第三話〜会話〜
「リリアン女学園?!」
「ん。明日からそこで臨時講師をすることになってるんだ」
「へぇ~。人の出会いってわからないもんだね」
「と言うと?」
「私もそこに通ってるんだ」
将太と聖は近くの喫茶店に来ていた。
初めこそあまり会話がなかったものの、今ではすっかり打ち解けている。
将太の場合は粗方情報は持っており、確認程度で済ますつもりだったのだが以外に話が弾んで、今では会話を楽しんでいるようだ。
まぁボロが出ない程度に、ではあるが。
「そうなんだ?!じゃあもしかしたら教えることになったりしてね」
「その時はご指導よろしくお願いします」
「まかせなさい、と自信を持って言えないところが悲しい」
「フフッ、将太君なら大丈夫だよ」
「根拠は?」
「勘♪」
「心配だ~」
そんなこんなで時間は過ぎていく。
ふと将太が時計を見ると、6時を少し過ぎたところだった。
(少し喋りすぎたか・・・。ま、いいか。そろそろ切り上げるかな)
「ん、もうこんな時間か」
「うわ、ホントだ。ずいぶん喋ったね〜」
「確かに。そろそろ出ようか」
「そうだね」
会計を済ませて外に出ると、外はもう薄暗かった。
空を見上げると月がもう顔を出している。
「それじゃ、今日は助けてくれてありがとう」
聖は改めて御礼を言う。
そんな聖に、将太は苦笑すると、
「いや、こちらこそ食事奢ってもらったし、おあいこだよ」
と返す。
「そうかな?」
「そうだよ。それより本当に送っていかなくていいの?」
「うん、大丈夫。私の家この近くだし」
「そっか。それじゃ、次に会うのは学校で、かな」
「たぶんそうなるね。そのときが楽しみだよ」
そう言うと聖は一息おき、
「それじゃ、また今度ね!」
バイバイ、と満面の笑みを残して帰っていった。
将太は残りの調査を終え、マンションに帰ってきた。
いすに浅く腰掛け、背中を大きく反らせて深呼吸をする。
「ふぅ〜。やっとひと段落着いたな。
それにしても今日は思わぬ収穫があったな。佐藤聖、か・・・。」
ただのお嬢様かと思いきや、なかなかどうして面白い人物だったな。
何かを乗り越えたような、そんな力強い目と声をしていた。
まぁ、俺を信用するのもどうかと思うけど、ね・・・。それだけ純粋ってことかな。
それにしても、
「あの笑顔、きれいだったな」
そう言ってから将太は苦笑する。
「まだ残ってたか、こんな感情」
ポリポリと頭を掻く。
あの時確かに捨ててきたつもりなんだけどなぁ。つもりだけだったか?
俺に居場所を与えてくれた人。俺が全てを奪ってしまった人。
楽しかった。
全てが上手くいっていたかのような、そんな日常。
ずっと続くと思ってた。大丈夫、俺はここで生きていける、と。
すべてが、狂った。
恨まれて当然。憎まれて本望。
けどなんで、あの時、彼女は・・・・・・
「っと、イカンイカン。しっかりしろ。明日から先生だぞ」
そこまで考えて、頭を振って強制的に思考を中断させる。
「さてと、明日からに備えてトレーニングにでもするかな」
そう言うと将太は近くの公園に向かうのだった。
夕食を終えた後、聖はベッドの上で寝転がっていた。
「将太君、かぁ」
不思議な人だったな。
最初助けてくれた時は単なるお人よしだと思った。見ず知らずの人を助ける、そんな善人。
そんな彼に、『お礼に食事でも』、と入った喫茶店での会話。楽しくてつい時間を忘れたほどだった。
そして笑顔で別れたはずだった。またね、って。
皆より一日早く彼の存在を知った程度だと思ってた。
なんてことない。心の中に、田中将太という人物がすっかり居座っている。
原因は彼の眼だ。
全てを見透かしたような、優しく、それでいてどこか悲しげな、眼。
たった数時間話しただけなのになぁ・・・。
もっと知りたいな、将太君のこと。
「はっ、何考えてるんだ私?!」
真っ赤になって慌てて思っていたことを仕舞い込む。
「あ〜もう、らしくないなぁ。寝よ寝よっ」
電気を消してポフッ、と枕に顔を埋める。
しかし、暫くの間聖はなかなか寝付けることができなかった。
聖との時間も無事に終わったみたいだな。
美姫 「みたいね」
いよいよ、次は将太がリリアンへと行くのか!?
美姫 「さてさて、次回はどうなるのかしらね」
それでは、また次回で。