恭也's Monologue
菜乃葉(なのは)が家にやってきて数日。
月村が、近くの裏山でガラクタらしき物を拾ったって連絡してきた。
その時は気にも留めていなかったのだが……
月村の機械好きのおかげで、海鳴市が大パニックになるとは予想していなかった。
魔法少女リリカルなのは
−White Angel & Black Swordmaster 〜Side Story〜−
Side:02「海鳴市ガジェット警報」
恭也's View
春の日差しが暖かいその日。
俺は、講義を受ける為に大学に来ている。
流石に入学早々から眠るわけには行かないので、目を擦りながらも講義を受けていた。
眠気を伴う教授の話し方と格闘しながら……
俺の隣では、悪友である月村が既にいびきをかいて熟睡している。
そんな月村をみて、俺は呆れていた。
不意に呼鈴が鳴る。
ようやく講義が終わり、周りが騒がしくなってきた。
その騒ぎによって、熟睡していた月村が起きた。
「あっ、高町君……
おはよう〜」
「おはよう……
じゃないだろ、まったく……」
俺の呆れた言葉に、月村は苦笑しているだけだった。
「珍しいよね、高町君が授業中寝ないなんて」
「流石に、入学早々から寝る勇気なんてない」
月村の言葉に、俺は無愛想に答えた。
まったく、月村の神経ときたら図太いったらありゃしない。
月村は苦笑してたが、ふと思い出したように質問してきた。
「そういえば、高町君?」
「……なんだ」
「那美から聞いたんだけど、生き別れた親戚が来てるんだって?」
ああ、そうか。
神咲さんは、アルバイトで月村の側人をやっていたな。
まぁ、話すなとは言っていないから別に問題ないが……
「ああ、そうだが……
それがどうしたんだ?」
「う〜ん、那美が言うには、凄く仲が良いって聞いたからね。
高町君にも好きな人が出来たのかな〜と思ってね……
内縁の妻がいるのに、浮気者」
「誰が、何時、お前の内縁になったんだ?」
月村の言葉に、心底呆れる。
まぁ、とある事情でこいつに血を与えざるを得なかったのは事実なんだが……
それでも、フィリス先生に頼んで輸血パックで渡しただけだ。
俺の怒気をはらんだ言葉に、月村は首をすくめる。
「ちょっとしたジョークじゃない」
「まったく、いい加減にしてくれ。
ただでさえ、かーさんからもからかわれる身にもなってみろ」
ここ最近はかーさんには散々からかわれていた。
もっとも、度が過ぎる場合は制裁も行なってはいるのだが、当の本人は懲りていないようだ。
そして、月村はかーさんと波長がある。
二人がそろった時は、もはや俺にとっては地獄確定だ。
案の定、月村は懲りずに菜乃葉の事を聞いてくる。
「それで、高町君。
そこ娘の事は、どう思っているの?」
「どう思っていると言われてもなぁ……」
今の俺にとっては、菜乃葉は護るべき人物としか認識していない。
まぁ、どこと無く意識しているのは事実なんだが……
それでも、月村よりかは遥かに良いのは事実だ。
「まぁ、お前よりかは出来た人物なのは事実だな」
「あっ、それヒド〜イ!!」
「……そう思うのなら、回りに迷惑をかけるな。
お前が何か仕出かすたびに、少なからず被害は出るんだからな!」
俺の言葉にふてくされる月村だった。
だが、事実を言ったら月村は固まった。
月村が何か仕出かすたびに、大なり小なり被害が出ているのは事実だった。
そして被害者は、俺を含めてかなりいる。
そんな事を思い浮かべて、細い目で月村を見る。
月村は、机にのの字を書いていじけていた。
「いいもん、いいもん。
忍ちゃんの実験は、いつも失敗だもん」
「……失敗するのは構わんが、周りを巻き込むな。
被害を受けるのは月村だけにしてくれ」
「血も涙もない高町君なんて嫌いだ……」
「……そりゃどうも。
一番被害を受けてるのは、他でもない俺だからな」
いじけている月村に、慰めるどころか止めを刺す俺。
まぁ、日頃からの行いって奴だ。
俺の言葉によって、完全にふてくされた月村。
それは何時もの出来事。
「う〜。
高町君は、なんで慰めの言葉が出ないのよ〜」
「そりゃ、日頃からのお前の行動によるからだ。
だいたい、トラブルの原因は他でも無いお前だろうが……
俺としては、慰めよりも怨みを言いたいぞ」
「む〜」
相変わらず愚痴を言う月村だったが、俺は一刀両断で話を切っていた。
事実を言われてふてくされるなら、最初からするな。
そう思いながら月村の相手をしていたが、次の講義までの休み時間は残り少なくなってきた。
「何時までふてくされているんだ?
そろそろ、次の講義が始まるぞ……」
そう言いながら俺は席を立って、次の講義を行なう教室に向かう準備をしている。
月村もしぶしぶ行動を起こした。
俺は、ふと思い出し月村に質問する。
「ところで、ガラクタを拾ったって言ってたな?」
「うん、そうだよ。
それを解析するのに徹夜したから、眠いったらありゃしない」
さっきのふてくされた表情はどこへやらと言う風に、目を輝かせて話す月村。
「だからか、あそこまで熟睡していたのは」
「そ〜だよ。
それに、あの授業ぐらいなら簡単に点は取れるからね」
「……そうか」
月村の行動に呆れながらも、羨ましいと思った。
俺と違って、月村は理数系の天才である。
だからこそ、俺と違って堂々と眠れるこいつが羨ましい。
「まぁ、何だ……
周りに迷惑をかけないようにしてくれ」
俺は月村に小言を言って別の教室に向かった。
その時は、まだ気づかなかった……
月村によって触られたガラクタは、すでに暴走を開始していた事に……
なのは's View
私がこの世界にやって来てから、既に数日が過ぎています。
その間、情報を集めていたわけなんですけど……
実際には、有益な情報は集まっていないわけです。
そんな事を考えながら、私は高町家のリビングに居ます。
この日は、なのはちゃん、晶ちゃん、レンちゃん共に授業が午前だった事もあり、既に帰宅しています。
そういうこともあり、一緒に昼食をとった後はみんなとくつろいでいたのですが……
「おい、亀!
