恭也's Monologue

海鳴臨海公園より東の海上に量産型ヴォルクルスを伴って姿を現したオリジナルヴォルクルス・ルオゾール。
その禍々しい……
いや、恐怖・絶望・憎悪などの負の感情を吸収したような魔力があたり一面を支配する。
俺となのは、フェイト、リィンホースツヴァイと融合しているはやて、そしてクロノさんは、何とかその魔力に飲み込まれずにいた。
はやての守護騎士たちは先の事もあり、クラウディアで待機している。
その命令を出したのは、静馬叔父さんと他ならぬ守護騎士たちの主・はやてだった。
守護騎士たちは納得はしていないようだが、強く言える立場でもなかったのでその命令に従っている。
つまり、今ここにいるメンバーでルオゾールを倒さなければならなかった。
そして、俺となのはが出会ってから起きた事件は収束に向かっていた……

魔法少女リリカルなのは
−White Angel & Black Swordmaster−

Act:11「風の精霊王、降臨」



恭也's View

海上に出現したオリジナルヴォルクルス・ルオゾール……
機体中から溢れ出す禍々しい魔力と裏腹に、ルオゾールはクロノとフェイトに気づき人を食ったように話してきた。

『おやおや、あれ程までに痛めつけられたと言うのにのこのこと現れるとは……
 本当に物好きなお方ですなぁ』

「……貴様っ!!」

ルオゾールの挑発にクロノさんは反応する。
冷静なように見えて、以外に熱いようだ。
クロノさんだけじゃなく、フェイトもルオゾールの言葉に反応している。

「おちついてな、クロノ君!
 明らかに挑発やで!!」

「そうだよ!
 リーダーが冷静に判断できなきゃチームは機能しないんだよ!」

「ぬっ……
 済まない、二人とも……」

はやてとなのはの言葉に冷静さを取り戻すクロノさん。
まぁ、二人の指摘は的確なのは事実だった。
流石に、民間協力者である俺がでしゃばる訳には行かないからな。

「フェイトちゃんもだよ……
 理由は分かるけどね……」

「うん、大丈夫だよ、なのは……
 もう二度と自分を見失わないから……」

なのはの忠告に苦笑して答えるフェイト。
その様子だと先の戦闘みたいに我を忘れる事はないだろう。
だが、そうしているうちにもルオゾールが召還しているのか、魔法生物が次々と出現する。

『ふむ……
 どうやら、先の戦闘に比べて皆さん冷静ですな』

「お生憎様、貴方のやり口は先の戦いで嫌と言うほど学ばせて頂きやしたから」

『なるほど……
 どおりで守護騎士たちがこの場にいない訳ですな。
 取り込んで私の僕にでもなってもらおうと考えていたのですがね、くくくくく』

ルオゾールの挑発に、はやては挑発で返す。
だが、ルオゾールははやてに対して更なる挑発を行なった。
はやては、一瞬反応したが無言で対応する。

《はやて、冷静だね》

《う〜ん、それは違うよフェイトちゃん。
 はっきり言えば、はらわたが煮えくり返るぐらい怒ってるよ……
 だけどや、そんな態度を見せたら奴の思う壺や》

《……耳が痛い意見、どうも。
 僕より、君の方が指揮官として優秀だろうな……》

《ちょっ、クロノ君!?
 クロノ君の方が経験があるんやからそんな事言わんといてや》

なんだが、念話で話しているようだがはっきりってそんな暇は無い。
だが、三人の話……
というか、クロノさんとはやての話は終わりそうに無かった。
なのはとフェイトはそんな二人を見て苦笑している。
どうやら、二人の反応を見る限り何時もの事みたいだ。
しかし、そんな下らない論争をしている暇も無いので、俺は二人の会話に介入した。

《……それで、現状を打破するのはどう考えているんです?》

俺の一言で、クロノさんとはやての会話を断ち切った。
その行動を見たフェイトは驚いていた。
クロノさんとはやては沈黙して俺を見ている。
なのはは俺を見て苦笑する。

《恭也さん、凄い……
 たった一言であの二人の痴話喧嘩を止めちゃった……》

《まぁ、恭也君は日頃からあの家のまとめ役やってるから》

《……なのは?
 なんか妙に引っかかるんだが、その意見は?》

《いっ、いや、悪気はないよ!?
 個性豊かな人たちをしっかりまとめてるから凄いなと思うわけで……》

《……確かに。
 あのメンバーをまとめてる恭也さんは凄いと思います》

《……まあいい。
 それで、どうするつもりなんです?》

確かに、なのはとフェイトの言うとおり俺の家の住人は個性豊かな連中ばかりである。
さらに、友人関係でもそれなりの個性豊かな奴がなぜか集まっているのも事実だ。
なのはのニュアンスには少し引っかかったが、悪気は無いようなのであえて放っておいた。
ついでに、フェイトにまで苦笑されて肯定されたら反論の余地はない。
だから俺もつられて苦笑せざるを得なかった。
それに、今重要なのは現状を打破する事である。

《雑魚である魔法生物も放っておく訳にもいかないが……》

《一番問題なのは、量産型とオリジナル(ルオゾール)ね……》

《現状オリジナル(ルオゾール)は離れているから近づかなければならない……》

《それにや、オリジナル(ルオゾール)に関して言えば、あたしらが行った所でダメージを与えられへん》

《……恭也君、君の意見は?》

大量に存在する魔法生物はどうにかなるが、オリジナル(ルオゾール)と量産型は厄介極まり無い。
だが、オリジナル(ルオゾール)はアストラルシフトによる影響で通常ではダメージを与えられない。
サイフィスの加護……
というより、サイフィスの力を宿している俺だけがオリジナル(ルオゾール)のアストラルシフトを崩壊させる事が出来る。
つまり、オリジナル(ルオゾール)の対応は俺で確定なわけだ。
そして、量産型に関して言えばなのはとはやてが既に実戦で破壊している。
特になのはは、合体した量産型に対する経験もあるから任せられる。
ついでに、フェイトもなのはとはやてと共に量産型と戦った経験があった。

《……現状、オリジナル(ルオゾール)を相対出来るのは俺しかいません。
 だから俺が、オリジナル(ルオゾール)を惹きつけます》

《その間に量産型をどうにかする……
 だね?》

俺の意図を汲み取ったなのはが確認する。
なのはの言葉を肯定し、その理由も話した。

《ああ、そうだ。
 それにあのタイプに関して言えば、なのはは経験済みだし、はやてやフェイトも量産型の戦闘経験はあるからな》

《と言う事は、あたしら三人であの量産型を対応した方がええな》

《人数的に考えても、4対1より3対2の方が恭也さんの負担は減るしね》

俺の意見にはやてとフェイトも肯定する。
そして、クロノさんが確認するように話した。

《つまり……
 僕が雑魚掃除って事だな?》

《そういうことやね。
 流石にクロノ君のデュランダルにヴォルクルスのデータを送ったらパンクしそうやし……》

《インテリジェントデバイスとストレージデバイスの違いか……
 何時の間に、バルディッシュに転送してたんだ?》

《何時の間にって言われても、私たち三人が行動している時だからね》

《うん……
 だから、大丈夫だよ》

三人の連携は見事なものである。
これも親友のなせる業なのかもしれない。
だが、そんなに時間が無いのも事実だった。
俺たちの意見を聞いたクロノさんは、しばし考えて結論をだした。

《……みんなの意思はわかった。
 そのプランでいこう。
 ただし……》

《その先はストップや!》

クロノさんの会話を途中で断ち切るはやて。
なのはもフェイトもクロノさんが何を言おうとしてるのか察したようだ。
まぁ、俺もわかったんだけどな……

《ここで、無茶はするな……
 は、無しだよ!》

《そうだよ!
 今回ばかりは無茶をせざるを得ない状況だよ》

《むぅ……
 しかしだな……》

なのはとフェイトの意見にクロノさんは苦虫を潰したような表情をする。
どちらにしろ、ルオゾールを倒さない事にはこの事件は終わらない。
それどころか、全ての世界が終焉する可能性もある。
もっとも、ルオゾールは余裕をかましているのか一向に攻撃してくる気配はなかったが……

