『トラハ的な日常1・2・3』






 設定は恭也が大学2年いわゆるALL ENDのご都合主義です。
 トラはシリーズの1.2.3混在SSって事でそれでもいいよって人は進めてくださいませ。







 第7話
 騒がしい夏の夜









 日も暮れかかり辺りは薄暗く、ただ静かな波の音だけが響く
 そんな浜辺に面した雑木林の中で高町恭也は静かに佇んでいた。


 「・・・・・・・」


 そっと目と閉じ腰に二刀差している小太刀の柄そこに手を添える。


 ジャッ・・・

 
 突然林の暗闇から月明かりをうけた飛針が一本、
 それに少しの間を空け続けて二本、恭也に向かい飛んできたが
 恭也も読んでいたのかスッと体を落とし一本を避けた後、
 続く二本も体の軸を回すように軽くかわす。

 「ふむ」

 飛針が最初に飛んできたほうとは反対の方に目を向けかまえを深くとる。

  ヒュッ・・・

 今度は正面からと側面から微妙にディレイがかかった飛針が三本づつ
 恭也を交差するように煌めいた

 「ちっ・・・・」

 舌打ちしながらも難無くかわす恭也であったがその視線は飛針ではなく自分の左腕と右足に向けられた。
 その視線の先、左腕と右足に初見では気が付かないほど細い糸が巻きついている。 
 恭也は先に左腕の鋼糸を手首の返しだけで小太刀をつかい断ち切る

 「そこか」

 左手の鋼糸を断ち切るのと同時に強く引かれた右足の鋼糸そのままに糸の繋がるその先に駆け出す。

 「っ!・・・・」

 「ふっ!」

 視線を向けず後方に飛針を二本飛ばしながら前方に向かいさらに速度を増し駆け抜ける。

 「はぁぁぁ・・!!」

 前方に見えた人影に気合の声と共に切りかかる恭也

 「せぇぇぇい!」

  ガ!ガンッ!!

 斬撃を大木の陰から飛び出した美由希が受け止める。
 その隙に右足の鋼糸を断ち切り、右を切り上げそのまま二人は乱撃を数合打ち合う。

 「ふん!!」

 「わわ!?・・・」
 
 恭也の『徹』のこもった左からの斜め袈裟を右の小太刀だけで受けきれず
 瞬時に左の小太刀と右を交差して美由希は受け止めた、が次の瞬間恭也はその場から左に大きく跳躍した。

 「くっ!・・」

 咄嗟の跳躍で体のバランスが少し崩れ着地が乱れる
 その一瞬に恭也の背後から斬撃が飛ぶ

 「はぁ!」

 ギギンッ!!!

 闇夜に銀色に煌めく二本の剣線が浮かび火花の散らしながらぶつかり合った。

 
 「よく今のを止めたね、恭也」

 「ぎりぎりでしたが・・・」

 「だが!」


  ヒュヒュッ!


 続けて美沙斗とは逆のほうから飛針が飛ぶ
 恭也は美沙斗の斬撃を『徹』をこめた斬撃で弾き続けて下段に足払い
 そのまま避けられた足を踏み込んでさらに美沙斗に詰め寄る。
 美沙斗側に大きく踏み出した後に二本の飛針がささっていた。

 「ちっ!」

 美沙斗は恭也が自分に迫り胴を狙った薙ぎを後方に飛ぶ様にして避け視線を恭也の後方に向ける。
 美沙斗の視線の先から恭也の肩口を狙った斬撃、
 
 「ぐ・・・」

 美沙斗の視線を察知し肩口に抉るように打ち込まれる剣線、それを剣線の外に体を開く形でかわし
 次の瞬間脳内のスイッチを入れる。


 「!・・」


 しかしそれを読まれていたのか周囲がモノクロに染まった風景の中で美沙斗だけは彩を失わない。
 (読まれたか!!)

 重い空気の中で真っ直ぐ自分に伸びてくる彩も持った切っ先
 『かわせない』・・そう判断した恭也はさらに意識を極限まで集中しもう一つ高みの世界へ踏み込む。 

 「なっ!?」

 自分と同じモノクロの世界で同じ速度だった恭也の動きがさらに早くなった事で美沙斗の胸を狙った突きは空を切った。
 恭也はさらに重たくなった空気の中、自分の居た場所を通過する剣を右の切り上げで弾く。
 
  ゴキン!!