なんやら機械が飛んでるぞ!?」
「なんや、おサル?」
晶ちゃんの驚いた言葉に、半信半疑なレンちゃんは外に出て行きました。
そして、レンちゃんもまた驚くのです。
「そっ、そんなことあるんかいな?」
「菜乃おね〜ちゃん、何かあったみたいですね〜」
「そうだね。
ちょっと見に行こうか?」
「はい!」
レンちゃんの驚きに疑問に思ったなのはちゃんと共に見に行った私。
「あっ、ホントに機械が飛んでる。
晶ちゃんの言う事、ホントだったんだね」
「!!」
なのはちゃんは、目を輝かせて言葉を出していますが私は絶句。
まさか、ガジェットが現れるとは思ってもいませんでした。
「……ど〜したの、菜乃おね〜ちゃん?」
「えっ……
あっ、なんでもないよ。
ただ、何処かで見たような気がしてね……」
なのはちゃんの質問に、なんとか誤魔化して答えます。
流石に、ガジェットの事は話せませんから……
「あっ、そうなんですか?
それにしても……
忍さんの実験かな?」
「あ〜、それはありえるかも?」
「そして、ウチらは巻き添え食らうんや……
少しは勘弁して欲しいわ」
なのはちゃんの言葉に晶ちゃんもレンちゃんも、さっきの驚きは何処へやらって具合に呆れて納得しています。
それにしても、こちらの世界の忍さんって……
聞いている話だと、私の知っている忍さんとは全然違うようです。
まぁ、お母さんこと桃子さんもそうですし、私自身であるなのはちゃん、お姉ちゃんの美由希さんも相違はあります。
そして、お兄ちゃんこと恭也君に関しては、既に別人として認識していました。
自分のお兄ちゃんには感じなかった感情を、恭也君に対しては感じているのを自覚しています……
「って、菜乃おね〜ちゃん、晶ちゃん、レンちゃん!
あれ、こっちに向かってくるよ!?」
「菜乃葉さんは、なのちゃんを連れて隠れていてください!」
「ここは、ウチらで護ります!」
「うん……
二人とも無茶はしないでね」
私は、二人の提案に従いなのはちゃんを連れて部屋に上がります。
本当は、私が戦うのが良いのでしょうが……
晶ちゃんとレンちゃんは、私の事を知りません。
まぁ、影ながら援護すれば問題ないかなとも思ったのもあります。
「ほい、亀!
お前の武器だ!」
「おお、気が利くなおサル!」
「へっ、片方は任せるから、油断するんじゃねえぞ!」
「おお、任しとき!
おサルこそ、油断してぽっくりいくんやないで!」
二人は言い合いながらも、ガジェットに突っ込んでいきました。
しばらく様子を見ていた私でしたが、二人の戦闘を見て唖然としました。
まさか、ガジェットと対等以上に戦えるとは……
Aクラスの魔導師ですら苦戦するのに、二人は殆ど余裕で戦っています。
……AAクラスの魔法生物を倒したのは、どうやら偶然じゃなかったようです。
「晶ちゃんもレンちゃんも凄い!」
なのはちゃんは、二人の姿に無邪気に喜んでいます。
《あははははは……
ねぇ、レイジングハート……
私は夢でも見ているのかな?》
《……残念ですが、これは現実の出来事です》
レイジングハートに事実を告げられ、乾いた笑いをするしかありません。
散々てこずっていた魔導師たちの存在は、二人によって思いっきり否定されてしまいました。
確かに、物理攻撃ならAMFなんて関係ないのですが。
この様子だと、恭也君や美由希さんならあっさり破壊しそうです。
「吼破!!」
「七寸靠!!」
ガジェットは、二人の必殺技を受けて完全に沈黙。
高町家の庭には静寂が戻りました。
それと同時に、庭に出るなのはちゃんと私。
「晶ちゃん、レンちゃん、すご〜い!」
「あはははは、なのちゃん。
こんなのは、館長との訓練に比べたら朝飯前だぜ」
「おサル……
流石に、あの館長と比べる事自体間違いや……
人間凶器なお方やで」
「……まぁ、亀の言う事ももっともやな。
師匠ですら勝てないからな、館長には」
「えっ!?
恭也君よりも強い人はいるの?」
晶ちゃんとレンちゃんの話に私は驚いてしまいました。
あの恭也君よりも強い人がいるなんて、思ってもいなかったものですから。
でも、晶ちゃんとレンちゃんはあっさり答えてくれました。
「確かに師匠は強いですけど、世の中上には上がいますよ」
「だからこそ高みを目指せると、お師匠は言ってましたしな〜」
「あははははは……」
この世界、私の常識じゃ通用しないかもしれない……
そんな考えが頭の中をよぎりました。
《マスターも魔法という力を宿している時点で、彼女たちと同類では?》
《なっ、酷い!》
レイジングハートの言葉に、私は否定します。
そりゃ、魔法という力を宿している時点で一般人とは違うのは事実ですけど……
魔法が無ければただの少女です……
《まぁ、その事は置いといて……
ガジェットが現れた原因を調べた方がよろしいかと?》
《……そうだね。
多分、レリック絡みだと思うんだけど……》
この世界に来てから今までガジェットとは遭遇していなかったのですが……
ガジェットが現れたって事は、今までの情報から導くとこの世界にレリックがあると判断できます。
まぁ、私の予想が外れてくれれば良いのですが……
