なのは's Monologue

恭也君が魔導師として覚醒したのは良いのですが、現状実戦レベルに達してはいません。
まぁ、近接戦闘技術は既に模範的レベルまで達しているのですが、中距離戦、長距離戦ははっきり言って出来ない状態です。
また、空戦戦闘技術も覚醒したばかりの恭也君には荷が重かったわけです。
そして、サイフィスとの融合は諸刃の剣だと分かり非融合状態でも戦闘レベルに達する為の訓練を行なう事になりました。

魔法少女リリカルなのは
−White Angel & Black Swordmaster 〜Side Story〜−

Side:01「高町教導官による魔法講座」

なのは' View

現在私と恭也君は桜台にある丘の上にいます。
この場所は私の世界とあまり変わっていないので魔法の訓練には都合が良かったわけです。
私も私の世界のこの場所で訓練をしてたものですから。

「じゃぁ、にゃのはは結界をはるんだにゃ」

「あたしたちで、結界の範囲を制御するから気にしないでにゃ」

「シロちゃん、クロちゃん。
 サポートよろしくね」

私はシロちゃんとクロちゃんのサポートで広域結界を展開しました。
私単独だとそれ程広域な結界を張るのは無理なんですが、今回はシロちゃんとクロちゃんのサポートもあり実用レベルに達するぐらいの範囲で展開が可能になっています。
シロちゃんもクロちゃんも恭也君に対する訓練は肯定的です。

「ふむ、これで魔法を使用しても問題ないわけだ」

「まぁ、普通は問題にゃいにゃ」

「結界破壊機能つきの魔法を使わない限りは大丈夫にゃ」

「ギクッ!」

クロちゃんの一言に私は一瞬うろたえました。
昔、スターライト・ブレイカーの改造をした時に結界破壊機能が無意識に追加してしまって自爆したのが頭によぎります。
まさか、こんな所で思い出すとは思いませんでした。
我ながら恥ずかしい過去の話です。

「どうしたにゃのは?
 顔色が悪いんだにゃ」

「さては、昔やったことあるんだにゃ?」

「そっ、そんなこと、ないよ?
 あは、あはははは」

「なのは……
 それは自分で言っているようなものだぞ」

恭也君、シロちゃん、クロちゃんの総突っ込みに私は反論の余地はありません。
あぅ、みんな鋭いです。

「そっ、それは兎も角、まずは飛行魔法からだよ!」

「あっ、強引に話題を変えたにゃ」

「まぁ、あまり時間がにゃいにょも事実だにゃ」

シロちゃんとクロちゃんの突っ込みは無視し早速飛行魔法の訓練から入ります。

「まずは、恭也君。
 自分が空を飛んでいるイメージを頭に描いてみて?」

「ふむ、了解した」

私の指示で恭也君はイメージを描いています。
その数秒後、とんでもないスピードで恭也君は上昇しだしました。

「うぐ、なんだこれは!?
 とっ、とまらん!?」

「きょっ、恭也君!?
 空中で制止しているイメージを描いて!!」

「うぐ、了解……」

恭也君は始めての飛行でかなり混乱しています。
それにしても、恭也君の飛行スピードはフェイトちゃんよりも上でした。
……ということは、制御できるようになるまで時間はかかるということです。
私の指示で恭也君はなんとか空中で制止しました。
先の戦いの時とは全然動きが違っています。

「まぁ、あの時はサイフィスが動きを制御してたからにゃ」

「細かい部分はあたしたちで制御してたけどにゃ」

「……ということは、基礎から叩き込まなければならないのね?」

「まっ、恭也にゃら直ぐに制御できるようになるんじゃにゃいかにゃ」

「空間把握能力が明らかに優れているからにゃ」

シロちゃんとクロちゃんは先の戦闘について話してくれます。
確かに、先の戦いはサイフィスと融合してた事もあり、素人とは言えない戦闘をしていました。
それで、現在の恭也君は魔導師としてはド素人丸出しな訳です。
私もレイジングハートと出会った時は同じだったわけですけどね。

「まずは、スピードの制御と基本移動からだね」

「よろしくお願いします、教官殿」

私が講義してから1時間ぐらいで恭也君は飛行系の基本動作をマスターしちゃいました。
意外と恭也君は要領がよく飲み込みが早いです。
なので、早速私は細かな制御が出来るように模擬弾を使った回避訓練を行なう事にしました。

「基本動作はもうマスターしてるから、今度は模擬弾を使った回避訓練に移るよ」

「了解した……
 って、なんだその魔弾の量は?」

恭也君が驚くのも無理はないです。
普通の新人に訓練する時に精製する魔弾の量に比べて4倍、つまり40発を私は精製しました。
もっとも、私がアクセルシューターで制御できる魔弾の量は50発ぐらいが限度です。
実は、私も限界ギリギリで訓練を行なっているわけです。
本当はもう少し余裕があればここまでする事はなかったのですが……
それでも、恭也君の実力を信頼しているからこそこんな無茶が出来るのも事実です。
……最初の模擬戦で負けた鬱憤をここで晴らしているってのは秘密ですけど。

「つべこべ言わないの!
 ただでさえ、時間が無いんだから」

「おっ、おい……」

「それに、恭也君の実力だったら大丈夫だよ?
 私、信じてるから」

私は笑顔で恭也君に言いました。
恭也君はかなり引きつっています。

「にゃのはって、実は鬼教官だったんだにゃ」

「というか、明らかに私怨はいってにゃいか?」

「シロちゃん、クロちゃん?
 人聞きの悪いことはいわないの」

シロちゃんとクロちゃんの突っ込みに私は苦笑して返します。
まぁ、鬼教官と言われるのは初めてじゃないし、実際に訓練はきつめに行なっているのも事実ですから気にしていないです。
それに教導隊の訓練マニュアルは徹底的に叩き潰すのがお約束ですから。

