窓から日が差し込み俺をの瞼を照らす。

毎日このときだけは太陽という存在が憎らしい。どうして俺の眠りの邪魔をする。

 だが、何時までも愚痴を言っていらない。

この後はあいつらとトレーニングだ。俺だけサボるわけにはいかんだろう。

 だが、今日は無理そうだな。答えは簡単。

 

俺の右腕に抱きついているものを引き剥がすことが出来ないからだ。

寝ているとはいえ、抱きつかれるのに気付かないとは情けない。

 だが、この安心しきった無邪気な寝顔をしているこの子を起こすなど俺には出来ない。

あぁ、甘いな俺も。

 

 陽光に当たり、その白い髪がよりいっそう輝く。

光に反射した髪の色はまさに白銀。月光を受けた髪は銀色だったがこれはこれで綺麗だ。神に祝福された少女か………

 俺とは対極。神に戦いを挑む愚か者。似ても似つかないからこそこの子を気にかけているのかもしれないな。

 しかし、困ったな。ここに大河が来でもしたら大変な、いや、誰が来ても大変か。

 

ガチャッ、

 

 …………最悪……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第四十三話 三度目の買い物

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ノックも無しにドアが開いた。

こんなことをするのは大河しかいない。

それにしても今日は早起きだな。

 

「お〜い。蛍火。いつまで寝てんだ? みんな待ってるぞ…………」

 

 無遠慮に入ってきて俺のベットを見ると大河の動きが止まってしまった。

俺の隣は不自然に膨らんでいて、布団から頭だけ出ている髪の毛は明らかに女のもの。

この状況を見てさて何を思うか?

 Answer、行為の後。

 

 

例に漏れず大河もこの思考に行き着くだろう。

 大河は何も言葉を発さず、ドアを閉めた。

大河が自分の部屋に戻っていく気配がする。恐らく夢だと思ったのだろう。

 なんか、大河が出て行ったのが致命的に思えてきたんだが。

恐らくDead Endに向かっている。回避する術はあるのか?

 

 あっ、なんか久しぶりに来た。何々、この状況を楽しめ、だと? 無理言うなよ。

 

 

 

 

 

 そろそろ、未亜が来るか。

足音がして未亜が大河の部屋に行った。さすがに長い付き合いだけある。大河の行動をよく理解している。

だが、そうなった理由までは分からないだろうな。

 ん、大河が起きて未亜と共にこの部屋に来る。さて、お告げどおりがんばって楽しむか。

 

コンコンッ

 

 さすが未亜。大河と違ってちゃんとノックをする。

だが、俺はここで声を出してさずに未亜が勝手に入ってくるまで待つ。

 そして、にえを切らしたのか未亜が入ってきた。強引なところは大河とやはり変わらない。

 

 

 そして、俺の横にある女の頭を見て固まる。この後は大声か。

 

「………―――!!!!!!!」

 

 まさに声にならない悲鳴。耳を塞いでおいてよかった。

この声で玄関で待っている他の者も来るだろう。

さて、どうしようか?

 

「未亜!! どうしたの!!」

「未亜さん!!」

「未亜殿!!」

 

 さすが救世主候補。声だけで位置を割り出したか。うん、喜ばしいことだ。

 そして俺のほうを見て、停止。リコでさえも。

そして、絶叫。

 

「「「「……………――――――!!!!!!!」」」」

 

 うん、予想通り。

ん?この騒音でさすがにレンも起きたか。もぞもぞとしている。

 

ゆっくりと起きて、周りを見ている。

寝ぼけているから自分が何処にいるのか分からないのだろう。

 

「レン。起きたらおはようです」

 

 俺の言葉で漸く分かったのか。

 

「おはようございます」

 

 まだ、眠そうながらも返してきた。

うん、礼儀はちゃんと出来ている。いい子だ。

 

俺はなんとなくこの子の頭を撫でる。

むぅ、リコやイムにも劣らない触り心地。癖になりそうだ。

 