「ところで、コレ……
どう処分しようか?」
「そうだねぇ、粗大ごみと出しても引き取ってもらえないと思う……」
「忍さんなら、ありがた〜く引き取ってくれるんじゃないんか?」
なのはちゃん、晶ちゃん、レンちゃんは、先程倒したガジェットの処分で相談しています。
素手や棒だけで完全に破壊されたガジェットは、もはや廃棄部品の山状態です。
不意に、新たにガジェットが現れて、事もあろうかなのはちゃんを襲ってきます。
「なのはちゃん、あぶない!」
「あっ、菜乃おね〜ちゃん!!」
私は、ガジェットの攻撃からなのはちゃんを抱えてかわします。
晶ちゃんとレンちゃんも、かわすことには成功しています。
私も、とっさな行動だったのですが無傷で済んでいます。
「菜乃おね〜ちゃん……
大丈夫?」
「うん、私は平気。
なのはちゃんは?」
「なのはは平気です!」
なのはちゃんもどうやら無傷でなにより。
私のとっさの行動に、晶ちゃんとレンちゃんは称賛してくれました。
「菜乃葉さん、やりますね」
「流石、お師匠の特訓についていくだけありますな」
「えへへ、どうも……」
少し照れくさいかなと思います。
だけど、こんな事をしている暇も無いのも事実なわけで……
ガジェットはこちらに向かってやってきます。
ですが、いつの間にかガジェットは鋼糸によって巻きつかれていました。
「みんな、大丈夫?」
「美由希ちゃん、戻ってたんか?」
「おぉ、流石やな美由希ちゃん」
どうやら美由希さんが、ガジェットに鋼糸を仕掛けたようです。
美由希さんが現れると同時に、新たに2体が出現しました。
「う〜ん、現れた2体を先に破壊しようかな」
そう言いながら、美由希さんは神速を発動させて新たに現れたガジェットをあっさり破壊してしまいました。
普段の美由希さんとは思えない動きです。
「ほえ〜、おね〜ちゃんも凄かったんだねぇ」
「えへへ、なのは……
もっと、褒めて」
なのはちゃんの呆然とした言葉に、やけに嬉しそうに反応する美由希さん。
ですが、なのはちゃんの次の言葉に固まってしまいました。
「普段のおねーちゃんとは明らかに別人だよ。
いつものおねーちゃんは、周りに散々迷惑をかけるドジっ娘なのに……」
「あっ、美由希ちゃん……
固まっちゃった」
「まぁ、普段とはギャップあるのは事実やしなぁ〜」
晶ちゃんとレンちゃんも、なのはちゃんに続いてとんでもない事を言っています。
私は、そんな美由希さんを見て苦笑するしかありませんでした。
「ところで、おねーちゃんがぐるぐる巻きにしたアレ……
どうしようか?」
「ここは一つ、美由希ちゃんが片付けるべきやな」
「まぁ、動かないし……
ほっといても問題ないんじゃ?
証拠品としてさ」
「う〜……
危険が無いか確認してみる」
復活した美由希さんは、鋼糸で固定したガジェットに近づいていきました。
そして、美由希さんがそのガジェットに触れた瞬間、ガジェットはプラズマを発生させて煙を出しました。
私は、その光景を見て呆然……
慌てて、美由希さんに詰め寄ります。
「ちょっ、ちょっと美由希さん!?
どこ、触ったんですか!?」
「え〜、ちょっと菜乃葉さん!?
誤解ですよ!!
私、外側しか触っていません!!」
美由希さんは慌てて否定します。
触れた瞬間に自爆装置が作動したなら、あたり一面が爆発で吹き飛ぶ事が予想されるので今回の事例には該当しない……
かといって、触れただけで故障するなんて……
そんな事を考えていたのですが、なのはちゃんが呆れて話し出しました。
「相変わらず、おねーちゃんは機械に嫌われてるよね」
「そうそう、この前はテレビのリモコンに触れただけでリモコンから煙が出ていたし……」
「ウチらと出かけた時なんか、駅の自動改札口を通過しようとしただけで、プラズマが発生してたからなぁ〜」
「……え〜と、何て言えばいいのかな?」
なのはちゃんの話に、晶ちゃんとレンちゃんは苦笑して今まで美由希さんが機械に対して起こした出来事を話します。
私は、その話を聞いて笑う事しか出来ませんでした。
いや、もはや……
美由希さんは特異体質なのかもと思ってしまいました。
当の本人は、なのはちゃんたちのツッコミに、地面にのの字を書いて完全にイジケています。
「ど〜せ、私は機械オンチですよ……
この前、図書室で借りようとしたらカードリーダが壊れちゃったし……」
「いや、この場合……
機械オンチ云々じゃないと思いますが……」
そんな美由希さんに、私を含め一斉に溜息を付きます。
まぁ、でも……
どうやら、高町家に襲ってきたガジェットは全て破壊できたので問題はないと判断したのですが……
不意に、美由希さんの携帯が鳴りました。
「はい、美由希です……
って、リスティさん?」
どうやら、リスティさんって方かららしいです。
リスティさんとは直接話した事はありませんが、リスティさんからの話だと海鳴市に事件が起きている可能性があります。
まぁ、聞いた話だと桃子さんと同類らしいですけど……
話をしている内に、美由希さんの雰囲気が変わっていきました。
「あっ、はい、わかりました!
