なのは's Monologue

私、高町なのはっていいます。
現在、私は時空管理局に入局して夢だった航空戦技教導隊に所属し、
ロストロギア関連の事件を解決したり新人隊員の教育を行ったりと、
相変わらず忙しい毎日を過ごしています。
そして、私が入局して8年目に突入した時に、物語は始まります。

魔法少女リリカルなのは
−White Angel & Black Swordmaster−

Act:01「それはありえない出会い、なの」

なのは's View

現在、私は時空管理局・巡航L級8番艦アースラに来ています。
アースラに来た理由は、クロノ君−アースラ艦長クロノ・ハラオウン提督−の救援依頼なんですが。
私以外にも、フェイトちゃん−フェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官−、
はやてちゃん−八神はやて三等陸佐−と相方であるリィン−リィンフォース・ツヴァイ曹長−も来ていると聞いたので、
かなり厄介な事件だと認識しています。
……まぁ、久しぶりに一緒に行動できる嬉しさの方が勝っていますが。
そんなこんなで、クロノ君が本局との打ち合わせ中と聞いたので先に会議室に向かったら、
すでにフェイトちゃんやはやてちゃんが入室していました。

「フェイトちゃん、はやてちゃん、お久しぶり」

「なのは、久しぶり」

「なのはちゃん、久しぶりや」

「なのはさん、お久しぶりですぅ」

「リィンも久しぶり。元気だった?」

「はい!リィンは何時も元気ですぅ」

私を笑顔で迎えてくれる三人。
小学校3年から始まった友情は今も変わらず続いています。
ところで、はやてちゃんの守護騎士たちが居なかったので聞いてみました。

「ところではやてちゃん、ヴィータちゃんたちは?」

「ウチの子ら?ああ、相変わらず元気やで。
 今回は別件が入ってて来れないんやとゆ〜てたけどな」

「そ〜なんだ」

「クロノ君は、あの子達にも要請してたみたいやけどな」

「……ということは、今回の事件ってかなりやばい?」

「……そうみたい。クロノ、かなり悩んでたから」

と、表情を曇らせるフェイトちゃん。
クロノ君はどちらかというと自分の部隊だけで解決させる傾向があって、
よっぽどの事が無い限り知り合いとは言え魔導師ランクSクラスの私たちを呼ぶことが無いんです。
その彼が私たち全員を呼んで、さらにヴィータちゃんたち「ヴォルケンリッター」を召集しようとしたことは、
予想以上にやっかいな事件だと認識しました。

「まぁ、ここで暗い話をしてもしかたないやろ。
 クロノ君が来ないかぎり詳しい内容はわからないしな」

「そうだね」

「私はある程度話は聞いてるけど、本人から聞いた方が早いしね」

はやてちゃんの言うことももっともなので、苦笑しながらも話題を変える事にしました。

「ところではやてちゃん、新部隊の設立はどうなってるの?」

「まぁ、ぼちぼちやなぁ。
 新部隊の設立自体は上も必要性を認めてるし、推薦人も何とかなるけど……」

「何か問題でも?」

「……当の本人が、現在指揮官研修中でして」

そういって苦笑するはやてちゃん。
私もフェイトちゃんも可笑しくて吹き出しました。
確かに部隊をまとめる隊長が居なければ始まらないわけで、妙に納得する私です。

「まぁ、順調にいけば後1年で研修終了になると思うけどな。
 ナカジマ三佐もええ人やし」

「それから人集め?」

「主だったメンバーはフェイトちゃんと選んで選定済みなんやけどな……」

「実際に現場に行くフォワードメンバー……
 早い話、なのはと私の直属の部下になる子の選定が難航してるのよ」

「なるほど」

私が新人を教えていたり現場に向かったりしてた時に、はやてちゃんは既に行動を起こしてたようです。
はやてちゃんのこういった行動力は、私も見習いたいと思うわけで。
でも、なんか除け者にされてる部分もあって、ちょっと悔しい気分。

「しょうがないよ、朝から晩まで新人や隊員たちの訓練でなのはは忙しいし」

私の気持ちを察してか、フォローを入れてくれるフェイトちゃん。
確かに、教官免許を持ってる私は訓練や講習でほとんど本局には滞在していないのですが。

「うぅ、でも」

「まぁまぁ、悪気があったわけじゃないしな。
 それに、なのはちゃんの部下になる子たちに関しては意見聞くから」

「そうしてもらえると助かるんだけど」

私自身、部下を率いての行動は研修以外ではないわけで、ちょっと不安になります。

「それに、現時点での確定メンバーはなのはちゃんも知ってる人たちだよ」

そういって、はやてちゃんが仮のリスト表を私にくれました。
私は、もらったリスト表を参照し見終わった時には苦笑してました。

「ホントに、見知ったメンバーなんだね」

「下手に知らない人を取るより、知った人に手伝ってもらったほうが立ち上げが早いしね」

苦笑してフェイトちゃんは答えました。
私もフェイトちゃんの意見には同意なので納得します。

「……ほとんど母さんの力を使ったんだけど」

「身内のコネは有効に活用せんとな」

何気に、はやてちゃんはとんでもないことを言っているのですが。
そのはやてちゃんの一言で、フェイトちゃんが人員選定に携わった理由がわかりました。
フェイトちゃんのお母さんであるリンディさん−リンディ・ハラオウン提督−と、
その友人でありはやてちゃんの直属の上司だったレティさん−レティ・ロウラン提督−に相談できるのは、
フェイトちゃんが一番都合がよかったから。
私も、そういったコネは作ったほうがいいのかなぁと思うしだいであります。