《どちらにしろ、奴を倒さない限りはこの事件は終わらないんです。
 ……少しは信じてやったらどうです?》

《……もしかして、君もか?》

俺の本質に気づいたクロノさんは、呆れたようにたずねてきた。
まぁ、なのは見たいに毎度毎度全力全開はしたつもりは無いがな……

《生憎、己の実力は把握してますよ。
 それに、賭け時は見誤らない性質なんで》

《なんや、恭也さんって実はなのはちゃんと同じタイプなんか?
 てっきりクロノ君と同じやとおもってたんやけど……》

《なのはと違って冷静さはあるけど、本質は似てるんだろうね……
 だから、なのはが恭也さんに惹かれたのかも》

フェイトの言葉に動揺するなのは。
クロノさんもフェイトの言動に呆れたようだった。

《ちょっ、ちょっと!?
 フェイトちゃん、ここでその話は無し!!》

《……フェイト、こんなときに場違いな発言は止めてくれ。
 母さんじゃあるまいし……》

《ゴメン、ゴメン。
 でも、肩の力は抜けたでしょ?》

クロノとなのはの言葉に、フェイトは苦笑して誤る。
どうやら、和ませようとしていたようだ。

《う〜、だからと言って人をダシにするのはどうかと思うよ……》

ダシにされたなのはは完全にブ〜垂れていた。
そんななのはを見て俺は肩をすくめて苦笑した。
とたんにはやてが不機嫌になる。

《なんでや?
 なんで、フェイトちゃんにはお咎め無くて、あたしが同じ事言った場合はマッサージの刑を受けなきゃならんのや!?》

《……お前は明らかに楽しんでいるだろうが。
 生憎、かーさんと同類なタイプは容赦するつもりはない》

《そんなぁ、殺生なぁ〜》

俺の言葉に涙を浮かべるはやて。
俺はそんなはやてを無視した。

《それに、馬鹿な真似をやってるほど余裕もない。
 クロノさん、指示を!》

《ああ、わかってる。
 恭也君は雑魚に構わずルオゾールを目指してくれ。
 はやてはなのはとフェイトを指揮して量産型の対応を……
 僕が、恭也君のフォローに回る!!》

《了解!!》

クロノさんの指示と共に、俺たちは行動を開始する。
その反応を見ていたルオゾールは嘲笑するように話し出した。

『おやおや、みなさん。
 どうやら覚悟が出来たようですねぇ。
 では、世界の終焉に導く前に貴方たちを滅びへ導きましょう!』

ルオゾールの宣言と共に、待機していた魔法生物の大群が一斉に動き出した。
それと同時に、量産型も動き出す。
俺は躊躇う事も無くサイフィスを起動させた。

「サイフィス、30%限定融合……
 承認!!」

《了解した、主よ!》

サイフィスとの融合により、俺の姿が変わる。
それと同時に、アカシックバスターを使用するために詠唱体勢に入る。
大量に発生した魔法生物を倒しつつ、ルオゾールに接近するには効率がいい魔法だ。
この状態でもサイフラッシュは使用可能ではあるが、魔力の消費が馬鹿にならないので持久戦には不利である。
それに、残った雑魚はクロノさんに任せられるので後の事は気にしなくてもいい。
だから俺は迷う事無く、アカシックバスターを使用する事にした。
俺の足の下では巨大なラ・ギアス式の魔法陣が展開され、眼前には六芒星を中心とした魔法陣が展開される。

「アカシック、バスター!!」

青白く輝く魔法陣が魔力を帯び臨界点に達したとき、霊鳥が具現化する。
その霊鳥を追いかけるように俺は加速する。
そして、具現化した霊鳥をかたどる魔力をまとい、ルオゾール目掛けて突撃した。
俺を妨害しようと集まってきた魔法生物だが、なすすべもなく消滅していった。
そんな光景を見ていたルオゾールは、呆れたように話し出した。

『相変わらず、厄介なお方ですよ。
 サイフィスが選ぶマスター殿は……』

「だからなんだ?
 生憎、貴様の御託に付き合うつもりは無い」

『……本当にやりにくい御方だ。
 もう少し楽しんで頂かなくてはなりませんね。
 どうせ、世界の終焉への道は始まったばかりなんですから』

「貴様の野望はここで潰す!」

『それはどうでしょうかねぇ……
 私としては貴方を滅ぼして憂いを無くしておきたい所ですからねぇ』

どこまでも人を馬鹿にしたように話をするルオゾール。
しかし、生憎そんな御託に付き合うほど俺はお人よしではない。
なので、早々と会話を終了させた。
だが、ルオゾールはその言葉とは裏腹に攻撃を仕掛けてくる。
禍々しい魔力を帯びた衝撃が俺を襲う。
その衝撃により、俺の速度が削られていった。

「……そうそう上手くはいかんか」

《ルオゾールも本気にゃんだにゃ》

《恭也にょ事だから油断はしにゃいとおもうけど、魔力の残量には気をつけるにゃ》

《サイフラッシュを使ってにゃいし、融合率は3割だから今にょ所は平気だけどにゃ》

《だけど、相手はオリジナル……》

《ああ、分かっている。
 最悪、アレの使用も考慮している》

《なら、おいらたちがとやかく言うことはにゃいにゃ》

《あたしたちは恭也にょ意思に従うまでだにゃ》

シロとクロの存在意義……
それは、サイフィスと寄代であるマスターとの融合の間に入ってマスターの人格崩壊をせき止める役割。
だが、サイフィスと完全融合した場合はその機能が十分に発揮できない。
それほどまでに、サイフィスが内包している魔力の凄まじさを物語っているのだが……
しかし、今までのマスターとオリジナルとの戦いは、どう言う経緯であれ最終的には完全融合・精霊憑依(ポゼッション)を行なっていた。
そして、状況によれば俺も使用は躊躇わない。
何故なら、この世界に護るべきものが存在しているからだ。
御神の理は護る為に闘う事、不破の理は護る為に敵対する物を破壊する事。
覚悟を決めた俺に対して、ルオゾールが操る魔法生物が俺を囲もうと集まってくる。
俺は集まってくる魔法生物に対して、先制攻撃を仕掛けた。

「ウィンドスラッシュ」

俺が具現化させた巨大な五枚の風の刃は、それぞれの方向へ突き進む。
荒れ狂うように突き進み、立ちはだかる物を容赦なく切り裂き、消滅させていく。
その隙を突き、俺は再びアカシックバスターを使用する。
再び具現化した霊鳥は俺と一体となり、再びりルオゾール目掛けて飛翔する。
立ちはだかる物を全て飲み込んで……
二度目のアカシックバスターの効果が切れた時、俺はルオゾールの目の前に存在していた。



なのは's View

恭也君がルオゾールを惹きつけてくれている間、私はフェイトちゃんとはやてちゃんと共に量産型を破壊する為に行動を起こしました。
クロノ君は、恭也君のフォローに回って魔法生物……
シロちゃんとクロちゃんが言うには死霊機兵と言うらしいんですが、それらの破壊を行なっています。
なので、恭也君とクロノ君の負担を減らす為にも一刻も早く量産型を破壊しなければなりません。
ですが、私たちが近づくにつれ、量産型の攻撃は鋭くなってきます。
だけど、データがなかった最初の頃に比べたら幾分は心にゆとりはありました。

《さてと……、
 なのはちゃんにフェイトちゃん。
 あたしが量産型のバリアを無効化させるから、その隙を突いて魔力増幅装置(ブースター)を破壊してや!》

《魔力増幅装置(ブースター)って、あの青いのだね?》

《そうだよ、フェイトちゃん。
 二機分だから、左右にそれぞれ8個存在する》

《フェイトちゃんは右側、なのはちゃんは左側を担当な。
 量産型は無差別攻撃やから攻撃を惹きつける事は出来んけど……》

《魔力増幅装置(ブースター)を破壊していけば攻撃力は低下するし、コアを護るように展開する多重バリアも無効化出来る!》

《うん、わかった》

《それじゃ、なのはちゃん、フェイトちゃん……
 いくで〜!》

はやてちゃんは、私とフェイトちゃんに指示を出したのと同時に詠唱体勢に入ります。
はやてちゃんの足の下に、ベルカ式の魔法陣が展開され白く輝いています。
その輝きが強くなるのと同時に、はやてちゃんの周りに魔力が集まってきます。

「万物を燃やす炎、万物を凍てつかせる氷、万物を貫く雷……
 参元素が重なりし時、邪な存在を貫く一撃となれ!
 トライディザスター!!」

はやてちゃんの詠唱が終了すると共に、どこからともなく現れた強大な炎、数多な氷、そして雷が量産型を襲う。
量産型はバリアを展開しますが、はやてちゃんの魔法により防御力は削られていきます。
それと同時に、私とフェイトちゃんは行動を起こしました。
フェイトちゃんの方はザンバーフォームを起動し、はやてちゃんの魔法が直撃すると同時に最大速で量産型の懐に入ります。
そして、はやてちゃんの魔法によってバリアが消失した時、なぎ払うようにバルディッシュを振るいました。