 俺が頭を撫でているとレンは気持ちよさそうな表情をしていて、まるで咽元を撫でられている猫のようだ。

 朝の暖かい一コマ…………のはずだった。

女性陣二人から殺気が出るまでは、

 

「蛍火。あんた、そんな小さな子に手を出すなんて」

「蛍火さん。蛍火さんは小さい子が好きなんですか?」

 

 リリィのほうが言葉はきつい。だが、まだマシだ。未亜に比べたら。

未亜が嗤っている、いつもとはまったく違う笑い方で。

あれは少しでも言葉を間違えたら殺られる眼だ。

 

 あぁ、やはりDead Endは確定のようだ。なら、お告げどおり遊ぶとしよう。

 

「何か勘違いしているようですが。この子は私の(義理の)娘ですよ?」

 

 さらりと今日の晩御飯が何かを答えるように言う。もちろん、カッコの中は心の中でだけ呟く。

 そのトンでも発言で全員がさらに固まる。

 一番早く抜け出したのはリコだ。耐性というかこんな異常事態に一番触れたことがあるからな。

 

「え? 蛍火さんの子供?」

「えぇ。そうですね、皆さんには知ってもらったほうがいいでしょう。少し長くなるかもしれませんが聞いてもらえますか?」

 

 声の口調を落とし、なるべく真剣にそして、暗く。

 

「あれは忘れもしない。十年前、私はその時に一人の女性、貴族の令嬢を愛しました」

 

 愛した。その言葉に二人が反応する。

まぁ、そこは気にしてはいけない。

 

「そして、彼女も私を愛していました。当然、その思いを告げ心を通わせました。

そして、心が重なり、心だけでは。いえ、心以上の、全てのものを重ねたいと思いました。

私達は愛して、そして身体を重ねた。幾度も。

けれどその終わりは簡単に訪れた。当然です。私は平民。彼女は貴族。許されるはずなど無かった。

最初は彼女の父は私たちのことを遊びだと思っていましたが、私達が本気だと知るや否や彼女を私から引き剥がそうとしました。

けれど、私はなんとかして彼女と逢瀬を重ねていた。そしてそれも知られ。彼女は遠くに連れて行かれました。

私は彼女の行方を必死になって探した。けれど見つからなかった。

そしてこの前、ついに彼女の行方を掴むことができた。けれど……、そこは破滅によって襲われていた。

私はなんとか助けたかった。矢も盾もとまらず向かったけれど、もう、彼女は………。

私は悲しみにくれました。そんな最中、彼女の亡き骸の後ろから音がした。

そこには彼女は護るようにしていた倉庫がありました。私はそこを調べた。そこにはこの子がいた。彼女の面影が残るこの子が。

私はこの子の名前を聞き、そして、この子が私の娘であると確信した。

この子の名前は私と彼女が共にいたとき、子供が出来たらこんな名前をつけようと決めていた名前だったから」

 

話し終え、彼らのほうを向く。

大河とカエデの師弟コンビはぼろ泣きしていた。

ベリオも涙ぐみ、未亜は呆然としていた。

リコは唖然としていたが

 

「うぅ。兄君にそんなことがあったとは拙者知らなかったでござる」

「これは誰にも話す気はありませんでしたから」

 

 カエデに知らなかったとしてもいいと伝える。

いや、だってね。これはさっき考えた話だから。

 

「………ちょっと待って。おかしくない? あんたがこの世界に来たのはつい最近よ。なのに十年も前にここになんかいるはず無い」

 

 ありゃりゃ、気付いたか。

リリィの言葉に全員が俺の話の矛盾点に気付く。さて、第二段階に行きますか。

 

「はぁ、気付いてしまいましたか。この話を信じてもらって、できれば本当の事は言いたくなかったのですが」

 

 重いため息を吐く。決意をするように俺は次の言葉を吐く。

 

「実はこの子は私と………学園長の子供なんです。リリィ。ですからこれからは私のことをパパと呼んでください!!」

「ふざけんな!!」

 

 俺が言い終わると同時にリリィが瞬時に魔力を集め俺にブレイズノンを放つ。

おいおい、正気か? 魔法耐性もない普通の子供がいるっていうのに。

 俺は水の魔術を手に纏わり付かせ向かってくるブレイズノンを打ち消す。

 

「危ないですよ。私だけならまだしもレンもいるんですから」

「え!? ごめん」

 

 リリィが事の重大さに気付き済まなそうな表情をする。

頭に血が上りすぎたのだろう。それでも分別は付かないといけないが。まったく学園長はいったいどんな教育をしてきたんだ?