直ぐに現場に行きます」
慌てて電話を切った美由希さんは、そのまま出かけようと準備をしだします。
「何かあった、美由希ちゃん?」
「うん……
その機械、海鳴市全体に現れてるみたいなの」
予想通り、ガジェットが海鳴市に出てきているみたい……
何が原因なのかは、まだ分かりませんけど……
どうやら、美由希さんはガジェット討伐の助っ人に呼ばれたようです。
「えっ、それはホントなんか、美由希ちゃん!?」
「リスティさんからの依頼だから、確実だよ。
だから、私は行くね。
晶、レン、菜乃葉さんはなのはの事を頼んだよ」
「了解」
「ウチらに任せておきや〜」
「おねーちゃん、気をつけてね」
なのはちゃん、晶ちゃん、レンちゃんは美由希さんに返事をしました。
美由希さんの言葉に、私は無言で肯きます。
それを確認した美由希さんは、そのままガジェット討伐に行きます。
美由希さんの姿がなくなったのを確認した私は、これからどうするか思案中。
そんな私に気づいたのか、なのはちゃんが話してきました。
「菜乃おねーちゃん、どうかしたの?」
「うん、ちょっと気になることがあってね……」
私は苦笑してなのはちゃんに答え、頭をなでます。
なのはちゃんは嬉しそうに笑っています。
そして、なのはちゃんは言いました。
「ここは、晶ちゃんもレンちゃんもいるから心配ないですよ。
菜乃おねーちゃんは、自分の事をして下さい」
「えっ?」
なのはちゃんの言葉に、私は驚きました。
なのはちゃんは私の考えがわかっていたようです。
まぁ、なのはちゃんがわたしの事を全て知っているって事もあるのですが。
なのはちゃんにつられて、晶ちゃんとレンちゃんも苦笑していました。
「菜乃葉さん、ここは俺たちに任せて下さい」
「なのちゃんはウチらで護るさかい、菜乃葉さんはお師匠とでも合流して下さい」
晶ちゃんとレンちゃんの言葉に苦笑した私。
ですが、レンちゃんの最後との言葉に呆れました。
「なんで……
そこで、恭也君が出るかな?」
「いやぁ〜」
「はは、それはもう……」
私の言葉に、顔を背ける晶ちゃんとレンちゃん。
まぁ、でも……
「なのはちゃん……
私、ちょっと出かけてくるね」
「は〜い。
菜乃おねーちゃん、気をつけてね」
「うん!」
晶ちゃんとレンちゃんになのはちゃんを任せて、私は海鳴駅の方に向かいました。
恭也's View
大学で講義中だった俺は、リスティさんからの連絡と言うより依頼で海鳴駅に向かった。
リスティさんの話だと、どうやら正体不明の機動兵器が出現したらしい。
大学から急行した俺は、八景も飛針も家に置いてあるので手持ちとしては鋼糸だけだった。
デバイスであるサイフィスは持ってはいるが、人前では流石に使えない。
まぁ、御神流は素手でも使える技もあるから何とかなるが……
そんな事を考えながら、俺は走っていた。
そして、眼前には正体不明の機動兵器が現れる。
「おい、恭也!
気をつけるんだにゃ!」
「あにょ機械……
AMFを装備しているにゃ」
「AMF?
あぁ、確か……
なのはが言っていた、魔法効力が失うフィールドだったか?」
「その通りだにゃ」
どうやら、正体不明の機動兵器は魔法効力を失うフィールドを装備しているようだ。
なのはが言っていたガジェットと言うやつか?
まぁ、魔法が効かなければ物理で破壊すればいいことだがな。
「まぁ、恭也にょ場合は、範囲外から魔法を使えばどうにかにゃるけどにゃ。
一度精製しちゃえば、あとは物理攻撃とおにゃじだしにゃ」
「……ふむ、周囲にいる人にばれない様に撃てば問題ないか」
そういって、人影が無い所でサイフィスを起動させ魔法を発現させる。
流石に人がいる状態では、バリアジャケットは展開できないが……
そして、俺が現在使える二つの攻撃魔法の内、威力があるウィンドスラッシュを2発精製し、その場に固まっているガジェットに射出した。
具現化した大きな風の刃は空を舞い、敵に向かって突撃する。
ガジェットはその刃に反応してAMFを展開。
だが、純魔力は防げても、その影響で発生した物理攻撃力は防げなかったようでガジェットにダメージを与えてる。
ただし、純魔力は防がれてしまっているので真っ二つにはいかなかった。
「ちぃ、流石に真っ二つにはいかんか……
これだったら、直接殴って破壊した方が効率がいいな」
「恭也!
後ろから来る!?」
「!!
くそっ、機械だから気配を感じられん!」
「そんにゃこと、言ってる場合か!
あれ、突っ込んでくるんだにゃ!?」
俺は後ろから来たガジェットに対して、徹を決める。
もちろん、アストラルヴァインで俺の拳を魔力で固めてだが。
AMFを展開していたガジェットでも、俺の拳にまとわりついた魔力は完全に無効化は出来なかった。
そして、俺の一撃でガジェットは起動を停止する。
「……刀だけじゃにゃく、拳でも戦えたんだにゃ〜」
「今回にょマスターはどこまで人外にゃんだ?」
「……大概にしろよ馬鹿猫。
あまりくだらない事言ってると、三味線にするぞ」
「にゃ〜、それだけは勘弁にゃ〜」
「あたしが、悪かったにゃ〜」
あまりにもくだらない事を言うので、シロとクロを脅す。
やっぱり猫だけあって、三味線には弱いようだ。
「……っと、こんな所でくだらない問答をしてる暇はないな。
シロ、数は幾つだ?」
「今にょ所、10機ぐらいしか確認できにゃいにゃ」
「だけど、人込みにょ所にも出現してるからやっかいにゃんだにゃ」
どうやら、思ったよりも数は少ないようだが、人込みの中にも存在するから迂闊に手が出せない。
流石に人影の無い所で魔法を使っても、AMFのせいで威力は減少される。
「仕方ない、人込みの少ない方から優先的に潰すぞ。
原因究明はそれからだ」
「了解だにゃ」
「それじゃぁ、一番近いにょはあそこね」
クロが指示してくれた場所に存在したガジェットに向けて、鋼糸を飛ばす。
飛ばした鋼糸は、ガジェットに巻きつき動きを止める。
俺が使った鋼糸は、ある程度の物は切断できる代物ではあるが、流石に金属を切断出来ない。
なので、巻きつけた鋼糸を引っ張り、俺の方に引き寄せる。
それと同時に俺は神速を発動させ、アストラルヴァインで強化した拳で徹を決める。
魔力を籠めた拳による一撃によって一部が破壊されたガジェットは、黒い煙を吐き出しながら沈黙した。
「ホントに恭也は、能力強化にょ魔法が得意にゃんだにゃ。
アストラルヴァインを完全に使いこなしているにゃ」
「まぁ、恭也には闘気と同じって考えにゃんだろうがにゃ」
シロとクロの意見に俺は無言でいる。
実際、攻撃魔法を想像するよりかは闘気を想像しやすいのは事実だ。
まぁ、そのおかげでなのはにはボロクソに言われるのだが……
「だが、面倒だな……」
「結界を張れれば解決するんだがにゃ」
「あたしたちじゃ無理だにゃ。
にゃのはが来てくれたら、可能になるんだけど……
それでも範囲は狭いにゃ」
「愚痴を言っても始まらない。
それに、通行人がパニックになってる」
眼前には、何が起きているのかが判断できない通行人たちが右往左往している。
さらに、怪我を負うもの、悲鳴を上げるもの、気絶するものなどが頻出してあたり一面が地獄絵図と化していた。
逆に言えば、混乱しているためにごまかしが可能である。
「……一般人の救助は専門家に任せるか。
それに、今の内に破壊した方がごまかしが可能だな」
「かといって、恭也にょ中距離魔法だと純魔力が防がれるせいで思ったよりダメージを与えられにゃいにゃ」
「つまり、今にょ恭也にょ場合だと、直接殴るにょが一番効率いいんだにゃ」
「ああ、そうだな」
俺は、近くにいるガジェットに向かって神速を発動させる。
モノクロの世界が目の前で描画される。
そこに、黒く存在する禍々しい影。
そこに向けて、俺は疾走する。
目の前に迫る黒い影。
俺は、その影に徹を籠めた拳で殴り飛ばした。
衝撃で吹き飛ぶ黒い影。
モノクロの世界が終了したとき、黒い影は既に沈黙してガラクタになっていた。
「ふむ、こんなものか」
「やっぱり、デタラメにゃんだにゃ」
「アストラルヴァインにゃしでも、どうにかにゃるんじゃにゃいか」
「……流石に、機械相手じゃ骨が持たん」
クロの指摘に、俺は苦笑する。
確かに出来ない事ではないが、やったら俺の骨が持たない。
それに、それをやったら主治医のお仕置きが待っているのも分かっている。
普段、何十枚か重ねた瓦を綺麗に真っ二つにして骨に異常がない晶なら出来るだろうがな。
そんな事を考えてたら、別の場所に存在していたガジェットが煙を吹いて停止した。
ついでに、知っている気配を感じる。
そして、ガジェットを沈黙させた本人からの念話を受信した。
《恭也君、大丈夫?》
《なのはか?