「疾風、迅雷!」

《スプライト、ザンバー》

フェイトちゃんとバルディッシュの掛け声と共に、精製された強大な魔力の刃が量産型の身体を抉ります。
その一撃は、横一列に並んだ魔力増幅装置(ブースター)を一気に破壊しました。
強烈な一撃による衝撃により魔力が散乱し視界が悪くなります。
その隙を突いたフェイトちゃんは、その場から離脱しました。
一方、私の方はエクセリオンモードを起動させエクセリオンバスターを使用するために詠唱体勢に入ります。

「レイジングハート……
 エクセリオンバスター・フォースバースト、マルチロックでスタンバイ!」

《イエス、マスター》

私の掛け声と共に、レイジングハートの先端に4つの魔力の塊が精製されます。
その塊一つ一つが、周りの魔力を吸い寄せ徐々に大きくなっていきます。
そして、全ての塊が臨界点を超える時、私はその魔力の塊を解放させました。

「エクセリオンバスター・フォースバースト、シュート!!」

私の言葉と共に解放された4つの塊は、それぞれの目標に目掛けて一筋の閃光を描きながら突き進みます。
量産型は、その閃光の進む道を妨害しようと触手を使って壁を作りますが、その壁はあっさりと崩壊し閃光に飲み込まれました。
何事も無かったように突き進む閃光は魔力増幅装置(ブースター)を貫き、その衝撃で爆発を起こします。
右と左と同時に起きた爆発の衝撃で、爆風が襲ってきました。
爆風が収まったとき、量産型は既に半壊状態に陥っています。

《はやて、こっちは残り4つだよ!》

《はやてちゃん、こっちも残りは4つ!》

《そなら、もうワンセットで潰せるな。
 とっとと潰してルオゾールの所へ向かわなあかんしな》

《私はまだ平気だよ。
 なのはは大丈夫?》

《私も大丈夫!
 まだまだ平気だよ》

恭也君と一緒に戦った時は、既に消耗していた状態で合体した状態と戦わなければならなかったし、恭也君は魔導師として覚醒したばかりでもありかなりの負担はありました。
二度目の量産型との戦いの前半は、時間を稼ぐ為とは言え一人で相手にしていました。
それに比べたら、フェイトちゃんとはやてちゃん……
そして私を含めたオーバーSランクの魔導師が揃って、さらにデータもある状態ではかなり余裕がある戦い方が出来ます。
そう、初めて相対した時に比べたらかなり有利に展開しています。
だから、先の戦いに比べて疲れてはいません。
不意に、はやてちゃんが話してきました。

《なのはちゃん、ちょい質問や》

《うん、何かな、はやてちゃん?》

《あの合体した奴のコアって二つあるんやったな?》

《そう、二つ存在する。
 そして、私のスターライトブレイカーだと一つしか破壊出来なかったよ。
 もっとも、その時はカートリッジの弾数の兼ね合いでexバージョンでは撃たなかったけど……》

恭也君と一緒に戦った時は、カートリッジの弾数の事もあり本当の意味での私の最強魔法は使用できない状態でした。
もっとも、アレを使用したら私自身身動きが出来ない状態にもなるのですが……
ですが、私の言葉に疑問を抱いたフェイトちゃんが質問してきます。

《魔力増幅装置(ブースター)を全て破壊して?》

《うん。
 その時は、恭也君のフォローでどうにかなったんだけどね……》

実際、私のスターライトブレイカーでコア一つは確実に消滅させる事ができ、二つ目もダメージを与える事は出来ていました。
なので、スターライトブレイカー級の魔法を同時に発動させれば破壊する事は可能なはずです。
それか、それ以上の威力を持った魔法で破壊するか……

《逆に言えば、スターライトブレイカー級の威力を持った魔法を並行処理で放てば問題ないってことやな?》

《後は、スターライトブレイカー以上の魔法を直撃させるか、だけどね……》

スターライトブレイカー以上の威力を持つ魔法って言うと、単独で使えるのは私たちの中でははやてちゃんぐらい……
私とフェイトちゃんの合成魔法『ブラストカラミティ』でもどうにかなるとは思いますが、制御の方に問題があるのでここぞって言う場面以外では使用したくないです。
でも、はやてちゃんは何か企んでいるみたいですけど。

《その様子だと、はやて……
 何か企んでいるようだね?》

《あはは……
 別に企んでるわけじゃないんやけど……
 まぁ、試したい魔法があるのも事実や》

はやてちゃんの言葉にフェイトちゃんが疑問を浮かべます。
まぁ、はやてちゃんはレアスキルによってかなりの魔法を修得しているんですが……

《試したい魔法?》

《そうや、前に古文書を解読してたんやけどな、ちょ〜ばかし強力すぎて使うタイミングがなかったんや》

どうやらはやてちゃんは、修得した魔法の試し撃ちがしたいようです。
訓練だと、どうしても制限しないといけない部分があるのも事実ですけど……
そういや、三人で訓練中に施設を壊して大目玉食らった事もあったなっと思い出していました。

《それって、はやてちゃんが使うラグナロクよりも強力なの?》

《う〜ん、単体威力としてはそうやな。
 ただし、ラグナロクと違って効果範囲は狭いけど……》

その様子だと、はやてちゃんは自信満々なようです。
なので、私とフェイトちゃんは量産型の止めをはやてちゃんに任せることにしました。

《その様子だと自信あるみたいだね?
 わかった、はやてに任せるよ!》

《おう、任しとき!
 だから、二人は残りの魔力増幅装置(ブースター)を破壊したら、恭也さんのフォローに向かってや!
 流石に、アレを一人で相手にするのはしんどいはずや》

はやてちゃんは、今後の事も考えて提案していたようです。
……まぁ、試し撃ちしたかったのが6割ぐらい占めていると思いますけど。
それにはやてちゃん、クロノ君の事も忘れているような気がするし……

《……うん、わかった!
 でも、クロノ君の方は放っておくの?》

《アレぐらいの雑魚なら、量産型を倒すまで持ってくれるやろ?》

私の言葉に、これ以上無いくらいあっさりとはやてちゃんは断言しました。
明らかに、恭也君と扱いが違います。
確かに、恭也君はルオゾールを惹きつけているのでクロノ君に比べて負担はあるのは事実なんですけど、少し酷いなと思います。
フェイトちゃんなんかは、はやてちゃんの態度に完全に呆れています。

《うわっ……
 はやて、冷たい……》

《信頼してるって言って欲しいなぁ〜》

はやてちゃんは、フェイトちゃんの一言に抗議しています。
でも、はやてちゃんの態度を見ていたらフォローのしようも無いんですけど……
だけど、のんびりと会話している状況でもない。
ダメージを負った量産型がなりふり構わず砲撃してきました。

《……二人とも、そこまでだよ》

私の言葉に、いがみ合っていたフェイトちゃんもはやてちゃんも我を取り戻します。

《どうやら、冗談言い合っている時間はないね》

《それじゃ、なのはちゃん、フェイトちゃん。
 打ち合わせどおり頼むな〜》

《了解!》

《わかった!》

はやてちゃんの指揮の下、私とフェイトちゃんは先程と同じように行動します。
はやてちゃんの魔法でバリアを無効化し、フェイトちゃんと私で残りの魔力増幅装置(ブースター)を破壊。
維持出来なくなった量産型は、コアの周り以外は既に崩壊し始めていました。
はやてちゃんは、その隙を逃す事無く詠唱体勢に入ります。
私とフェイトちゃんは、はやてちゃんの姿を確認すると恭也君の方へ向かいました。

「真紅に輝く浄化の光、その一撃を持って邪悪な存在に裁きを与えん!」

はやてちゃんの詠唱文句に私とフェイトちゃんは立ち止まり、はやてちゃんの方へ振り向きました。
仁王立ちになって詠唱しているはやてちゃん。
その右手に持って掲げている杖・シュベルトクロイツの真上に真紅に輝く球体が存在していました。

「なっ、あれ程の魔力を一箇所に集めるとは……」

「だから、はやてちゃんは自信満々だったんだね」

はやてちゃんの姿に私とフェイトちゃんは見惚れています。
その間にも、真紅に輝く魔力の球体は膨らんでいきます。
そして、真紅の球体の輝きが激しさを増すとき、はやてちゃんはシュベルトクロイツの先を量産型の核に向けました。