「さてと、いっくよ〜!
 アクセルシューター、ゴー!!」

私の掛け声と共に勢いよく動き出す魔弾。
全ての魔弾が恭也君を襲います。

「くっ!!」

「恭也君、動きが大きいよ!
 そんなに動いたら別の箇所からの攻撃で被弾しちゃうよ?」

「……こっちは素人同然なのに、好き勝手言ってくれる」

恭也君は完全にぼやいています。
私はそんな恭也君を無視し、アクセルシューターの誘導精度を徐々に上げていきます。
それに付随するように恭也君の動きも良くなっています。

「にゃのはもやることえげつにゃいにゃ」

「恭也も恭也で踏ん張っている辺り流石だにゃ」

シロちゃんとクロちゃんは私たちの状況を評価しています。
私はというと、シロちゃんとクロちゃんの会話は意図的に無視します。
……というより相手にしている程余裕は無くなってきています。
そう、なんだかんだいって恭也君の動きが鋭くなっていますから。

「レイジングハート……
 10発追加!」

《イエス、マスター》

ここで10発追加。
私が制御できる最大数を恭也君にぶつけます。
恭也君の能力は信頼していたのですが、ここまで早く細かく制御出来るようになるとは思っていませんでした。

「恭也の動きが鋭くにゃって来てるにゃ」

「元々身体能力は高かったからにゃ」

シロちゃんとクロちゃんも恭也君の修得スピードに驚いています。
実際に恭也君の身体能力は高いです。
そのおかげで、私が魔導師として覚醒た時よりも修得するのが早いです。
少し悔しい……

「それにしても、ここで10発追加とはにゃ」

「もはや訓練というよりいじめにゃんだにゃ」

「マスターも負けず嫌いですからね。
 昔の自分と比べて面白くないんでしょうね」

「そこ、うるさいよ……」

ここまであっさり修得されるとは思っていなかったので、嬉しさよりも悔しさの方が上回ってしまいました。
それで、シロちゃんとクロちゃんだけじゃなくレイジングハートにまで突っ込まれた私。

「さてと、恭也君……
 後10分間で被弾しなかったら訓練終了。
 被弾したら、最初からやり直しだからね!」

「……了解した、教官殿」

そういって恭也君は回避行動に専念します。
今の私は、完全に戦闘モードに入っていました。
普段の訓練ならここまでやることはあんまり無いのですが……
今の恭也君の動きは、既に教導隊に入れるぐらいの動きをしています。
というか、完全に地上での動きと遜色なくなっています。
そう、最初の頃は魔弾一つ回避するにも大きく動いていたのですが、現在は紙一重でかわして余裕がある状態でした。
そして10分が経過しました。
結論から言うと、恭也君は一発も被弾することはありませんでした。
特に残り5分からは完全に当てるつもりで誘導していたんですけど、一発も当てることが出来ませんでした。

「お見事。
 まさか、こんなにあっさり完全に制御出来るようになるとは思わなかったよ」

「いや、なに……
 最初は感覚を掴むのに戸惑ったんだけどな、感覚を掴んだら地上での動きと大差なく動けるようになったわけだ」

「でも、少し悔しいかな……」

「まぁ、マスターの場合は重装甲で固めてる為動きが遅いですからね。
 それに、恭也さんと違って運動能力は低かったわけですから」

「レっ、レイジングハート……」

レイジングハートの容赦ない言葉に私はがっくりしました。
確かにあの時の私と違って恭也君は身体能力は高いのは事実です。
不意に、恭也君は私の頭に手を乗せました。

「まぁ、なんだ……
 最初は酷い訓練だと思ったが、おかげで完全に制御出来るようになったぞ、教官殿」

「えっ?
 そう言って貰えると凄く嬉しいかな」

恭也君の一言に私は嬉しくなりました。
確かに恭也君に課した訓練は明らかに新人にやる事では無いのも事実です。

「普通の新人なら被弾して気絶していますね」

「明らかに恭也にょ能力が普通にょ人に比べて優れてるって事だにゃ」

「それを見込んで訓練したにゃのはも相当にゃものだにゃ」

「えへへへへ……」

レイジングハートにシロちゃん、クロちゃんも先程の訓練の感想を述べてくれます。
私はと言うと、その意見に苦笑していました。
ですが、とたんに恭也君の雰囲気が変わりました。

「……だが、最後の5分。
 殺気が感じられたのだが、気のせいか?」

「えっ、え〜と、気のせいだよ」

あぅ、恭也君にはもろバレです。
いや、確かに、少々意固地になっていましたけど……

「マスターは負けず嫌いな所がありますからね」

「明らかに訓練目的を見失ってたにゃ」

「当てる気まんまんだったんだにゃ」

「あぅ」

レイジングハートにシロちゃん、クロちゃんがあっさりばらします。
恭也君の表情が見る見る内に変わります。
ええ、口は笑っていますが、目は笑っていません。
そう、あの時の桃子さんに見せた表情で恭也君は存在しました。

「ふむ、後で行なう近接戦闘の鍛錬は楽しみにしてるがいい」

「はぁう」

恭也君が実に楽しそうにしているのを尻目に、私は完全に恐怖を抱いていました。
私って馬鹿です。
恭也君もまた相当な負けず嫌いな所があるのを分かっていたのに、完全に地雷を踏んでしまいました。