 っと重たい音と共にできた美沙斗の隙にそのまま踏み込み、突きによって前方に流れた美沙斗の腹部に招拿を叩き込む。
 美沙斗はなんとか膝で受けたが神速二段掛けからの打撃ためにこらえ切れず、後方に弾かれる形でお互いの距離が広がった。
 その時打撃を放ち神速が解けかけた恭也の視界、その隅に銀線がきらめく。


  ガギキンッ!!・・・


 遅れる様な剣音が響いた。
  
 「今のも受け止めるの?・・・恭ちゃん、本当に人間だよね?」

 「随分な言い様だな、美由希」 
 
 美沙斗と同時に入った神速、美由希はコンマ数秒送れてまた同じ世界に入っていた
 (しかし、今のは危なかった・・・止めれたのは本当に運だな。神速の解けきっていない間で助かった)

 「それに、今のはお前の剣筋を知っているからこそ止められた」

 「おかしいよ・・・・」

 美由希の『斬』を受けながら見慣れた美由希の剣筋を捌いていく
 しかし・・・

 「ぬ・・・」

 『斬』に混ざって放たれる『徹』や『貫』のこめられた斬撃が予想よりも速い
 (美由希め、また腕を上げたか。もうすぐ超えられるかもな・・)

 幾つか掠めるような剣筋をかわし隙をついて美由希の腹部に蹴りを入れて距離をとる。
 先ほど恭也の招拿を足で受け痺れが残るであろう美沙斗も間合いに入って来たからだ。

 「流石だね、いい退きだ。よく気が付いたね」

 「すでにギリギリですよ、さすがに辛い」

 苦笑を浮かべつつ美由希と美沙斗の間合いを計る。


 恭也たちは少し前から『一対多数』の鍛錬をしていた。
 今までは美由希と二人きりで他に同じ様な力量の友人が少なかったため、そういった鍛錬はなかなか出来なかった。
 赤星と美由希相手そこにレンや晶を交え幾らかやったくらいである。
 しかし、美沙斗が帰ってきたおかげで『恭也と美由希』が組んでのコンビネーションなど
 バリエーションが増えた鍛錬が出来るようになっていた。

 「やはり、何度やっても御神の剣士を複数相手にするのは怖いですね」

 「そうかい?私には楽しんでる様にもみえるが」

 美沙斗は苦笑を浮かべながらも自分の間合いギリギリで隙をうかがう。


 「恭ちゃんとか〜さんのコンビの方が怖いよ・・」

 「美由希、お前はコンビネーションは問題ないが多数相手だとまだ荒い」

 「うぅ・・恭ちゃんとか〜さんの方が普通じゃないんだよ・・」

 そんな会話の最中でも美由希と美沙斗はジリジリ間合いをつめてくる
 (神速二段掛けを使ったからな・・・これ以上はちとつらいか)


 この二人相手に長期戦はきついと判断した恭也は二刀を鞘にすばやく収め
 深く構えをとる。

 ピク・・・・・

 少し間合いを広げる美由希

 「・・・・・・・」

 無言で美沙斗も距離を取り美由希に一瞬視線を向ける
 その視線を受け美由希も小さくうなずく。

 「恭也、そろそろ終わりにしようか」

 「ええ、夕食もそろそろですし・・・」

 そして美沙斗は空けた距離のまま腰を落とし弓を引き絞る様に構えを取る
 それに美由希も合わせるかの如く同じ構えを取った。
 (・・・・・・かわせるか・・・いや、無理だな)


 美由希と美沙斗は恭也の前方に分かれて構えている。
 側面と前方ならどちらか一方を先に狙えばまだ活路はみえるのだが・・・
 二人はお互い逆の斜め前方に位置どって居る。
 御神最長射程、そして恐らく正統奥義『鳴神』そして極み『閃』をのぞけば
 恐らく最速の奥義『射抜』二人の親子ゆえの同じ得意奥義かもしれない。
 

『射抜』はかわされても派生可能。
 しかも、それが前方2方向からほぼ同時にである。
 距離にして約5メートル強・・・『射抜』のもつ射程と想像を超える瞬発力があればないに等しい距離だ。
 すでに美由希の『射抜』は美沙斗さんからも認められる程その切れは増していた。
 思わず苦笑がこぼれる恭也。
 (絶体絶命だな・・・速さと切れなら美由希、正確さと威力なら美沙斗さん・・・か) 

 苦笑を浮かべていた美沙斗の表情が引き締まる
 (来る!!)