「ついでに、私たち三人が一緒の職場になれるよう行動してくれたのもリンディさんよ」

「……母さん、かなり無茶をしたみたい」

「まぁ、普通に考えたらSクラス以上3人で同じの職場ってのは無いからね」

毎度毎度、高ランク魔導師が不足している時空管理局でSランク以上がそろう職場はまったく無いわけで……
それを押し通したリンディさんには頭が下がります。

「もっとも、部隊保有ランク制限の兼ね合いで能力リミッターは確定だそうです」

と、はやてちゃんの肩に乗っかってたリィンが頬を膨らませてます。
本隊以外で一部の部隊が突出した戦闘力を保持しないように協定で結んでいる部隊保有ランク制限。
今回、はやてちゃんが立ち上げようとしている部隊にも影響があるわけで……

「やっかいな協定だよねぇ」

「まったく」

「まぁ、文句言ったところでどうにでもなるわけじゃないし、三人そろって同じ職場で働く為には我慢するしかないなぁ」

と三人で苦笑するのでした。



クロノ's View

なのはがアースラにやって来た時、僕は本局・レティ提督と打ち合わせを行う為通信室にいた。

『高町二等空尉がお見えになりましたが、いかがいたしましょう?』

「フェイト執務官たちがいる会議室に案内してほしい。
 それと、僕も本局との連絡が終了しだい会議室に行くと伝えてくれ」

『了解です』

連絡員からの報告に対処し、本局に接続する。

『こちら、時空管理局本局管制室。
 所属部隊及び氏名をどうぞ』

「こちら、時空管理局・巡航L級8番艦アースラ艦長・クロノ・ハラオウン」

『データ照合確認完了。
 ハラオウン提督、今回の接続先は何処でしょうか?』

「レティ提督と繋げてほしい」

『了解しました。
 少々おまちを』

モニターに表示されていた管制官に代わり、レティ提督が表示される。
その横に、リンディ提督……母さんも表示されていた。

『お久しぶり、クロノ君』

「そちらもご健在でなりよりです、レティ提督。
 それほどお久しぶりって訳でもないですが。
 ……ところで、なんでそこに居るんです、リンディ提督」

『そんな他人行儀な言い方しなくてもいいでしょうに』

「そっちは知りませんが、今、僕は勤務中です」

『……相変わらずお堅いようで。
 もう少し柔軟に対処できるようにならないと疲れるだけよ』

「……その、僕を疲れさしているのは何処の誰ですか」

そういって、僕は壮大なため息を吐いたのだった。
まったく、家の母親は大雑把と言うかなんと言うか……
義理妹のフェイトが母さんに似なくてよかったと思う。

『まぁまぁ、そう言わないの。
 あの子たちを貴方の元に派遣できたのもリンディの力添えがあってこそよ』

「まぁ、それに関しては感謝いたしますが……ね」

母さん……リンディ提督の影響力は、現在の時空管理局内部ではかなり大きい。
二つの第一級指定ロストロギア絡みの事件を解決に導き、
AAAクラス級以上の魔導師を3人とそれに付随する使い魔及び騎士たちを確保。
その他、母さんの性格からして管理局の評判はかねがね上々である。
……お祭り好きな性格は問題なのだが。
世間話になりそうだったのを察したのか、レティ提督が本題をたずねてくれた。

『それで、状況は?』

「はっきり言って芳しくない状況です」

そう報告して、僕はこのような状況になった事を報告した。
当初の任務としては、管理外世界を根城とした非合法集団……
俗に言うテロリストの壊滅及びそのテロリストが非合法で入手したロストロギアの回収だった。
何時もと変わらない任務だったこともあり、僕は普段どおり艦内に滞在している武装隊をアジトに突入させた。
だが、今回は突入と同時に、テロリストどもが入手し解析していたロストロギアが暴走を起こしアジトは壊滅。
テロリストどもに関しては壊滅を確認できたが、同時に突入した武装隊は半壊。
最悪な事に、惨劇を引き起こしたロストロギアは現在も暴走中で、生物だろうが物体だろうが所構わず破壊活動を行っている。

「それで、暴走したロストロギアの情報は皆無。
 目標は現在も破壊活動中です」

『……ホント、やっかいな状況ね』

『こういう時に限って、他の部署も問題抱えて武装隊の支援を要求してくるし……』

モニターの向こうでは、提督二人がため息をついて頭を抱えてた。
厄介な事件なほど、とことん連鎖するように発生していているようで武装隊の需要が多くなる。

『本当は、ヴォルケンリッターの面々もそっちに送りたかったんだけど、別件で厄介な事件に関わっててね』

「いえ、あの3人を派遣して頂けただけでも助かりますよ」

『そういってもらえると、こちらとしても助かるんだけどね』

そういってレティ提督は苦笑する。

『さてと、クロノ』

「なんでしょう、母さん」

本来は勤務中なのだが、後で酷い目に遭いたくないので母さんにあわせる。

『嫁さんからの伝言。
 「お父さん、仕事頑張って早く帰ってきてね。
  子供たちがまってるよ」
 だそうよ』

「……できるだけ善処します」

(僕だって、子供たちには会いたいんだ!!)