 

「で? 蛍火さん。一体その子は何なんですか?」

 

 あっ、未亜のことを忘れてた。

未亜が先程の様子がまだ、子供だましにしか思えないほどの雰囲気になっている。

何故か黒くなって「クスクス、笑ってゴーゴー」と言っている。

他の面々は未亜の雰囲気に押されて怯えている。かくいう俺も逃げ出せることなら逃げ出したい。

これは黒化現象!!? やばい。この後は食われる!!?

 

「すみません。冗談が過ぎました」

 

 俺は土下座で謝る。

プライド? そんなもんまず俺にはない。それに土下座で助かるなら簡単にする。

 

「レンは貴方たちが帰還した後に私が見つけた子です」

 

 端的に事実だけを伝える。

それだけで伝わるだろう、この子の存在だけは。

 

「それは分かりました。ですけど何で同じベットで寝ていたんですか?」

 

 あはは、やっぱり。

 

「この子の保護者が私になったからですよ。私の娘というのもあながち嘘ではありません。

それにレンは母親が遠くに行ってしまったのです。寂しさを紛らわせるために一緒の布団で寝ただけです」

 

 俺は遠くに言ったといったが、それでも分かるだろう。もう、レンの親はいないということが。

 もう、未亜も他のものも何も聞いてこなかった。

その辛さがわかるからな。

取りあえず自己紹介を済ませ、俺の用事をしなければ。

 

「さて、すみませんが。当真さんかシアフィールドさん。どちらか悪いですけど今日の講義休んでもらえませんか?

レンの買い物に行きたいんですが。女の子のものは何を買ったらいいか分からないので」

 

 さすがに俺もこの年頃の女の子が何を必要とするかわからないし、初潮が始まったときにどうすればいいかもわからない。

こういう場合は経験者に聞くのが一番だ。

 

 

 何故この二人を選んだかというと。この二人が恐らくこの中で一番普通の感性を持っているだろうだからだ。

 リコに幼年期は無かっただろうし、ベリオは分かるかもしれないが今の流行に疎そうだ。

カエデは今まで修行一筋だろうし。大河はもってのほか。

よってこの二人しかない。

 

「私はかまわないわよ」

「私もいいですよ」

 

 未亜とリリィの間で火花が散る。お互いを牽制しあっている。

このまま放置しておいたら危なそうなので両方を連れて行こう。

 

「なら、両方とも来てもらえませんか? 意見は多いほうが参考になりますし。

あぁ後、髪の毛の結び方を教えてください。三つ編みぐらいしか知らないので」

 

うん。さすがにレンの髪を毎日三つ編みというわけには行かないからな。

 

「蛍火、お風呂」

 

 レンの的確な言葉で昨日、汗を流さずに寝たのを思い出した。

 だって、レンがすぐに寝たいって言ったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺達は平日の真昼間から王都を歩いている。

休日のこの時間になら何度も来たことはあるが平日には初めてだ。

 

 いつもより少しだけ活気が無い。まぁ、それでもさすがは王都、道路に人は混雑しない程度にいる。

 レンとはぐれないように握っている手を少し引き寄せる。

レンは無邪気に俺のほうに近づいてきた。

 

 レンとは学園を出る前から手を握っている。

最初は手をつなぐつもりは無かったのだが、レンが俺の手を唐突に握ってきて、

離そうとするととても悲しそうな顔をするので離せなかった。

当然、その時に一悶着はあったが、

 

 未亜とリリィは俺たちの少々後ろを付いてきている。

その上で何か話し込んでいるが、

まぁ、それなりの人がいるとはいえ俺に聞こえない距離ではない。

 

「あの懐き様、どう思う?」

「難しいかな。今はたぶん保護者とか助けてくれた人だと思ってるけど………もう少ししたら分からないかな」

 

 ん? レンのことについてか? もう少ししたらって何がだ?