 「いくよ」

  バンッッ!!!!・・・ドンッッ!!!!


 爆発的な踏み込みの音が二方向で響く。
 美沙斗と美由希、二人の砂質の足元がまるで何か爆発したかの様に舞い上がった。
 そして二人の姿が同時に視界から消えた。


 「くっ!!・・・」

 
 それと同時に神速に入った恭也はモノクロの世界で凄まじいスピードを称えつつ
 自分めがけ踏み込んでくる二人を見据えた。
 (どうやってもかわせまい!!ならば・・!!!)

 一瞬で神速を二つ重ねる・・が美由希と美沙斗の彩は失われない。
 そんな二人に恭也は突っ込んでいった。

 「おおおおおおぉぉぉ!!」

 「はああああぁぁ!!」

 「せええぇぇぃ!!」

 恭也、美沙斗、美由希の裂帛の剣気がぶつかり合う。


 ゴォウッ!!・・・・

 近くで聞くとまるで突風の様に聞こえる二人の突き
 僅かに美沙斗よりも早く美由希の突きが迫る
 
 「ぬぅぅぅ!!」

 一気に全身のバネをつかい体を無理やり体を沈み込ませ美由希の初撃をやり過ごす

 ギシッ!!・・・

 体中の筋肉が悲鳴を上げるがそれに耐える。
 しかし零コンマ数秒おくれて美沙斗の突きが迫ってきた。
 (まだだ・・・・!)

 全身を軋ませながら体をなんとか捻り掠める様に突きをかわす
 そこに避けた美由希の初撃が派生し跳ね上がってくる。
 (ぐぅぅぅ・・・もう少し!)

 その美由希の斬撃にあわせる様、美沙斗の初撃も派生し逆から引き戻されてきた。
 (ここだ!!)

 「おおぉぉ!!!・・・・」

 二人の派生した横と斜め下からの斬撃が交差する寸前
 一気に恭也は体を跳ね上げる。体がさらに悲鳴をあげるが無視して放たれた、
 下から打ち上げる様な恭也の奥義『薙旋』


 ガギギンッッッ!!!!

 
 右の小太刀を最速で抜刀し二人の斬撃を交差した所でまとめて切り上げる

 「っっ!!!・・・」

 「くぅ・・・!?」

 美沙斗と美由希の腕に強烈な衝撃が走った
 しかしまだ二人は止まらない。

 「まだ・・!」

 恭也に迫る今度は上下に分かれて放たれた初撃以上の速さの二つの突き
 一撃目の抜刀とほぼ同時に放たれた二撃目の抜刀、ソレを美由希にたたきつける

  ギガンッ!!!!

 鈍い音を発し美由希の小太刀は火花を上げ切っ先の少し下から折れ飛ぶ。
 だが美由希は折れたままの刃で派生させ横から薙ぐ

 「ちぃぃ!?」

 美沙斗に当てるはずだった三撃目を体を回転させそのまま折れた刃での美由希の薙ぎに叩き付けた。
 (美由希の奴!?ここまでやるとは!!)


  ズガンッッ!!!


 何とか四撃目で美沙斗の突きを受けたが派生された左袈裟が首筋に迫ってくる。
 (くそ・・・ここまでか・・・)

 そう思った恭也だったが体はさらに踏み込み、派生された左袈裟に
 体を半回転させたような五撃目をたたきつけていた。

 「なに!?・・」

 まさかの五撃目に驚きの隠せない美沙斗であったが五撃目は正統な『薙旋』が持つ威力ほどではなく
 『射抜』の派生した斬撃に負け恭也の合金製の練習刀は根元から砕けた。
 そして美沙斗の刃はそのまま恭也の首筋に吸い込まれていった。