と内心では思っているのだが、大声で叫ぶわけにはいかないのでぐっと我慢する。
実際、一度航行にでると帰るまで1ヶ月後……最悪半年も会えないことも可能性としてはある。
そんなこともあって本局へ転属しないかって話はあるのだが、今の仕事に誇りを持ってるためそう簡単には転属するつもりはない。
妻であるエイミィとも話し合った結果でもあるから。

『そういうことだから身体に気をつけてね』

「了解」

そういって僕は通信を終了させ、フェイトたちが待つ会議室へと向かった。



はやて's View

なのはちゃんとの再開も一段落ついた頃、フェイトちゃんがお茶を入れてくれたので私たちは会議室で一服していました。
互いの仕事の近況報告も終わったところで、青春真っ盛りな乙女として一番気になる事をなのはちゃんに聞いてみました。

「そ〜いや、なのはちゃん」

「なぁに、はやてちゃん?」

「ユーノ君とはどうなってるの」

「あっ、それ、リィンも気になるですよ」

リィンも興味津々なのか話にのってきます。

「ユーノ君?
 相変わらずだよ」

そんなウチたちに、お茶を飲みながら多少ウンザリした表情でなのはちゃんは答えてくれました。
……動揺して噴出すと思ったんだけどなぁ。
その様子だと、なのはちゃんはユーノ君の気持ちには気づいていないです。
当のなのはちゃんはというと、完全に呆れ顔。

「というか、フェイトちゃんもそうだけど……
 なんでユーノ君とくっつけたがるかなぁ」

「じゃ、なのはにとって、ユーノはどういったものなの?」

「お友達兼魔法の師匠!」

笑顔であっさり断言するあたり、潔いつ〜かなんていうか……
ユーノ君が不憫でたまらないです。
フェイトちゃんは完全に呆れ顔で、ボソッと独り言を呟いていました。

「はぁ〜。
 なのはの鈍感は相変わらずか」

「うん?
 なんかいった、フェイトちゃん?」

「えっ、なっ、なんでもない。
 こっちの話だから」

フェイトちゃんの呟きに、反応するなのはちゃん。
こういった時に限ってやけに敏感なのよね、なのはちゃん。
そして、フェイトちゃんは慌てて誤魔化すのでした。

「そういうはやてちゃんやフェイトちゃんはどうなの?
 特に、はやてちゃんはヴェロッサ君との関係とか……」

なのはちゃんの悪魔な笑みかつカウンター的な発言に、ウチは今までの出会いを思い浮かべていました。
浮かぶのは年配の上司ばっか、それも妻子持ちのお方ばかり。
まぁ、ロッサ−ヴェロッサ・アコーズ査察官−は確かにいい男だけど……

「う〜ん、ウチはそういった出会いなんてないなぁ。
 そもそも、会う異性の方っておじさんが多いし。
 それに、ロッサはどちらかというと、クロノ君とフェイトちゃんとの関係に近いしなぁ」

「私は、そもそも捜査で出払ってて忙しいから出会いなんてないよ」

「むぅ」

ウチやフェイトちゃんは、なのはちゃんの問いに苦笑して切り替えしました。
なのはちゃんは、ウチらの答えに不満な表情をしています。

「それになぁ、どうしても恭也さんと比べてしまうからなぁ」

「そうだよね、恭也さん見たいに良い人なんてそうそう居るわけじゃないし」

ウチたちの意見を聞いたなのはちゃんは乾いた笑いを浮かべていました。
恭也さん−高町恭也−はなのはちゃんのお兄さんで、初めて会ったときはえらいかっこええ人やなぁと思っておりました。
なのはちゃんとの関係が続くと共に、恭也さんは外見だけじゃなく内面も優れてる人やと知り、
ウチはあまり異性と関わったことも無いためどこと無く恭也さんに惹かれていきました。
でも、ウチが恭也さんと出会った時には、既に恋人が居られた状態でして、小さい頃ながら少し妬いたりしていました。
もう少し早く生まれて、早く出会ってたら違った結果になったかもしれんしなぁ、と思うしだいです。
それでも初恋の力とは凄いもんで、無意識に基準になってたりします。

「まぁ、今ウチに必要なのは恋人じゃなく仕事の経験だから、しばらくは浮いた話はないな」

「私もだよ、はやてちゃん、フェイトちゃん」

「うん、そうだね」

そうしてウチたちは、クロノ君が来るまで久しぶりの談笑を楽しんでました。



フェイト's View

私たちが久々の談笑を楽しんでた時、クロノ・兄が会議室に入室してきました。

「クロノ君、久しぶり」

「クロノ君、久しぶりや」

「あぁ、二人とも久しぶり。
 この度は本当にすまないな」

二人に挨拶をし、二人に謝るクロノ。
なのはの方は、武装隊所属になるので正式な依頼で来ているのだけど、
はやての方はというと研修中の所を無理を言って来てもらったわけで。

「あぁ、クロノ君。
 気にせんでかまへんよ。
 ナカジマ三佐も二つ返事で許可くれたしな」

「私の方は、正式な依頼だしね」

そんなクロノに二人は苦笑して答えるのでした。
私はというと、先に会ってたので特に挨拶する必要もなかったので、クロノの分のお茶を準備してました。
クロノは、私が差し出したお茶を飲み、今回私たちが召集されることになった顛末を話し出しました。
もっとも私は、二人に比べて早く着いていたので、先に情報を手に入れていましたが。
要約すれば、暴走したロストロギアの停止もしくは最悪の場合破壊。
そして、本来担当するはずの艦内に滞在する武装隊は半壊と、非常に悪い状況。