 

「気をつけたほうがいい?」

「それよりも私たちが世話すれば大丈夫……かな?」

「確証は出来ないか。あぁ、もう。唯でさえ、また二人増えたって言うのに」

「いったいどれだけ増えるのかな? お兄ちゃんよりも酷いよ」

「え!? あのバカ、そんなにもててるの!!?」

 

 相変わらずバカ扱いか。未亜が怒らなきゃいいけど。

 

「リリィさん。お兄ちゃんは確かに馬鹿かもしれないけどバカってわざわざ言わなくても。

でも、お兄ちゃんの事好きな人は結構いるよ。カエデさんとか、ベリオさんとか、リコさんとか。後、学園内にもちらほらと」

 

 未亜が呆れたようにいうが、貴女認めてますよ。

 

大河のファンは学園にもちらほらといるのか。

まぁ、俺と違って顔はいいほうだからな。後、優しいとか包容力があるとか。

なんだ、性格以外は結構いいところあるじゃん。

 

「バカには変わらないわよ。それにしてもリコもか………、あの子たちも苦労するわね」

「私たちに比べればまだマシだよ。蛍火さん、学園どころか商店街にもファンクラブがあるんだから」

 

 何!? 俺のファンクラブが学園にも商店街にもあるのか!?

知らなかった。といより、何で俺なんかに出来るんだ?

 

「はぁ、この分じゃ、王宮にもできるかもしれないわね」

「あはは、否定できないかも」

 

 未亜が疲れたように笑う。

なんか酷い言いようだ。

それにしても何で俺なんかを、ねぇ?

 

「でも、昨日の今日なのによくあれだけ懐いてるわね。端から見たら普通に親子にしか見えないじゃない」

「たしかに。その内、蛍火さん十人ぐらい子供を持つんじゃないのかな? 女の子だけ」

 

 いや、それはさすがに無いから。

未亜。俺を一体どういう風に思ってるんだ?

助ける中には男の子もいるだろうに。

 

「蛍火さん。光源氏計画でも立ててるのかな?」

「さすがに、無いでしょ。そんなに困ってるなら私が相手してやるわよ」

「あはは、私がいるからリリィさんは無理しなくてもいいよ?」

「未亜も言うようになったわね。ふふふ」

「リリィさんこそ」

 

 未亜とリリィの間に火花がはじける。

未亜とリリィの恐ろしい笑みに周りにいる国民は怯えている。

このまま放置すれば王都は壊滅だ。

幸いなことに目的地は目の前なので気にしなくてもいいが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 中に入るやはり品物の多さに目を惹かれる。レンもその数の多さに眼をむいている。

今まで偏狭と言っても差し支えないところに住んでいたからな。当然か。

 ん? あそこにいるのは店長か。そういえばあれは出来たのか?

 

「おや、蛍火君。久しぶりだね」

 

 俺が声をかけるよりも早く店長のほうが俺に気付き声をかけてきた。

あいかわらず、好々爺としている。

 

「ん? その子はどっちとの間に出来た子供かな?」

 

 店長がレンを見るなりおかしなことを聞いてきた。

いや、さすがに有り得ないから。

後ろのほうで未亜とリリィが顔を赤くしてのぼせていた。否定してくれよ。

 

「まぁ、冗談は置いておいて、この前頼まれた品、出来たよ」

 

 客のプライベートにはあまり立ち入らないところは接客業をするものとしてはさすがだ。

できるのなら、最初から立ち入らないで欲しいが。

 

「そうですか。では、用事が済んでから引き取りにいきます」

 

 店長に一礼して、その場を立ち去る。子供服売り場って三階だったよな。

 