「クリムゾン・フレア!」

はやてちゃんの言葉と共に、巨大な真紅の球体が細かく分裂しコアに襲い掛かります。
膨大な数に分裂したその魔力は、量産型のコアを覆うように着弾し爆発。
さらに、コアの内部に侵入した魔力が内側から破裂しコアを内側から破壊します。
あたり一面が真紅に染まり、そして大爆発を起こしました。
時間差で二度目の大爆発も起こります。
はやてちゃんは、ものの見事に二つのコアを同時に破壊しました。

《はやてちゃん、凄い!》

《凄いよ、はやて!》

《あはは、まぁ、この魔法はどちらかと言うとラグナロクと違って単体専用魔法やからな。
 今のは、2つ分をまとめてぶっ放しただけやし……》

確かに、はやてちゃんの言うとおり先程使用したクリムゾンフレアは単体専用魔法。
広範囲高威力のラグナロクに比べたら、クリムゾンフレアは範囲は無いですがその分威力は高い。
私のスターライトブレイカーよりも威力はあるんじゃないのかなと思います。

《でも、威力だけなら私たちよりも上じゃないかな?》

《いやぁ〜、なのはちゃんの切り札に比べたら威力は無いと思うよ。
 なのはちゃんの場合、零距離でぶっ放したらとんでもない威力になるからなぁ〜》

フェイトちゃんの指摘に、はやてちゃんは苦笑して否定します。
だけど、はやてちゃんは何気に物騒な事を言っているのですが……
確かに、零距離でスターライトブレイカーを放てば一番威力があるのは事実です。
何故なら、スターライトブレイカーは距離が離れれば離れるほど威力が激減していく問題がありますから。
でも、そんなに都合の良い状況なんてあるわけが無いですからね。

《……はやてちゃん、そんな都合の良い状況って早々あると思う?》

《あるんじゃなくて、作るんや》

《……そう言われると反論できないのですが》

はやてちゃんの正論に反論できません。
だけど、私の魔法の大半が詠唱中に移動できるような代物でもなかったりするので……

《でも、なのはの魔法って大半が溜め時間が必要な物だからね。
 そして、溜めている間は移動は出来ないから……》

《零距離で溜めたら、それこそ的になるだけだよ……
 バインドで固めていても、熟練者なら溜め時間の間で解除するだろうし……》

《まぁ、そこらへんの話は戦術レベルになるから、なのはちゃんの得意分野やろ?》

《そうなんだけどね……
 最近自信が持てなくなってきちゃってて……》

まぁ、はやてちゃんの言うとおり、戦技教導隊に所属している私は戦術を考えるのが仕事なんですけど……
ここ最近、恭也君との模擬戦で負け越ししているので自信を失いかけていたりします。
ある程度対等に戦えたのなら、そこまで落ち込む事は無いのですが……
殆どの場合、神速で間合いを詰められて瞬殺であっさり終了ですからね。
そんな私に、フェイトちゃんは心配してくれます。

《どうしたの、なのは》

《恭也君が魔導師として覚醒してから、彼に魔法を教えてたんだけどね……》

《それで?》

《実戦形式でやったら、負けが込んじゃっているんだよね……》

私の答えに、フェイトちゃんとはやてちゃんは乾いた笑いを浮かべるだけです。
まぁ、フェイトちゃんもはやてちゃんも御神提督もとい静馬叔父さんと恭也君との戦闘結果は知っていますので、そういった反応がでても不思議じゃないのですがね。

《……まぁ、あの動き見てたら可能性はあるなぁ〜
 あたしなら、接近されたら手も足も出せんで負けるわ》

《あははは……
 なのはも負けず嫌いな所があるからね。
 私なら……
 私でも勝てそうには思えないよ、恭也さんとなら……》

フェイトちゃんもはやてちゃんも恭也君と相対した場合を頭に浮かべたようで、顔色が見る見る内に変わるのが分かりました。
でも、はやてちゃんは何かに気づいたようで話を振ってきました。

《でも、恭也さんって遠距離はできないんやろ?
 融合状態は別として……》

《うん、その通り。
 だから、中長距離限定での模擬戦は何とかまだ勝てているんだけど……》

そう、融合していない恭也君は遠距離魔法が使えません。
なので、中長距離限定下での模擬戦だと、どうしても手数不足になり何とか私でも勝てる状態です。
もっとも、今後伸ばしていけば確実に抜かれると思いますけどね……
だけど、近距離まで入れたとたんに状況は変わります。

《近距離を含めたとたんに、手も足も出せなくなるわけやな?》

《うん……
 恭也君、間合いを支配するのが上手いからね。
 開けたと思っても直ぐに詰められる……》

恭也君に対して本当に強いと思ったのは、御神流の奥義でも魔法の威力でもなく間合いの取り方……
早い話、戦場の支配能力が優れていたからです。
相手の有利な状況を徹底的に潰し、なおかつ自分の有利な状況に持っていく事。
教導隊でも散々教えられる話ではあるのですが、恭也君のその能力は既に私を含めて教導隊隊員よりも上だと思います。
例外は、静馬叔父さんだけでしょうね……
そんな事を考えていたのですが、はやてちゃんが苦笑して話してきました。

《そういってる割には、なのはちゃんも近接戦闘技術は向上してるやん?
 前の戦いでも、今までのなのはちゃんの動きとは違ってたで〜》

《えへへへ、そうかな?
 でも、そう言ってもらえると嬉しかったり……》

はやてちゃんの指摘に少し嬉しくなる私。
自分自身、近接戦で回避術は向上しているとは思っていたんですけど……
恭也君はさりげなく近接戦闘技術まで教えてくれていたようです。
だけど、その話を聞いたとたんフェイトちゃんが感情を伴わない声で話してきました。

《つまり、なのはは恭也さんに近接戦闘技術を教わっていたわけね?》

《うん!
 ……って、フェイトちゃん、怒ってない?》

フェイトちゃんの態度に私は恐ろしくなります。
でも、悪い事した覚えは無いのですが……

《そんな事無いよ?
 随分と仲がよろしいから何かあったのかなと思うだけで……》

《ええな〜、なのはちゃん。
 恭也さんとの個別授業、ええな〜》

《あ〜もう!
 私の感情と技術の向上は別問題でしょ!?
 何でもかんでも色恋沙汰に結び付けないでよ!》

フェイトちゃんとはやてちゃんの嫉妬丸出しの態度に私は完全に怒りました。
私が恭也君に魔法を教えたのも、恭也君が私に近接戦闘技術を教えてくれたのも打算があったわけじゃなく、ヴォルクルスに対処する為に必要な行為でした。
まぁ確かに、当時の私は惹かれていたのは事実ですけど、自覚していたわけじゃないのでそんな事言われても知りません。
それに、今この場でやっている余裕がある状況でもないですから。
だけど、そうしている内に量産型の消滅を確認できたのも事実です。

《量産型の消失も確認したから、私は行くよ。
 生憎、今の状況でそんな話をしている暇は無いし……》

私はそう言って二人との会話を切り、恭也君の方へ向かいました。
私の態度に慌てたフェイトちゃんが謝ってきます。

《ちょっ、ちょっと待ってよ、なのは!?
 ゴメン、私が悪かったから……》

《ちょ〜ばかし、悪ふざけが過ぎたみたいやな。
 フェイトちゃん、なのはちゃんのフォローは任せた!
 あたしはクロノ君のフォローに回るから〜》

フェイトちゃんとは逆に、はやてちゃんは責任逃れをしようとしています。
どうも、こういった駆け引きもはやてちゃんは得意なようです。
まぁ、上に昇る為にはそういった駆け引きも重要そうですけどね……
そんなはやてちゃんを見て、フェイトちゃんは困惑しています。

《んなっ、はやて酷いよ……
 なのはを怒らせたのははやても同罪なのに、私にだけ押し付けるなんて……》

流石にはやてちゃんの態度は、私の怒りに油を注いでしまいました。
なので、私は立ち止まり、感情が篭らない声ではやてちゃんに警告します。

《……はやてちゃん》

《なっ、なんや……
 なっ、なのはちゃん》

私の態度に、はやてちゃんは脅えています。
そんなはやてちゃんを無視し、私は冷酷に宣言しました。

《後で、ゆ〜くりと話し合おうね……
 それとも、恭也君の地獄のフルコースへご招待しようか?》

《あぅあぅ、それだけわぁ〜、それだけわぁ〜》

私の言葉を聞いたとたん、魂が抜けたように同じ言葉を連呼するはやてちゃん。
恭也君のマッサージはここでも覿面だったようです。
……普通はトラウマになりますけどね、アレを食らったら。
そういった意味でも、桃子さんのタフさは凄いわけで……
未だに立ちすくむはやてちゃんを放って、私は恭也君の所へ向かいました。