「そんな、今すぐ出撃しないと」

「かなりまずい状況じゃ」

案の定、なのはとはやてはクロノに食ってかかります。

「今、武装隊の治療を施して戦力を整えているから」

そういって私は二人を納得させます。

「でも……」

なのはは、それでも不満顔。
私も、なのはの気持ちは分かります。

「現在、対象のロストロギアの情報は皆無に近い。
 それに、そろそろ武装隊との戦闘データからの解析が終わるはずだ」

「そのデータを元に対策を行おうってわけやな」

「その通りだ」

はやては、指揮官研修中って事もあり割とすんなりと納得してくれました。

「ところで今回の対象って、ユーノ君に頼んで調べられなかったの」

「そもそも、調べる対象のロストロギアの名称すら分からない。
 本来、武装隊がアジトの中にある資料ともどもを回収して調べる手筈になっていたからな。
 それに現在の状況だと、のんびりとあいつの回答を待ってるほど時間的余裕も無い」

「あぅ」

なのはの意見ももっともなんだけど、調べる対象の名称すら分からなければ調べようがない。
ある程度の特徴を教えて検索させても良かったのだけど、
今回に関しては調査結果を待ってる時点で被害が拡大するのが目に見えているので使えない。
そうなると、武装隊と対象に起きた戦闘データだけが今後頼りになる情報になる。
そうこうと問答をしている内に、解析班からの調査結果が送られて来ました。

「でかいなぁ……
 それにしても、これホンマにロストロギアなの?
 なんか、生き物に見えるんだけどなぁ」

「なんか、あの時の暴走プログラムみたいだね」

「最初からこんな形状をしてたわけではないはずだが、武装隊が確認する前に暴走を起こしてるからなんともいえない」

映像を見た二人がそれぞれ所感を述べてくれました。
確かに、私となのはがはやてと出会った時に起きた事件。
その事件のきっかけとなった闇の書の暴走プログラム−闇の書の闇−を相手にする感じです。
……大きさは遥かに違いますが。

「……えっ、嘘。
 乱れ撃ちしている魔法の射程と威力ってディバインバスター級!?」

「それに、広範囲のフィールド系バリアにピンポイント型のバリアまで完備とはなぁ」

「物理攻撃の範囲も異常ですぅ」

二人とも、恐れを通り越して呆れています。
なのはの場合、自分の主力技が際限なく連発されるのを見て頭を抱えています。

「何をどうしたら、あんな化け物ができるようになるんや」

「まったく、とんでもない置き土産を残してくれたものだ」

クロノも完全に呆れています。
かくいう私もですが。

「ここで文句をいいあったとこで状況が変わるわけでもない。
 ……済まんな、三人とも」

「気にしないでクロノ。
 私たちの仕事でしょ」

「そうそう、気にしたらあかんで」

「うん、そうだよ」

クロノは済まなそうに頭を下げる。
そんなクロノに対して、私たちはクロノに笑顔で返事をしました。
今までも、難事件を解決してきた私たちだから、今回もきっと大丈夫。

「最悪の場合、僕も現場に出るから」

「少しは信用してよ、兄さん」

「あぁ、信用はしてるが、心配なんだよ。
 ……君の身に何かあると、僕が家族全員に殺されかねん」

そういってばつの悪そうに顔をそらせるクロノ。
そんな困った兄に私は笑顔を見せ、なのはとはやてとともに暴走したロストロギアを止めるため出撃しました。




なのは's View

クロノ君から事の顛末を聞いた私たちは暴走したロストロギアを止めるために、
ロストロギアの暴走に巻き込まれて無事だったアースラ在中の武装隊の方たちと一緒にアースラから出撃しました。
そして、目標であるロストロギアに近づいた時、現場で異変が起きました。

『目標ロストロギア周辺に、多数のガジェットドローンの反応発生!』

「ええぇ!!」

「まさか、レリック反応もあるんか?」

「それとも、あのロストロギアに興味を抱いたか……だね」

報告を聞いた私は驚き、フェイトちゃんとはやてちゃんはガジェットが現れた理由を考えてます。
私たちとガジェットには仕事上因縁がり、少しばかりやっかいな相手だったりします。
暴走したロストロギアと同時に相手にするのは、かなり嫌な相手なんだけど。

『ハラオウン提督からの命令です。
 八神三等陸佐、テスタロッサ執務官、高町二等空尉は暴走したロストロギアの対応を!
 武装隊はガジェットドローンの対応をお願いします』

「了解!!」

「了解!!」

「了解!!」

ガジェットの対応はクロノ君からの指示もあり武装隊の方にまかせ、私たちは目標物めがけて飛ばしました。
ロストロギアの方はというと、ガジェット・武装隊構わず手当たりしだい破壊活動を継続中。
ガジェットに装備されてる厄介なフィールド−A・M・F−も、
ロストロギアにはまったく効果なく巨大な爪や触手で破壊されていきました。

「ガジェットが、なすすべも無く破壊されよるなぁ」

「私たちにとっては都合はいいけど……」

私たちにとって状況が好転してるのか悪化してるのかが判断つかない状態でロストロギアに向かってたら、
ロストロギアの標的に認識されてしまったようで。

《マイスターはやて!
 目標ロストロギアより、高魔力反応あり。
 砲撃が来くるですよ!!》

「なのはちゃん!
 フェイトちゃん!
 散開や」

はやてちゃんの指示に従い、私たちは散会して砲撃をかわしました。
ですが、ロストロギアの砲撃はタイムラグが無く連続で来ます。
今までの戦闘経験もあり、紙一重で交わしている状況です。
……私の主力魔法の一つである「ディバインシューター」は連発するにもチャージ時間もあるのに、
同等の威力を殆どタイムラグ無しで連発するなんて、はっきり言って反則です。