「自業自得ですな、マスター」

「まぁ、でも……
 実戦レベルでにょ訓練が出来たわけだから、一概に悪いとは言い切れにゃいにゃ」

「動機が不純だから、同情にょ余地もにゃいけどにゃ」

レイジングハートにシロちゃん、クロちゃんの容赦ない一言に私はショックを受けています。
ですが、何時までもこんな事している暇は無いので次の訓練に行きます。

「今更後悔しても仕方ないので、次の訓練に行くよ」

「それで、次はなんだ?」

「防御系だね。
 まぁ、さっきは回避訓練だったし、恭也君に実施した訓練は本来は防御魔法の修練も兼ねてやるものなんだ」

「それが、回避だけの訓練になったのは?」

「みんなが言ってるけど、単純に恭也君の身体能力が優れていたからだよ。
 それに、何時本番になるか分からないからね、ちょっと厳しくしたのは事実だよ」

「ふむ、最後の5分以外の教官殿の意図は了解した」

「……うぅ、やっぱり許してくれない?」

「何、徹底的にやるのが御神流の教え方だ。
 まぁ、なのはの身体が壊れん程度には手加減してやる、馬鹿弟子とは違ってな」

恭也君は心底楽しそうに言い切ります。
やっぱり地獄は確定で、私は心で泣いています。

「まぁ、それは後に置いといて、
 まず、防御魔法の種類から教えるね」

「わかった」

「防御魔法は4系統に大別できるんだ。
 広域防御のバリア系、物理防御のシールド系、外部変化遮断のフィールド系、そしてバトルジャケット見たいに常時展開する直接防御系になるんだ」

「広域防御、つまりバリア系って言うのは自分以外をも護るものなんだな?
 他の防御系と違って」

「ご名答。
 早速、見本を見せるね。
 あっ、バリアジャケットについては省略するから」

「ああ、わかった。
 既に展開しているしな」

「そういうことです」

そういって私は魔法を展開させました。
地面の中心として半球状態に展開したバリア系魔法。
私を中心に展開するフィールド系魔法。
そして、私の手を中心に丸い盾が展開するシールド系魔法。
バリアジャケットに関しては既に展開しているから省略。

「ふむ、シールド系魔法は模擬戦でつかったやつだな?」

「その通り」

「こんな風か?」

恭也君はあっさりシールドを展開しました。
まぁ、見よう見まねですし、サイフィスと融合していた時にも使用していたのであまり驚きません。
そして、私はと言うと恭也君が展開したシールド魔法の強度を調べていました。

「え〜と……
 うん、これくらいの強度なら実戦でも問題ないね。
 後は熟練度を上げればもっと硬くなるよ」

「そうか」

「でも、この魔法はデバイスを使用しないでも使えるようにしないとね。
 とっさの時にデバイスが無いと使えないんじゃ話しにならないから」

「……了解した」

「まぁ、それは焦らず修得していこうよ。
 現状、あれと相対している時はデバイスは展開していなきゃ始まらないしね。
 それに、恭也君は防ぎきるより回避する方が得意そうだしね」

恭也君の場合、シールド系の魔法はあくまで緊急時に使えるようになっていれば問題ないです。
先程のアクセルシューターの嵐でさえ、完全に回避できた恭也君ですから、余程の事が無い限り張ることは無いと思います。

「そしてフィールド系ってのはこうか?」

そういって恭也君はフィールド系の魔法を展開しました。
恭也君の周りに、青白い膜が出来つつあります。

「恭也さんのフィールドを解析したところ、衝撃系無効の効果がありますね。
 ついでに、他の人が使うフィールド系の魔法よりも物理防御力は高いです」

「つまり、勢いある魔弾を食らっても間接的に発生する衝撃はフィールドに相殺されるわけだね」

「イエス、マスター」

「早い話、そのフィールドを展開しにゃがら飛行すれば攻撃を食らってもびくともしにゃいんだにゃ」

「その分、魔力にょ消費は激しくにゃるから残量に気を配らにゃければにゃらにゃいにゃ」

「了解した」

確かに、近接戦闘が得意な恭也君が接近する為に展開したらかなり強固な防御になるでしょう。
恭也君の能力に特化するようなフィールドです。

「で、残るのは広域防御魔法か?」

「う〜ん、アレを覚えておくのは損はしないけど、現状他の防御系に比べて使用頻度は少ないからね」

「今直ぐに覚える必要は無いって事か?」

「うん。
 それに、アレと相対していると周りを気配る余裕もほとんど無いしね」

「にゃのはの意見に同感だにゃ」

「確かに、今必要かって言われたら必要ではにゃいからにゃ」

「と言う訳で、広域防御魔法は後日って事で」

「了解した」

広域防御魔法を覚えておいては損はしないのは事実です。
でも、現状他の防御系魔法に比べて使用頻度は低いのも事実ですし、時間が無いのも事実です。
なので、今回は説明だけにして広域防御魔法を覚えさえるのはやめました。