どうしてここに?》
《ちょっと、気になる事があってね……》
なのはがここに来たと言う事は、ヴォルクルス絡みで確認したい事があったのだろう。
駅前にガジェットが現れているのは事実だ。
それになのはが言うには、ガジェットは古代遺産(ロストロギア)絡みで出現するらしい。
だが、ヴォルクルスがここに出現してからはそれなりに経っているのは気になる。
《ああ、ガジェットの出現原因か?
確かに、ここはアレが出現した場所でもあるからな》
《ふふっ、やっぱり恭也君は気づいちゃったか。
ところで、バリアジャケットを展開せずに沈黙させる……
って、恭也君なら出来て当たり前よね》
《なんだ、その……
呆れたように言うんだ?》
《う〜と、先程高町家にもガジェットが現れたんだけど……》
《その様子だと、晶とレンが倒したのに驚いたな?》
《あうぅ、バレバレ……》
俺となのはは念話しつつも、徘徊しているガジェットを潰していった。
パニックになっていた一般人も、どうやら避難できたようで既に周りには人気は殆ど無い。
あったとしても、リスティさん絡みの関係者なので特に問題はない。
《現状、お前のデバイスとは違って俺のデバイスは変化しないからな》
《あ〜、そういえばそうだったね、すっかり忘れていたよ。
晶ちゃんが魔法使わずに破壊してたから、恭也君も出来るかなと思ってた》
《生憎、俺はあいつみたいに骨は頑丈じゃないぞ。
あいつは、何十枚の瓦をいっぺんに叩き割った上で骨に異常は起きないが、流石の俺でもヒビは入る》
《その言い様だと、格闘でも破壊できるのは認めてるんだね……》
《まぁ、御神流の基本は刀には囚われないからな。
素手でも倒せると言えば倒せる。
現状はアストラルヴァインの上乗せで破壊しているがな》
《適正ではミッド式なのに、能力強化が一番得意って……》
なのはの呆れた言葉に俺は無視した。
というより、意識してる訳じゃないのだが……
なのはが言うには、魔法を構築するのに想像力が必要。
そして、俺には幼い頃の経験でその想像力がやたらと低い。
その俺が能力強化系の魔法をあっさり使えるのは、闘気関係の書物を読んでいたからだそうだ。
そんな事を考えながらガジェットを撃墜していたら、なのはと合流出来た。
「そういうお前こそ、バリアジャケットは展開していないんだな?」
「流石に人気が多い所だとね……
それに、待機状態でも使える魔法はあるから」
「ふむ……
それにしても、AMFだったか?
アレに対して、純魔力弾だけで倒しているのか?
俺は、ウィンドスラッシュじゃ破壊できなかったから拳に切り替えたんだが……」
「え〜と、それについては後日説明でってことで……
まぁ、アレとは結構闘っているから、それなりの対処法は確立してるんだ……
って、破壊できなかったって事は、ダメージは通ってるの?」
どうやら、なのはは今までの経験からAMFに対しての技術を確立してるようだ。
そこらへんの技術は、後々教えてもらう事にする。
「あぁ、ダメージは通ったが純魔力分が削られてあまり効いてなかったからな」
「まぁ、恭也が使える攻撃魔法だとにゃ、具現化したら物理属性も自動的についてくるにゃ」
「ぶっちゃけ、旋風だからにゃ。
魔力が消失しても、その魔力によって発生した風までは無効化できにゃいにゃ」
「あっ……
そういえば、そうだったね……
教えた本人がすっかり忘れていたよ」
「……しっかりしてくれ、教官殿」
「だってぇ〜、晶ちゃんやレンちゃん見ていたら……
下位ランクの魔導師の存在が無意味なんだもん」
教えた本人が、俺の魔法の特性を忘れていたようだ。
俺は呆れて溜息をついた。
まぁ、晶やレンの能力を知って未だに驚いて困惑しているようだから、思い出せなくても仕方ないのだが。
そうしている内に、ガジェットの残りが少なくなって来た。
だが、残ったガジェットの動きが変わりとある方向に向かって行く。
「あれ、動きが変わった……」
「何か発見でもしたのか。
追うか?」
「追いたいのはヤマヤマなんだけど……
この場で空を飛ぶのは拙いよ」
「確かに、拙いな。
さて、どうすべきか……」
この場にいる人間が見知った人たちであっても、流石に空を飛んでいる所を見せるわけにはいかない。
せめて目的地だけ分かればどうにかなるのだが……
不意に俺の携帯が鳴る。
画面を確認したら、リスティさんの番号が表示されていた。
「もしもし、リスティさん?」
『ハイ、恭也。
そっちはどうだい?』
「大半は潰しましたが、何機かは動きが変わって見失ってしまいました」
『そっちも似たような状況か……
こっちもそちらと同じ状況になっている。
ついでに、君の妹さんに頼んだ場所でも似たような事が起きてるそうだ』
「つまり、何らかの影響で……」
『集まっていると見て間違いないだろうね。
まぁ、残りは少ない事だし後は引き受けるよ』
「わかりました。
気をつけて」
『ありがとね〜。
報酬は何時もの通りだから』
「了解です」
俺は携帯を切る。
現状、リスティさんからの依頼は完遂とは行かないまでも終了した事になる。
だが、ここで終了してもなのはは納得しないだろう。
まぁ、俺も後味が悪いからもう少し関わってみる事にする。
「さて、リスティさんの依頼は終わった事だし、追いかけるか?」
「うん、そうだね」
俺たちはその場を離れ去っていたガジェットを追いかけようとした。
その時、再び俺の携帯が鳴る。
画面に表示された番号は、月村のものだった。
「はい、高町ですが……」
「あ〜、高町君〜。
お願い、助けて〜」
「……月村、今度は何をしたんだ?」
なんともまぁ、情けない声を上げる月村。
そして、月村がその声で助けを求める場合はたいてい碌な事じゃない。
俺は呆れながらも聞いた。
「いやぁ〜、裏山に落ちてたガラクタを拾ったって言ったじゃない?