「これは、うかつに近づけないね」

「近づけたとしても、物理攻撃の嵐だし……
 はやてちゃん、あれ一瞬だけ石化可能?」

「試しにやってみるわ」

はやてちゃんは、石化魔法−ミストルティン−発動形態に入りました。
私とフェイトちゃんははやてちゃんを守る為、ロストロギアの攻撃を引き付けます。

「ディバインシューター!!」

「アークセイバー!!」

私のディバインシューターも、フェイトちゃんのアークセイバーもロストロギアのバリアに阻まれてダメージ効果は無し。
しかし、ロストロギアの注意は引き付ける事ができたようです。
フェイトちゃんは、持ち前のスピードでロストロギアを撹乱して、
私はディバインシューターやディバインバスターでフェイトちゃんの援護を行い、
はやてちゃんの魔法が発動するまで時間稼ぎを行いました。
何回かロストロギアの砲撃を交わした時、はやてちゃんの魔法が発動しました。

「彼方より来たれ、やどりぎの枝。
 銀月の槍となりて、撃ち貫け。
 石化の槍、ミストルティン!!」

現れた7本の光の槍は、ロストロギアに向かって一直線に降り注ぎ、
その衝撃で噴煙が舞い上がり、一時視界が悪くなりました。
しばらくして噴煙の中から、予想していなかったロストロギアの砲撃が来て、
私たちの防護服−バリアジャケット−を掠めて行きました。

「うそぉ、全然効かへんかった!?」

「いや、違う!!
 なのは、はやて!!
 あれを見て!!」

はやてちゃんは驚いていましたが、フェイトちゃんの指摘で納得するしかありません。

「無傷ではないにしても、微々たるダメージしか与えてないね。
 それに再生も開始してるし……」

「おそらく、バリアやフィールドで殆どのダメージを相殺したと思う」

「ウチの主力魔法やったんだけどなぁ」

ミストルティンを被弾したロストロギアのダメージは、触手や爪を破壊しただけで本体は無傷。
しかも、破壊した触手や爪は再生して生え変わってるし。
だけど逆に言えば、AAA級の威力を持った魔法を使えばバリアとフィールドを無効化することは可能なわけで。

「タイミングを合わせて命中させたら、ダメージを与えられるかも」

「けど、この砲撃の嵐の中で交わしながらとなると……」

「せやけど、このままバラバラに攻撃してもジリ貧やで」

ロストロギアの砲撃は際限なく続いて、私たちは回避しながらも対策を練っていました。
確かにこのままの状態が続くと、はやてちゃんの言うとおり明らかにこちらの不利。
その時、レイジングハートが私に懇願してきました。

《エクセリオン・モードの起動を!!》

エクセリオン・モード……
私のデバイスでありパートナーであるレイジングハート・エクセリオンの最強形態。
その分、魔力の消費は激しくなるんだけど、出し惜しみできる状況でもない。
フェイトちゃんのデバイス−バルディッシュ・アサルト−もレイジングハートと同じ判断をしたみたい。

「行くよ、レイジングハート!
 エクセリオン・モード、セットアップ!!」

《エクセリオン・モード、セットアップ》

「バルディッシュ!!
 ザンバーフォーム!!」

《ザンバーフォーム、起動します》

私とフェイトちゃんの掛け声に、それぞれのデバイスは最強形態に変形しました。
そして、対ロストロギアの第二戦が幕を開けます。



フェイト's View

私となのはがデバイスの最強形態を使用してからも、戦況は殆ど膠着状態でした。
ロストロギアのバリアとフィールドは何とか突破できるものの、ロストロギアの再生能力によって殆ど無傷な状態。
だけど、無駄に時間を過ごしていたわけでもなくて……
相対して分かった事は、本体に大きい赤い宝玉のようなものと、各部分に赤い宝玉より小さい青い宝玉が存在しているということ。
そして、ロストロギアが魔法を使用する時にその宝玉全てが輝いていること。
ロストロギアからの砲撃を回避しながら、私たちは念話で対処法を練る。

「ど〜やら、中心にあるあのでかくて赤い宝玉がロストロギアの核−コア−のようやな」

「そして、コアに反応して青い宝玉が光るから、青いのはサポートってことだね」

「うん。
 それに、あのコアの部分のバリアが、他の部位に比べて頑丈に張られていることでも間違いないね」

暴走したロストロギアの対処法は判明。
だけど、その部分を破壊するのに有効な手段はあまりなく、さらにバリアで守りを固めている状態では殆ど手出しできない。
そんな中、なのはが無茶な提案をしてきました。

「私の魔法、エクセリオン・バスター・ACSなら突破できると思う」

「だけど、危険だよ!!」

私は、そくざに反対意見をだした。
私としては、二度とボロボロになったなのはの姿を見たくないから……
もっとも、頑固ななのはの事だからよほどいい対案が無い場合引く訳がないんだけど……

「フェイトちゃんの気持ちもわかるんやけど、ウチとしては……
 というか、リーダーとしての意見はと言うと、現状を好転する方法としては、なのはちゃんの意見に賛成や」

はやては、なのはの意見に賛成。
でも、その表情は曇っていた。
はやても内心は葛藤しているんだと思う。
だけど、統率者を目指しているはやてだから、リーダーとしての意見を通したようだった。

「大丈夫だよ、フェイトちゃん」

そういってなのはは微笑ました。
もはや、私は何も言うことができなくなり、なのはの負担を減らすためロストロギアの攻撃をひきつける事にしました。

「無茶だけはしないでよ、なのは」

「うん!!」

「意見はまとまったようやな。
 ウチらは、あれの注意をひきつけるさかい、なのはちゃんはコアにだけ集中してや」

「了解!!
 フェイトちゃん!
 はやてちゃん!
 援護は任せたから!」

「うん!」

「まかせてな!」

作戦が決まったので、私はロストロギアからの注意を引き付けるために、
ロストロギアの砲撃を掻い潜り片っ端から触手みたいな物を斬って行きます。
なのはは、カートリッジを温存し回避行動に徹しながら一撃を与える隙を窺っています。
ロストロギアと相対していると、不意に詠唱体制に入ってたはやてから警告が届きました。