 「はぁ・・はぁ・・はぁぁ・・・」

 恭也の首筋に当たる冷たい刃の感触

 「参りました・・」





 「はぁ・・はぁ・・恭ちゃん、本当にか〜さんとの『射抜』全撃返されるかと思ったよ(汗」

 疲れからであろう、美由希はゴロンと横になりながら話している。

 「大丈夫かい?美由希」

 「うん、か〜さん♪」

 美沙斗さんが手を貸し美由希をおこすが

 「あいいいぃぃ・・・手がまだ痺れてる・・・恭ちゃんがあんな無茶な方法とるからだ;」

 「あんなとは失礼な・・・」

 「いいや、確かに美由希の言う通りだね(苦笑」

 「ですがあれしか・・(汗」

 恐らく『射抜』を返した事であろう

 「あんなの恭ちゃんしか出来ないよ(汗」

 「恭ちゃん。見てみなよ・・練習刀」

 美由希が差し出した合金製の練習刀は見事に折れていたと言うより砕けていた、もう一本の方も刃こぼれでボロボロである。

 「ぬぅ・・・・」

 通常の物より遥かに頑丈な特別製の刀でこの惨状だ。
 最後の奥義の打ち合いの凄まじさが伺える。
 たしかにやり過ぎか・・(汗

 「私もまだ手が痺れているよ。恭也は大丈夫なのかい?」

 「まぁ・・・」

 といっているが・・
 正直やばいかもしれない・・体中が軋んでいる

 「化け物だ・・・恭ちゃん・・・やっぱり人外だったんだね(汗」

 「いい度胸だ。」

 そういって美由希の頭にゲンコツを落とそうとするが、

 「ぐぅ・・・・」

 ずきずきと膝が痛む。
 思わずその場に片膝をついてしまう。

 「恭也、無理しちゃだめだよ。神速の二段掛けを2回も使ったんだ、それだけでも常人なら耐えられないのに」

 「それに最後のあの沈み込んだのもきっと凄い筋肉使ってるよ。あの状況でアレが出来るのも恭ちゃんくらいかも」

 なんだか俺はすごい言われような気がするが・・・
 しかし反論出来るわけもなくその場にしゃがみこむ。
 ふと時計をみると19:30を指していた。

 「少し遅くなりましたね、皆待ってるでしょうから早くかえりましょう」

 「ああ、そうだね」

 こちらに来て1時間少ししか体を動かしていないが内容が内容だけに数時間鍛錬をした後みたいだな・・
 もっとも最後のあれは回りからみればほんの数秒程度だと思う。
 そんな事を思い立ち上がろうとするが・・・体が軋んで思うように・・(汗

 「はい、恭ちゃん」

 「ぬ?なんのつもりだ?」

 「体がきしんで動けないんでしょ?」

 「・・・・ぬぅ・・」

 少し頬を赤らめながら美由希が肩を貸してくれる。
 たしかにちとつらい・・・ここは。

 「美沙斗さんまで・・(汗」

 逆を美沙斗さんに支えられながらそして、美由希は反対側だ。
 なんと言うか、恥ずかしいし情けない(泣
 もっと精進せねば・・・

 そんな後悔の中、美沙斗さんは何やら難しい顔をしていた。

 「どうしたんですか?」

 「恭也の『薙旋』で最後に放った五撃目、あれは分かってて放ったのかい?」

 「それが、殆ど条件反射かと・・・正直ここまでと思ったんですが、頭とは反対に体は動いていました」

 「今までの鍛錬のおかげって奴かもしれません」

 「・・・そうか、」
 (昔兄さんも同じ様に五撃目を打った事があったな。血は争えないな)

 何やら薄い笑みを浮かべて考えている美沙斗さん
 
 「それと美由希、最後の『射抜』は素晴らしかったよ。私でもああは打てない」

 「か〜さん、そんな事ないよ〜。まだ勝てないし・・・」

 「いや、勝てる勝てないじゃなく美沙斗さんの言う通りだ」

 確かに美由希が放った『射抜』は今までの中でも一番だったかもしれない
 速さ切れ、そして派生後の繋ぎ、なにより止められても諦めなかったところが
 
 「恭ちゃん?」

 「あ〜〜〜その、なんだ・・あの『射抜』は・・まぁ、よかったぞ・・・・」

 何時もはめったに褒めないので、美由希は一瞬呆けたが、すぐ気を取り直し

 「うん、ありがとう♪」

 輝くような笑顔をしていた。
 自由になる手でポンと頭に手をおいてやる。

 「えへへ・・♪」

 「でも恭ちゃんは戻ったらフィリス先生に大目玉だろうね(汗」

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・
 なんと言うか怖い事を思い出させてくれる(汗

 「恭也(苦笑」





 コテージに戻ったら案の定

 「恭也くん!?どうすればこんな短時間でこうなるんですか!!!!」

 般若の如し形相でまくし立てるフィリス先生

 「幸い膝はそれほどでもなかったから良かった物の、まだ『完治』ってわけじゃないんですよ!!」

 「はい・・スイマセン・・」

 その光景をニヤニヤと笑みを浮かべ見物しているリスティさんや忍たち
 しかしアレだけ膝を酷使したのに悪化していなかったのは幸いだな・・・
 フィリス先生や那美さんたちに感謝せねば。