「それで、次は拘束魔法なんだけど……」

「目標を捕まえる魔法か?」

「うん」

私はそういいながら近くにあった小石を上に投げ、魔法を展開。
私が展開した拘束魔法は空中で小石を拘束しました。

「ふむ、なんとなく分かった」

「それで、拘束魔法にも種類があるの。
 事前設置型と直接投射型……
 先程見せたのが直接投射型だよ」

「事前設置型というのは、一種の罠になるんだな」

「そう、相手の動きを事前に予測し仕掛けておくの。
 魔導師戦だと当たり前の戦法になるからね」

「なるほど」

拘束魔法は魔導師にとって必須ともいえる魔法です。
相手の動きを止め、なおかつ自分の状況を有利にするので重宝されているのが実情です。

「恭也にょ場合、鋼糸だったかにゃ?
 アレをイメージしたら直ぐに出来るんじゃにゃいかにゃ」

「確かに拘束魔法と大差はにゃいんだにゃ」

「わかった……
 やってみる」

恭也君は詠唱体制に入って集中しています。
そして、恭也君の拘束魔法は近くに存在する木で具現化しました。
かなり細い魔力を帯びた糸が、その木に巻きつきます。

「ふむ、こんなものか」

「うわぁ、こうもあっさり具現化しちゃうとは……
 いくら実物でやっているからといっても、凄いよ」

「ついでにオマケだ」

「へっ?」

恭也君の呟きに私は驚きました。
そう、恭也君の呟きと同時に木が綺麗に切り刻まれてしまいました。
恭也君の拘束魔法は殺傷能力が付加されているようです。

「案外綺麗に切れるもんだな。
 鋼糸でもこうはいかないんだが……」

「恭也君……
 いくら鋼糸をイメージしたからって、殺傷能力付きを最初から具現化出来るなんて……」

私は完全に呆れてしまいました。
恭也君の拘束魔法はもはや攻撃魔法の一種になっています。
さっき具現化したのは事前設置型のようですが、この様子だと直接投射型もあっさり出来そうです。

「やっぱり、予想したとおりににゃったにゃ」

「恭也はこういうにょは得意そうだしにゃ」

シロちゃんとクロちゃんはあっさり納得しています。
確かに恭也君の戦闘技術を知っているのである程度の予想は可能です。
でも、こうもあっさり能力付きの魔法を展開されるとは思いませんでした。

「さてと、気を取り直して……
 攻撃魔法にいくんだけど……」

「さっきの魔弾のような奴か?」

「そうだけど、恭也君の適正を確認しないとね……
 大きく分けて直接攻撃型のベルカ式か、私みたいな魔力大放出型のミッド式があるんだけど……」

「恭也にょ魔力適正は魔力大放出型のミッド式で問題にゃいんだにゃ」

「恭也自身の能力を考えるとベルカ式の方が適正だと考えるにょが当たり前にゃんだがにゃ」

「そうなの?
 シロちゃん、クロちゃん」

「そうにゃんだにゃ。
 元々、サイフィスを含む精霊王の魔法はミッド式の元ににゃった物にゃんだにゃ」

「そういうわけで、サイフィスに選ばれた恭也はミッド式にフォーマットされているにゃ」

「そうなんだ」

シロちゃんとクロちゃんの話で、恭也君はミッド式だと言う事は判明。
確かに、恭也君が展開していた魔法陣はミッド式に似ていたので違和感はなかったんですけど。
まさか、ミッド式の基になっていたとは思いもよりませんでしたが。

「じゃぁ、気を取り直して……
 恭也君、自分が使えるような攻撃魔法をイメージしてみて?」

「むっ、了解した……」

私の指示に恭也君は従い詠唱体勢に入りました。
……ですが、数分が経つのに一行に変化がおこりません。

「……恭也君?」

「……全然、イメージが思いつかん」

「うそぉ!?
 だって、飛行魔法も防御系魔法も拘束魔法もあっさり修得したのに!?」

「いや、アレは何とかイメージ出来たからなんだが……」

「あああ、何でサイフィスにょ気に入るマスターはこうも欠陥持ちにゃんだ?
 マサキにょ奴は、移動にょ速度は速かったにょに方向音痴で潰してるし……」

「恭也にょ魔法資質は高いにょに、これだと宝の持ち腐れにゃんだにゃ」

シロちゃんとクロちゃんもなんかとんでもない事を言っているんですが……
というか、恭也君の幼い時はどんな教育を受けてたのか気になりました。
普通の家庭なら、漫画とか小説、アニメ、ゲームなので魔法とかの知識はあるはずなんですけど……

「本当はあんまり聞きたくなかったんだけど……
 恭也君、子供の頃ってどんな生活してきたの?」

「昔の事か?
 そうだな、物心ついた時からとーさんに武者修行の旅に連れてかれた……」

恭也君は自身の昔話を始めました。
私は恭也君の話を聞き続ける内に頭が痛くなってきました。
野宿は当たり前でほとんど自給自足の生活……
それに恭也君のお父さんは金に無頓着だったのか、所々で路銀を使い果たしていたそうです。
そして海鳴に永住するようになっても、恭也君はひたすら御神流を極める為に修行していたそうで……
明らかに普通の家庭の子供の生活と違っていました。
どうも、その影響が恭也君の魔法構築能力の欠如のようです。

「はぁ、しょうがない。
 そろそろ時間だし、今日の訓練はここまでにしよう?
 対策は後日考えるとして……」

「むぅ、申し訳ない」

「いや、気にしないで。
 恭也君自身が悪いわけじゃ無い事もわかったら」

恭也君は珍しくしょんぼりしていました。
恭也君のこういう姿を見れた私は、少し得した気分です。
でも、実際には大きな問題ですから早めに対策を練らないといけないのは事実……
そして家に帰る途中、何かヒントがつかめるかなと思って、恭也君の趣味を聞いてみました。

「そういえば、恭也君の趣味って何?」

「趣味か?
 盆栽と釣りと時代劇小説を読むくらいだな」

「盆栽って……」

「ぬぅ、お前も爺くさいって言うのか?」

「いえ、別に……」

恭也君の趣味の一つである盆栽は、家族には不評のようです。
恭也君はその事に相当気にしているみたいですが……
私は乾いた笑いを浮かべてごまかしました。

「でも、何故に盆栽が趣味になったの?」

「う〜ん、事故って動けなくなった時にな、精神鍛錬の一環として始めたのがきっかけだな」

「釣りは?」

「生活手段」

「時代劇小説を読むのは?」

「イメージトレーニングの一環だ」

どうも恭也君の趣味は修行が絡むようです。
というより、修行が趣味じゃないかと思うわけで……
技術修得スピードが速いのもこの辺りが影響しているのかなと私は思いました。
逆に言えば修行に絡むような事を恭也君に勧めれば上手くいきそうです。
そんなことを思い浮かべながら高町家に到着しました。
その後、恭也君から近接戦闘技術を学んだ私は、なのはちゃんたちがゲームしているリビングに行きました。
私は、所々包帯を巻いていてかなり痛々しい格好です。
ええ、恭也君はしっかり仕返しをしてきました。
まぁ、それでも美由希さんに比べたらまだマシなようでしたけど……