「フェイトちゃん!
 一発デカイのかますから、上手くよけてな」

「わかった、はやて!」

私は肯き、行い頃合を見計らっていったん離脱します。
私が離脱したのを確認したはやては、詠唱を完了した魔法を具現化させました。

「なのはちゃん直伝、スターライト・ブレイカーをくらいや!!」

はやての言葉と共に具現化した一条の光は、ロストロギアに向けて一直線に放たれます!!
スターライト・ブレイカー……
なのはが使う魔法の中で最強の砲撃魔法。
はやてがその魔法を使えるのは、闇の書事件での影響なんだけど。
もっとも、オリジナルに比べて劣っているとはやては言うけど、それでも高威力魔法だということには間違いない。
そして、はやてから放たれた収束された閃光は、ロストロギアのバリアとフィールドを食らい尽くして大爆発を起こしました。
ロストロギアの外郭は、はやてが放ったスターライト・ブレイカーによってかなりの損傷を与える事ができましたが、
コアには傷一つも付けられません。
そして、先ほど与えた損傷部分はというと、既に再生を始めていました。

「やっぱりコアは無傷か。
 少しばかりは期待してたんやけどな」

「しょうがないよ、はやてちゃん。
 スターライト・ブレイカーは、射撃距離によって威力が変わるから。
 でも、おかげでエクセリオンバスター・ACSで突破できる確証はとれたよ。
 さっきの一撃で、多重化されて張られてたバリアの内、何枚かは消滅してたから」

「でも、直ぐにバリアは回復してる。
 それに、外郭の方も再生を始めてる」

「それじゃ、フェイトちゃんとウチはこのまま波状攻撃を続行ってことでええな。
 その後は、なのはちゃん頼むで!」

「わかった!」

「うん!!」

私とはやては、再び攻撃を再開してロストロギアの注意を引き付けてます。
なのははというと、上空に待機して赤い宝玉−核−だけを注視しています。
魔法発動の効果的なタイミングを見誤らない為に。
そして、なのはは動きだしました。



なのは's View

フェイトちゃんとはやてちゃんが、私を信じてロストロギアからの攻撃を引き付けてくれています。
その二人の信頼に応えるためにも私は上空で回避行動に徹して、一瞬の隙を探っていました。

「疾風・迅雷!!」

《Sprite Zamber》

「響け終焉の笛、ラグナロク!!」

フェイトちゃんとはやてちゃんの大技が炸裂して、ロストロギアの外郭がほぼ半壊し動きが鈍くなりました。
この一瞬を狙ってた私は、魔法詠唱態勢に入ります。
私を中心とした魔方陣が激しさを増しながら輝き、レイジングハートの先端に魔力が収束していきます。
魔力の収束が終わった時、私は魔法を具現化させました。

《A・C・S、スタンバイ》

「エクセリオンバスター!!」

エクセリオンバスター・ACS……
私が使う魔法で唯一の近距離射撃魔法……
というより零距離射撃体勢魔法ですが。
威力だけで言うなら、長距離でスターライト・ブレイカーを撃つよりも高いです。
もっとも、零距離でスターライト・ブレイカーを撃つ事ができれば、それが私の魔法の中で最強なのですが。
いかんせん、あれはチャージに時間がかかりすぎるので迎撃されるのが目に見えている訳でして。
それに、バインド魔法で拘束するにしても、対象が大きい姿のロストロギアだと私には無理でして。
そして距離が離れれば離れると、スターライト・ブレイカーの威力が激減しますから、
今回の場合だとはっきり言って使える状況じゃ無いんです。
そういうことで、エクセリオンバスター・ACSを選択した私は、ロストロギアの核−コア−に向かって突撃を慣行しました。
ロストロギアからの迎撃はありますが、突撃形態である私にダメージはあまり通りません。
フェイトちゃんやはやてちゃんがある程度ダメージを与えてくれていたおかげで、
魔力を再生に集中させているのか迎撃に使用している魔法の威力が、
先ほどの砲撃に比べて落ちているからってのもあるのですが。

《マスター、目標有効バリア範囲までもう直ぐです》

「うん、わかってる。
 頼りにしてるよ、レイジングハート!」

《私もです、マイマスター》

レイジングハートとの対話が終わると同時に、先ほどから攻めあぐねていた多重バリアが見えて来ました。
私は躊躇わずレイジングハートをバリアに突き刺します。
一枚、二枚、三枚……
何重にも張られていたバリアは、なすすべも無く消滅していきます。
そして目の前に現れた核−コア−にレイジングハートを突き刺し、先端に収束していた魔力を開放させました。

「ブレイク、シュート!!」

私とロストロギアは、その衝撃により現地点よりロストロギアにとっては後方私にとっては前方に一緒に飛ばされました。
そして私はというと、衝撃によりバリアジャケットがかなりボロボロになっています。
エクセリオンバスター・ACS……
まだまだ、改良の余地はありそうです。
私が少し気を緩めると、ロストロギアの核−コア−から奇妙な機械音声が聞こえました。