アレをちょ〜といじったら、同系機がたくさん現れちゃって……」
「……それで?」
月村の能天気な声が響く。
だが、月村の一言で今回の原因が分かった。
早い話、裏山でガラクタを見つけた月村が調査でもするつもりで分解でもしたんだろう。
その時に、何らかの影響で同系機が召還されたようだ。
「う〜、高町君……
何か、怒ってない?」
「気のせいだ、月村。
それで、それからどうなった?」
俺は内心怒っていたが、悟られないように平然としている。
「さらにガラクタをいじったら、今度は現れた奴が家に戻って襲ってくるのよ〜!
今、ノエルが迎撃してくれているんだけど、手数が足りないの〜。
だから、お願い!」
「ふむ……
だいたいの状況は把握した。
海鳴で起きた事件の原因は貴様だったって事だな?」
「そんなつもりじゃなかったんだよ〜
ただの好奇心で……」
「まぁいい、今から行く。
……それ相応の覚悟はしておけよ!」
俺は携帯を切り、なのはの顔を見る。
なのはは何が起きたのかが分からないと言う様な表情をしていた。
「なのは、大丈夫か?」
「うん……
それで、今回の原因って?」
「ああ、それなんだが……
お前と出会った時に話したと思うが、月村の奴がな裏山で壊れたガジェットを見つけたんだ。
それで、奴の知的好奇心に火がついて壊れたガジェットを分解した訳だ……」
「それで、その分解中に何らかのショックで増援信号が出されたって事だね」
俺が今回の原因を話していくうちに、呆れた表情を浮かべるなのは。
まぁ、気持ちは分からんでもないが……
というより、俺も真相を知って呆れた。
だからと言って、このまま放っておく訳にも行かない。
「ああ、そういう事だ。
ついでに、離脱したガジェットの目的地は月村の家だ。
直ぐに向かうぞ」
「うん」
そして、俺となのははガジェットの破壊をする為に月村の家に向かった。
もっとも、俺自信はガジェットの破壊よりも月村への制裁の事で頭がいっぱいになっていたが。
なのは's View
私と恭也君は、こちらの世界の忍さんの家に向かっています。
私が知っている忍さんとは、明らかに違っているようです。
恭也君となのはちゃんと出会った時に聞いた話では半信半疑だったのですが……
どうも、恭也君となのはちゃんの話は真実のようです。
まぁ、今回の出現がレリック絡みやヴォルクルス絡みではなかった事が唯一の救いでしょうか。
そんな事をリスティさんの仲間が運転する車の中で考えていました。
「まったく、あのお嬢様ときたら……
毎度、毎度、周りに迷惑かけてからに……」
「……ここ最近大人しかったんですけどね」
「流石に知人が原因だったと報告するわけにはいかないな……
どうやって誤魔化すか……」
助手席で怒りを露にするリスティさん。
聞いた話ですと、忍さんは何度もこういった事件を起こしているそうで、その度にリスティさんは誤魔化しているようです。
私だったら流石に見捨てても可笑しくはないと思いましたが……
そんなリスティさんに、苦笑して話しに付き合う恭也君。
「え〜と、この前の化け物退治と同じじゃ駄目なんですかね?」
「そうしたいのはヤマヤマなんだが、結果がな……
あの時は上の連中も体験してたから何とかなったが……」
「下手に有耶無耶にすると上からの質問攻めって所ですか?」
「そういうことだ」
私の提案にリスティさんは苦笑して却下しました。
まぁ、私も何回か誤魔化そうとして上司から大目玉食らった事もあるので分かりますが……
それでも誤魔化さなければならない時もあるので……
そういった意味でもリスティさんの苦労は分かります。
「まぁ、壊れた機械が地震やら雷なんかの自然災害で誤動作したって事にすればどうです?」
「……それでいくしかないな。
まぁ、前回の事件での影響って事にしてもいいんだが……」
「そのように報告すると、前回の関連とかで聞かれる可能性がありますね」
「そうそう。
って、よく知ってるな」
「まぁ、テレビドラマでも組織の内情シーンはありますからね」
「なるほど」
私の回答に苦笑するリスティさん。
本当の所は私自身が体験しているからなんですけど、流石に管理局の名前を出すわけにはいきませんから。
リスティさんもやり方がまとまったようで事件の話は終了。
とたんに、リスティさんの表情が変わります。
そう、桃子さんと同じ何か企んだ表情を浮かべています。
私と恭也君は共に諦めの溜息をついてました。
「そういや、フィリスが言っていたとおり仲が良いんだな?」
「……毎度、毎度、貴方も飽きませんね。
その質問にはノーコメントで……」
「ほう、恭也。
ボクに隠すとは良い度胸しているじゃないか?」
「ふむ、リスティさんもマッサージを所望していると?」
恭也君とリスティさんの間はいつの間にか火花が散っています。
私は乾いた笑いを浮かべるだけしか出来ません。
遊び人モードに入ったリスティさんは、桃子さんと同類です。
なんでこうも色恋沙汰が好きなんでしょうか?