クロノ's View

恭也君がオリジナルの注意を惹きつける為に行動を開始。
それに合わせるように量産型に向かったなのはとフェイト、そしてはやて。
残る僕は、大量に湧いた雑魚-死霊機兵-を相手にしている。

「スティンガーブレイド・エクスキューションシフト」

僕の詠唱と共に魔力で構成された数多の刃。
その魔力の刃一つ一つが標的を定め、その標的に向かって突き進む。
死霊機兵の攻撃を掻い潜り、魔力の刃はそれぞれ指定した死霊騎兵に突き刺さり爆発を起こす。
その爆発の余波で周囲にいた死霊機兵も巻き込んでいた。
爆発の影響で発生した煙により視界が悪くなる。
視界が晴れたとき、まだ周囲を囲んでいる死霊機兵は存在していた。

「ちぃっ、数が多いな。
 ……それとも、久しぶりに現場出たから腕が鈍ったのか?」

誰もいないところで独り言を言う。
実際、このところ現場に出る事は皆無に近かった。
提督という階級もある為、迂闊に現場には出れないのも事実なのだが……
……そう言えば、僕と同じ提督になっているのに未だ現場に出ている人もいるか。
まぁ、それはどうでもいい。
今は、死霊機兵をどうにかしないと状況が悪くなる。
幸い、恭也君がオリジナルと交戦中で死霊機兵を召還する余裕は無いようだ。
だから、ここで始末しておくに限る。

「スティンガーブレイド……」

再び、僕の周囲に精製される魔力の刃。
やはりそれぞれ一つ一つに標的を設定する。
数秒の後、輝きを増した数多の魔力の刃を見定め、僕は解き放つ。

「エクスキューションシフト」

僕の言葉と共に、標的に向かって加速する魔力の刃。
その一つ一つが標的である死霊機兵に突き刺さり、爆発を起こし周囲を巻き込んだ。
その衝撃により再び視界が悪くなる。
だが、魔力反応は未だ大量に存在していた。

「くっ、流石にスティンガーブレイドだと焼け石に水か……」

そう呟いた僕は、未だ展開していないストレージデバイス-デュランダル-を握った。
デュランダルを使えば、死霊機兵を一掃する事は可能……
だが、デュランダルに設定されている魔法は魔力の消費が多い。
それに、ここで使えばオリジナルとの戦いでも支障をきたす。
だから、まだ使えない。
そんなことを思っていた僕だったが、遥か離れた上空で大きな爆発が起きた。

「どうやらフェイトたちは、かなり有利に事を運んでいるようだな」

僕はその光景を見て苦笑した。
なのは、フェイト、そしてはやてがそろった時はどんな厄介な事件でも解決してきた。
そしてあの三人のチームワークは管理局全体を見ても超えるものはいないと思う。
出会った時は危なっかしくて冷や冷やしたものだが、今では三人とも頼りになる存在にまで成長している。

「確かに三人とも自信があったわけだ。
 それに……」

僕はフェイトたちの方から視線を外し、恭也君の方を見る。
死霊機兵の幾つかとオリジナルを相対しながらも、彼は的確に行動している。
そう、なのはやフェイトと違って無駄な動きが彼には見当たらなかった。
明らかに戦闘慣れをしている。

「見事なものだな……
 魔導師としては覚醒して間もないのに、魔法戦でもあそこまで対応できるとはな……」

恭也君自身や、なのは、そして御神提督からの話しでも戦闘経験があるのは分かっている。
それに、御神提督との模擬戦でもあそこまで対等に戦える人物は管理局には存在していない。
だが、彼の魔法戦はなのはがこちらの世界に来た時と僕たちがやって来た時、後はなのはとの模擬戦ぐらいだという話だ。
なのに、今の彼の戦闘技術は明らかに僕よりも上だと実感できた。
状況判断能力、空間把握能力……
どれをとっても超一流の領域に入っている。

「なのはが認めるだけの人物であるな……
 もしかしたら、魔導師ランクはSSSを取れるかも知れない……」

管理局でもAAAクラスは一握りの存在である。
その上、Sクラスであるなのはとフェイト、SSクラスである僕やはやては管理局にとって貴重な存在である。
そして、最上位であるランクSSSに認定されているのは管理局全体を見ても10人いるかどうかってレベルだ。
僕が唯一知っている人物が御神提督である。
実際、Sクラス以降になると保有魔力の他に状況判断能力、空間把握能力等総合技術を問われる訳だ。
そういった意味で言ったら、御神提督は魔法を使わないでSSクラスと戦えるだけの技術は持っている。
それに御神提督の保有魔力はなのはたちと同レベルであり、適正は古代ベルカ式で稀少能力持ちである。
実際、御神提督は現役の時に数多な難事件を解決していって『管理局の切り札』とまで言われる存在になっていた。
もっとも、航空武装隊総司令に着任してからは現場に出る事は殆ど無かったが……
今回の事件に関しても余程の事が起きないことには、御神提督自身が出撃する事は無い。
御神提督は、あえて僕たちに任せているように見える。
まぁ、御神提督がクラウディアから離れたら指揮系統が乱れるのも事実だが。
そんな御神提督に、模擬戦でかつ非魔法戦闘であそこまで対等に戦えた恭也君である。
保有魔力もなのはたちとあまり変わらないし、僅かな期間とは言え魔法戦でも総合的に見れば隙が無い。
そんな事を考えていたが、不意に殺気を感じ戦闘に集中する。
スティンガーブレイドの標的になっていなかった死霊機兵が攻撃をしてきた。
黒い稲妻が僕を襲う。
だが、僕はその攻撃を紙一重でかわしていった。

「ちぃ、現状手持ちの広範囲魔法で使えるのはこれしかないか……」

僕はそう愚痴って三度目のスティンガーブレイドの詠唱に入る。
スティンガーブレイドはどちらかと言えば広範囲魔法には入らない。
弾数を大量に精製してそれぞれ標的を設定して飛ばしているだけだ。
だが、長期戦という観点から見れば有効な手段なのも事実。
僕の周囲に数多な魔法の刃が三度精製される。
そして魔力の刃が輝きを増した時、僕は三度魔法の刃を解き放つ。
枷を外した魔力の刃は標的に向かって直進する。
死霊機兵の妨害攻撃にも魔力の刃は怯む事無く突き進み、標的に刺さる。
一瞬の間を置いて、死霊機兵が爆発を起こした。
その影響で爆風が巻き起こり視界が三度悪くなる。
爆風で発生した噴煙から死霊機兵の攻撃が来た。
僕は回避行動に移ったが、不意を疲れたためその攻撃はバリアジャケットをかすった。

「くっ、油断していたか」

スティンガーブレイドで精製した魔力の刃は100個。
それを3回使っているから、死霊機兵は300ぐらい倒しているのは確実。
さらに爆発の余波で巻き込んでいるから倍の600ぐらいは倒していると思う。
だが、死霊機兵の数は一向に減っていない。

「……化け物だな。
 普通の魔導師がこの数の召還をしたら既に魔力が尽きている」

そんな事を愚痴っていても状況は変わる訳じゃない。
もっとも、死霊機兵が僕に集中してくれるおかげで恭也君やなのはたちのフォローは出来ている。
だが、流石にこれ以上対応するとなるともはや体力・魔力勝負である。
後々の為にも、デュランダルは使用したくはないのだが……
僕が心の中で問答をやっていると、再び上空で大爆発が起きた。
僕はその音に反応して上空を見ると、力を失った量産型が消滅していくのが見えた。

「初めて相対した時は、あれ程苦戦した上に逃がす事になったのだがな。
 こうもあっさり倒す事が出来るとは、三人ともやるな」

恭也君のデバイスであるサイフィスからのデータ提供があったとは言え、こうも容易く倒せるとは思っていなかった。
だが、これで有利になるのも事実。

「僕もフェイトたちには負けられないな」

そう呟いて苦笑する。
実際、量産型に比べたら死霊機兵は数で攻めてくる雑魚である。
もっとも、数が数だけに厄介な事には変わらない。
僕は4回目のスティンガーブレイドの詠唱に入る。
数多の数の魔力の刃が僕の周りを囲むように精製される。
毎度のように標的を設定し、魔力の刃を解き放つ。
魔力の刃が標的に突き刺さるのと同時に、標的が爆発を起こす。
視界が悪くなると同時に、はやてから連絡があった。