「あっ、菜乃おね〜ちゃん……
 どうしたのその身体?」

「う〜ん、ちょっと恭也君に格闘術を教えてもらったんだけど、その時にね……」

「うわぁ、師匠……
 容赦ないですねぇ」

「菜乃葉さん……
 お師匠を怒らせるような事したんですか?」

「えっ……
 いや、恭也君の趣味の一つである盆栽について小言を言ってしまったんで……」

「あっちゃ〜。
 菜乃葉さん、それ禁句ですよ」

「でも、禁句を言った割りにその程度ですんだって事は、お師匠は菜乃葉さんの事相当大事にしてるんですねぇ」

「そうなの?」

「うん、そうだよ。
 おねーちゃんとは扱いが全然違うから」

本当は別の理由なんですけど、それは言えないのである程度ごまかしました。
でも、恭也君の盆栽に対する小言はどうも禁句らしかったので仮想三姉妹あっさり納得してくれました。
それでも、その様子だと私はまだマシみたいです。
まぁ、美由希さんの状態を見れば納得できるので反論は出来ないのですが。

「それでなのはちゃんたちは、何のゲームをしているの?」

「えへへ、最近話題になっている格闘ゲームです」

「そうなんですよ。
 評判も高いですし、ネット接続できれば全国のゲーマとも対戦できるんで燃えますよ」

「それに……
 菜乃葉さん、このキャラを見てください」

レンちゃんに誘われて画面を見ます。
現在プレイしているのはなのはちゃんと晶ちゃん。
それで、レンちゃんが示したのはなのはちゃんが操るキャラクターでした。
そのキャラクターは、黒いコートに二刀を構えたキャラ……

「なんか、戦い方が恭也君に似ていそうだね」

「あっ、菜乃おね〜ちゃんもそう思いますか」

「やっぱり、そう思いますよね」

なのはちゃんや晶ちゃんも肯定します。
レンちゃんも無言で肯定。
私はと言うと、そのまま二人が対戦するのを見ていました。
特に、なのはちゃんが操る黒い剣士の動きに……

「晶ちゃん、いっくよ〜!」

「うげっ、なのちゃん容赦ない」

「おサルがへっぽこなだけや」

「うるさいぞ、亀!
 さっきなのちゃんにボコされたのはどいつや?」

「なんやと〜」

「二人とも……?」

「なっ、なんでもありません」

「ごめん、なのちゃん」

本当に見ていて飽きない仮想三姉妹です。
でも、なのはちゃんが操る黒い剣士は必殺技らしき物なのか風の刃を飛ばしていました。
もしかして、恭也君の攻撃魔法のイメージになるかも知れません。

「ねぇ、なのはちゃん?」

「なんでしょう、菜乃おね〜ちゃん?」

なのはちゃんはプレイに集中しながらも答えてくれます。

「恭也君もゲームはプレイするの?」

「まったくしないわけじゃないですけど、ほとんどしませんね。
 って、晶ちゃん、覚悟!」

「なのちゃんがお願いした時ぐらいですかね、師匠がするとしたら……
 うわ、なのちゃん、超必殺技なんて酷い。
 俺は、まだこのキャラ慣れてないのに……」

「まぁ、お師匠の場合……
 修行の一環だと強引に進めればなんとかなりそうですけどね」

「それに、師匠は負けず嫌いな所がありますからねぇ……
 なのちゃん以外に負けた時は勝つまでやりますから」

「特におねーちゃんに負けた時がすごいですから、おにーちゃんは」

「あははははは」

そんな事を話していたら、恭也君がやってきました。

「ふむ、ここに集まっていたのか?」

「あっ、おにーちゃん」

「師匠、お疲れ様です」

「お師匠、美由希ちゃんは?」

「ああ、馬鹿弟子なら道場でのびてるぞ。
 まったく、修行がたりん」

なのはちゃんたちも恭也君に気づいたのか話しかけます。
美由希さんはまだのびているようです。
……あの容赦無い攻撃を受けたら誰だってのびるのは確実なんですけど。
恭也君は事も無げに言い放ちました。

「おにーちゃんもやる?」

「いや、俺は……」

「おにーちゃんもやるの!」

「うぐ、わっ、わかった」

なのはちゃんの強引な説得でゲームをすることになった恭也君。
確かになのはちゃんの涙ウルウルされた表情を見たら、断れないのは事実ですけど。
恭也君はと言うとなのはちゃんに進められたのか、なのはちゃんが使用していたキャラを選択しました。
対戦相手は、晶ちゃんから交代したレンちゃんです。

「お師匠、勝たせてもらいますよ」

「やるからには、敗北は許されん。
 それが御神流だ」

「おにーちゃん、こんな所でも拘るんだねぇ」

「まっ、それが師匠らしいんですけど」

私は、恭也君たちのやり取りを見ながら苦笑していました。
でも、これはチャンスかも……

《恭也君、そのキャラを徹底的に使いこなせるようになってね》

《なのはよ、いきなり念話で話すとは何事だ?》

《いいから!
 これは教官命令だよ!》

《うぐ、理由がわからんが了解した》

これでよし、と。
このキャラの戦い方……
というより、必殺技をイメージできるようになれば恭也君の攻撃魔法の構築は可能になります。
恭也君が他の魔法を修得できたのには理由があります。
恭也君の場合、飛行魔法は適正があるので自分が飛んでいるイメージを浮かべるだけです。
防御魔法の内、バリアジャケットは特に問題なし。
シールド系に関しては、元々武器とか防具とかの知識があるのであっさり修得済みですし、フィールド系は恭也君が言うには闘気をイメージしたそうです。
拘束魔法はもともと恭也君の戦闘技術で鋼糸を使用してこともあり、あっさり構築できました。
そして、恭也君があっさり使用していた補助魔法・アストラルヴァインは、やはり闘気のイメージを応用したそうです。
つまり、攻撃魔法以外は既に構築できる下積みが出来ていたわけです。
だから、ここで攻撃魔法の下積みをさせることにしました。
でも、どうやら恭也君も負けず嫌いな所が出てきたみたいです。