 「聞いてるんですか!?」

 「ハイ・・・」

 「とにかく、食事が終わったらたっぷりと!マッサージしてあげますからね(ニコ」

 「・・・・・(汗」

 なんて言うか・・・逃げ出したい(泣

 「まぁまぁフィリス、先に食事にしようじゃないか」

 「そうなのだ、お腹へったのだ」

 「唯子もぺこぺこだよ〜」

 「二人ともパクパククッキー食べてたじゃない・・」

 そんな瞳の言葉でその場はお開きとなった。



 「これはまた・・・」

 「どうだい?たいしたもんだろ?」

 「ええ、それどころか一流のレストランよりも・・」

 大きな丸いテーブルに並んだ料理はたしかに感嘆して遜色ないほどのもんだ。
 そこに、晶とレン、なのはたちが戻ってきた。

 「おにいちゃん♪おかえり〜」

 「ああ、ただいま」

 「あんた、どうしたの?それ・・・」

 「・・・・まぁ、色々とな」

 母さんが引くのもしかたなかろう。
 フィリス先生によって腕や首にたがわずそこらじゅうに張られた湿布と包帯。

 「また、無茶したんですか?師匠」

 「ただの、鍛錬だ・・・」

 「一体どんな事してるの?私にも教えてくれないかしら(苦笑」

 「残念ですが護身道には使わないことですよ(苦笑」

 フィアッセや忍の姿がみえんな

 「耕介さん?忍やフィアッセは?」

 「忍ちゃんなら通信機いじってるはずだよ、フィアッセさん達は2階のテラスじゃないかな?」

 「ありがとうございます、夕食なんで呼んできますね」

 「すまないね」

 まったく・・賑やかだな
 だが、それも悪くないと思う。



 2階にあがると歌が聞こえてきた

 「ほう・・・・」

 しばしテラスには出ず壁にもたれて聞き入る。

 「いい歌だ・・・」

  ♪♪〜♪〜〜〜♪

 テラス側の大きな窓からは月の光が柔らかくさしこんでいる
 その向こうで3人の歌は夜空に消えるように歌われていた。

 