《おお、クロノ君、流石や。
 提督になってからめっきり現場に出てへんかったから錆付いてるかと思っておったで》

《……酷い言いようだな、はやて?》

まぁ、はやての言う事ももっともなので苦笑するしかなかった。
だが、はやてと一緒にいた二人が見当たらない。

《ところで、なのはとフェイトは?》

《ああ、あの二人なら先に恭也さんの所に行かせたよ。
 こっちの雑魚はあたしの魔法で一掃できるからなぁ》

どうやら、なのはとフェイトは恭也君の所に向かったようだ。
だとしたら、こっちもぐずぐずしている暇は無い。
それに、はやてが来てくれたのも僕としては助かった。

《はやて、詠唱時間は僕が稼ぐから……》

《了解や!
 みんなまとめて一掃したるさかい、任せてな〜》

《頼む》

そういって僕はスティンガーブレイドの詠唱に入る。
はやても僕の詠唱に合わせて、広域魔法の詠唱体勢に入っていた。
はやてにとって広域魔法はもっとも得意とする分野である。
だから、僕が死霊機兵の注意を惹きつけて、はやてが本命の広域魔法を使用して一掃する。
現状、もっとも有効な手段である。

「スティンガーブレイド・エクスキューションシフト」

僕の言葉によって解放された魔力の刃は死霊機兵に突き刺さる。
先程と同じように数秒の間を置いて爆発。
そして、はやてはそのタイミングを見計らったように詠唱を完了して魔力を解き放った。

「アブソリュート・ゼロ」

はやてから解き放たれた魔力は辺り一面に存在する死霊機兵を全て凍らせた。
アブソリュート・ゼロ……
その名のとおり、絶対零度で凍らせて破壊する。
はやての手持ち魔法で破壊力がある魔法の一つである。
前に一緒に仕事した時に見せてもらった事はあるが、見事なまでに雑魚を一掃した。
僕の側に詠唱を終えたはやてがやってくる。

「広域殲滅は流石だな、はやて」

「いやぁ〜、なのはちゃんが一点集中の砲撃型やし、フェイトちゃんは近接遊撃型やから……」

「自然に広域援護型になったか。
 だがしかし、見事なものだ」

僕の言葉にはやては照れ隠しに苦笑している。
はやては普段ふざけたように明るくしているが、本当の所責任感が強すぎて、巻き込まれたとは言え闇の書事件の罪を自分で抱えている。
だから、側で見ていると危なっかしい所があった。

「……大丈夫か、はやて?」

「うん?
 大丈夫、あたしは平気やで、クロノ君」

「そうか……」

それ以上は言葉にしない。
いくら言ったところで、はやての意思が変わるわけじゃないから。
僕が出来る事は裏でサポートするぐらいだ。

「まぁ、それに……
 今は、アレに集中せんとあかんしな……」

「ああ、そうだな……」

はやての眼差しはオリジナルに向けられた。
現状、オリジナルをどうにかしなければならないのは事実。

「あたしの子たちが受けた仕打ちの分は、きっちり返さなあかんからな」

守護騎士たちが受けた仕打ちに対する恨みはしっかり残っているようだ。
その言葉から、はやての怒りが感じられる。
僕は無言で肯き、恭也君たちがいる所……
オリジナルとの戦場へはやてと共に向かった。



恭也's View

オリジナルヴォルクルス・ルオゾールと相対して、早30分が経過しようとしている。
だが、クロノさんが大量に存在する死霊機兵の相手を相手にしてくれているとはいえ、幾つかは俺の方に攻撃を定めてくる。
その雑魚を相手にしながらルオゾールと戦っているため、有効なダメージを与えられていなかった。
……というより、自己修復機能でダメージを回復されてしまっていた。
そして、俺は何回か奴の攻撃をかわしきれずに少なからずダメージを負っていた。
無論、戦闘に支障をきたすダメージは受けていないが……

『くっくっくっくっく……
 サイフィスに選ばれた貴方の実力は、こんなものなんですか?
 さっき貴方がおっしゃった言葉は、ハッタリだったと?
 くっくっくっくっく』

奴の挑発を俺は無視する。
ルオゾールは一々癇に障る喋り方をしてくる。
だが、その挑発に乗ったら奴の思う壺であり、また、冷静な判断ができなくなる事を意味する。

『おやおや……
 返す言葉も無いのですか?
 いやはや、先程の自信はなんだったのでしょうかねぇ?
 くっくっくっくっく……』

ルオゾールは、相変わらず人を馬鹿にする喋り方をしてくる。
だが俺は、不敵な笑みを現しルオゾールに返答した。

「ふん、何時まで余裕な態度でいられるかな?」

『ほぉ、それはそれは……』

俺の挑発にルオゾールは挑発で返そうとして止まる。
俺たちの戦場から離れた上空で変化が起きた。
巨大な爆発音と共に量産型は消滅。
それは、なのはたちが量産型の撃破に成功した事を物語っていた。

『まさか……
 あの量産型をこうも易々と倒すとは……
 あの小娘たちを完全に侮っていましたよ』

ルオゾールの言葉に、先程までの余裕はなく怒りに満ちていた。
そんなルオゾールに対して、俺は嘲笑するように話す。

「だから言ったはずだ。
 その余裕な態度はどこまで続けられるかと……」

『きっ、貴様……!!』

一瞬、我を忘れたルオゾールだが、再び人を馬鹿にしたような態度に戻る。

『……ですが、貴方以外に私にダメージを与えられますかな?』

「……さあな、やってみない事には分からん」

ルオゾールはアストラルサイドで固めている為、絶対の自信を持っている。
現状、奴の言うとおりサイフィスの力を借りている俺以外の攻撃は通らないのは事実であった。

《シロ、クロ!
 アストラルコーディングはどこまで進んでいる?》

《後5分……
 いや、後3分は欲しいにゃ》

《その頃にはなのはやフェイトも合流するにゃ》

《頃合から言っても、それは都合がいいな。
 分かった、それまでは時間を稼ぐ》

実際、量産型を倒したなのはとフェイトがこっちに向かってるのは気配で分かっていた。
もっとも、サイフィスと同化している恩恵で感覚が鋭くなっていたから離れた距離でも分かったのだが……
そして、なのはたちと合流したのと同時に対アストラル術式を組み込んだ一撃をルオゾールに食らわせれば、なのはたちの攻撃は通る事になる。
そうなれば、後は火力だけの問題だ。
ルオゾールは、不適な笑みを浮かべている俺に対して嘲笑するように攻撃してきた。

「何を考えているかは分かりませんが……
 そろそろ、お互いに本気を出しませんかねぇ?
 ……それとも、今までのが本気だったと?」

ルオゾールの言葉と裏腹に、巨大な黒い球体が4つほど精製される。
その球体一つ一つの中には、無数のプラズマが走っている。
そして、巨大な黒い球体はゆっくりと動き出しルオゾールを中心として正四角形の頂点を構成する。
刹那、強大なプラズマが4つの球体から俺に向かって走り出す。

『くっくっくっくっく……
 まさか、この一撃で終わるようなお方ではないでしょうな?
 くぁっはっはっはっは……』

耳障りなルオゾールの声を聞きつつ、俺は無言でそのプラズマを回避する。
だが、不規則な動きをするプラズマは完全には回避できず、所々に被弾した。
さらに、そのプラズマは重なり合った時に爆発を起こす。
俺はとっさにシールドを展開し爆発の衝撃に備えた。

「つっ……
 流石にやってくれるな……」

俺は爆発の衝撃に絶えながら愚痴をいう。
油断していた訳ではないが、ルオゾールの攻撃を読み違えたのは事実だ。
爆風によって発生した煙幕が晴れた時、ルオゾールは既に次の攻撃の準備が完了していた。

『ふっふっふ……
 では、この一撃はどうでしょうなぁ?』

相変わらず人を馬鹿にした物言いをする、ルオゾール。
だが、その中心に集められていた魔力は強大であった。
そして、禍々しい魔法陣が薄暗い紫色に輝きだす。

『……では、行きますよ。
 アストラルバスター、発射!!』

ルオゾールの言葉に、禍々しい魔法陣から何かが現れる。
いや、膨大な魔力がある形に構成されていく。
そして、その魔力の輝きが最高潮に達した時、そこに現れたのは西洋の竜だった。
具現化し禍々しく紫色に輝く竜は、俺をめがけて直進してきた。
俺は対抗する為にアカシックバスターを使用する。

「アカシックバスター!!」

俺の言葉に反応し前面に展開した六芒星の魔法陣から霊鳥が具現化する。
出現した霊鳥は、俺を狙う竜を阻止する為に飛翔した。
膨大な魔力同士がぶつかる。
その時に発生した衝撃波がこの場にいる全ての存在を襲う。
そして、紫色に輝く竜は俺の霊鳥により輝きを失っているが気にする事無く俺に襲いかかろうとしていた。