「うぐぅ。
 レン、もう一勝負だ!!」

「はいはい。
 お師匠も懲りないですねぇ。
 でも、腹いせに実力行使は厳禁ですからね」

「心配するな。
 溜めたストレスは美由希かかーさんで発散させる」

「おにーちゃん、何気に酷いこといってるよ」

「何、かーさんはまだお仕置きしてないしな。
 美由希は何時ものごとく下らない事を言い出すからな」

「うわぁ、美由希ちゃん災難やなぁ」

「というか、おにーちゃん?
 朝の事、まだ根に持っていたんだ……」

「いったはずだ、帰ってから楽しみにしているがいいと」

「でも、それ……
 桃子さんは兎も角、美由希さんに対してはただの八つ当たりだよ恭也君?」

「菜乃葉さんも何気に酷いこと言ってる」

「まぁ、分からないことも無いんですけどね」

「おかーさんは自業自得ですけど……」

恭也君の暴言に私を含めてみんなは苦笑しています。
どうも、美由希さんは恭也君にとってストレス発散の対象になっているようです。
まぁ、でも、朝の事もあるので私も桃子さんに対して今回はフォローをするつもりはありません。
美由希さんは先程の結果もあることだし、少々フォローはしますけど……
噂をすればなんとやら、道場でのびていた美由希さんが復活してやってきました。

「恭ちゃんがゲームしてる……
 なのはが薦めたの?」

「そうだよ、おねーちゃん」

「美由希ちゃん、復活したんだ」

「えっ、まぁ、なんとか。
 昨日の制裁分と朝の恨みを全てぶつけられたんで、未だに身体中が痛い……」

「あはははは、それは災難やったなぁ、美由希ちゃん」

美由希さんは涙を流しています。
まぁ、半分以上は自業自得なんですけど。
それでも、見てるだけで痛々しい姿をしています。

「というか、何故か菜乃葉さんが恭ちゃんを怒らせた分まできてると思うのは気のせい?」

「えっ、え〜と、それは……」

「何、問題ない。
 全てはお前を強くするためだ」

「恭ちゃん、今の台詞は絶対に嘘に決まってる!
 何故、私だけこんな目に遭うのよ……
 理不尽だよぉ」

なんか、美由希さんが哀れに見えたきました。
私の分まで美由希さんにいっていたのは、薄々予想してましたけど。

「美由希が騒ぐから負けたじゃないか!」

「ちょっ、ちょっと、恭ちゃん!
 それ言いがかり!!」

「おにーちゃん!
 それは、横暴だよ!!
 そんなおにーちゃん、なのはは嫌いです!」

「うぐ」

「あっ、恭也君……
 真っ白になった」

なのはちゃんの一言で魂が抜けた状態になってしまった恭也君。
どうも、この家の最高権力者であるなのはちゃんには恭也君でも逆らえないようです。
まぁ、確かに恭也君の今の一言が横暴なのは事実ですけどね。

「なのははやさしいね〜。
 なでなで……」

「今の場合は明らかにおにーちゃんの方が悪いですから。
 でも、大半の場合はおねーちゃんが原因だから、自業自得だよ」

「あう」

なのはちゃんに味方してもらえたのが嬉しいのか、美由希さんはなのはちゃんの頭をなでています。
でも、なのはちゃんの何気ない一言で美由希さんも固まってしまいました。

「まぁ、なのちゃんは公平ですからね」

「そうやなぁ、たいていの場合は桃子ちゃんや美由希ちゃんが原因やから、なのちゃんは必然的にお師匠の味方になるんやけどね」

「あはははは。
 なんとなく分かる気がする」

晶ちゃんやレンちゃんの意見を聞いて納得する私でした。
でも、恭也君が横暴になったのも今までの美由希さんの行動からかもしれません。
そんな事を考えていた私です。
ふと、晶ちゃんが私に質問してきました。

「そういえば……
 菜乃葉さんもゲームはするんですか?」

「えっ、私?
 う〜ん、しないするで言えばするかな。
 ただ、格闘ゲームは苦手な部類なんだけどね」

「菜乃おね〜ちゃんの得意なジャンルってなんですか?」

「え〜と、パズルとかシューティングとかは好きかな。
 後、戦略系のシミュレーションなんかもやるけどね」

「それはまた、マニアックな部類ですなぁ〜」

パズル系は好きだったんでとくに理由はないんですが、シューティングや戦略系のシミュレーションは魔導師となってからやり始めました。
シューティングは空戦のイメージトレーニングで戦略系のシミュレーションは戦略面の特訓で始めたようなものです。
まぁ、それがいつの間にか得意なゲームになってしまったわけです。
確かにマニアックな人が受けるよなジャンルです。