「あんた、こことも面識あるの?」

 

 さすがツッコミのリリィ、小さなことすら逃さない。

あのツッコミはきっと日ごろの行動から養われているのだろう。

 

「えぇ、特殊な服を頼んだりしますから。この服とか」

 

 俺は自分が着ているコートをさす。これもここで作ってもらったものだ。

無茶な注文だとは思っていたが、それでも一言で引き受けてくれた。

なんでもここのポリシーはお客様のニーズには全て応えます。だそうだ。

 

「何を頼んでたんですか?」

「ブラックドラゴンの翼を使ったコートですね」

 

 いやぁ、コートの材料を取りに行くために狩りにいったんだけど、予想以上に苦戦した。

しかも、死伎は使えないときてるから本当に苦戦した。だって、あれ使ったら跡形も残らないからな。

それじゃ意味ないし。まぁ、何とか殺せたけどな。

そのついでにまた称号を手に入れた。なんでも終焉を齎す者(メギト)らしい。一体どれだけ増えるのだろう。

 

「はぁ!? ブラックドラゴンって竜種の中で最強の奴じゃない。最高級の防具なんてよく手に入ったわね」

 

 竜種は総じて防御力が高い。そのため防具などに使われる。

その中でも翼は軽い上に魔法防御力が高い。

この服じゃいつか死伎で駄目にしそうだしな。

 それに一応、大河の分も……最初は渡す心算だったが渡さない方がいいだろう。

 

「まぁ、時間はかかりましたが」

 

 防御力が高いものを加工するのだ。

時間がかかる、それでも二週間とそれなりに早かったが。

原材料をとりに行かなければ手に入らなかっただろう。

 

「今日はその用事ではなくレンの用事で来たのですから。そちらを先にしましょう」

 

 

 

 

 子供服売り場に着く。

普段来ないので新鮮だ。

どういった服がいいのかもわからないからあの二人に任せるのが妥当か。

 

「それではレン。好きなものを選んで当真さんとシアフィールドさんに意見を聞いてください。私は席をはずしますので」

 

 それだけを告げフロアを去ろうとするがまたしても裾を引かれ阻まれる。

……またか…………

 

「蛍火が選んで」

 

 レンが期待を込めた眼差しで俺を見てくる。

昨日と今日でわかったのだが、レンは大勢の前ではわがままを言わない良い子だ。

 なのにこの場面でわがままを言っている。

つまりどうしても俺に選んで欲しいということか。

 

はぁ、俺は服装のセンスはまったくと言っていいほど無いのだが。

 恐らく最初で最後になるから一着ぐらいはいいだろう。

 

「分かりました。でも、期待しないで下さいね」

 

 俺は女の子用の服に手をかける。あまり気分のいいものではないのだが我慢するか。

 

 これは、レンには会わない気がするし、これでは子供っぽ過ぎるか。

これは、形はいいのだが何となくレンとは会わない色の気がする。

これは、子供が着るような服か?

 

 

 何着も見ているがレンに会うものが分からない。まったく、着ているものの感想なら言えるのに、はぁ、難しい。

ここは、今日というよりは昨日から来ているレンの服をまねるとしよう。

 

実はそれ以外の服はもう、跡形も無かったのだ。

それで急遽ここに来たのだが………、はぁ、何時からこんなに甘くなったのだろう。

 取りあえず、白のワンピースにする事にした。

洗濯のとき大変だがそこは俺ががんばるしかない。おんなじ水で洗えないな。

 

「着てみる」

 

 俺が選ぶなりレンは試着室に入っていった。試着室という概念を知っていたようだ。よかった。

 

 

 試着室のカーテンが開く。

そこには避暑に来た深窓の令嬢といったレンがいた。

もっとも令嬢といってもお嬢様といったまだ子供のだが。

 レンが俺に何か聞きたそうな顔をしてこちらをチラチラと窺ってくる。

感想まで言わないといけないか。

 

「似合ってますよ」

 