《損傷率、80%オーバーを確認》

「えっ!
 このロストロギアってっ!?」

《自立型機動兵器の人工知能で間違いないでしょう、マスター》

自立型機動兵器……
かつて大きな戦争が起きた時に、相手を国を滅ぼすために製作された機動兵器。
そんなものが再び目覚めたら、確実に悲劇が生まれます。
私は、すかさずその核−コア−を破壊するためにレイジングハートを向け、攻撃しようとしました。
が、レイジングハートを持っている左手が思うように動かず、奇妙な違和感を感じました。

「えっ、バインド!?
 いつの間に!?」

それはロストロギアのバインド魔法でした。
私が驚いていると、いきなり振り子のように振られ、さらに私は地面に放り投げられました。

「っ、いたぁ〜」

私は、何とか立ち上がり核−コア−に向かっていきました。

「少し油断してたかな?」

《マスターの悪い癖です》

「あぅ」

レイジングハートに説教される私。
私自身、自覚はしてるんだけど、まだまだ精進しないと駄目みたい。
不意に、周りに奇妙な揺らぎが発生しました。

「えっ、この揺らぎって……?」

その揺らぎの答えは、核−コア−からの機械音声で判明しました。

《別次元にヴォルクルス01型の反応を沈黙状態で捕捉。
 座標:F0E1D2C3B4A596870F1E2D3C4B5A6978
 自己修復及び自己進化プログラム発動。
 次元転移開始》

「っ!!
 まさか、これと同じのが複数存在してるというの!?」

《マスター、すでに目標は次元転移行動に移っています》

私はすかさず魔法を放ちました。

「ディバインシューター!!」

私の放ったディバインシューターは、核−コア−から発生する多重バリアに阻まれてしまいました。

「うそっ!
 あの状態でもバリアの多重展開は可能なの!?」

《マスター、離脱を!
 このままだと巻き込まれます!!》

レイジングハートは私に離脱を勧めます。

「なのは、離脱して!!」

「なのはちゃん!!」

フェイトちゃんとはやてちゃんも、私に離脱を勧めます。
しかし、今から離脱を開始しても次元転移範囲外に行けるか疑問。
最悪、障壁に阻まれて離脱不可の可能性もあります。
それに、私はこのままこのロストロギアを放って、
罪も無い人々や生き物・自然がなすすべも無く破壊されて行くのを見ているだけってのも我慢なりません。
だから私は覚悟を決めました。

「ごめん、フェイトちゃん、はやてちゃん」

「なのは!?
 何考えてるの!!」

「ちょっ、ちょっとまちや!?
 不屈のエース様が諦めるんかいな!?」

フェイトちゃんとはやてちゃんは、驚いて私を非難します。
レイジングハートは沈黙したまま。
私は、とっさに思いついたプランをはやてちゃんに言いました。

「はやてちゃん」

「なっなんや、なのはちゃん?」

「私の魔力、遠く離れてても追えるよね?」

「そりゃ、あの時の影響でウチはなのはちゃんとフェイトちゃんの居場所は離れてても探せるけど……
 って、ちょっ、まさか!?」

「うん、そのまさか!」

はやてちゃんは私の意図を理解してさらに驚きました。
そして私は、はやてちゃんに笑顔を送るのでした。
そのプランとは、このロストロギアと一緒に私も次元転移し隙を見て破壊。
その後、はやてちゃんが私の魔力を追いかけて合流と……
自分で言うのもなんですが、はっきり言って分の悪い賭けだとは自負してます。

「なのは!!
 無茶だよ!!」

「無茶なのは承知してるよ、フェイトちゃん」

フェイトちゃんは今にも泣き出しそうな表情をして私を止めようとします。
私はというと、どことなく落ち着いていました。

「なら、どうして!?」

「フェイトちゃんが、自分の過去に重ね合わせて不幸な子供たちを保護してるのと同じ。
 私は、このロストロギアを見過ごして無関係な人々……
 ううん、人々だけじゃない!
 生きとし生けるものがなすすべも無く滅ぼされるのが許せないの!!」

私の言葉に、何も言い返せないフェイトちゃん。

「でも、なのはちゃん……
 次元転移先が人が生きて行けないような所に出たらどうするんや!?」

はやてちゃんのご意見はもっともだけど、私には大丈夫だと言う確信がありました。
機械音声が転移座標を発言していたので。

「はやてちゃん、その事なんだけど大丈夫だと思う。
 詳しくは聞き取れなかったけど次元転移の座標は発言してたから」

やり取りしている最中も、障壁の揺らぎは激しさを増します。
もう時間も無いので、私は先ほど聞いたキーワードをフェイトちゃんに教えます。

「フェイトちゃん……
 心配かけてゴメン」

「まったくだよ!!
 あの時もそうだったし……」

「そのついでなんだけど、分かったことを教えておくね」

「分かったこと?」

「うん、核−コア−の機械音声を聞いて分かったんだけどね。
 あのロストロギアは次元移動可能自立型機動兵器で機体名称は『ヴォルクルス』」

「次元移動可能自立型機動兵器『ヴォルクルス』?」

「そう。
 そして、この機動兵器は複数存在してるの」

「えっ、うそ!?
 複数存在してるの」

「マジかいな!?」

二人とも絶句。
あれだけ苦労してここまで追い詰めた物が複数存在すると分かれば絶句するのもわかりますが。
かくいう私も驚きましたし。
はやてちゃんは、私の真意に気づいて質問してきました。