 「久しぶりだったね〜三人で歌ったの♪」

 「フィ〜のバックコーラスは任せてっていつも言ってるでしょ♪」

 「そやで、また今度三人でツアーやろか」

 「いいね〜」

 ドアの向こうから聞こえる声
 どうやらおわったようだな。

 がちゃ・・

 「!・・」

 「恭也!」

 「飯だぞ、三人とも」

 「もう!おどかさないで」

 「すまんな。」

 頬をかわいらしくプ〜と膨らまし文句を言う三人に苦笑しつつ
 テラスから見える夜空を見上げる。

 「綺麗な星だな・・空気が澄んでいるのだろう」

 海鳴も綺麗だがここはさらに小さな星まで見える

 「聞いてたの?」

 「ん?ああ、済まなかったな盗み聞きしたみたいで」

 「そらかまへんけど、一言声掛けてくれてもいいんとちがう?・・」

 「すいません、でもいい歌でした」

 その言葉に三人は嬉しそうに

 「「「うん♪」」」

 と頷いた。

 「さぁ、先に下に下りといてくれ。さくらさん達を呼んでいくから」

 「はぁ〜い、そこの廊下の突き当たりで何かしてるみたいだったけど」

 「ああ、分かった」

 廊下を歩いていくと今度は歌ではない声が聞こえる。

 「ああ!もう、さくらちゃんともっててよ!」

 「あなたが触るからでしょう!」

 「忍お嬢様準備ができました」

 何やら大変そうだな

 こんこん・・

 「はい、開いております」

 「ああ、ノエルどうだ?」

 「恭也くん、今忍にやらしてるけど」

 さくらさんが心配そうに忍をみる

 「ちょっとまって」

 スイッチの様な物をいれダイヤルをまわすが・・・

 ザ・・ザザ・・・・

 「だ〜めだ〜部品がないときついよ〜」

 「とりあえず後にして食事だぞ忍」

 「はぁ〜い」
 
 ノエルたちと部屋を出る
 その時・・・
 ん?・・・・今大気が揺れた気が

 ゴ・・ゴゴゴゴ・・・

 「キャッ、地震?」

 「大丈夫ですか?さくらさん」

 「ええ・・」

 「ただ今の推定震度はM3,6です」

 「ノエルはそんな事までわかるのか」

 「ジャイロセンサー使ってるからある程度なら検知できるのよん♪」

 忍が得意げに話す

 「さくらさん、ここは多いんですか?」

 「いいえ、今までなかったけど」

 「小さかったし大丈夫でしょ、降りよお腹ぺこぺこ♪」

 「・・・・そうだな」 

 下に降りるとすでに準備は整っていた
 
 「皆、食事が終わったら桃子さんとなのは特性。翠屋ケーキがあるからね〜♪」

 「「「おお〜♪」」」

 「楽しみだにゃ〜♪」

 「あ〜ん、私もチーズケーキ作ればよかった」

 「知佳、今度でいいじゃないか。いつでもつくれるんだしね」

 「お兄ちゃん、でもでも〜」

 「それは今度お願いします、知佳さん」

 「恭也君・・」

 ただでさえ甘いものは苦手なのにケーキのさらに上乗せはきつい(汗
 こうして食事は過ぎていく。


 