しばらく睨み合いを続けてた恭也君とリスティさんですが、リスティさんに動きが見られました。
「オーケー、今日の所は引き下がっておくよ。
さざなみ寮に来たときは覚えておけよ」
「うぐっ……
真雪さんまで巻き込むつもりですか!?」
「おうよ。
せっかくこんな面白いネタを仕入れたんだ、楽しまなきゃ損だろ!」
「……人をダシにして楽しまないでください」
どうやら、この勝負は引き分けのようです。
私も巻き込まれるのは確実なんだと実感しています。
不意にリスティさんの雰囲気が変わりました。
「どうやら、月村邸についたようだ」
「じゃあ、俺と菜乃葉で先に行きます」
「ああ、頼む。
ついでに、お嬢様の説教も頼むわ」
「……説教だけで済めば、こんな事が毎度も起こりませんよ」
「そりゃ同感だな。
その様子だと、何か企んでるな?」
「まぁ、見てのお楽しみって事で」
「ああ、わかった」
私と恭也君は車から降ります。
恭也君とリスティさんの会話を聞いていたのですが、どうも恭也君は何か企んでいるようです。
……薄々は気づいていたんですけど。
そして、恭也君と私は月村邸の門を潜りました。
その時、爆発音があちこちから聞こえてきます。
「どうやら、派手にやっているようだな」
「さっさと片付けちゃおう。
いくら原因が月村さんだからって放っておくわけにはいかないよ」
「……そうだな。
奴の所業で尻拭いする羽目になるのは、嫌なんだが……」
恭也君はぶつくさ文句を言いながらもガジェットがいる方向へ走り出します。
私も、恭也君の後を追いかけて走り出しました。
ガジェットに近づくにつれ、月村さんのメイドさんらしき人がガジェットと戦うのが眼前に現れました。
その時、意外な光景に私は目を丸くし言葉が出ませんでした。
「ノエル、無事か?」
「これは恭也様。
済みません、忍お嬢様がご迷惑をおかけしまして……」
「まったくだ。
それで、奴は?」
「地下室で引きこもっています」
「……あいつは!」
恭也君はメイドさんと普通に話しています。
だけど、先程そのメイドさんは腕を飛ばしていたんですけど……
《ちょっ、ちょっと恭也君?》
《どうした、なのは?》
《いや、その……
え〜と、ノエルさんで良いのかな?
その人、何者なの?》
《……ああっ、説明するのを忘れていたな。
彼女、自動人形……
まぁ、平たく言えばアンドロイドだな》
《アっ、アンドロイドォォォォオ!?》
恭也君に念話で聞いてみたら、予想外な答えが返ってきました。
ノエルさん、人間じゃなくアンドロイドだそうです。
この世界、私の常識がまったく通用しないです……
幽霊に妖怪、HGS能力者にアンドロイド……
それに、人間の能力を超えている戦闘術……
この世界はもう何でもありな状態です。
《どうかしたか?》
《いや……
あまりにも、この世界が異端だなと思っただけだよ》
《ふむ、おまえも魔法が使えるという時点で十分異端だと思うが?》
《そっ、それを言われると反論できないんですけど……》
うう、私も魔法が使える時点で十分異端なので反論は出来ません。
だけど、私の世界はここまで非常識な事は起きてないと思う。
「ところで恭也様?
隣にいる方はどなたです?」
「ああ、俺の親戚で御神菜乃葉って言う」
「あっ、みっ、御神菜乃葉です」
「ノエル・綺堂・エーアリヒカイトです。
お嬢様共々、今後ともよろしくお願いします」
「あっ、こっ、こちらこそ、よろしくお願いします」
ノエルさんの正体を知って動揺していた私。
その影響か、どうも上手く話せなく所々で詰まってしまいます。
ノエルさんは、そんな私に構う事無く挨拶してきました。
まぁ、ガジェットがいる以上は話す余裕も無いのでここで打ち切ります。
「残りのガジェットは5機か……
さっさと片付けて、月村の所へいくぞ」
「恭也様……
忍お嬢様の命だけは保障して下さい」
「ああ……
命だけは保障する、命だけはな」
「え〜と、それって……」
「今回ばかりは、お嬢様にキツイお仕置きをしなければなりません。
死ぬほど痛い目にはあってもらうべきかと……」
「同感だ。
身内だけじゃなく、無関係な一般市民まで巻き込んだんだ。
それ相応の代償は払ってもらわないとな!」
「あははははは……」
恭也君、殺るき満々です。
自業自得とは言え、忍さんも怒らせてはならない人物を怒らせてしまったようです。
私は二人の対応を見て、もはや乾いた笑いを浮かべるしかありません。
そんな事を話している内に、ガジェットは私たちの攻撃で沈黙します。
「さてと、片付いたな……」
「恭也様に菜乃葉様。
忍お嬢様をお連れしますので、しばしお待ちを」
「ああ、わかった」
ガジェットの沈黙を確認したノエルさんは、忍さんをここに連れてくる為に家の中へ入っていきました。
残された私と恭也君は、沈黙したガジェットを見ています。
「以外にてこづったな……
気配探知が出来ないのは辛いな」
「あっ、そうか……
これ、機械だから気配は感じられないんだね」
「ああ、そうだ。
今回はどうにかなったが、今後出てきた時はどうするかだな……」
「なんなら魔力探知でもやってみる?」
「そうだな……」
恭也君が戦闘を支配できる理由の一つは、気配探知が出来るからです。
なので、ある程度距離までは確実に居場所を突き止める事ができ、さらに気配によって敵か味方かも分かるそうです。
だけど、その気配察知が出来るのはあくまで自然物によるもの……
つまり、ガジェットみたいな機械が相手だと気配察知が役に立たないわけです。
それでもどうにかする辺りは凄いんですけど……
そういうわけで、今後の訓練マニュアルには魔力探知を追加する事にします。
恭也君と話しているうちに、ノエルさんが忍さんの首根っこを掴み引きずって連れてきました。
「どうも、お待たせしました」
「うむ、ご苦労だったノエル。
……さて、月村?」
ノエルさんに礼を言った恭也君。
だけど、忍さんには不気味な声で話します。
いや、話すのと同時に鋼糸で忍さんを締め上げちゃいました……
「ちょっ、ちょっと高町君!?