《駄目だにゃ!
 30%だと、威力が足りないにゃ》

《恭也、どうするにゃ?》

《……今はまだ温存すべきだな。
 なのはたちと合流した時が、勝負時だ》

俺はそう判断し、次の行動の準備をする。
しかし、実際に防ぎきれなかったその竜は俺に襲い掛かろうとしていた。
だが、その竜はあらぬ方向からの砲撃で消滅する事となる。
紫色に輝いた竜を貫いたのは、桜色に輝く一筋の閃光……
そして、その一撃を撃った本人から連絡があった。

《お待たせ、恭也君。
 遅くなってごめん……》

《なのはか……
 いや、いいタイミングだった》

俺の後ろに、なのはとフェイトがやってくる。
そんな二人に俺は苦笑して念話で対応した。

《見事なもんだな。
 あの量産型を短時間で消滅させるとは……》

《褒めてくれてありがとね。
 でも、サイフィスと出会わなかったらあそこまで上手くは行かなかったよ》

《そうですよ。
 初めて相手した時は、対処方法が分からなくてかなり苦戦しましたから》

対処方法はサイフィス経由で教えていたとは言え、あの短時間で破壊したのは見事なものだった。
なのはとフェイトは謙遜しているが、実際俺となのはで戦った時に比べても短い時間で撃破している。
だが、ここでのんびり話をしている時間は無いのも事実だった。

《そうか……
 だが、あんまりのんびり話している時間は無いな》

《そうだね、恭也君……
 ところで、あれは終わってるの?》

なのははアストラルコーディングを組み込んだ一撃を放っているか確認してきた。
だが、アストラルコーディングはまだ完成していない。
もっとも、シロとクロの話だとそろそろ完成する頃なんだが……

《いや、まだだ……
 シロ、クロ?》

《心配無用にゃんだにゃ》

《ちょうど今、完成したにゃ》

シロとクロは約束どおり、このタイミングでアストラルコーディングを完成させた。
後は、ルオゾールにアストラルコーディングを組み込んだ一撃を食らわすだけだ。
それにより、なのはたちの攻撃も通るようになる。

《……だそうだ。
 今から奴にアストラルコーディングを組み込んだ一撃を食らわす》

《わかりました。
 私たちが、アレの注意を惹きつけます》

《だから、恭也君はその一撃にだけ集中して》

二人の言葉がこれほどまでに頼もしいと思ったのは初めてだ。
なのはとの行動は長いが、どちらがといえば危なっかしいく感じていた。
まぁ、そこらへんは模擬戦のおりに矯正していったのだが……
フェイトに関して言えば、初対面の印象かこっちも危なっかしく感じる。
はやても普段はふざけてるように見えるが、これも危うさを俺は感じていた。
俺は不意に苦笑し、そしてルオゾールに目を向ける。

《了解した、二人とも。
 頼むぞ》

《はい!》

《うん!》

二人は俺の言葉に力強く返事し、そして行動を開始した。
なのはの周囲には数多の魔弾が精製されていく。

「アクセルシューター!!」

なのはの掛け声と共に、精製された魔弾はルオゾールに向かって放たれた。
それと同時にフェイトも詠唱を完成させ、集まった魔力を解き放つ。

「プラズマスマッシャー!!」

前面に展開された魔法陣の中心から展開された巨大なプラズマがルオゾールに襲い掛かる。
ルオゾールが精製した紫の竜と俺が精製した霊鳥の衝撃で発生した煙幕は未だ晴れていない。
その隙を突いた二人の一撃であった。

『無駄ですよ。
 精神領域に干渉できない貴方たちの攻撃は、この私には通用しません』

ルオゾールの自信に満ちた声が当たり一面に響き渡る。

『それでも、量産型を破壊してくれたお礼は返さないといけませんね。
 では、行きますよ』

ルオゾールの言葉と共に、展開されている4つの球体からプラズマが精製され発射される。
発射されたプラズマはなのはとフェイトそれぞれに襲い掛かる。
機動力が高いフェイトはそのプラズマをかすってはいたが回避する事に成功している。
だが、それでもダメージは高いようだった。

「うぅ、かすっただけでここまで魔力を削られるとは……」

言葉と共に表情をゆがめるフェイト。
一方、なのはは機動力が低い為にシールドを展開していた。
シールドにぶつかるプラズマの衝撃で、なのはは後方に飛ばされる。
だが、フェイトに比べてダメージは受けてないようだった。

《大丈夫、フェイトちゃん?》

《うん、なんとか……
 なのはと違って防御力が低いからね、どうしても当たるとダメージが大きくなる》

フェイトの事を気遣うなのは。
だが、俺は二人が作ってくれたチャンスを逃す事はしなかった。

《サイフィス、50%限定融合……
 承認》

その言葉と共に俺の感覚が変わる。
自分でありながら自分でない感覚。
だが、今はそんな事を言っている暇は無い。
そして、俺の身体がサイフィスとの融合で再構築が完了した時、前面に魔法陣を展開した。

《恭也、準備は完了にゃんだにゃ!!》

《今だよ、恭也!!》

「くらえ!!
 アカシックゥゥゥウ、バスタァァァァァア!!」

俺の言葉と共に前面に展開した魔法陣から霊鳥が出現する。
先程まで出現した霊鳥よりも激しく輝きながらルオゾールめがけて飛翔する。
二人に気を取られていたルオゾールは、俺の具現化した霊鳥に気づくのが遅れた。
そして、霊鳥はルオゾールの対応にあざ笑うように本体に突き刺さった。

『うぐぉぉぉぉぉぉお!!
 まっ、まさか!!』

アカシックバスターに籠められた術式を食らったルオゾールは、先程と違って完全に驚愕している。
だが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
俺はなのはとフェイトに指示を出した。

「今だ、なのは、フェイト!!」

「はい!」

「りょ〜かい!!」

俺の意図に気づいたなのはとフェイトはルオゾールに攻撃を開始した。
膨大な魔力がなのは、フェイトそれぞれに集まってくる。
そして、それぞれの魔力が臨界点に達した時、二人は集まった魔力を解放させた。

「エクセリオンバスター・フォースバースト!!」

「ジェットザンバー!!」

なのはとフェイトの一撃が、困惑するルオゾールに直撃する。
その衝撃により魔力が散乱し視界が悪くなる。
魔力に覆われた中から赤く禍々しく光るのが見えた。
オリジナルヴォルクルスを構成する中心的物体・コア……
これを破壊する事が出来れば全てが終わる。
だから、俺はこのチャンスに全てをつぎ込んだ。

《サイフィス!!
 80%限定融合……、承認!!
 この一撃で終わらせる!!》

《了解した、主よ》

俺が唱えたキーワードと共に俺の身体が再構築される。
それと共に俺の意識は闇の中に引っ張られる感じがした。
これが、シロとクロが言っていた精神が飲み込まれるという事だと実感した。



なのは's View

恭也君の姿が見慣れていない姿へ変わっています。
恭也君の髪は、既に黒髪が殆ど存在していなく銀髪に変わっています。
また、背中に生えている翼が一対二翼から二対四翼に増えており、青白い輝きが激しさを増しています。

「……これが80%融合の姿?」

私は呆然と呟いていました。
フェイトちゃんは、恭也君の身に何が起きたか分かっていないようで困惑しています。

《ねぇ、なのは……》

《……えっ、あっ、フェイトちゃん?
 何?》

私はフェイトちゃんの言葉で我に帰りました。
そんな私に困惑していたフェイトちゃんですが、恭也君の事を聞いてきます。

《えっっと……
 恭也さんの身に何が起きてるかなっと思って……》

確かに、初めて見たら普通は驚きますね。
私も、恭也君の姿が変わった時は驚いていましたし……
恭也君の方は、80%融合した後にアカシックバスターの詠唱体勢に入っています。
どうやら恭也君は、この隙を突いて決めるつもりです。
そんな恭也君の姿を見ながら、フェイトちゃんと話を続けます。

《フェイトちゃんはこの前の戦いの戦闘データは確認してるよね?》

《うん、それで恭也さんのデバイスは融合デバイスだとは聞いたけど……》

《正確には違うんだけど、まぁ似たようなものだね。
 ただ、恭也君の場合……
 はやてちゃんと違って、融合率を指定できるの》

《えっ!?》

私の言葉に驚くフェイトちゃん。
でも、それは無理も無いです。
融合デバイスを使用しているのは現在はやてちゃんだけってのもありますから、融合率指定が出来るなんて普通はわかりません。
だけど、私たちの会話を遮るようにルオゾールの言葉が当たり一面に響き渡りました。