「菜乃おね〜ちゃん、後で対戦しよ。
 面白い、対戦シューティングがあるんだ」

「うん、いいよ」

なのはちゃんのお誘いに、私は快く返事しました。
そういえば、随分ご無沙汰しているのでどこまで出来るか不安なんですけどね。

「なぁ、おサル。
 菜乃葉さん、ゲームマスター相手にどこまで通用するか予測できるか?」

「なんじゃ、亀?
 見たこと無いから予想もへったくれもあるわけ無いだろ。
 まぁ、でも、あの口ぶりからすると、相当自身があるようだぞ」

「おサルも感じたか?
 あの口ぶりは只もんじゃないで〜」

「なんか、思いっきり買いかぶられている気がするのは気のせい?」

「いえいえ、そんなことは無いですよ。
 なのちゃん、ゲームには異常に強いんでどこまで通用するのかなぁと」

「なのちゃんと対等に闘えるのって、ここの関係者だと忍さんぐらいしかいませんからね」

なのはちゃん、この家では相当なやり手みたいです。
晶ちゃんやレンちゃんとの対戦を見ていても明らかに二人より上手だとは感じましたけどね。

「ところで……
 何時まで固まっているつもりなの、恭也君?」

「お師匠、なのちゃんの一言でそうとう堪えたみたいだですな」

「師匠、なのちゃんには基本的に頭上がらないですからねぇ」

私たちの言葉にもピクリとも反応を示さない恭也君。
背中には哀愁が漂っています。
そんな恭也君に呆れながらもなのはちゃんが対応しました。

「おにーちゃん、反省した?」

「なのは、か?
 ああ、俺が悪かった」

「おねーちゃんに理不尽な暴力は振るわない?」

「ああ、あいつが原因じゃない限りは善処する」

恭也君の言葉に晶ちゃんとレンちゃんが反応します。

「うわっ、美由希ちゃん……
 さらに哀れになるぞ、こりゃ」

「美由希ちゃんが原因になった場合……
 今以上の制裁は確実に確定ですなぁ」

「……美由希さんが不幸になるのは、もはやデフォルトなんですね」

二人の言葉に呆れて呟いた私でした。
そんな事がありながら本日は終了していきました。
恭也君による桃子さんへの制裁マッサージは、もはや言葉に現せられるレベルではありませんでした。
もう、絶叫が家中に響きわたり、異常な音がなったりとみている周りにも恐怖を抱くレベルです。
それでも次の日には弱音を吐きながらも仕事にいく桃子さんは凄いなと思いました。
それで翌日の午後、再び桜台の丘に恭也君と私はいます。

「さてと、昨日の続きで攻撃魔法の修得」

「……で、俺に出来ると思うのか?」

「それは恭也君次第だよ。
 昨日、格闘ゲームで使用していたキャラの攻撃方法を思い浮かべてみて?」

「!!
 昨日のアレは、そういうことだったのか?」

「そうだよ」

昨日の私の意図にようやく気づいた恭也君。
戦闘方法が似ているから思い浮かべるの事は出来ると思ってやらせたんですけどね。
恭也君は、昨日に引き続き詠唱体勢に入ります。
昨日と違い、恭也君の周りには数個の青白い刃が具現化していました。
そう、なのはちゃんや恭也君が使用していたキャラクターの必殺技と同じ形です。

「何とか成功だね。
 実際の威力は試してみないと始まらないから、試しにあの木を狙ってみて?」

「了解した」

恭也君は私の指示通り木に向けて試射しました。
難なく枝が切り刻まれて地面に落ちてきます。
それにしても見事な切り口でした。

「威力はマスターのアクセルシューターと同レベルですね」

「だけど、純魔力弾にょあれとは違って物理殺傷能力があるにゃ」

「文字通り、風にょ刃やねぇ。
 数を使いこなせるようににゃれば、強力にゃ攻撃魔法ににゃるにゃ」

レイジングハート、シロちゃん、クロちゃんがともに恭也君の魔法について述べています。
そして、クロちゃんの言葉に反応した恭也君は、何か思いついたのか再び詠唱体勢に入りました。

「数か……
 こうか?」

恭也君が再び精製した風の刃の個数は先程の三倍ぐらいです。
初めて精製するのにはここまでかかったのに、あっさり数を増やしてしまいました。

「うわ、いきなりそこまで数を増やせるなんて……」

「魔法構築能力が欠如している分、制御能力は高いようですね」

「恭也にょ戦闘パターンは技にょ種類よりも技にょ質にょ方がよさそうだにゃ」

「現状は質を上げた方がよさそうだにゃ。
 もう少し種類は欲しい所だけどにゃ」

恭也君が始めて精製した風の刃は中距離戦でも威力は発揮しそうです。
でも、一種類だけだと心もとないのも事実。
近接戦闘は恭也君の能力と流派でどうにかなる、というより近接戦闘にさえ持っていければ恭也君に敵う敵はそうそういないはず。
なので、後一種類ぐらい中距離戦の魔法だけ精製できればよいのですが……

「ふむ……
 そういえば、あのキャラクターの超必殺技の一つは飛び道具だったな」

そんな事を呟いた恭也君は再び詠唱体制に入ります。
それと同時に、先程精製した風の刃よりもかなり大きい風の刃が一つ構築されました。

「……こんなものか?」

「……昨日あんだけてこずったのに、こうもあっさり具現かするとは」

「何、コマンドが複雑だったんで、初めて出した時のイメージが強烈に残っていたんだ」

「……そういうことね」

どうも、恭也君はやりこまないとイメージ出来ない体質のようです。
まぁ、でも、具現化する方法が分かったので、現状は兎も角、今後は恭也君の頭に叩き込めば何とかなりそうです。
叩き込むまでが大変そうですけどね……

「それで、威力を試したいのだが……
 先程目標にした、あの木でいいか?」

「えっ、うん。
 その木で試してみて」

「了解した」

そういって恭也君は再び試射しました。
大きな風の刃は立ちそびえる木を、ものの見事に真っ二つにしてしまいました。
やはり、大きさもあるためかなりの攻撃力を誇っています。