か弱い忍ちゃんに何をするのよ!!」
「ふむ……
自分の仕出かした事に悪びれる様子は内容だな」
「そっ、それは、その……
って、ちょっ、ちょっと、ノエル助けてよ!!」
「今回ばかりはお嬢様にはキツイお灸を与えなければなりません。
どうぞ、恭也様……」
抵抗する忍さんをあっさり一刀両断する恭也君。
忍さんはノエルさんに助けを求めていますが、当のノエルさんはあっさり却下しました。
進退窮まった忍さんに、実に楽しそうに微笑む恭也君。
私は、恭也君の表情を見て、引きつっています。
「覚悟はいいな、月村?」
「……高町君!!
ちょっと分解して失敗した……」
「アストラルヴァイン」
「ちょっ、恭也君!?」
忍さんの言い訳を無視して、恭也君はアストラルヴァインを展開しています。
流石に、私も驚いて止めようとしたのですが、間に合いません。
「ごめんなさい!
私が……」
「魔法剣!
エーテルちゃぶ台返し!!」
「ちゃっ、ちゃぶ台!?」
忍さんの話を無視し、何故かちゃぶ台を具現化する恭也君。
私は、その光景をみて呆気に取られてしまいました。
そして、具現化したちゃぶ台の角はものの見事に忍さんの顔に命中。
忍さんは、顔を真っ赤にしてものの見事に気絶しました。
「ふむ、ツッコミにちゃぶ台はお約束だと晶やレンが言っていたからな」
やけに満足そうに呟く恭也君に、何故か私は怒りを覚えました。
ただでさえ貴重な想像力を無駄な想像に使うものですから。
《きょ・う・や・く・ん?》
《なっ、なんだ!?》
《ただでさえ想像力が欠如しているのに、無駄な想像はしないでよ!!》
《うぐっ!》
私の一言に恭也君はショックを受けて灰になってしまいました。
私は、そんな恭也君の姿をみて溜息をつきます。
まぁ、結果的に言えばガジェット騒動は解決。
レリックともヴォルクルスとも関係はなかったので、情報が欲しかった私としては残念な結果なんですけどね。
でも、忍さんがガジェットを分解して解析したデータを手に入れることが出来たので良しとします。
後日、忍さんが解析してくれたデータのおかげで演習用シミュレーションが向上しましたしね。
後、恭也君の下らない魔法ですが……
戦場では使う事はありませんでした。
ただし、プライベートで恭也君が怒ったときには結構な頻度で使用していましたが……
そんな下らない魔法を覚えるなら、もっと有効な魔法を覚えて頂きたいものです。
それは兎も角、慌しい一日が終わりを迎えます。
Side02 Fin
後書き
どうも猫神TOMです。
横道シリーズ第二段をお送りいたしました。
ぶっちゃけとらハ本編は人外キャラのオンパレードだったりw
つ〜わけで、今回は晶、レン、美由希、ノエルもそれなりに大暴れしていたりw
それでですね、この世界の晶レンコンビの強さはStSのスバルティアコンビよりも上です(爆)
まぁ、原作で曲りなりとも恭也に勝っている晶ですし、その晶に四六時中喧嘩してるレンですからそれくらいあっても不思議ではないかと……
美由希も恭也よりは弱い……
というより戦術の組み立てに難があるだけで、強い事には変わりありませんw
最後にノエル……
こいつは、アンドロイドですから強くて当然です(爆死)
まぁ、今回のネタの大元は管理人である氷瀬さんのAct:02での感想
「うーん、どこぞのお嬢様の屋敷の庭に現れて、解体されパワーアップとか?
ねぇねぇ、面白いものを拾って改造したの、と電話で呼び出され…。
なんてな」
から来ています。
ついでにオチは、リクエスト通り『魔法剣!エーテルちゃぶ台返し!!』にしましたw
まぁ、本編が真面目ネタなんでこういうときにしか使えないネタなので……
因みに以下NG集
美由希が現れたとたんに、ガジェットたちはいっせいにスパークし黒煙を上げて墜落していった。
「う〜ん、美由希ちゃんが存在するだけで機体が黒煙上げながら止まっていくな」
「凄いや美由希ちゃん、ここまで役に立つなんて珍しいこともあるんやなぁ〜」
「おね〜ちゃん凄い!!」
「ふむ、お前の機械オンチでも役に立つ事はあるんだな」
「恭也君、それちょっと違うと思う……」
「……あんたら、褒めてないでしょ?
絶対に馬鹿にしているでしょ?」
「いやぁ〜、だってなぁ〜」
「美由希ちゃんの存在意義といったらなぁ」
「だって、おね〜ちゃん……
原作でも機械壊しているんだもん」
「お前の存在意義はこんなもんだ」
「うわぁ〜、みんな何気に酷い事いってるよ。
というか、なのはちゃんまでノリノリって……」
「……どうせ、私なんか、私なんか」
庭の隅っこでのの字を書いていじけている美由希。
そんな彼女を生暖かく見守る高町家の住人とそんな住人に呆れてため息をつく異邦人でした。
あははは、まさかあの時の言葉がこうしてサイドストーリーとしてちゃんとした形になるなんて。
美姫 「何が起こるのか分からないわね」
いや、本当に。にしても、今回は美由希が大活躍(笑)
美姫 「触っただけで機械が壊れるという体質のおかげね」
機械相手にはほぼ無敵に近い攻撃力だ。
恭也も新しい魔法を覚えてパワーアップしたし。
美姫 「戦闘では使い道がないような魔法だったけれどね」
まあな。本編とはちょっと違うノリのサイドストーリー。
美姫 「とっても面白かったです」
本編の方も楽しみに待ってます。
美姫 「それじゃ〜ね〜」