『くっ、まさか……
 先程の消極的な戦いの裏でアストラルコーディングを組んでいたとは……
 迂闊でしたよ』

魔力の霧が晴れる時、ルオゾールの……
オリジナルヴォルクルスの姿が現れました。
アストラルシフトに自信があったのか量産型に比べたら、私とフェイトちゃんの一撃でかなりの損傷を与えています。
それに、その中心となるコアがむき出しになっていました。
そして、そのコアの目の前には既に恭也君が存在しています。
その姿を確認したルオゾールは完全に驚愕していました。

『なっ、ばっ、馬鹿な!?
 何故、貴様がここに存在している!?』

「これで終わりだ、ルオゾール!!」

恭也君は、ルオゾールの話を無視し抜刀体勢に入っています。
あの構えは、静馬叔父さんとの模擬戦で見せた……
――御神流・奥義乃極み『閃』――
ですが、恭也君の持っている刀には強大な魔力が圧縮されて存在しています。

「御神流、奥義乃極み……、閃!!」

恭也君の言葉と共に抜かれた刀はコアを切り裂きました。
また、刀にまとっていた強大な魔力は、霊鳥を構成してコアごと本体を突き破り飛翔していきます。
閃きとアカシックバスターの合成技……
土壇場でこのような行為が出来るとは思ってもいませんでした。
恭也君の一撃により爆発を起こすルオゾール……
いえ、オリジナルヴォルクルス。
恭也君はその衝撃の反動を利用しその場から離脱しました。
それと同時に、死霊機兵を相手にしていたクロノ君とはやてちゃんが合流。

《なのはちゃん、フェイトちゃん、おわったの?》

《え〜と、終わったとおもって良いのかな?》

はやてちゃんの言葉にフェイトちゃんは曖昧に答えます。
実際に確認しない事には分からないわけですし……
それに、未だに私の中では嫌な予感がしています。
恭也君の一撃で終わってくれていたら、それに越した事は無い。
でも……

《みんな、防御しろ!!
 奴はまだ倒れていない!!》

《!!》

恭也君の叫びに、私たちはシールドを展開。
それと同時に、とてつもない魔力を帯びた衝撃波が私たち全員を襲います。

「つっ、なんという魔力だ!?」

「くっ、まずい……」

防御力が低いフェイトちゃんは、シールドを展開していますがかなり食い込んでいます。
クロノ君は平均的な防御力を持っていますが、それでも状況的にはやばいです。

「かの地に眠る大地の守護者よ、我らを護る為に今、目覚めん!!
 プロテクション・ウォール!!」

はやてちゃんが広域補助魔法を展開。
私たちの身体を護るように、はやてちゃんが精製した魔力の球体が私たちを取り込みます。

《はやて、助かったよ》

《流石だな、広域攻撃魔法だけじゃなく補助魔法も修得してたとは……》

《ありがとう、はやてちゃん》

《いやいや、別にかまへんで》

私たちの言葉に照れた表情を見せるはやてちゃん。
だけど、はやてちゃんのおかげで攻撃を防げたのは事実。
しかし、恭也君は私たちの会話には加わらず一点を見つめていました。
そして、恭也君が見つめてる先、魔力のぶつかりにによって現れた霧が晴れる時……
先程とは違う姿のオリジナルヴォルクルスが現れました。
今までよりも膨大で禍々しい魔力を帯びながら、私たちがいる空間を支配しています。

『……まさか、この姿をさらしだす事になろうとは思ってもいませんでしたよ』

「……ああ、すっかり忘れていたよ。
 姑息な貴様の事だからな、隠し事はお手の物って事か……
 そして、それが貴様本来の本体・ナグツァートか?
 それに、完全に邪神の力を解放したか……」

『くっくっくっくっく……
 どうやら、サイフィスとの融合によって過去のマスターの記憶まで覚醒しましたか……
 ですが、もはやこちらも余裕を見せている訳には行きませんので……
 貴方によって撃ち込まれたアストラルコーディングは未だに私を蝕んでいますからな……』

「……ならば、ここで決着をつける」

『できますかな、そこまで疲弊しきった身体で?』

ルオゾールの宣言と共に、先程の衝撃波が再び私たちを襲います。
明らかに、量産型の攻撃力とは比べ物にならないぐらいの威力を誇っています。
その攻撃により、私たちは防戦一方で手が出せない状態でした。
それに、80%まで融合している恭也君は見た目で分かるぐらい疲労が蓄積されています。

《つっ、このままではジリ貧か?》

《だけど、この攻撃をどうにかしないと……》

《流石に、バリアの中から攻撃は出来んしなぁ……》

クロノ君、フェイトちゃん、はやてちゃんはこの状況を打破する為に相談してます。
だけど私は、恭也君の表情……
いえ、恭也君の目を見ていました。
恭也君が、あんな目をする時は覚悟を決めた時……

《きょっ、恭也君!?
 まっ、まさか……》

《……流石にお前は気づいたか。
 だが、この状況を打破するにはそれしかない!!》

《でっ、でも……》

恭也君は精霊憑依(ポゼッション)を行なうつもりです。
それは最悪、恭也君の人格が崩壊するという事……
私は、恭也君を止めたい……
だけど、同じ立場だったら……
私の頭の中では恭也君の行動に対して肯定と否定が争っています。
そんな私に、恭也君は振り向いて微笑んできました。

《心配するな》

《だけど……》

私は困惑しながらも恭也君を見つめています。
恭也君は微笑みながら話を続けます。

《全てが終わったら、お前に伝えたい事がある。
 だから、心配するな。
 俺は、必ず帰ってくる》

《……うん》

恭也君の覚悟は止める事は出来ないと理解した私は、恭也君を見守っていました。
私の瞳に溢れる物を止める事が出来ないまま……
恭也君は私から視線を外し、ルオゾールの方を向きます。

《サイフィス……、俺の命、お前に預ける!!
 完全融合・精霊憑依(ポゼッション)……、承認!!》

《了解した。
 主の覚悟と命、しかとこのサイフィスが預かった》

恭也君とサイフィスの契約の言葉と共に、恭也君の周辺には膨大な魔力が集まってきました。
そして、集まってきた魔力は恭也君にまとわりついていきます。
それと同時に、恭也君の身体は青白く輝き始めました。

《なっ、何が起きているんだ?》

《ちょっ、ちょっとなのは!?
 恭也さんの身に何が起きてるの?》

クロノ君とフェイトちゃんの言葉も、今の私には答える事が出来ません。
その代わり、ルオゾールが驚愕して声を発しました。

『まっ、まさか……
 この状況でサイフィスを降臨させるのか!?
 ……相変わらず厄介な方々ですよ、貴方と貴方が選びしマスターは』

ルオゾールは以外に攻撃を仕掛けてきません。
いえ、仕掛けないのではなく仕掛けられないと言った方がいいのかも……
何故なら、ルオゾールは恭也君……
いえ、サイフィスの雰囲気に既に呑まれていました。
そして、膨大な魔力の輝きが収まった時、恭也君の姿が現れました。
髪は完全に銀髪になり、背中に生えている翼は先程の二対四翼から三対六翼に変わっています。
また、恭也君の周りにはあふれ出すように魔力が存在していました。
そう、それはルオゾールの膨大で禍々しい魔力を相殺するぐらいの魔力が恭也君の周り……
いえ、私たちを護るようにその魔力は存在しています。

「我が主との盟約により、風の精霊王・サイフィス……
 今、ここに降臨せん!!」

恭也君……
否、サイフィスの宣言と共に魔力の風が吹き荒れます。
邪悪な存在をかき消すように、希望をのせた風が……

「これまでの因縁に決着をつけるぞ、ルオゾール」

サイフィスはそう宣言してルオゾールに攻撃を開始しました。
量産型ヴォルクルスの発見から始まったこの事件は、解決に向けて加速します。

to be continued




後書き

ども、猫神TOMです。
最終決戦第二段、中盤戦突入です。
まぁ、お約束な展開と言う事で……

それにしても、はやてが貧乏くじ引いています。
やっぱ関西人キャラの宿命なんでしょうか(爆)

では、次回




最終決戦、遂にサイフィスが降臨。
美姫 「これでルオゾールを完全に滅ぼす事ができるのか!?」
ぬぐわぁ、とっても良いところで次回。
一体どうなるんだ!
美姫 「続きがとっても待ち遠しいわね」
次回を楽しみにしてます!
美姫 「待ってますね〜」



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