「今の威力はマスターのディバインバスターと同様ですね」

「でもにゃ、解析した結果……
 シールド破壊にょ付加能力があるんだにゃ」

「現状はこにょ二つにょ質を高めるにょがベストにゃんだにゃ」

「そうだね。
 今のを、数撃てるようになったら脅威になるだろうし……」

「数か……
 ちょっとやってみる」

恭也君は私の言葉に反応して再び詠唱体制。

「むっ、少しきついか……」

恭也君が顔を歪めつつも、先程精製した大きな風の刃を4つ精製しました。
私は、そんな恭也君をみて私は目が点になってしまいました。
まぁ、確かに私も最初に大出力魔法を覚えた手前、普通の人とは違うのは自覚してますけど……

「……ふむ、こんなものか?」

「いや、恭也君……
 凄すぎるよ」

「昨日のあれはにゃんだったにょかにゃ?」

「でも、さっきにょとこれしか今にょ恭也は精製できにゃいにゃ」

確かに、今の恭也君だと小さな風の刃と大きな風の刃しか構築できません。
でも、その二つだけでも質を高めていけば脅威になるのは確実です。
私の魔法も、ディバインシューターとディバインバスターを基にバリエーションを増やしていったわけですからね。

「さてと、気を取り直して……
 まずは小さい風の刃の方の練度を上げていこう」

「了解した、教官殿」

そういうことで、昨日入れて十日間は空き時間を見つけて恭也君の魔法特訓を行ないました。
結局、攻撃魔法はその二つしか覚えることは出来ませんでしたが、その分、練度は高くなっています。
実際、中距離戦限定での実戦形式の模擬戦を行なっていても、私が苦戦するぐらいのレベルには達しました。
まぁ、それでも……
今はまだ、私が勝ちを拾っています。
そりゃ、中長距離戦のエキスパートと呼ばれるだけのプライドは私にはあるわけですからね。
……でも、全距離対応にした時点で、私は恭也君に瞬殺されます。
どんなに距離をとっても、恭也君の飛行魔法の速度に神速を組み合わされたらあっさり詰みになってしまいます。
魔法じゃない神速は反則だと思います。
恭也君は、私が教えた中で一番困った生徒さんですが、最高の生徒さんでした。
後、追記なんですが、恭也君の趣味の項目に格闘ゲームが追加されました。
ついでに、なのはちゃんとのシューティング対決は僅差で私の負けでした。
晶ちゃんやレンちゃんはかなり驚いていたんですけど、私は悔しさで何度も挑戦していたりします。

「菜乃おね〜ちゃんも、おにーちゃんと同類でそうとうな負けず嫌いだったんですねぇ」

「うん、そうだよ。
 戦う事はあんまり好きじゃないけど、それ以上に負ける事は嫌いだからね」

その時のなのはちゃんの一言に、私は苦笑して返したのでした。

Side01 Fin




後書き

ども猫神TOMです。
わき道シリーズその1をお送り致しました。
まぁ、本編6話の補間話と言う事で。
高町教導官には泣いて頂いています。
まぁ、恭也君もなのはさんも負けず嫌いですからねぇ。

因みに恭也君の魔法ですが……
アストラルヴァイン
元ネタはスレイヤーズのゼルディガスの使用魔法からです。
単独使用ではシグナムの紫電一閃と同レベルの威力を誇っています
しかも、恭也君の場合御神流奥義の威力も合わさるのでかなり強力な威力を誇ります。
エアスラッシュ(小さな風の刃)
元ネタは……
多分ゲーム絡みだと思うのですが、忘れてしまいました。(爆)
まぁ、恭也版アクセルシューターだとおもってくれれば。
ウィンドスラッシュ(大きな風の刃)
元ネタは……
これもゲーム絡みのはず。
こっちは、KOFの覇王翔吼拳とかカイザーウェイブをイメージして頂ければ幸いです。

因みに以下NG集

「恭也君、10分間避けきれるか、私に一本いれたら終了だよ」

「ほぉ、一本入れればいいんだな?」

「……やけに自信があるみたいだね?」

「やってみればわかる」

神速発動。

「きょっ、恭也君!
 神速発動なんてずるい!!」

「一本入れれば良いって言ったのは教官殿だぞ」

「今回は、あきらかにマスターの負けですね」

「恭也にょ場合これがあるからにゃ」

「下手に一本勝負するようなら、あっさり負けるにゃ」

「ふっふっふ、そういうこと言うんだ。
 いいよ、徹底的にやろうよ、ねぇ」

なのは、バインド使用。
恭也拘束される。

「!!
 おぃ、なのは!?
 って、身体が動かん!?」

「覚悟はいいかな、恭也君?
 零距離スターライトブレイカーの威力、たっぷりと味合わせてあ・げ・る」

「マスターが暴走してる」

「うわぁ、にゃのはも負けず嫌いだにゃ」

「にゃんか、目的見失ってにゃいか?」

因みに零距離スターライトブレイカー食らってキレた恭也君はなのはをバインドで拘束。
アストラルヴァイン使用の御神流奥義乃陸・薙旋をなのはに決める。
これ以降不毛な戦いが永遠に続く(マテ)




今回は番外編的な感じかな。
美姫 「みたいね。本編でちらりと触れたなのはの恭也への指導」
高町なのはの魔法講座だな。
美姫 「初日は苦戦したみたいだけれど、それ以降はかなり順調だったようね」
みたいだな。なのはも驚く習得スピード。
美姫 「そのなのはも恭也に近接戦闘の鍛錬を受けたしね」
お互いにどれぐらい強くなったのかが楽しみです。
美姫 「本編も楽しみに待っていますね」
ではでは。



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