 ただ、その一言でレンは嬉しそうに、気恥ずかしそうに笑った。

それは例えるなら野原に咲く野菊のように穏やかな笑み、大輪のひまわりのような無邪気な笑みではなくひっそりとした笑み。

 むぅ、何時から俺はこんなロマンチックなことを思うようになったのだろう。

地獄の覇者(サタン)終焉を齎す者(メギト)と呼ばれ、恐れられている俺が。

 

 

 和やかな雰囲気になるがそうは問屋がおろさない。

 

「蛍火さん。荷物が届いてるんですから早くとりに行ったほうがいいですよ」

「そうね。この子は私たちが見てるからさっさと行きなさい」

 

 有無を言わせぬように未亜とリリィが促す。それを面白くないように見るレン。

どっちをとっても後がややこしそうだ。

 

 俺は被害が少なさそうなほうを選ぶことにし、金だけは置いていった。

下着とかもあるから俺がいないほうがいいというのもある。

 

 

未亜の言葉通りコートを取りに言った。ついでに近くの靴屋の主人とも雑談をした。

 靴屋の主人は俺の靴をただで作ってくれた人だ。

なんでも以前から作ってみたかったのだが頼みに来るのがいなかったらしい。

それで、作る機会を与えてくれた俺に無料で作ってくれた。

他にも靴に色々と仕込めないか日々模索中の研究魂があるおっさんだ。

 

 

 

 少しすると憮然としたレンと、晴れ晴れとした顔の未亜とリリィが出てきた。早いな。

荷物が無いところを見ると送ってもらったか。

レンがどんなものを買ったのか興味があったのだがまぁ、また後日見れるだろう。

 レンの様子を見るとおそらく着せ替え人形にされたか。後で甘いもので出してやるか。

 

 

 

 


後書き

 微妙に甘い空気の漂う買い物。

 蛍火がレンに優しい理由。前にも言ったように幾つかありますが、後日送らせていただく。

 蛍火の過去の後書きに載せる予定です。

 レンがかなり特別扱いされているように思えわれるかもしれませんがきちんと理由がありますので。

 

 

 

 さて、今回も張り切って後書きを書くぞ!!

観護(蛍火君が来るかもしれないっていうのにFLANKERさんみたいによく逃げなかったわね)

レン「驚き」

 あのな、蛍火にすでに連絡が行ったんだぞ? あれは例え何処に居ようとも、逃げようとも必ず来るんだよ(泣)

観護(納得)

 やけっぱちに、前回の五択の正解は………実は隠しの八番!! 浩さん惜しい!! レンは蛍火の実の娘だった!?

 ぐふっ、レッ、レン? 観護を突き刺しながらぐりぐりと抉らないでくれる? もの凄く痛いんだけど。

レン「ペルソナ、言って良い冗談と、言ってはいけない冗談がこの世界にあるのは知ってる?」

 YesMaam

 えっと、気を取り直して、正解は………ごばっ!!

蛍火「ふざけた事をぬかすな」

観護(けっ、蛍火君!!!? どうしてここに!? しかも、そっ、それは我流奥義乃肆と禁伎の融合技!?

禁伎よりも上だけど死伎よりも下の威力という中途半端さな為封印された技!!)

蛍火「解説ありがとう。さて、レン、こんな所に居ると悪影響受けてしまいますよ? 早く帰りましょう?」

レン「うん♪ 」

観護(ダメよ!! レンちゃんにはこれからも後書きを盛り上げて貰うんだから!!)

蛍火「黙れ、そこの駄刀」

観護(駄刀!!? たしかに音読みしたら、全く同じだけど。連れてくな、このロリコン、ペドフィリア!!)

蛍火「ほう、叩き折られたいらしいな」

観護(ふん!! 召喚器である私達を………(真っ青))←蛍火ならそんな非常識な事をしかねないと理解した

蛍火「早く帰りましょう」

レン「ねぇ、蛍火。背中を撫でさすって首筋をくすぐるとどうなるの?」

蛍火「レン、その話を誰から聞きましたか?」

レン「この前、浩お兄ちゃんの所に遊びに行った時に蛍火がイムニティに何してたか聞いた。

途中で美姫お姉ちゃんが来て話が終わっちゃったけど」

観護(蛍火君、黒っ!! 第五の仮面よりも怖っ!!)

