであろうが……どこまでいるのか皆目見当もつかぬ、ふっ!」
会話を重ねながら敵を紅蓮で滅する。火炎に焼かれながらも敵が襲いかかり、その敵をカエデは槍連脚で弾き飛ばす。
援軍が来るかどうかもわからない状況で囲まれているというのは正直心身を削る。敵が見える範囲だけとは限らないのがさらに心労を重ねる原因となっていた。
それにこの二人は連携をそれほど重ねていないのが大きい。チーム戦闘はどれだけ隣にいる人物の癖を知っているかが肝となる。カエデは師匠としたっている大河との連携戦闘が大半、リリィも未亜との訓練が多い。
それを考えればまだ足を引っ張らずに戦えているだけ上等と言える。個人の能力がたかいお陰だ。
「無理をしないで師匠達と合流した方がよさそうな感じでござる」
「賛成。向こうも困ってるだろうし」
決して自らが困っていないと言わないのがリリィらしい。戦闘の中で自らのらしさを失わないのはそれだけ精神的余裕が持てているという事。敵に囲まれている中でそれは驚異的ともいえる。
「その前に、こいつらを斃すか突破しないとね」
「でござるな」
「いけぇっ!!!」
会話中に第三者の声が混じる。声と共に二人の傍に迫り来るのは一条の閃光。閃光の前にいる敵を尽く貫いていく。
「未亜!?」
「未亜殿、ありがたい」
思わぬ援軍に二人は喜びの声を上げる。状況を変えようと一手を探していたところに降って湧いた一石。モンスターも思わぬ敵に足並みが乱れる。
「あれ? 蛍火は?」
未亜が作った道を通って包囲から抜け出したリリィは未亜の傍に蛍火がいない事に目ざとく気付いた。あくまでもタッグで動いているはずなのに蛍火の姿が見えない事をリリィはとんでもなく不審な目で見ていた。
蛍火が負傷して馬車まで戻ったとは露とも思っていない。
「上の方に行ってくるって」
未亜が指さした方向にはガーゴイルの群れ。そこから抜け落ちるように何体かの翼生えたモンスターが落ちていくのが見えた。
「また、単独行動? 私だって空を飛べるのに」
「まぁまぁ、リリィ殿。兄君だって考えがあるのでござろうよ。それに空を飛んで戦うというのは意外とつかれるモノでござるから」
三次元戦闘を比較的知っているカエデからのフォローにリリィも黙るほかなかった。リリィとて空を飛ぶことと空で戦う事の違いを知っている。
だが、置いて行かれて悔しい。蛍火はいつも一人で何もかもやってしまうから特に。
「もう少し、信頼してくれてもいいんだけどね」
寂しそうに未亜もつぶやく。戦闘において一緒に闘わせてくれないのは信頼されていないという事を未亜も感じ取っている。
別な部分で信頼されているのは理解できるが、背中を任せる事だけは蛍火は信頼していないと理解していた。そうでなければ、あんなに背中が孤独なはずがない。
「愚痴っていても仕方ないわ。さっさと片付けましょう」
疲れがたまっていたはずなのに怒りによって疲れが吹き飛んだ。仲間であるはずなのに信頼してくれない蛍火に腹を立てながらやつあたりを開始する。
後書き
久しぶりに出てきたパピヨンによって大河に蒔かれた種。色々とここで蒔いておかないといけないのとぶっちゃけパピヨンを出したかっただけです。もう、ほとんど忘れ去られた存在になっていましたから(涙
そしてリコの前で正体を現したルビナス。元々リコは蛍火に対して少しばかり不満を抱いていました。ルビナスのお陰で蒔かれていた種が随分と育ってしまいました。
まぁ、それは蛍火の自業自得なのですがね? 本来、その不満や疑念を払しょくさせねばならないはずなのに蛍火はそれを放置していましたから。
不満や疑念は疑惑に変わり、疑惑は不審に育ち、不信の花を咲かせます。典型的な人間関係の悪化例ですね。
それも仕方がないのかもしれません。蛍火は、本当の事は何一つして語っていませんから。
その疑念をかけられた蛍火はやはり単独行動。正直、彼は単独行動しかできないですから、情けないことに。
警告を受けた二人か。
美姫 「でも、どう受け止めたのかはちょっと違うかしら」
さてさて、これによってどう変化していくのか。
美姫 「今後の展開が益々楽しみね」
いや、本当に。大河の方はそう変化ないかもしれないけれど、リコの方はどうなるかな。
美姫 「次回も楽しみにしてますね」
待っています。