 食事も終わりみんなでリビングで寛いでいる。
 耕介さんに話しておかねばな。

 「耕介さん、ちょっといいですか?」

 皆に気ずかれない様そっと耳打ちする。

 「なんだい?」

 「もう少し後でちょっとお話が、お時間いただけますか?」

 「ああ、いいけど」

 「では二階テラスでまってます。」

 「わかったよ」




 一人テラスで眼下に広がる浜辺と海を眺める。
 水平線も闇に覆われ空と海の境目もはっきりとは分からない
 月の光だけが海に反射しかろうじて視認できるくらいだ。

 「いい風だね」

 背後から掛かる声に振り向かずに答える

 「そうですね、穏やかで心地いい」

 すっと横のテラスの柵に寄りかかる耕介さん

 「それで、どうしたんだい?」

 「感じますか?」

 「何をかな?」

 静かに目を閉じ耕介さんが何かを探る

 「・・・・やっぱ駄目みたいだよ。霊力を出してるなら微かにでも感じられるんだろうけど」

 「気配って奴は君達ほど僕らには感じられないんだろうな」

 恐らくとても薄いかすかな気配だ、だが霊力と言った類は発していないのだろう
 自分も目を閉じ自分の知覚範囲を大きく広げる。

 「・・・・・やはり僅かに増えている」
 
 「耕介さん、自分たち御神を修める者は何処にいってもまず周囲の気配を探ります」

 「神咲でも似たように霊力をさぐることもあるからね」

 「はい、そしてこの島に初めて上がった時には自分も美沙斗さんも何も感じなかった」

 「しかし、忍のやらかした例の爆発の後ほんの微かで薄い気配を島の中で幾つか感じたんです」

 耕介さんの表情が少し引き締まる

 「それは何なのかわかったのかい?」

 無言で首を振る

 「分かりません・・・生き物なのかそれとも別の物なのかさえも」

 何かを考え耕介さんは空を少し仰いだ

 「危険・・・な物なのかな?」

 「残念ながら、ソレすらも自分には・・・ただ、殺気や危険な物は感じられないですが」

 「そうか・・」

 ざぁ・・と風が吹き抜ける

 「でも安全な物とも限らないんじゃないかな?恭也」

 突然背後の少し上方で気配が生まれた

 「リスティさん」

 「やぁ♪」

 「聞いていたんですか?」

 「別に盗み聞きしてた訳じゃないよ。でも僕も同じ様な気配を幾つかこいつで感じてね」

 そう言って背中に光る三対の翼を差す
 リスティさんの羽『トライウィングス・オリジナル』

 「で、リスティには分かったのかい?正体が」

 「いんや、無機質な物みたいだけど恭也と同じ」

 「耕介さん、リスティさん皆にはまだ話さないで下さい」

 「いいけど」

 「まだ危険で害が有ると決まったわけではありませんし、幸いこの周辺では感じないですから」

 「俺はかまわないけど、リスティもいいのか?」

 「僕も恭也の意見に賛成。せっかく皆楽しんでるんだしね」

 「ええ」

 二人の心使いに思わず笑みがこぼれる

 「美由希と美沙斗さんはすでに知っています。」

 「そうか」

 「はい、そして今晩は自分が警戒にあたります。すでに戦闘用の装備も準備してますから」

 戦闘と言う言葉に二人の表情が少し険しくなった。

 「なるべく戦闘はさけたいな」

 「ええ・・ですが、もし自分の大切な人たちに危害を加えようとするのなら・・・」

 そう、自ら打って出ようなんて思わないが家族や友人たちに手をだそうとするなら・・
 俺は決して許さない。どれだけ危険な物だろうとこの両手に握る小太刀でたたき伏せる。

 「恭也くん、少し落ち着きなよ」

 「すいません」

 どうも神経質になってるようだ。
 少し目を閉じ心を落ち着かせる。

 「俺だって同じだよ、ここに居るリスティだって下にいる皆、勿論君も俺の大切な家族であり友人だ」

 「耕介さん・・」

 「その大切な人たちに何かしようってんなら俺だって許さない。その時は全てを掛けても戦うよ」

 耕介さんの中に膨れ上がる闘気。
 表には出さないが内に秘めた物はとても激しく感じられる。

 「そう言うことさ、いざとなったら僕だって鬼にでも悪魔にでもなってやるよ」

 おどけながらそう言うリスティさんだが恐らく大切な人たちを守るなら躊躇しないだろう。
 心の中にひろがる安堵と少しの嬉しさを感じながら俺は頷く。


 ゴゴ・・・ゴゴゴゴゴ・・・・

 
 「む・・また」

 「今度のはさっきより少し大きいね」

 さっき感じた地震より少しおおきな揺れだ。


 『キャアアアアァァ』


 !!!この声は・・なのは!?
 突然下から聞こえた悲鳴それに駆け出す!

 ダダダダ・・!!

 「・・・・行っちゃったね」

 「ああ・・でもたしかなのはちゃん達は今・・」

 階段を駆け降り悲鳴のしたであろう部屋を開く

 ガラッ!!

 「大丈夫か!?なの・・・は・・・」

 「へ?・・・・」

 「え?・・」

 「お・・お兄ちゃん?・・」

 な・・なんで皆裸なんだ・・・
 辺りを見回す・・・見えるのは大きい湯船。
 そして目の前で呆然としている裸の那美さんと知佳さん
 後は湯船に浸かっている美由希と美沙斗さん・・・
 なのはは高町母の背中を洗っているのか?
 最後にプルプル震えている瞳さんと横で???してる鷹城先生・・

 「な・・な・・なぁ〜〜〜!!」

 バッ!!と見上げると大きく『湯』の文字
 
 くいくい・・・・

 裾を引かれ見下ろすと

 「きょうやもはいる?」

 裸の久遠がいた。

 「「「きゃあああぁぁぁ!」」」 

 「す!すいません!!!」 
 
 バンッ!!あわてて扉をしめる。
 どうなっているんだ!?
 ばたばたとリビングに戻り心を落ち着ける・・が
 モロに皆の裸を見てしまった・・・

 「・・・・!(赤」

 「ど、どうしたんだ?青年・・」

 「な・・なんでも有りません!!(赤」

 どうやって誤ろう・・・(汗





 第8話

 始まりのとき


 に続く







 ひよひよでございます

 今回は恭也たちの鍛錬の内容と

 ちょっとのバトルを入れてみたく書きました(駄文ですが^^;)

 あと最後のお約束(笑

 王道ってやつも^^;


 それでは8話でまたです
  


お約束は大事だよね〜。
美姫 「勿論、大事よ〜」
ひよひよさん、グッジョブ!
美姫 「それはそうと、時々起こる地震と謎の気配ってやっぱり関係が…」
う〜ん、どうだろうね。
それも徐々に明らかになっていくと思うよ。
美姫 「そうよね。それにしても、恭也たちの鍛練は凄いわね」
うんうん。さて、次回以降どんな展開が待っているのか。
美姫 「そして、不可抗力とはいえ、女風呂を覗いてしまった恭也の運命は」
とても気になる所で、次回〜。
美姫 「楽しみに待ってますね〜」



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