蛍火「そうですか………、後書きにも出てきた事ですし、少しこの駄作者がお世話になっている方にご挨拶してきます。

レンは先に帰ってください」

レン「すぐに終わる?」

蛍火「えぇ、一時間もかかりませんから………。そう、すぐに終わるさ。跡形も残さんからな

 

観護(えっと、蛍火君は浩さんの所に行って、レンちゃんは帰って、ペルソナは死亡したまんま。どうすればいいのよ!!

   あら? ペルソナの置手紙がある。

えっと、『正解は五番です。なぜ子供だったからなのかはその内に送る設定に乗せますので』との事です。

   それじゃ、次回予告、

まだまだ続く蛍火君とリリィと未亜とレンのお出かけ。次回、やっとOpenるお店を楽しみにしていただけると嬉しいです。

   後、syunさん。誤字訂正の都合で其処まで出来ませんでした。すみません)





正解は七番の蛍火は幼女が大好き!
蛍火 「ほほう」
美姫 「いらっしゃい」
やっぱり来たか。来ると分かっている以上、遠慮もいらないだろう。
蛍火 「この状態の俺を前にしても変わらぬ点だけは褒めてやろう」
いやー、美姫で慣れてるんで〜。
美姫 「ひ、酷い! 私はここまで人間離れしてないわよ!」
いやいや、迫力では……ぶべらっ!
美姫 「酷いわ、可憐なる乙女に」
蛍火 「…俺の殴る暇がなかった」
美姫 「うん? ああ、そうだったわね。じゃあ、はいどうぞ」
蛍火 「はいって既にボロボロに…」
ひ、酷いっ! お前、俺を簡単に売るのか!?
蛍火 「……」
美姫 「や〜ね〜、売る訳ないじゃない」
お、おおおう。俺は今、感動しているぞ!
美姫 「だって、何も貰ってないんだもの。あげたのよ」
もっと酷いわ!
蛍火 「とりあえず、やっても良いという事か」
いやいやいや。そんな事をすると、レンにお前がイムニティにした事を詳細に説明してしまうぞ。
蛍火 「それを封じるためにもやるか」
し、しまったぁっ!
蛍火 「跡形もなく消えろ」
ちょ、おま、それって死伎……あぎゃぁぁっ…………。
美姫 「獄炎に焼かれ、塵一つ残さず消え去れ」
蛍火 「やった俺が言うのも何だが、少しの心配もしないんだな」
美姫 「まあね。少しは静かになるってもんよ」
蛍火 「俺以上に人でな…いや、何でもない」
美姫 「うふふ。何処かのバカとは違ってお利口さんね蛍火くん」
蛍火 「ええ、私もまだ死にたくはありませんから」
美姫 「あら、貴方を殺せるような人がいるのかしら?」
蛍火 「それは買い被り過ぎというものですよ、美姫さん。
     少々、戦い慣れているというだけで、私はただの人間ですから」
美姫 「ふーん。まあ、良いけれどね。今回はお買い物だから、日常的なお話よね」
蛍火 「ええ、そうですね。正直、女性の服の事はよく分からないんですけれどね」
美姫 「次回もまだお出掛けみたいね」
蛍火 「ええ。次回もお待ちください」
次回、『第三十三話 蛍火の初めての経営! 〜アヴァターメイド喫茶物語〜』を乞うご期待!
蛍火 「勝手な事を言われても困るんですけれどね。しかも、普通に復活してこないで欲しいものです」
い、いたい、いたい、いたいよ蛍火!
だ、第五の仮面じゃないのに、その顔怖いぃぃぃ!
美姫 「当分、お仕置きが終わりそうにないからこの辺で」
じ、次回も待ってます!
蛍火 「本当にしつこいですね、あなたは」



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