「まさか、なのはちゃん?
 その転移先って!?」

「うん、同型かどうかは分からないけど同じものが存在している世界。
 ただし、そこに存在している物は眠っている状態だってのも分かってるから……」

「転移終了後に稼動している奴を破壊し、眠ってる奴も探し出して破壊するつもりなんやな、なのはちゃんは?」

「ご名答。
 うまくいけばだけどね……」

問答のやり取りを行っていると、ロストロギア……
ヴォルクルスの次元転移魔法が完成に近づいてきました。

「はやてちゃん、後は頼むね」

「わかっとる!
 確実に見つけたるさかい、こっちのことは心配せいへんと自分のことを考えてや!!」

「フェイトちゃん、私は大丈夫だから!」

「うん、わかってる。
 はやてと一緒に探し出すから、無事に居てよ、なのは!!」

「うん!!」

後は、私の我がままに付き合ってくれるレイジングハート。

「ごめんね、レイジングハート。
 つき合わせてしまって」

《マスターの無茶な行動は何時ものことです》

レイジングハートは何時にも増して毒舌です。

「あぅ、それを言われると辛いんですが……」

《それでも私は信頼していますよ、マイマスター》

「うん、ありがと」

そして、ヴォルクルスの次元転移魔法が完成し、私はヴォルクルスと共に光に包まれました。
私の意識が途絶える中、ヴォルクルスは外郭を破棄し核−コア−単体になって輝いていました。



???'s View

次元の狭間。
時間も概念も存在しない無の空間。
そこで、我は眠りについていた。
再び目覚めることの無い永き眠りに。
だが、我は再び目覚める事になる。

『自立行動型殲滅機動兵器−ヴォルクルス−、起動確認』

忌まわしき悪魔が目覚めた。
かつて、全世界を滅ぼしかけた悪魔が。

『スリープモードよりアクティブモードへ移行、起動開始』

我はデバイス。
悪魔を殲滅するために作製されたデバイス。
かつては、我と同型のデバイスも存在していたが、現在は我が存在するのみ。

『最優先事項・自立行動型殲滅機動兵器−ヴォルクルス−の破壊』

そして、我は動き出す。
新たなる適合者、主となるべき人物を求めて……



なのは's View

ヴォルクルスが使用した次元転移魔法に巻き込まれた私は、完全に気を失っていました。
どれくらい眠ってたかは知るすべはありませんが、閉じてた瞳に光が差し込んだので私は覚醒しました。

「うぅ、眩しい……」

中途半端にあけた眼前に、見知った男性と女の子。
後、狐耳のヘアバンドをつけた女の子が現れました。

「あっ、おにーちゃん。
 女性の方が気がついたよ」

「……妹よ、あまり大声をだすな。
 女性の方が驚くだろ」

「あぅ、ご、御免なさい」

男性と女の子は兄妹のようです。
男性の方は妹さんに苦笑して注意してましたが、優しい瞳をしていました。
素直に謝る妹さん。
妙に微笑ましい光景です。
私は上半身だけを起こして状況を確認します。
身体の方は、特に異常は無し。
目標は完全にロストしてますが……

「あの、大丈夫ですか?」

「あっ、はい、大丈夫です。
 心配お掛けして申し訳ありません」

「いえいえ、お構いなく」

心配をかけたようなので、私は男性の方に頭を下げます。
男性の方はというと、気にするなといいたそうな表情をしています。
……どこかで見たような気がすると思ったら、お兄ちゃんにそっくりなんだ。
そんな事を思ってたら、男性の方がたずねてきました。

「あの、俺の顔に何か?」

「あっ、ご、御免なさい。
 知っている人にそっくりだったものでして」

「あぁ、そうでしたか」

私は、慌てて男性の方に謝るのでした。
確かに、まじまじと眺めてたら失礼に当たるよね。
男性の方はというと苦笑してました。
そういえば、妹さんは昔の私にそっくりです。

「ところで、お姉さんのお名前は?」

「……妹よ、名乗る時はまず自分からだ」

お兄さんの突っ込みに、ばつの悪そうな顔を浮かべる妹さん。

「あっ、そうだった。
 私、高町なのはっていいます」

そう言って、妹さん……
なのはちゃんは私にお辞儀をします。
……って、今なんて言ったの?
高町なのはって、えっ、えっ!?
同姓同名だけならまだ落ち着いて対応できるのですが、眼前にいるなのはちゃんは昔の私に瓜二つ!!
こんなことって……

「えっ、えっ〜!!」

驚く3人を放っておいて、私は完全にパニックに陥ってました。

to be continued




後書き

どうも初めまして。
猫神TOMと申します。
初めてとらハ&なのはSSに挑戦してみました。
まぁ、良くある並行世界ネタなんですが。
副題−White Angel & Black Swordmaster−が示すとおり、
主役はアニメ版なのはとオリジナル版恭也です。
ただし、マルチ視点での構成のため他のキャラにも視点はいったりします。
特に、フェイトとかはやてとかは頻度は高いです。
お付き合い頂けたら幸いです。

ちなみに、劇中で出てきました「ヴォルクルス」の出展は、
ゲーム「スーパーロボット大戦 魔装機神 〜THE LORD OF ELEMENTAL〜」に出てくる
邪神及び敵ユニットの名前からです。
この作品、かなり昔の物なのですが、設定が秀逸でして今でも名作に入る作品です。
ロボット物のわりに、魔法の設定も多いので参考にしています。
劇中でのスペックは追々判明するということで。

では。




投稿ありがとうございます。
美姫 「ございます」
どうやら、違う世界へと飛ばされてしまったなのは。
美姫 「そこで出会ったのは、自分と全く同じ名前の少女」
いやいや、滅茶苦茶面白いですよ。
続きがとっても気になります。
美姫 「これからの展開がとっても楽しみよね」
うんうん。次回も首を長くして待っていますので!
美姫 「待ってますね」



▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る